説明

物品の衛生処理方法及び衛生処理用具

【課題】ダニ・ノミ・シラミなどの害虫防除効果、特に殺卵効果が高く、処理効果の持続性に優れた物品の衛生処理方法を提供する。
【解決手段】包装体に物品を入れ、前記包装体内部の空気の酸素濃度を脱酸素剤等の酸素濃度低下手段により6時間以内に10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、更に好ましくは1.5%以下とし、その後処理時間内に0.5%好ましくは0.1%以下とすることを特徴とする物品の衛生処理方法、特に殺ダニ・殺卵処理方法。
【効果】1〜2日程度の短期間でダニの成虫・幼虫だけでなく卵も死滅させることができ、駆除効果の持続性に優れた処理方法とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダニ・ノミ・シラミなどの害虫防除効果、特に殺卵効果が高く、処理効果の持続性に優れた繊維製品等の物品の衛生処理方法、および衛生処理用具に関する。
【背景技術】
【0002】
毛布、布団、枕、カーペット、クッション、衣類、ぬいぐるみ、小物、その他繊維製品や紙製品、畳等に棲息するダニ・ノミ・シラミ(主にコロモジラミ)等の害虫は、人を刺したりアレルギー症状の要因となるなど、人体へ種々害を成すことが知られている。特に最近の住宅事情や生活習慣によって、ダニは深刻な健康阻害要因となっている。即ち、近年、家屋が高気密、高断熱構造となったことから、一般家屋内に屋内塵性ダニ類が繁殖し、この中でも、チリダニ科のヒョウヒダニ属のヤケヒョウヒダニやコナヒョウヒダニがアレルギー性気管支ぜんそくや鼻炎を起こすものとして重要視されている。屋内塵中での常在性はヒョウヒダニほど高くないが畳などに異常発生することがあるコナダニ科には、ケナガコナダニが属し、アレルゲン性は弱いとされてはいるが、大発生した場合は不快であり、また、貯蔵食品にも多く見出される。
これらダニ等の害虫防除には殺虫剤を用いる方法が一般的であるが、繊維や紙などの被処理物の内部・深部まで有効量の薬剤が到達しにくく、十分な効果が得られない場合がある。
【0003】
殺虫剤以外の害虫防除手段として、被処理物を加熱したり減圧したりすることが知られている(特許文献1)が、これは加熱や減圧のための特別な装置が必要で、一般家庭での処理には、より簡易な手段が望まれる。
特開平2−234626(特許文献2)には、被処理材と酸素吸収剤を酸素ガス透過率8000cc/m/24hr/atm以下の収納体に入れ酸素濃度3%以下の雰囲気にて被処理材のダニを死滅させる殺ダニ方法に関する発明が提案されており、酸素濃度1.2%でケナガコナダニやヤケヒョウダニの駆除に効果があることが開示されている。特開平5−146240(特許文献3)には、酸素吸収剤および吸湿剤と寝具とを酸素ガス透過率4000cm/m/24hr/atm以下の袋の内部に収納し、次いで内部空気を吸引して圧縮し、内部酸素濃度を0.1%以上3%以下の状態で収納する寝具の衛生処理方法が記載されている。前記の各方法によれば、各々1週間程度の長い処理時間においてダニや卵への駆除効果が得られることが示されているが、短期間の処理では効果が得られず、一般家庭の処理としては手軽さの点で課題がある。
特開平4−79829(特許文献4)には鉄粉、塩類、活性炭、水を含有する発熱剤と布製品をガスバリアー性の袋に封入してなることを特徴とするダニ防除方法が提案されている。この方法によれば、例えば最高温度70℃、酸素濃度3.2%での処理となり、1日程度の短時間で殺ダニ効果が得られることが記載されている。しかし、局所的な発熱であることから均一な処理温度とするのが困難であり、安定な処理効果が期待しにくい。またこの方法では殺卵効果が十分でなく、処理効果の持続性の点でも課題がある。
【0004】
【特許文献1】特開平2−69128
