説明

燃焼煙中のカルボニル類含量が低減されたタバコ属植物及びその作製法

【課題】植物の燃焼煙中のカルボニル類含量が低減されたタバコ属植物の提供。
【解決手段】以下の(a)〜(c)に示すいずれかのタンパク質をコードする遺伝子の発現が抑制された、タバコ属植物:(a)特定のアミノ酸配列からなるタンパク質、(b)特定のアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ植物の燃焼煙中のカルボニル類含量を制御可能なタンパク質、(c)特定のアミノ酸配列に対して85%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ植物の燃焼煙中のカルボニル類含量を制御可能なタンパク質。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼煙中のカルボニル類含量が低減されたタバコ属植物及びその作製法に関する。
【背景技術】
【0002】
たばこ製品に対しては,その燃焼煙に含まれるカルボニル類を低減することが望まれている。たばこ製品の燃焼煙中に含まれるカルボニル類を低減する方法として、従来、吸着剤として活性炭を添加したフィルターを用いるのが一般的であり、このほかにも、種々の吸着剤の使用が試みられている。
【0003】
一方で、タールやニコチンに代表される主流煙中の成分のある部分は、喫煙の満足感や香喫味に直接関わる部分であり、これら成分の量を相対的に高いレベルに保ったまま、煙成分中のカルボニル類のみ選択的に除去することが望ましい。
【0004】
しかし、従来使用されている吸着剤は、カルボニル類だけでなく他の成分も吸着するため、たばこ製品の香喫味へ悪影響を及ぼす可能性があった。例えば、特許文献1〜7は、ホルムアルデヒドの吸着等を目的としてアミン系物質を添加したフィルターを開示する。しかし、これらは、煙成分中のカルボニル類を低減することができるが、タールやニコチンも同時に除去してしまう。また、添加したアミン系物質の分解のために特有のアミン臭を呈するなど、臭い、安全性、効果などに問題があり、実際にたばこ製品に利用するには実用的なものがなかった。更に特許文献7は、燃焼煙中のカルボニル類を低減する目的で燃焼改善剤としてアンモニウム含有化合物を添着したシガレット巻紙についても開示するが、上述したようにタールやニコチンを除去してしまうので、実用的でない。また、特許文献8は、タバコ煙中のアルデヒドを除去するためにグリシンの如き一定のアミノ酸の使用を開示する。グリシンはタバコ煙中のホルムアルデヒドのレベルを減らすことができるが、紙巻きタバコフィルター製造工程では安定していないことが知られている。さらに、それは貯蔵中にアンモニア臭を放出するため、たばこ製品に用いるには不適当であった。
【0005】
煙成分中のカルボニル類のみを選択的に除去する方法もいくつか提案されている。例えば、引用文献9はホルムアルデヒドを選択除去できるハイドロタルサイト類化合物を添加したフィルターを開示する。明細書において、チャコールフィルターが全有機蒸気(VOC)を無差別に低減することによりホルムアルデヒドの低減を実現するのに対し、ハイドロタルサイト類化合物添加フィルターは全有機蒸気の大きな低減無しにチャコールフィルターと同等のホルムアルデヒド低減を実現することが示されている。
【0006】
特許文献10は、特異な吸着特性をもつ結晶性ゼオライトを利用することにより選択性を高めていると考えられる。しかし、これを組み込んだフィルターはアクロレインを50%以上低減するなど、9種の成分を低減することが示されているが、その他成分への影響については明らかにされていない。特許文献11は、塩基性ポリペプチドを添加したフィルターが、活性炭やキトサンと異なり、ニコチンやタールを除去することなくホルムアルデヒドを市販品と比べて約15%低減することを開示する。
【0007】
以上のように、たばこ製品の燃焼煙中に含まれる低級アルデヒドを特異的に低減する方法として、幾種かの、特異的吸着剤を添加したフィルターの利用が有効であると考えられる。しかし、このようなフィルターの高機能化は、通気抵抗の増大を招き、正常な燃焼煙を得ることが難しくなるなど、実用には限界があった。
【0008】
そこで、フィルターとは別種の方法により、たばこ製品の燃焼煙中のカルボニル類を低減する方法が求められていた。燃焼煙中のカルボニル類含量の少ないタバコ植物の開発はその方法の一つとして考えられる。また、このようなタバコ植物をシガレット等の原料として用いれば、高機能フィルターの開発および製造にかかる負担を軽減できるため、製造コストの低減に繋がることが期待できる。
【0009】
【特許文献1】特開昭59−088078号公報
【特許文献2】特開昭59−151882号公報
【特許文献3】特開昭60−054669号公報
【特許文献4】特開平09−168736号公報
【特許文献5】特表2002−528105号公報
【特許文献6】特表2002−528106号公報
【特許文献7】特表2003−505618号公報
【特許文献8】米国特許第2968306号明細書
【特許文献9】国際公開第2003/056947号パンフレット
【特許文献10】米国特許出願公開第2005/0133047号明細書
【特許文献11】特開2006−34127号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、タバコ属植物の燃焼煙中のカルボニル類含量を制御可能な遺伝子を見出し、その遺伝子の発現を抑制することにより煙中のカルボニル類含量が低減されたタバコ属植物を作製し、提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、原料葉たばこの品質に影響を及ぼす遺伝子の同定を目的として、タバコ葉の成熟度合いが原料葉たばこの品質を大きく左右する点に着目し、土耕栽培した成熟期のタバコの葉において、あるいは、窒素施肥量を減じることによって擬似的に成熟を誘導した水耕栽培タバコの葉において、発現量が大きく変化する遺伝子を探索した。その結果、タバコ属植物の葉の成熟度合いを制御可能な遺伝子を同定することに成功し、この遺伝子の発現を抑制することにより、タバコ葉の成熟を促し、乾燥容易性を付与できるなど、原料葉たばこの品質を向上できることを見出し、また、驚くべきことに、該遺伝子の発現を抑制することにより、乾燥葉たばこの燃焼煙中のカルボニル類含量を低減できることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
本発明の特徴は、要約すると以下の通りである。
(1)以下の(a)〜(c)に示すいずれかのタンパク質をコードする遺伝子の発現が抑制された、タバコ属植物。
(a)配列番号6に示すアミノ酸配列からなるタンパク質
(b)配列番号6に示すアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ植物の燃焼煙中のカルボニル類含量を制御可能なタンパク質
(c)配列番号6に示すアミノ酸配列に対して85%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ植物の燃焼煙中のカルボニル類含量を制御可能なタンパク質
(2)前記遺伝子が、
(d)配列番号5に示す塩基配列からなるポリヌクレオチド、
(e)配列番号5に示す塩基配列に対して85%以上の同一性を有し、かつ植物の燃焼煙中のカルボニル類含量を制御可能なタンパク質をコードするポリヌクレオチド、
(f)配列番号5に示す塩基配列において1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなり、かつ植物の燃焼煙中のカルボニル類含量を制御可能なタンパク質をコードするポリヌクレオチド、または
(g)配列番号5に示す塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ植物の燃焼煙中のカルボニル類含量を制御可能なタンパク質をコードするポリヌクレオチド
を含む、(1)に記載のタバコ属植物。
(3)前記カルボニル類が、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、アクロレイン、プロピオンアルデヒド、クロトンアルデヒド、メチルエチルケトンおよびブチルアルデヒドからなる群から選択される、(1)または(2)に記載のタバコ属植物。
(4)前記カルボニル類が、ホルムアルデヒドまたはアクロレインである、(3)に記載のタバコ属植物。
(5)(1)〜(4)のいずれかに記載のタバコ属植物の組織または細胞。
(6)前記組織が葉である、(5)に記載の組織または細胞。
(7)配列番号5に示す塩基配列、配列番号7に示す塩基配列、それらの配列に対して90%以上の同一性を有する塩基配列、およびそれらの塩基配列の20塩基以上の部分配列からなる群から選択される塩基配列を含む、遺伝子発現抑制用ベクター。
(8)前記塩基配列の連続した20塩基以上からなる塩基配列をアンチセンス方向に含む、(7)に記載のベクター。
(9)前記塩基配列のセンス鎖および該センス鎖に対合するアンチセンス鎖を含む、(7)に記載のベクター。
(10)前記センス鎖およびアンチセンス鎖が、前記塩基配列の連続した20塩基以上からなる、(9)に記載のベクター。
(11)前記センス鎖とアンチセンス鎖の間にスペーサーを有する、(9)または(10)に記載のベクター。
(12)植物細胞内で作動可能なプロモーターを有する、(9)〜(11)のいずれかに記載のベクター。
【0013】
(13)タバコ属植物の細胞または組織を、RNA干渉法、アンチセンス法、遺伝子破壊法、人為的突然変異法、リボザイム法、共抑制法および転写因子を制御する方法から選択されるいずれかの方法を用いて、(1)および(2)に定義された(a)〜(g)のいずれかの遺伝子の発現を抑制し、植物体を再生することを含む、(1)〜(4)のいずれかに記載のタバコ属植物を作製する方法。
(14)(7)〜(12)のいずれかに記載のベクターを、植物細胞または組織に導入し、植物体を再生する、(13)に記載の方法。
(15)前記植物体を母本として後代を作出する、(14)に記載の方法。
