説明

燃焼装置およびそれを備えたグランドフレアー

【課題】排ガス等の処理ガスを安定的に燃焼処理することができる燃焼装置およびそれを備えたグランドフレアーを提供する。
【解決手段】円筒状の燃焼筒内に排ガス管を通じて低発熱量の排ガスを導入し、上記燃焼筒内の複数の燃焼装置によって上記排ガスを燃焼させるグランドフレアーの燃焼装置において、上記燃焼装置7が、略水平方向に配置され上部に複数の処理ガス噴出孔8aが配列されている管状のバーナ8と、上記処理ガス噴出孔からの火炎を保護するための保炎ガード9とを有し、上記保炎ガードは、上記処理ガス噴出孔が配列されている範囲に対応して上記バーナ8の長手方向に設けられるとともに、上記バーナの各側壁から少なくとも上方側に向けて突設されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石油精製工業、石油化学工業、製鉄工業などにおける各種プラントから放出される処理ガスを燃焼処理する燃焼装置およびそれを備えたグランドフレアーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
石油精製等の各種プラントや製鉄製造設備において発生する余剰ガスを燃焼処理するための設備としてフレアースタックがある。
【0003】
一般的なフレアースタックとしては、石油精製基地に設置される架構支持型フレアースタックが知られている。この種のフレアースタックは、排ガスを高所に導いて燃焼させるようになっており、高さ方向に距離を取ることによって輻射熱を軽減させることができるようになっている。
【0004】
しかしながら、上記フレアースタックでは輻射熱や火炎が周囲に影響するため、これらの問題を解消すべくグランドフレアーが開発され、各所に設置されている。
【0005】
グランドフレアーは、地上に設置した円筒状燃焼筒内で排ガスを燃焼させるため、火炎が見えることがなく、しかも低騒音で排ガスを燃焼処理することができるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
上記グランドフレアーによって排ガスを処理する方法では、周辺環境に対して影響が少ないという利点がある。
【特許文献1】特開平6−34120号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記したグランドフレアーは一般的に一箇所のパイロットバーナの火種を複数のメインバーナに点火させるように構成されているため、高発熱量の排ガスについては安定して燃焼させることができるものの、例えば未燃焼ガスを含む低発熱量の排ガスについては周囲の空気の流れの影響を受けて火炎が安定せず、着火→失火→着火を繰り返す、いわゆる燃焼振動が起きる場合がある。
【0008】
失火時には大気中に未燃焼のガスを放出するばかりか、燃焼筒内に未燃ガスが充満すると爆発する虞れもある。
【0009】
さらに、排ガスとして溶解炉等から排出されるガスを使用した場合、ガス組成や量が常に変動するため、安定した燃焼を維持することが難しく、安定したスタック温度を維持できなければ不完全燃焼が起きて大気を汚染することになる。
【0010】
また、グランドフレアーは、直立した燃焼筒内の最下部にバーナを上向きに配置して燃焼させる構成が一般的であり、燃焼筒内で燃焼させる際に、バーナで発生する微小な燃焼振動が増幅されて大きく振動したり、また、気柱共鳴のように構造を揺るがすほどの振動を起こす場合もある。
【0011】
上記振動の原因となる微小な燃焼振動は、上記したように燃料の発熱量レベルや発熱量の変動以外にも、燃料流量(噴流速レベル)、燃料流量の変動等、様々な要因によって発生し、そのメカニズムについては解明されていない部分もある。
【0012】
しかしながら、上記微小な燃焼振動は、バーナ近傍における空気の流れ、混合比等の乱れが主な原因と考えられており、バーナ近傍の空気の乱れを抑制すれば、燃焼振動、引いてはグランドフレアーにおける燃焼振動を抑制できると期待されている。したがって、メインバーナをいかにして安定燃焼させるかがグランドフレアーにおいて課題となっている。
【0013】
