物体検出センサおよび物体検出方法
【課題】物体検出の精度を向上させる。
【解決手段】物体検出センサは、レーザ光を放射する半導体レーザ1と、半導体レーザ1から放射されたレーザ光とその戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出するフォトダイオード2および電流−電圧変換増幅部5と、電流−電圧変換増幅部5の出力信号に含まれる干渉波形の周期を計測する信号抽出部7と、信号抽出部7の計測結果に基づいて、レーザ光の放射方向に出現した物体11の存在を検出するか、あるいは初期状態からレーザ光の放射方向に存在する物体11の運動の変化を検出する物体検出部8とを備える。
【解決手段】物体検出センサは、レーザ光を放射する半導体レーザ1と、半導体レーザ1から放射されたレーザ光とその戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出するフォトダイオード2および電流−電圧変換増幅部5と、電流−電圧変換増幅部5の出力信号に含まれる干渉波形の周期を計測する信号抽出部7と、信号抽出部7の計測結果に基づいて、レーザ光の放射方向に出現した物体11の存在を検出するか、あるいは初期状態からレーザ光の放射方向に存在する物体11の運動の変化を検出する物体検出部8とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザから放射したレーザ光とその戻り光との自己結合効果によって生じる干渉の情報から、レーザ光の放射方向の物体の有無や物体の運動の変化を検出する物体検出センサおよび物体検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ光と測定対象からの戻り光との半導体レーザ内部での干渉(自己結合効果)を利用した自己結合型のレーザ計測器では、物体の検出に時間がかかるという問題点があった。そこで、発明者は、物体の高速検出が可能な物体検出センサを提案した(特許文献1参照)。図18は特許文献1に開示された物体検出センサの構成を示すブロック図である。
【0003】
図18の物体検出センサは、レーザ光を放射する半導体レーザ201と、半導体レーザ201の光出力を電気信号に変換する受光器であるフォトダイオード202と、半導体レーザ201からの光を集光して放射すると共に、物体212からの戻り光を集光して半導体レーザ201に入射させるレンズ203と、半導体レーザ201を駆動するレーザドライバ204と、フォトダイオード202の出力電流を電圧に変換して増幅する電流−電圧変換増幅器205と、電流−電圧変換増幅器205の出力電圧から搬送波を除去するフィルタ回路206と、フィルタ回路206の出力電圧に含まれる自己結合信号であるモードホップパルス(以下、MHP)の数を数える計数装置207と、MHPの数に基づいて物体212との距離及び物体212の速度を算出する演算装置208と、演算装置208の算出結果を表示する表示装置209と、半導体レーザ201の放射方向に物体212が存在するかどうかを検出する物体検出装置211とを有する。
【0004】
物体検出装置211は、MHPの周期を検出し、静止している反射壁面210によるMHPの周期と異なる周期のMHPが所定の条件を満たすときに、レーザ光の放射方向に物体212が存在すると判定する。より具体的には、物体検出装置211は、MHPの数を数える計数期間中のMHPの周期をMHPが入力される度に測定し、この周期の測定結果から計数期間中のMHPの周期の度数分布を作成し、度数分布からMHPの周期の分布の代表値T0を算出し、レーザ光の1周期前の計数期間において算出された代表値T0に対して、現在の計数期間中の検出期間において周期がこの代表値T0の所定数倍よりも長いMHPの個数Nを求め、検出期間中に周期が測定されたMHPの全個数Nallに対する個数Nの割合N/Nallが所定の閾値以上のときに、レーザ光の放射方向に物体212が存在すると判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−092461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された物体検出センサによれば、自己結合型のレーザ計測器よりも高速に物体を検出することができる。しかしながら、特許文献1に開示された物体検出センサでは、MHPの周期に誤差があるため、物体検出の精度が低いという問題点があった。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、物体検出の精度を向上させることができる物体検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の物体検出センサは、レーザ光を放射する半導体レーザと、発振波長が連続的に単調増加する第1の発振期間と発振波長が連続的に単調減少する第2の発振期間のうち少なくとも一方が繰り返し存在するように前記半導体レーザを動作させる発振波長変調手段と、前記半導体レーザから放射されたレーザ光とその戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する検出手段と、この検出手段の出力信号に含まれる前記干渉波形の周期を干渉波形が入力される度に計測する信号抽出手段と、この信号抽出手段の計測結果を記憶する記憶手段と、この記憶手段に記憶された1つの干渉波形の周期を注目周期としたとき、この注目周期の直前に計測され前記記憶手段に記憶された複数の干渉波形の周期の分布の代表値と前記注目周期の直後に計測され前記記憶手段に記憶された複数の干渉波形の周期の分布の代表値とを算出する代表値算出手段と、前記注目周期を補正対象の干渉波形の周期とし、この補正対象の干渉波形の周期と2つの前記代表値とを比較することにより前記補正対象の干渉波形の周期を補正し、この補正の結果に従って前記記憶手段に記憶された周期を更新する周期補正手段と、前記代表値算出手段が算出した2つの代表値のうち小さい方をT1、大きい方をT2としたとき、代表値T1に基づくしきい値と代表値T2とを比較することにより、前記レーザ光の放射方向に出現した物体の存在を検出するか、あるいは初期状態から前記レーザ光の放射方向に存在する物体の運動の変化を検出する物体判定手段とを備え、前記干渉波形の周期の分布の代表値は、移動平均値、平均値、最大値、最小値、最頻値、中央値、あるいは前記干渉波形の周期の度数分布から得られる、階級値と度数との積が最大となる階級値のいずれかであることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の物体検出センサは、レーザ光を放射する半導体レーザと、発振波長が連続的に単調増加する第1の発振期間と発振波長が連続的に単調減少する第2の発振期間のうち少なくとも一方が繰り返し存在するように前記半導体レーザを動作させる発振波長変調手段と、前記半導体レーザから放射されたレーザ光とその戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する検出手段と、この検出手段の出力信号に含まれる前記干渉波形の周期を干渉波形が入力される度に計測する信号抽出手段と、この信号抽出手段の計測結果を記憶する記憶手段と、この記憶手段に記憶された1つの干渉波形の周期を注目周期としたとき、この注目周期の直後に計測され前記記憶手段に記憶された複数の干渉波形の周期の分布の代表値を算出する代表値算出手段と、前記注目周期を補正対象の干渉波形の周期とし、この補正対象の干渉波形の周期と、前記半導体レーザとの距離の初期値から予め規定された干渉波形の周期の分布の代表値および前記代表値算出手段が算出した代表値とを比較することにより前記補正対象の干渉波形の周期を補正し、この補正の結果に従って前記記憶手段に記憶された周期を更新する周期補正手段と、前記予め規定された代表値および前記代表値算出手段が算出した代表値のうち小さい方をT1、大きい方をT2としたとき、代表値T1に基づくしきい値と代表値T2とを比較することにより、前記レーザ光の放射方向に出現した物体の存在を検出するか、あるいは初期状態から前記レーザ光の放射方向に存在する物体の運動の変化を検出する物体判定手段とを備え、前記干渉波形の周期の分布の代表値は、移動平均値、平均値、最大値、最小値、最頻値、中央値、あるいは前記干渉波形の周期の度数分布から得られる、階級値と度数との積が最大となる階級値のいずれかであることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の物体検出センサの1構成例において、前記周期補正手段は、Tx=T1+α・(T2−T1)としたとき(0≦α≦1)、前記補正対象の干渉波形の周期が前記Txの所定数k倍未満の場合は(kは1未満の正の値)、この補正対象の干渉波形の周期と次に計測された干渉波形の周期とを合わせた周期を補正後の干渉波形の周期とし、周期を合わせた波形を1つの波形とし、前記補正対象の干渉波形の周期が前記Txの(m−0.5)倍以上で且つ前記Txの(m+0.5)倍未満の場合は(mは2以上の自然数)、前記補正対象の干渉波形の周期をm等分した周期をそれぞれ補正後の周期とし、補正後の周期の波形がm個あるものとすることを特徴とするものである。
また、本発明の物体検出センサの1構成例において、前記物体判定手段は、前記代表値T1に基づくしきい値をTh1,Th2(Th1<Th2)としたとき、Th1≦T2≦Th2が成立する場合、前記レーザ光の放射方向に物体が存在しないと判定し、Th1>T2またはT2>Th2が成立する場合、前記レーザ光の放射方向に物体が存在すると判定することを特徴とするものである。
また、本発明の物体検出センサの1構成例において、前記物体判定手段は、前記レーザ光の放射方向に物体が静止している場合を初期状態とし、前記代表値T1に基づくしきい値をTh1,Th2(Th1<Th2)としたとき、Th1≦T2≦Th2が成立する場合、前記レーザ光の放射方向に存在する物体が動いていないと判定し、Th1>T2またはT2>Th2が成立する場合、前記レーザ光の放射方向に存在する物体が動いたと判定することを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の物体検出センサの1構成例は、さらに、前記しきい値Th1,Th2を、Th1=aT1、Th2=bT1(0.5≦a<1、1<b≦1.5)と設定するしきい値設定手段を備えることを特徴とするものである。
また、本発明の物体検出センサの1構成例は、さらに、前記周期補正手段によって補正された干渉波形の周期のうち最小値をTmin、最大値をTmaxとしたとき、前記しきい値Th1,Th2を、Th1=T1−Tmin、Th2=T1+Tmaxと設定するしきい値設定手段を備えることを特徴とするものである。
また、本発明の物体検出センサの1構成例は、さらに、前記周期補正手段によって補正された干渉波形の周期の分散値をσ2としたとき、前記しきい値Th1,Th2を、Th1=T1−Aσ2、Th2=T1+Aσ2(Aは正の実数)と設定するしきい値設定手段を備えることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の物体検出センサの1構成例において、前記物体判定手段は、前記物体が侵入する予定の空間を挟んで前記半導体レーザと向かい合う反射壁面を基準面として、この基準面と前記半導体レーザとの間に物体が存在するかどうかを検出するとき、T2≦Th2が成立する場合、前記レーザ光の放射方向に物体が存在しないと判定し、T2>Th2が成立する場合、前記レーザ光の放射方向に物体が存在すると判定することを特徴とするものである。
また、本発明の物体検出センサの1構成例において、前記物体判定手段は、前記半導体レーザを保護する透明カバーの内面と外面のうち無反射防止処理が施されていない何れか1つの面を基準面として、この基準面の前方に物体が存在するかどうかを検出するとき、Th1≦T2が成立する場合、前記基準面の前方に物体が存在しないと判定し、Th1>T2が成立する場合、前記基準面の前方に物体が存在すると判定することを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の物体検出方法は、発振波長が連続的に単調増加する第1の発振期間と発振波長が連続的に単調減少する第2の発振期間のうち少なくとも一方が繰り返し存在するように半導体レーザを動作させる発振手順と、前記半導体レーザから放射されたレーザ光とその戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する検出手順と、この検出手順で得られた出力信号に含まれる前記干渉波形の周期を干渉波形が入力される度に計測する信号抽出手順と、この信号抽出手順の計測結果を記憶手段に記憶させる記憶手順と、前記記憶手段に記憶された1つの干渉波形の周期を注目周期としたとき、この注目周期の直前に計測され前記記憶手段に記憶された複数の干渉波形の周期の分布の代表値と前記注目周期の直後に計測され前記記憶手段に記憶された複数の干渉波形の周期の分布の代表値とを算出する代表値算出手順と、前記注目周期を補正対象の干渉波形の周期とし、この補正対象の干渉波形の周期と2つの前記代表値とを比較することにより前記補正対象の干渉波形の周期を補正し、この補正の結果に従って前記記憶手段に記憶された周期を更新する周期補正手順と、前記代表値算出手順で算出した2つの代表値のうち小さい方をT1、大きい方をT2としたとき、代表値T1に基づくしきい値と代表値T2とを比較することにより、前記レーザ光の放射方向に出現した物体の存在を検出するか、あるいは初期状態から前記レーザ光の放射方向に存在する物体の運動の変化を検出する物体判定手順とを備え、前記干渉波形の周期の分布の代表値は、移動平均値、平均値、最大値、最小値、最頻値、中央値、あるいは前記干渉波形の周期の度数分布から得られる、階級値と度数との積が最大となる階級値のいずれかであることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の物体検出方法は、発振波長が連続的に単調増加する第1の発振期間と発振波長が連続的に単調減少する第2の発振期間のうち少なくとも一方が繰り返し存在するように半導体レーザを動作させる発振手順と、前記半導体レーザから放射されたレーザ光とその戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する検出手順と、この検出手順で得られた出力信号に含まれる前記干渉波形の周期を干渉波形が入力される度に計測する信号抽出手順と、この信号抽出手順の計測結果を記憶手段に記憶させる記憶手順と、前記記憶手段に記憶された1つの干渉波形の周期を注目周期としたとき、この注目周期の直後に計測され前記記憶手段に記憶された複数の干渉波形の周期の分布の代表値を算出する代表値算出手順と、前記注目周期を補正対象の干渉波形の周期とし、この補正対象の干渉波形の周期と、前記半導体レーザとの距離の初期値から予め規定された干渉波形の周期の分布の代表値および前記代表値算出手順で算出した代表値とを比較することにより前記補正対象の干渉波形の周期を補正し、この補正の結果に従って前記記憶手段に記憶された周期を更新する周期補正手順と、前記予め規定された代表値および前記代表値算出手順で算出した代表値のうち小さい方をT1、大きい方をT2としたとき、代表値T1に基づくしきい値と代表値T2とを比較することにより、前記レーザ光の放射方向に出現した物体の存在を検出するか、あるいは初期状態から前記レーザ光の放射方向に存在する物体の運動の変化を検出する物体判定手順とを備え、前記干渉波形の周期の分布の代表値は、移動平均値、平均値、最大値、最小値、最頻値、中央値、あるいは前記干渉波形の周期の度数分布から得られる、階級値と度数との積が最大となる階級値のいずれかであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、干渉波形の周期の誤差を補正するので、物体検出の精度を向上させることができる。
