説明

物品ホルダのエアコン吹き出し口への取付具

【課題】 多種多様な自動車のエアコン吹き出し口のルーバーに容易で確実な装着と取り外しを行うことのできる物品ホルダのエアコン吹き出し口への取付具を提供することを目的とする。
【解決手段】 物品ホルダに接続するための連結部を備えた基部から、該連結部とは反対側方向に先端にフック部を有する上部延設片と、先端にガイド部を有する下部延設片とを対向して備えたエアコン吹き出し口のルーバーに装着する取付具において、該上部延設片と該下部延設片は、同一の厚みで形成するとともに、幅方向寸法を該基部から先端にかけて狭くし、また、該上部延設片と該下部延設片の外側面に、該基部から先端方向に向かって高さが低くなるように傾斜したリブを立設し、さらに、該上部延設片と該基部とが接続する内側コーナー部分を第1曲面、下部延設片と該基部とが接続する内側コーナー部分を第2曲面として、第2曲面は第1曲面よりも小さい曲率として構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のエアコン吹き出し口のルーバーに、物品ホルダを取り付けるための取付具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車のダッシュボードに備えられているエアコン吹き出し口のルーバーに装着して使用する、飲料容器や携帯電話機などを収納するための物品ホルダがよく知られている。また、これらの物品ホルダは、エアコン吹き出し口のルーバーに、取付具を介して装着されるが、ルーバーへの取付勝手や取り外し易さの改良のために種々構成の取付具が提案されている。
【0003】
従来の取付具にあっては、物品ホルダの背面側に左右一対の取付具を設けて、その取付具それぞれは鋼のバネ性のあるくちばし状のクリップタイプとし、取付具における上下バネ片で一枚のルーバーを挟み持つようにさせることで、この取付具を介して物品ホルダをエアコン吹き出し口に装着している。しかしながら、上記クリップタイプの取付具を用いた場合、着脱に際してルーバー上下面をこすって傷を付けたり、脱落するなどの不具合が生じることから、近年においては樹脂材にて取付具を成形するとともに、上下から挟み持つクリップタイプとは異なるように、ルーバーの後縁に掛け止めるタイプの取付具が提案されている。
【0004】
例えば、特許第3371345号公報(特許文献1)に開示された「エアコン吹き出し口のルーバーに対する物品取付具」は、棒状の取付基部の先端から2枚の辺を互いに離間して対向するよう前方に延ばし、その一方の辺の先端にフック部を形成し、他方の辺を薄肉辺として両辺の先端間に上記ルーバーの挿入口を形成し、この挿入口を介して上記2つの辺間にルーバーを挿入して挾持するように構成したものである。
【0005】
また、特許第3636540号公報(特許文献2)に開示された「ドリンクホルダ用クリップ」は、ルーバーを両側から挟む挟持片でクリップを構成し、一方の挟持片の先端部分が他の挟持片側に屈曲していて、前記屈曲部が他の挟持片の先端部分に設けられている挿入溝に挿入されるように構成したものである。
【0006】
このように形成された取付具は、樹脂の可撓性を利用して、上側、及び下側の片の先端部からルーバーに差し込み、上側の片の先端に有するフックをルーバー後縁に掛けることで、外れないように確実、かつ容易に装着することができる。また、上側の片のフック部と、下側の片の先端部は、常に接触か極めて近接して形成することで、ルーバーに装着したときに抜けないように構成されている。
【0007】
他方、取り外すときは、取付具を少し押し込んでルーバーの後縁に掛けられたフックを外しつつ樹脂の可撓性を利用して上方に持ち上げ、手前に引き抜くことで容易に取り外すことができる。このとき、ルーバーの底面に取付具の下側の片が当接し、取付具の上方への持ち上げにともなって下側の片の先端が下方に撓んで開くことで、取付具の引き抜きが可能となって取り外すことができる。また、特許文献1の段落番号0014、及び図9にも示されるように、このように形成された取付具は、取付具を水平に保持しつつ、ルーバーの面を手動によって斜め上方に傾ければ相対的に取付具の上側片が下側片から離間する方向に撓んで、その状態で物品ホルダをルーバーの面に沿って引き抜いて、取付具をルーバーから取り外すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】 特許第3371345号公報
