説明

燃焼方法

燃料、燃焼用剤および成分A)が燃焼装置に供給される燃焼方法であって、低溶融の塩および/または酸化物を含み、1,450K以下の溶融温度を有し、成分A)中に存在する低溶融の塩および/または低溶融の酸化物の形態にある金属の量と、燃料中に含まれる低溶融の塩および/または低溶融の酸化物またはそれらの低溶融の混合物の形態にある金属の量との合計モルA'と、燃料中に含まれる全金属の量と成分A)に含まれる全金属の量との合計A"との間のモル比、A'/(A"-A')が0.01以上であり、燃焼装置が定温型でかつ無炎である燃焼方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、通常の燃料および低ランクの燃料、バイオマスまたは廃棄物、をともに用いることにより、燃焼装置から出てくる燃焼ガス(fumes)中の微細な粉塵を実質的に低減し、環境および生物への影響を低減し得る燃焼方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃焼プラントからの粉塵の放出は、規制の対象となっている。欧州において、今日まででより厳しいのは、CE 2000/76規制である。しかしながら、この規制では、粉塵は一様な方法(総重量)で特徴づけられてきた。
この規則は、10μmより小さい粒子サイズ(PM 10)についての制限、および重金属の濃度についての制限を定めている。煙道ガスの定速サンプリングによって得られる重金属の濃度は、(除湿された)乾燥ガスの容量に対するものである。
この規制において、該濃度は空気で燃焼させたときの乾燥した煙道ガスに関連しており、煙道ガス中の酸素濃度を11容量%と定めることによって、排気についての質量収支と一義的に関連づけられる。
この規制は、空気とは異なる燃焼用剤、例えば濃縮空気または酸素で酸化燃焼させた場合に、質量収支の基準に基づいて、補正係数が適用されることを明記している。
例えば酸素が全変換されたときの酸素での燃焼の場合、補正係数(規格化因子)は燃料のタイプによって変動し、0.085まで低くなり得る。この質量収支の基準は広く受け入れられている。例えば、排気についてのBAT(Best Available Technology)の分類は、質量収支を用いている。
【0003】
現在、燃焼装置から出る煙道ガスについて、粒子サイズに基づいて粉塵の危険性を分類する規制は存在しておらず、それゆえに粒子サイズについて制限値がない。近い将来、2.5μmより小さい粒子径(PM 2.5)を有する粉塵の含量に制限を定めることによって、制限値が定められる可能性がある。
この目的のため、例えば世界中の都市において、大気中への粉塵についてますます制限された規制は十分に予見される。例えば、PM 10の量を40μg/Nm3より低く制限するだけの96-62-CE規則を超えるために、欧州指令の新提案が審議中である。この新指令は、大気中のPM 2.5について20μg/Nm3までの新たな制限を導入するものである。
【0004】
さらに、EPA(National Air Quality Standard)によるPM 2.5の制限が15μg/Nm3であり、世界保健機関(World Health Organization)により提案された値がさらに低い、すなわち10μg/Nm3であるということが、考慮されなければならない。このため、粉塵についてのPM 2.5の値は、技術的に検討されるだろう。
【0005】
微細な粉塵が全産業分野で採用されている燃焼方法の煙道ガス中に含まれているということは、従来技術で知られている。微細な粉塵は、2.5μmより小さい粒子径(PM 2.5)〜数ナノメートルのオーダーのサイズを有する固体粒子から形成されている。それらは有機分子の凝集体、例えば様々な含量の水素と酸素を有する炭素質の分解物(煤またはディーゼル粒子として知られている)の凝集体、および無機分子の凝集体、例えば供給される燃料中に含まれる不燃性の灰から生じるアルカリ、アルカリ土類および重金属の塩および/または酸化物の凝集体の両方から形成されている。
【0006】
有機物由来の微細な粉塵は、その形状によって、セノスフィア(cenosphere)およびプレロスフィア(plerosphere)に分類される。
【0007】
これらの微細な粉塵は、スリーブフィルタ(インパクト濾過)、静電フィルタ(静電場中の泳動)またはpHの異なる水溶液もしくは有機溶液を用いる洗浄集塵装置のような、公知の煙道ガスの工業的後処理方法によっては除去できないことも知られている。
【0008】
上記の公知の方法は、比較的粗い(平均粒径が2.5μmより大きい)粒子の除去には有効であるが、微細な粒子、特に2.5μmより小さい、殊に1μmより小さい粒子サイズを有する微粒子の除去には、全く効果がない。後者の粒子サイズは、ヒトや動物の健康にとって最も危険な微粒子画分を表している。実際、これらの微粒子画分は肺胞に残り、重篤な病気を引き起こす。