【0016】
また、本発明では、半導体レーザとの距離の初期値から一方の干渉波形の周期の分布の代表値を予め規定しておくことにより、代表値を2つ算出する必要がなくなり、代表値を1つ算出すればよいので、従来の物体検出センサよりも短時間で物体検出または物体の運動変化の検出を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る物体検出センサの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態における半導体レーザの発振波長の時間変化の1例を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における電流−電圧変換増幅部の出力電圧波形およびフィルタ部の出力電圧波形を模式的に示す波形図である。
【図4】モードホップパルスについて説明するための図である。
【図5】半導体レーザの発振波長とフォトダイオードの出力波形との関係を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態における信号抽出部の動作を説明するための図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態における物体検出部の構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態における周期補正部の動作を説明するための図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態における信号抽出部の計測結果の補正原理を説明するための図である。
【図10】モードホップパルスの周期の度数分布を示す図である。
【図11】物体が等速運動している場合の物体との距離の変化を示す図である。
【図12】物体が等速運動している場合のモードホップパルスの周期の度数分布を示す図である。
【図13】物体の速度が変化している場合の物体との距離の変化および物体の速度の変化を示す図である。
【図14】物体の速度が変化している場合のモードホップパルスの周期の度数分布を示す図である。
【図15】本発明の第3の実施の形態に係る半導体レーザの入出射部の要部概略構成を示す図である。
【図16】本発明の第4の実施の形態における半導体レーザの発振波長の時間変化の例を示す図である。
【図17】本発明の第6の実施の形態に係る物体検出センサの構成を示すブロック図である。
【図18】従来の物体検出センサの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施の形態に係る物体検出センサの構成を示すブロック図である。図1の物体検出センサは、レーザ光を放射する半導体レーザ1と、半導体レーザ1の光出力を電気信号に変換するフォトダイオード2と、半導体レーザ1からの光を集光して放射すると共に、反射壁面10又は物体11からの戻り光を集光して半導体レーザ1に入射させるレンズ3と、半導体レーザ1を駆動する発振波長変調手段となるレーザドライバ4と、フォトダイオード2の出力電流を電圧に変換して増幅する電流−電圧変換増幅部5と、電流−電圧変換増幅部5の出力電圧から搬送波を除去するフィルタ部6と、フィルタ部6の出力電圧に含まれる自己結合信号であるMHPの周期を計測する信号抽出部7と、レーザ光の放射方向に出現した物体11の存在を検出するか、あるいは初期状態からレーザ光の放射方向に存在する物体11の運動の変化を検出する物体検出部8と、物体検出部8の検出結果を表示する表示部9とを有する。
【0019】
フォトダイオード2と電流−電圧変換増幅部5とは、検出手段を構成している。以下、説明容易にするために、半導体レーザ1には、モードホッピング現象を持たない型(VCSEL型、DFBレーザ型)のものが用いられているものと想定する。
【0020】
レーザドライバ4は、時間に関して一定の変化率で増減を繰り返す三角波駆動電流を注入電流として半導体レーザ1に供給する。これにより、半導体レーザ1は、注入電流の大きさに比例して発振波長が一定の変化率で連続的に増加する第1の発振期間と発振波長が一定の変化率で連続的に減少する第2の発振期間とを交互に繰り返すように駆動される。図2は半導体レーザ1の発振波長の時間変化を示す図である。図2において、P1は第1の発振期間、P2は第2の発振期間、λaは各期間における発振波長の最小値、λbは各期間における発振波長の最大値、Tcarは三角波の周期である。本実施の形態では、半導体レーザ1の発振波長の変化速度が一定であることが必要である。
【0021】
半導体レーザ1から出射したレーザ光は、レンズ3によって集光され、レーザ光の放射方向に物体11が存在しない場合は反射壁面10に入射し、物体11が存在する場合は物体11に入射する。反射壁面10又は物体11で反射された光は、レンズ3によって集光され、半導体レーザ1に入射する。ただし、レンズ3による集光は必須ではない。フォトダイオード2は、半導体レーザ1の内部又はその近傍に配置され、半導体レーザ1の光出力を電流に変換する。電流−電圧変換増幅器5は、フォトダイオード2の出力電流を電圧に変換して増幅する。
【0022】
フィルタ部6は、変調波から重畳信号を抽出する機能を有するものである。図3(A)は電流−電圧変換増幅部5の出力電圧波形を模式的に示す図、図3(B)はフィルタ部6の出力電圧波形を模式的に示す図である。これらの図は、フォトダイオード2の出力に相当する図3(A)の波形(変調波)から、図2の半導体レーザ1の発振波形(搬送波)を除去して、図3(B)のMHP波形(干渉波形)を抽出する過程を表している。
【0023】
次に、信号抽出部7は、フィルタ部6の出力電圧に含まれるMHPの周期をMHPが発生する度に計測する。ここで、自己結合信号であるMHPについて説明する。図4に示すように、ミラー層1013から物体11までの距離をL、レーザの発振波長をλとすると、以下の共振条件を満足するとき、物体11からの戻り光と半導体レーザ1の光共振器内のレーザ光は強め合い、レーザ出力がわずかに増加する。
L=qλ/2 ・・・(1)
式(1)において、qは整数である。この現象は、物体11からの散乱光が極めて微弱であっても、半導体レーザ1の共振器内の見かけの反射率が増加することにより、増幅作用が生じ、十分観測できる。なお、図4において、1019はミラーとなる誘電体多層膜である。
【0024】
図5は、半導体レーザ1の発振波長をある一定の割合で変化させたときの発振波長とフォトダイオード2の出力波形との関係を示す図である。式(1)に示したL=qλ/2を満足したときに、戻り光と光共振器内のレーザ光の位相差が0°(同位相)になって、戻り光と光共振器内のレーザ光とが最も強め合い、L=qλ/2+λ/4のときに、位相差が180°(逆位相)になって、戻り光と光共振器内のレーザ光とが最も弱め合う。そのため、半導体レーザ1の発振波長を変化させていくと、レーザ出力が強くなるところと弱くなるところとが交互に繰り返し現れ、このときのレーザ出力をフォトダイオード2で検出すると、図5に示すように一定周期の階段状の波形が得られる。このような波形は一般的には干渉縞と呼ばれる。この階段状の波形、すなわち干渉縞の1つ1つがMHPである。前記のとおり、ある一定時間において半導体レーザ1の発振波長を変化させた場合、測定距離に比例してMHPの数は変化する。
【0025】
図6(A)〜図6(D)は信号抽出部7の動作を説明するための図であり、図6(A)はフィルタ部6の出力電圧の波形、すなわちMHPの波形を模式的に示す図、図6(B)はMHPを2値化した波形を示す図、図6(C)は信号抽出部7に入力されるサンプリングクロックを示す図、図6(D)は図6(B)に対応する信号抽出部7の測定結果を示す図である。
【0026】
まず、信号抽出部7は、図6(A)に示すフィルタ部6の出力電圧が上昇してしきい値TH1以上になったときにハイレベルと判定し、フィルタ部6の出力電圧が下降してしきい値TH2(TH2<TH1)以下になったときにローレベルと判定することにより、フィルタ部6の出力を2値化する。そして、信号抽出部7は、2値化したMHPの立ち上がりエッジの周期(すなわち、MHPの周期)を立ち上がりエッジが発生する度に測定する。このとき、信号抽出部7は、図6(C)に示すサンプリングクロックの周期を1単位としてMHPの周期を測定する。図6(D)の例では、信号抽出部7は、MHPの周期としてTα,Tβ,Tγを順次測定している。図6(C)、図6(D)から明らかなように、周期Tα,Tβ,Tγの大きさは、それぞれ5[samplings]、4[samplings]、2[samplings]である。サンプリングクロックの周波数は、MHPの取り得る最高周波数に対して十分に高いものとする。
【0027】
次に、物体検出部8は、信号抽出部7の計測結果に基づいてレーザ光の放射方向に物体11が存在するかどうかを検出する。図7は物体検出部8の構成を示すブロック図である。物体検出部8は、記憶部80と、代表値算出部81と、周期補正部82と、物体判定部83と、しきい値設定部84とから構成される。なお、本実施の形態では、MHPの周期の分布の代表値として移動平均値を用いる場合について説明するが、これに限るものではない。移動平均値以外の代表値を用いる場合については後述する。
【0028】
記憶部80は、信号抽出部7の計測結果を記憶する。代表値算出部81は、記憶部80に記憶された、現時刻より前の時刻に計測されたMHPの周期を注目周期としたとき、この注目周期の直前に計測された所定数のMHPの周期の移動平均値TAと注目周期の直後に計測された所定数のMHPの周期の移動平均値TBとを算出する。代表値算出部81は、信号抽出部7から新たな計測結果が出力され記憶部80に格納される度に、移動平均値算出済みの現在の注目周期よりも1回新しい計測結果を新たな注目周期として、移動平均値TA,TBの算出処理を行う。代表値算出部81の算出結果は、記憶部80に格納される。
【0029】
周期補正部82は、前記注目周期を補正対象のMHPの周期とし、代表値算出部81が算出した移動平均値TA,TBと補正対象のMHPの周期とを比較することにより、補正対象のMHPの周期を補正する。周期補正部82は、この補正を信号抽出部7から新たな計測結果が出力され記憶部80に格納される度に行う。図8(A)〜図8(D)は周期補正部82の動作を説明するための図である。
【0030】
周期補正部82は、代表値算出部81が算出した2つの移動平均値TA,TBのうち小さい方をT1、大きい方をT2とし、Tx=T1+α・(T2−T1)としたとき(0≦α≦1)、図8(A)に示すように補正対象のMHPの周期Tがk・Tx未満の場合は(kは1未満の正の値)、図8(B)に示すように補正対象のMHPの周期Tと次に計測されたMHPの周期Tnextとを合わせた周期を補正後のMHPの周期T’とし、周期を合わせた波形を1つの波形とする。
【0031】
また、周期補正部82は、補正対象のMHPの周期Tが(m−0.5)・Tx以上で(m+0.5)・Tx未満の場合は(mは2以上の自然数)、補正対象のMHPの周期Tをm等分した周期をそれぞれ補正後の周期とし、補正後の周期の波形がm個あるものとする。図8(C)の例は、m=2で補正対象のMHPの周期Tが1.5Tx以上2.5Tx未満の場合であり、この場合、図8(D)に示すように補正対象のMHPの周期TがTdiv1,Tdiv2に2等分される。
【0032】
周期補正部82は、記憶部80に記憶されている信号抽出部7の計測結果を、補正結果に従って更新する。したがって、図8(A)、図8(B)に示した例の場合には、信号抽出部7の2つの計測結果が1つに合成されることになり、図8(C)、図8(D)に示した例の場合には、信号抽出部7の1つの計測結果が2つに分割されることになる。また、補正対象のMHPの周期よりも前に計測されたMHPの周期は、周期補正部82によって既に補正されていることになる。つまり、代表値算出部81が算出する移動平均値TAは、補正済みの計測結果から算出されることになる。周期補正部82は、以上のような補正処理を信号抽出部7から新たな計測結果が出力され記憶部80に格納される度に行う。
【0033】
図9は信号抽出部7の計測結果の補正原理を説明するための図であり、フィルタ部6の出力電圧の波形、すなわちMHPの波形を模式的に示す図である。ただし、説明を簡単にするため、ここでの原理は物体11が静止している場合もしくは物体11の振動の中心が変化しない場合を説明しており、補正対象のMHPの周期の比較対象として移動平均値T1,T2の代わりに、基準周期T0を用いている。基準周期T0は、物体11が静止していたときのMHPの周期、算出された距離におけるMHPの周期、もしくは周期補正部82による周期補正の直前に計測された一定数のMHPの周期の移動平均値のいずれかである。物体11が動く場合の周期補正の原理については後述する。
【0034】
MHPの周期は物体11との距離によって異なるが、物体11との距離が不変であれば、MHPは同じ周期で出現する。しかし、ノイズのために、MHPの波形には欠落が生じたり、信号として数えるべきでない波形が生じたりして、MHPの周期に誤差が生じる。
信号の欠落が生じると、欠落が生じた箇所でのMHPの周期Twは、本来の周期のおよそ2倍になる。つまり、MHPの周期が基準周期T0のおよそ2倍以上の場合には、信号に欠落が生じていると判断できる。そこで、周期Twを2等分することで、信号の欠落を補正することができる。
【0035】
また、ノイズをカウントした箇所でのMHPの周期Tsは、本来の周期のおよそ0.5倍になる。つまり、MHPの周期が基準周期T0のおよそ0.5倍未満の場合には、信号を過剰に数えていると判断できる。そこで、周期Tsと次に計測される周期Tnextとを加算することで、誤って数えたノイズを補正することができる。
【0036】
以上が、MHPの周期補正の基本原理である。信号に欠落が生じたと見なす周期Twを決めるためのしきい値を基準周期T0の2倍の値とせずに、1.5倍(本実施の形態で実際に用いるのは(m−0.5)倍であり、m=2の場合に1.5倍となる)とする理由は、特開2009−47676号公報に開示されている。特開2009−47676号公報に記載された原理はMHPの計測結果を補正する原理であるが、MHPの周期Tと計数結果Nとは、三角波の半周期あたりのサンプリングクロック数をMとすると、T=M/Nの関係にあり、Mは一定値であるから、信号に欠落が生じたと見なす周期Twを決めるためのしきい値は、計数結果Nを補正する場合と同様に、基準周期T0の1.5倍とすればよいことが分かる。
【0037】