なお、上記した低発熱量の排ガス、またはガス組成や量が変化する排ガスを処理する場合、助燃ガスをその排ガスに混合すれば、火炎を安定させることは可能である。
【0014】
しかしながら、常時、助燃ガスを使用すると燃焼筒内の温度が上昇し過ぎて設備が危険な状態になり、さらには、無駄な燃料を消費してしまうことになり環境上問題がある。
【0015】
本発明は以上のような従来のグランドフレアーにおける課題を考慮してなされたものであり、排ガス等の処理ガスを安定的に燃焼処理することができる燃焼装置およびそれを備えたグランドフレアーを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の燃焼装置は、燃焼筒内に処理ガス導入管を通じて処理ガスを導入し、上記燃焼筒内の複数の燃焼装置によって上記処理ガスを燃焼させるグランドフレアーの燃焼装置において、
上記燃焼装置が、略水平方向に配置され上部に複数の処理ガス噴出孔が配列されている管状のバーナと、上記処理ガス噴出孔からの火炎を保護するための保炎ガードとを有し、
上記保炎ガードは、上記処理ガス噴出孔が配列されている範囲に対応して上記バーナの長手方向に設けられるとともに、上記バーナの各側壁から少なくとも上方側に向けて突設されていることを要旨とする。
【0017】
上記燃焼装置において、上記保炎ガードに通気孔を設けることができる。
【0018】
また、上記保炎ガードは、上記処理ガス噴出孔上に形成される火炎列の周囲を囲むように窓枠状に配置することもできる。
【0019】
保炎ガードを窓枠状に配置した場合、上記処理ガス噴出孔から上記処理ガスが噴射されることによって上記保炎ガード内が減圧され、上記保炎ガード外部の空気が上記通気孔から上記保炎ガード内に吸い込まれるように構成することができる。
【0020】
また、上記保炎ガードは、上記バーナの各側壁から下方側にも突設することができる。
【0021】
また、上記バーナの各側壁から突設される保炎ガード同士を、ボルトを介して上記バーナに固定することができる。
【0022】
また、上記バーナの燃焼を補助する補助バーナを備えることができる。
【0023】
また、上記処理ガス噴出孔上に形成される火炎列の周囲を囲むように窓枠状に配置されている上記保炎ガードに、上記補助バーナの火炎を上記保炎ガード内に導き入れるための開口部を設けることができる。
【0024】
また、上記燃焼筒の中心から放射状に延びる仮想線上に上記各燃焼装置を配置し、それらの中心部に上記補助バーナを配置した場合、この補助バーナの複数の燃料噴出孔をそれぞれ上記開口部と対向する位置に配置することが好ましい。
【0025】
また、上記処理ガスの発熱量を高めるための助燃ガスを供給する助燃ガス供給管を、開閉弁を介して上記処理ガス導入管に接続すれば、処理ガス成分が変化してその発熱量が低すぎる状態になっても安定した燃焼を得ることができる。
【0026】
本発明のグランドフレアーは、上記構成を有する燃焼装置と、上記バーナに供給する空気の量を調節する空気量調節装置とを備えてなることを要旨とする。
【0027】
なお、本発明において発熱量が低い処理ガスとは、例えば製鉄設備、溶解炉等から排出される未燃ガスを含む低発熱量からなる排ガスが示され、具体的には、12,600 kJ/Nm3(HHV)以下であるが、本発明の燃焼装置によれば、特に、8,400kJ/Nm以下の低発熱量の排ガスについても安定燃焼させることが可能になる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の燃焼装置によれば、処理ガスを安定的に燃焼処理することができるため、燃焼振動が防止され、また、大気汚染を防止することができるなど、環境保全が図れるという長所を有する。
【0029】
また、保炎ガード同士をボルトを介して上記バーナに固定した本発明の燃焼装置によれば、保炎ガードの取り付けまたは取り外しが簡便に行なえるため、メンテナンス性に優れている。
【0030】
本発明のグランドフレアーによれば、処理ガスの成分等に応じてバーナに送り込む空気量を、空気量調節装置によって適切に調節することができるため、処理ガス成分、処理ガス量が変動しても処理ガスを確実に燃焼させることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、図面に示した実施の形態に基づいて本発明を詳細に説明する。