【0009】
不燃性の灰の存在、すなわち、重い(不揮発性の)灰だが、特にフライアッシュは、長い間、燃焼プラントにおける技術的な問題となっていた。実際それらは、天然ガスから石油、石炭への化石燃料の歴史的/経済的な分類の要因となっていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来技術において、不燃性の灰を溶融し、燃焼ガス中のフライアッシュを低減するための高温の火炎帯で操作する燃焼装置(スラグ燃焼装置)も知られている。上記のプラント内では、熱い煙道ガスによって運ばれる粉塵の、エネルギー回収プラントの効率に対する悪影響が減少している。これらの燃焼装置の難点は、灰の溶融が定量的でないため、フライアッシュが除去されず、燃料中に含まれるフライアッシュのせいぜい70〜80%が除去されるにすぎないということである。
【0011】
この問題を克服するため、低い灰分含量を有する燃料が用いられる。しかしながら、これらの燃料は大量に入手することができない。よく知られているように、燃料精製方法は極めて高価である。さらに、燃焼装置の燃焼ガスは、常に微細な粉塵を含むことが指摘されている。
【0012】
灰を大量に含む燃料は、自然界に極めて豊富にある。その上、世界中の燃料消費量の途方もない増大と、環境ならびにヒトおよび動物の健康への影響を制御することへの要求の高まりが、通常の燃料を用いることができて、その上たとえ極めて大量の灰を含んでいても燃焼装置からの燃焼ガス中の微細な粉塵の放出が低減される、利用可能な燃焼方法を求めている。さらに、上記の燃料は、例えばバイオマスのように、自然界ではとてもありふれている。
【0013】
用いられる燃料がどのようなものであっても、燃焼装置からの微細な粉塵を低減させ得る産業的な燃焼方法を利用可能にする必要性が感じられていた。
【0014】
上記の技術的課題を解決する方法が、意外にも驚くべきことに見出された。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、燃料、燃焼用剤および成分A)が燃焼装置に供給される燃焼方法であって、低溶融の塩および/または酸化物、あるいはそれらの混合物を含む成分A)が1,450K以下の溶融温度を有し、
成分A)中の低溶融の塩および/または酸化物、あるいはそれらの混合物の形態にある金属の量と、該燃料中に含まれる低溶融の塩および/または低溶融の酸化物の形態にある金属の量との合計モルをA'とし、
該燃料中に含まれる全金属の量と成分A)中に含まれる全金属の量との合計モルをA"としたとき、
モル比、A'/(A"-A')が0.01以上であり、該燃焼装置は定温型でかつ無炎である燃焼方法を目的とする。
【0016】
モル比、A'/(A"-A')は、好ましくは少なくとも0.1であり、より好ましくは少なくとも0.2である。その上限は極めて高くなり、例えば1,000,000まで、通常100までである。(A"-A')=0のとき、上限は無限の値もとり得る。このことは、燃料中に存在する金属の化合物が全て低溶融の化合物であるとき、すなわち、それらが1,450Kより低い温度で溶融するときに起こる。この場合、上で示したより高い温度で溶融する金属の化合物は存在しない。
【0017】
本発明の方法において、(A"-A')≠0の場合、または(A"-A')=0の場合があり得る。後者の場合でも、燃焼装置の出口における燃焼ガス中の微細な粉塵(PM 2.5)が劇的に低減することが、驚くべきことに意外にも、本出願人により見出された。燃焼装置下流のプラントにおいて、固化した灰の著しい沈着が形成されていないことも見出された。
【0018】
燃焼装置内の燃料の滞留時間は、好ましくは0.5秒〜30分以上の範囲にあり、より好ましくは2秒〜10秒の範囲である。所望であれば、より長い滞留時間を採用することも可能である。
【0019】
燃料中に存在する金属の測定は、プラズマ技術、例えばICP-OESにより燃料の灰について行われる。燃料の灰は、例えばISO 1171試験に従って、または600℃の温度を用いる熱分解法によって得られる。
灰の溶融温度は、公知の方法、例えばASTM D 1857-87試験によって得られる。
【0020】
低溶融画分を測定するため、燃料の灰を1,450Kの温度まで加熱し、この温度で好ましくは少なくとも2時間放置される。
溶融した画分について、金属を測定する。特に、低溶融画分を、例えば底に直径5mmの孔を有するるつぼを用いて燃料の灰から分離する。
【0021】
本発明の方法における燃焼装置内の圧力は、101.3kPa(大気圧)〜約2,000kPaの間に含まれる。燃焼装置内の温度は、好ましくは1,500K(1,223℃)〜2,100K(1,827℃)の間に含まれる。