(16)(1)〜(4)のいずれかに記載のタバコ属植物の後代であって、(1)または(2)に定義された(a)〜(g)のいずれかの遺伝子の発現が抑制されたことを特徴とする、後代。
(17)(1)〜(4)のいずれかに記載のタバコ属植物または(16)に記載の後代の葉から作製されたたばこ製品。
(18)タバコ属植物において、(1)または(2)に定義された(a)〜(g)のいずれかの遺伝子の発現を抑制することを含む、タバコ属植物の乾燥葉たばこの燃焼煙中のカルボニル類含量を低減する方法。
(19)前記遺伝子の発現の抑制を、RNA干渉法、アンチセンス法、遺伝子破壊法、人為的突然変異法、リボザイム法、共抑制法および転写因子を制御する方法からなる群から選択される方法によって行うことを含む、(18)に記載の方法。
(20)(7)〜(12)のいずれかに記載のベクターを植物細胞または組織に導入する、(18)または(19)に記載の方法。
【0014】
なお、本明細書において「植物の燃焼煙中のカルボニル類含量を制御可能なタンパク質」とは、タバコ属植物の組織、例えば乾燥された葉などを燃やした際に発生する燃焼煙中に含まれるカルボニル類の前駆物質となる、または、燃焼反応によるカルボニル類の生成を阻害する、植物の内容成分の生合成または分解に関与するタンパク質をいう。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、燃焼煙中のカルボニル類含量が低減されたことを特徴とするタバコ植物および乾燥葉たばこを提供することができる。
【0016】
また、通常、形質転換を行ったタバコ属植物は、形態的な影響、たとえば葉が矮小化する、葉の枚数が少なくなるなどの影響が見られ、収量が減少するが、本発明において見出された遺伝子の発現を抑制したタバコ属植物は、意外なことに形態的な影響が見られず、しかも形質転換していないタバコ属植物よりも早く成熟が進み、かつ乾燥が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
1.本発明のタバコ属植物
本発明の燃焼煙中のカルボニル類含量が低減されたタバコ属植物は、
(a)配列番号6に示すアミノ酸配列からなるタンパク質、
(b)配列番号6に示すアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ植物の燃焼煙中のカルボニル類含量を制御可能なタンパク質、または
(c)配列番号6に示すアミノ酸配列に対して85%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ植物の燃焼煙中のカルボニル類含量を制御可能なタンパク質
をコードする遺伝子の発現が抑制されるか、または
(d)配列番号5に示す塩基配列からなるポリヌクレオチド、
(e)配列番号5に示す塩基配列に対して85%以上の同一性を有し、かつ植物の燃焼煙中のカルボニル類含量を制御可能なタンパク質をコードするポリヌクレオチド、
(f)配列番号5に示す塩基配列において1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなり、かつ植物の燃焼煙中のカルボニル類含量を制御可能なタンパク質をコードするポリヌクレオチド、または
(g)配列番号5に示す塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ植物の燃焼煙中のカルボニル類含量を制御可能なタンパク質をコードするポリヌクレオチド
を含む遺伝子の発現が抑制されることを特徴とする。
【0018】
タバコ属植物の燃焼煙中のカルボニル類含量を制御可能な遺伝子は、配列番号5に示す塩基配列(全長cDNA配列)を有し、配列番号6に示すアミノ酸配列をコードする遺伝子である(以下、#10491遺伝子ということがある)。
【0019】
#10491遺伝子は、タバコ葉の成熟度合いが原料葉タバコの品質を大きく左右する点に着目し、タバコのDNAマイクロアレイを用いて、タバコ葉の成熟過程において発現量が大きく変化した遺伝子を調べた結果、選抜されたものである。
【0020】
#10491遺伝子のDNAは、当業者においては、一般的に公知の方法により単離することが可能である。例えば、ハイブリダイゼーション技術(Southern,EM.,J Mol Biol,1975,98,503.)やポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術(Saiki, RK.et al.,Science,1985,230,1350.、Saiki, RK.et al.,Science 1988,239,487.)を利用する方法が挙げられる。具体的には、配列番号1(タバコのDNAマイクロアレイ上に固定化されているプローブの配列)に記載の塩基配列からなるDNAもしくはその一部をプローブとして、また配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAに特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドをプライマーとして、タバコ属植物の異なる品種、またはタバコ属植物以外の植物から配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAと高い同一性(85%以上)を有するDNAを単離する。このように、ハイブリダイゼーション技術やPCR技術によって単離し得る、配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAとハイブリダイズするDNAもまた、本発明に適用される。
【0021】
ハイブリダイゼーション条件は、ハイブリダイズ可能であれば特に限定されないが、例えば、0.25M NaHPO、pH7.2、7%SDS、1mM EDTA、1×デンハルト溶液からなる緩衝液中で60℃、好ましくは65℃、さらに好ましくは68℃の条件下で16〜24時間ハイブリダイズさせ、さらに20mM NaHPO、pH7.2、1%SDS、1mM EDTAからなる緩衝液中で60℃、好ましくは65℃、さらに好ましくは68℃の条件下で15分間の洗浄を2回実施する条件が好ましい。
【0022】
また、#10491遺伝子の完全長cDNAクローンを取得する方法は、特に限定されず、当該遺伝子を有する生物のcDNAライブラリーなどから適切な制限酵素で切り出し、精製すればよい。ゲノムDNAは、例えば、植物細胞または組織からゲノムDNAを抽出し、ゲノミックライブラリー(ベクターとしては、プラスミド、ファージ、コスミド、BAC、PACなどが利用できる)を作製し、このライブラリーから、配列番号5に示す塩基配列を基に調製したプローブを用いてコロニーハイブリダイゼーションあるいはプラークハイブリダイゼーションを行うことにより取得することができる。
【0023】
また、一旦本発明の遺伝子の塩基配列が確定されると、その後は化学合成によって、または本遺伝子のcDNAないしゲノムDNAを鋳型としたPCRによって、あるいは該塩基配列を有するDNA断片をプローブとしてハイブリダイズさせることにより得ることができる。
【0024】
なお、配列番号5の塩基配列についてBLASTによる配列比較解析(Proc. Natl. Acad. Sei. USA,1990,87,2264−2268,Karlin,S.& Altschul,SF.,Proc.Natl.Acad.Sei.USA,1993,90,5873)を行ったところ、エチレン処理により誘導されるチトクロームP450遺伝子の一つと同一であることが分かった。これらチトクロームP450遺伝子の中には、ニコチンをノルニコチンへ変換するニコチン脱メチル化酵素をコードする遺伝子が含まれていたが、配列番号5の塩基配列についてその機能を推定させる実施例は示されておらず、また、その利用法についても開示されていない(参照文献:米国特許出願公開第2005/038018号、第2005/038033号、第2005/111217号、第2006/0037096号、第2006/0041949号)。
【0025】
また、タバコ以外の遺伝子では、米国特許第7071376号明細書に開示されるシロイヌナズナのp−coumarate 3−hydroxylase(C3H)をコードするCYP98A3遺伝子と塩基配列で約70%、アミノ酸配列で74%の同一性があることがわかった。しかし、前記明細書はリグニンについて述べており、リグニンと燃焼煙中のカルボニル類の関連性については何ら述べておらず、また当業者においてもリグニンと燃焼煙中のカルボニル類の関連性は知られていない。
【0026】
従って、#10491遺伝子が、燃焼煙中のカルボニル類含量を制御可能であることは新規の知見である。
【0027】
#10491遺伝子によりコードされるタンパク質は、配列番号6に示すアミノ酸配列を有するタンパク質であるが、本発明においては該タンパク質に限定されず、タバコ属植物の燃焼煙中のカルボニル類含量を制御可能なタンパク質である限り、配列番号6に示すアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列、あるいは配列番号6に示すアミノ酸配列に対して85%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質でもよい。
【0028】
ここで、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列とは、具体的には、配列番号6に示すアミノ酸配列の1〜10個、好ましくは1〜5個のアミノ酸が変異により欠失、または他のアミノ酸に置換、あるいは付加された配列をいう。変異は、人為的に導入された変異または天然に存在する変異でもよい。
【0029】
また、配列番号6に示すアミノ酸配列に対して85%以上の同一性を有するアミノ酸配列は、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、更に好ましくは98%以上、99%以上の同一性であることが望ましい。配列の同一性は、FASTA検索やBLAST検索により決定することができる。
【0030】