【特許文献2】特開平2−234626
【特許文献3】特開平5−146240
【特許文献4】特開平4−79829
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、1〜2日程度の短時間の処理でもダニ等の害虫や卵、特にダニの卵を死滅させることが可能な、処理効果の持続性に優れた物品の衛生処理方法、特に殺ダニ・殺卵方法、それに用いる用具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記要望に応えるため鋭意検討を行った結果、処理空間の酸素濃度を急激に低下させることによって、短期に殺ダニ・殺卵効果が得られることを知見し、本発明を完成した。すなわち本発明は、
<1>包装体に物品を入れ、前記包装体内部の空気の酸素濃度を酸素濃度低下手段により6時間以内に10%以下とし、その後処理時間内に0.5%以下とすることを特徴とする、物品の衛生処理方法。
<2>酸素濃度低下手段が脱酸素剤である、<1>に記載の物品の衛生処理方法。
<3>処理時間が48時間以内である、<1>〜<2>に記載の物品の衛生処理方法。
<4>ダニの殺卵処理方法である、<1>〜<3>に記載の物品の衛生処理方法。
<5>密封手段を有する包装体と、包装体内部の酸素濃度を6時間以内に10%以下としその後0.5%以下とする脱酸素剤とからなる、物品の衛生処理用具。
を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の前記構成とすることによって、1〜2日程度の短期間でダニの成虫・幼虫だけでなく卵も死滅させることができ、駆除効果の持続性に優れた処理方法とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の物品の衛生処理方法は、
(1)包装体に被処理物品を収納し、
(2)前記包装体内部の酸素濃度を酸素濃度低下手段により6時間以内に10%以下とし、
(3)さらに前記包装体内部の酸素濃度を0.5%以下とする物品の衛生処理方法である。
さらに好ましくは、被処理物品を収納した後、直射日光下で処理を行なう。処理の全過程を直射日光下で行なってもよいが、処理中一部の時間としてもよい。その場合、直射日光下での処理時間は60分以上であることが好ましい。
【0009】
本発明で用いる包装体は、前記(2)(3)の酸素濃度低下を達成させ得る素材であることを要する。そのような素材として、非〜低酸素透過性の素材を使用することが好ましく、特に酸素透過度が0〜2000cc/m・24hr、atm(20℃、65%RH)、さらに0〜100cc/m・24hr、atm(20℃、65%RH)のものが好ましい。具体的には、樹脂製、アルミニウムなどの金属製、ガラス製の容器があげられる。好ましい包装体は、使用性の点で、可撓性を有するシート状の樹脂、アルミニウム製シート、あるいはそれらの積層体を使用したシート素材があげられる。
【0010】
前記樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、等のエステル系樹脂、ポリエステル系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン等のウレタン系樹脂、ナイロン、ポリエーテルブロックアミド共重合体等のアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリフルオロカーボン系樹脂等があげられ、単層あるいは2層以上の積層樹脂が使用される。好ましい積層樹脂として、例えばナイロン/低密度ポリエチレン、ポリエステル/低密度ポリエチレン、ナイロン/エバール/ナイロン/低密度ポリエチレン、エチレンビニルアルコール共重合体コート延伸プロピレン/ポリエチレン、ポリビニルアルコールコート延伸ポリプロピレン/ポリエチレン、ポリ塩化ビニリデンコート延伸ナイロン/ポリエチレン、ポリ塩化ビニリデンコートポリエステル/ポリエチレン、ポリ塩化ビニリデンコート延伸ポリプロピレン/ポリエチレン、バリアナイロン/ポリエチレン、延伸ポリプロピレン/延伸ナイロン/ポリエチレン、シリカ蒸着ポリエステル/ポリエチレン、アルミニウム蒸着ポリエステル、ポリエステル/アルミニウム/ポリエチレン などがあげられる。