【0022】
燃焼用剤としては、好ましくは酸素である。例えば、高純度の酸素(98.5容量%)が用いられ得る。一般に、タイター88〜92%VSA(vacuum swing absorption)および88〜92%VPSA(vacuum pressure swing absorption)を有する酸素も用いられ得る。好ましくは、酸素タイターの下限は70容量%であり、100%までの残りは、不活性ガスおよび/または窒素で形成される。
本発明の方法における燃焼用剤は、好ましくは燃料との反応に必要な化学量論量に対して過剰モルで使用される。しかしながら、化学量論量に対して不足して用いることもできる。
【0023】
燃焼装置の出口における燃焼ガスは、好ましくは1,100K以下の温度、いずれにしても、溶融した灰の濃縮蒸気の凝固温度より低い温度で冷却される。このことは、通常の材料で製造された熱回収プラントおよび回転機械が使用できるため、有利である。
【0024】
1つ以上の化合物A)と1,450Kより高い溶融温度を有する高溶融の塩および/または高溶融の酸化物との混合物であって、1,450K以下の溶融温度を有する混合物も、成分A)として用いることができる。1つ以上の化合物A)は、好ましくは5重量%より多くの量、より好ましくは30重量%までの量で用いられる。高溶融の化合物の一例はベントナイトである。
【0025】
それゆえ、本発明では、1,450Kより低い溶融温度を有するという条件で、共晶組成物または共晶様組成物を用いることができる。
【0026】
化合物A)の低溶融の塩および/または酸化物として、ナトリウムおよび/またはカリウム酸化物および/または塩、例えば硫酸塩、リン酸塩および塩化物、アルカリおよびアルカリ土類金属のアルミノシリケートなどが用いられ得る。上記の低溶融混合物は、例えば「CRC Handbook of Chemistry and Physics」 1996-1997年版または「American Ceramics Society, www.ceramics.-org/phase」を用いて、当業者により容易に得られる。
【0027】
その他の任意成分、クレイ、シリカ、アルミナなどを、燃焼装置に加えることもできる。成分A)は、燃料とは別に、好ましくは燃料と混合して燃焼装置を加えることができる。成分A)が別に供給される場合、それは例えば水溶液または懸濁液の形態であり得る。
【0028】
本出願人は驚くべきことに意外にも、本発明の方法に従って操作される燃焼装置から出てくる燃焼ガス中では、粉塵の量が劇的に減少し、特に2.5μm以下の粒子サイズ、より具体的には1μmより小さい粒子サイズ、さらに具体的には0.4μmより小さい粒子サイズを有する灰画分の量が、劇的に低減することを見出した。
【0029】
本発明の方法で使用できる燃料としては、例えば砂糖、動物の飼料、炭素由来のバイオマス、中和反応、高沸点精製留分、ビチューメンおよびオイルシェールからの産業廃棄物、タールサンド、泥炭、使用済み溶剤、ピッチの工程廃棄物があり、任意にCDR(廃棄物からの燃料)を含んでいてもよい都市廃棄物からの残留物を含む、一般の産業プロセスの廃棄物が挙げられる。石油由来の液体燃料からのエマルジョンも用いられ得る。
【0030】
前記のように、本発明の方法で使われる燃焼装置は、1,500K以上、好ましくは1,700K〜2,100Kの温度で、かつ103kPa (1bar)より高い圧力、好ましくは200kPaより高い圧力、より好ましくは600kPa〜2,026kPaの圧力で操作されるから、定温型でかつ無炎である。
【0031】
本発明の方法で用いられる定温型の燃焼装置は、本出願人の特許出願WO2004/094, 904に記載されており、この出願は参照としてここに組み込まれる。
燃料が水および/または水蒸気と混合して定温型の燃焼装置中に導入されるとき、該燃焼装置は特許出願WO2005/108, 867に記載されているように作動する。
【0032】
好ましくは、供給される燃焼用剤の酸素はリサイクルされる燃焼ガスと予め混合される。該燃焼ガスの量は一般的に10容量%より多く、好ましくは50容量%より多い。リサイクルされる燃焼ガスは、リサイクルされる燃焼ガスの全容量に対して計算して、10容量%より多く、好ましくは20容量%より多く、より好ましくは30容量%より多い量の水蒸気の形態にある水も含む。
【0033】
供給される燃焼用剤は水蒸気と混合することもでき、該水蒸気は部分的にまたは全体的にリサイクルされる燃焼ガスに置き換え得る。
供給される燃料は、用いられる燃料のタイプに応じた量の水/水蒸気をも含み得る。供給される混合物の低発熱量(lower heating power)(LHV)の値が6,500kJ/kgより大きいという条件で、燃料中の水の割合は、重量%で表して80%以上であることもできる。
