片手操作可能なまな板
【課題】脳卒中や切断等のため片手しか使えなくなった片手障害者が料理をしようとして、食材をまな板の上に置いて健手に持った包丁で切ろうとすると、患手では食材を押さえておくことができないため切り刻むことができない。それで、自家製の釘付まな板を使用していたが、不使用時には釘が危険で収納に困っていた。それと、切り刻んだ食材を鍋に移すことも片手では困難な作業であった。又、近年福祉センターなどで、片手の料理教室が盛んに行われていてこの釘付まな板が使用されている。釘付まな板は片手障害者専用であり、健常高齢者の料理講習会では普通のまな板が使用され、両方のまな板を人数分揃えることは危険でもあるし、収納庫が狭く難しいことでもあった。
【解決手段】板部4の収納穴11から基板5に植設した釘6を出したり納めたりすることが可能なまな板とする。又、このまな板の上に敷くまな板用シートに掛止穴を設ける。
【解決手段】板部4の収納穴11から基板5に植設した釘6を出したり納めたりすることが可能なまな板とする。又、このまな板の上に敷くまな板用シートに掛止穴を設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は片手で食材を切り刻むことのできるまな板及びまな板用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
脳卒中後遺症による片麻痺や事故や病気による片手切断などで片手しか使えなくなった片手障害者が、数年を経過して障害を受け入れ気を取り直して、料理をしようとして、まな板の上に置いた食材を包丁で切ろうとする際に、健手で包丁を持つと他方の手では食材を押さえることができない。そのため食材を切ったり刻んだり皮を剥いたりすることができなかった。
そこで、従来は家人に木製まな板に市販品の尖った釘を3本程度突き出さした釘付まな板を作ってもらって、この釘に食材を突き刺して固定し、健手に持った包丁で食材を切ったり刻んだり、ピーラーで皮を剥いたりしていた。
又、近年では増加する高齢者、生活習慣病、メタボリック症候群等による脳卒中後遺症の人達のために各市町村の福祉センター、障害者デイサービスセンター等においても、「片手でも料理ができますよ」という講習会が盛んであり、多数の女性や男性の片手障害者が職員自作のこの釘付まな板を使用して受講している。
【0003】
この釘付まな板は受講者が使用中にはもちろん手や指を傷つけぬように気をつけていなければならないが、職員が講習会の準備や後片付けをする際にも、料理教室の収納庫に人数分の多数の釘付まな板を出したり納めたりする時に指を怪我したり、うっかり、落としたりすると足の甲を突き刺すこともあるという大変な危険性があった。
又、家庭においても夫婦どちらかが片麻痺となった家では、台所の流し台のキャビネットにこの釘付まな板を収納しておくことは邪魔で危険でもあるし、場所を取るため、このまな板を備えておくことができなくて、料理を作ろうとする気力はあっても、通常のまな板では切り刻みができないため、自分で料理を作ることをあきらめてしまう、ということになっていた。それが障害者の活動範囲や自立生活を阻害する要因にもなっていた。
それから、この釘付まな板の上で切り刻むことはできても、次に、刻んだ食材をかき集めて鍋などに投入することは、両手使いの人には包丁と他方の手を使えば簡単な作業であるが、片手使いの人にとっては一つ一つ健手の指先で拾い集めなくてはならず、多くの時間と根気を必要とする作業であった。
【0004】
従来技術として、食材をまな板の上に押さえ器で固定しておいて手に持った包丁で切るというのがある(特許文献1参照)。しかし、これは機構が複雑で大げさで、使用後の水洗いも大変で、台所に置いておくには抵抗感があった。
【0005】
又、片手障害者のための調理用まな板というのがあった。(特許文献2参照)。これも調理用器具を押さえ部材で固定しておいて、手に持った食材を切ったり皮を剥いたりするというものであるが、機構が複雑であったり、健常者には全く不要のものであり、家庭の台所には置き難いものであった。
【0006】
それと、多数の針を植え込んだまな板上に、針と同じ位置に穴をあけたトレイをセットしてその上に食材を乗せて包丁を押さえ付けて切るというのがあった。そして、このトレイを持ち上げると切った食材を器等に片手で移すことができるというものであった。(特許文献3参照)。これは流し台の下の狭いキャビネットに収納するにも針が出たままでは手を傷つける可能性があり危険であるし、トレイの周囲には立ち上がりもあって場所をとり邪魔になるし障害者専用の調理具であるし、台所には備えておきにくいものであった。
【0007】
また、板体の一端に堰が形成されたものがあったが、これは固定式であるため、邪魔になることもあった。(特許文献4参照)。
【0008】
又、魚の頭部を固定するための細い棒がまな板の中に組み込まれており、使用する際には、出てくるというもの(特許文献5、図2参照)。または別の所から細い棒を持ってきてまな板に設置するというものがあった(同、図3参照)。しかし、これらはいずれも細い棒を納めているときにはまな板の表面に穴があいており、ここに汚れが詰まってしまい、通常のまな板として健常者が使用するには不便なものである。それと、一本の棒では、片手障害者が包丁を引いたり押したりするときに、食材が動いてしまい切り刻むことは困難である。
【0009】
それから、切り刻んだ食材を簡単に集めて鍋などに投入しやすいとか、まな板を汚さずにすむとかいうプラスチックシート製のまな板シートというのが市販されているが、これを片手障害者が使用しようとして流し台の上に敷いてこの上に食材を置き、片手で切ろうとして包丁を押さえ付けたり引いたり押したりすると、まな板シートも動いて、食材を切ることが非常に難しいし、釘がシート上に植設されていないと食材の固定ができず、この上で、片手で切り刻むことはほとんど不可能であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002-186564
【特許文献2】特開2005-21201
【特許文献3】特開2002-291626
【特許文献4】特開H09-122022
【特許文献5】実登3041711
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、このような従来の技術が有していた問題点を解決しようとするものであり、次に掲げるような事を目的とするものである。
(1)前記釘付まな板のように釘を備えているが収納庫に納める際に安全で、場所を取らず、邪魔にならないように、釘をなくすることができるようにすること。