【0011】
本発明で使用する包装体は密封可能であることが好ましい。例えば、物品を出し入れする開口部に、ファスナーなどの密封手段を有する袋状体とする。あるいは、開口部を挟んで密封する等の用具を用いても良い。
本発明の衛生処理方法に適した包装体の大きさは、好ましくは5〜200L、特に10〜100Lの範囲である。
【0012】
本発明の物品の衛生処理方法は、包装体に物品と脱酸素手段を入れて密封し、包装体内の酸素濃度を急激に低下させることを特徴とする。酸素濃度低下は、低下開始後6時間内に酸素濃度20%程度(大気濃度)から10%以下になる速度で低下させる(要件1)ことを必須とし、それよりも緩やかな低下速度では本発明の効果は得られない。好ましくは6時間以内に5%以下、さらに好ましくは3%以下、より更に好ましくは1.5%以下とする。本発明の処理では、さらにその後、処理終了までに0.5%以下まで、好ましくは0.3%以下まで、さらに好ましくは0.1%以下、より更に好ましくは0.01%以下まで酸素濃度を低下させる(要件2)。処理時間(密封から開封まで)としては、本発明の目的から48時間以内とすることが好ましく、より好ましくは24時間以内である。前記要件1、2を満たすことによって、効果が高い短期殺ダニ、殺卵処理を行うことができる。
【0013】
前記(2)(3)で使用する脱酸素手段としては、化学反応により空気中の酸素を消費する脱酸素剤が好ましくあげられ、これらの脱酸素剤を処理する物品とともに包装体に入れて密封する。前記脱酸素剤は、本発明で規定する前記酸素濃度低下を実現できるようにその種類及び量を調整すればよいが、少なくとも酸素吸収量25(ml/g)以上、特に35(ml/g)以上の脱酸素剤を使用することが好ましい。また、脱酸素剤の量m(g)は、本発明の処理用包装体の容積V(mL)、酸素吸収量n(ml/g)として、
m≧V×0.2/n 、
好ましくは m≧V×0.3/n
特に好ましくは m≧V×0.4/n
の量である。
【0014】
本発明で使用する脱酸素剤としては、高い酸素低下速度を有する、鉄を含有する鉄系脱酸素剤が好ましく使用される。特に優れた酸素低下速度が得られる脱酸素剤は、噴霧鉄粉または還元鉄粉を主成分とし、その比表面積は好ましくは0.5m/g以上、(特に1〜2m/g)、見掛密度は好ましくは3.0g/cm以下、(特に0.3〜1.0 g/cm)、粒径は好ましくは150μm以下、(特に10〜150μm)のものである。さらにこれらの鉄粉は、ハロゲン化金属粉と混合して製造されることが好ましい。ハロゲン化金属としては塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化鉄などがあげられる。
【0015】
前記の脱酸素剤は、脱酸素剤粒子をシャーレなどに広げた暴露状態で、あるいは通気性素材、好ましくは不織布、織布、紙で包装されたものを、本発明に使用することができる。通気性素材は、多孔性樹脂との積層素材でもよい。脱酸素剤粒子を広げる面積は、好ましくは1〜50cm/g、より好ましくは2〜30cm/gであり、脱酸素剤を包装する場合は少なくとも前記面積の通気性素材面を有する包装体に収納することが好ましい。前記包装体は、脱酸素剤粒子がなるべく均一に広がるよう、複数に分割されていることが好ましい。
【0016】
