説明

片軸受リール

【課題】片軸受リールにおいて、サミングスペースを確保しながら、ハンドルつまみをスプールに容易に取り付ける。
【解決手段】スプール3は、外周に釣り糸が巻かれ内周の軸方向一側が開口する凹部15aを有する筒状の糸巻胴部15と、糸巻胴部15の軸方向一側端部に凹部15aが露出するように設けられた第1フランジ16aと、糸巻胴部15の軸方向他側端部に第1フランジ16aと対向して設けられた第2フランジ16bと、外周部が糸巻胴部15の内周側に配置され内周部がスプール軸2に回転自在に装着されるボス部17と、糸巻胴部15とボス部17とを連結する連結部18と、第1フランジ16a側から糸巻胴部15の凹部15aに着脱可能に装着固定されるハンドルつまみ取付部材8と、ハンドルつまみ取付部材8の第1フランジ16a側先端部に取り付けられるハンドルつまみ7とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、片軸受リール、特に、釣竿に装着され、釣竿の長手方向と交差する軸に沿う軸回りに釣り糸を巻き取る片軸受リールに関する。
【背景技術】
【0002】
片軸受リールは、一般に、フライを使用する渓流釣りや筏や波止場や船から比較的浅場の魚を釣るのに使用される。片軸受リールは、リール本体と、リール本体に片持ち支持されたスプール軸と、スプール軸に回転自在に装着された糸巻き用のスプールとを有している(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
この種の片軸受リールのスプールは、外周に釣り糸が巻かれる筒状の糸巻胴部と、糸巻胴部のリール本体と逆側の露出側端部に形成された円盤状の第1フランジ(外フランジ)と、糸巻胴部のリール本体側端部に第1フランジと対向して形成された円盤状の第2フランジ(内フランジ)とを有している。糸巻胴部の内周部は、スプール軸が回転自在に支持されるボス部との間を円板状の連結部によって連結されており、第1フランジ側の糸巻胴部内周部は外方に露出するようになっている。また、第1フランジの糸巻胴部露出部分(略中央部分)を除いた環状の露出面には、第1フランジの外周近傍において、スプール軸と平行な軸に沿う軸回りに回転可能な棒状のハンドルつまみが取り付けられている。このようなハンドルつまみは、第1フランジに対して回転可能に固定されており、ハンドルつまみを把持して回転させることによってスプールが回転してスプールに釣り糸を巻き取ることができる。
【特許文献1】特開平11−253083号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来の片軸受リールのスプールでは、たとえば細い釣り糸を巻きつけるときには、太い釣り糸を下巻きする代わりに糸巻胴部の外周に大径のエコノマイザを装着し、糸巻胴部を外径を大きくすることが行われている。しかし、このようなエコノマイザを装着したり、リールと別部材のエコノマイザを保管したりするのは、釣人にとって非常に手間が掛かることがある。そこで、このようなエコノマイザを使用しなくて済むように、糸巻胴部自身を大径になるように形成した浅溝スプールを提供することが考えられる。ここでは、このような浅溝スプールを用いることにより、大径の糸巻胴部の外周に細い釣り糸を巻きつけることができる。
【0005】
しかし、このように糸巻胴部を大径に形成すると、外方に露出する第1フランジ側の糸巻胴部内周部の内径が大きくなり、このため、第1フランジの糸巻胴部露出部分を除いた環状の露出部分が狭くなるおそれがある。
【0006】
このように第1フランジの環状の露出部分が狭くなると、ハンドルつまみは第1フランジの環状の露出面に突出して固定されているので、ハンドルつまみを取り付けるスペースを確保するのが困難である。また、環状の露出部分が狭い第1フランジにハンドルつまみを取り付けることができたとしても、第1フランジの従来に比してさらに外周近傍にハンドルつまみが取り付けられることになるので、サミングを行うときに指がハンドルつまみに干渉してしまうおそれが生じる。
【0007】
