説明

版パレット内版ずれ制限

本装置は、CTP(computer-to-plate)イメージング装置内で版を扱う際に、版パレット(13)上に山積している版の動きを制限する装置である。本装置は、版(11)の山及びそれを載せた版パレット(13)が載る版パレットアダプタ(17)と、版(11)の山の一辺又は複数辺に当接しその版の動きを制限する1個又は複数個のリミッタ(19,51)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予め版パレットに収められている印刷版をCTP(computer-to-plate)イメージング装置内で適正配列する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属、紙、プラスチック等で形成されたシート、版等の山を扱うシステム及び分野は数多くある。印刷版(以下単に「版」)の場合、保護、輸送及び取扱の便を考え、山積みにして版パレットに収めるのが普通である。
【0003】
他方、その版を使用する装置には一般に所定寸法のカセットが備わっている。そうしたカセットには様々な版寸法向けのものがあるが、同じカセット例えばトレイには同一寸法の版しか装填することができない。版は紙シート(いわゆる仕切り紙)で仕切られ版パレットに収まっているので、版パレットから版をマニュアルで取り出しその装置のカセットに装填することで、イメージング装置等でその版を使用することができる。
【0004】
こうして版が装填されたカセット乃至トレイは重くて嵩張るので、版パレットからカセット内への版の装荷等に際しカセットを動かす機構が複雑で高価なものとなり、カセットを動かすための時間も長くかかってしまう。こうしたことから、広く認識されている通り、その過程で版の位置を精密に保ちつつ大本の版パレットからイメージング装置へと直接的に版を供給できる自動的且つ効率的な版取扱システムが求められてきた。本願出願人を譲受人とする米国特許出願第12/045058号に記載の発明は、この要請に対処するためのものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第4765606号明細書
【特許文献2】国際公開第WO2009/114058号パンフレット(A1)
【特許文献3】独国実用新案出願公開第2004/008049号明細書(U1)
【特許文献4】英国特許出願公開第2288585号明細書(A)
【特許文献5】実開昭58−168740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、版の製造元からユーザの許に届くのは、通常、その間に仕切り紙を挟み600枚以上も版パレット上に山積みにされた版である。そのため、版の製造元からユーザの許に版を届ける際や、版パレットを版装荷装置内に搬入する際や、版パレット内の版をイメージング装置内に装荷する際に、版が本来の位置からずれ又は落下することがある。
【0007】
本願で提案するのはこうした問題についての解決策である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ここに、本発明の一実施形態は、CTPイメージング装置内で版を扱う際に版パレット上に山積している版の動きを制限する装置であって、版の山を載せた版パレットが載る版パレットアダプタと、版の山の一辺又は複数辺に当接しその版の動きを制限する1個又は複数個のリミッタと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】リミッタを伴う版パレットを示す模式的斜視図である。
【図2】リミッタを伴う版パレットを示す模式的上面図である。
【図3】リミッタを伴う版パレットを示す模式的断面図である。
【図4】版装填済のAPL(automatic plate loader)装置の模式的斜視図である。
【図5】版の山の複数辺に当接するよう配設された複数種類のリミッタを伴う版パレットを示す模式的斜視図である。
【図6A】開状態となっているリミッタの模式的斜視図である。
【図6B】閉状態となっていてその縮壊セグメント及び固定セグメントが折り重なっているリミッタの模式的斜視図である。
【図7A】開状態となっているリミッタの模式的断面図である。
【図7B】閉状態となっていてその縮壊セグメント及び固定セグメントが折り重なっているリミッタの模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本件技術分野で習熟を積まれた方々(いわゆる当業者)が上述のものを含め本発明の目的、構成及び効果をより好適に理解できるよう、その具体的な実施形態を示す図面を参照し本発明について詳細に説明する。
【0011】
まず、本発明の実施形態に係る装置及び方法では、版パレットが製造時の状態でCTPイメージング装置に装填される。製造時の状態で通常のフォークリフト機械により版パレットをCTPイメージング装置に装填すると、往々にして、版装荷システムに対する版パレットの位置関係が不正確になってしまう。他方で、版装荷システムでは高い位置精度条件を充足することが求められる。相反するこれらの要請に応えるため、本発明の実施形態では、その上に版が山積みになっている版パレットを、CTPイメージング装置に装着されているAPL装置に供給し、APL装置に供給された版パレット上で山11をなしている版を版装荷装置に対し精密に配置・整列させ、その版パレットから版装荷装置へと直に送り込むようにしている。
【0012】
図1〜図3に、版11及びそれが積まれた版パレット13を示す。それら版11及びパレット13は製造元から届いたときと同じ形態であり、図4に示すAPL装置40への装填に備え、印刷現場にある版パレットアダプタ17上に配置されている。
【0013】