(2)障害者本人だけでなく、健常者である家人や訪問介護ヘルパーさんも使用できる共用品(ユニバーサルデザイン)として、家庭の台所に置いておくことができやすいようにすること。又、これを公民館や福祉センターの料理教室に備えておいて、健常者だけでなく片手障害者も受講生として受け入れることができるようにする。そして、健常者と障害者が打ち解けて触れ合う機会を多くすること。
(3)人参やキュウリなどの野菜類は釘の先端が丸く削ってあっても突き刺して固定することが可能であるし、手を傷つけにくく危険性が少ないという長所がある。一方、牛肉やタコなどのように柔らかくて弾力のある食材は尖った釘でないと突き刺すことができないが手を傷つけやすく危険である。そこで、通常の釘の先端をヤスリなどで丸く削って安全にしたものを植設した基板と、通常の尖った釘の基板と両方を用意しておいて、野菜料理か肉料理かにより、簡単に取り換えることができるようにして、従来の手作りの釘付まな板より危険性を少なくさせること。
(4)まな板用シートの上で切ったり刻んだりができるようにする。そして、刻んだ食材を片手でも鍋などに投入しやすくすること。
(5)後片付け等の際に洗浄ができやすいように簡単な構造とすること。
(6)安価に製造販売できるものであること。
(7)以て、片手障害者の自立、生活、活動範囲を広げるようにすること。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の問題解決手段は上記の目的を達成するために、板部に設けた収納穴に、複数本の釘を植設した基板の表面または裏面が、まな板面と同一面となるように嵌合可能とした片手操作可能なまな板としたものである。
【0013】
それから、本発明の第2の問題解決手段は上記の目的を達成するために、板部を貫通した収納穴の上下に、前記基板を取り換え自在に嵌合可能とした請求項1記載の片手操作可能なまな板としたものである。
【0014】
そして、本発明の第3の問題解決手段は上記の目的を達成するために、嵌合手段がネジ式であり、ネジ移動により釘を収納穴より出没可能とした請求項1または2記載の片手操作可能なまな板としたものである。
【0015】
また、本発明の第4の問題解決手段は上記の目的を達成するために、プラスチックシートに設けた掛止穴を前記片手操作可能なまな板の釘群に掛止し、このシートの上で食材を切り刻んだり運搬を可能とした片手操作可能なまな板用シートとしたものである。
【発明の効果】
【0016】
上記の課題解決手段による効果は次の通りである。
すなわち、3本程度の釘を表面に植設した基板を釘を上向きにして収納穴に取り付けると、基板の表面とまな板の表面が同一面となるようにしてあるため、釘の間の食材もつながることなく切り離すことができる。そして、片手障害者が食材をこの釘に突き刺して固定し、健手に持った包丁で左から右まで全部を切り刻むことが可能となる。又、釘を下向きにして収納穴に固定すると、釘は収納穴に収納され、手を怪我するというような危険性はなくなる。そして、基板の裏面とまな板の表面が同一面の通常のまな板となって健常者も何ら不便なく使う事の出来る共用品となる。そして、流し台の下の狭くて暗いキャビネットに、手探りでも、手を傷つけることなく安全に収納できる。それで、従来は危険なため、又、障害者専用であるがために家庭には備えておき難かった釘付まな板を、危険性をなくし、かつ共用品として家庭にも備えておきやすくした。ひいては、片手障害者が家庭で料理を作ることが可能となる調理用補助具を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例を示す斜視図。
【図2】本発明の実施例を示す斜視図。
【図3】(a)〜(c)本発明の基板とケースの斜視図。
【図4】本発明の基板を釘を下向きに収納した断面図。
【図5】本発明の基板を釘を上向きに出した断面図。
【図6】(a)本発明の2種類の釘を収納した断面図。 (b)本発明の先端が丸い方の釘を上向きに出した断面図。
【図7】(a)〜(c)本発明の実施例を示す断面図。
【図8】(a)〜(e)本発明の実施例を示す断面図と平面図。
【図9】(a)〜(b)本発明の実施例を示す断面図。
【図10】本発明の実施例を示す片手操作可能なまな板とまな板用シートの斜視図。
【図11】本発明の実施例を示すまな板用シートの斜視図。
【図12】本発明の実施例を示す片手操作可能なまな板とまな板用シートの斜視図。
【図13】(a)〜(c)本発明の実施例を示す斜視図と断面図。
【図14】(a)〜(b)本発明の実施例を示す斜視図と断面図。
【図15】(a)〜(b)本発明の実施例を示す斜視図と断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施例を図1ないし図15に基づいて説明する。
【0019】
図1において、板部4とケース10の上面が同一面となるように、板部4に埋め込んだケース10に、3本程度の釘6を植設した円形の基板5を、釘6を植設した表面(おもてめん)を上向きにしてネジでケース10に嵌合し、食材2を釘6に突き刺して固定する。基板5の厚みと同じ位置までネジが切ってあるため、板部4とケース10と基板5とは同一面となっている。そして、健手で包丁3を持てば食材2を患手で押さえておくことなしに、片手でも簡単に切り刻むことができる。ケース10と基板5と板部4とは上面が同一面となっているためこれらにまたがった食材を切っても、つながることなく完全に切り離すことができる。それから、収納庫に納めるときには図2に示すように、釘6を下向きにして、釘6を植設しない面(裏面)を上向きにしてケース10に嵌合したら板部4の表面には釘がなくなって危険性はなくなり、安心して、収納庫に納めたり取り出したりし易くなる。そして、これは健常者が使用できる通常の平らなまな板となる。又、ウナギやタコやナマコや山芋等のヌルヌルした食材は、健常者でも手で持ったり押さえておくのに滑るため、切り刻むのが難しいが、この釘を植設したまな板を使用して釘に食材を突き刺して固定したら楽に切ることが可能であるし、その上、手でも押さえておけば、釘なしのまな板の上で手で押さえておくだけのと比べて、より楽に切り刻むことができる。ゆえに、便利な共用品のまな板となり、健常者にも家庭の台所に備えておきたい調理用具となるものである。
【0020】
