説明

物品保管庫

【課題】 薬品に対してより高い耐久性を有する物品保管庫を提供する。
【解決手段】 薬品保管庫10を、前面が開口された筐体11と、この筐体11に対して前面側から出し入れ可能なラック本体12とにより構成する。筐体11を構成する側パネル13、底パネル、天パネル15等の各構成部材を、耐薬品性に優れるとともに自己消火性を有する合成樹脂によって成形する。また、ラック本体12を構成する前板32、側板33、後板、底板等の各構成部材を、耐薬品性に優れるとともに自己消火性を有する合成樹脂によって成形する。さらに、筐体11とラック本体12との間には、構成部材である底パネル及び内側底パネルと、セラミック製のボールとによってスライド機構を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、薬品等を保管するための物品保管庫に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の物品保管庫としては、例えば特許文献1に記載されたものがある。この物品保管庫は薬品保管用であって、前面が開口された筐体と、この筐体に対して前面側から出し入れ可能なラック本体とからなるとともに、この筐体及びラック本体は共にステンレススチール製とされている。さらに、筐体とラック本体との間には、周知のステンレススチール製のスライドレールが設けられている。
【特許文献1】特開2005−112536号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、ステンレススチールであっても、薬品によっては変色やふくれを起こし、さらには錆びる。このため、筐体やラック本体の表面の見栄えが悪くなったり、スライドレールが円滑に動作しなくなってラック本体を引き出しにくくなったりすることが避けられなかった。
【0004】
この発明の目的は、薬品に対してより高い耐久性を有する物品保管庫を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、耐薬品性を有する合成樹脂の成形品からなる構成部材、及び、同合成樹脂によって被覆された複合材からなる構成部材の少なくとも一方によって形成したことを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明に加えて、前面が開口された筐体と、この筐体に対して前面側から出し入れ可能なラック本体とからなるとともに、同筐体と同ラック本体との間には、前記構成部材とセラミック製のボールとによってスライド機構を構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、耐薬品性を有する合成樹脂の成形品、又は、同合成樹脂によって被覆された複合材からなる構成部材が、薬品に対してステンレススチールよりも高い耐久性を発揮する。従って、薬品に対してより高い耐久性を有する物品保管庫を提供することができる。
【0008】
また、前面が開口された筐体と、この筐体に対して前面側から出し入れ可能なラック本体とにより物品保管庫を構成するとともに、同筐体と同ラック本体との間に、構成部材とセラミック製のボールとによってスライド機構を構成することが好ましい。この場合には、この場合には、前面が開口された筐体と、この筐体に対して前面側から出し入れ可能なラック本体とから構成される物品保管庫において、薬品に対する耐久性を低下させることなく、筐体に対するラック本体の出し入れを円滑に行うことができる
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、この発明を薬品保管庫に具体化した一実施形態について図1〜図6に従って説明する。
図1は、薬品保管庫10を3つ横に並べた状態を示す。各薬品保管庫10は、前面が開口された箱体状の筐体11と、この筐体11に対してその前面側から出し入れ可能なラック本体12とを備えている。
【0010】
図2(a)〜(c)に示すように、上下に長い箱体状の筐体11は、その左右両側を形成する矩形の一対の側パネル13、底側を形成する矩形の底パネル14、天側を形成する天パネル15、及び、裏側を形成する裏パネル16によって基本的に構成されている。天パネル15の下側には、この天パネル15と同じ厚さの内側天パネル17が設けられるとともに、底パネル14の上側には、この底パネル14よりも厚さの薄い内側底パネル18が設けられている。底パネル14の下方に延出された両側パネル13の下端部間には、底パネル14の下面と両側パネル13の下端との間の隙間を埋める板材24が設けられている。これら、側パネル13、底パネル14、天パネル15、裏パネル16、内側天パネル17、内側底パネル18及び板材24はいずれも筐体11の構成部材であって、耐薬品性に優れるとともに自己消火性を有する合成樹脂(例えば、フェノール系樹脂。)によって成形されている。そして、筐体11は、金属ビスや釘を用いることなく、例えば各構成部材を接着することによって組み立てられている。また、両側パネル13の各内側面において筐体11の開口部上部に対応する位置には、突起状のストッパ19が設けられている。ストッパ19は、ABS(Acrylonitrile butadiene styrene )樹脂によって成形されている。
【0011】