本発明の課題は、片軸受リールにおいて、サミングスペースを確保しながら、ハンドルつまみをスプールに容易に取り付けることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明1に係る片軸受リールは、釣竿に装着され釣竿の長手方向と交差する軸に沿う軸回りに釣り糸を巻き取る片軸受リールであって、釣竿に装着されるリール本体と、リール本体に片持ち固定されたスプール軸と、スプールと、ハンドルつまみ取付部材と、ハンドルつまみとを備えている。スプールは、内周部がスプール軸に回転自在に装着されるボス部と、外周に釣り糸が巻かれ内周の少なくとも軸方向一側が開口する凹部を有する筒状の糸巻胴部と、糸巻胴部の内周部とボス部の外周部とを連結する円板状の連結部と、糸巻胴部の軸方向一側端部に凹部が露出するように設けられ糸巻胴部より大径の第1フランジと、糸巻胴部の軸方向他側端部に第1フランジと対向して設けられ糸巻胴部より大径の第2フランジとを有している。ハンドルつまみ取付部材は、第1フランジ側から凹部に着脱可能に装着固定される。ハンドルつまみは、ハンドルつまみ取付部材の第1フランジ側先端部に取り付けられ、スプール軸と平行な軸に沿う軸回りに回転可能な部材である。
【0009】
この片軸受リールでは、ハンドルつまみ取付部材は、第1フランジ側から凹部に着脱可能に装着固定され、ハンドルつまみは、ハンドルつまみ取付部材の第1フランジ側先端部に取り付けられている。ここでは、特に、糸巻胴部の外径が大径の浅溝スプールである場合には、外方に露出する糸巻胴部の内周部である凹部の内径が大きくなり、第1フランジの糸巻胴部の凹部が露出した部分を除いた環状の露出部分が狭くなることがあるが、このような場合でも、ハンドルつまみは第1フランジ側に開口する凹部に装着固定されたハンドルつまみ取付部材の先端部に固定されているので、第1フランジの環状の露出部分にハンドルつまみを取り付ける必要がなくなる。ここでは、ハンドルつまみは第1フランジの環状の露出部分より内周側に設けられることになるので、ハンドルつまみを取り付けるスペースを確保できるとともに、サミングを行うときに指がハンドルつまみに干渉しにくくなる。したがって、このような構成によって、サミングスペースを確保しながら、ハンドルつまみをスプールに容易に取り付けることができる。
【0010】
発明2に係る片軸受リールは、発明1の片軸受リールにおいて、ハンドルつまみ取付部材は、糸巻胴部の内周部に糸巻胴部の径方向から固定される。この場合、たとえばハンドルつまみ取付部材を連結部に軸方向にねじ止め固定するときには、ねじ部材の頭部を連結部に接触させるためのスペースを確保する必要があるが、ここではハンドルつまみ取付部材を糸巻胴部の径方向に固定しているので、ハンドルつまみ取付部材を糸巻胴部の内周部に接触でき、このためハンドルつまみ取付部材の先端部に固定されるハンドルつまみをできるだけ外周側に配置することができる。また、ハンドルつまみ取付部材のたとえばねじ止め固定が容易になるとともに、ハンドルつまみ取付部材の固定方向がハンドルつまみの回転軸と交差する方向なので、ハンドルつまみを回転させてもハンドルつまみ取付部材が外れにくくなる。
【0011】
発明3に係る片軸受リールは、発明1又は2の片軸受リールにおいて、連結部は、軸方向に貫通する貫通孔を有している。ハンドルつまみ取付部材は、貫通孔に挿通して糸巻胴部の内周部に固定される。この場合、スプール全体の軽量化が図れるとともに、外観に露出する連結部の意匠性を向上できる。
【0012】
発明4に係る片軸受リールは、発明3の片軸受リールにおいて、ハンドルつまみ取付部材は、貫通孔に挿通したときに貫通孔が形成されていない連結部の内側への突出部が係合可能な係合溝が形成されている。この場合、ハンドルつまみ取付部材を貫通孔に挿通させて係合溝を突出部に係合させることにより、ハンドルつまみ取付部材の装着固定が強固になる。また、ハンドルつまみ取付部材挿通用の貫通孔を、軽量化及び意匠性向上を目的とした貫通孔と兼用させることで、スプールの加工工程を増加させることなく、別に貫通孔を設ける場合に比して強度の低下や意匠性に影響を及ぼしにくくなる。
【0013】