【0032】
図1〜図6は、本発明の第一実施形態の燃焼装置をグランドフレアーに適用した場合の構成を示したものである。
【0033】
図1は、第一実施形態の燃焼装置を備えたグランドフレアーの縦断面図である。
【0034】
同図においてグランドフレアー1は、垂直に配置された円筒状の燃焼筒2を有し、この燃焼筒2は、コンクリート製の台座3上に立設されている。
【0035】
上記台座3上における燃焼筒2の中心軸上には、縦型管5が立設されており、この縦型管5の上部5aは、上記燃焼筒2の下部に収納されている。
【0036】
上記縦型管上部5aの胴部からは複数(本実施形態では8本)の分岐管6が分岐し、それぞれ上向きに延設されている。
【0037】
上記分岐管6の各上端部には水平方向に向けて、燃焼装置7が設けられている。
【0038】
図2は上記燃焼装置7の構成を拡大して示したものであり、同図(a)は平面図、同図(b)は燃焼筒2の中心側から見た側面図、同図(c)は正面図(図1のB部拡大図)である。
【0039】
これらの図において、燃焼装置7は、メインバーナ(管状のバーナ)8と、メインバーナ8の火炎を保護するための保炎ガード9とから主として構成されている。
【0040】
上記メインバーナ8は、起立している分岐管6に対し直交する方向(水平方向)に接続された管状部材からなり、その上面にはバーナ管軸方向に沿って5個の処理ガス噴出孔8aがジグザクに配置されている(図2(a)参照)。
【0041】
なお、処理ガス噴出孔8aの個数は、処理ガスの流量に応じて適宜設定される。所望の噴出速度が得られない場合には処理ガス噴出孔8aの個数を減らすことによって噴出速度を設計通りの仕様に近づけ、それにより、残された各処理ガス噴出孔8aから処理ガスを均等に噴出させ、且つ逆火も防止することができる。
【0042】
上記保炎ガード9は、処理ガス噴出孔8aが配列されている範囲に対応してメインバーナ8の長手方向に設けられるとともに、メインバーナ8の各側壁から上方側に向けて突設されている。
【0043】
詳しくは、上記保炎ガード9は、メインバーナ8の左右胴部に下縁が溶接され、垂直方向に向けて平行に立てられた一対の縦板部9aおよび9bを有している。
【0044】
図2(c)において、これら縦板部9aおよび9bの左側開口は、第一の接続板9cをそれら縦板部9aおよび9bに架設することによって部分的に閉塞されている。
【0045】
また、縦板部9aおよび9bの右側端部は、第二の接続板9dをそれら縦板部9aおよび9bに架設することによって全面的に閉塞されている。
【0046】
それにより、保炎ガード9は、その左側のみ開口部Cが形成された状態で、処理ガス噴出孔8a上に形成される火炎列の周囲を囲むように窓枠状に配置される。
【0047】
また、縦板部9aおよび9bにおける下側には、それぞれ複数の通気孔9eがメインバーナ8の管軸方向に沿って設けられている(本実施形態では直列に3個設けられている)。
【0048】
上記構成を有する保炎ガード9が各メインバーナ8に設けられている。
【0049】
図3は、燃焼装置7の配置を平面から見た図を示している。
【0050】
燃焼筒2の中心Oから放射状に延びる仮想線上に、保炎ガード9付きのメインバーナ8が配置され、複数のメインバーナ8の中心部に補助バーナ10が設けられている。
【0051】
この補助バーナ10は、各メインバーナ8の着火を確実にするために火種として機能するようになっており、着火後はメインバーナ8に向けて火炎を出し続けるようになっている。
【0052】
第一実施形態の燃焼装置7では、上記保炎ガード付きのメインバーナ8に補助バーナ10が組み合わされている。
【0053】
図4は補助バーナ10を拡大して示したものであり、同図(a)は平面図、同図(b)は正面断面図である。
【0054】
両図において補助バーナ10は、中空の円盤部(ヘッダーとして機能する)10aと、その円盤部10aの胴部から、水平面上で3方向に向けて燃料噴出孔が設けられている。
【0055】
図4(a)において、第一の燃料噴出孔10bは、上述した各保炎ガード9の開口部Cに向けて配置されている。