本発明の衛生処理方法では、脱酸素剤とともに揮発性抗菌物質を使用することがより高い衛生処理効果が得られるため好ましい。揮発性抗菌物質としては、例えばα―ブロムシンナムアルデヒド、フェネチールアルコール、ヒノキチオール、パラクロロメタキシレノール、チモール、イソチオシアン酸メチル、イソオイゲノールなどが好ましく使用される。揮発性抗菌物質は、適当な担持体に担持させて脱酸素剤と別に入れることができる。他の方法として、脱酸素剤粒子と混合し、あるいは包装体の不織布や織布、紙などに含浸・塗布して使用すると、脱酸素剤の反応熱によって抗菌物質が揮散しやすいため、好ましい。
【0017】
また、本発明の衛生処理方法において、処理後の開封時に快適な匂いが感じられるよう、脱酸素剤とともに香料を使用することが好ましい。香料としては、公知の合成香料・天然香料の何れも使用することができる。香料は、脱酸素剤とは別に、あるいは脱酸素剤組成物への配合、包装体への含浸・塗布などの方法により付香することができる。
【0018】
また、本発明の衛生処理方法において、シリカゲル、酸化カルシウムなどの乾燥剤を付与することも本発明の衛生処理の効果に対して好ましい。
【0019】
本発明の衛生処理方法に使用する衛生処理用具は、前記で詳述した処理用包装体及び脱酸素剤を必須とし、任意に揮発性抗菌物質、香料、乾燥剤を有する。
前記脱酸素剤は、使用前は20cc/m・24hr、atm(20℃、65%RH)以下の低〜非酸素透過性、かつ低〜非透湿性の保存用包装体に密封されていることが好ましい。
【0020】
本発明の好ましい態様を、以下に列記する。
(1)包装体に物品を入れ、前記包装体内部の空気の酸素濃度を酸素濃度低下手段により6時間以内に10%以下とし、その後処理時間内に0.5%以下とすることを特徴とする、物品の衛生処理方法。
(2)酸素濃度低下手段が脱酸素剤である、(1)に記載の物品の衛生処理方法。
(3)脱酸素剤の量m(g)が、本発明の処理用包装体の容積V(mL)、酸素吸収量n(ml/g)として、m≧V×0.2/nである、(1)または(2)に記載の衛生処理方法。
(4)脱酸素剤が、通気性素材の包装体、好ましくは不織布、織布、紙製の包装体に収納されている、(1)〜(3)に記載の物品の衛生処理方法。
(5)処理時間が48時間以内、好ましくは24時間以内である、(1)〜(4)に記載の物品の衛生処理方法。
(6)好ましくは60分以上、直射日光下で処理を行なう、(1)〜(5)に記載の物品の衛生処理方法。
(7)包装体に、さらに揮発性抗菌剤、乾燥剤、香料から選択される1種以上を入れて処理する、(1)〜(6)に記載の物品の衛生処理方法。
【0021】
(8)密封手段を有する包装体と、包装体内部の酸素濃度を6時間以内に5%以下としその後0.1%以下とする脱酸素剤とを有する、物品の衛生処理用具。
(9)脱酸素剤の量m(g)が、本発明の処理用包装体の容積V(mL)、酸素吸収量n(ml/g)として、m≧V×0.2/nである、(8)に記載の衛生処理用具。
(10)脱酸素剤が、通気性素材の包装体、好ましくは不織布、織布、紙製の包装体に収納されている、(8)〜(9)に記載の衛生処理用具。
(11)さらに、揮発性抗菌剤、乾燥剤、香料から選択される1種以上を有する(8)〜(10)に記載の衛生処理用具。
【0022】
(12)包装体に物品を収納し、前記包装体内部の空気の酸素濃度を酸素濃度低下手段により6時間以内に10%以下とし、その後処理時間内に0.5%以下とすることを特徴とする、殺ダニ処理及び/またはダニの殺卵処理方法
(13)酸素濃度低下手段が脱酸素剤である、(12)に記載の殺ダニ処理及び/またはダニの殺卵処理方法。
(14)脱酸素剤の量m(g)が、本発明の処理用包装体の容積V(mL)、酸素吸収量n(ml/g)として、m≧V×0.2/nである、(12)または(13)に記載の殺ダニ処理及び/またはダニの殺卵処理方法。