次に、物体11が動く場合の周期補正の原理について説明する。MHPの周波数は、物体11との距離に比例した周波数(このときの周期が基準周期T0)と物体11の速度に比例する周波数との和で表すことができる。物体11がある状態でMHPの周期がTの場合、個々のMHPの周期の確率分布はノイズなどによってばらつきが生じ、Tを中心とした概ね正規分布になる。よって、物体11が静止している場合、個々のMHPの周期の確率分布も基準周期T0を中心とした正規分布になり、静止している期間のMHPの周期の度数分布は、図10に示したように基準周期T0を中心とした正規分布になる。
【0038】
ここで、図11に示すように物体11が等速運動している場合を考える。自己結合型のレーザセンサでは、物体11の速度の変化によるMHPの周波数の変化割合と比較すると、物体11との距離の変化によるMHPの周期の変化は非常に小さい。このため、個々のMHPの周期の確率分布は、図11のA点でもB点でも、物体11との平均距離に相当するT0から速度の大きさの分だけ周期が変化した値Tを中心とした正規分布になるため、A点からB点の期間のMHPの周期の度数分布も、Tを中心とした正規分布になる(図12)。
【0039】
次に、図13(A)、図13(B)に示すように物体11の速度が変化している場合を考える。ここでは、簡略化するために、折れ線運動を考える。すなわち、物体11との距離Lを期間Aにおける距離LAと期間Bにおける距離LBに簡略化し、同様に物体11の速度Vを期間Aにおける速度VAと期間Bにおける速度VBに簡略化する。このように物体11の運動を簡略化すると、MHPの周期の度数分布は図14のようになる。図14においてTAは期間Aにおける物体11の平均速度に対応するMHPの周期、TBは期間Bにおける物体11の平均速度に対応するMHPの周期である。
【0040】
物体11の速度変化がなだらかに変化しているとしたら、図13(A)、図13(B)の時刻tでの物体11の速度は速度VAとVBとの間にあるので、MHPの周期も周期TAとTBとの間にある。このときのMHPの周期をTXとすると、信号に欠落が生じて2つのMHPが1つになった場合のMHPの周期の確率分布は、2TXを中心とした正規分布になると考えられる。また、周期TXのMHPがノイズで2分割された場合のMHPの2つの確率分布は、0.5TXを軸にした対称の形になる。したがって、TAからTBの間の値と考えられるTXの周期補正を考える場合、基準周期T0の代わりに、TAとTBの移動平均値を基準として周期補正を行うことが妥当である。以上が、物体11が動く場合のMHPの周期補正の原理である。
【0041】
次に、物体判定部83は、代表値算出部81が算出した2つの移動平均値TA,TBのうち小さい方をT1、大きい方をT2とし、T1に基づくしきい値をTh1,Th2(Th1<Th2)としたとき、Th1≦T2≦Th2が成立する場合、レーザ光の放射方向に物体11が存在しないと判定する。また、物体判定部83は、Th1>T2またはT2>Th2が成立する場合、初期状態では存在しなかった物体11がレーザ光の放射方向に存在すると判定する。ただし、この判定は静止した反射壁面10と半導体レーザ1との間に物体11が存在しない場合を初期状態とし、反射壁面10と半導体レーザ1との間の空間に物体11が侵入する場合を想定している。
【0042】
しきい値設定部84は、物体判定部83による判定処理の前に、しきい値Th1,Th2を次式のように設定する。
Th1=aT1 ・・・(2)
Th2=bT1 ・・・(3)
係数a,bは所定の定数で、0.5≦a<1、1<b≦1.5を満たす。しきい値設定部84は、このようなしきい値設定処理を代表値算出部81によって移動平均値が算出される度に行う。
【0043】
レーザ光の放射方向に物体11が静止している場合を初期状態とするときには、物体判定部83の判定は以下のようになる。すなわち、物体判定部83は、Th1≦T2≦Th2が成立する場合、初期状態からレーザ光の放射方向に存在する物体11が動いていないと判定し、Th1>T2またはT2>Th2が成立する場合、物体11が動いたと判定する。
物体判定部83は、以上のような判定処理を信号抽出部7から計測結果が出力される度に行う。表示部9は、物体判定部83の判定結果を表示する。
【0044】
以上のように、本実施の形態では、特許文献1に開示された物体検出センサのようにMHPの周期の度数分布を作成する必要がないので、特許文献1に開示された物体検出センサのメモリよりも記憶容量の少ないメモリで物体検出または物体の運動変化の検出を実現することができる。また、2つの移動平均値TA,TBは、MHPの周期の度数分布を作成するのに要する時間よりも短時間で算出することができる。したがって、本実施の形態では、特許文献1に開示された物体検出センサよりも短時間で物体検出または物体の運動変化の検出を行うことができる。また、本実施の形態では、MHPの周期の誤差を補正するので、物体検出の精度を向上させることができる。
【0045】
なお、反射壁面10を物体検出の基準面として、反射壁面10と半導体レーザ1との間に物体11が存在するかどうかを検出する場合には、しきい値Th2のみを用いて判定を行えばよい。すなわち、物体判定部83は、T2≦Th2が成立する場合、レーザ光の放射方向に物体11が存在しないと判定し、T2>Th2が成立する場合、レーザ光の放射方向に物体11が存在すると判定する。
【0046】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態は、物体検出のためのしきい値Th1,Th2の別の設定方法を説明するものである。本実施の形態においても、物体検出センサの構成は第1の実施の形態と同様であるので、図1、図7の符号を用いて説明する。
【0047】
本実施の形態のしきい値設定部84は、周期補正部82によって補正された信号抽出部7の計測結果のうち最小値をTmin、補正された計測結果のうち最大値をTmaxとしたとき、しきい値Th1,Th2を次式のように設定する。
Th1=T1−Tmin ・・・(4)
Th2=T1+Tmax ・・・(5)
しきい値設定部84は、以上のようなしきい値設定処理を周期補正部82によって信号抽出部7の計測結果が補正される度に行う。
【0048】
あるいは、しきい値設定部84は、周期補正部82によって補正された信号抽出部7の計測結果の分散値をσ2としたとき、しきい値Th1,Th2を次式のように設定してもよい。
Th1=T1−Aσ2 ・・・(6)
Th2=T1+Aσ2 ・・・(7)
式(6)、式(7)において、Aは予め定められた正の実数であり、例えば3である。
【0049】
物体判定部83は、しきい値設定部84によって設定されたしきい値Th1,Th2を用いて第1の実施の形態で説明したような判定処理を行う。
物体検出センサの他の構成は、第1の実施の形態で説明したとおりである。こうして、本実施の形態では、物体検出のためのしきい値Th1,Th2を自動的に適切な値に設定することができる。
【0050】
[第3の実施の形態]
第1、第2の実施の形態では、反射壁面10を物体検出の基準面として用いたが、半導体レーザ1からのレーザ光の入出射部を形成する透明体の片面にだけ無反射防止処理を施し、透明体の無反射防止処理を施していない面を物体検出の基準面としてもよい。図15は本発明の第3の実施の形態に係る半導体レーザの入出射部の要部概略構成を示す図であり、図1と同一の構成には同一の符号を付してある。本実施の形態と第1の実施の形態との大きな違いは、反射壁面がないことと、物体検出部8の物体検出処理が違うことである。
【0051】
図15において、130は半導体レーザ1を収納する密閉ケース、131は半導体レーザ1の前面に設けられて半導体レーザ1を保護するガラス等の透明カバー(透明体)、132は透明カバー131の表面に設けられた反射防止膜(ARコート)である。
透明カバー131は、密閉ケース130の窓部に嵌め込んで設けられる。そして、半導体レーザ1は、その前面であるレーザ光入出射面を透明カバー131に対峙させて密閉ケース130内に組み込まれる。
【0052】
ガラス等の透明体を通してレーザ光を入出力する場合、透明体と空気との界面で僅かではあるがレーザ光の反射が生じる。このような反射を防ぐ場合、専ら、低屈折率材料を分散させたフィラーを透明体の表面にコーティングして反射防止膜を形成することが行われる。本実施の形態においても、レーザ光の入出射面となる透明カバー131での不要な反射を抑えるべく、透明カバー131の表面に反射防止膜132を設けるが、この際、透明カバー131の内面にだけ反射防止膜132を設け、その外面には反射防止膜を形成しないことで、敢えて透明カバー131の外面においてレーザ光の反射が生じるようにしている。そして、半導体レーザ1から出力されたレーザ光の一部が透明カバー131の外面にて反射して半導体レーザ1に戻るようにしている。
【0053】
なお、透明カバー131の外面については、無反射防止処理を施さないことは勿論のことではあるが、敢えて半導体レーザ1において自己結合効果が生じる強度の反射光を得るに必要な処理を施すようにしても良い。具体的には透明カバー131の外面を鏡面研磨したり、或る程度の反射率を有する光学膜を被覆形成することも可能である。
【0054】
図15に示した構成によれば、レーザ光の放射方向に物体11が存在しない場合、半導体レーザ1から出射したレーザ光は、その一部が透明カバー131の外面によって反射されて半導体レーザ1に戻ることになる。この結果、半導体レーザ1においては、出力光と透明カバー131からの反射光との自己結合効果による干渉が生じる。
【0055】
物体検出部8の物体判定部83は、本実施の形態のように透明カバー131の一方の面を物体検出の基準面とする場合、しきい値Th1のみを用いて判定を行えばよい。すなわち、物体判定部83は、Th1≦T2が成立する場合、レーザ光の放射方向に物体11が存在しないと判定し、Th1>T2が成立する場合、レーザ光の放射方向に物体11が存在すると判定する。
物体検出センサの他の構成は、第1、第2の実施の形態で説明したとおりである。
【0056】
以上のように、本実施の形態によれば、透明カバー131の一方の面を物体検出の基準面とする場合でも本発明を適用することができ、第1、第2の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0057】
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。第1〜第3の実施の形態では、半導体レーザ1を三角波状に発振させていたが、これに限るものではなく、図16に示すように半導体レーザ1を鋸波状に発振させてもよい。すなわち、本実施の形態では、第1の発振期間P1または第2の発振期間P2のいずれか一方が繰り返し存在するように半導体レーザ1を動作させればよい。本実施の形態のように半導体レーザ1を鋸波状に発振させる場合においても、半導体レーザ1の発振波長の変化速度が一定であることが必要である。第1の発振期間P1または第2の発振期間P2における動作は、三角波発振の場合と同様である。
【0058】
なお、第1〜第4の実施の形態では、MHPの周期の分布の代表値として移動平均値を用いたが、これに限るものではなく、移動平均値の代わりに、平均値、最大値、最小値、最頻値、中央値、あるいはMHPの周期の度数分布から得られる、階級値と度数との積が最大となる階級値(以下、最大占有値と呼ぶ)のいずれかの代表値を用いてもよい。
【0059】
すなわち、第1〜第4の実施の形態において、代表値算出部81は、記憶部80に記憶された、現時刻より前の時刻に計測されたMHPの周期を注目周期としたとき、この注目周期の直前に計測された所定数のMHPの周期の平均値、最大値、最小値、最頻値、中央値、あるいは最大占有値と、注目周期の直後に計測された所定数のMHPの周期の平均値、最大値、最小値、最頻値、中央値、あるいは最大占有値とを算出すればよい。物体検出部8の他の構成は、移動平均値の代わりに、代表値算出部81が算出した代表値を用いて第1〜第4の実施の形態で説明した処理を実行すればよい。なお、代表値算出部81が算出する2つの代表値は同じ種類の代表値にする必要がある。
【0060】
[第5の実施の形態]
次に、本発明の第5の実施の形態について説明する。第1〜第4の実施の形態では、代表値算出部81が2つの代表値を算出しているが、一方の代表値として固定値を用いてもよい。本実施の形態においても、物体検出センサの構成は第1の実施の形態と同様であるので、図1、図7の符号を用いて説明する。
【0061】
本実施の形態では、例えば反射壁面10を物体検出の基準面として、反射壁面10と半導体レーザ1との距離を距離の初期値とする。図5で説明したとおり、MHPの数は測定距離に比例するので、距離の初期値を定めると、この距離の初期値に対応するMHPの数を求めることができる。そして、時間当たりのMHPの数から、MHPの周期を求めることができる。このMHPの周期を代表値の初期値とすればよい。
【0062】
本実施の形態の代表値算出部81は、記憶部80に記憶された、現時刻より前の時刻に計測されたMHPの周期を注目周期としたとき、この注目周期の直後に計測された所定数のMHPの周期の移動平均値、平均値、最大値、最小値、最頻値、中央値、あるいは最大占有値を算出すればよい。そして、物体検出部8の他の構成は、距離の初期値から予め規定された代表値の初期値と代表値算出部81が算出した代表値とを用いて第1〜第4の実施の形態で説明した処理を実行すればよい。
こうして、本実施の形態においても、第1〜第4の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0063】
[第6の実施の形態]
次に、本発明の第6の実施の形態について説明する。第1〜第5の実施の形態では、MHP波形を含む電気信号を検出する検出手段としてフォトダイオード2と電流−電圧変換増幅部5とを用いたが、フォトダイオードを使用することなくMHP波形を抽出することも可能である。図17は本発明の第6の実施の形態に係る物体検出センサの構成を示すブロック図であり、図1と同様の構成には同一の符号を付してある。本実施の形態の物体検出センサは、第1の実施の形態のフォトダイオード2と電流−電圧変換増幅部5の代わりに、検出手段として電圧検出部12を用いるものである。
【0064】
電圧検出部12は、半導体レーザ1の端子間電圧、すなわちアノード−カソード間電圧を検出して増幅する。半導体レーザ1から放射されたレーザ光と物体11からの戻り光とによって干渉が生じるとき、半導体レーザ1の端子間電圧には、MHP波形が現れる。したがって、半導体レーザ1の端子間電圧からMHP波形を抽出することが可能である。
【0065】
フィルタ部6は、電圧検出部12の出力電圧から搬送波を除去する。物体検出センサのその他の構成は、第1〜第5の実施の形態と同じである。
こうして、本実施の形態では、フォトダイオードを使用することなくMHP波形を抽出することができ、第1の実施の形態と比較して物体検出センサの部品を削減することができ、物体検出センサのコストを低減することができる。また、本実施の形態では、フォトダイオードを使用しないので、外乱光による影響を除去することができる。
【0066】