【0056】
第二の燃料噴出孔10cは、第一の燃料噴出孔10bに対し、25°左側(紙面において)に向けて傾斜した状態で設けられ、第三の燃料噴出孔10dは第一の燃料噴出孔10bに対し25°右側(紙面において)に傾斜した状態で設けられている。
【0057】
上記第二および第三の燃料噴出孔10cおよび10dは、隣接する燃料噴出孔へ(10dから10cへ、またはその逆に)火移りさせるために設けられたものである。
【0058】
この補助バーナ10には燃料として例えば天然ガスが供給されるようになっている。
【0059】
図1に戻って説明する。
【0060】
縦型管5の縦方向略中央部には処理ガス導入管11が接続されており、未燃ガスを含む処理ガスがブロアによって加圧された状態で縦型管5に供給されるようになっている。
【0061】
詳しくは、処理ガス導入管11の上流側には水封槽(図示しない)が設けられ、燃焼処理すべき処理ガスはブロアによって上記水封槽内に送り込まれ、空気の逆流を防ぐ滞水部から気泡となって浮上し、上記処理ガス導入管11に送られるようになっている。
【0062】
なお、処理ガスの発熱量が低すぎる場合には上記処理ガス導入管11に助燃ガス供給管を接続し、低発熱量からなる処理ガスに助燃ガスを混合し、発熱量を高めることができる。また、上記助燃ガスは必要に応じて供給できるよう、処理ガス導入管11に対し切換弁を介して助燃ガス供給管を接続することが好ましい。
【0063】
図中、12はメインバーナ8に着火するためのパイロットバーナ、13は点検用マンホール、14は目視で行う点検口、15,16は上部ダクトである。
【0064】
また、上記燃焼筒2の下部にはダクト4が接続され、そのダクト4内にはダンパ4aが設けられている。それにより、メインバーナ8の上部に供給する空気の量を調節することができるようになっている。なお、上記ダンパ4a付きのダクト4は、空気量調節装置として機能する。
【0065】
また、メインバーナ8上部に温度計TE1を配置し、上部ダクト15の上部に温度計TE2を配置し、それらの温度計TE1,TE2によって測定された温度に基づいて燃焼状態を監視することで、未燃ガスが排出されない温度となるように、助燃ガス量を調整することができる。さらに、温度計TE1,TE2によって測定された温度に基づいて、上記ダンパ4aの開度を調節すれば、ダクト4から供給する空気量を適切に調節することができる。
【0066】
なお、図3に示すように、パイロットバーナ12の火炎fは、補助バーナ10の外周に到達しているため、パイロットバーナ12→補助バーナ10の順で点火する。この補助バーナ10の火炎は、メインバーナ8の長手方向略半分の位置まで到達するため、補助バーナ10→メインバーナ8の順で点火する。
【0067】
次に、上記構成を有する燃焼装置7の燃焼動作について図1および図2を参照しながら説明する。
【0068】
処理ガス導入管11を通じて縦型管5に導入された処理ガスは、各分岐管6に分岐され、各分岐管6からメインバーナ8に導入される。
【0069】
メインバーナ8には保炎ガード9が設けられているため、メインバーナ8の処理ガス噴出孔8aから放出される処理ガスはその保炎ガード9の内壁に沿って上方に流れ、保炎ガード9内にドラフト(吸引)効果が生じる。
【0070】
一方、保炎ガード9の縦板部9aおよび9bには通気孔9eが形成されているため、上記ドラフト効果により、保炎ガード9の内部に向かう空気の流れDが形成される。そして、左右の通気孔9eから保炎ガード9内に流れ込んだ空気の流れDは、メインバーナ8の処理ガス噴出孔8aの上方で集合する。
【0071】
事前に、パイロットバーナ12→補助バーナ10の順に点火され、補助バーナ10に火炎を保持させた状態でメインバーナ8に低発熱量の処理ガスが導入されると、補助バーナ10の火炎が安定して各メインバーナ8に供給されることで確実に着火できるため、燃焼振動を発生することなく燃焼が始まる。
【0072】
一旦、メインバーナ8に点火すると、保炎ガード9内に生じるドラフト効果により、保炎ガード9の開口部Cを通して空気が保炎ガード9内に吸い込まれ、各メインバーナ8の処理ガス噴出孔8aから噴出される処理ガスに着火して処理ガスを燃焼させる。
【0073】