【0034】
燃焼装置の出口におけるガスは、1,100Kより低い最終温度に達するまで、リサイクルされるガスと混合器内で混合することによって冷却される。該燃焼ガスは、水蒸気を生成させるための水が供給される熱交換器に運ばれ得る。熱交換段階におかれた燃焼ガスは、燃焼装置と燃焼装置の出口にある混合器との両方へリサイクルするために、再び圧縮される。
好ましくは、燃焼ガスの最終的な生成量に相当する燃焼ガスの部分は、機械的作用を得るために膨張された後、燃焼ガスの後処理部に送られる。膨張されるべき燃焼ガスは、混合器の出口に通じている。
燃焼ガスにはフライアッシュが実質的に含まれていないので、膨張は膨張タービンを用いて行うことができる。
【0035】
燃焼装置の下部には、溶融した灰のための収集容器が設けられている。集められた灰は、次いで例えば水槽内で冷却され、固体ガラス状態で静置沈殿器内に移される。
【0036】
本発明の方法において、燃料中に存在する金属および成分A)中に存在する金属のいずれもが燃焼装置内に液状で残り、次いで前記のように燃焼装置の底から除去されることが、意外にも驚くべきことに、本出願人により見出された。
さらに、EC 2000/76基準によるPM 2.5の排出値は、50μg/Nm3より低い値に減少している。
【0037】
2.5μmより小さい粒子径を有する粒子を制御する方法は、燃焼装置の出口における燃焼ガス内に置かれたセンサーを用いて行われる。例えばオパシメーターを用いることができる。具体的には、器具ELPI(Electrical Low Pressure Impactor)を用いることができる。これは、一般的に2.5〜0.01μmの粒子サイズを有するPUF(Ultra Fine Particulate)を10分間隔で連続的にスキャンすることにより作動する。これは、上記の濃度より十分に低い総PUF含量、従来技術で例えばBATで報告されているものより数桁低い総PUF含量を維持するために、燃焼装置内の成分A)の含量についての必要な情報を提供する。
【0038】
前記のように、本発明の方法は、通常、燃焼ガス中に微細な粉塵の形態で相当量存在する重金属も燃焼装置内で溶融状態に保持する場合に、特に有効であるということが、驚くべきことに意外にも、本出願人により見出された。
例えば、従来技術の燃焼方法では、CdO酸化物の形態にあるカドミウムが揮発し、その全てが燃焼ガス中で超微細の粒子として存在し、燃焼ガスの後処理プラントを事実上そのまま通り抜けているということがよく知られている。それとは逆に、本発明の方法で採用される条件下では、酸化カドミウムは大気中に放出される燃焼ガスからほとんど完全に除去されている。
【0039】
本発明の方法によれば、その他の重金属、例えばマンガン、銅、クロム、バナジウム、鉛もほとんど定量的に除去することができる。
【0040】
本発明の方法は、さらに燃焼ガスからのバナジウムの大幅な低減または除去さえも可能にするが、この方法でなければ、そのような低減は従来技術の方法では特に困難である。該金属は原油中に存在し、重質原油中、ビチューメン中、シェール中およびタールサンド中、ならびに原油処理の廃棄重質留分中にも、かなりの量で存在する。バナジウムは、知られているように、毒性のある重金属である。
【0041】
本発明の方法で採用される燃焼温度では、バナジウムは通常V2O5酸化物の形態にあり、これは高融点の固体である。1,670Kより高い温度で、V2O5は揮発性のVO2に変化する。さらに、V2O5は、SO2からSO3への変化の触媒となる。SO3は硫酸を形成するため、特に腐食性のガスであり、熱回収プラントが操作される温度で、燃焼装置の下流のプラントの壁に沈着する。
【0042】
本発明の方法では、1,500K〜1,670Kの燃焼温度で操作することにより、燃焼ガス中のバナジウムの量を著しく低減ないし除去さえできることが、驚くべきことに見出された。
本発明の方法では、従来技術の燃焼装置では用いることができなかった低ランクの燃料の使用もそれゆえ可能である。
【0043】
さらに、ジュール-ブリトン(Joule-Bryton)サイクルを本発明の燃焼装置と結合させることが可能である。例えば1,000kPaに加圧し、続いて最終的な燃焼ガスの生成をターボ膨張させ、高温ガスを燃焼装置および混合冷却器へリサイクルする前に、高温ガスから回収された熱に対してランキン(Rankine)サイクルする。このようにして、熱エネルギーから電気エネルギーへの57%より高い変換効率が達成される。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下の実施例は、本発明を非限定的に説明するものである。
【実施例】
【0045】
実施例1
粉塵の特徴づけ