図3に示すように、底パネル14の上面における幅方向の両側には、縦断面が半球形状をなす複数個の凹部20が奥行き方向に等間隔でそれぞれ設けられ、各凹部20の内側にはセラミック製のボール21の下半分が入れられている。底パネル14の上側に配置される内側底パネル18には、底パネル14の各凹部20に対応する位置毎に、縦断面が倒椀形状の孔22が設けられ、各孔22内には、ボール21の上部が配置されている。そして、各ボール21は、底パネル14の凹部20と内側底パネル18の孔22とにより底パネル14と内側底パネル18との間において回転可能に保持されるとともに内側底パネル18の各孔22を通じてその上面から頭を出すようになっている。この底パネル14、内側底パネル18及びボール21により、筐体11に対してラック本体12を円滑に移動させるための下側スライド機構23が構成されている。
【0012】
図4(a)〜(e)に示すように、2段のラック部30を有するラック本体12は、前面中央につまみ31が設けられた矩形の前板32、左右両側を形成する左右一対の側板33、後側を形成するとともに両側板間に挟まれた後板34、及び、底側を形成するとともに両側板33間に挟まれた底板35によって基本的に構成されている。各側板33は、略「口」形状とされ、そのと横方向に延びる部分(以下、横部33a,33bという。)の両端位置には、前板32に対面する前壁37と、後板34に対面する後壁38とがそれぞれ設けられている。また、側板33の上側に位置する横部33a間における前壁37と後壁38との間には、棚板39が設けられている。そして、同両横部33a、前壁37、後壁38及び棚板39により、上側に位置するラック部30が構成されている。また、両側板33の下側に位置する横部33b、前壁37、後壁38及び底板35により、下側に位置するラック部30が構成されている。これら、前板32、側板33、後板34、底板35、前壁37、後壁38及び棚板39はいずれもラック本体12の構成部材であって、前記筐体11の各構成部材と同様に、耐薬品性に優れるとともに自己消火性を有する合成樹脂によって成形されている。そして、ラック本体12は、金属ビスや釘を用いることなく、例えば各構成部材を接着することによって組み立てられている。各ラック部30における両横部33a,33bの内側には、横方向において等間隔に複数の図示しない溝がそれぞれ設けられ、各溝には、ラック部30内を区画する仕切り板56(図5(a)〜(c)に図示)が入れられるようになっている。
【0013】
また、図4(a)〜(e)に示すように、両側板33、後板34及び後壁38によって区画形成される空間部の上側開口は、蓋体40によって閉塞されている。蓋体40の上方に延出する両側板33の上端部間には、セラミック製の一対のボール41を回転可能に保持する支持板42及び副支持板43が積層状態で設けられている。この支持板42は、前記底パネル14の凹部20と同様の図示しない凹部を備えるとともに、副支持板43は、前記内側底パネル18の孔22と同様の孔を備え、この凹部と孔とによってボール41が回転可能に保持されている。そして、ボール41、支持板42及び副支持板43により、筐体11に対してラック本体12を円滑に移動させるための上側スライド機構25が構成されている。これら蓋体40、支持板42及び副支持板43はいずれもラック本体12の構成部材であって、耐薬品性に優れるとともに自己消火性を有する合成樹脂によって成形されている。
【0014】
また、図4(a),(b)に示すように、底板35の下面における前端部には、ラック本体12を筐体11から引き出したときにラック本体12の前部を床面上に支持するためのボールキャスター44が設けられている。このボールキャスター44は、合成樹脂製のホルダ45、及び、メラミン系樹脂がコーティングされるとともにホルダ45内に保持されたボール46を備えるとともに、ホルダ45とボール46との間には、図示しないセラミック製の小ボールが配置されている。また、前板32、両側板33及び前壁37によって区画形成される空間部の上部には、既製のマグネット式ロック錠47が設けられている。このマグネット式ロック錠47は、その全体がメラミン系樹脂によりコーティングされている。又、マグネット式ロック錠47は、薬品保管庫10の外側からは目視できないように取り付けられるようになっており、マグネット式ロック錠47の有無が外側からは分らないようになっている。
【0015】
また、図4(a),(d),(e)に示すように、ラック本体12の前壁37及び後壁38のラック部30側の各面上には、横方向に延びるとともに互いに対面する凸条部48の組が異なる高さで複数組設けられ、この凸条部48間には、取り付け及び取り外し可能なトレイ50が支持されている。この凸条部48も、耐薬品性に優れるとともに自己消火性を有する合成樹脂によって成形されている。
【0016】
図5(a)〜(c)に示すように、トレイ50は、その前側を形成する前端板51と、その後側を形成する後端板52と、底側を形成する底板53と、前端板51、後端板52及び底板53を両側から挟む一対の側板54とによって構成されている。これら、前端板51、後端板52、底板53及び両側板54はいずれもトレイ50の構成部材であって、筐体11及びラック本体12の構成部材と同様に、耐薬品性に優れるとともに自己消火性を有する合成樹脂によって成形されている。そして、トレイ50は、例えば各構成部材を接着することで組み立てられている。各側板54の内側には、横方向において等間隔に複数の溝55が設けられ、各溝55には、トレイ50内を区画する仕切り板56が取り外し可能に入れられるようになっている。また、前端板51の前面下端部と、後端板52の後面下端部とには、前記ラック本体12の凸条部48に係合可能な切欠き部51a,52aが設けられている。そして、トレイ50は、図4(a),(e)及び図6に示すように、ラック本体12において前後で対応する一対の凸条部48に切欠き部51a,52aを係合させることによって支持される。
【0017】