着火後においても、保炎ガード9の通気孔9eからは外部の空気が取り込まれ、上記したようにこの空気の流れDがメインバーナ8の処理ガス噴出孔8aの近傍に導かれ、メインバーナ8の火炎はその周囲に配置された保炎ガード9によって保護されるため、メインバーナ8の安定燃焼が維持される。
【0074】
次に、第一実施形態の燃焼装置が適用されるグランドフレアーの別の構成について図5を参照しながら説明する。
【0075】
なお、図5において図1と同じ構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0076】
円筒状の燃焼筒2は、台座3上に円形に配設された複数の支柱17によって支持されている。
【0077】
燃焼筒2の下端は台座3から離間しており、それによって開口部Aが形成され、この開口部Aを通じて燃焼筒2内に空気が自由に流入できるようになっている。
【0078】
次に、メインバーナ8に供給する空気量を調節する構成について図6を参照しながら説明する。
【0079】
図6において、燃焼筒2の下部外周面に沿わせた状態で筒状のスカート20が設けられ、このスカート20を同期した状態で矢印E方向に昇降させる複数のエアーシリンダ21が備えられている。なお、上記スカート20およびエアーシリンダ21は空気量調節装置として機能する。
【0080】
各エアーシリンダ21は、燃焼筒2の胴部外壁において円周方向に等間隔(本実施形態では90°置き)に設けられており、4分割された断面円弧状のプレートで燃焼筒2の全周を覆っている。
【0081】
エアーシリンダ21のチューブ21aは、燃焼筒2の胴部外壁に対し垂直方向に向けて固定され、ロッド21bの先端部はスカート20の外壁上部に設けられているブラケット20aに連結されている。
【0082】
ロッド21bをストローク限界まで縮小させると、スカート20の下方に高さHからなる開口(空気取入れ口)が形成され、この逆に、ロッド21bをストローク限界まで伸張させると、高さH′に狭められた開口(空気取入れ口)が形成される。
【0083】
このように、エアーシリンダ21を伸縮させると、開口高さをH〜H′の範囲で変更することができ、それにより、メインバーナ8および補助バーナ10に取り込む空気量を調節することができる。
【0084】
なお、上記スカート20において処理ガス導入管11と干渉する部分については、U字状の切欠きを設けて干渉を避けるものとする。
【0085】
なお、上記実施形態では8個のメインバーナ8を放射状に配置する構成について説明したが、メインバーナ8の個数はそれ以上であってもよく、また、それ以下であってもよい。ただし、補助バーナ10の第一の燃料噴出孔10bの個数は、メインバーナ8の個数と一致させる必要がある。
【0086】
また、メインバーナ8の処理ガス噴出孔8aの個数については、対象となる処理ガスの成分等に応じて増減させることができる。
【0087】
また、保炎ガード9の縦板部9aおよび9bに設ける通気孔9eの個数および径は、対象となる処理ガスの成分等に応じて増減させることができる。
【0088】
次に、図7〜図16は、本発明の第二実施形態の燃焼装置をグランドフレアーに適用した場合の構成を示したものである。
【0089】
図7において、グランドフレアー30は、円筒状(煙突状)の燃焼筒31と、燃焼筒31の地上近傍に配置された複数、例えば13個のバーナクラスタ32と、各バーナクラスタ32にプラントから放出される処理ガスを供給するためのガス供給マニホールド管(処理ガス導入管)33と、燃焼筒31の外側にこれと同心状に設けられた円筒状のフェンス34と、着火用点火トーチ35とを備えている。
【0090】
燃焼筒31は、鉄皮の内面に断熱材を施した構造であり、フェンス34は、燃焼筒31内の火炎光を遮光すること、燃焼音を吸収すること、フェンス34表面温度を低温に維持することなどの機能を有している。
【0091】
なお、このグランドフレアー30は、自然通風方式により燃焼用の空気が供給されるようになっている。
【0092】
図8は、図7に示したバーナクラスタ32の配置の一例を示す平面図であり、図9は、図8に示すバーナクラスタ32のステージングを説明するための図である。
【0093】