なお、第1〜第6の実施の形態において少なくとも信号抽出部7と物体検出部8とは、例えばCPU、メモリおよびインタフェースを備えたコンピュータとこれらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。CPUは、メモリに格納されたプログラムに従って第1〜第6の実施の形態で説明した処理を実行する。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、半導体レーザから放射したレーザ光とその戻り光との自己結合効果によって生じる干渉の情報から、レーザ光の放射方向の物体の有無や物体の運動の変化を検出する技術に適用することができる。
【符号の説明】
【0068】
1…半導体レーザ、2…フォトダイオード、3…レンズ、4…レーザドライバ、5…電流−電圧変換増幅部、6…フィルタ部、7…信号抽出部、8…物体検出部、9…表示部、10…反射壁面、11…物体、12…電圧検出部、80…記憶部、81…代表値算出部、82…周期補正部、83…物体判定部、84…しきい値設定部、130…密閉ケース、131…透明カバー、132…反射防止膜。
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザから放射したレーザ光とその戻り光との自己結合効果によって生じる干渉の情報から、レーザ光の放射方向の物体の有無や物体の運動の変化を検出する物体検出センサおよび物体検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ光と測定対象からの戻り光との半導体レーザ内部での干渉(自己結合効果)を利用した自己結合型のレーザ計測器では、物体の検出に時間がかかるという問題点があった。そこで、発明者は、物体の高速検出が可能な物体検出センサを提案した(特許文献1参照)。図18は特許文献1に開示された物体検出センサの構成を示すブロック図である。
【0003】
図18の物体検出センサは、レーザ光を放射する半導体レーザ201と、半導体レーザ201の光出力を電気信号に変換する受光器であるフォトダイオード202と、半導体レーザ201からの光を集光して放射すると共に、物体212からの戻り光を集光して半導体レーザ201に入射させるレンズ203と、半導体レーザ201を駆動するレーザドライバ204と、フォトダイオード202の出力電流を電圧に変換して増幅する電流−電圧変換増幅器205と、電流−電圧変換増幅器205の出力電圧から搬送波を除去するフィルタ回路206と、フィルタ回路206の出力電圧に含まれる自己結合信号であるモードホップパルス(以下、MHP)の数を数える計数装置207と、MHPの数に基づいて物体212との距離及び物体212の速度を算出する演算装置208と、演算装置208の算出結果を表示する表示装置209と、半導体レーザ201の放射方向に物体212が存在するかどうかを検出する物体検出装置211とを有する。
【0004】
物体検出装置211は、MHPの周期を検出し、静止している反射壁面210によるMHPの周期と異なる周期のMHPが所定の条件を満たすときに、レーザ光の放射方向に物体212が存在すると判定する。より具体的には、物体検出装置211は、MHPの数を数える計数期間中のMHPの周期をMHPが入力される度に測定し、この周期の測定結果から計数期間中のMHPの周期の度数分布を作成し、度数分布からMHPの周期の分布の代表値T0を算出し、レーザ光の1周期前の計数期間において算出された代表値T0に対して、現在の計数期間中の検出期間において周期がこの代表値T0の所定数倍よりも長いMHPの個数Nを求め、検出期間中に周期が測定されたMHPの全個数Nallに対する個数Nの割合N/Nallが所定の閾値以上のときに、レーザ光の放射方向に物体212が存在すると判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−092461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された物体検出センサによれば、自己結合型のレーザ計測器よりも高速に物体を検出することができる。しかしながら、特許文献1に開示された物体検出センサでは、MHPの周期に誤差があるため、物体検出の精度が低いという問題点があった。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、物体検出の精度を向上させることができる物体検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の物体検出センサは、レーザ光を放射する半導体レーザと、発振波長が連続的に単調増加する第1の発振期間と発振波長が連続的に単調減少する第2の発振期間のうち少なくとも一方が繰り返し存在するように前記半導体レーザを動作させる発振波長変調手段と、前記半導体レーザから放射されたレーザ光とその戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する検出手段と、この検出手段の出力信号に含まれる前記干渉波形の周期を干渉波形が入力される度に計測する信号抽出手段と、この信号抽出手段の計測結果を記憶する記憶手段と、この記憶手段に記憶された1つの干渉波形の周期を注目周期としたとき、この注目周期の直前に計測され前記記憶手段に記憶された複数の干渉波形の周期の分布の代表値と前記注目周期の直後に計測され前記記憶手段に記憶された複数の干渉波形の周期の分布の代表値とを算出する代表値算出手段と、前記注目周期を補正対象の干渉波形の周期とし、この補正対象の干渉波形の周期と2つの前記代表値とを比較することにより前記補正対象の干渉波形の周期を補正し、この補正の結果に従って前記記憶手段に記憶された周期を更新する周期補正手段と、前記代表値算出手段が算出した2つの代表値のうち小さい方をT1、大きい方をT2としたとき、代表値T1に基づくしきい値と代表値T2とを比較することにより、前記レーザ光の放射方向に出現した物体の存在を検出するか、あるいは初期状態から前記レーザ光の放射方向に存在する物体の運動の変化を検出する物体判定手段とを備え、前記干渉波形の周期の分布の代表値は、移動平均値、平均値、最大値、最小値、最頻値、中央値、あるいは前記干渉波形の周期の度数分布から得られる、階級値と度数との積が最大となる階級値のいずれかであることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の物体検出センサは、レーザ光を放射する半導体レーザと、発振波長が連続的に単調増加する第1の発振期間と発振波長が連続的に単調減少する第2の発振期間のうち少なくとも一方が繰り返し存在するように前記半導体レーザを動作させる発振波長変調手段と、前記半導体レーザから放射されたレーザ光とその戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する検出手段と、この検出手段の出力信号に含まれる前記干渉波形の周期を干渉波形が入力される度に計測する信号抽出手段と、この信号抽出手段の計測結果を記憶する記憶手段と、この記憶手段に記憶された1つの干渉波形の周期を注目周期としたとき、この注目周期の直後に計測され前記記憶手段に記憶された複数の干渉波形の周期の分布の代表値を算出する代表値算出手段と、前記注目周期を補正対象の干渉波形の周期とし、この補正対象の干渉波形の周期と、前記半導体レーザとの距離の初期値から予め規定された干渉波形の周期の分布の代表値および前記代表値算出手段が算出した代表値とを比較することにより前記補正対象の干渉波形の周期を補正し、この補正の結果に従って前記記憶手段に記憶された周期を更新する周期補正手段と、前記予め規定された代表値および前記代表値算出手段が算出した代表値のうち小さい方をT1、大きい方をT2としたとき、代表値T1に基づくしきい値と代表値T2とを比較することにより、前記レーザ光の放射方向に出現した物体の存在を検出するか、あるいは初期状態から前記レーザ光の放射方向に存在する物体の運動の変化を検出する物体判定手段とを備え、前記干渉波形の周期の分布の代表値は、移動平均値、平均値、最大値、最小値、最頻値、中央値、あるいは前記干渉波形の周期の度数分布から得られる、階級値と度数との積が最大となる階級値のいずれかであることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の物体検出センサの1構成例において、前記周期補正手段は、Tx=T1+α・(T2−T1)としたとき(0≦α≦1)、前記補正対象の干渉波形の周期が前記Txの所定数k倍未満の場合は(kは1未満の正の値)、この補正対象の干渉波形の周期と次に計測された干渉波形の周期とを合わせた周期を補正後の干渉波形の周期とし、周期を合わせた波形を1つの波形とし、前記補正対象の干渉波形の周期が前記Txの(m−0.5)倍以上で且つ前記Txの(m+0.5)倍未満の場合は(mは2以上の自然数)、前記補正対象の干渉波形の周期をm等分した周期をそれぞれ補正後の周期とし、補正後の周期の波形がm個あるものとすることを特徴とするものである。
また、本発明の物体検出センサの1構成例において、前記物体判定手段は、前記代表値T1に基づくしきい値をTh1,Th2(Th1<Th2)としたとき、Th1≦T2≦Th2が成立する場合、前記レーザ光の放射方向に物体が存在しないと判定し、Th1>T2またはT2>Th2が成立する場合、前記レーザ光の放射方向に物体が存在すると判定することを特徴とするものである。
また、本発明の物体検出センサの1構成例において、前記物体判定手段は、前記レーザ光の放射方向に物体が静止している場合を初期状態とし、前記代表値T1に基づくしきい値をTh1,Th2(Th1<Th2)としたとき、Th1≦T2≦Th2が成立する場合、前記レーザ光の放射方向に存在する物体が動いていないと判定し、Th1>T2またはT2>Th2が成立する場合、前記レーザ光の放射方向に存在する物体が動いたと判定することを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の物体検出センサの1構成例は、さらに、前記しきい値Th1,Th2を、Th1=aT1、Th2=bT1(0.5≦a<1、1<b≦1.5)と設定するしきい値設定手段を備えることを特徴とするものである。
また、本発明の物体検出センサの1構成例は、さらに、前記周期補正手段によって補正された干渉波形の周期のうち最小値をTmin、最大値をTmaxとしたとき、前記しきい値Th1,Th2を、Th1=T1−Tmin、Th2=T1+Tmaxと設定するしきい値設定手段を備えることを特徴とするものである。
また、本発明の物体検出センサの1構成例は、さらに、前記周期補正手段によって補正された干渉波形の周期の分散値をσ2としたとき、前記しきい値Th1,Th2を、Th1=T1−Aσ2、Th2=T1+Aσ2(Aは正の実数)と設定するしきい値設定手段を備えることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の物体検出センサの1構成例において、前記物体判定手段は、前記物体が侵入する予定の空間を挟んで前記半導体レーザと向かい合う反射壁面を基準面として、この基準面と前記半導体レーザとの間に物体が存在するかどうかを検出するとき、T2≦Th2が成立する場合、前記レーザ光の放射方向に物体が存在しないと判定し、T2>Th2が成立する場合、前記レーザ光の放射方向に物体が存在すると判定することを特徴とするものである。
また、本発明の物体検出センサの1構成例において、前記物体判定手段は、前記半導体レーザを保護する透明カバーの内面と外面のうち無反射防止処理が施されていない何れか1つの面を基準面として、この基準面の前方に物体が存在するかどうかを検出するとき、Th1≦T2が成立する場合、前記基準面の前方に物体が存在しないと判定し、Th1>T2が成立する場合、前記基準面の前方に物体が存在すると判定することを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の物体検出方法は、発振波長が連続的に単調増加する第1の発振期間と発振波長が連続的に単調減少する第2の発振期間のうち少なくとも一方が繰り返し存在するように半導体レーザを動作させる発振手順と、前記半導体レーザから放射されたレーザ光とその戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する検出手順と、この検出手順で得られた出力信号に含まれる前記干渉波形の周期を干渉波形が入力される度に計測する信号抽出手順と、この信号抽出手順の計測結果を記憶手段に記憶させる記憶手順と、前記記憶手段に記憶された1つの干渉波形の周期を注目周期としたとき、この注目周期の直前に計測され前記記憶手段に記憶された複数の干渉波形の周期の分布の代表値と前記注目周期の直後に計測され前記記憶手段に記憶された複数の干渉波形の周期の分布の代表値とを算出する代表値算出手順と、前記注目周期を補正対象の干渉波形の周期とし、この補正対象の干渉波形の周期と2つの前記代表値とを比較することにより前記補正対象の干渉波形の周期を補正し、この補正の結果に従って前記記憶手段に記憶された周期を更新する周期補正手順と、前記代表値算出手順で算出した2つの代表値のうち小さい方をT1、大きい方をT2としたとき、代表値T1に基づくしきい値と代表値T2とを比較することにより、前記レーザ光の放射方向に出現した物体の存在を検出するか、あるいは初期状態から前記レーザ光の放射方向に存在する物体の運動の変化を検出する物体判定手順とを備え、前記干渉波形の周期の分布の代表値は、移動平均値、平均値、最大値、最小値、最頻値、中央値、あるいは前記干渉波形の周期の度数分布から得られる、階級値と度数との積が最大となる階級値のいずれかであることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の物体検出方法は、発振波長が連続的に単調増加する第1の発振期間と発振波長が連続的に単調減少する第2の発振期間のうち少なくとも一方が繰り返し存在するように半導体レーザを動作させる発振手順と、前記半導体レーザから放射されたレーザ光とその戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する検出手順と、この検出手順で得られた出力信号に含まれる前記干渉波形の周期を干渉波形が入力される度に計測する信号抽出手順と、この信号抽出手順の計測結果を記憶手段に記憶させる記憶手順と、前記記憶手段に記憶された1つの干渉波形の周期を注目周期としたとき、この注目周期の直後に計測され前記記憶手段に記憶された複数の干渉波形の周期の分布の代表値を算出する代表値算出手順と、前記注目周期を補正対象の干渉波形の周期とし、この補正対象の干渉波形の周期と、前記半導体レーザとの距離の初期値から予め規定された干渉波形の周期の分布の代表値および前記代表値算出手順で算出した代表値とを比較することにより前記補正対象の干渉波形の周期を補正し、この補正の結果に従って前記記憶手段に記憶された周期を更新する周期補正手順と、前記予め規定された代表値および前記代表値算出手順で算出した代表値のうち小さい方をT1、大きい方をT2としたとき、代表値T1に基づくしきい値と代表値T2とを比較することにより、前記レーザ光の放射方向に出現した物体の存在を検出するか、あるいは初期状態から前記レーザ光の放射方向に存在する物体の運動の変化を検出する物体判定手順とを備え、前記干渉波形の周期の分布の代表値は、移動平均値、平均値、最大値、最小値、最頻値、中央値、あるいは前記干渉波形の周期の度数分布から得られる、階級値と度数との積が最大となる階級値のいずれかであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、干渉波形の周期の誤差を補正するので、物体検出の精度を向上させることができる。