発明5に係る片軸受リールは、発明1から4のいずれかの片軸受リールにおいて、スプールは、連結部のハンドルつまみ取付部材装着位置とスプール軸に対して対称となる位置に第1フランジ側から装着固定されるバランサをさらに有している。この場合、ハンドルつまみ取付部材装着位置とスプール軸に対して対称となる位置にバランサ(錘)を設けることにより、ハンドルつまみ及びハンドルつまみ取付部材を合わせた質量分だけ重量が一方向に偏るのを防止できる。
【0014】
発明6に係る片軸受リールは、発明1から5のいずれかの片軸受リールにおいて、リール本体、第1フランジ及び第2フランジの少なくともいずれかは、周方向に間隔をあけて複数並べて形成され軸方向に貫通する貫通孔を有している。この場合、スプール全体の軽量化が図れるとともに、外観に露出する連結部の意匠性を向上できる。
【0015】
発明7に係る片軸受リールは、発明1から6のいずれかの片軸受リールにおいて、糸巻胴部、第1フランジ及び第2フランジは、アルミニウム合金を切削加工することにより一体成形されている。この場合、たとえばアルミニウム合金のマシンカットにより糸巻胴部、第1フランジ及び第2フランジを一体成形することにより、加工性を向上できるとともに、高級感を演出できる。
【0016】
発明8に係る片軸受リールは、発明1から7のいずれかの片軸受リールにおいて、ハンドルつまみ取付部材は、ハンドルつまみを取り付けたときにハンドルつまみの一部が第1フランジの外周面に重なるように取り付けられる。この場合、ハンドルつまみは、ハンドルつまみの一部が第1フランジの外周面に重なるように、できるだけ外周側に配置されているので、巻き上げ力を軽くできる。
【0017】
発明9に係る片軸受リールは、発明1から8のいずれかの片軸受リールにおいて、ハンドルつまみ取付部材は、糸巻胴部の内周部の軸方向全体にわたって延びる部材である。この場合、ハンドルつまみとハンドルつまみ取付部材との合成重心位置を糸巻胴部内に位置させることができるので、バランサを第1フランジからあまり突出させることなく、スプール全体の動的バランスを向上させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、片軸受リールにおいて、ハンドルつまみ取付部材は、第1フランジ側から凹部に着脱可能に装着固定され、ハンドルつまみは、ハンドルつまみ取付部材の第1フランジ側先端部に取り付けられているので、サミングスペースを確保しながら、ハンドルつまみをスプールに容易に取り付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
〔全体の構成〕
図1から図3は、本発明の一実施形態による片軸受リールを示している。図1から図3において片軸受リールは、リール本体1と、リール本体1に片持ち支持されたスプール軸2と、スプール軸2に対して相対回転自在に配置され外周に釣り糸が巻かれるスプール3と、スプール3の一方向の回転を制動するドラグ機構4とを備えている。
【0020】
〔リール本体の構成〕
リール本体1は、一方側(図2左側)に円盤状の側板10を有し、他方側は開放されている。側板10の外周には、軸方向に延びる上下1対の保護部11a、11bが円周方向に所定の間隔で形成されている。上側の保護部11aには、この片軸受リールを釣竿に取り付けるための取付部12が設けられている。リール本体1は、図2及び図3に示すように、側板10の周方向に間隔をあけて複数(10箇所)並べて形成され軸方向に貫通する貫通孔10aを有している。
【0021】
〔スプール軸の構成〕
スプール軸2は、図2に示すように、その基端がリール本体1の側板10の中心部に形成されて雌ねじ孔10bにねじ込み固定されている。スプール軸2の基端部には、側板10の雌ねじ孔10bに螺合する雄ねじ2aが形成されている。この雄ねじ2aは、リール本体1の側板10の中心部から軸方向外方(図2左側)に突出している。また、スプール軸2の先端には、図2に示すように、環状溝2bと、環状溝2bより大径で先端が先細りの頭部2cとが形成されている。環状溝2bに隣接してスプール軸2の先端部を支持する滑り軸受21が装着される軸受支持部2dが形成されている。また、軸受支持部2dの基端側は、軸受支持部2dより大径に形成され、そこには、環状溝2eが形成されている。また、その基端側には雄ねじ2aに隣接して互いに平行な面取り部2fが形成されている。この面取り部2fにスパナなどの工具を係止してスプール軸2を側板10にねじ込むことができる。