図8に示すように、燃焼筒31内に、この例では13個のバーナクラスタ32が亀甲状に配置されており、各バーナクラスタ32は、それぞれ、放射状に配置された複数の燃焼装置を備えている(図13参照)。
【0094】
これらのバーナクラスタ32は、図9に示すように3つにグループ化されており、プラントから放出される処理ガスが少量のときは、第1ステージのNo.1の1個のバーナクラスタ32による燃焼処理が行なわれる。
【0095】
処理ガス流量が増加すると、それを検知して第2ステージ用のバルブV2が開き、前記第1ステージの1個のバーナクラスタ32に加えて、第2ステージのNo.2の4個のバーナクラスタ32による燃焼処理が行なわれる。
【0096】
処理ガス流量がさらに増加すると、それを検知して第3ステージ用のバルブV3が開き、前記第1及び第2ステージの計5個のバーナクラスタ32に加えて、第3ステージのNo.3の8個のバーナクラスタ32による燃焼処理が行なわれる。
【0097】
このように、ステージング型のバーナは、プラントからの処理ガスの流量変化幅が広い場合には、良好な火移り性能を維持しながらステージングをすることにより安定な燃焼運転が確保されるようになされている。なお、図中、36はステージングヘッダ管、37はガス供給マニホールド管33から分岐されるガス供給ヘッダ管である。
【0098】
図10はバーナクラスタ32を構成している燃焼装置を拡大した側面図、図11はその燃焼装置の正面図、図12は同じく平面図である。
【0099】
図10〜図12に示すように、第二実施形態による燃焼装置は、水平方向に延びる円筒状バーナ38を備え、その円筒状バーナ38におけるバーナ胴部38aの上部側部分(周壁の頂部近傍)には、処理ガスを噴き出す複数の処理ガス噴出孔38bが、バーナ胴部38aの長手方向(軸線方向)へ連ねて設けられている。また、バーナ胴部38aの中央部の下部側部分(周壁の底部)には、処理ガスの導入部としてのガス管接続部38cが設けられている。
【0100】
上記処理ガス噴出孔38bは、第二実施形態の燃焼装置ではバーナ胴部38aの長手方向へ2列をなして各列に10個連ねて設けられている(図12参照)。
【0101】
また、円筒状バーナ38のガス管接続部38cには、上記ガス供給ヘッダ管37から分岐したガス供給枝管39が接続されるようになっている。なお、39aは管接続用のスリーブである。
【0102】
第二実施形態の燃焼装置は、上記円筒状バーナ38と保炎器としての保炎ガード40から主として構成されている。
【0103】
保炎ガード40は、バーナ胴部38aをその両側の側面から挟む状態で対向配置される2枚の平板状からなる保炎板としての縦板部41,41と、これらの縦板部41,41が互いに平行をなすようにバーナ胴部38aに固定する複数組のボルト42およびナット43とから構成されている。
【0104】
上記縦板部41,41の固定方法は、詳しくは、円筒状バーナ38の真上に架設される3組のボルト42およびナット43と、円筒状バーナ38の真下に架設される2組のボルト42およびナット43を用いて、各縦板部41,41を連結することにより、バーナ胴部38aにその2枚の縦板部41,41を着脱可能に取り付けている。
【0105】
2枚の縦板部41,41は、それぞれバーナ胴部38aの長手方向において、上記処理ガス噴出孔38b(バーナ胴部の長手方向に連ねて設けられている)全体にわたって延設されるとともに、高さ方向においては、バーナ胴部38aから上方および下方へそれぞれ所定長さ突出するように設けられている。
【0106】
すなわち、バーナ胴部38aから上方に延設された縦板部41,41は、ガスジェットのコアを保護するのに十分な長さで突出(空気流の下流側に)されているのに対し、バーナ胴部38aから下方に延設された縦板部41,41は、バーナ胴部38aの下部に衝突した周囲空気流の方向を変更させて十分に乱れを与え、縦板部41,41の外側壁に沿って上昇させる邪魔板としての効果を発揮し得る長さで突出(空気流の上流側に)されている。
【0107】
また、縦板部41,41には、バーナ胴部38aに設けられている処理ガス噴出孔38b列の近傍、かつその上方側(空気流の下流側)の位置に、その処理ガス噴出孔38b列に沿って複数の通気孔44が設けられている(図10、図11参照)。
