説明

物品包装具および物品包装具の縫合方法

【課題】縫合糸の糸切れや目飛びなどの縫合欠陥を容易に発見することができ、縫合欠陥に起因する弊害を防止することができる物品包装具を提供する。
【解決手段】物品包装具10は、自動車用バンパーを収納可能な本体部11を備えている。本体部11は、重ね合わせた表側シート体12および内側シート体13における互いに対向する端部11a側と端部11b側とをそれぞれ縫合糸20でそれぞれ縫合した後、端部11b上に端部11a側が重なるように互いに折り曲げられるとともに、折り曲げられた2つのシート体における図示左右方向の両端部分が縫合糸21で縫合されることにより形成されている。縫合糸21は、物品包装具10の表側に露出する上糸21aと、同物品包装具10の裏側に露出する下糸21bによって構成されている。また、縫合糸20,21は、それぞれ本体部11とは異なる色で構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品、例えば、自動車の車体の前後に取り付けられるバンパーなどを包装する物品包装具および物品包装具の縫合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、物品、例えば、自動車の車体の前後に取り付けられるバンパーなどの運搬や一時的な保管のために物品包装具が用いられている。一般に、このような物品包装具は、包装対象となる物品の形状に合わせた箱状または袋状に形成されている。これらのうち、袋状に形成された物品包装具は、箱状の物品包装具に比べて、軽量かつ柔軟性を有して嵩張らないため取り扱いや保管が容易であるという有利な特徴を持っている。
【0003】
例えば、下記特許文献1および下記特許文献2には、方形状のシート体の両端部をシート体の中央部に向ってそれぞれ折り畳んで筒状に形成するとともに、この筒状に形成したシート体の両端部を塞ぐことにより袋状に形成した物品包装具がそれぞれ開示されている。この場合、筒状に形成されたシート体の両端部は、縫合糸による縫合によってそれぞれ塞がれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3143335号公報
【特許文献2】特表2008−542141号公報
【0005】
しかしながら、上記特許文献1および上記特許文献2にそれぞれ示された物品包装具においては、物品包装具の製造過程または使用過程において、物品包装具の縫合部分に縫合糸の糸切れや目飛び(縫い目が飛ぶこと)などの縫合欠陥が生じることがある。縫合部分における縫合糸の縫合欠陥は、物品包装具の耐久性を著しく低下させるとともに、物品包装具内への異物の侵入や収納されている物品の漏出によって収納されている物品に不測の損傷を生じさせることがあるため、早期かつ確実な発見が求められるものである。しかし、縫合欠陥の早期かつ確実な発見は、物品包装具の縫合に用いる縫合糸の線径が細いことなどから、極めて困難かつ煩雑であるという問題があった。
【発明の概要】
【0006】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、縫合糸の糸切れや目飛びなどの縫合欠陥を容易に発見することができ、縫合欠陥に起因する前記弊害を防止することができる物品包装具および物品包装具の縫合方法を提供することにある。
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に係る本発明の特徴は、重ね合わせたシート体の少なくとも一部を縫合することにより袋状に形成した本体部に、重ね合わせたシート体の間に物品を収納する物品収納部と、物品収納部内に収納対象となる物品を出し入れするための物品出納部とを有した物品包装具であって、重ね合わせたシート体の少なくとも一部を縫合する縫合糸が、本体部とは異なる色で構成されることにある。
【0008】
このように構成した請求項1に係る発明の特徴によれば、重ね合わせたシート体を縫合糸で縫合することにより袋状に形成された物品包装具の本体部は、縫合に用いた縫合糸が本体部(シート体)の色とは異なる色で構成されている。これにより、物品包装具の製造時や使用時において、物品包装具における縫合糸の糸切れや目飛びなどの縫合欠陥を容易に発見することができる。この結果、物品包装具の製造時における縫合欠陥の検査作業の作業負担を軽減しつつ縫合欠陥の発見漏れを有効に防止することができるとともに、縫合欠陥を有する物品包装具が製造され使用されて縫合欠陥に起因して生じる前記種々の弊害を防止することができる。