図3〜図5を参照して、詳しく述べると、3本の釘6を植設した円形の基板5にはオネジ91が切ってあり、板部4に設けたケース10の上部にもメネジ92が切ってあり、基板5は釘が上向きでも下向きでも収納穴11に時計回りのネジで嵌合可能となっている。又、反時計回しではずすことができ、図3(a)と図4に示すように釘6を下向きにして嵌合すればすりわり溝8を有する蓋となってそれぞれは平らになる。そして、平らなまな板として健常者が使用できやすいし、危険性がなくなって暗くて狭い流し台のキャビネットや収納庫に納めやすくなる。材質はプラスチック製のケース10を木製又はプラスチック製の板部4に埋め込んでおいて、基板もプラスチック製としたほうが良い。基板やケースが金属製だと包丁の刃を痛める可能性があるからである。又、ゴムやスポンジ等よりなる半球状の滑り止めクッション16をまな板の隅に張り付けておくと、流し台の上に置いたまな板が滑りにくいしガタつきがないし、片手使用の人には、まな板を滑らないように押さえておく必要がなくなり使いやすくなる。
【0021】
又、図6(a)〜(b)を参照して説明すると、(a )に示す如く板部4に取り付けた板部4を貫通したケース101の上下に刻んだメネジ92に通常の市販品程度の尖った釘6を植設した基板5と、先端をヤスリなどで丸めた釘61を植設したのと、2種類の基板5が釘を内側に収納するようにして嵌合してあるが、不使用時にはこうしておくと釘の先端で手などを傷つけることがなく安全である。(なお、釘6と釘61とは植設する間隔を変えてあるため、互いがぶつかって動かなくなるということはない。)そして、使用時には(b)に示すように食材によって適合する方の釘(先丸)61又は、尖った釘6を出して基板5をケース101に嵌合して使用することができるようにしてある。又、通常、まな板は上下どちらの面でも使用可能なため、両面が使用可能のように前記滑り止めクッション16は張り付けずに、市販品の滑り止めクッションシートを下に敷いておくとまな板が動かず片手使いの人には便利である。
【0022】
又、図7(a)〜(c)に示す如くプラスチック製のまな板の場合は、ケース10は無しとし、直接プラスチック製の板部4の収納穴11にメネジ92を切ってもいいし、基板5もプラスチック製とし、これにオネジ91を切ってもよい。釘6も丈夫なプラスチック製でもよい。図7は基板5を板部4と同じような材質のプラスチック等でつくった場合の図であるが、釘を収納して使用する場合に同じような色や材質だと違和感がなくなって気持ちよく使用できる。又、ネジ山のピッチを荒くして少ない回転数で固定することができるようにすれば短時間で嵌合できて便利である。それと、(b)に示すように収納穴11の上部に基板の厚さと同じ位置に段差部15を設けて、基板がそれ以上入り込まぬようにして、ネジを締めたときに板部4の表面と、基板5の表面がキチッと揃うようにしておく。又は、基板の厚さと同じ位置までしか、メネジを切らないようにしてある。
【0023】
図8(a)〜(e)はネジ式ではなく、(a)、(b)、(c)に示すような円形の基板5の両側の凸部14を(d)、(e)に示す収納穴11の上部の両側に設けた凹部12に嵌めて少し回転させると凸部14が係止溝13に嵌って基板5の釘6を上下や前後左右に押しても引いても動かぬように固定される構成とした一例である。そして、係止溝13の入口は広めで奥の方は狭くしたら、嵌まった凸部14がはずれにくくなり、突き刺した食材に多少の回転する力が加わっても基板5も回転しにくくなり、包丁3を押したり引いたりする力を強めても食材が回転しにくいため、切り刻みしやすくなる。しかし、収納時に基板5をはずす際には回転しにくくなるため、この辺の加減が必要となるであろう。このことは他の図のネジ式の場合にもいえることであり、緩すぎると基板がはずれやすくなり、きつすぎると基板5を着脱しにくくなるので、ネジのきつさ加減の調整も必要となるであろう。
【0024】
図9は板部4を貫通するメネジ92を切った円形の収納穴11に複数本の釘6を植設した円形の基板5に切ったオネジ91でネジ移動により上下するようにしてある。使用時には(a)に示すように上向きにした釘6を出すようにし、不使用時には釘6が(b)に示すように収納穴11に引っ込めるように移動させることが可能なようにしてある。そのため、キャビネットに収納するときに邪魔にならない。そして、このように板部4と基板5の表面を平らにすると健常者も使用可能な共用品とすることができるまな板となるものである。すりわり溝の側はネジ回しやその他の板材又は指先で回転させて出没できるようにしてある。又、釘付の側は指先で釘の軸をつまんで回転させて出没させても良い。
【0025】
図13は嵌合手段が押し込み式とした場合の図であるが、(b)に示すように基板5を釘を植設した面を上又は下にしてケース101に上方から押し込むと、基板の側面とケースの上下に設けた凹部12と凸部14とがパチッと音をたてて嵌まり、固定できるようになっている。このようにして簡単に釘6,61を出したり、納めたりすることができる。又、基板5を着脱しやすいように、スプーンの柄などを挿入可能な開口部30が設けてある。この開口部から汚れが穴の中に入るが、基板5をはずせば簡単に洗浄できるため、なんら問題はない。又、(c)に示すように、板部の縁にケース101を配設すると開口部30は不要となる。すなわち、カバー32をはずすと、ケースの側面に穴ができる。この穴に指を入れて基板5を持ち上げると、簡単にはずすことができるし、基板を上方からケース101に押し込むとパチッと音がして嵌めこむことができるからである。それから次にカバー32を嵌めると側面の穴はなくなる。
【0026】
図14は嵌合手段が横軸回転式とした場合の図であるが、(b)に示すように横軸32を中心にして基板5を回転させると、パチッと音がしてケースに隙間なく、嵌まり込むようになっている。このようにして、釘6,61を出したり、収納したりできる。又、(a)、(b)に示すようにケース101の側面にできる穴をふさぐように着脱式のカバー32が設けてある。
【0027】
図15は嵌合手段がスライド式とした場合の図であるが、側面の穴をふさぐためのカバー32をはずして、基板5を側面よりスライド溝34に沿ってスライドさせると、基板の側面の凸部14がパチッと音をたてて嵌まり込み、カバー32を嵌めると、まな板の表面や側面には隙間がなく固定できるようになっている。以上述べたように、いずれの方法でも、まな板の表面や側面に穴や隙間をなくすることが可能となり、釘付まな板として片手障害者が気持ちよく使用することが可能であるし、健常者も釘のない表面が平らな通常のまな板として気持ちよく使用することが可能となり、ユニバーサルデザインの片手操作可能なまな板が完成するのである。
【0028】