【特許文献2】 特許第3636540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、近年、自動車のエアコン吹き出し口自体やルーバーの形状は多様化し、取付具のルーバーへの装着が困難な車種が増加しつつあり、特許文献1の取付具においては、棒状の取付基部の先端から延設した辺の長さが異なるものを用意して提供することでこれに対応している。例えばダッシュボードのエアコン吹き出し口の面が比較的立っている場合は短いSサイズ、傾斜している場合は長いLサイズ、その中間はMサイズといったようにいくつかのバリエーションを用意して対応している。
【0010】
図7は、長さの異なる取付具のバリエーションを、エアコン吹き出し口へ装着した状態を示す。このようにエアコン吹き出し口の状況によって、取付具のサイズを選択することで、物品ホルダを水平に装着することができ、収納する飲料容器などの物品を水平に安定して収納することが可能となる。
【0011】
ところで、取付具を取り外すときは、前記したとおり取付具を少し押し込んでルーバーの後縁に掛けられたフックを外しつつ樹脂の可撓性を利用して上方に持ち上げ、手前に引き抜くことで取り外すが、このときルーバーの底面に取付具の下側の片が当接し、取付具の上方への持ち上げにともなって下側の片の先端が下方に撓んで開くことで、取付具の引き抜きが可能となって取り外すことができる。また、取付具を水平に保持しつつ、ルーバーの面を手動によって斜め上方に傾けることで相対的に取付具の上側片が下側片から離間する方向に撓ませて物品ホルダをルーバーの面に沿って引き抜いて、取付具をルーバーから取り外すこともできる。
【0012】
この点、取付具を如何に容易に取り外すかは、下側の片の柔軟性に依存するところが大きく、柔軟性を有さない場合は、ルーバーから取付具を取り外すことは困難で、無理に取り外そうとするとルーバーを破損させる可能性が極めて高い。
【0013】
しかしながら、下側の片が長手方向全域にわたって柔軟性を有していればそれで良いわけではなく、逆に物品ホルダに不用意な力が掛かった場合は脱落の恐れがある。この課題は長いLサイズの取付具に顕著に現れるが、短いSサイズの取付具であってもこの課題を有することにかわりない。
【0014】
また、エアコン吹き出し口のルーバーの間が狭いことも多々あり、このような場合は取付具の先端を差し込むことが困難であり、無理に差し込んで装着したとしても逆に取り外しが困難となる。
【0015】
そこで本発明は、上記した課題を考慮し、多種多様な自動車のエアコン吹き出し口のルーバーに容易で確実な装着と取り外しを行うことのできる物品ホルダのエアコン吹き出し口への取付具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
物品ホルダに接続するための連結部を備えた基部から、該連結部とは反対側方向に、先端にフック部を有する上部延設片と、先端に下方に屈曲したガイド部を有する下部延設片とを対向して備えて、エアコン吹き出し口のルーバーに装着する取付具において、
該上部延設片と該下部延設片は、同一の厚みで形成するとともに、幅方向寸法を該基部から先端にかけて狭くし、
また、該上部延設片と該下部延設片の外側面に、該基部から先端方向に向かって高さが低くなるように傾斜したリブを立設し、
さらに、該上部延設片と該基部とが接続する内側コーナー部分を第1曲面とするとともに、下部延設片と該基部とが接続する内側コーナー部分を第2曲面として、第2曲面は第1曲面よりも小さい曲率としたことで解決される。
【発明の効果】
【0017】
物品ホルダに接続するための連結部を備えた基部から、該連結部とは反対側方向に、先端にフック部を有する上部延設片と、先端に下方に屈曲したガイド部を有する下部延設片とを対向して備えて、エアコン吹き出し口のルーバーに装着する取付具において、
該上部延設片と該下部延設片は、同一の厚みで形成するとともに、幅方向寸法を該基部から先端にかけて狭くし、また、該上部延設片と該下部延設片の外側面に、該基部から先端方向に向かって高さが低くなるように傾斜したリブを立設し、さらに、該上部延設片と該基部とが接続する内側コーナー部分を第1曲面とするとともに、下部延設片と該基部とが接続する内側コーナー部分を第2曲面として、第2曲面は第1曲面よりも小さい曲率としたので、