【0016】
また、本発明では、半導体レーザとの距離の初期値から一方の干渉波形の周期の分布の代表値を予め規定しておくことにより、代表値を2つ算出する必要がなくなり、代表値を1つ算出すればよいので、従来の物体検出センサよりも短時間で物体検出または物体の運動変化の検出を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る物体検出センサの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態における半導体レーザの発振波長の時間変化の1例を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における電流−電圧変換増幅部の出力電圧波形およびフィルタ部の出力電圧波形を模式的に示す波形図である。
【図4】モードホップパルスについて説明するための図である。
【図5】半導体レーザの発振波長とフォトダイオードの出力波形との関係を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態における信号抽出部の動作を説明するための図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態における物体検出部の構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態における周期補正部の動作を説明するための図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態における信号抽出部の計測結果の補正原理を説明するための図である。
【図10】モードホップパルスの周期の度数分布を示す図である。
【図11】物体が等速運動している場合の物体との距離の変化を示す図である。
【図12】物体が等速運動している場合のモードホップパルスの周期の度数分布を示す図である。
【図13】物体の速度が変化している場合の物体との距離の変化および物体の速度の変化を示す図である。
【図14】物体の速度が変化している場合のモードホップパルスの周期の度数分布を示す図である。
【図15】本発明の第3の実施の形態に係る半導体レーザの入出射部の要部概略構成を示す図である。
【図16】本発明の第4の実施の形態における半導体レーザの発振波長の時間変化の例を示す図である。
【図17】本発明の第6の実施の形態に係る物体検出センサの構成を示すブロック図である。
【図18】従来の物体検出センサの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施の形態に係る物体検出センサの構成を示すブロック図である。図1の物体検出センサは、レーザ光を放射する半導体レーザ1と、半導体レーザ1の光出力を電気信号に変換するフォトダイオード2と、半導体レーザ1からの光を集光して放射すると共に、反射壁面10又は物体11からの戻り光を集光して半導体レーザ1に入射させるレンズ3と、半導体レーザ1を駆動する発振波長変調手段となるレーザドライバ4と、フォトダイオード2の出力電流を電圧に変換して増幅する電流−電圧変換増幅部5と、電流−電圧変換増幅部5の出力電圧から搬送波を除去するフィルタ部6と、フィルタ部6の出力電圧に含まれる自己結合信号であるMHPの周期を計測する信号抽出部7と、レーザ光の放射方向に出現した物体11の存在を検出するか、あるいは初期状態からレーザ光の放射方向に存在する物体11の運動の変化を検出する物体検出部8と、物体検出部8の検出結果を表示する表示部9とを有する。
【0019】
フォトダイオード2と電流−電圧変換増幅部5とは、検出手段を構成している。以下、説明容易にするために、半導体レーザ1には、モードホッピング現象を持たない型(VCSEL型、DFBレーザ型)のものが用いられているものと想定する。
【0020】
レーザドライバ4は、時間に関して一定の変化率で増減を繰り返す三角波駆動電流を注入電流として半導体レーザ1に供給する。これにより、半導体レーザ1は、注入電流の大きさに比例して発振波長が一定の変化率で連続的に増加する第1の発振期間と発振波長が一定の変化率で連続的に減少する第2の発振期間とを交互に繰り返すように駆動される。図2は半導体レーザ1の発振波長の時間変化を示す図である。図2において、P1は第1の発振期間、P2は第2の発振期間、λaは各期間における発振波長の最小値、λbは各期間における発振波長の最大値、Tcarは三角波の周期である。本実施の形態では、半導体レーザ1の発振波長の変化速度が一定であることが必要である。
【0021】
半導体レーザ1から出射したレーザ光は、レンズ3によって集光され、レーザ光の放射方向に物体11が存在しない場合は反射壁面10に入射し、物体11が存在する場合は物体11に入射する。反射壁面10又は物体11で反射された光は、レンズ3によって集光され、半導体レーザ1に入射する。ただし、レンズ3による集光は必須ではない。フォトダイオード2は、半導体レーザ1の内部又はその近傍に配置され、半導体レーザ1の光出力を電流に変換する。電流−電圧変換増幅器5は、フォトダイオード2の出力電流を電圧に変換して増幅する。
【0022】
フィルタ部6は、変調波から重畳信号を抽出する機能を有するものである。図3(A)は電流−電圧変換増幅部5の出力電圧波形を模式的に示す図、図3(B)はフィルタ部6の出力電圧波形を模式的に示す図である。これらの図は、フォトダイオード2の出力に相当する図3(A)の波形(変調波)から、図2の半導体レーザ1の発振波形(搬送波)を除去して、図3(B)のMHP波形(干渉波形)を抽出する過程を表している。
【0023】
次に、信号抽出部7は、フィルタ部6の出力電圧に含まれるMHPの周期をMHPが発生する度に計測する。ここで、自己結合信号であるMHPについて説明する。図4に示すように、ミラー層1013から物体11までの距離をL、レーザの発振波長をλとすると、以下の共振条件を満足するとき、物体11からの戻り光と半導体レーザ1の光共振器内のレーザ光は強め合い、レーザ出力がわずかに増加する。
L=qλ/2 ・・・(1)
式(1)において、qは整数である。この現象は、物体11からの散乱光が極めて微弱であっても、半導体レーザ1の共振器内の見かけの反射率が増加することにより、増幅作用が生じ、十分観測できる。なお、図4において、1019はミラーとなる誘電体多層膜である。
【0024】
図5は、半導体レーザ1の発振波長をある一定の割合で変化させたときの発振波長とフォトダイオード2の出力波形との関係を示す図である。式(1)に示したL=qλ/2を満足したときに、戻り光と光共振器内のレーザ光の位相差が0°(同位相)になって、戻り光と光共振器内のレーザ光とが最も強め合い、L=qλ/2+λ/4のときに、位相差が180°(逆位相)になって、戻り光と光共振器内のレーザ光とが最も弱め合う。そのため、半導体レーザ1の発振波長を変化させていくと、レーザ出力が強くなるところと弱くなるところとが交互に繰り返し現れ、このときのレーザ出力をフォトダイオード2で検出すると、図5に示すように一定周期の階段状の波形が得られる。このような波形は一般的には干渉縞と呼ばれる。この階段状の波形、すなわち干渉縞の1つ1つがMHPである。前記のとおり、ある一定時間において半導体レーザ1の発振波長を変化させた場合、測定距離に比例してMHPの数は変化する。
【0025】
図6(A)〜図6(D)は信号抽出部7の動作を説明するための図であり、図6(A)はフィルタ部6の出力電圧の波形、すなわちMHPの波形を模式的に示す図、図6(B)はMHPを2値化した波形を示す図、図6(C)は信号抽出部7に入力されるサンプリングクロックを示す図、図6(D)は図6(B)に対応する信号抽出部7の測定結果を示す図である。
【0026】
まず、信号抽出部7は、図6(A)に示すフィルタ部6の出力電圧が上昇してしきい値TH1以上になったときにハイレベルと判定し、フィルタ部6の出力電圧が下降してしきい値TH2(TH2<TH1)以下になったときにローレベルと判定することにより、フィルタ部6の出力を2値化する。そして、信号抽出部7は、2値化したMHPの立ち上がりエッジの周期(すなわち、MHPの周期)を立ち上がりエッジが発生する度に測定する。このとき、信号抽出部7は、図6(C)に示すサンプリングクロックの周期を1単位としてMHPの周期を測定する。図6(D)の例では、信号抽出部7は、MHPの周期としてTα,Tβ,Tγを順次測定している。図6(C)、図6(D)から明らかなように、周期Tα,Tβ,Tγの大きさは、それぞれ5[samplings]、4[samplings]、2[samplings]である。サンプリングクロックの周波数は、MHPの取り得る最高周波数に対して十分に高いものとする。
【0027】
次に、物体検出部8は、信号抽出部7の計測結果に基づいてレーザ光の放射方向に物体11が存在するかどうかを検出する。図7は物体検出部8の構成を示すブロック図である。物体検出部8は、記憶部80と、代表値算出部81と、周期補正部82と、物体判定部83と、しきい値設定部84とから構成される。なお、本実施の形態では、MHPの周期の分布の代表値として移動平均値を用いる場合について説明するが、これに限るものではない。移動平均値以外の代表値を用いる場合については後述する。
【0028】
記憶部80は、信号抽出部7の計測結果を記憶する。代表値算出部81は、記憶部80に記憶された、現時刻より前の時刻に計測されたMHPの周期を注目周期としたとき、この注目周期の直前に計測された所定数のMHPの周期の移動平均値TAと注目周期の直後に計測された所定数のMHPの周期の移動平均値TBとを算出する。代表値算出部81は、信号抽出部7から新たな計測結果が出力され記憶部80に格納される度に、移動平均値算出済みの現在の注目周期よりも1回新しい計測結果を新たな注目周期として、移動平均値TA,TBの算出処理を行う。代表値算出部81の算出結果は、記憶部80に格納される。
【0029】
周期補正部82は、前記注目周期を補正対象のMHPの周期とし、代表値算出部81が算出した移動平均値TA,TBと補正対象のMHPの周期とを比較することにより、補正対象のMHPの周期を補正する。周期補正部82は、この補正を信号抽出部7から新たな計測結果が出力され記憶部80に格納される度に行う。図8(A)〜図8(D)は周期補正部82の動作を説明するための図である。
【0030】
周期補正部82は、代表値算出部81が算出した2つの移動平均値TA,TBのうち小さい方をT1、大きい方をT2とし、Tx=T1+α・(T2−T1)としたとき(0≦α≦1)、図8(A)に示すように補正対象のMHPの周期Tがk・Tx未満の場合は(kは1未満の正の値)、図8(B)に示すように補正対象のMHPの周期Tと次に計測されたMHPの周期Tnextとを合わせた周期を補正後のMHPの周期T’とし、周期を合わせた波形を1つの波形とする。
【0031】
また、周期補正部82は、補正対象のMHPの周期Tが(m−0.5)・Tx以上で(m+0.5)・Tx未満の場合は(mは2以上の自然数)、補正対象のMHPの周期Tをm等分した周期をそれぞれ補正後の周期とし、補正後の周期の波形がm個あるものとする。図8(C)の例は、m=2で補正対象のMHPの周期Tが1.5Tx以上2.5Tx未満の場合であり、この場合、図8(D)に示すように補正対象のMHPの周期TがTdiv1,Tdiv2に2等分される。
【0032】
周期補正部82は、記憶部80に記憶されている信号抽出部7の計測結果を、補正結果に従って更新する。したがって、図8(A)、図8(B)に示した例の場合には、信号抽出部7の2つの計測結果が1つに合成されることになり、図8(C)、図8(D)に示した例の場合には、信号抽出部7の1つの計測結果が2つに分割されることになる。また、補正対象のMHPの周期よりも前に計測されたMHPの周期は、周期補正部82によって既に補正されていることになる。つまり、代表値算出部81が算出する移動平均値TAは、補正済みの計測結果から算出されることになる。周期補正部82は、以上のような補正処理を信号抽出部7から新たな計測結果が出力され記憶部80に格納される度に行う。
【0033】
図9は信号抽出部7の計測結果の補正原理を説明するための図であり、フィルタ部6の出力電圧の波形、すなわちMHPの波形を模式的に示す図である。ただし、説明を簡単にするため、ここでの原理は物体11が静止している場合もしくは物体11の振動の中心が変化しない場合を説明しており、補正対象のMHPの周期の比較対象として移動平均値T1,T2の代わりに、基準周期T0を用いている。基準周期T0は、物体11が静止していたときのMHPの周期、算出された距離におけるMHPの周期、もしくは周期補正部82による周期補正の直前に計測された一定数のMHPの周期の移動平均値のいずれかである。物体11が動く場合の周期補正の原理については後述する。
【0034】
MHPの周期は物体11との距離によって異なるが、物体11との距離が不変であれば、MHPは同じ周期で出現する。しかし、ノイズのために、MHPの波形には欠落が生じたり、信号として数えるべきでない波形が生じたりして、MHPの周期に誤差が生じる。
信号の欠落が生じると、欠落が生じた箇所でのMHPの周期Twは、本来の周期のおよそ2倍になる。つまり、MHPの周期が基準周期T0のおよそ2倍以上の場合には、信号に欠落が生じていると判断できる。そこで、周期Twを2等分することで、信号の欠落を補正することができる。
【0035】
また、ノイズをカウントした箇所でのMHPの周期Tsは、本来の周期のおよそ0.5倍になる。つまり、MHPの周期が基準周期T0のおよそ0.5倍未満の場合には、信号を過剰に数えていると判断できる。そこで、周期Tsと次に計測される周期Tnextとを加算することで、誤って数えたノイズを補正することができる。
【0036】
以上が、MHPの周期補正の基本原理である。信号に欠落が生じたと見なす周期Twを決めるためのしきい値を基準周期T0の2倍の値とせずに、1.5倍(本実施の形態で実際に用いるのは(m−0.5)倍であり、m=2の場合に1.5倍となる)とする理由は、特開2009−47676号公報に開示されている。特開2009−47676号公報に記載された原理はMHPの計測結果を補正する原理であるが、MHPの周期Tと計数結果Nとは、三角波の半周期あたりのサンプリングクロック数をMとすると、T=M/Nの関係にあり、Mは一定値であるから、信号に欠落が生じたと見なす周期Twを決めるためのしきい値は、計数結果Nを補正する場合と同様に、基準周期T0の1.5倍とすればよいことが分かる。
【0037】
次に、物体11が動く場合の周期補正の原理について説明する。MHPの周波数は、物体11との距離に比例した周波数(このときの周期が基準周期T0)と物体11の速度に比例する周波数との和で表すことができる。物体11がある状態でMHPの周期がTの場合、個々のMHPの周期の確率分布はノイズなどによってばらつきが生じ、Tを中心とした概ね正規分布になる。よって、物体11が静止している場合、個々のMHPの周期の確率分布も基準周期T0を中心とした正規分布になり、静止している期間のMHPの周期の度数分布は、図10に示したように基準周期T0を中心とした正規分布になる。