図10はプラスチック製のシートに三角形の掛止穴18をあけて本発明の片手操作可能なまな板1の三本の釘群62にこの掛止穴18を掛止し、穴あきまな板シート17の移動や回転を防止するものである。このシートの上に食材を置いて掛止穴から出ている3本の釘6に突き刺して固定した食材2を片手に持った包丁3で切り刻むことができる。そして、この穴あきまな板シート17を図11のように片手ではみ出し部171を持って掛止穴からはずし、親指で中央辺りを上から押さえながら他の指で下から支えて、湾曲させて持って傾けると刻んで細かくなった食材19を鍋に移すことが簡単にできる。
【0029】
刻んだ食材が濡れていてシートにくっつく場合は鍋の縁でシートの下側をトントンと叩けば食材は鍋の中に簡単に落ちるものである。従来は健手でひとつひとつつまんで移すという時間のかかっていたこの作業を短時間で行うことができるようになる。このプラスチック製のまな板シートは片手障害者だけでなく、健常者にも調理用補助具として利用価値があるため、台所に備えておいたら便利である。図10の如く穴あきまな板シート17の上部を板部4からはみ出しておくと、片手でこのはみ出し部171を持ちやすくなり、釘群62への掛止穴18の抜き差しが簡単になる。それと、掛止穴18は釘群が4本の場合はそれにちょうど嵌まる四角形の穴をあけておけばこのシートの回転や移動を防止することができる。
【0030】
また、図12はまな板シート17の側部に当て木用の立ち上げ部を設けるための折り線を施しておき、図12に示すようにプラスチックシートから切り離した控え21を立設して当て木20を立設しておくと、当て木20は倒れない。この当て木20に向かって、片手に持った包丁3で簡単に切り刻んだ食材19をかき集めることが可能である。このシートは片手障害者だけでなく健常者にも便利な調理用補助具となるものである。
【0031】
そして、片手障害者が本発明の片手操作可能なまな板を使用して、大根などを切り刻む時には、まず、大根を釘に突き刺して包丁で縦方向に半分に引き割り、平らになった面を下にして葉っぱとの付け根辺りを釘に突き刺して固定して切り刻んでいけばよい。ゴボウの皮を剥きたいときには、葉っぱに近い部分を釘に突き刺して、包丁の背側で軽く皮をコサゲれば良い。ジャガイモの皮を剥くときには、まず、ジャガイモを釘に突き刺して、包丁で半分に割り、平らな方を下にして釘に突き刺して、ピーラーで簡単に皮を剥くことが可能である。魚の場合でもサンマやイワシのシッポに近い方を釘に突き刺して包丁で鱗をコサゲ取る。次に腹をさいてワタを取り出してから、頭を切り除き、3枚におろすことでも簡単にできるようになる。
【0032】
以上のように片手障害者でも多くの食材の皮を剥いたり、切ったり、刻んだりすることが可能となる。そして、健常者にも使用できる共用品のまな板とすることも可能で、危険性も少なくなるため、台所に本発明の片手操作可能なまな板を置いておくことができやすくなる。又、本発明の穴あきまな板シートと併用して使用したら切り刻んだ食材を鍋に移す作業も格段に楽にできるようになる。それと、以上述べたように本発明の片手操作可能なまな板や穴あきまな板シートは構成がすこぶる簡単なため、安価に製造販売でき障害者でも買い求めやすくなる。
【0033】
本発明の片手操作可能なまな板1は、いろいろ試してみると次のような寸法構成が使いやすい。
(1)板部4は厚さ25〜30ミリ程度。通常の市販品の厚さであり使いやすい。材質は木製でもプラスチック製でもよい。
(2)釘の本数は3〜4本程度。一本だと食材がすぐに割れたり、回転しやすく固定しにくい。8本とか9本だと多すぎて大根など突き刺した部分が割れてしまい固定できなくなる。材質は錆びにくいステンレスSUS304が良い。
(3)釘の太さは1.5〜2.0ミリ程度。食材によって異なるが細すぎると食材が千切れやすい。太すぎると食材に突き刺さりにくく、無理すると人参などは突き刺した部分が割れてしまい固定できなくなることがある。
(4)釘の出た部分の長さは15〜20ミリ程度。長すぎて食材から上に飛び出ていると、作業中に手を引っ掻いたりして危険である。短すぎると食材を固定しにくいし食材が作業中に抜けることもある。
(5)釘群の広さ(釘間の距離)は20〜25ミリ程度。間隔が広すぎると小さい食材の場合、一か所くらいしか突き刺さらず、固定しにくくなる。狭すぎると食材を釘に刺すのに大きい力が必要となり無理に突き刺すと割れることもある。3本の釘が全て突き刺さるくらいが良いが2本でも良い。1本だけでは食材が割れたりして外れやすく、回転しやすく、良くない。
(6)基板やケースの厚さは3〜5ミリ程度、材質はプラスチック製が硬さや衛生面で優れている。
【産業上の利用可能性】
【0034】
近年、生活習慣病、メタボリック症候群、超高齢化が問題になっている。これらに起因して脳梗塞や脳内出血、くも膜下出血などの脳卒中が増加している。医学の進歩により死亡率は低下しているものの、その半面、生き残った人の60パーセント程度には生涯回復する見込みの少ない後遺障害が残るといわれている。脳卒中の後遺症は程度の差はあるものの多くが片麻痺障害者であり、全国で150万人以上ともいわれている。そして、その数は年々増え続けており社会福祉予算や医療費の増加の要因となっている。しかし、不本意ながら元気だったのがある日突然に中途障害者となった人達も、数年経過して障害を受け入れるようになると、出来るだけ充実した生活を送りたいという希望を持つようになり、社会もできるだけそれに答えてあげなくてはならない。
福祉センターや公民館の料理教室に本発明の共用品の片手操作可能なまな板を備えておけば、「片手でも料理できますよ」の料理教室の受講生が家庭でもこの便利なまな板を購入して使用するようになり、片手障害者の生活の質(QOL)を向上させる調理用補助具となるものである。
【符号の説明】
【0035】
1 まな板
4 板部
5 基板
6 釘
11 収納穴
【技術分野】
【0001】
本発明は片手で食材を切り刻むことのできるまな板及びまな板用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
脳卒中後遺症による片麻痺や事故や病気による片手切断などで片手しか使えなくなった片手障害者が、数年を経過して障害を受け入れ気を取り直して、料理をしようとして、まな板の上に置いた食材を包丁で切ろうとする際に、健手で包丁を持つと他方の手では食材を押さえることができない。そのため食材を切ったり刻んだり皮を剥いたりすることができなかった。