【0108】
このように構成される上記燃焼装置を、例えば、6台放射状に配置することにより、図13に示すように、1つのバーナクラスタ32を構成することができる。
【0109】
図14は図10に示した燃焼装置の動作を説明するための断面図、図15は比較のために示した、縦板部を備えていない円筒状バーナの断面図である。
【0110】
図15において、縦板部41を備えていない円筒状バーナ50のみの構成では、その円筒状バーナ50における空気流の下流側(円筒状バーナ50の上方側)に、周囲の空気流を巻き込んで不安定な渦流が発生するため、円筒状バーナ50からの火炎が不規則な状態で処理ガス噴出孔50aから上方に浮き上がり、処理ガス噴出孔50aに常にアンカーされた安定な火炎が形成されず、その結果、振動燃焼が発生することとなる。
【0111】
これに対して、前記のように構成される第二実施形態の燃焼装置では、図14に示すように、保炎ガード40において対向配置された縦板部41,41を、バーナ胴部38aより下方に所定長さ突出させている。よって、バーナ胴部38aの真下を流れてきた周囲の空気流は、バーナ胴部38aの下面に衝突し、縦板部41,41における垂下部41a,41aによってその方向が変更され、縦板部41,41の外側面に沿って上昇する。
【0112】
このように、円筒状バーナ38周囲の空気流がその円筒状バーナ38上流側で一旦、整流されるため、円筒状バーナ38周囲の空気流を安定させることができる。
【0113】
また、バーナ胴部38aより上方側には、対向する縦板部41,41を所定長さ突出させているため、処理ガス噴出孔38bが設けられている範囲の円筒状バーナ38上方で、周囲の空気流の巻き込みによる不安定な渦流が発生することを防止することができる。
【0114】
さらに、縦板部41,41には、前記した複数の通気孔44が設けられているため、処理ガスの噴出速度の変化(静圧変化)に見合った周囲空気がこれらの通気孔44から保炎ガード40内に取り込まれる。
【0115】
それにより、円筒状バーナ38の処理ガス噴出孔38b近傍が、常に適正な空気比の可燃混合気の状態となり、処理ガス噴出孔38bに常にアンカーされた安定した火炎を形成することができる。
【0116】
このようにして、第二実施形態の燃焼装置によれば、縦板部41,41を設けることにより、処理ガス噴出孔38b近傍に安定した火炎を形成することができ、また、処理ガス噴出孔38bからの流れに変動が生じたとしても、常時、種火があることにより、円筒状バーナ38の火炎は安定し、それにより、燃焼振動を抑制することができる。
【0117】
また、ボルト42とナット43によって縦板部41,41を円筒状バーナ38に固定するように構成された保炎ガード40は、保炎ガード40の取り付け、取り外しが容易に行なえるため、燃焼装置において重要な点である、健全性とメンテナンス性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】本発明の第一実施形態の燃焼装置を備えたグランドフレアーの構成を示す、一部切欠きを有する正面縦断面図である。
【図2】(a)は第一実施形態の燃焼装置の平面図、(b)は側面図、(c)は正面図である。
【図3】図1の燃焼装置と補助バーナの配置を示す平面図である。
【図4】(a)は図1の補助バーナを拡大した平面図、(b)は図4(a)の正面縦断面図である。
【図5】グランドフレアーの別の構成を示す図1相当図である。
【図6】空気量調節装置を示す要部縦断面図である。
【図7】本発明の第二実施形態の燃焼装置を備えたグランドフレアーの構成を示す正面縦断面図である。
【図8】図7に示すバーナクラスタの配置例を示す平面図である。
【図9】図8に示すバーナクラスタのステージングを説明するための説明図である。
【図10】本発明の第二実施形態の燃焼装置の構成を示す側面図である。
【図11】図10に示す燃焼装置の正面図である。
【図12】図10に示す燃焼装置の平面図である。
【図13】図10に示す燃焼装置を6台放射状に配置して構成されるバーナクラスタの平面図である。
【図14】図10に示す燃焼装置の動作を説明するための断面図である。