上記タンパク質をコードする遺伝子は、配列番号5に示す塩基配列からなるポリヌクレオチドであるがこれに限定されず、タバコ属植物の燃焼煙中のカルボニル類含量を制御可能なポリヌクレオチドである限り、配列番号5に示す塩基配列に対して85%以上の同一性を有するポリヌクレオチド、または配列番号5に示す塩基配列において1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなるポリヌクレオチド、あるいは配列番号5に示す塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドでもよい。
【0031】
ここで、1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列とは、具体的には、配列番号5に示す塩基配列の1〜10個、好ましくは1〜5個の塩基が変異により欠失、または他の塩基に置換、あるいは付加された配列をいう。変異は、人為的に導入された変異または天然に存在する変異でもよい。
【0032】
また、配列番号5に示す塩基配列に対して85%以上の同一性を有する塩基配列は、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、更に好ましくは98%以上、99%以上の同一性であることが望ましい。配列の同一性は、FASTAやBLASTなどの配列比較分析ツールにより決定することができる。なお、本明細書では、塩基配列の同一性の算出はデフォルトパラメータでBLAST解析を行うことにより算出される。
【0033】
また、ストリンジェントな条件は、例えば上記ハイブリダイゼーション条件を使用することができ、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが実質的に形成されない条件である。
【0034】
上記タンパク質をコードする遺伝子の発現の抑制には、該遺伝子の転写の抑制およびタンパク質への翻訳の抑制が含まれ、遺伝子の発現の完全な停止のみならず発現の減少も含まれる。遺伝子が人為的または天然に変異、破壊されたり、あるいは各種遺伝子工学的手法、例えばRNA干渉法、アンチセンス法、リボザイム法、共抑制法、転写因子を制御する方法などを用いることにより、発現不能または抑制される。
【0035】
本発明のタバコ属植物は、植物、特に乾燥された葉を燃やした際に発生する燃焼煙の中に含まれるカルボニル類の含量が低減することを特徴とする。
【0036】
乾燥葉たばこの燃焼煙中には多種多様な成分が存在することが知られている(Green CR.et al.,1996,Recent Adv. Tobacco Sci.22:131−304)。よって、これら燃焼煙中の成分は複雑に関係しあい、喫煙の満足感や香喫味に繋がると考えられる。つまり、燃焼煙中の成分のバランスを大きく変化させると喫煙の満足感や香喫味を損なう可能性がある。したがって、燃焼煙中に含まれる特定の成分の低減は選択性の高い方法で実施することが望ましい。本発明では、たった1遺伝子(#10491遺伝子)の発現を抑制することにより乾燥葉たばこの燃焼煙中に含まれるカルボニル類を低減できた。乾燥葉たばこの燃焼煙中に含まれるカルボニル類は、具体的には、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、アクロレイン、プロピオンアルデヒド、クロトンアルデヒド、メチルエチルケトン、ブチルアルデヒドなどである。
【0037】
一般に、たばこの燃焼煙中の成分の測定は、刻んだ乾燥葉たばこを巻紙で巻いたものをISO準拠の喫煙条件で自動喫煙させた煙を捕集して行う。一方、より簡便に、より少量のサンプルから、燃焼煙中の成分を捕集および測定する方法として、熱分解による方法が報告されている(Trikai K.et al.,2004,Food Chem Toxicol.;42:1409−17.)(Trikai K.et al.,2005,Food Chem Toxicol.;43:559−68.)。本発明では、この熱分解法により燃焼煙中のカルボニル類を測定したがこれに限るものでない。
【0038】
なお、本発明には、本発明のタバコ属植物の組織または細胞(例えば根、茎、葉、花、種子、胚、胚珠、子房、茎頂、約、花粉、カルス、プロトプラスト、懸濁培養細胞など)も包含される。
【0039】
2.遺伝子発現抑制用ベクター
本発明の遺伝子発現抑制用ベクターは、
(a)配列番号6に示すアミノ酸配列からなるタンパク質、
(b)配列番号6に示すアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ植物の燃焼煙中のカルボニル類含量を制御可能なタンパク質、または
(c)配列番号6に示すアミノ酸配列に対して85%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ植物の燃焼煙中のカルボニル類含量を制御可能なタンパク質、
をコードする遺伝子、あるいは
(d)配列番号5に示す塩基配列からなるポリヌクレオチド、
(e)配列番号5に示す塩基配列に対して85%以上の同一性を有し、かつ植物の燃焼煙中のカルボニル類含量を制御可能なタンパク質をコードするポリヌクレオチド、
(f)配列番号5に示す塩基配列において1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなり、かつ植物の燃焼煙中のカルボニル類含量を制御可能なタンパク質をコードするポリヌクレオチド、または
(g)配列番号5に示す塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ植物の燃焼煙中のカルボニル類含量を制御可能なタンパク質をコードするポリヌクレオチド
の発現を抑制するための核酸分子を適当なベクターに挿入したものである。
【0040】
本発明のベクターは、例えば、配列番号5に示す塩基配列、配列番号7に示す塩基配列、それらの配列に対して90%以上の同一性を有する塩基配列、およびそれらの塩基配列の20塩基以上の部分配列からなる群から選択される塩基配列を含む。このようなベクターとして、アンチセンスベクターまたはRNA干渉誘導ベクターなどがある。
【0041】
アンチセンスベクターとは、アンチセンス法にて#10491遺伝子、その変異体または相同体の発現を抑制する核酸分子を含むベクターをいう。相同体とは、#10491遺伝子に対応する遺伝子であって、タバコ属植物品種間で、またはタバコ属植物以外の植物で、異なる塩基配列を有する遺伝子をいう。
【0042】
アンチセンス法とは、目的遺伝子から転写されたmRNAと相補的なアンチセンスRNAを発現させて、該アンチセンスRNAを目的遺伝子と相補的に結合させ、目的遺伝子の転写を妨げ、その結果として該遺伝子の発現を抑制する方法をいう。具体的には、植物で機能するプロモーターの下流に、#10491遺伝子、その変異体または相同体、あるいはそれらの断片をアンチセンス方向につないで植物細胞または組織に導入すると、上記mRNAと相補的なアンチセンスRNAを産生することができる。
【0043】
アンチセンスベクターに導入する#10491遺伝子、その変異体または相同体の発現を抑制する核酸分子は、例えば、#10491遺伝子の塩基配列(配列番号5)の全長のアンチセンス核酸分子であってもよいが、配列番号5に示す塩基配列に対して90%以上、より好ましくは95%以上、更に好ましくは98%以上、99%以上の同一性を有する配列のアンチセンス核酸分子でもよく、これらの核酸分子の塩基配列中の連続した20塩基以上から全長未満、好ましくは100塩基以上から全長未満、より好ましくは500塩基以上から全長未満からなる塩基配列を有するアンチセンス核酸分子でもよい。通常用いられるアンチセンスDNAの長さは5kbよりも短く、好ましくは2.5kbよりも短い(参考文献:特開昭60−232092、特開2000−23685)。
【0044】
RNA干渉誘導ベクターは、RNA干渉のトリガーとなるdsRNA(2本鎖RNA、double−strand RNA)の鋳型となるDNAを含むベクターである。該ベクターを用いて細胞内で形成されたdsRNAは、2本鎖RNA特異的なRNase(Dicer)により約21〜25塩基のsiRNA(small interfering RNA)に切断され、その後、RISC(RNA−induced silencing complex)の一部として複合体を形成し、標的mRNAを相同性により認識・分解する。
【0045】
植物のRNA干渉では、ヘアピン型dsRNAとして発現するベクターが好適に利用される。これは十数〜数十塩基または数十〜数百塩基のリンカー(スペーサー)配列の両端にIR(inverted repeat:逆位反復)となるようにRNA干渉のトリガーとなる配列を配置し、植物体内で高発現するプロモーターによりヘアピン型dsRNAを転写し、細胞内でsiRNAを産生するシステムである。また、siRNA発現システムには上記のようなヘアピンタイプのほか、タンデムタイプもある。タンデムタイプでは、2つのプロモーターからセンスRNAとアンチセンスRNAが転写され、細胞内でハイブリダイズしてsiRNAが産生される。RNA干渉のトリガーの鋳型となるDNAの配列は、例えば、配列番号7の塩基配列または該配列に対して90%以上、より好ましくは95%以上、更に好ましくは98%以上、99%以上の同一性を有する配列の連続した20塩基以上、好ましくは100塩基以上、さらに好ましくは200塩基以上を含む塩基配列およびその相補配列が用いられる(参考文献:WO/1999/053050、WO1999/32619A、WO2001/75164A、Chuang CF & Meyerowitz EM: Proc Natl Acad Sci USA 97:4985,2000)。
【0046】
本発明において用いるRNA干渉誘導ベクターとしては、配列番号7に示す塩基配列のセンス鎖とそのセンス鎖に相補的なアンチセンス鎖を、スペーサー(ループを形成する配列)をはさんでIR(inverted repeat:逆位反復)となるように同一のベクターに含むものが好ましい。
【0047】