そこで、従来は家人に木製まな板に市販品の尖った釘を3本程度突き出さした釘付まな板を作ってもらって、この釘に食材を突き刺して固定し、健手に持った包丁で食材を切ったり刻んだり、ピーラーで皮を剥いたりしていた。
又、近年では増加する高齢者、生活習慣病、メタボリック症候群等による脳卒中後遺症の人達のために各市町村の福祉センター、障害者デイサービスセンター等においても、「片手でも料理ができますよ」という講習会が盛んであり、多数の女性や男性の片手障害者が職員自作のこの釘付まな板を使用して受講している。
【0003】
この釘付まな板は受講者が使用中にはもちろん手や指を傷つけぬように気をつけていなければならないが、職員が講習会の準備や後片付けをする際にも、料理教室の収納庫に人数分の多数の釘付まな板を出したり納めたりする時に指を怪我したり、うっかり、落としたりすると足の甲を突き刺すこともあるという大変な危険性があった。
又、家庭においても夫婦どちらかが片麻痺となった家では、台所の流し台のキャビネットにこの釘付まな板を収納しておくことは邪魔で危険でもあるし、場所を取るため、このまな板を備えておくことができなくて、料理を作ろうとする気力はあっても、通常のまな板では切り刻みができないため、自分で料理を作ることをあきらめてしまう、ということになっていた。それが障害者の活動範囲や自立生活を阻害する要因にもなっていた。
それから、この釘付まな板の上で切り刻むことはできても、次に、刻んだ食材をかき集めて鍋などに投入することは、両手使いの人には包丁と他方の手を使えば簡単な作業であるが、片手使いの人にとっては一つ一つ健手の指先で拾い集めなくてはならず、多くの時間と根気を必要とする作業であった。
【0004】
従来技術として、食材をまな板の上に押さえ器で固定しておいて手に持った包丁で切るというのがある(特許文献1参照)。しかし、これは機構が複雑で大げさで、使用後の水洗いも大変で、台所に置いておくには抵抗感があった。
【0005】
又、片手障害者のための調理用まな板というのがあった。(特許文献2参照)。これも調理用器具を押さえ部材で固定しておいて、手に持った食材を切ったり皮を剥いたりするというものであるが、機構が複雑であったり、健常者には全く不要のものであり、家庭の台所には置き難いものであった。
【0006】
それと、多数の針を植え込んだまな板上に、針と同じ位置に穴をあけたトレイをセットしてその上に食材を乗せて包丁を押さえ付けて切るというのがあった。そして、このトレイを持ち上げると切った食材を器等に片手で移すことができるというものであった。(特許文献3参照)。これは流し台の下の狭いキャビネットに収納するにも針が出たままでは手を傷つける可能性があり危険であるし、トレイの周囲には立ち上がりもあって場所をとり邪魔になるし障害者専用の調理具であるし、台所には備えておきにくいものであった。
【0007】
また、板体の一端に堰が形成されたものがあったが、これは固定式であるため、邪魔になることもあった。(特許文献4参照)。
【0008】
又、魚の頭部を固定するための細い棒がまな板の中に組み込まれており、使用する際には、出てくるというもの(特許文献5、図2参照)。または別の所から細い棒を持ってきてまな板に設置するというものがあった(同、図3参照)。しかし、これらはいずれも細い棒を納めているときにはまな板の表面に穴があいており、ここに汚れが詰まってしまい、通常のまな板として健常者が使用するには不便なものである。それと、一本の棒では、片手障害者が包丁を引いたり押したりするときに、食材が動いてしまい切り刻むことは困難である。
【0009】
それから、切り刻んだ食材を簡単に集めて鍋などに投入しやすいとか、まな板を汚さずにすむとかいうプラスチックシート製のまな板シートというのが市販されているが、これを片手障害者が使用しようとして流し台の上に敷いてこの上に食材を置き、片手で切ろうとして包丁を押さえ付けたり引いたり押したりすると、まな板シートも動いて、食材を切ることが非常に難しいし、釘がシート上に植設されていないと食材の固定ができず、この上で、片手で切り刻むことはほとんど不可能であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002-186564
【特許文献2】特開2005-21201
【特許文献3】特開2002-291626
【特許文献4】特開H09-122022
【特許文献5】実登3041711
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、このような従来の技術が有していた問題点を解決しようとするものであり、次に掲げるような事を目的とするものである。
(1)前記釘付まな板のように釘を備えているが収納庫に納める際に安全で、場所を取らず、邪魔にならないように、釘をなくすることができるようにすること。
(2)障害者本人だけでなく、健常者である家人や訪問介護ヘルパーさんも使用できる共用品(ユニバーサルデザイン)として、家庭の台所に置いておくことができやすいようにすること。又、これを公民館や福祉センターの料理教室に備えておいて、健常者だけでなく片手障害者も受講生として受け入れることができるようにする。そして、健常者と障害者が打ち解けて触れ合う機会を多くすること。
(3)人参やキュウリなどの野菜類は釘の先端が丸く削ってあっても突き刺して固定することが可能であるし、手を傷つけにくく危険性が少ないという長所がある。一方、牛肉やタコなどのように柔らかくて弾力のある食材は尖った釘でないと突き刺すことができないが手を傷つけやすく危険である。そこで、通常の釘の先端をヤスリなどで丸く削って安全にしたものを植設した基板と、通常の尖った釘の基板と両方を用意しておいて、野菜料理か肉料理かにより、簡単に取り換えることができるようにして、従来の手作りの釘付まな板より危険性を少なくさせること。
(4)まな板用シートの上で切ったり刻んだりができるようにする。そして、刻んだ食材を片手でも鍋などに投入しやすくすること。
(5)後片付け等の際に洗浄ができやすいように簡単な構造とすること。
(6)安価に製造販売できるものであること。
(7)以て、片手障害者の自立、生活、活動範囲を広げるようにすること。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の問題解決手段は上記の目的を達成するために、板部に設けた収納穴に、複数本の釘を植設した基板の表面または裏面が、まな板面と同一面となるように嵌合可能とした片手操作可能なまな板としたものである。
【0013】