【0022】
〔スプールの構成〕
スプール3は、図1から図4に示すように、後述する糸巻胴部15の外径が大径になるように形成された、いわゆるラージアーバーリールといわれる浅溝スプールである。スプール3は、図1から図4に示すように、外周に釣り糸が巻かれ内周の少なくとも軸方向一側(図2右側)が開口する凹部15aを有する筒状の糸巻胴部15と、糸巻胴部15の軸方向一側端部に凹部15aが露出するように設けられ糸巻胴部15より大径の第1フランジ16aと、糸巻胴部15の軸方向他側端部に第1フランジ16aと対向して設けられ糸巻胴部15より大径の第2フランジ16bと、外周部が糸巻胴部15の内周側に配置され内周部がスプール軸2に回転自在に装着されるボス部17と、糸巻胴部15とボス部17とを連結する円板状の連結部18とを有している。
【0023】
糸巻胴部15は、外周に釣り糸が巻かれる筒状部材であって、内周部が第1フランジ16a側外方(図2右側)に開口するような凹部15aが形成されている。凹部15aは、糸巻胴部15の内周部と連結部18の第1フランジ16a側外方面(図2右側)とで囲まれた凹陥部である。糸巻胴部15、第1フランジ16a及び第2フランジ16b、ボス部17、連結部18は、アルミニウム合金を切削加工(マシンカット)することにより一体成形されている。糸巻胴部15は、図2及び図3に示すように、周方向に間隔をあけて複数(2列10箇所)並べて形成され径方向に貫通する円形の抜き孔である貫通孔15bを有している。第1フランジ16aは、図1から図3に示すように、周方向に間隔をあけて複数(36箇所)並べて形成され軸方向に貫通する円形の抜き孔である貫通孔16eを有している。第2フランジ16bは、図2及び図3に示すように、周方向に間隔をあけて複数(36箇所)並べて形成され軸方向に貫通する円形の抜き孔である貫通孔16fを有している。連結部18は、図1から図3に示すように、周方向に間隔をあけて大小複数(大5箇所、小6箇所)互い違いになるように並べて形成され軸方向に貫通する円形の抜き孔である貫通孔18a、18bを有している。これらの貫通孔15b、16e、16f、18a、18bは、後加工による切削加工(マシンカット)を行うことにより形成されている。
【0024】
第1フランジ16aは、図1から図3に示すように、糸巻胴部15の他端部(図2右側)にリール本体1の開放部を覆うように一体で形成され、第2フランジ16bは、糸巻胴部15の一端部(図2左側)に糸巻胴部15と一体で形成されている。第1フランジ16aは、第2フランジ16bと対向するように第2フランジ16bより大径に形成され、第2フランジ16bは、リール本体1の側板10と対向するように形成されている。また、糸巻胴部15、第1フランジ16aは、図2に示すように、糸巻胴部15の外径(糸巻胴部15の半径Aの2倍)が、第1フランジ16aの外径(第1フランジ16aの半径Bの2倍)の、70%以上90%以下、望ましくは75%以上85%以下となるように形成されている。具体的には、図2では、糸巻胴部15の外径(糸巻胴部15の半径Aの2倍)が、第1フランジ16aの外径(第1フランジ16aの半径Bの2倍)の82%である。
【0025】
ボス部17は、スプール軸2が貫通可能な貫通孔17aを有する筒状の部材であり、先端側は蓋部材31で塞がれている。ボス部17は、スプール軸2が貫通する先端面に貫通孔17aと同芯に形成された円形の装着空間を有している。ボス部17の先端部外周面には、雄ねじ17bが形成されており、蓋部材31が着脱自在に螺合している。また、スプール3は、ボス部17の基端部に装着された玉軸受22と、ボス部17の先端部に装着された滑り軸受21とによりスプール軸2に回転自在に装着されている。また、滑り軸受21と玉軸受22との間には、ローラクラッチ23が装着されている。
【0026】