ここで、ベクターとしては、アグロバクテリウムを介して植物に目的遺伝子を導入することができる、pBI系、pPZP系、pSMA系のベクターなどが好適に用いられる。特に、バイナリーベクター系(pBI121、pBI101、pBI221、pBI2113、pBI101.2等)、または中間ベクター系(pLGV23Neo、pNCAT等)のプラスミドが好ましい。バイナリーベクターはT−DNA領域の右側ボーダー(RB)と左側ボーダー(LB)を含み、両ボーダー間に目的遺伝子とともにプロモーターや植物選抜マーカーなどのエレメントを含むことができ、通常、大腸菌(Escherichia coli)およびアグロバクテリウムにおいて複製可能なシャトルベクターで、バイナリーベクターを保持するアグロバクテリムを植物に感染させると、ベクター上にあるLB配列とRB配列より成るボーダー配列で囲まれた部分のDNAを植物核DNAに組み込むことが可能である(EMBO Journal,10(3),697−704(1991))。一方、pUC系のベクターは、植物に遺伝子を直接導入することができ、例えば、pUC18、pUC19、pUC9等が挙げられる。また、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)、インゲンマメモザイクウイルス(BGMV)、タバコモザイクウイルス(TMV)等の植物ウイルスベクターも用いることができる。
【0048】
バイナリーベクター系プラスミドを用いる場合、上記のバイナリーベクターの境界配列(LB、RB)間に、目的遺伝子を挿入し、この組換えベクターを大腸菌中で増幅する。次いで、増幅した組換えベクターをアグロバクテリウム・ツメファシエンスC58、LBA4404、EHA101、EHA105等に、凍結融解法、エレクトロポレーション法等の方法を用いて導入し、該アグロバクテリウムを植物の形質転換に用いる。
【0049】
また、上記の方法以外にも、三者接合法(Nucleic Acids Research, 12:8711(1984))によって、目的遺伝子を含む植物感染用アグロバクテリウムを調製することができる。すなわち、目的遺伝子を含むプラスミドを保有する大腸菌、ヘルパープラスミド(例えば、pRK2013等)を保有する大腸菌、およびアグロバクテリウムを混合培養し、リファンピシリンおよびカナマイシンを含む培地上で培養することにより植物感染用の接合体アグロバクテリウムを得ることができる。
【0050】
ベクターに目的遺伝子を挿入するには、まず、精製されたDNAを適当な制限酵素で切断し、適当なベクターDNAの制限酵素部位またはマルチクローニングサイトに挿入してベクターに連結する方法などが採用される。
【0051】
また、ベクターには、目的遺伝子のほかに、例えばプロモーター、ターミネーター、ポリA付加シグナル、選抜マーカー遺伝子などを配置することができる。
【0052】
プロモーターとしては、植物体内または植物細胞において機能し、植物の特定の組織内あるいは特定の発育段階において発現を導くことのできるDNAであれば、植物由来のものでなくてもよい。具体例としては、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35Sプロモーター、ノパリン合成酵素遺伝子のプロモーター(Pnos)、トウモロコシ由来ユビキチンプロモーター、イネ由来のアクチンプロモーター、タバコ由来PRタンパク質プロモーター等が挙げられる。
【0053】
ターミネーターとしては、植物体内または植物細胞において機能し、プロモーターにより転写された遺伝子の転写を終結できる配列であればよく、例えば、ノパリン合成酵素(NOS)遺伝子のターミネーター、オクトピン合成酵素(OCS)遺伝子のターミネーター、CaMV 35S ターミネーター等が挙げられる。
【0054】
選抜マーカー遺伝子としては、例えば、薬剤耐性遺伝子(テトラサイクリン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、スペクチノマイシン耐性遺伝子、クロラムフェニコール耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子など)、蛍光または発光レポーター遺伝子(ルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、β−グルクロニターゼ(GUS)、グリーンフルオレッセンスプロテイン(GFP)など)、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼII(NPT II)、ジヒドロ葉酸レダクターゼなどの酵素遺伝子が挙げられる。
【0055】
また、選抜マーカー遺伝子は、上記のように目的遺伝子とともに同一のプラスミドに連結させて組換えベクターを調製してもよいが、あるいは、選抜マーカー遺伝子をプラスミドに連結して得られる組換えベクターと、目的遺伝子をプラスミドに連結して得られる組換えベクターとを別々に調製してもよい。別々に調製した場合は、各ベクターを宿主にコトランスフェクト(共導入)する。
【0056】
本発明で使用可能なバイナリーベクターの構築例は、後述の実施例2に示されている。即ち、2個のloxPを含むプラスミドpDNR−1(CLONTECH社)のloxP間に35Sプロモーター、スペーサー、NOSターミネーターを挿入したプラスミドpSP148(図2)を作製し、NOSターミネーターとスペーサーの間およびスペーサーと35Sプロモーターの間にRNAiのトリガーとなる2種の目的DNA断片を互いに逆向きに配置するようにトリガーを挿入し(図3、プラスミドpSP148_#10491FR)、このヘアピン型dsRNA発現カセットを、Cre−lox組換え(米国特許第6,410,317号)によって、プラスミドpSP107(図4)に組み換えて、バイナリーベクターpSP107_#10491(図5)を作製することができる。
【0057】
2個のトリガーは、互いに向き合う方向でもよいし、あるいは互いに背を向け合う方向でもよい。またスペーサーの配列は、ヘアピンループを形成する配列であればいかなるものでもよいが、例えばras遺伝子配列、イントロン配列を例示することができ、そのサイズは例えば数十〜数百ベース程度である。
【0058】
3.本発明のタバコ属植物の作製方法
本発明のタバコ属植物の作製方法は、タバコ属植物の細胞または組織を、RNA干渉法、アンチセンス法、遺伝子破壊法、人為的突然変異法、リボザイム法、共抑制法および転写因子を制御する方法から選択されるいずれかの方法を用いて、上記(a)〜(c)のタンパク質をコードする遺伝子および(d)〜(g)のいずれかの遺伝子の発現を抑制し、植物体を再生することを含む。
【0059】
タバコ属植物は、例えば、ニコチアナ・トメントシフォルミス(Nicotiana tomentosiformis)、ニコチアナ・シルベストリス(Nicotiana sylvestris)、ニコチアナ・ルスティカ(Nicotiana rustica)、ニコチアナ・タバカム(Nicotiana tabacum)、ニコチアナ・プルムバギニフォリア(Nicotiana plumbaginifolia)、ハナタバコ(Nicotiana x sanderae)などが挙げられ、特に限定されないが、ニコチアナ・タバカムが好ましい。また品種については、紙巻製品の主原料となる黄色種、紙巻製品の緩和料となるバーレー種、葉巻たばこの原料に用いられる葉巻種、オリエント地域で栽培され独自の香気を持つオリエント種、たばこ種子が日本に伝来して以来、各地の気候風土に適応し分化した在来種を含む。
【0060】
また本発明のタバコ属植物を作製するための植物材料としては、植物体および植物組織(例えば根、茎、葉、種子、胚、胚珠、子房、茎頂、葯、花粉等)やその切片、細胞、カルス、それを酵素処置して細胞壁を除いたプロプラスト、懸濁培養細胞等の植物培養細胞が挙げられる。
【0061】
上記遺伝子の発現を抑制するには、種々の遺伝子工学的手法を用いることができ、特に限定されないが、たとえばRNA干渉法、アンチセンス法、遺伝子破壊法、人為的突然変異法、リボザイム法、共抑制法または転写因子を制御する方法を挙げることができる。
【0062】
RNA干渉法は、上記RNA干渉誘導ベクター、または、例えば配列番号5若しくは7に示されるポリヌクレオチドあるいは配列番号5または7と90%以上同一性を有するポリヌクレオチドに相同な2本鎖RNA(その中の連続した例えば約15〜35塩基の2本鎖RNAが好ましい)を植物細胞または組織に導入して行うことができる。
【0063】
また、アンチセンス法は、例えば上記アンチセンスベクターを植物細胞または組織に導入することにより、行うことができる。
【0064】
これらのベクターを導入するには、例えばアグロバクテリウム法、エレクトロポレーション法、パーティクルガン法、PEG−リン酸カルシウム法、リポソーム法、マイクロインジェクション法が挙げられ、特に限定されないが、アグロバクテリウム法が好ましい。アグロバクテリウム法を用いる場合は、プロトプラストを用いる場合、培養細胞を用いる場合、組織片(葉片、カルスなど)を用いる場合がある。
【0065】
プロトプラストを用いる場合は、Tiプラスミドをもつアグロバクテリウムと共存培養する方法、スフェロプラスト化したアグロバクテリウムと融合する方法(スフェロプラスト法)、培養細胞を用いる場合は、Tiプラスミドをもつアグロバクテリウムと共存培養する方法、組織片を用いる場合は、対象植物の無菌培養葉片(リーフディスク)に感染させる方法やカルスに感染させる等により行うことができる。
【0066】
遺伝子が植物体に組み込まれたか否かの確認は、PCR法、サザンハイブリダイゼーション法、ノーザンハイブリダイゼーション法、ウェスタンブロッティング法等により行うことができる。例えば、形質転換植物体からDNAを調製し、DNA特異的プライマーを設計してPCRを行う。PCRを行った後は、増幅産物について電気泳動を行い、臭化エチジウム、SYBR Green液等により染色し、そして増幅産物を1本のバンドとして検出し、形質転換されたことを確認することができる。また、予め蛍光色素等により標識したプライマーを用いてPCRを行い、増幅産物を検出することもできる。さらに、マイクロプレート等の固相に増幅産物を結合させ、蛍光または酵素反応等により増幅産物を確認したり、リアルタイムPCRで比較Ct法を用いて増幅率に基づいたDNAの定量を行ってもよい。