(15)脱酸素剤が、通気性素材の包装体、好ましくは不織布、織布、紙製の包装体に収納されている、(12)〜(14)に記載の殺ダニ処理及び/またはダニの殺卵処理方法。
(16)処理時間が48時間以内、好ましくは24時間以内である、(12)〜(15)に記載の殺ダニ処理及び/またはダニの殺卵方法。
(17)好ましくは60分以上、直射日光下で処理を行なう、(12)〜(16)に記載の殺ダニ処理及び/またはダニの殺卵方法。
(18)包装体に、さらに揮発性抗菌剤、乾燥剤、香料から選択される1種以上を入れて処理する、(12)〜(17)に記載の殺ダニ処理及び/またはダニの殺卵処理方法。
【0023】
(19)密封手段を有する包装体と、包装体内部の酸素濃度を6時間以内に5%以下としその後0.1%以下とする脱酸素剤とを有する、殺ダニ処理及び/またはダニの殺卵処理用具。
(20)脱酸素剤の量m(g)が、本発明の処理用包装体の容積V(mL)、酸素吸収量n(ml/g)として、m≧V×0.2/nである、(19)に記載の殺ダニ処理及び/またはダニの殺卵処理用具。
(21)脱酸素剤が、通気性素材の包装体、好ましくは不織布、織布、紙製の包装体に収納されている、(19)または(20)に記載の殺ダニ処理及び/またはダニの殺卵処理用具。
(22)さらに、揮発性抗菌剤、乾燥剤、香料から選択される1種以上を有する(19)〜(21)に記載の殺ダニ処理及び/またはダニの殺卵処理用具。
【実施例】
【0024】
<実施例1>
(試験方法)
55×80cmの密封可能な包装体にコナヒョウヒダニを増殖させたカーペット(素材:ナイロン、大きさ:タテ16cm/ヨコ10cm/厚み7.5mm)と脱酸素剤とを入れ、包装体内の空気量を30Lに調整して密封した。所定時間後(6、24、48時間)の酸素濃度を表1に記す。24または48時間密封したのち袋を開封し、ダニの状態を観察しダニ数を調べた。その後、温度25℃、湿度75%RHで放置し、経時でのダニ数の変化を調べた。
なお、表1に記載した脱酸素剤と包装体は、以下のものを使用した。
【0025】
(表1の脱酸素剤)
脱酸素剤1:「バイタロンPH-15000」(商品名、(株)常盤産業社製、鉄系脱酸素剤)の包装体から脱酸素剤粒子(酸素吸収量100(ml/g))を取り出し、170gをシャーレ(直径15.5cm;188cm2)2枚に薄く広げた。
脱酸素剤2:「バイタロンPH-15000」(商品名、(株)常盤産業社製、鉄系脱酸素剤)の包装体から脱酸素剤粒子(酸素吸収量100(ml/g))を取り出し、170gを紙製容器(縦20cm×40cm;800cm2)に薄く広げた。
脱酸素剤3:「バイタロンPH-15000」(商品名、(株)常盤産業社製、鉄系脱酸素剤)の包装体から脱酸素剤粒子(酸素吸収量100(ml/g))を取り出し、250gを紙/多孔製ポリエチレン積層素材容器(縦30cm×40cm;1200cm2)に薄く広げた。
脱酸素剤4:「バイタロンPH-15000」(商品名、(株)常盤産業製、鉄系脱酸素剤)×2個(酸素吸収量100(ml/g))
脱酸素剤5:「ワンダーキープLP-2000」(商品名、パウダーテック(株)製、鉄系脱酸素剤)×3個(酸素吸収量90(ml/g))
【0026】
(表1の包装体)
包装体1:バリアー性ナイロン製袋、密封用ジッパー付(酸素透過度6cc/m・24hr、atm(20℃、65%RH))
包装体2:ポリエチレン製袋、密封用ジッパー付(酸素透過度4000cc/m・24hr、atm(20℃、65%RH))
【0027】
【表1】

【0028】
【表2】

【0029】
酸素濃度が6時間後に10%以下、48時間後に0.5%以下である試験例1、2、3、4の場合、48時間処理で生存ダニ数が0%となり、その後4週間経過後もダニの増加は少なかった。特に、酸素濃度が6時間後に5%以下、24時間後に0.1%以下である試験例1、2、3の場合、4週間後のダニの増加は認められなかった。これより、殺ダニ、殺卵効果とも良好であることがわかる。