連結部18は、図1から図4に示すように、糸巻胴部15の内周部とボス部17の外周部とを連結する円板部材である。連結部18の外側面(図2右側)は、糸巻胴部15の凹部15aを生成する底部となっており、連結部18の外側面には、ハンドルつまみ7が装着されるハンドルつまみ取付部材8と、ハンドルつまみ7と中心対象に配置されたバランサであるバランスウェイト16cとが装着されている。バランスウェイト16cは、金属製の円柱部材であって、連結部18の外周側(図2右側)から装着され、連結部18の内周側(図2左側)から装着されたボルト16dによって、連結部18に固定されている。なお、バランスウェイト16cは、貫通孔18a、18bを避けた位置に配置されており、具体的には、図1に示すように、5箇所の大きい貫通孔18aと等間隔となる位置に、かつハンドルつまみ7が装着されるハンドルつまみ取付部材8が挿入される大きい貫通孔18aと対称となる位置に配置されている。
【0027】
〔ハンドルつまみの構成〕
ハンドルつまみ7は、図1から図4に示すように、ハンドルつまみ取付部材8の第1フランジ16a側先端部に取り付けられ、スプール軸2と平行な軸に沿う軸回りに回転可能な柱状部材である。ハンドルつまみ7は、図4に示すように、釣人が指先で摘むための筒状の本体部材7aと、本体部材7aの内周部に相対回転可能に先端部(図4右側)から取り付けられるボルト7bと、ボルト7bに取り付けられ本体部材7aの基端部とハンドルつまみ取付部材8の先端部との間に介装されるワッシャ7cとを有している。ここでは、ボルト7bの先端部外周に形成された雄ねじ7dを、後述するハンドルつまみ取付部材8の雌ねじ8dに螺合させることによって、ハンドルつまみ7をハンドルつまみ取付部材8に固定している。
【0028】
〔ハンドルつまみ取付部材の構成〕
ハンドルつまみ取付部材8は、図1から図4に示すように、第1フランジ16a側から糸巻胴部15の凹部15aに着脱可能に装着固定される略円柱状部材であり、先端部にハンドルつまみ7を取り付けるための部材である。ハンドルつまみ取付部材8は、図4に示すように、連結部18に形成された大きな貫通孔18aの1つに第1フランジ16a側から軸方向に挿入され、糸巻胴部15に形成された2つの貫通孔15bにそれぞれ径方向外周側から装着されたボルト9a、9bによって固定されている。
【0029】
ハンドルつまみ取付部材8は、略円柱状の本体部材8aを有しており、本体部材8aの径は連結部18の大きな貫通孔18aの径よりやや小径となるように形成されている。ここでは、ハンドルつまみ取付部材8挿通用の連結部18の大きな貫通孔18aを、軽量化及び意匠性向上を目的とした大きな貫通孔18aと兼用させることで、スプール3の加工工程を増加させることなく、別にハンドルつまみ取付部材8挿通用の貫通孔を設ける場合に比して強度の低下や意匠性に影響を及ぼしにくくなる。また、ここでは、ボルト9a、9bによってハンドルつまみ取付部材8を糸巻胴部15の径方向に固定しているので、ハンドルつまみ取付部材8を糸巻胴部15の内周部に接触でき、このため、ハンドルつまみ取付部材8の先端部に固定されるハンドルつまみ7をできるだけ外周側に配置することができる。また、ハンドルつまみ取付部材8のたとえばねじ止め固定が容易になるとともに、ハンドルつまみ取付部材8の固定方向がハンドルつまみ7の回転軸と交差する方向なので、ハンドルつまみ7を回転させてもハンドルつまみ取付部材8が外れにくくなる。また、ハンドルつまみ取付部材8は、糸巻胴部15の内周部の軸方向全体にわたって延びる部材である。ここでは、ハンドルつまみ7とハンドルつまみ取付部材8との合成重心位置が糸巻胴部15内に位置することになるので、バランスウェイト16cを第1フランジ16aから突出させることなく、スプール3全体の動的バランスを向上させることができる。
【0030】