【図15】縦板部を備えない円筒状バーナの断面図である。
【符号の説明】
【0119】
1 グランドフレアー
2 燃焼筒
3 台座
4 ダクト
5 縦型管
5a 縦型管上部
6 分岐管
7 燃焼装置
8 メインバーナ
8a 処理ガス噴出孔
9 保炎ガード
9a,9b 縦板部
9c 第一の接続板
9d 第二の接続板
9e 通気孔
10 補助バーナ
10a 円盤部
10b 第一の燃料噴出孔
10c 第二の燃料噴出孔
10d 第三の燃料噴出孔
11 処理ガス導入管
12 パイロットバーナ
13 点検用マンホール
14 点検口
15,16 上部ダクト
17 支柱
20 スカート
21 エアーシリンダ
30 グランドフレアー
31 燃焼筒
32 バーナクラスタ
33 ガス供給マニホールド管
34 フェンス
35 着火用点火トーチ
36 ステージングヘッダ管
37 ガス供給ヘッダ管
38 円筒状バーナ
38a バーナ胴部
38b 処理ガス噴出孔
38c ガス管接続部
39 ガス供給枝管
40 保炎ガード
41 縦板部
42 ボルト
43 ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼筒内に処理ガス導入管を通じて処理ガスを導入し、上記燃焼筒内の複数の燃焼装置によって上記処理ガスを燃焼させるグランドフレアーの燃焼装置において、
上記燃焼装置が、
略水平方向に配置され上部に複数の処理ガス噴出孔が配列されている管状のバーナと、
上記処理ガス噴出孔からの火炎を保護するための保炎ガードとを有し、
上記保炎ガードは、上記処理ガス噴出孔が配列されている範囲に対応して上記バーナの長手方向に設けられるとともに、上記バーナの各側壁から少なくとも上方側に向けて突設されていることを特徴とする燃焼装置。
【請求項2】
上記保炎ガードに通気孔が設けられている請求項1記載の燃焼装置。
【請求項3】
上記保炎ガードが、上記処理ガス噴出孔上に形成される火炎列の周囲を囲むように窓枠状に配置されている請求項1または2記載の燃焼装置。
【請求項4】
上記処理ガス噴出孔から上記処理ガスが噴射されることによって上記保炎ガード内が減圧され、上記保炎ガード外部の空気が上記通気孔から上記保炎ガード内に吸い込まれるように構成されている請求項3記載の燃焼装置。
【請求項5】
上記保炎ガードが、上記バーナの各側壁から下方側にも突設されている請求項1記載の燃焼装置。
【請求項6】
上記バーナの各側壁から突設される保炎ガード同士が、ボルトを介して上記バーナに固定されている請求項1〜5のいずれか1項に記載の燃焼装置。
【請求項7】
上記バーナの燃焼を補助する補助バーナが備えられている請求項1〜6のいずれか1項に記載の燃焼装置。
【請求項8】
上記処理ガス噴出孔上に形成される火炎列の周囲を囲むように窓枠状に配置されている上記保炎ガードに、上記補助バーナの火炎を上記保炎ガード内に導き入れるための開口部が設けられている請求項7記載の燃焼装置。
【請求項9】
上記燃焼筒の中心から放射状に延びる仮想線上に上記各燃焼装置が配置され、それらの中心部に上記補助バーナが配置され、この補助バーナの複数の燃料噴出孔がそれぞれ上記開口部と対向する位置に配置されている請求項8記載の燃焼装置。
【請求項10】
上記処理ガスの発熱量を高めるための助燃ガスを供給する助燃ガス供給管が、開閉弁を介して上記処理ガス導入管に接続されている請求項1〜9のいずれか1項に記載の燃焼装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の燃焼装置と、
上記バーナに供給する空気の量を調節する空気量調節装置とを備えてなることを特徴とするグランドフレアー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−103432(P2009−103432A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−246249(P2008−246249)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【出願人】(504358148)株式会社神鋼エンジニアリング&メンテナンス (8)
【Fターム(参考)】