【0038】
ここで、図11に示すように物体11が等速運動している場合を考える。自己結合型のレーザセンサでは、物体11の速度の変化によるMHPの周波数の変化割合と比較すると、物体11との距離の変化によるMHPの周期の変化は非常に小さい。このため、個々のMHPの周期の確率分布は、図11のA点でもB点でも、物体11との平均距離に相当するT0から速度の大きさの分だけ周期が変化した値Tを中心とした正規分布になるため、A点からB点の期間のMHPの周期の度数分布も、Tを中心とした正規分布になる(図12)。
【0039】
次に、図13(A)、図13(B)に示すように物体11の速度が変化している場合を考える。ここでは、簡略化するために、折れ線運動を考える。すなわち、物体11との距離Lを期間Aにおける距離LAと期間Bにおける距離LBに簡略化し、同様に物体11の速度Vを期間Aにおける速度VAと期間Bにおける速度VBに簡略化する。このように物体11の運動を簡略化すると、MHPの周期の度数分布は図14のようになる。図14においてTAは期間Aにおける物体11の平均速度に対応するMHPの周期、TBは期間Bにおける物体11の平均速度に対応するMHPの周期である。
【0040】
物体11の速度変化がなだらかに変化しているとしたら、図13(A)、図13(B)の時刻tでの物体11の速度は速度VAとVBとの間にあるので、MHPの周期も周期TAとTBとの間にある。このときのMHPの周期をTXとすると、信号に欠落が生じて2つのMHPが1つになった場合のMHPの周期の確率分布は、2TXを中心とした正規分布になると考えられる。また、周期TXのMHPがノイズで2分割された場合のMHPの2つの確率分布は、0.5TXを軸にした対称の形になる。したがって、TAからTBの間の値と考えられるTXの周期補正を考える場合、基準周期T0の代わりに、TAとTBの移動平均値を基準として周期補正を行うことが妥当である。以上が、物体11が動く場合のMHPの周期補正の原理である。
【0041】
次に、物体判定部83は、代表値算出部81が算出した2つの移動平均値TA,TBのうち小さい方をT1、大きい方をT2とし、T1に基づくしきい値をTh1,Th2(Th1<Th2)としたとき、Th1≦T2≦Th2が成立する場合、レーザ光の放射方向に物体11が存在しないと判定する。また、物体判定部83は、Th1>T2またはT2>Th2が成立する場合、初期状態では存在しなかった物体11がレーザ光の放射方向に存在すると判定する。ただし、この判定は静止した反射壁面10と半導体レーザ1との間に物体11が存在しない場合を初期状態とし、反射壁面10と半導体レーザ1との間の空間に物体11が侵入する場合を想定している。
【0042】
しきい値設定部84は、物体判定部83による判定処理の前に、しきい値Th1,Th2を次式のように設定する。
Th1=aT1 ・・・(2)
Th2=bT1 ・・・(3)
係数a,bは所定の定数で、0.5≦a<1、1<b≦1.5を満たす。しきい値設定部84は、このようなしきい値設定処理を代表値算出部81によって移動平均値が算出される度に行う。
【0043】
レーザ光の放射方向に物体11が静止している場合を初期状態とするときには、物体判定部83の判定は以下のようになる。すなわち、物体判定部83は、Th1≦T2≦Th2が成立する場合、初期状態からレーザ光の放射方向に存在する物体11が動いていないと判定し、Th1>T2またはT2>Th2が成立する場合、物体11が動いたと判定する。
物体判定部83は、以上のような判定処理を信号抽出部7から計測結果が出力される度に行う。表示部9は、物体判定部83の判定結果を表示する。
【0044】
以上のように、本実施の形態では、特許文献1に開示された物体検出センサのようにMHPの周期の度数分布を作成する必要がないので、特許文献1に開示された物体検出センサのメモリよりも記憶容量の少ないメモリで物体検出または物体の運動変化の検出を実現することができる。また、2つの移動平均値TA,TBは、MHPの周期の度数分布を作成するのに要する時間よりも短時間で算出することができる。したがって、本実施の形態では、特許文献1に開示された物体検出センサよりも短時間で物体検出または物体の運動変化の検出を行うことができる。また、本実施の形態では、MHPの周期の誤差を補正するので、物体検出の精度を向上させることができる。
【0045】
なお、反射壁面10を物体検出の基準面として、反射壁面10と半導体レーザ1との間に物体11が存在するかどうかを検出する場合には、しきい値Th2のみを用いて判定を行えばよい。すなわち、物体判定部83は、T2≦Th2が成立する場合、レーザ光の放射方向に物体11が存在しないと判定し、T2>Th2が成立する場合、レーザ光の放射方向に物体11が存在すると判定する。
【0046】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態は、物体検出のためのしきい値Th1,Th2の別の設定方法を説明するものである。本実施の形態においても、物体検出センサの構成は第1の実施の形態と同様であるので、図1、図7の符号を用いて説明する。
【0047】
本実施の形態のしきい値設定部84は、周期補正部82によって補正された信号抽出部7の計測結果のうち最小値をTmin、補正された計測結果のうち最大値をTmaxとしたとき、しきい値Th1,Th2を次式のように設定する。
Th1=T1−Tmin ・・・(4)
Th2=T1+Tmax ・・・(5)
しきい値設定部84は、以上のようなしきい値設定処理を周期補正部82によって信号抽出部7の計測結果が補正される度に行う。
【0048】
あるいは、しきい値設定部84は、周期補正部82によって補正された信号抽出部7の計測結果の分散値をσ2としたとき、しきい値Th1,Th2を次式のように設定してもよい。
Th1=T1−Aσ2 ・・・(6)
Th2=T1+Aσ2 ・・・(7)
式(6)、式(7)において、Aは予め定められた正の実数であり、例えば3である。
【0049】
物体判定部83は、しきい値設定部84によって設定されたしきい値Th1,Th2を用いて第1の実施の形態で説明したような判定処理を行う。
物体検出センサの他の構成は、第1の実施の形態で説明したとおりである。こうして、本実施の形態では、物体検出のためのしきい値Th1,Th2を自動的に適切な値に設定することができる。
【0050】
[第3の実施の形態]
第1、第2の実施の形態では、反射壁面10を物体検出の基準面として用いたが、半導体レーザ1からのレーザ光の入出射部を形成する透明体の片面にだけ無反射防止処理を施し、透明体の無反射防止処理を施していない面を物体検出の基準面としてもよい。図15は本発明の第3の実施の形態に係る半導体レーザの入出射部の要部概略構成を示す図であり、図1と同一の構成には同一の符号を付してある。本実施の形態と第1の実施の形態との大きな違いは、反射壁面がないことと、物体検出部8の物体検出処理が違うことである。
【0051】
図15において、130は半導体レーザ1を収納する密閉ケース、131は半導体レーザ1の前面に設けられて半導体レーザ1を保護するガラス等の透明カバー(透明体)、132は透明カバー131の表面に設けられた反射防止膜(ARコート)である。
透明カバー131は、密閉ケース130の窓部に嵌め込んで設けられる。そして、半導体レーザ1は、その前面であるレーザ光入出射面を透明カバー131に対峙させて密閉ケース130内に組み込まれる。
【0052】
ガラス等の透明体を通してレーザ光を入出力する場合、透明体と空気との界面で僅かではあるがレーザ光の反射が生じる。このような反射を防ぐ場合、専ら、低屈折率材料を分散させたフィラーを透明体の表面にコーティングして反射防止膜を形成することが行われる。本実施の形態においても、レーザ光の入出射面となる透明カバー131での不要な反射を抑えるべく、透明カバー131の表面に反射防止膜132を設けるが、この際、透明カバー131の内面にだけ反射防止膜132を設け、その外面には反射防止膜を形成しないことで、敢えて透明カバー131の外面においてレーザ光の反射が生じるようにしている。そして、半導体レーザ1から出力されたレーザ光の一部が透明カバー131の外面にて反射して半導体レーザ1に戻るようにしている。
【0053】
なお、透明カバー131の外面については、無反射防止処理を施さないことは勿論のことではあるが、敢えて半導体レーザ1において自己結合効果が生じる強度の反射光を得るに必要な処理を施すようにしても良い。具体的には透明カバー131の外面を鏡面研磨したり、或る程度の反射率を有する光学膜を被覆形成することも可能である。
【0054】
図15に示した構成によれば、レーザ光の放射方向に物体11が存在しない場合、半導体レーザ1から出射したレーザ光は、その一部が透明カバー131の外面によって反射されて半導体レーザ1に戻ることになる。この結果、半導体レーザ1においては、出力光と透明カバー131からの反射光との自己結合効果による干渉が生じる。
【0055】
物体検出部8の物体判定部83は、本実施の形態のように透明カバー131の一方の面を物体検出の基準面とする場合、しきい値Th1のみを用いて判定を行えばよい。すなわち、物体判定部83は、Th1≦T2が成立する場合、レーザ光の放射方向に物体11が存在しないと判定し、Th1>T2が成立する場合、レーザ光の放射方向に物体11が存在すると判定する。
物体検出センサの他の構成は、第1、第2の実施の形態で説明したとおりである。
【0056】
以上のように、本実施の形態によれば、透明カバー131の一方の面を物体検出の基準面とする場合でも本発明を適用することができ、第1、第2の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0057】
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。第1〜第3の実施の形態では、半導体レーザ1を三角波状に発振させていたが、これに限るものではなく、図16に示すように半導体レーザ1を鋸波状に発振させてもよい。すなわち、本実施の形態では、第1の発振期間P1または第2の発振期間P2のいずれか一方が繰り返し存在するように半導体レーザ1を動作させればよい。本実施の形態のように半導体レーザ1を鋸波状に発振させる場合においても、半導体レーザ1の発振波長の変化速度が一定であることが必要である。第1の発振期間P1または第2の発振期間P2における動作は、三角波発振の場合と同様である。
【0058】
なお、第1〜第4の実施の形態では、MHPの周期の分布の代表値として移動平均値を用いたが、これに限るものではなく、移動平均値の代わりに、平均値、最大値、最小値、最頻値、中央値、あるいはMHPの周期の度数分布から得られる、階級値と度数との積が最大となる階級値(以下、最大占有値と呼ぶ)のいずれかの代表値を用いてもよい。
【0059】
すなわち、第1〜第4の実施の形態において、代表値算出部81は、記憶部80に記憶された、現時刻より前の時刻に計測されたMHPの周期を注目周期としたとき、この注目周期の直前に計測された所定数のMHPの周期の平均値、最大値、最小値、最頻値、中央値、あるいは最大占有値と、注目周期の直後に計測された所定数のMHPの周期の平均値、最大値、最小値、最頻値、中央値、あるいは最大占有値とを算出すればよい。物体検出部8の他の構成は、移動平均値の代わりに、代表値算出部81が算出した代表値を用いて第1〜第4の実施の形態で説明した処理を実行すればよい。なお、代表値算出部81が算出する2つの代表値は同じ種類の代表値にする必要がある。
【0060】
[第5の実施の形態]
次に、本発明の第5の実施の形態について説明する。第1〜第4の実施の形態では、代表値算出部81が2つの代表値を算出しているが、一方の代表値として固定値を用いてもよい。本実施の形態においても、物体検出センサの構成は第1の実施の形態と同様であるので、図1、図7の符号を用いて説明する。
【0061】
本実施の形態では、例えば反射壁面10を物体検出の基準面として、反射壁面10と半導体レーザ1との距離を距離の初期値とする。図5で説明したとおり、MHPの数は測定距離に比例するので、距離の初期値を定めると、この距離の初期値に対応するMHPの数を求めることができる。そして、時間当たりのMHPの数から、MHPの周期を求めることができる。このMHPの周期を代表値の初期値とすればよい。
【0062】
本実施の形態の代表値算出部81は、記憶部80に記憶された、現時刻より前の時刻に計測されたMHPの周期を注目周期としたとき、この注目周期の直後に計測された所定数のMHPの周期の移動平均値、平均値、最大値、最小値、最頻値、中央値、あるいは最大占有値を算出すればよい。そして、物体検出部8の他の構成は、距離の初期値から予め規定された代表値の初期値と代表値算出部81が算出した代表値とを用いて第1〜第4の実施の形態で説明した処理を実行すればよい。
こうして、本実施の形態においても、第1〜第4の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0063】
[第6の実施の形態]
次に、本発明の第6の実施の形態について説明する。第1〜第5の実施の形態では、MHP波形を含む電気信号を検出する検出手段としてフォトダイオード2と電流−電圧変換増幅部5とを用いたが、フォトダイオードを使用することなくMHP波形を抽出することも可能である。図17は本発明の第6の実施の形態に係る物体検出センサの構成を示すブロック図であり、図1と同様の構成には同一の符号を付してある。本実施の形態の物体検出センサは、第1の実施の形態のフォトダイオード2と電流−電圧変換増幅部5の代わりに、検出手段として電圧検出部12を用いるものである。
【0064】
電圧検出部12は、半導体レーザ1の端子間電圧、すなわちアノード−カソード間電圧を検出して増幅する。半導体レーザ1から放射されたレーザ光と物体11からの戻り光とによって干渉が生じるとき、半導体レーザ1の端子間電圧には、MHP波形が現れる。したがって、半導体レーザ1の端子間電圧からMHP波形を抽出することが可能である。
【0065】
フィルタ部6は、電圧検出部12の出力電圧から搬送波を除去する。物体検出センサのその他の構成は、第1〜第5の実施の形態と同じである。
こうして、本実施の形態では、フォトダイオードを使用することなくMHP波形を抽出することができ、第1の実施の形態と比較して物体検出センサの部品を削減することができ、物体検出センサのコストを低減することができる。また、本実施の形態では、フォトダイオードを使用しないので、外乱光による影響を除去することができる。
【0066】
なお、第1〜第6の実施の形態において少なくとも信号抽出部7と物体検出部8とは、例えばCPU、メモリおよびインタフェースを備えたコンピュータとこれらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。CPUは、メモリに格納されたプログラムに従って第1〜第6の実施の形態で説明した処理を実行する。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、半導体レーザから放射したレーザ光とその戻り光との自己結合効果によって生じる干渉の情報から、レーザ光の放射方向の物体の有無や物体の運動の変化を検出する技術に適用することができる。