ハンドルつまみ取付部材8は、外周部の中腹部と先端部との2箇所に周方向にそれぞれ凹んで形成された係合溝8b及び係止溝8cを有している。係合溝8bは、ハンドルつまみ取付部材8に連結部18の大きな貫通孔18aに挿通したときに、貫通孔18aが形成されていない連結部18の内側への突出部18cが係合可能な係合溝である。ここでは、ハンドルつまみ取付部材8を貫通孔18aに挿通させて、係合溝8bを突出部18cに係合させることにより、ハンドルつまみ取付部材8の糸巻胴部15への装着固定が強固になる。係止溝8cは、糸巻胴部15の凹部15aの開口端部に係止可能な係止溝であって、係止溝8cが凹部15aの開口端部に係止されることによってハンドルつまみ取付部材8が軸方向内方(図4左側)に移動するのを規制できる。また、ハンドルつまみ取付部材8の本体部材8aの外周部は、糸巻胴部15の内周部に固定される部分が糸巻胴部15内周部の円弧に沿うように切り欠き切削されており、これによってハンドルつまみ7の軸芯位置を外周側(図4では下側)に偏移させている。これによって、ハンドルつまみ取付部材8は、ハンドルつまみ7を取り付けたときにハンドルつまみ7の一部が第1フランジ16aの外周面に重なるように取り付けられる。ここでは、ハンドルつまみ7の軸芯位置が外周側に偏移しているので、巻き上げ力を軽くすることができる。
【0031】
ハンドルつまみ取付部材8の先端面は、第1フランジ16aの外周面と略同一またはよりやや内側となる位置に配置されており、このため、ハンドルつまみ7の取り付け位置を従来の第1フランジ16aの表面位置に合わせることができるので、この場合には、従来の第1フランジ16aの表面に固定していたハンドルつまみ7を新たに加工することなくそのまま転用することができる。また、ハンドルつまみ取付部材8の先端部には、前述した雌ねじ8dが形成されており、ボルト7bの雄ねじ7dを螺合させることによって、ハンドルつまみ7がハンドルつまみ取付部材8に取り付けられる。
【0032】
〔ローラクラッチの構成〕
ローラクラッチ23は、図2及び図3に示すように、スプール3に着脱自在に装着され、ドラグ機構4が糸繰り出し方向でのみ作動するように設けられている。ローラクラッチ23は、図2に示すように、ボス部17の内周面に形成された係止溝に回転不能に装着された外輪25と、スプール軸2に回転自在に装着された内輪26と、外輪25と内輪26との間に両者に接触可能に配置された、たとえば6つのローラ27とを有する内輪遊転形のワンウェイクラッチである。ローラ27は、図示しない保持器により外輪25内に装着されている。
【0033】
〔ワンタッチ着脱機構の構成〕
スプール3は、図1から図3に示すように、糸巻胴部15、第1フランジ16a及び第2フランジ16b、ボス部17、連結部18をワンタッチでスプール軸2から取り外すためのワンタッチ着脱機構6とをさらに有している。
【0034】
ワンタッチ着脱機構6は、図2に示すように、スプール軸2の環状溝2bに係止される弾性線材製のばね部材30と、ばね部材30を抜け止めするために装着空間を覆うようにボス部17の先端にねじ込み固定された蓋部材31と、蓋部材31に軸方向移動自在に装着されたプッシュボタン32と、ばね部材30を蓋部材31との間に配置するためのばね配置部材として機能する前述した滑り軸受21とを有している。
【0035】
〔ドラグ機構の構成〕
ドラグ機構4は、図2及び図3に示すように、内輪に回転不能に係止される回転円板40と、リール本体1にスプール軸2に沿う軸方向に移動自在かつ回転不能に装着され回転円板40に圧接可能な、たとえば2枚の制動円板41、42と、リール本体1に軸方向に移動可能に設けられ制動円板41、42を回転円板40側に圧接するための圧接機構43とを有している。回転円板40と制動円板41との間には、両者の相対回転、つまりドラグ作動時に発音する第1発音機構47が設けられている。また、圧接機構43には、ドラグ力を調整する際に発音する第2発音機構48が設けられている。
【0036】
圧接機構43は、操作つまみ51と、操作つまみ51により押圧される3枚の皿ばね52と、皿ばねにより押圧されるワッシャ53と、ワッシャ53により押圧される、たとえば3本の押圧ピン54とを有している。ここでは、皿ばね52のバネ力を操作つまみ51の回動操作により調整することで、制動円板41、42と回転円板40とドラグリング44と耳付きリング45との摩擦力が変化しドラグ力を調整できる。
【0037】
次に動作について説明する。
【0038】