14リットル/分のサンプル流量、および空気動力学的直径が10〜9μm; 9〜5.8μm; 5.8〜4.7μm; 4.7〜3.3μm; 3.3〜2.1μm; 2.1〜1.1μm; 1.1〜0.7μm; 0.7〜0.4μmの範囲の粒度分布分画用フィルタを用いることによって空気動力学的直径が10μmより大きい粒子を除去し、PM 10を分離できるプレセパレータを備えたAndersen Mark III型インパクタにより、燃焼ガス中に含まれる微粒子を集める。
【0046】
サンプリング終了後に、集めた粒子画分を走査型電子顕微鏡法(SEM)およびX線解析による物理化学的分析に付した。
【0047】
エネルギー分散型分光法による微量分析のためのシン・ウィンドウEDXシステムを備えたSEM Philips XL30顕微鏡により、予め定められた閾値を超えたときに、粒子を自動的に検出できる自動システムを用いて粒子の化学的分析を行った。
【0048】
X線スペクトルの特性を示す線の強度を測定することにより特定された粒子のそれぞれについて形態学的パラメータとその構成を測定し、次いで対応する原子の濃度に換算した。
【0049】
Andersenインパクタの最終段階から抜け出す0.4μmより小さいサイズの微粒子を、十分でかつ統計的に有意な数の粒子を熱泳動効果によって集めることができる空気圧式アクチュエータを用いた原子間力顕微鏡による分析のために、マイカ(雲母)支持体上に集めた。インパクタから出てくるガスの流れを、次いで燃焼蒸気の凝縮システムに送る。凝縮相をナノメートル粒子(< 0.4μm)の濃度を測定するための分光分析に付した。
【0050】
金属の分析をThermo Electron CorporationのICP-OES装置による誘導プラズマ分光により行う。
燃料の灰をISO 1171試験により測定する。燃料を一定重量になるまで600℃で熱分解する。
灰の溶融温度をASTM D 1857-87試験により測定する。
【0051】
燃料の灰の低溶融画分を底に直径5mmの孔を有するるつぼを用いて測定する。燃料の灰のサンプルを1,450Kで加熱し、少なくとも2時間この温度で放置する。次いで、るつぼの底から流れ出る溶融画分の重量を測定する。上記の画分について、金属の測定を行う。
【0052】
実施例2
定温型でかつ無炎の5MWの燃焼装置を、1,650Kおよび5barの圧力で操作して、化学量論量に対して過剰の92容量%の燃焼用剤としての酸素を使用し、燃焼装置から出てくる燃焼ガス中の酸素濃度を1〜3容量%にする。使用済溶剤、水および総廃棄物重量の1.4重量%の固形不溶残渣の混合物からなる産業廃棄物を11kg/分の割合で供給する。
【0053】
廃棄物を分析したところ、不燃性の灰の量は1.04重量%であった。光学ICP分析(inductive coupled plasma:ICP-OES)により、灰は主にアルミナ、シリカおよびカルシウム(硫酸カルシウム)から形成されていることがわかった。この灰は、重金属をさらに含んでおり、それらのうち、ニッケル、マンガン、コバルト、クロム、銅、鉛の総重量濃度は、370重量ppmであった。
【0054】
不燃性の灰の溶融温度は、1,712Kであった。
以下の組成物の水性懸濁液を0.5リットル/分の割合で燃焼装置に供給する。
概ねAl2O3・4SiO2の組成を有し、1,590Kの溶融温度を有する粉末状の市販の10重量%のベントナイト。
1,363Kの溶融温度を有する市販のピロリン酸カリウム3重量%。
【0055】
光学ICP分析により、成分A)中、光学成分ベントナイト中および燃料中の金属を測定する。モル比、A'/(A"-A')が0.1であることが分かった。
燃焼装置の出口における燃焼ガス中の粉塵の総量は、0.02mg/Nm3であることが分かった。
【0056】
送気管のフィルタスリーブでの燃焼ガスの濾過後、大気中に放出された燃焼ガス中にPM 2.5は8μg/Nm3であることが分かった。上記の値が両方ともに極めて低いことは注目されるべきである。
大気中に排出された燃焼ガス中の重金属の定常化した濃度の値は、1μg/Nm3より低い。
【0057】
実施例3(比較)
ベントナイトおよびピロリン酸カリウムの水性懸濁液の添加を省略したことを除き、実施例2を繰り返す。
【0058】
大気中に排出された燃焼ガス中の微粒子PM 2.5は3mg/Nm3であり、重金属含量は0.15mg/Nm3であった。
【0059】
実施例4(比較)
大気圧で操作され、燃焼用剤として空気を用いる従来技術の加熱型6MW燃焼装置において、実施例2で用いられたのと同じ産業廃棄物を13kg/分の割合で供給する。燃焼装置の壁を1,150Kより高い温度に保つ。燃焼ガスは、燃焼室を1,310Kで出て行く。
【0060】
