説明

物品のセット装置

【目的】 例えばマテハンロボットなどの自動搬送装置を使用してパレット内の重合状態の物品を搬送し治具上にセットするに際し、物品の把持状態がずれていても治具上には適正にセットできるようにする。
【構成】 マテハンロボット1のマテハン部19に設けた視覚センサ5Aによりパレット2内の物品21(22)の位置を検出して把持し、その後、定置された第2の視覚センサ61により当該把持状態を正確に測定して位置補正した上で最終セットすることによりセット位置の誤差発生をなくした。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本願発明は、産業用のロボットを利用した物品のセット装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】例えば自動車工場の車体組立ラインなどでは、所定移送ライン上のパレット内に収納された例えばカウルサイド・レインフォースメントパネルやサスハウジング・レインフォースメントパネルなどの部品(パネル状物品)を取り出して、車体組付ライン上の所定構造の治具の所定設定位置に正確にセットする必要がある。
【0003】ところが、上記のようなパネル状の部品は、例えば図2に示すように、多数枚のものをパレット上に単に重ね合わせて積層した積層体構造となっているのが通常である。そのため、どうしても同積層状態で図示のようにX・Y・Z方向の位置ずれが生じ易く、これを例えばマテハンロボットなどの産業用ロボットを使用して連続的に取り出し、上記治具上に順次自動セットして行くようにしようとすると、先ず上記パレット内の各物品の位置を正確に検出して正確にマテハン部に把持させることが必須の要件となる。
【0004】そこで、例えば特開昭58−114892号公報に示されているように、ロボツトアームの先端にCCDカメラ等よりなる撮像機能をもった視覚センサを設けて同部品の位置を正確に検出するようにすることが考えられる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記パネル部材の積層体のような部品は、仮にCCDの如き撮像機能を有した高精度な視覚センサを使用したとしても、それらが同一材質のものである限り1枚、1枚のものを正確に位置判定することはできず、全体を一塊の物としてしか判定することができない。従って、高精度な部品毎の位置の検出は不可能で、結局治具に対する正確な部品の位置セットも難しく、その完全な自動化は困難とされていた。
【0006】
【課題を解決するための手段】本願発明は、上記の問題を解決することを目的としてなされたものであって、物品を着脱可能に把持する把持手段を備えたロボットを有し、該ロボットによりパレット内に収納されている物品を取り出して所定の治具上に位置セットする物品のセット装置であって、上記ロボットの把持手段に付設されパレット内の物品の位置を検出する第1の視覚センサと、該第1の視覚センサの検出位置を基にして上記把持手段により把持された物品の把持位置を検出する第2の視覚センサと、該第2の視覚センサの検出値を基に位置補正した上で上記治具上に物品を位置セットさせる位置補正手段とを有することを特徴とするものである。
【0007】
【作用】本願発明の物品のセット装置は、上述のように、例えばマテハンロボットのような物品を着脱可能に把持する把持手段を備えたロボットを有し、該ロボットによりパレット内に収納されている物品を取り出して所定の治具上に適正に位置セットする物品のセット装置において、上記ロボットのマテハン部等把持手段部に付設されパレット内の物品の位置を検出する例えばCCDカメラよりなる第1の視覚センサと、該第1の視覚センサの物品検出位置を基にして上記把持手段により把持された物品の把持位置を検出する例えばCCDカメラ等の第2の視覚センサと、該第2の視覚センサの検出値を基に位置補正した上で上記ロボットにより上記治具上に物品を位置セットさせる位置補正手段とを設けて構成している。
【0008】すなわち、該構成ではロボットの把持手段を使用してパレットから取り出す最初の物品位置の検出が或る程度ラフであっても、一旦把持手段に把持させた後に、該把持状態を第2の視覚センサで高精度に検出して正確に本来の把持位置に対する位置ずれ量を検出し、それを補正した上で最終的な物品セットを行うようになっている。
【0009】
【発明の効果】したがって、本願発明の物品のセット装置によると、例えばパネル部材を積層したような物品の場合であっても、それ自体の高精度な検出を要することなく、正確な物品の自動セットを可能にすることができる。
【0010】
【実施例】図1〜図6は、本願発明の実施例に係る物品のセット装置の構成および動作を示している。
【0011】先ず図1は、同装置全体の基本的なシステム構成を示しており、符号1は物品搬送用の多関接型のマテハンロボット、符号2は例えば自動車のカウルサイドレインフォースメントよりなる第1部品21と同じく自動車のサスペンションハウジングよりなる第2部品22の例えば2種類のパネル状部品が各々複数枚上下に重合積層した状態で収納されているパレット、符号3は上記マテハンロボット1を使用して上記パレット2上から取り出された上記第1部品21又は第2部品22が位置セットされる所定移送ラインを形成する治具である。