それから、本発明の第2の問題解決手段は上記の目的を達成するために、板部を貫通した収納穴の上下に、前記基板を取り換え自在に嵌合可能とした請求項1記載の片手操作可能なまな板としたものである。
【0014】
そして、本発明の第3の問題解決手段は上記の目的を達成するために、嵌合手段がネジ式であり、ネジ移動により釘を収納穴より出没可能とした請求項1または2記載の片手操作可能なまな板としたものである。
【0015】
また、本発明の第4の問題解決手段は上記の目的を達成するために、プラスチックシートに設けた掛止穴を前記片手操作可能なまな板の釘群に掛止し、このシートの上で食材を切り刻んだり運搬を可能とした片手操作可能なまな板用シートとしたものである。
【発明の効果】
【0016】
上記の課題解決手段による効果は次の通りである。
すなわち、3本程度の釘を表面に植設した基板を釘を上向きにして収納穴に取り付けると、基板の表面とまな板の表面が同一面となるようにしてあるため、釘の間の食材もつながることなく切り離すことができる。そして、片手障害者が食材をこの釘に突き刺して固定し、健手に持った包丁で左から右まで全部を切り刻むことが可能となる。又、釘を下向きにして収納穴に固定すると、釘は収納穴に収納され、手を怪我するというような危険性はなくなる。そして、基板の裏面とまな板の表面が同一面の通常のまな板となって健常者も何ら不便なく使う事の出来る共用品となる。そして、流し台の下の狭くて暗いキャビネットに、手探りでも、手を傷つけることなく安全に収納できる。それで、従来は危険なため、又、障害者専用であるがために家庭には備えておき難かった釘付まな板を、危険性をなくし、かつ共用品として家庭にも備えておきやすくした。ひいては、片手障害者が家庭で料理を作ることが可能となる調理用補助具を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例を示す斜視図。
【図2】本発明の実施例を示す斜視図。
【図3】(a)〜(c)本発明の基板とケースの斜視図。
【図4】本発明の基板を釘を下向きに収納した断面図。
【図5】本発明の基板を釘を上向きに出した断面図。
【図6】(a)本発明の2種類の釘を収納した断面図。 (b)本発明の先端が丸い方の釘を上向きに出した断面図。
【図7】(a)〜(c)本発明の実施例を示す断面図。
【図8】(a)〜(e)本発明の実施例を示す断面図と平面図。
【図9】(a)〜(b)本発明の実施例を示す断面図。
【図10】本発明の実施例を示す片手操作可能なまな板とまな板用シートの斜視図。
【図11】本発明の実施例を示すまな板用シートの斜視図。
【図12】本発明の実施例を示す片手操作可能なまな板とまな板用シートの斜視図。
【図13】(a)〜(c)本発明の実施例を示す斜視図と断面図。
【図14】(a)〜(b)本発明の実施例を示す斜視図と断面図。
【図15】(a)〜(b)本発明の実施例を示す斜視図と断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施例を図1ないし図15に基づいて説明する。
【0019】
図1において、板部4とケース10の上面が同一面となるように、板部4に埋め込んだケース10に、3本程度の釘6を植設した円形の基板5を、釘6を植設した表面(おもてめん)を上向きにしてネジでケース10に嵌合し、食材2を釘6に突き刺して固定する。基板5の厚みと同じ位置までネジが切ってあるため、板部4とケース10と基板5とは同一面となっている。そして、健手で包丁3を持てば食材2を患手で押さえておくことなしに、片手でも簡単に切り刻むことができる。ケース10と基板5と板部4とは上面が同一面となっているためこれらにまたがった食材を切っても、つながることなく完全に切り離すことができる。それから、収納庫に納めるときには図2に示すように、釘6を下向きにして、釘6を植設しない面(裏面)を上向きにしてケース10に嵌合したら板部4の表面には釘がなくなって危険性はなくなり、安心して、収納庫に納めたり取り出したりし易くなる。そして、これは健常者が使用できる通常の平らなまな板となる。又、ウナギやタコやナマコや山芋等のヌルヌルした食材は、健常者でも手で持ったり押さえておくのに滑るため、切り刻むのが難しいが、この釘を植設したまな板を使用して釘に食材を突き刺して固定したら楽に切ることが可能であるし、その上、手でも押さえておけば、釘なしのまな板の上で手で押さえておくだけのと比べて、より楽に切り刻むことができる。ゆえに、便利な共用品のまな板となり、健常者にも家庭の台所に備えておきたい調理用具となるものである。
【0020】
図3〜図5を参照して、詳しく述べると、3本の釘6を植設した円形の基板5にはオネジ91が切ってあり、板部4に設けたケース10の上部にもメネジ92が切ってあり、基板5は釘が上向きでも下向きでも収納穴11に時計回りのネジで嵌合可能となっている。又、反時計回しではずすことができ、図3(a)と図4に示すように釘6を下向きにして嵌合すればすりわり溝8を有する蓋となってそれぞれは平らになる。そして、平らなまな板として健常者が使用できやすいし、危険性がなくなって暗くて狭い流し台のキャビネットや収納庫に納めやすくなる。材質はプラスチック製のケース10を木製又はプラスチック製の板部4に埋め込んでおいて、基板もプラスチック製としたほうが良い。基板やケースが金属製だと包丁の刃を痛める可能性があるからである。又、ゴムやスポンジ等よりなる半球状の滑り止めクッション16をまな板の隅に張り付けておくと、流し台の上に置いたまな板が滑りにくいしガタつきがないし、片手使用の人には、まな板を滑らないように押さえておく必要がなくなり使いやすくなる。
【0021】
又、図6(a)〜(b)を参照して説明すると、(a )に示す如く板部4に取り付けた板部4を貫通したケース101の上下に刻んだメネジ92に通常の市販品程度の尖った釘6を植設した基板5と、先端をヤスリなどで丸めた釘61を植設したのと、2種類の基板5が釘を内側に収納するようにして嵌合してあるが、不使用時にはこうしておくと釘の先端で手などを傷つけることがなく安全である。(なお、釘6と釘61とは植設する間隔を変えてあるため、互いがぶつかって動かなくなるということはない。)そして、使用時には(b)に示すように食材によって適合する方の釘(先丸)61又は、尖った釘6を出して基板5をケース101に嵌合して使用することができるようにしてある。又、通常、まな板は上下どちらの面でも使用可能なため、両面が使用可能のように前記滑り止めクッション16は張り付けずに、市販品の滑り止めクッションシートを下に敷いておくとまな板が動かず片手使いの人には便利である。
【0022】