【0067】
あるいは、上述の種々のレポーター遺伝子を目的遺伝子の下流域に連結したベクターを作製し、該ベクター導入したアグロバクテリムを用いて上記と同様にして植物を形質転換させ、該レポーター遺伝子の発現を測定することにより確認してもよい。
【0068】
遺伝子破壊法は、各種トランスポゾン、T−DNAなどを用いて行うことができる。
【0069】
トランスポゾンを利用した遺伝子破壊はトランスポゾンのゲノムへの遺伝子挿入機構を利用した方法である。特に、内在性のトランスポゾンを用いる方法は、非組換え体として、一度に多数の遺伝子破壊系統を作出することができる点で優れている。このような内在性の挿入因子として、タバコ属植物ではトランスポゾンの一種であるレトロトランスポゾンTto1が知られている(WO00/071699)。
【0070】
T−DNAを利用した遺伝子破壊は、標的遺伝子の中に薬剤耐性遺伝子などの外来遺伝子を組込み、これを右ボーダー(RB)と左ボーダー(LB)の間に挿入したT−DNAベクターを作製し、アグロバクテリウム法にてタバコ属植物を形質転換する方法である。
【0071】
人為的突然変異法は、例えば、各種放射線(電磁波、紫外線、X線、γ線、粒子線、中性子線、α線、β線など)を植物に照射することにより、また各種変異原性化学物質(アルキル化剤、核酸塩基アナログ、アジ化ナトリウムなど)で処理することにより、行うことができる。
【0072】
共抑制法とは、植物に標的内在性遺伝子と同一もしくは類似した配列を有する遺伝子を形質転換により導入すると、導入した外来遺伝子および標的内在性遺伝子の発現がいずれも抑制される現象のことを指す(Smyth DR:Curr Biol 7:R793,1997,Martienssen R:Curr Biol 6:810,1996)。共抑制の機構の詳細は明らかではないが、少なくともその機構の一部はRNAiの機構と重複していると考えられている。例えば、#10491遺伝子が共抑制された植物体を得るためには、#10491遺伝子、または、これらと類似した配列を有するDNAを発現できるように作製したベクターを使用して目的の植物を形質転換すればよい。共抑制に用いる遺伝子は、標的遺伝子と完全に同一である必要はないが、少なくとも70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の配列の同一性を有する。また、配列の同一性は上述した手法により決定できる。
【0073】
リボザイム法で用いるリボザイムとは触媒活性を有するRNA分子の総称であるが、特に本明細書ではRNAを部位特異的に切断するよう設計されたRNA分子のことを指す。リボザイムには、グループIイントロン型やRNase Pに含まれるM1RNAのように400ヌクレオチド以上の大きさのものもあるが、ハンマーヘッド型やヘアピン型と呼ばれる40ヌクレオチド程度の活性ドメインを有するものもある(小泉誠および大塚栄子:蛋白質核酸酵素、35:2191,1990)。標的を切断できるように設計されたリボザイム は、植物細胞中で転写されるように、カリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモーターなどのプロモーターおよび転写終結配列に連結される。このとき、転写されたRNAの5’端や3’端に余分な配列が付加されていると、リボザイムの活性が失われることがあるが、こういった場合は、転写されたリボザイムを含むRNAからリボザイム部分だけを正確に切り出すために、リボザイム部分の5’側や3’側にシスに働く別のトリミングリボザイムを配置させることも可能である(Taira K, et al: Protein Eng 3: 733, 1990、Dzianott AM &Bujarski JJ: Proc Natl Acad Sci USA 86: 4823, 1989、Grosshans CA & CechTR: Nucl Acids Res 19: 3875, 1991、Taira K, et al: Nucl Acids Res 19:5125,1991)。また、このような構成単位をタンデムに並べ、標的遺伝子内の複数の部位を切断できるようにすることで、より効果を高めることもできる(Yuyama N, et al: Biochem Biophys Res Commun 186: 1271, 1992)。このように、リボザイム を用いて本発明における標的遺伝子の転写産物を特異的に切断することで、該遺伝子の発現を抑制することができる。
【0074】
転写因子を制御する方法は、標的遺伝子の発現を調節する転写因子の発現を増減させることにより、間接的に標的遺伝子の発現を増減させる方法である。転写因子は標的遺伝子のプロモーター領域の特定配列(シスエレメント)に結合することにより、当該遺伝子の発現をコントロールする。例えば、転写因子を発現させることによって、代謝遺伝子の遺伝子発現を抑制することが可能である(Plant Molecular Biology 2006 62:809−823)。
【0075】
上記遺伝子工学的手法において植物組織または細胞を材料とした場合は、得られた植物組織または細胞から既知の組織培養法により器官または個体を再生させればよい。このような操作は、植物細胞から植物体への再生方法として一般的に知られている方法により、当業者であれば容易に行うことができる。植物細胞から植物体への再生については、例えば、以下のように行うことができる。
【0076】
まず、形質転換の対象とする植物材料として植物組織またはプロトプラストを用いた場合、これらを無機要素、ビタミン、炭素源、エネルギー源としての糖類、植物生長調節物質(オーキシン、サイトカイニン等の植物ホルモン)等を加えて滅菌したカルス形成用培地中で培養し、不定形に増殖する脱分化したカルスを形成させる(以下「カルス誘導」という)。このように形成されたカルスをオーキシン等の植物生長調節物質を含む新しい培地に移しかえて更に増殖(継代培養)させる。
【0077】
カルス誘導は寒天等の固型培地で行い、継代培養は例えば液体培養で行うと、それぞれの培養を効率良くかつ大量に行うことができる。次に、上記の継代培養により増殖したカルスを適当な条件下で培養することにより器官の再分化を誘導し(以下、「再分化誘導」という)、最終的に完全な植物体を再生させる。再分化誘導は、培地におけるオーキシンやサイトカイニン等の植物生長調節物質、炭素源等の各種成分の種類や量、光、温度等を適切に設定することにより行うことができる。かかる再分化誘導により、不定胚、不定根、不定芽、不定茎葉等が形成され、更に完全な植物体へと育成させる。
【0078】
なお、本発明の方法により作製されたタバコ属植物は、形質転換処理を施した再分化当代である「T0世代」のほか、T0世代の植物を母本として、その植物の種子から得られた後代である「T1世代」、薬剤選抜あるいはサザン法等による解析によりトランスジェニックであることが判明した「T1世代」植物の花を自家受粉して得られる次世代(T2世代)などの後代植物をも含むものとする。
【0079】
これらのタバコ属植物、またはその葉をたばこ製品の原料として、シガレット、葉巻、パイプたばこなどの各種たばこ製品を製造することができる。
【0080】
たばこ製品の原料となる乾燥葉たばこの品質は、栽培中のタバコ葉の成熟度に大きく左右される。芯止めから収穫までの数十日間において肥料は枯渇し、タバコ葉は、乾物重の増大とともに、次第に成熟すると考えられている。この期間にタバコ葉の内容成分は、アルカロイド含量の増大、クロロフィルの分解など、大きく変化する。つまり、乾燥葉たばこの香喫味に関連する成分は成熟期の劇的な代謝の変動に伴い生成蓄積される。したがって、乾燥葉たばこの品質はタバコ葉の成熟に関連して発現する遺伝子によりコントロールできると考えられる。
【0081】
品質の高い乾燥葉たばこは、適度に成熟したタバコ葉を適切に乾燥処理することによってのみ、生産することが可能である。例えば、品質の良好な黄色種タバコの乾燥葉は鮮黄色に仕上がり、芳香があり、緩和で甘みのある香喫味を特徴とする。色調は乾燥葉の品質を判断する上での重要な要素であり、黄色種タバコでは、レモン、オレンジなどの鮮やかな色調のものが品質良好で、まだらや緑がかったものは品質が悪いとされている(Official Standard Grades for Flue−Cured Tobacco U.S. Types 11,12,13,14,&Foreign Type 92,United States Department of Agriculture)。また、乾燥葉たばこの品質は乾燥処理によっても大きく左右される。葉たばこの乾燥処理は、単に葉の乾燥を目的としているわけでなく、葉中の成分を変化させ、葉たばこ特有の色と香喫味を発現させる、葉たばこ生産上の極めて重要な工程である。また、特に温湿度や葉の吊り込み密度など乾燥処理における管理に問題があると、乾燥葉たばこは、例えば急乾葉、ムレ葉、帯青葉などの乾燥異常葉となり、原料葉たばことしての商品価値を大きく損なうことになる。こうした乾燥処理における異常葉の出現や乾燥処理の容易さは、上記成熟度合いの他に、品種や土壌環境にも左右される。例えば、遺伝形質としての“乾燥容易性”は品種の育成にも利用されている。
【0082】
本発明の#10491遺伝子の発現を抑制したトランスジェニックタバコ(#10491タバコ)は、その葉を乾燥させたところ、ベクターコントロールを導入した対照タバコで認められた褐変がほとんどなく、黄色の鮮やかな色調を有し、良好な品質の原料となりうる。また、本発明の#10491タバコは、対照タバコと比較して成熟が早いという特長も認められた。
【0083】
なお、上記葉たばこ生産に関することがらは、当業者にとって周知のことであり、DAVIS DL. et al.,Tobacco:Production,Chemistry and Technology(1999)(Blackwell Publishing),Collins WK.et al.,Principles of Flue−Cured Tobacco Production(1st Edition,1993)(North Carolina State University),河田,葉たばこの耕作法(1991)(日本たばこ産業)などの成書にも記されている。