スプール3の糸巻胴部15の外周に釣り糸を巻き取る際には、ハンドルつまみ7を操作してスプール3を回転させる。スプール3はスプール軸2に対して相対回転する。このとき、ローラクラッチ23は遮断されるので、外輪25は自由に回転してスプール3の巻取り方向の回転は許容される。このため、スプール3はスムーズに回転するようになっている。
【0039】
スプール3から釣り糸を繰り出す際には、スプール3は前記とは逆方向に回転する。このとき、ローラクラッチ23は、連結されるので、内輪26も外輪25とともに回転しようとする。しかし、内輪26は、回転円板40を介して制動円板41、42、耳付きリング45により制動されているので、回転力に対して皿ばね52により設定された抵抗力(ドラグ力)が作用している。このため、スプール3が必要以上に回転して釣り糸が過剰に引き出されるのを防止でき、糸からみを避けることができる。
【0040】
また、このような釣り糸の繰り出し時には、回転円板40はスプール3とともに回転し、制動円板41、42、耳付けリング45はその回転が禁止されているので、制動円板40、41が相対回転し第1発音機構47が発音するようになっている。
【0041】
このような片軸受リールのスプール3では、ハンドルつまみ取付部材8は、第1フランジ16a側から糸巻胴部15の凹部15aに着脱可能に装着固定され、ハンドルつまみは7、ハンドルつまみ取付部材8の第1フランジ16a側先端部に取り付けられている。ここでは、糸巻胴部15の外径が大径になるように形成された、いわゆるラージアーバーリールといわれる浅溝スプールであるので、外方に露出する糸巻胴部15の内周部である凹部15aの内径が大きくなり、第1フランジ16aの糸巻胴部15の凹部15aが露出した部分を除いた環状の露出部分が狭くなるが、このような場合でも、ハンドルつまみ7は第1フランジ16a側に開口する糸巻胴部15の凹部15aに装着固定されたハンドルつまみ取付部材8の先端部に固定されているので、第1フランジ16aの環状の露出部分にハンドルつまみ7を取り付ける必要がなくなる。ここでは、ハンドルつまみ7は第1フランジ16aの環状の露出部分より内周側に設けられることになるので、ハンドルつまみ7を取り付けるスペースを確保できるとともに、サミングを行うときに指がハンドルつまみ7に干渉しにくくなる。したがって、このような構成によって、サミングスペースを確保しながら、ハンドルつまみ7をスプール3に容易に取り付けることができる。
【0042】
〔他の実施形態〕
(a) 前記実施形態では、片軸受リールのスプール3として、糸巻胴部15の外径(糸巻胴部15の半径Aの2倍)が、第1フランジ16aの外径(第1フランジ16aの半径Bの2倍)の82%となる浅溝スプールを例示したが、これに限定されるものではなく、糸巻胴部15の外径(糸巻胴部15の半径Aの2倍)が、第1フランジ16aの外径(第1フランジ16aの半径Bの2倍)の、70%以上90%以下、望ましくは75%以上85%以下となるような浅溝スプールであればよい。
【0043】
(b) 前記実施形態では、リール本体1の側板10、糸巻胴部15、第1フランジ16a、第2フランジ16b、連結部18には、それぞれ、貫通孔10a、貫通孔15b、貫通孔16e、16f、貫通孔18a、18bが設けられていたが、少なくとも1つの大きな貫通孔18aと2つの貫通孔15bを除いてこれらの一部を設けない構成にしてもよい。また、貫通孔10a、貫通孔15b、貫通孔16e、16f、貫通孔18a、18bの形状や個数や配置は前記実施形態に限定されるものではない。
【0044】
(c) 前記実施形態では、係合溝8bを突出部18cに係合させていたが、図4に示すように、1つの大きな貫通孔18aを糸巻胴部15内周部位置まで大きくすることにより突出部18cを設けず、ハンドルつまみ取付部材8に係合溝8bを設けない構成にしてもよい。
【0045】
(d) 前記実施形態では、ハンドルつまみ取付部材8は2つのボルト9a、9bによって糸巻胴部15に固定されていたが、図5に示すように、1つのボルト9bによってハンドルつまみ取付部材8を固定する構成にしてもよい。また、ハンドルつまみ取付部材8の固定手段はボルト9a、9bに限定されるものではなく、他の固定手段であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施形態による片軸受リールの正面図。