上部延設片と該下部延設片は、基部から先端に向かって柔軟性が高くなる特性を得るとともに、上部延設片よりも下部延設片の柔軟性が高くなるので、
エアコン吹き出し口の傾斜角度が立っているものから寝ているもの、ルーバーの間が狭いものなど、多種多様な自動車のエアコン吹き出し口のルーバーに、確実な装着と取り外しを容易に行うことのできる物品ホルダのエアコン吹き出し口への取付具を提供することを実現した。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】取付具の説明斜視図である。
【図2】エアコン吹き出し口に装着した状態を示す図である。
【図3】取付具の正面図である。
【図4】取付具の詳細説明図である。
【図5】取付具の平面図である。
【図6】取付具をルーバーから取り外す状態を示す図である。
【図7】異なる態様のエアコン吹き出し口に装着した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
【実施例1】
【0020】
本発明の第1実施例について、図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の取付具の説明斜視図、図2は、エアコン吹き出し口に装着した状態を示す図である。
【0021】
図中、(1)は取付具、(2)は自動車のエアコン吹き出し口、(2a)はルーバー、(3)は物品ホルダ、(4)は該物品ホルダに収納される物品である。取付具(1)は、物品ホルダ(3)の背面側上部に開口して備えられた長孔部(3b)の中央丸孔に、連結部(1g)を嵌め入れて横方向にスライドすることで物品ホルダ(3)と連結される。なお、取付具(1)は、長孔部(3b)の両端部に2本で一対となって構成される。
【0022】
このように構成された取付具(1)は、図2に示されるようにエアコン吹き出し口(2)のルーバー(2a)に装着され、物品ホルダ(3)の底部に前後方向にスライド可能に備えられた突き当て部材(3a)の先端を、物品ホルダ(3)が水平になるようにエアコン吹き出し口(2)の下部近傍(ダッシュボード面など)に突き当てて、物品ホルダ(3)を水平に保持し収納する飲料容器などの物品(4)を安定して収納する。
【0023】
図3は、取付具(1)の正面図、図4は、取付具(1)の詳細説明図、図5は、取付具(1)の平面図である。取付具(1)は、連結部(1g)を備えた基部(1f)から、該連結部(1g)とは反対側方向に、先端にフック部(1c)を有する上部延設片(1a)と、先端に下方に屈曲したガイド部(1d)を有する下部延設片(1b)とを対向して備える。該ガイド部(1d)は、ルーバー(2a)へ差し込むときの案内となって、装着性を向上させる。
【0024】
取付具(1)は、下記に示すように第1から第3の構成要件から構成されていることを特徴としている。
【0025】
第1に、該上部延設片(1a)と該下部延設片(1b)は、同一の厚みで形成し、図5に示されるように、幅方向寸法を該基部(1f)から先端にかけて狭くなるように構成した。(図5中のW1とW2を参照)
【0026】
第2に、該上部延設片(1a)と該下部延設片(1b)の外側面に、該基部(1f)から先端方向に向かって高さが低くなるように傾斜したリブ(1e)を立設して構成した。なお、該外側面とは、上部延設片(1a)であればその上面、下部延設片(1b)であればその底面を指し示すものとする。
【0027】
第3に、該上部延設片(1a)と該基部(1f)とが接続する内側コーナー部分を第1曲面(1h)とするとともに、該下部延設片(1b)と該基部(1f)とが接続する内側コーナー部分を第2曲面(1i)として、第2曲面(1i)は第1曲面(1h)よりも小さい曲率として構成した。
【0028】
以上の第1から第3の構成要件によって、得られる効果は以下に示すとおりである。
【0029】
まず、第1の構成要件によって、エアコン吹き出し口のルーバーの間が狭い場合であっても、取付具(1)を容易に差し込んで装着することができるようになった。
【0030】
また、第1と第2の、両構成要件によって、上部延設片(1a)と下部延設片(1b)が、基部(1f)から先端に行くにしたがって徐々に柔軟性が高くなる特性を得ることを実現した。この先端の柔軟性が高いという特性は、ルーバー(2a)に装着された取付具(1)を容易に着脱するために有効なものである。