更に、こうした版11の山をしっかりと固定し、様々な運搬工程やイメージング装置への装填工程で版11や仕切り紙がずれることを防ぐため、版リミッタ19が導入されている。リミッタ19は、版11で形成されている山の一辺又は複数辺に当接するよう、リミッタ支持枠15を介し版パレットアダプタ17に固定されている。1個又は複数個のリミッタ19によりパレット13の片側から押されるため、山積している版11がずれにくい。
【0014】
図5にリミッタの別例を示す。図中、リミッタ51は、山積している版11がずれにくくなるよう、版パレット13にしっかりと固定されている。リミッタ51の装着は版の製造元及び印刷現場のいずれで行ってもよい。同図には、更に、リミッタ19及びそれを支持するリミッタ支持枠15も示されている。リミッタ19がその一辺に当接し、パレット13に装着されているリミッタ51が残りの全辺に当接しているので、山をなす版11はよりずれにくくなっている。更に、これらのリミッタ19,51は少なくとも二種類の部分で構成されている。図6A〜図7Bにそうしたリミッタ構造60の一例を示す。この構造60は、その基部にありパレット13又はそのアダプタ17への固定に使用されるリミッタブラケット68に、更に2個の構成要素を連結した構成を有している。そのうち第1の構成要素は、その一端がブラケット68に装着された固定リミッタセグメント62であり、第2の構成要素は、ヒンジ66を介し固定リミッタセグメント62の他端に連結された縮壊リミッタセグメント64である。
【0015】
山をなす版11の枚数が多く背の高いリミッタが必要な段階では、リミッタ19,51は開状態とされる。開状態とは、図6A及び図7Aに示すように、固定リミッタセグメント62の頂部上に縮壊リミッタセグメント64が立っている状態である。この状態では、両セグメント62,64が協働し、山の全高に亘り版11のずれを制止する。
【0016】
山をなす版11の枚数がある限度を下回るに至った段階では、リミッタ19,51は閉状態とされる。閉状態とは、図6B及び図7Bに示すように、縮壊リミッタセグメント64が畳まれ固定リミッタセグメント62に重なっている状態である。この状態では、固定リミッタセグメント62のみで制止が行われる。
【0017】
以上、その好適な実施形態を参照し本発明について詳細に説明したが、本発明の技術的範囲内で様々な変形及び改良を施せる点をご理解頂きたい。
【符号の説明】
【0018】
11 山積みされている版、13 版パレット、15 リミッタ支持枠、17 版パレットアダプタ、19,51 リミッタ、40 APL装置、60 リミッタ構造、62 固定リミッタセグメント、64 縮壊リミッタセグメント、66 ヒンジ、68 リミッタブラケット(基部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
版の山を載せた版パレットが載る版パレットアダプタと、
版の山の一辺又は複数辺に当接しその版の動きを制限する1個又は複数個のリミッタと、
を備え、CTP(computer-to-plate)イメージング装置内で版を扱う際に版パレット上に山積している版の動きを制限する装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置であって、リミッタが版パレットアダプタに装着されている装置。
【請求項3】
請求項1記載の装置であって、リミッタが版パレットに装着されている装置。
【請求項4】
請求項1記載の装置であって、版パレットアダプタに沿いリミッタが横並びに配置されている装置。
【請求項5】
請求項1記載の装置であって、それぞれ版の山の一辺又は複数辺の動きを制限するリミッタが版パレットアダプタに複数個装着されている装置。
【請求項6】
請求項1記載の装置であって、リミッタが高さ調整要素を有する装置。
【請求項7】
請求項1記載の装置であって、リミッタが、複数個のリミッタセグメント間を連結要素で連結した構成を有する装置。
【請求項8】
請求項7記載の装置であって、作動時に開状態と閉状態を採りうるようリミッタが構成されている装置。
【請求項9】
請求項7記載の装置であって、開状態ではリミッタセグメントの先に別のリミッタセグメントが連なって延びる状態となる装置。
【請求項10】
請求項7記載の装置であって、閉状態では複数個のリミッタセグメントが折り重なった状態となる装置。
【請求項11】
請求項7記載の装置であって、リミッタの状態を安定化するスプリングを備える装置。
【請求項12】
請求項7記載の装置であって、リミッタの状態を安定化する磁石を備える装置。
【請求項13】
請求項7記載の装置であって、連結要素がヒンジである装置。
【請求項14】
請求項7記載の装置であって、連結要素がその両側のリミッタセグメントと一体な装置。
【請求項15】
版の山を載せた版パレットを版パレットアダプタに載せるステップと、
1個又は複数個のリミッタを版の山の一辺又は複数辺に当接させその版の動きを制限するステップと、
を有し、CTP(computer-to-plate)イメージング装置内で版を扱う際に版パレット上に山積している版の動きを制限する方法。
【請求項16】
請求項15記載の方法であって、リミッタを版パレットアダプタに装着する方法。
【請求項17】
請求項15記載の方法であって、リミッタを版パレットに装着する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【公表番号】特表2012−502868(P2012−502868A)
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−527807(P2011−527807)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際出願番号】PCT/US2009/005077
【国際公開番号】WO2010/033165
【国際公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】