さて、上記のように構成された薬品保管庫10において、図1に示す左端及び中央の薬品保管庫10のように、筐体11の内部にラック本体12が収められているときには、下側スライド機構23の各ボール21がラック本体12の底板35の下面に当接し、各ボール21を介してラック本体12が筐体11に支持される。また、ラック本体12の後部上端に設けられた上側スライド機構25の一対のボール41が、筐体11の内側天パネル17の下面に当接する。この状態から、使用者が、ラック本体12のつまみ31を把持して手前側に引くと、図1に示す右端の薬品保管庫10のように、筐体11からラック本体12が引き出される。このとき、ラック本体12は、下側スライド機構23の各ボール21の回転と、上側スライド機構25の各ボール41の回転とにより、筐体11内から円滑に引き出される。そして、筐体11から引き出されたラック本体12は、その後部上端にストッパ19が係合することにより、筐体11からの脱落が防止される。また、筐体11から引き出されたラック本体12の前部は、ラック本体12や薬品瓶の重さによって下がろうとするが、ラック本体12の前部に設けられたボールキャスター44が床面に当接するため、殆ど下がることなく保持される。この状態において、使用者は、各ラック部30又はトレイ50に薬品の瓶や容器を載置する。その後、使用者が、ラック本体12を筐体11側に押すと、ラック本体12が筐体11内に押し込まれる。
【0018】
以上説明したこの実施の形態によれば、薬品保管庫10の筐体11及びラック本体12が、耐薬品性を有する合成樹脂の成形品からなる側パネル13、底パネル14、天パネル15、裏パネル16等の構成部材によって形成されている。そして、各構成部材が、薬品に対してステンレススチールよりも高い耐久性を発揮する。このため、筐体11やラック本体12の各部材に薬品が付着しても、その各部材の表面が変色やふくれを起こすことはなく、さらには錆びることがない。
【0019】
また、筐体11とラック本体12との間には、筐体11の底パネル14及び内側底パネル18と、セラミック製のボール21とによって下側スライド機構23が構成されている。このため、薬品に対する耐久性を低下させることなく、筐体11に対するラック本体12の出し入れを円滑に行うことができる。
【0020】
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することもできる。
・ ハニカム構造の芯材と、この芯材の両面に接着された板材とを備えるとともにその表面全体が、耐薬品性に優れた合成樹脂で被覆された複合材によって、側パネル、天パネル、底パネル等の構成部材を形成し、この構成部材によって物品保管庫を形成する。または、同合成樹脂の成形品からなる構成部材と、前記複合材とによって物品保管庫を形成する。このいずれの場合にも、上記実施形態の各効果を得ることができる。
【0021】
・ この発明を、前面が開口された筐体と、この筐体に対して前面側から出し入れ可能な引き出しを備えた薬品保管庫に具体化する。
・ この発明を、前面が開口された筐体と、この筐体の前面を開閉する扉とを備えた薬品保管庫に具体化する。この場合には、筐体に扉を支持する蝶番全体を、耐薬品性に優れるとともに自己消火性を有する合成樹脂によって被覆する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】一実施形態の薬品保管庫を示す斜視図。
【図2】(a)は筐体を示す縦断面図、(b)は同じく正面図、(c)は(b)におけるa−a線断面図。
【図3】スライド機構を示す分解斜視図。
【図4】(a)はラック本体を示す側面図、(b)は同じく正面図、(c)は同じく平面図、(d)は(a)におけるb−b線断面図、(e)は同じくc−c線断面図。
【図5】(a)はトレイを示す平面図、(b)は同じく正面図、(c)は同じく側面図。
【図6】ラック本体を示す側面図。
【符号の説明】
【0023】
10…物品保管庫としての薬品保管庫、11…筐体、12…ラック本体、13…構成部材としての側パネル、14…同じく底パネル、15…同じく天パネル、16…同じく裏パネル、17…同じく内側天パネル、19…同じく内側底パネル、21…ボール、23…下側スライド機構、25…上側スライド機構、32…構成部材としての前板、33…同じく側板、34…同じく後板、35…同じく底板、37…同じく前壁、38…同じく後壁、39…同じく棚板、40…同じく蓋体、42…同じく支持板、43…同じく副支持板、51…同じく前端板、52…同じく後端板、53…同じく底板、54…同じく側板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐薬品性を有する合成樹脂の成形品からなる構成部材、及び、同合成樹脂によって被覆された複合材からなる構成部材の少なくとも一方によって形成したことを特徴とする物品保管庫。
【請求項2】
前面が開口された筐体と、この筐体に対して前面側から出し入れ可能なラック本体とからなるとともに、同筐体と同ラック本体との間には、前記構成部材とセラミック製のボールとによってスライド機構を構成したことを特徴とする請求項1に記載の物品保管庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−89790(P2007−89790A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−282523(P2005−282523)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(594039114)株式会社國定製作所 (3)
【Fターム(参考)】