【0031】
さらに、第3の構成要件によって、上部延設片(1a)よりも、特に下部延設片(1b)の柔軟性が高くなるという効果を得ることを実現した。これは、下部延設片(1b)の第2曲面(1h)を小さい曲率で構成したことで、より基部(1f)に近い位置から撓むようになるためである。一方、上部延設片(1a)の第1曲面(1h)は第2曲面(1i)よりも大きな曲率で構成したので、基部(1f)からより離れる位置から撓むようになるので、結果的に、上部延設片(1a)の基部近傍の剛性が高まることになる。この特性も、ルーバー(2a)に装着された取付具(1)を容易に取り外すために有効なものである。
【0032】
図6は、取付具(1)をルーバー(2a)から取り外す状態を示す図である。前記したように構成された取付具(1)は、取り外すとき取付具(1)を少し押し込んでルーバー(2a)の後縁に掛けられたフック部(1c)を外しつつ樹脂の撓みを利用して上方に持ち上げ、手前に引き抜いて取り外す。上部延設片(1a)の基部近傍は、適度な剛性を保つとともに、下部延設片(1b)は、先端に行くにしたがって柔軟性が高くなるので、ルーバー(2a)の底面に当接した下側延設片(1b)は、下方に容易に撓んで開くことができ、取付具を容易に引き抜いて取り外すことができるのである。
【実施例2】
【0033】
また、本発明の取付具(1)は、その長さを短いものから長いものまで変化させたとしても、柔軟性など諸処の特性が変化することはないので、異なる態様のエアコン吹き出し口(2)にも容易に適合することができ、確実な装着と取り外しを容易に行うことのできる物品ホルダのエアコン吹き出し口への取付具を提供することを実現したのである。
【0034】
図7は、異なる態様のエアコン吹き出し口(2)に応じて、長さの異なる取付具(1)を装着した状態を示す図である。図7(A)は、垂直面に備えられたエアコン吹き出し口(2)に装着した状態で、短く設定した取付具(1)を用いることで、物品ホルダ(3)を水平に適切に装着することが可能となる。
【0035】
図7(B)は、傾斜面に備えられたエアコン吹き出し口(2)に装着した状態で、少し長く設定した取付具(1)を用いることで、物品ホルダ(3)を水平に適切に装着することが可能となる。
【0036】
図7(C)は、かなり寝た傾斜面に備えられたエアコン吹き出し口(2)に装着した状態で、長く設定した取付具(1)を用いることで、物品ホルダ(3)を水平に適切に装着することが可能となる。
【符号の説明】
【0037】
1 取付具
1a 上側延設片
1b 下側延設片
1c フック部
1d ガイド部
1e リブ
1f 基部
1g 連結部
1h 第1曲面
1i 第2曲面
2 エアコン吹き出し口
2a ルーバー
3 物品ホルダ
3a 突き当て部材
3b 長孔部
4 物品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品ホルダに接続するための連結部を備えた基部から、該連結部とは反対側方向に、先端にフック部を有する上部延設片と、先端に下方に屈曲したガイド部を有する下部延設片とを対向して備えて、エアコン吹き出し口のルーバーに装着する取付具において、該上部延設片と該下部延設片は、同一の厚みで形成するとともに、幅方向寸法を該基部から先端にかけて狭くし、また、該上部延設片と該下部延設片の外側面に、該基部から先端方向に向かって高さが低くなるように傾斜したリブを立設し、さらに、該上部延設片と該基部とが接続する内側コーナー部分を第1曲面とするとともに、下部延設片と該基部とが接続する内側コーナー部分を第2曲面として、第2曲面は第1曲面よりも小さい曲率として構成したことを特徴とする物品ホルダのエアコン吹き出し口への取付具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−42346(P2011−42346A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−209786(P2009−209786)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【出願人】(000150970)株式会社ナポレックス (14)
【Fターム(参考)】