【0030】
【表3】

【0031】
酸素濃度が6時間後に5%以下、24時間後に0.1%以下である試験例1、2、3の場合、24時間処理での生存ダニ数が0%となり、その後4週間経過後もダニの増加は少なかった。これより、殺ダニ、殺卵効果とも良好であることがわかる。特に6時間後の酸素濃度が1.5%以下である試験例2および3は、優れた効果が認められた。
一方、48時間処理で効果があった試験例4は、24時間処理直後は有る程度の殺ダニ効果が得られたものの100%には至らなかった。また、処理後のダニの増加が著しく、これは殺卵効果が十分でなかったことを示している。
【0032】
また、要件1または2を満たさない試験例5〜7の試験では、良好な殺ダニ・殺卵効果は得られなかった。
上記の試験より、本発明で規定する酸素濃度低下速度による処理は、単に低酸素濃度達成時間の短縮による処理時間の短縮を超える予想外の優れた短期殺ダニ・殺卵処理効果を奏するものである。
【0033】
<実施例2>
「バイタロンPH-15000」(商品名、(株)常盤産業社製、鉄系脱酸素剤)の包装体から脱酸素剤粒子(酸素吸収量100(ml/g))を取り出し、ポリエチレンテレフタレート製不織布袋(10cm×20cm)に50gを入れた。前記の不織布包装体入り脱酸素剤4個を使用して、実施例1と同様に経時での酸素濃度とダニ数の変化を調べたところ、試験例1と同様の良好な結果が得られた。
【0034】
さらに、本発明の好ましい態様である下記実施例3〜8の衛生用具での衛生処理を行ったところ、何れも優れた衛生処理効果(殺ダニ+殺卵)が得られた。
【0035】
<実施例3>
実施例2の不織布袋入り脱酸素剤の袋の表面に、処理前に1%ヒノキチオールエタノール溶液1gを噴霧し、本発明の衛生処理を行った。
<実施例4>
実施例2の不織布袋入り脱酸素剤の袋の表面に、処理前に1%ラベンダー抽出物エタノール溶液0.5gを噴霧し、本発明の衛生処理を行った。
<実施例5>
実施例2の不織布袋入り脱酸素剤の袋の表面に、処理前に(0.1%パラクロロメタキシレノール+1%ローズマリー)エタノール溶液1gを噴霧し、本発明の衛生処理を行った。
<実施例6>
実施例2を屋外に放置し、直射日光下で本発明の衛生処理を行った。
<実施例7>
実施例2の包装体内にエージレスアイ(商品名、三菱ガス化学(株)製、酸素濃度インディケータ)を入れ、本発明の衛生処理を行った。
<実施例8>
100×110cmの密封可能な包装体に綿製敷布団と実施例2と同様に調整した脱酸素剤12個を入れ、包装体内の空気量を90Lに調整して密封し、本発明の衛生処理を行った。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装体に物品を入れ、前記包装体内部の空気の酸素濃度を酸素濃度低下手段により6時間以内に10%以下とし、その後処理時間内に0.5%以下とすることを特徴とする、物品の衛生処理方法。
【請求項2】
酸素濃度低下手段が脱酸素剤である、請求項1に記載の物品の衛生処理方法。
【請求項3】
処理時間が48時間以内である、請求項1または2に記載の物品の衛生処理方法。
【請求項4】
ダニの殺卵処理方法である、請求項1〜3に記載の物品の衛生処理方法。
【請求項5】
密封手段を有する包装体と、包装体内部の酸素濃度を6時間以内に10%以下としその後0.5%以下とする脱酸素剤とからなる、物品の衛生処理用具。

【公開番号】特開2007−45810(P2007−45810A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−377168(P2005−377168)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】