【0012】上記マテハンロボット1は、例えば自動車の車体組立工場のフロア面F上に固定された基台11と、該基台11上に水平面方向に回転可能に軸支された回転台12と、該回転台12に対して軸13を介して垂直面方向に回転可能に支持された第1アーム14と、該第1アーム14の上部に軸15を介して垂直面方向に回転自在に取付けられたロボットコントロールユニット部を有する第2アーム固定用基部16と、該第2アーム固定用基部16に基端側を固定された第2アーム17と、該第2アーム17の先端に関接部18を介して傾動および回転可能に装着された吸着把持機能を有するマテハン部19とから構成されている。このマテハン部19は、上記関接部18の下部に支軸19aを介して水平方向に延びるバー部材19bを逆T字形にして設けている。そして、該バー部材19bには、その長手方向両端側にかけて所定の間隔を置いて2本の吸着把持装置4a,4bと例えばCCDカメラ等の撮像装置よりなる第1の視覚センサ5A、光学式の距離センサ5Bとが各々設けられている。
【0013】上記吸着把持装置4a,4bは、下端部に吸盤部を有し、該吸盤部を上記パレット2内の第1、第2部品21,22の上面21a,21bに当接し負圧吸引することにより当該第1、第2部品21,22を図4に示すように吸引吸着して把持するようになっている。
【0014】また、上記マテハンロボット1の第1アーム14の前後両側には、上記第2アーム17を上下方向に駆動するための第1、第2のアクチュエータ7,7、8,8が各々両サイドに位置して設けられている。さらに、また上記パレット2は、パレット入れ替え装置25上に光源台24を介して載置されている。光源台24は、例えば図3に示すように、内部に複数個の光源L1〜L5を有し、該光源L1〜L5からの光を上記第1又は第2部品21,22の下方に照射して当該第1、第2部品21,22の外形を上記第1の視覚センサ5Aが上方側から明暗状態で明確に認識できるようにする。
【0015】一方、図1において、上記パレット2から上記治具3までのマテハンロボット1のマテハン部19による第1、第2部品21,22の移送経路途中には、例えばCCDカメラ等の撮像装置よりなる第2の視覚センサ61がセンサ面を上方に向けた状態でフロア面F上に固定して設けられている。又、該第2の視覚センサ61の側には上方側に照射方向を設定した第1の照明手段62が設置されている。
【0016】さらに、上記第2の視覚センサ61に対置される格好で第2の照明装置33が設けられている。該第2の照明装置33は、図4に示すように、上記マテハンロボット1のマテハン部19に把持された第1、第2部品21,22を、その上方側から照射するように支柱32を介して所定の高所位置に設けられている。
【0017】そして、同光照射状態で、下方側から上記第2の視覚センサ61が上記部品21,22の把持位置を本来の把持位置と比較する形で高精度に計測する。そして、該計測値に基いて位置補正信号を形成し上記マテハンロボット1に供給して位置補正する。
【0018】上記第1の視覚センサ5A、第2の視覚センサ61、距離センサ5B、マテハンロボット1の制御ユニット部の各々は、図1に示すようにマイクロコンピュータよりなる中央コントロールユニット50にインターフェース回路を介して接続されており、同中央コントロールユニット50は、それらからの入力又は、それらへの出力により後述するような内容のパレット部品の治具上への搬送セット制御を実行する。
【0019】次に、上記本発明実施例の物品のセット装置の上記中央コントロールユニット50による同物品の位置補正動作を伴う搬送セット動作について図6のフローチャートを参照して詳細に説明する。
【0020】すなわち、先ずステップS1で上記所定の入れ替え位置に入れ替えられたパレット2上の部品(21,22)の列(図示例では左右2列)、段(枚数)のカウント値(供給されるパレット毎に予じめ入力されている)を確認する。
【0021】次に、ステップS2に進み、図2のようにパレット2上に移動された上記第1の視覚センサ5Aと距離センサ5Bの出力を基に当該パレット2の終わり(部品の取出しが完了してパレット2内に部品21,22がなくなったこと)が検出された否かを判定する。該判定は、例えば距離センサ5Bの出力がゼロで、第1の視覚センサ5Aの検出画像が明暗なしの時に部品取出し終了と判定することによって行う。その結果、YES(取出し終了)と判定されると、ステップS3に進んでパレット入れ替え指令を出して新しいパレット2と古いパレット2との入れ替えを行う。
【0022】一方、NOと判定されたパレットの終わりでない時(部品取り出し開始時又はその途中の時)は、さらにステップS4に進んで、上記第1の視覚センサ5Aによって上記パレット2内の部品(第1又は第2部品21,22の何れか一方の列側から)の計測を行う。該計測は、上記のように光源台24上に置かれている簀の子状のパレット2上の部品21又は22全体の外形により形成されるシャドウ形状部を部品形状と画像認識することによってなされる。その結果、該計測では、例えば上記部品21,22が図3下部に示したように傾斜しているとすると、上記投影画像では図3の上部に示すように、その重心点は図示OW2点になる。
【0023】そして、先ず該計測の結果に基き、続くステップS5で当該検出位置における上記パレット2内の部品(21,22)の有無を判定する。
【0024】該判定の結果、現在の列位置の検出位置には部品が無いと判定されると、さらにステップS6に進んで上記マテハンロボット1のマテハン部19を隣合う次の列に移動(21から22、又は22から21へ)させた後、上記したステップS〜Sの処理を行う。