又、図7(a)〜(c)に示す如くプラスチック製のまな板の場合は、ケース10は無しとし、直接プラスチック製の板部4の収納穴11にメネジ92を切ってもいいし、基板5もプラスチック製とし、これにオネジ91を切ってもよい。釘6も丈夫なプラスチック製でもよい。図7は基板5を板部4と同じような材質のプラスチック等でつくった場合の図であるが、釘を収納して使用する場合に同じような色や材質だと違和感がなくなって気持ちよく使用できる。又、ネジ山のピッチを荒くして少ない回転数で固定することができるようにすれば短時間で嵌合できて便利である。それと、(b)に示すように収納穴11の上部に基板の厚さと同じ位置に段差部15を設けて、基板がそれ以上入り込まぬようにして、ネジを締めたときに板部4の表面と、基板5の表面がキチッと揃うようにしておく。又は、基板の厚さと同じ位置までしか、メネジを切らないようにしてある。
【0023】
図8(a)〜(e)はネジ式ではなく、(a)、(b)、(c)に示すような円形の基板5の両側の凸部14を(d)、(e)に示す収納穴11の上部の両側に設けた凹部12に嵌めて少し回転させると凸部14が係止溝13に嵌って基板5の釘6を上下や前後左右に押しても引いても動かぬように固定される構成とした一例である。そして、係止溝13の入口は広めで奥の方は狭くしたら、嵌まった凸部14がはずれにくくなり、突き刺した食材に多少の回転する力が加わっても基板5も回転しにくくなり、包丁3を押したり引いたりする力を強めても食材が回転しにくいため、切り刻みしやすくなる。しかし、収納時に基板5をはずす際には回転しにくくなるため、この辺の加減が必要となるであろう。このことは他の図のネジ式の場合にもいえることであり、緩すぎると基板がはずれやすくなり、きつすぎると基板5を着脱しにくくなるので、ネジのきつさ加減の調整も必要となるであろう。
【0024】
図9は板部4を貫通するメネジ92を切った円形の収納穴11に複数本の釘6を植設した円形の基板5に切ったオネジ91でネジ移動により上下するようにしてある。使用時には(a)に示すように上向きにした釘6を出すようにし、不使用時には釘6が(b)に示すように収納穴11に引っ込めるように移動させることが可能なようにしてある。そのため、キャビネットに収納するときに邪魔にならない。そして、このように板部4と基板5の表面を平らにすると健常者も使用可能な共用品とすることができるまな板となるものである。すりわり溝の側はネジ回しやその他の板材又は指先で回転させて出没できるようにしてある。又、釘付の側は指先で釘の軸をつまんで回転させて出没させても良い。
【0025】
図13は嵌合手段が押し込み式とした場合の図であるが、(b)に示すように基板5を釘を植設した面を上又は下にしてケース101に上方から押し込むと、基板の側面とケースの上下に設けた凹部12と凸部14とがパチッと音をたてて嵌まり、固定できるようになっている。このようにして簡単に釘6,61を出したり、納めたりすることができる。又、基板5を着脱しやすいように、スプーンの柄などを挿入可能な開口部30が設けてある。この開口部から汚れが穴の中に入るが、基板5をはずせば簡単に洗浄できるため、なんら問題はない。又、(c)に示すように、板部の縁にケース101を配設すると開口部30は不要となる。すなわち、カバー32をはずすと、ケースの側面に穴ができる。この穴に指を入れて基板5を持ち上げると、簡単にはずすことができるし、基板を上方からケース101に押し込むとパチッと音がして嵌めこむことができるからである。それから次にカバー32を嵌めると側面の穴はなくなる。
【0026】
図14は嵌合手段が横軸回転式とした場合の図であるが、(b)に示すように横軸32を中心にして基板5を回転させると、パチッと音がしてケースに隙間なく、嵌まり込むようになっている。このようにして、釘6,61を出したり、収納したりできる。又、(a)、(b)に示すようにケース101の側面にできる穴をふさぐように着脱式のカバー32が設けてある。
【0027】
図15は嵌合手段がスライド式とした場合の図であるが、側面の穴をふさぐためのカバー32をはずして、基板5を側面よりスライド溝34に沿ってスライドさせると、基板の側面の凸部14がパチッと音をたてて嵌まり込み、カバー32を嵌めると、まな板の表面や側面には隙間がなく固定できるようになっている。以上述べたように、いずれの方法でも、まな板の表面や側面に穴や隙間をなくすることが可能となり、釘付まな板として片手障害者が気持ちよく使用することが可能であるし、健常者も釘のない表面が平らな通常のまな板として気持ちよく使用することが可能となり、ユニバーサルデザインの片手操作可能なまな板が完成するのである。
【0028】
図10はプラスチック製のシートに三角形の掛止穴18をあけて本発明の片手操作可能なまな板1の三本の釘群62にこの掛止穴18を掛止し、穴あきまな板シート17の移動や回転を防止するものである。このシートの上に食材を置いて掛止穴から出ている3本の釘6に突き刺して固定した食材2を片手に持った包丁3で切り刻むことができる。そして、この穴あきまな板シート17を図11のように片手ではみ出し部171を持って掛止穴からはずし、親指で中央辺りを上から押さえながら他の指で下から支えて、湾曲させて持って傾けると刻んで細かくなった食材19を鍋に移すことが簡単にできる。
【0029】
刻んだ食材が濡れていてシートにくっつく場合は鍋の縁でシートの下側をトントンと叩けば食材は鍋の中に簡単に落ちるものである。従来は健手でひとつひとつつまんで移すという時間のかかっていたこの作業を短時間で行うことができるようになる。このプラスチック製のまな板シートは片手障害者だけでなく、健常者にも調理用補助具として利用価値があるため、台所に備えておいたら便利である。図10の如く穴あきまな板シート17の上部を板部4からはみ出しておくと、片手でこのはみ出し部171を持ちやすくなり、釘群62への掛止穴18の抜き差しが簡単になる。それと、掛止穴18は釘群が4本の場合はそれにちょうど嵌まる四角形の穴をあけておけばこのシートの回転や移動を防止することができる。
【0030】
また、図12はまな板シート17の側部に当て木用の立ち上げ部を設けるための折り線を施しておき、図12に示すようにプラスチックシートから切り離した控え21を立設して当て木20を立設しておくと、当て木20は倒れない。この当て木20に向かって、片手に持った包丁3で簡単に切り刻んだ食材19をかき集めることが可能である。このシートは片手障害者だけでなく健常者にも便利な調理用補助具となるものである。
【0031】