【符号の説明】
【0068】
1…半導体レーザ、2…フォトダイオード、3…レンズ、4…レーザドライバ、5…電流−電圧変換増幅部、6…フィルタ部、7…信号抽出部、8…物体検出部、9…表示部、10…反射壁面、11…物体、12…電圧検出部、80…記憶部、81…代表値算出部、82…周期補正部、83…物体判定部、84…しきい値設定部、130…密閉ケース、131…透明カバー、132…反射防止膜。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を放射する半導体レーザと、
発振波長が連続的に単調増加する第1の発振期間と発振波長が連続的に単調減少する第2の発振期間のうち少なくとも一方が繰り返し存在するように前記半導体レーザを動作させる発振波長変調手段と、
前記半導体レーザから放射されたレーザ光とその戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する検出手段と、
この検出手段の出力信号に含まれる前記干渉波形の周期を干渉波形が入力される度に計測する信号抽出手段と、
この信号抽出手段の計測結果を記憶する記憶手段と、
この記憶手段に記憶された1つの干渉波形の周期を注目周期としたとき、この注目周期の直前に計測され前記記憶手段に記憶された複数の干渉波形の周期の分布の代表値と前記注目周期の直後に計測され前記記憶手段に記憶された複数の干渉波形の周期の分布の代表値とを算出する代表値算出手段と、
前記注目周期を補正対象の干渉波形の周期とし、この補正対象の干渉波形の周期と2つの前記代表値とを比較することにより前記補正対象の干渉波形の周期を補正し、この補正の結果に従って前記記憶手段に記憶された周期を更新する周期補正手段と、
前記代表値算出手段が算出した2つの代表値のうち小さい方をT1、大きい方をT2としたとき、代表値T1に基づくしきい値と代表値T2とを比較することにより、前記レーザ光の放射方向に出現した物体の存在を検出するか、あるいは初期状態から前記レーザ光の放射方向に存在する物体の運動の変化を検出する物体判定手段とを備え、
前記干渉波形の周期の分布の代表値は、移動平均値、平均値、最大値、最小値、最頻値、中央値、あるいは前記干渉波形の周期の度数分布から得られる、階級値と度数との積が最大となる階級値のいずれかであることを特徴とする物体検出センサ。
【請求項2】
レーザ光を放射する半導体レーザと、
発振波長が連続的に単調増加する第1の発振期間と発振波長が連続的に単調減少する第2の発振期間のうち少なくとも一方が繰り返し存在するように前記半導体レーザを動作させる発振波長変調手段と、
前記半導体レーザから放射されたレーザ光とその戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する検出手段と、
この検出手段の出力信号に含まれる前記干渉波形の周期を干渉波形が入力される度に計測する信号抽出手段と、
この信号抽出手段の計測結果を記憶する記憶手段と、
この記憶手段に記憶された1つの干渉波形の周期を注目周期としたとき、この注目周期の直後に計測され前記記憶手段に記憶された複数の干渉波形の周期の分布の代表値を算出する代表値算出手段と、
前記注目周期を補正対象の干渉波形の周期とし、この補正対象の干渉波形の周期と、前記半導体レーザとの距離の初期値から予め規定された干渉波形の周期の分布の代表値および前記代表値算出手段が算出した代表値とを比較することにより前記補正対象の干渉波形の周期を補正し、この補正の結果に従って前記記憶手段に記憶された周期を更新する周期補正手段と、
前記予め規定された代表値および前記代表値算出手段が算出した代表値のうち小さい方をT1、大きい方をT2としたとき、代表値T1に基づくしきい値と代表値T2とを比較することにより、前記レーザ光の放射方向に出現した物体の存在を検出するか、あるいは初期状態から前記レーザ光の放射方向に存在する物体の運動の変化を検出する物体判定手段とを備え、
前記干渉波形の周期の分布の代表値は、移動平均値、平均値、最大値、最小値、最頻値、中央値、あるいは前記干渉波形の周期の度数分布から得られる、階級値と度数との積が最大となる階級値のいずれかであることを特徴とする物体検出センサ。
【請求項3】
請求項1または2記載の物体検出センサにおいて、
前記周期補正手段は、Tx=T1+α・(T2−T1)としたとき(0≦α≦1)、前記補正対象の干渉波形の周期が前記Txの所定数k倍未満の場合は(kは1未満の正の値)、この補正対象の干渉波形の周期と次に計測された干渉波形の周期とを合わせた周期を補正後の干渉波形の周期とし、周期を合わせた波形を1つの波形とし、前記補正対象の干渉波形の周期が前記Txの(m−0.5)倍以上で且つ前記Txの(m+0.5)倍未満の場合は(mは2以上の自然数)、前記補正対象の干渉波形の周期をm等分した周期をそれぞれ補正後の周期とし、補正後の周期の波形がm個あるものとすることを特徴とする物体検出センサ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の物体検出センサにおいて、
前記物体判定手段は、前記代表値T1に基づくしきい値をTh1,Th2(Th1<Th2)としたとき、Th1≦T2≦Th2が成立する場合、前記レーザ光の放射方向に物体が存在しないと判定し、Th1>T2またはT2>Th2が成立する場合、前記レーザ光の放射方向に物体が存在すると判定することを特徴とする物体検出センサ。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の物体検出センサにおいて、
前記物体判定手段は、前記レーザ光の放射方向に物体が静止している場合を初期状態とし、前記代表値T1に基づくしきい値をTh1,Th2(Th1<Th2)としたとき、Th1≦T2≦Th2が成立する場合、前記レーザ光の放射方向に存在する物体が動いていないと判定し、Th1>T2またはT2>Th2が成立する場合、前記レーザ光の放射方向に存在する物体が動いたと判定することを特徴とする物体検出センサ。
【請求項6】
請求項4または5記載の物体検出センサにおいて、
さらに、前記しきい値Th1,Th2を、Th1=aT1、Th2=bT1(0.5≦a<1、1<b≦1.5)と設定するしきい値設定手段を備えることを特徴とする物体検出センサ。
【請求項7】
請求項4または5記載の物体検出センサにおいて、
さらに、前記周期補正手段によって補正された干渉波形の周期のうち最小値をTmin、最大値をTmaxとしたとき、前記しきい値Th1,Th2を、Th1=T1−Tmin、Th2=T1+Tmaxと設定するしきい値設定手段を備えることを特徴とする物体検出センサ。
【請求項8】
請求項4または5記載の物体検出センサにおいて、
さらに、前記周期補正手段によって補正された干渉波形の周期の分散値をσ2としたとき、前記しきい値Th1,Th2を、Th1=T1−Aσ2、Th2=T1+Aσ2(Aは正の実数)と設定するしきい値設定手段を備えることを特徴とする物体検出センサ。
【請求項9】
請求項4記載の物体検出センサにおいて、
前記物体判定手段は、前記物体が侵入する予定の空間を挟んで前記半導体レーザと向かい合う反射壁面を基準面として、この基準面と前記半導体レーザとの間に物体が存在するかどうかを検出するとき、T2≦Th2が成立する場合、前記レーザ光の放射方向に物体が存在しないと判定し、T2>Th2が成立する場合、前記レーザ光の放射方向に物体が存在すると判定することを特徴とする物体検出センサ。
【請求項10】
請求項4記載の物体検出センサにおいて、
前記物体判定手段は、前記半導体レーザを保護する透明カバーの内面と外面のうち無反射防止処理が施されていない何れか1つの面を基準面として、この基準面の前方に物体が存在するかどうかを検出するとき、Th1≦T2が成立する場合、前記基準面の前方に物体が存在しないと判定し、Th1>T2が成立する場合、前記基準面の前方に物体が存在すると判定することを特徴とする物体検出センサ。
【請求項11】
発振波長が連続的に単調増加する第1の発振期間と発振波長が連続的に単調減少する第2の発振期間のうち少なくとも一方が繰り返し存在するように半導体レーザを動作させる発振手順と、
前記半導体レーザから放射されたレーザ光とその戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する検出手順と、
この検出手順で得られた出力信号に含まれる前記干渉波形の周期を干渉波形が入力される度に計測する信号抽出手順と、
この信号抽出手順の計測結果を記憶手段に記憶させる記憶手順と、
前記記憶手段に記憶された1つの干渉波形の周期を注目周期としたとき、この注目周期の直前に計測され前記記憶手段に記憶された複数の干渉波形の周期の分布の代表値と前記注目周期の直後に計測され前記記憶手段に記憶された複数の干渉波形の周期の分布の代表値とを算出する代表値算出手順と、
前記注目周期を補正対象の干渉波形の周期とし、この補正対象の干渉波形の周期と2つの前記代表値とを比較することにより前記補正対象の干渉波形の周期を補正し、この補正の結果に従って前記記憶手段に記憶された周期を更新する周期補正手順と、
前記代表値算出手順で算出した2つの代表値のうち小さい方をT1、大きい方をT2としたとき、代表値T1に基づくしきい値と代表値T2とを比較することにより、前記レーザ光の放射方向に出現した物体の存在を検出するか、あるいは初期状態から前記レーザ光の放射方向に存在する物体の運動の変化を検出する物体判定手順とを備え、
前記干渉波形の周期の分布の代表値は、移動平均値、平均値、最大値、最小値、最頻値、中央値、あるいは前記干渉波形の周期の度数分布から得られる、階級値と度数との積が最大となる階級値のいずれかであることを特徴とする物体検出方法。
【請求項12】
発振波長が連続的に単調増加する第1の発振期間と発振波長が連続的に単調減少する第2の発振期間のうち少なくとも一方が繰り返し存在するように半導体レーザを動作させる発振手順と、
前記半導体レーザから放射されたレーザ光とその戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する検出手順と、
この検出手順で得られた出力信号に含まれる前記干渉波形の周期を干渉波形が入力される度に計測する信号抽出手順と、
この信号抽出手順の計測結果を記憶手段に記憶させる記憶手順と、
前記記憶手段に記憶された1つの干渉波形の周期を注目周期としたとき、この注目周期の直後に計測され前記記憶手段に記憶された複数の干渉波形の周期の分布の代表値を算出する代表値算出手順と、
前記注目周期を補正対象の干渉波形の周期とし、この補正対象の干渉波形の周期と、前記半導体レーザとの距離の初期値から予め規定された干渉波形の周期の分布の代表値および前記代表値算出手順で算出した代表値とを比較することにより前記補正対象の干渉波形の周期を補正し、この補正の結果に従って前記記憶手段に記憶された周期を更新する周期補正手順と、
前記予め規定された代表値および前記代表値算出手順で算出した代表値のうち小さい方をT1、大きい方をT2としたとき、代表値T1に基づくしきい値と代表値T2とを比較することにより、前記レーザ光の放射方向に出現した物体の存在を検出するか、あるいは初期状態から前記レーザ光の放射方向に存在する物体の運動の変化を検出する物体判定手順とを備え、
前記干渉波形の周期の分布の代表値は、移動平均値、平均値、最大値、最小値、最頻値、中央値、あるいは前記干渉波形の周期の度数分布から得られる、階級値と度数との積が最大となる階級値のいずれかであることを特徴とする物体検出方法。
【請求項13】
請求項11または12記載の物体検出方法において、
前記周期補正手順は、Tx=T1+α・(T2−T1)としたとき(0≦α≦1)、前記補正対象の干渉波形の周期が前記Txの所定数k倍未満の場合は(kは1未満の正の値)、この補正対象の干渉波形の周期と次に計測された干渉波形の周期とを合わせた周期を補正後の干渉波形の周期とし、周期を合わせた波形を1つの波形とし、前記補正対象の干渉波形の周期が前記Txの(m−0.5)倍以上で且つ前記Txの(m+0.5)倍未満の場合は(mは2以上の自然数)、前記補正対象の干渉波形の周期をm等分した周期をそれぞれ補正後の周期とし、補正後の周期の波形がm個あるものとすることを特徴とする物体検出方法。
【請求項14】
請求項11乃至13のいずれか1項に記載の物体検出方法において、
前記物体判定手順は、前記代表値T1に基づくしきい値をTh1,Th2(Th1<Th2)としたとき、Th1≦T2≦Th2が成立する場合、前記レーザ光の放射方向に物体が存在しないと判定し、Th1>T2またはT2>Th2が成立する場合、前記レーザ光の放射方向に物体が存在すると判定することを特徴とする物体検出方法。
【請求項15】
請求項11乃至13のいずれか1項に記載の物体検出方法において、
前記物体判定手順は、前記レーザ光の放射方向に物体が静止している場合を初期状態とし、前記代表値T1に基づくしきい値をTh1,Th2(Th1<Th2)としたとき、Th1≦T2≦Th2が成立する場合、前記レーザ光の放射方向に存在する物体が動いていないと判定し、Th1>T2またはT2>Th2が成立する場合、前記レーザ光の放射方向に存在する物体が動いたと判定することを特徴とする物体検出方法。
【請求項16】
請求項14または15記載の物体検出方法において、
さらに、前記物体判定手順の前に、前記しきい値Th1,Th2を、Th1=aT1、Th2=bT1(0.5≦a<1、1<b≦1.5)と設定するしきい値設定手順を備えることを特徴とする物体検出方法。
【請求項17】
請求項14または15記載の物体検出方法において、
さらに、前記物体判定手順の前に、前記周期補正手順で補正した干渉波形の周期のうち最小値をTmin、最大値をTmaxとしたとき、前記しきい値Th1,Th2を、Th1=T1−Tmin、Th2=T1+Tmaxと設定するしきい値設定手順を備えることを特徴とする物体検出方法。
【請求項18】
請求項14または15記載の物体検出方法において、
さらに、前記物体判定手順の前に、前記周期補正手順で補正した干渉波形の周期の分散値をσ2としたとき、前記しきい値Th1,Th2を、Th1=T1−Aσ2、Th2=T1+Aσ2(Aは正の実数)と設定するしきい値設定手順を備えることを特徴とする物体検出方法。
【請求項19】
請求項14記載の物体検出方法において、
前記物体判定手順は、前記物体が侵入する予定の空間を挟んで前記半導体レーザと向かい合う反射壁面を基準面として、この基準面と前記半導体レーザとの間に物体が存在するかどうかを検出するとき、T2≦Th2が成立する場合、前記レーザ光の放射方向に物体が存在しないと判定し、T2>Th2が成立する場合、前記レーザ光の放射方向に物体が存在すると判定することを特徴とする物体検出方法。
【請求項20】
請求項14記載の物体検出方法において、
前記物体判定手順は、前記半導体レーザを保護する透明カバーの内面と外面のうち無反射防止処理が施されていない何れか1つの面を基準面として、この基準面の前方に物体が存在するかどうかを検出するとき、Th1≦T2が成立する場合、前記基準面の前方に物体が存在しないと判定し、Th1>T2が成立する場合、前記基準面の前方に物体が存在すると判定することを特徴とする物体検出方法。