【0025】他方、部品有りと判定されると、さらにステップS7に進んで同部品(21,22)の位置ずれを検知する。該位置ずれは、図3に示すように予じめ行った単体計測時の重心位置OW1と上記投影形状の重心位置OW2との差ΔX,ΔYとして検出される。
【0026】そして、さらにステップS8で該検知された部品(21,22)の位置ずれ量が上記吸着把持装置によって把持可能な所定の許容値以内にあるか否かを判定する。この結果、把持することが可能な上記許容値以内にあるYES判定の時は、さらにステップS9に進んで、実際の部品(21,22)の重合高さと傾き度合を計測する。他方、上記部品(21,22)の位置ずれ量が上記許容値以内にない時は把持不能として上述したステップS6の動作に移ってマテハン部19を次の列の部品(21,22)側に移動させる(取りミスをスキップする)。
【0027】上記ステップS9における部品高さと傾き度合の計測は、例えば図2に示すように、上記マテハンロボット1のマテハン部19をパレット2内の対象列の部品上に位置せしめ、該状態において、上記距離センサ5Bで部品(21,22)上面の高さを検出するとともに第1の視覚センサ5Aによって同部品の積層部の傾き変化を画像処理により検出する。
【0028】その上で、さらにステップS10に進み、上記部品(21,22)に対応してマテハン位置を移動補正した後、ステップS11でマテハン部19を部品(21,22)位置まで下降させ、吸着盤部を部品(21,22)上面の所定位置(図5のP1,P2参照)に当接させ負圧吸引することにより同部品を吸着把持する。
【0029】次にステップS12で該部品の把持状態が良好(OK)であるか否かを判定した後、良好である場合には順次ステップS17〜S21の精密計測、姿勢補正、治具投入の各動作に進む一方、他方、部品の把持状態が良好でないNO判定の時はステップS13〜S16のリトライ動作(リトライカウンタ確認、回数確認、部品計測、許容値内判定)に進む。
【0030】上記ステップS7の精密計測は、例えば図4R>4に示すように、上記マテハン部19の吸着把持装置4a,4bに部品(21又は22)が良好(OKの範囲で)に保持され搬送される途中において、上記第2の視覚センサ61上にセット時の姿勢で停止させ、上記第2の照明装置33により当該セット姿勢と同様の状態で上記ロボットに把持させた状態の同部品(21,22)の上方に光を照射し、下方から第2の視覚センサ61で当該部品(21,22)の裏面を図5に示すように撮像する。該図5の撮像画像中、符号P1,P2は上記吸着把持装置4a,4bによる吸着把持部、H1,H2は部品固有のホール部である。
【0031】該画像から先ず上記2つのホール部H1,H2の中心同士を結ぶ直線の向きと2つのホール部H1,H2間の中点Mとを検出する。そして、該中点Mを上記図3の較正時の基準位置OW2と比較し、その差から位置補正量を算出し、ステップS18で姿勢補正した上で、ステップS19で治具3上にセットする。そして、段数のカウント値を1枚分カウントダウンして、ステップS21で次の部品の同様の搬送セットを行う。
【0032】すなわち、上記本願発明実施例の物品のセット装置によると、その途中で該把持状態における位置ずれ量が精密に計測され、それを補正した上で最終搬送されるので、ロボットの把持手段による物品の把持状態に多少の位置ズレがあっても確実に治具上にセットすることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本願発明の実施例に係る物品のセット装置全体のシステムおよび各部のレイアウト構成を示す概略斜視図である。
【図2】図2は、同装置の部品(ワーク)把持前の段階における部品(ワーク)検出状態の要部の斜視図である。
【図3】図3は、同装置の図2の状態における部品(ワーク)の検出原理を部品のパレット収納状態との関係で説明する説明図である。
【図4】図4は、同装置の部品(ワーク)把持状態における位置検出状態を示す概略側面図である。
【図5】図5は、上記図4の状態における部品位置検出原理を説明する説明図である。
【図6】図6は、同装置の部品搬送制御動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1はマテハンロボット、2はパレット、3は治具、5Aは第1の視覚センサ、14は第1アーム、17は第2アーム、19はマテハン部、61は第2の視覚センサである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 物品を着脱可能に把持する把持手段を備えたロボットを有し、該ロボットによりパレット内に収納されている物品を取り出して所定の治具上に位置セットする物品のセット装置であって、上記ロボットの把持手段に付設されパレット内の物品の位置を検出する第1の視覚センサと、該第1の視覚センサの検出位置を基にして上記把持手段により把持された物品の把持位置を検出する第2の視覚センサと、該第2の視覚センサの検出値を基に位置補正した上で上記治具上に物品を位置セットさせる位置補正手段とを有することを特徴とする物品のセット装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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【図6】
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