そして、片手障害者が本発明の片手操作可能なまな板を使用して、大根などを切り刻む時には、まず、大根を釘に突き刺して包丁で縦方向に半分に引き割り、平らになった面を下にして葉っぱとの付け根辺りを釘に突き刺して固定して切り刻んでいけばよい。ゴボウの皮を剥きたいときには、葉っぱに近い部分を釘に突き刺して、包丁の背側で軽く皮をコサゲれば良い。ジャガイモの皮を剥くときには、まず、ジャガイモを釘に突き刺して、包丁で半分に割り、平らな方を下にして釘に突き刺して、ピーラーで簡単に皮を剥くことが可能である。魚の場合でもサンマやイワシのシッポに近い方を釘に突き刺して包丁で鱗をコサゲ取る。次に腹をさいてワタを取り出してから、頭を切り除き、3枚におろすことでも簡単にできるようになる。
【0032】
以上のように片手障害者でも多くの食材の皮を剥いたり、切ったり、刻んだりすることが可能となる。そして、健常者にも使用できる共用品のまな板とすることも可能で、危険性も少なくなるため、台所に本発明の片手操作可能なまな板を置いておくことができやすくなる。又、本発明の穴あきまな板シートと併用して使用したら切り刻んだ食材を鍋に移す作業も格段に楽にできるようになる。それと、以上述べたように本発明の片手操作可能なまな板や穴あきまな板シートは構成がすこぶる簡単なため、安価に製造販売でき障害者でも買い求めやすくなる。
【0033】
本発明の片手操作可能なまな板1は、いろいろ試してみると次のような寸法構成が使いやすい。
(1)板部4は厚さ25〜30ミリ程度。通常の市販品の厚さであり使いやすい。材質は木製でもプラスチック製でもよい。
(2)釘の本数は3〜4本程度。一本だと食材がすぐに割れたり、回転しやすく固定しにくい。8本とか9本だと多すぎて大根など突き刺した部分が割れてしまい固定できなくなる。材質は錆びにくいステンレスSUS304が良い。
(3)釘の太さは1.5〜2.0ミリ程度。食材によって異なるが細すぎると食材が千切れやすい。太すぎると食材に突き刺さりにくく、無理すると人参などは突き刺した部分が割れてしまい固定できなくなることがある。
(4)釘の出た部分の長さは15〜20ミリ程度。長すぎて食材から上に飛び出ていると、作業中に手を引っ掻いたりして危険である。短すぎると食材を固定しにくいし食材が作業中に抜けることもある。
(5)釘群の広さ(釘間の距離)は20〜25ミリ程度。間隔が広すぎると小さい食材の場合、一か所くらいしか突き刺さらず、固定しにくくなる。狭すぎると食材を釘に刺すのに大きい力が必要となり無理に突き刺すと割れることもある。3本の釘が全て突き刺さるくらいが良いが2本でも良い。1本だけでは食材が割れたりして外れやすく、回転しやすく、良くない。
(6)基板やケースの厚さは3〜5ミリ程度、材質はプラスチック製が硬さや衛生面で優れている。
【産業上の利用可能性】
【0034】
近年、生活習慣病、メタボリック症候群、超高齢化が問題になっている。これらに起因して脳梗塞や脳内出血、くも膜下出血などの脳卒中が増加している。医学の進歩により死亡率は低下しているものの、その半面、生き残った人の60パーセント程度には生涯回復する見込みの少ない後遺障害が残るといわれている。脳卒中の後遺症は程度の差はあるものの多くが片麻痺障害者であり、全国で150万人以上ともいわれている。そして、その数は年々増え続けており社会福祉予算や医療費の増加の要因となっている。しかし、不本意ながら元気だったのがある日突然に中途障害者となった人達も、数年経過して障害を受け入れるようになると、出来るだけ充実した生活を送りたいという希望を持つようになり、社会もできるだけそれに答えてあげなくてはならない。
福祉センターや公民館の料理教室に本発明の共用品の片手操作可能なまな板を備えておけば、「片手でも料理できますよ」の料理教室の受講生が家庭でもこの便利なまな板を購入して使用するようになり、片手障害者の生活の質(QOL)を向上させる調理用補助具となるものである。
【符号の説明】
【0035】
1 まな板
4 板部
5 基板
6 釘
11 収納穴
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板部に設けた収納穴に、複数本の釘を植設した基板の表面または裏面が、まな板面と同一面となるように嵌合可能とした片手操作可能なまな板。
【請求項2】
板部を貫通した収納穴の上下に、前記基板を取り換え自在に嵌合可能とした請求項1記載の片手操作可能なまな板。
【請求項3】
嵌合手段がネジ式であり、ネジ移動により釘を収納穴より出没可能とした請求項1または2記載の片手操作可能なまな板。
【請求項4】
プラスチックシートに設けた掛止穴を前記片手操作可能なまな板の釘群に掛止し、このシートの上で食材を切り刻んだり運搬を可能とした片手操作可能なまな板用シート。
【請求項1】
板部に設けた収納穴に、複数本の釘を植設した基板の表面または裏面が、まな板面と同一面となるように嵌合可能とした片手操作可能なまな板。
【請求項2】
板部を貫通した収納穴の上下に、前記基板を取り換え自在に嵌合可能とした請求項1記載の片手操作可能なまな板。
【請求項3】
嵌合手段がネジ式であり、ネジ移動により釘を収納穴より出没可能とした請求項1または2記載の片手操作可能なまな板。
【請求項4】
プラスチックシートに設けた掛止穴を前記片手操作可能なまな板の釘群に掛止し、このシートの上で食材を切り刻んだり運搬を可能とした片手操作可能なまな板用シート。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−63870(P2010−63870A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−88944(P2009−88944)
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【特許番号】特許第4419175号(P4419175)
【特許公報発行日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(304007248)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【特許番号】特許第4419175号(P4419175)
【特許公報発行日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(304007248)
【Fターム(参考)】
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