【請求項1】
レーザ光を放射する半導体レーザと、
発振波長が連続的に単調増加する第1の発振期間と発振波長が連続的に単調減少する第2の発振期間のうち少なくとも一方が繰り返し存在するように前記半導体レーザを動作させる発振波長変調手段と、
前記半導体レーザから放射されたレーザ光とその戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する検出手段と、
この検出手段の出力信号に含まれる前記干渉波形の周期を干渉波形が入力される度に計測する信号抽出手段と、
この信号抽出手段の計測結果を記憶する記憶手段と、
この記憶手段に記憶された1つの干渉波形の周期を注目周期としたとき、この注目周期の直前に計測され前記記憶手段に記憶された複数の干渉波形の周期の分布の代表値と前記注目周期の直後に計測され前記記憶手段に記憶された複数の干渉波形の周期の分布の代表値とを算出する代表値算出手段と、
前記注目周期を補正対象の干渉波形の周期とし、この補正対象の干渉波形の周期と2つの前記代表値とを比較することにより前記補正対象の干渉波形の周期を補正し、この補正の結果に従って前記記憶手段に記憶された周期を更新する周期補正手段と、
前記代表値算出手段が算出した2つの代表値のうち小さい方をT1、大きい方をT2としたとき、代表値T1に基づくしきい値と代表値T2とを比較することにより、前記レーザ光の放射方向に出現した物体の存在を検出するか、あるいは初期状態から前記レーザ光の放射方向に存在する物体の運動の変化を検出する物体判定手段とを備え、
前記干渉波形の周期の分布の代表値は、移動平均値、平均値、最大値、最小値、最頻値、中央値、あるいは前記干渉波形の周期の度数分布から得られる、階級値と度数との積が最大となる階級値のいずれかであることを特徴とする物体検出センサ。
【請求項2】
レーザ光を放射する半導体レーザと、
発振波長が連続的に単調増加する第1の発振期間と発振波長が連続的に単調減少する第2の発振期間のうち少なくとも一方が繰り返し存在するように前記半導体レーザを動作させる発振波長変調手段と、
前記半導体レーザから放射されたレーザ光とその戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する検出手段と、
この検出手段の出力信号に含まれる前記干渉波形の周期を干渉波形が入力される度に計測する信号抽出手段と、
この信号抽出手段の計測結果を記憶する記憶手段と、
この記憶手段に記憶された1つの干渉波形の周期を注目周期としたとき、この注目周期の直後に計測され前記記憶手段に記憶された複数の干渉波形の周期の分布の代表値を算出する代表値算出手段と、
前記注目周期を補正対象の干渉波形の周期とし、この補正対象の干渉波形の周期と、前記半導体レーザとの距離の初期値から予め規定された干渉波形の周期の分布の代表値および前記代表値算出手段が算出した代表値とを比較することにより前記補正対象の干渉波形の周期を補正し、この補正の結果に従って前記記憶手段に記憶された周期を更新する周期補正手段と、
前記予め規定された代表値および前記代表値算出手段が算出した代表値のうち小さい方をT1、大きい方をT2としたとき、代表値T1に基づくしきい値と代表値T2とを比較することにより、前記レーザ光の放射方向に出現した物体の存在を検出するか、あるいは初期状態から前記レーザ光の放射方向に存在する物体の運動の変化を検出する物体判定手段とを備え、
前記干渉波形の周期の分布の代表値は、移動平均値、平均値、最大値、最小値、最頻値、中央値、あるいは前記干渉波形の周期の度数分布から得られる、階級値と度数との積が最大となる階級値のいずれかであることを特徴とする物体検出センサ。
【請求項3】
請求項1または2記載の物体検出センサにおいて、
前記周期補正手段は、Tx=T1+α・(T2−T1)としたとき(0≦α≦1)、前記補正対象の干渉波形の周期が前記Txの所定数k倍未満の場合は(kは1未満の正の値)、この補正対象の干渉波形の周期と次に計測された干渉波形の周期とを合わせた周期を補正後の干渉波形の周期とし、周期を合わせた波形を1つの波形とし、前記補正対象の干渉波形の周期が前記Txの(m−0.5)倍以上で且つ前記Txの(m+0.5)倍未満の場合は(mは2以上の自然数)、前記補正対象の干渉波形の周期をm等分した周期をそれぞれ補正後の周期とし、補正後の周期の波形がm個あるものとすることを特徴とする物体検出センサ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の物体検出センサにおいて、
前記物体判定手段は、前記代表値T1に基づくしきい値をTh1,Th2(Th1<Th2)としたとき、Th1≦T2≦Th2が成立する場合、前記レーザ光の放射方向に物体が存在しないと判定し、Th1>T2またはT2>Th2が成立する場合、前記レーザ光の放射方向に物体が存在すると判定することを特徴とする物体検出センサ。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の物体検出センサにおいて、
前記物体判定手段は、前記レーザ光の放射方向に物体が静止している場合を初期状態とし、前記代表値T1に基づくしきい値をTh1,Th2(Th1<Th2)としたとき、Th1≦T2≦Th2が成立する場合、前記レーザ光の放射方向に存在する物体が動いていないと判定し、Th1>T2またはT2>Th2が成立する場合、前記レーザ光の放射方向に存在する物体が動いたと判定することを特徴とする物体検出センサ。
【請求項6】
請求項4または5記載の物体検出センサにおいて、
さらに、前記しきい値Th1,Th2を、Th1=aT1、Th2=bT1(0.5≦a<1、1<b≦1.5)と設定するしきい値設定手段を備えることを特徴とする物体検出センサ。
【請求項7】
請求項4または5記載の物体検出センサにおいて、
さらに、前記周期補正手段によって補正された干渉波形の周期のうち最小値をTmin、最大値をTmaxとしたとき、前記しきい値Th1,Th2を、Th1=T1−Tmin、Th2=T1+Tmaxと設定するしきい値設定手段を備えることを特徴とする物体検出センサ。
【請求項8】
請求項4または5記載の物体検出センサにおいて、
さらに、前記周期補正手段によって補正された干渉波形の周期の分散値をσ2としたとき、前記しきい値Th1,Th2を、Th1=T1−Aσ2、Th2=T1+Aσ2(Aは正の実数)と設定するしきい値設定手段を備えることを特徴とする物体検出センサ。
【請求項9】
請求項4記載の物体検出センサにおいて、
前記物体判定手段は、前記物体が侵入する予定の空間を挟んで前記半導体レーザと向かい合う反射壁面を基準面として、この基準面と前記半導体レーザとの間に物体が存在するかどうかを検出するとき、T2≦Th2が成立する場合、前記レーザ光の放射方向に物体が存在しないと判定し、T2>Th2が成立する場合、前記レーザ光の放射方向に物体が存在すると判定することを特徴とする物体検出センサ。
【請求項10】
請求項4記載の物体検出センサにおいて、
前記物体判定手段は、前記半導体レーザを保護する透明カバーの内面と外面のうち無反射防止処理が施されていない何れか1つの面を基準面として、この基準面の前方に物体が存在するかどうかを検出するとき、Th1≦T2が成立する場合、前記基準面の前方に物体が存在しないと判定し、Th1>T2が成立する場合、前記基準面の前方に物体が存在すると判定することを特徴とする物体検出センサ。
【請求項11】
発振波長が連続的に単調増加する第1の発振期間と発振波長が連続的に単調減少する第2の発振期間のうち少なくとも一方が繰り返し存在するように半導体レーザを動作させる発振手順と、
前記半導体レーザから放射されたレーザ光とその戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する検出手順と、
この検出手順で得られた出力信号に含まれる前記干渉波形の周期を干渉波形が入力される度に計測する信号抽出手順と、
この信号抽出手順の計測結果を記憶手段に記憶させる記憶手順と、
前記記憶手段に記憶された1つの干渉波形の周期を注目周期としたとき、この注目周期の直前に計測され前記記憶手段に記憶された複数の干渉波形の周期の分布の代表値と前記注目周期の直後に計測され前記記憶手段に記憶された複数の干渉波形の周期の分布の代表値とを算出する代表値算出手順と、
前記注目周期を補正対象の干渉波形の周期とし、この補正対象の干渉波形の周期と2つの前記代表値とを比較することにより前記補正対象の干渉波形の周期を補正し、この補正の結果に従って前記記憶手段に記憶された周期を更新する周期補正手順と、
前記代表値算出手順で算出した2つの代表値のうち小さい方をT1、大きい方をT2としたとき、代表値T1に基づくしきい値と代表値T2とを比較することにより、前記レーザ光の放射方向に出現した物体の存在を検出するか、あるいは初期状態から前記レーザ光の放射方向に存在する物体の運動の変化を検出する物体判定手順とを備え、
前記干渉波形の周期の分布の代表値は、移動平均値、平均値、最大値、最小値、最頻値、中央値、あるいは前記干渉波形の周期の度数分布から得られる、階級値と度数との積が最大となる階級値のいずれかであることを特徴とする物体検出方法。
【請求項12】
発振波長が連続的に単調増加する第1の発振期間と発振波長が連続的に単調減少する第2の発振期間のうち少なくとも一方が繰り返し存在するように半導体レーザを動作させる発振手順と、
前記半導体レーザから放射されたレーザ光とその戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する検出手順と、
この検出手順で得られた出力信号に含まれる前記干渉波形の周期を干渉波形が入力される度に計測する信号抽出手順と、
この信号抽出手順の計測結果を記憶手段に記憶させる記憶手順と、
前記記憶手段に記憶された1つの干渉波形の周期を注目周期としたとき、この注目周期の直後に計測され前記記憶手段に記憶された複数の干渉波形の周期の分布の代表値を算出する代表値算出手順と、
前記注目周期を補正対象の干渉波形の周期とし、この補正対象の干渉波形の周期と、前記半導体レーザとの距離の初期値から予め規定された干渉波形の周期の分布の代表値および前記代表値算出手順で算出した代表値とを比較することにより前記補正対象の干渉波形の周期を補正し、この補正の結果に従って前記記憶手段に記憶された周期を更新する周期補正手順と、
前記予め規定された代表値および前記代表値算出手順で算出した代表値のうち小さい方をT1、大きい方をT2としたとき、代表値T1に基づくしきい値と代表値T2とを比較することにより、前記レーザ光の放射方向に出現した物体の存在を検出するか、あるいは初期状態から前記レーザ光の放射方向に存在する物体の運動の変化を検出する物体判定手順とを備え、
前記干渉波形の周期の分布の代表値は、移動平均値、平均値、最大値、最小値、最頻値、中央値、あるいは前記干渉波形の周期の度数分布から得られる、階級値と度数との積が最大となる階級値のいずれかであることを特徴とする物体検出方法。
【請求項13】
請求項11または12記載の物体検出方法において、
前記周期補正手順は、Tx=T1+α・(T2−T1)としたとき(0≦α≦1)、前記補正対象の干渉波形の周期が前記Txの所定数k倍未満の場合は(kは1未満の正の値)、この補正対象の干渉波形の周期と次に計測された干渉波形の周期とを合わせた周期を補正後の干渉波形の周期とし、周期を合わせた波形を1つの波形とし、前記補正対象の干渉波形の周期が前記Txの(m−0.5)倍以上で且つ前記Txの(m+0.5)倍未満の場合は(mは2以上の自然数)、前記補正対象の干渉波形の周期をm等分した周期をそれぞれ補正後の周期とし、補正後の周期の波形がm個あるものとすることを特徴とする物体検出方法。
【請求項14】
請求項11乃至13のいずれか1項に記載の物体検出方法において、
前記物体判定手順は、前記代表値T1に基づくしきい値をTh1,Th2(Th1<Th2)としたとき、Th1≦T2≦Th2が成立する場合、前記レーザ光の放射方向に物体が存在しないと判定し、Th1>T2またはT2>Th2が成立する場合、前記レーザ光の放射方向に物体が存在すると判定することを特徴とする物体検出方法。
【請求項15】
請求項11乃至13のいずれか1項に記載の物体検出方法において、
前記物体判定手順は、前記レーザ光の放射方向に物体が静止している場合を初期状態とし、前記代表値T1に基づくしきい値をTh1,Th2(Th1<Th2)としたとき、Th1≦T2≦Th2が成立する場合、前記レーザ光の放射方向に存在する物体が動いていないと判定し、Th1>T2またはT2>Th2が成立する場合、前記レーザ光の放射方向に存在する物体が動いたと判定することを特徴とする物体検出方法。
【請求項16】
請求項14または15記載の物体検出方法において、
さらに、前記物体判定手順の前に、前記しきい値Th1,Th2を、Th1=aT1、Th2=bT1(0.5≦a<1、1<b≦1.5)と設定するしきい値設定手順を備えることを特徴とする物体検出方法。
【請求項17】
請求項14または15記載の物体検出方法において、
さらに、前記物体判定手順の前に、前記周期補正手順で補正した干渉波形の周期のうち最小値をTmin、最大値をTmaxとしたとき、前記しきい値Th1,Th2を、Th1=T1−Tmin、Th2=T1+Tmaxと設定するしきい値設定手順を備えることを特徴とする物体検出方法。
【請求項18】
請求項14または15記載の物体検出方法において、
さらに、前記物体判定手順の前に、前記周期補正手順で補正した干渉波形の周期の分散値をσ2としたとき、前記しきい値Th1,Th2を、Th1=T1−Aσ2、Th2=T1+Aσ2(Aは正の実数)と設定するしきい値設定手順を備えることを特徴とする物体検出方法。
【請求項19】
請求項14記載の物体検出方法において、
前記物体判定手順は、前記物体が侵入する予定の空間を挟んで前記半導体レーザと向かい合う反射壁面を基準面として、この基準面と前記半導体レーザとの間に物体が存在するかどうかを検出するとき、T2≦Th2が成立する場合、前記レーザ光の放射方向に物体が存在しないと判定し、T2>Th2が成立する場合、前記レーザ光の放射方向に物体が存在すると判定することを特徴とする物体検出方法。
【請求項20】
請求項14記載の物体検出方法において、
前記物体判定手順は、前記半導体レーザを保護する透明カバーの内面と外面のうち無反射防止処理が施されていない何れか1つの面を基準面として、この基準面の前方に物体が存在するかどうかを検出するとき、Th1≦T2が成立する場合、前記基準面の前方に物体が存在しないと判定し、Th1>T2が成立する場合、前記基準面の前方に物体が存在すると判定することを特徴とする物体検出方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−117860(P2011−117860A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−276166(P2009−276166)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】
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