【0084】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0085】
[成熟期において発現量が大きく変化する遺伝子(#10491遺伝子)の同定]
本発明者らは、原料葉たばこの品質に影響を及ぼす遺伝子の同定を目的として、タバコ葉の成熟度合いが原料葉たばこの品質を大きく左右する点に着目し,土耕栽培した成熟期のタバコの葉において、あるいは、窒素施肥量を減じることによって擬似的に成熟を誘導した水耕栽培タバコの葉において、発現量が大きく変化する遺伝子を探索した。その結果、タバコ葉の成熟時に特異的に発現が上昇する遺伝子の一つとして#10491遺伝子を同定した。
【0086】
(1)タバコの栽培および葉からのRNAサンプル抽出
土耕栽培タバコ(つくば1号)は、播種後6週目に4号素焼き鉢(テラコッタ; 径124mm, 高さ110mm)に移植して、人工気象器(コイトトロン:小糸工業株式会社製)に入れて育成した。鉢用肥土は土:堆肥:赤玉土(大)、赤玉土(小):バーミキュライト=3:4:1:1:1の組成の肥土100リットル当たりバーレーS625(肥料)1kgを混合したものを使用した。人工気象器は,明期:6:30−18:30、温度26℃、湿度60%(RH)、暗期:18:30−6:30、温度18℃、湿度80%(RH)に設定した。土が乾かないように1日1回程度潅水し、水量は生育にあわせて適宜調整した。移植に合わせて苗の地上部を全て採取し、移植0日目の試料とした(N=8)。さらに,移植後14、28、45、52日目の午前9:00に,下から11枚目の葉を採集した。(14日目 N=36、28−52日目 N=6、45日目 N=9)。
【0087】
また、水耕栽培タバコ(つくば1号)は、発芽28日目にハイドロボール(小粒)を充填したポリポット(丸型、12.0cm、9.8cm、底穴1箇所)へ移植し、15mM KNOを含む水耕液(2.5mM Kpi:pH5.5、2mM MgSO、2mM CaCl、50μM Fe−EDTA、70μM HBO、14μM MnCl、0.5μM CuSO、1μM ZnSO、0.2μM NaMoO、10μM NaCl、0.01μM CoCl)を底面潅水して、土耕栽培タバコと同様に人工気象器の中で育成した。減少した水耕液は適宜補充して量を維持した。水耕開始7日目(発芽35日目)に一部の植物は0.3mM KNOを含む水耕液へ移して成熟を誘導した。一方、そのまま15mM KNOを含む水耕液で栽培した植物は対照とした。これら植物から、水耕開始7日目以降の数日間にわたって、午前9時に下から7枚目の葉を採取した。
【0088】
採集した葉は、液体窒素で凍らせた後に磨砕してRNA抽出用のサンプルとした。なお、移植時の苗は地上部全体をサンプルとして用いた。Total RNAはConcert Plant RNA reagent(Invitrogene社)を用いて(メーカー記載の操作方法を実施)、約4gの試料から精製した。さらに、poly(A)RNAはTotal RNA 1,000μgからオリゴdT−セルロースアフィニティーカラム法(GenElute mRNA miniprep kit, Sigma社)を用いて精製した(メーカー記載の操作方法を実施)。
【0089】
(2)cDNAマイクロアレイ解析
上記のようにして得たpoly(A) RNAは理化学研究所のタバコ培養細胞由来の約17000種のESTを搭載したBY−2 ESTマイクロアレイを用いて解析した。理化学研究所のBY−2−ESTマイクロアレイに関する詳細はMatsuokaら(2004,A comprehensive gene expression analysis toward the understanding of growth and differentiation of tobacco BY−2 cells. Plant Cell Physiol.;45:1280−9)およびGalisら(2006,A novel R2R3 MYB transcription factor NtMYBJS1 is a methyl jasmonate−dependent regulator of phenylpropanoid−conjugate biosynthesis in tobacco. Plant J.,46:573−92.)の報告およびNCBI(National Center for Biotechnology Information)のGEO(Gene Expression Omnibus)のホームページにて公開されている。
(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/geo/query/acc.cgi?acc=GPL4706)
(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/geo/query/acc.cgi?acc=GPL4707)
(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/geo/query/acc.cgi?acc=GPL4708)
(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/geo/query/acc.cgi?acc=GPL4709)
【0090】
各試料から精製したpoly(A) RNAとマイクロアレイ解析の処理手順や直線性や感度、精度を確認するためのインターナルコントロールとしてカナマイシン耐性遺伝子のcRNAを添加した核酸を鋳型にして、Anchored dT25プライマー(GE Healthcare社)、Random 9mersプライマー(GE Healthcare社)の混合プライマーとSuperScript III逆転写酵素を用いて(Invitrogen社)一本鎖cDNAプローブを合成し、同時に蛍光色素Cy5(GE Healthcare社)で標識した核酸をcDNAプローブ中に取り込ませた。cDNAプローブとオリゴA80、Cy3標識ベクター、ExpressHybTM Hybridization Solution(Clontech社)を混合してプローブ溶液とした。プローブのハイブリダイゼーションとスキャンニングは前述の松岡らの方法に従った。データは、Gene Spring(Silicon Genetics社)によって解析した。マイクロアレイ解析の結果、タバコ葉の成熟時に特異的に発現が上昇する遺伝子の一つとして、発現タグ(EST)である10491f1配列(配列番号1)(GenBank GI:52829527)と相同である遺伝子を見いだした。
【0091】
(3)#10491遺伝子の全長cDNA配列の単離
上記のようにして明らかにしたBY−2 ESTの10491f配列(配列番号1)に相当する完全長cDNAは、出願人保有のcDNAライブラリーから相同性検索により得ることができた。出願人保有のcDNAライブラリーとは、タバコ(品種つくば1号)の完全長cDNAクローンを個別に単離し、末端配列情報とともに整理したものである。この様にして得た3種のクローン(No.0015_2_E03、No.0052_2_F08、No.0077_1_F07)をLB(50mg/Lアンピシリンを含む)液体培地中で終夜培養し、シークエンス解析の鋳型とするために、各クローンに含まれるプラスミドDNAをQIAprep Spin Miniprep Kit (QIAGEN社)を用いて精製した。#10491遺伝子の未解読領域のシークエンス解析のためのプライマーは、PrimerExpressソフトウェア(Applied Biosystems社)を用いて上記3種のクローンのcDNA末端配列情報に基づき設計した配列番号2〜4、およびM13 Primer M4(タカラバイオ社)、M13 Primer RV(タカラバイオ社)を用いた。シークエンス解析は,BigDye(登録商標)Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit(Applied Biosystems社)および3700 DNA Analyzer(Applied Biosystems社)を用いて、キットおよび装置の指示書に従って行った。上記のようにして得た配列を塩基配列解析ソフト(ATGC ver.4,GENETYX;ゼネティックス社)を用いて、10491f配列(配列番号1)および上記3種のクローンのcDNA末端配列と結合処理することにより、1720bpの#10491遺伝子の全長cDNA配列(配列番号5、#10491_cDNA)を明らかにし、また、#10491遺伝子がコードするアミノ酸配列(配列番号6、#10491_protein)を推定した。#10491遺伝子の全長cDNA配列(配列番号5)は、BLASTによる配列比較解析を行ったところ、チトクロームP450の一種と推定された。
【実施例2】
【0092】
[#10491遺伝子の発現を抑制するためのヘアピン型dsRNA発現カセットを含むバイナリーベクターの構築]
RNAiのトリガーとなるDNA配列(配列番号7、#10491_triger)はクローンNo.0015_2_E03のプラスミドを鋳型として、配列番号8および9、あるいは配列番号10および11のプライマー組み合わせを用いて図1に示す同一の領域からPCR増幅した。PCR増幅は、PfuUltraTM High−Fidelity DNA Polymerase (stratagene社)およびGeneAmp(登録商標)PCR System 9700(Applied Biosystems社)を用い、95℃2分の後、95℃30秒、60℃30秒、72℃60秒で30サイクル、72℃でさらに10分反応させて行った。増幅した2種のDNA断片は、それぞれ5’/3’末端に、プライマーにより付与されたNotI/PstIまたはBamHI/SphI認識配列を持つ(図1)。得られた増幅DNAは、それぞれ5’/3’末端に付与された制限酵素で二重消化し、MinElute kit(QIAGEN社)で精製した。
【0093】