スリーブフィルタおよび静電フィルタを通して燃焼ガスを濾過した後、大気中に放出された燃焼ガスは、9mg/Nm3の量の粉塵を含む。PM 2.5は6mg/Nm3であり、重金属は0.44mg/Nm3である。
【0061】
本発明の実施例と比較実施例で得られたデータを比較すると、本発明の方法で大気中に放出される燃焼ガス中の粉塵は、従来技術の方法で得られたものより、はるかに低いことが分かる。PM 2.5は比較実施例より2〜3桁低く、重金属の含有量は2桁低い。
【0062】
それゆえ、本発明の方法によれば、従来技術と比べて放出される粉塵と重金属の低減において、顕著に改善される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料、燃焼用剤および成分A)が燃焼装置に供給される燃焼方法であって、
低溶融の塩および/または酸化物および/またはそれらの混合物を含み、1,450K以下の溶融温度を有し、
成分A)中に存在する低溶融の塩および/または酸化物および/またはそれらの混合物の形態にある金属の量と、燃料中に含まれる低溶融の塩および/または酸化物またはそれらの混合物の形態にある金属の量との合計モルをA'とし、
燃料中に含まれる全金属の量と成分A)中に含まれる全金属の量との合計をA"としたとき、モル比、A'/(A"-A')が0.01以上であり、
燃焼装置が定温型でかつ無炎である燃焼方法。
【請求項2】
モル比、A'/(A"-A')が少なくとも0.1、好ましくは少なくとも0.2である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
燃焼装置内の圧力が大気圧より高くて2,000kPaまでであり、その温度が1,500K(1,223℃)〜2,100K(1,827℃)の間に含まれる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
燃焼用剤が、燃料との燃焼反応のための化学量論量に対して過剰の酸素である、請求項1〜3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
燃焼装置の出口における燃焼ガスが1,100K以下の温度で冷却される、請求項1〜4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
A)に定義される1つ以上の化合物と1,450Kより高い溶融温度を有する塩および/または酸化物からなり、1,450K以下の溶融温度を有する混合物が、成分A)として用いられる、請求項1〜4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
成分A)が、燃料とは別に、または燃料と混合して燃焼装置に供給される、請求項1〜6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
燃料の燃焼装置内の滞留時間が0.5秒〜30分の範囲である、請求項1〜7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
供給される酸素が、リサイクルされる燃焼ガスと予め混合され、該燃焼ガスの量が10容量%より多い、請求項1〜8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
リサイクルされる燃焼ガスが、リサイクルされる燃焼ガスの全容量に対して計算して、10容量%より多い量の水蒸気の形態にある水を含む、請求項1〜9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
燃料が、重量%で表して80%までの量の水/水蒸気を含む、請求項1〜10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1つに記載の方法によって得られる燃焼ガス。
【請求項13】
放出される燃焼ガス中のPM2.5の濃度が50μg/Nm3より低い、請求項12に記載の燃焼ガス。

【公表番号】特表2011−505540(P2011−505540A)
【公表日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−536360(P2010−536360)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際出願番号】PCT/EP2008/010054
【国際公開番号】WO2009/071230
【国際公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(505394220)
【氏名又は名称原語表記】ITEA S.P.A.
【住所又は居所原語表記】Via Pollastri,6,I−40138 Bologna,ITALIA
【Fターム(参考)】