【図2】その片軸受リールの側断面図。
【図3】片軸受リールの分解斜視図。
【図4】図2の要部の拡大断面図。
【図5】他の実施形態の図4に相当する図。
【図6】他の実施形態の図4に相当する図。
【符号の説明】
【0047】
1 リール本体
2 スプール軸
3 スプール
7 ハンドルつまみ
7a 本体部材
7b ボルト
7c ワッシャ
7d 雄ねじ
8 ハンドルつまみ取付部材
8a 本体部材
8b 係合溝
8c 係止溝
8d 雌ねじ
9a、9b ボルト
10 側板
10a 貫通孔
15 糸巻胴部
15a 凹部
15b 貫通孔
16a 第1フランジ
16b 第2フランジ
16c バランスウェイト
16d ボルト
16e、16f 貫通孔
17 ボス部
18 連結部
18a、18b 貫通孔
18c 突出部
A 糸巻胴部の半径
B 第1フランジの半径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣竿に装着され、前記釣竿の長手方向と交差する軸に沿う軸回りに釣り糸を巻き取る片軸受リールであって、
前記釣竿に装着されるリール本体と、
前記リール本体に片持ち固定されたスプール軸と、
内周部が前記スプール軸に回転自在に装着されるボス部と、外周に釣り糸が巻かれ内周の少なくとも軸方向一側が開口する凹部を有する筒状の糸巻胴部と、前記糸巻胴部の内周部と前記ボス部の外周部とを連結する円板状の連結部と、前記糸巻胴部の軸方向一側端部に前記凹部が露出するように設けられ前記糸巻胴部より大径の第1フランジと、前記糸巻胴部の軸方向他側端部に前記第1フランジと対向して設けられ前記糸巻胴部より大径の第2フランジとを有するスプールと、
前記第1フランジ側から前記凹部に着脱可能に装着固定されるハンドルつまみ取付部材と、
前記ハンドルつまみ取付部材の前記第1フランジ側先端部に取り付けられ、前記スプール軸と平行な軸に沿う軸回りに回転可能なハンドルつまみと、
を備えた片軸受リール。
【請求項2】
前記ハンドルつまみ取付部材は、前記糸巻胴部の内周部に前記糸巻胴部の径方向から固定される、請求項1に記載の片軸受リール。
【請求項3】
前記連結部は、軸方向に貫通する貫通孔を有しており、
前記ハンドルつまみ取付部材は、前記貫通孔に挿通して前記糸巻胴部の内周部に固定される、請求項1又は2に記載の片軸受リール。
【請求項4】
前記ハンドルつまみ取付部材は、前記貫通孔に挿通したときに前記貫通孔が形成されていない前記連結部の内側への突出部が係合可能な係合溝が形成されている、請求項3に記載の片軸受リール。
【請求項5】
前記スプールは、前記連結部の前記ハンドルつまみ取付部材装着位置と前記スプール軸に対して対称となる位置に前記第1フランジ側から装着固定されるバランサをさらに有している、請求項1から4のいずれか1項に記載の片軸受リール。
【請求項6】
前記リール本体、前記第1フランジ及び前記第2フランジの少なくともいずれかは、周方向に間隔をあけて複数並べて形成され軸方向に貫通する貫通孔を有している、請求項1から5のいずれか1項に記載の片軸受リール。
【請求項7】
前記糸巻胴部、前記第1フランジ及び前記第2フランジは、アルミニウム合金を切削加工することにより一体成形されている、請求項1から6のいずれか1項に記載の片軸受リール。
【請求項8】
前記ハンドルつまみ取付部材は、前記ハンドルつまみを取り付けたときに前記ハンドルつまみの一部が前記第1フランジの外周面に重なるように取り付けられる、請求項1から7のいずれか1項に記載の片軸受リール。
【請求項9】
前記ハンドルつまみ取付部材は、前記糸巻胴部の内周部の軸方向全体にわたって延びる部材である、請求項1から8のいずれか1項に記載の片軸受リール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−178349(P2008−178349A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−14473(P2007−14473)
【出願日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】