逆向反復配列(即ち、正方向配列と逆方向配列の反復)を構築するためのベクターは、pDNR−1(Clontech社)を改変したpSP148(図2)を利用した。pSP148(図2)の2個のloxP部位の間には、35Sプロモーター、マルチクローニングサイト1(MCS1)、スペーサー配列、マルチクローニングサイト2(MCS2)、NOSターミネーターの順で存在する。このベクターのMCS1のPstI/NotI配列導入部位およびMCS2のBamHI/SphI配列導入部位に前述の制限酵素で二重消化した増幅DNA断片をそれぞれ連結することにより、ヘアピン型dsRNA発現カセットを含むpSP148_#10491FRを作製した(図3)。
【0094】
次に、pSP148_#10491FR上で構築したヘアピン型dsRNA発現カセットは、Cre−lox組換え(米国特許第6,410,317号)を利用して、バイナリーベクターpSP107(図4)に載せ替えた。バイナリーベクターpSP107(図4)とはpBI121(Clontech社)をCreator Acceptor Vector Construction Kit(Clontech社)を用いて改変したものである。即ち、Cre Recombinase kit(Clontech社)を用いて指示書に従いCre−loxP組換えを行うことにより、pSP148_#10491FR上のヘアピン型dsRNA発現カセットを含む2個のloxP間の断片をpSP107上のloxP部位に載せ替えた、バイナリーベクターpSP107_#10491を作製した(図5)。
【実施例3】
【0095】
[#10491遺伝子の発現を抑制したトランスジェニックタバコの作出]
構築したバイナリーベクターpSP107_#10491およびpSP107(対照;ベクターコントロール)を、Agrobacterium tumefaciensの菌種LBA4404(Hoekema et al.(1983)Nature 303:179−180)に凍結融解法により導入し、カナマイシン耐性で選抜することにより、目的とするpSP107_#10491およびpSP107(対照)がAgrobacterium tumefaciensの菌種LBA4404に導入されたコロニーを得た。
【0096】
培養約2週間後、カナマイシン耐性を示すカルス様の細胞塊をMurashige and Skoogの1/2無機塩類、シュークロース15g/L、カナマイシン100mg/L、セフォタキシム250mg/L及びゲランガム0.3%を含む二次選抜培地(pH 5.8)に置床した。
【0097】
温室内で約1.5ヵ月栽培したタバコ品種つくば1号の最上位展開葉より採取したタバコの葉を、有効塩素1%の次亜塩素酸ナトリウム溶液(Tween 20を数滴/L加える)で約5分間表面殺菌を行い、滅菌水で3回洗浄した後、メスを用いて約5mm角の葉片を調製した。この葉片とpSP107_#10491あるいはpSP107(対照、GFP遺伝子とnptII遺伝子のみ発現させるベクター)を導入したAgrobacterium tumefaciens約10細胞とをLinsmaier and Skoog(1965)の無機塩類と30g/Lのシュクロースより成る液体培地中で48時間共存培養を行った。その後、葉片をセフォタキシム250mg/L及びカルベニシリン250mg/Lを含む滅菌水で3回洗浄して細菌を洗い落とした後、Murashige and Skoog の無機塩類、シュークロース30g/L、インドール酢酸0.3mg/L、6−(γ,γ−dimetylallyl−amino)purine 10mg/L、カナマイシン100mg/L、セフォタキシム250mg/L、カルベニシリン250mg/L、及びゲランガム0.3%を含む一次選抜培地(pH5.8)に置床した。培養約2週間後、カナマイシン耐性を示すカルス様の細胞塊をMurashige and Skoogの1/2無機塩類、シュークロース15g/L、カナマイシン100mg/L、セフォタキシム250mg/L及びゲランガム0.3%を含む二次選抜培地(pH 5.8)に置床した。
【0098】
二次選抜培地にてカナマイシン耐性を示すカルス様の細胞塊を約3週間培養した後、再分化した個体から採取した5mm×5mmの葉片をGUS assay(Hiei et al., 1994)に供試した。GUS assayにより選抜された個体を再び二次選抜培地(プラントボックス)に置床した。さらに、約3週間培養した後に、発根した個体を4号素焼き鉢(テラコッタ;径124mm、高さ110mm)に移植した。
【0099】
このようにして、最終的に、バイナリーベクターpSP107_#10491を用いて形質転換したトランスジェニックタバコ(以下、#10491タバコ)を20個体、pSP107を用いて形質転換したトランスジェニックタバコ(以下、対照タバコ)を6個体作成したトランスジェニックタバコは、自然光のもと冷房装置およびボイラー装置を用いて昼夜温度が約23℃に調節された閉鎖系温室内で栽培した。鉢用肥土は土:堆肥:赤玉土(大)、赤玉土(小):バーミキュライト=3:4:1:1:1の組成の肥土100リットル当たりバーレーS625(肥料)1kgを混合したものを使用した。
【0100】
さらに、#10491タバコにおける#10491遺伝子の発現抑制をリアルタイムPCR(Wong et al.(2005)Biotechniques 39:75−85)により確認するために、上記のようにして得た鉢上げ後約2ヶ月のトランスジェニックタバコから、直径約10mmのリーフディスクをポンチで打ち抜き、RNAlater(Ambion社)中で保存したものをリアルタイムPCRの材料とした。RNAはRNeasy Plant Mini Kit(QIAGEN社)を用いて抽出し、さらに、Omniscript RT Kit(QIAGEN社)を用いて逆転写反応を行った。この逆転写反応液の一部をリアルタイムPCRに供試した。リアルタイムPCRに用いる#10491およびβ−actinのTaqMan(登録商標)(Roche Molecular Systems)ProbeとprimerはPrimerExpress(Applied Biosystems)を用いて設計した(配列番号12−17)。リアルタイムPCRは、QuantiTect Multiplex PCR Kit(QIAGEN社)を用いて行い、キット添付の「TaqManプローブを用いたDuplexリアルタイム定量PCR」プロトコールに従い、7500リアルタイムPCRシステム(Applied Biosystems社)上で、95℃15分の後、94℃1分、60℃1分で45サイクル反応させることによって行った。比較Ct法(User Bulletin#2,ABI PRISM 7700 Sequence Detection System,Applied Biosystems)により解析した、リアルタイムPCRの結果を図6に示す。調査した20種の#10491タバコの全てにおいて、#10491遺伝子の発現が対照の平均15%に抑制されていることを確認した。
【実施例4】
【0101】
[トランスジェニックタバコの解析]
(1) トランスジェニックタバコの形態、葉色
上記のようにして得た、鉢上げ後約二ヶ月のトランスジェニックタバコの上位葉、中位葉、下位葉について、タバコ葉の成熟の指標とするために、コニカミノルタ製葉緑素計(SPAD−502)を用いてSPAD値(植物の葉に含まれるクロロフィル量を表す数値)を測定したところ、表1に示すように#10491タバコ(n=15)のSPAD値は対照タバコ(n=6)と比べて有意に低い値を示し、#10491タバコではクロロフィルが減少し、成熟が進んでいることが示唆された。また、図7に示すように、#10491タバコは、対照タバコと比べて、形態に大きな差は認められない。
【0102】
(2) トランスジェニックタバコの乾燥葉たばこの性状
上記の鉢上げ後約2ヶ月のタバコから葉を収穫して黄色乾燥を行い、乾燥葉を作製した。黄色乾燥は13のステップから構成されるプログラムによりESPEC社の恒温恒湿器を用いて行った。各ステップは以下の通りである。
【0103】
ステップ1:乾燥開始後3時間かけて昇温/加湿し、温度38℃/相対湿度100%に到達後、本条件で8時間処理。ステップ2:次に1時間かけて昇温/排湿し、温度40℃/相対湿度87%に到達後、本条件で15時間処理。ステップ3:次に1時間かけて昇温/排湿し、温度43℃/相対湿度63%に到達後、本条件で15時間処理。ステップ4:次に1時間かけて昇温/排湿し、温度45℃/相対湿度52%に到達後、本条件で15時間処理。ステップ5:次に1時間かけて昇温/排湿し、温度48℃/相対湿度43%に到達後、本条件で15時間処理。ステップ6:次に1時間かけて昇温/排湿し、温度50℃/相対湿度37%に到達後、本条件で10時間処理。ステップ7:次に1時間かけて昇温/排湿し、温度53℃/相対湿度31%に到達後、本条件で8時間処理。ステップ8:次に1時間かけて昇温/排湿し、温度56℃/相対湿度26%に到達後、本条件で6時間処理。ステップ9:次に1時間かけて昇温/排湿し、温度60℃/相対湿度20%に到達後、本条件で6時間処理。ステップ10:次に1時間かけて昇温/排湿し、温度63℃/相対湿度16%に到達後、本条件で6時間処理。ステップ11:次に2時間かけて昇温し、温度65℃/相対湿度16%に到達後、本条件で2時間処理。ステップ12:次に1時間で昇温し、温度68℃/相対湿度16%に到達後、本条件で8時間処理。ステップ13:5時間かけて、温度30℃/相対湿度60%まで降温/加湿し乾燥を終了。
【0104】
原料葉たばこの品質の指標となる乾燥葉の仕上がりを2種のトランスジェニックタバコ間で比較すると、図8に示すように、対照タバコの乾燥葉は褐変が認められるのに対し、#10491タバコの乾燥葉の仕上がりは非常にきれいにであった。この結果は、成熟の進んだタバコ葉から品質の高い原料葉たばこが生産されるという、葉たばこ生産におけるセオリーと極めてよく合致した。これらの結果から、#10491遺伝子の発現抑制はタバコ葉の成熟を促し、乾燥葉たばこの仕上がりを向上させるなど、タバコ葉に乾燥容易性を付与したと結論できた。
【0105】
(3) トランスジェニックタバコの乾燥葉の燃焼煙中に含まれるカルボニル類の含量
上記のように作製したトランスジェニックタバコの乾燥葉は、40℃、95%RHで2時間調湿して細刻してタバコ刻とした後、25℃、60%RHで1週間以上調湿してから、石英管をリアクターとする赤外線イメージ炉(Ulvac−Riko Inc.)による熱分解試験に供試し、煙中ホルムアルデヒドおよびアクロレインの含量を測定した。キャリヤーガスに100%の窒素ガスを用いて、流量はSEC−B40 mass flow controller(Horiba Stec Inc.)を用いて1000ml/minに調整した。サンプルとしてタバコ刻150mgを用いて、石英管の中央に12.5mmの幅に詰めた。1分間キャリアーガスで石英管内の空気を置換した後、室温から16.7℃/sの割合で温度を800℃まで上昇させ、800℃で5秒間温度を固定した。この温度制御に関しては、TPC−1000 program temperarure controller(Ulvac−Riko Inc.)を用いた。熱分解により生成した煙は、100mlの2,4−dinitrophenylhydrazine溶液を含むインピンジャーと44−nmフィルター(Heinr. Borgwaldt Technik)に捕集した。上記の手法はTorikai et al.(2004)の方法に従った。なお2,4−dinitrophenylhydrazine溶液は、2,4−dinitrophenylhydrazine(水分50%含有品)9.5107gを秤量し、アセトニトリル500mLに溶解させ、60%過塩素酸2.8mLを加えて混合した後、超純水を加えて1Lの水溶液とした。煙を捕集した44−nmフィルターに30mLの2,4−dinitrophenylhydrazine溶液を加えて30分間振とうさせた後、煙を捕集して70分間静置した2,4−dinitrophenylhydrazine溶液(インピンジャー)と混合した。2,4−dinitrophenylhydrazine混合溶液とTrizma base溶液を2:3 の割合で混合し、0.45−μm polytetrafluoroethyleneメンブレンフィルターでろ過した後、高速液体クロマトグラフィーによる分析を行った。上記の手法は前述のTorikai et al.(2004)の方法に従った。また高速液体クロマトグラフィーによる分析方法は、Health Canada(1999)Method of No.T−104に準拠した。なおTrizma base 溶液は、Trizma baseを0.4g秤量し、超純水40mLに溶解させ、アセトニトリルを加えて200mLの水溶液とした。
【0106】
#10491タバコおよび対照タバコの赤外線イメージ炉による煙中ホルムアルデヒドおよびアクロレインの解析を行った結果を図9に示す。なお解析にあたっては、#10491タバコを3個体、対照タバコを3個体について測定し、対照タバコにおける煙中ホルムアルデヒドおよびアクロレイン生成量を100%とした時の相対値(%)を算出した。その結果、#10491遺伝子の発現を抑制した#10491タバコでは、煙中のホルムアルデヒドおよびアクロレイン含量が、対照のそれぞれ平均45%および68%と、大きく低減していた。上記の#10491タバコにおける燃焼煙中のカルボニル類の含量の低減は、燃焼煙中のカルボニル類の前駆物質である、葉中の何らかの成分の生成が低減されたことに起因すると考えられる。したがって、乾燥葉タバコの燃焼煙中のカルボニル類の制御は#10491遺伝子の発現を制御したタバコ葉を利用することにより実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明は、燃焼煙中のカルボニル類が低減したタバコ属植物を提供することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】#10491遺伝子のPCR増幅領域を示す。
【図2】ベクターpSP148の構造を示す。
【図3】ベクターpSP148_#10491FRの構造を示す。
【図4】ベクターpSP107の構造を示す。
【図5】ベクターpSP107_#10491の構造を示す。
【図6】トランスジェニックタバコにおける#10419遺伝子の発現をリアルタイムPCRで測定した結果を示す。
【図7】トランスジェニックタバコ(T1世代、T0世代の自殖後代)の形態(発蕾期)を示す。
【図8】トランスジェニックタバコの乾燥葉を示す。
【図9】Aは、トランスジェニックタバコの乾燥葉の燃焼煙中のホルムアルデヒド含量を示す。Bは、同様に燃焼煙中のアクロレイン含量を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(a)〜(c)に示すいずれかのタンパク質をコードする遺伝子の発現が抑制された、タバコ属植物。
(a)配列番号6に示すアミノ酸配列からなるタンパク質
(b)配列番号6に示すアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ植物の燃焼煙中のカルボニル類含量を制御可能なタンパク質
(c)配列番号6に示すアミノ酸配列に対して85%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ植物の燃焼煙中のカルボニル類含量を制御可能なタンパク質
【請求項2】
前記遺伝子が、
(d)配列番号5に示す塩基配列からなるポリヌクレオチド、
(e)配列番号5に示す塩基配列に対して85%以上の同一性を有し、かつ植物の燃焼煙中のカルボニル類含量を制御可能なタンパク質をコードするポリヌクレオチド、
(f)配列番号5に示す塩基配列において1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなり、かつ植物の燃焼煙中のカルボニル類含量を制御可能なタンパク質をコードするポリヌクレオチド、または
(g)配列番号5に示す塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ植物の燃焼煙中のカルボニル類含量を制御可能なタンパク質をコードするポリヌクレオチド
を含む、請求項1に記載のタバコ属植物。
【請求項3】
前記カルボニル類が、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、アクロレイン、プロピオンアルデヒド、クロトンアルデヒド、メチルエチルケトンおよびブチルアルデヒドからなる群から選択される、請求項1または2に記載のタバコ属植物。
【請求項4】
前記カルボニル類が、ホルムアルデヒドまたはアクロレインである、請求項3に記載のタバコ属植物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のタバコ属植物の組織または細胞。
【請求項6】
前記組織が葉である、請求項5に記載の組織または細胞。
【請求項7】
配列番号5に示す塩基配列、配列番号7に示す塩基配列、それらの配列に対して90%以上の同一性を有する塩基配列、およびそれらの塩基配列の20塩基以上の部分配列からなる群から選択される塩基配列を含む、遺伝子発現抑制用ベクター。
【請求項8】
前記塩基配列の連続した20塩基以上からなる塩基配列をアンチセンス方向に含む、請求項7に記載のベクター。
【請求項9】
前記塩基配列のセンス鎖および該センス鎖に対合するアンチセンス鎖を含む、請求項7に記載のベクター。
【請求項10】
前記センス鎖およびアンチセンス鎖が、前記塩基配列の連続した20塩基以上からなる、請求項9に記載のベクター。
【請求項11】
前記センス鎖とアンチセンス鎖の間にスペーサーを有する、請求項9または10に記載のベクター。
【請求項12】
植物細胞内で作動可能なプロモーターを有する、請求項9〜11のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項13】
タバコ属植物の細胞または組織を、RNA干渉法、アンチセンス法、遺伝子破壊法、人為的突然変異法、リボザイム法、共抑制法および転写因子を制御する方法から選択されるいずれかの方法を用いて、請求項1および2に定義された(a)〜(g)のいずれかの遺伝子の発現を抑制し、植物体を再生することを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のタバコ属植物を作製する方法。
【請求項14】
請求項7〜12のいずれか1項に記載のベクターを、植物細胞または組織に導入し、植物体を再生する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記植物体を母本として後代を作出する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のタバコ属植物の後代であって、請求項1または2に定義された(a)〜(g)のいずれかの遺伝子の発現が抑制されたことを特徴とする、後代。
【請求項17】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のタバコ属植物または請求項16に記載の後代の葉から作製されたたばこ製品。
【請求項18】
タバコ属植物において、請求項1または2に定義された(a)〜(g)のいずれかの遺伝子の発現を抑制することを含む、タバコ属植物の燃焼煙中のカルボニル類含量を低減する方法。
【請求項19】
前記遺伝子の発現の抑制を、RNA干渉法、アンチセンス法、遺伝子破壊法、人為的突然変異法、リボザイム法、共抑制法および転写因子を制御する方法からなる群から選択される方法によって行うことを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
請求項7〜12のいずれか1項に記載のベクターを植物細胞または組織に導入する、請求項18または19に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−136624(P2010−136624A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−83394(P2007−83394)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000004569)日本たばこ産業株式会社 (406)
【出願人】(503359821)独立行政法人理化学研究所 (1,056)
【Fターム(参考)】