【0009】
また、請求項2に係る本発明の他の特徴は、前記物品包装具において、複数の物品包装具が、互いに異なる色の縫合糸によって色ごとに構成されることにある。
【0010】
このように構成した請求項2に係る本発明の他の特徴によれば、物品包装具は互いに異なる色の縫合糸によって色ごとに構成される。このため、各色ごとの物品包装具を用いる者は、縫合糸の色によって物品包装具を使い分けることにより、物品包装具や物品包装具内に収納した物品を特定することができる。例えば、物品包装具の製造時期、製造場所、素材または性能などの物品包装具に関する情報を縫合糸の色によって表すことにより、容易にこれらの情報を認識することができる。また、例えば、物品包装具内に収納する物品の製造時期、製造場所、素材、形状、色、用途または性能などの収納対象物に関する情報を縫合糸の色によって表すことにより、これらの情報を物品包装具を開封することなく容易に認識することができる。特に、物品包装具は、一般に、不透明または半透明の素材で構成されているため、物品包装具を開封することなく収納対象物に関する情報を認識できることは有意義である。
【0011】
また、請求項3に係る本発明の他の特徴は、前記物品包装具において、縫合糸は、本体部における一方の表面に露出する第1の縫合糸と、同第1の縫合糸とは異なる色で構成され、前記本体部における他方の表面に露出する第2の縫合糸とで構成されることにある。
【0012】
このように構成した請求項3に係る本発明の他の特徴によれば、物品包装具の本体部における一方の表面(例えば、物品包装具の表面)に露出する縫合糸の色と、他方の表面(例えば、物品包装具の裏面)に露出する縫合糸の色とが互いに異なる色で構成されている。これにより、物品包装具の本体部における一方の表面と他方の表面とを容易に見分けることができ、物品包装具の製造作業や物品包装具への物品の出し入れ作業の作業性および作業精度が向上する。また、前記したように、互いに異なる色の縫合糸で色ごとに物品包装具を構成することにより、物品包装具や物品包装具内に収納した物品に関するより多くの情報を表すことができる、物品包装具の使用の利便性が向上する。
【0013】
また、請求項4に係る本発明の他の特徴は、前記物品包装具において、縫合糸は、本体部と同種の素材で構成されていることにある。
【0014】
このように構成した請求項4に係る本発明の他の特徴によれば、縫合糸は、縫合対象であるシート体と同種の素材で構成されている。この場合、同種の素材で構成とは、本体部を構成するシート体の素材と縫合糸を構成する素材とが、同一の素材は当然、同じ種類に属する素材、例えば、互いに樹脂材や紙材で構成されていることをいう。これにより、物品包装具を廃棄する際、シート体と縫合糸とを分離することなく廃棄することができる。すなわち、物品包装具の廃棄の利便性が向上する。
【0015】
また、本発明は、物品包装具として実施できるばかりでなく、同物品包装具の縫合方法の発明としても実施できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る物品包装具の全体構成を概略的に示す平面図である。
【図2】図1に示す物品包装具をA−A線から見た断面図である。
【図3】図1に示す物品包装具をB−B線から見た断面拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(物品包装具10の構成)
以下、本発明に係る物品包装具の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る物品包装具10の全体構成を概略的に示す平面図である。また、図2は、図1に示す物品包装具10におけるA−A線から見た物品包装具10の断面図である。また、図3は、図1に示す物品包装具10におけるB−B線から見た物品包装具10の拡大断面図である。なお、本明細書において参照する各図は、本発明の理解を容易にするために一部の構成要素を誇張して表わすなど模式的に表している。このため、各図面間および各構成要素間の寸法や比率などは異なっていることがある。この物品包装具10は、図示しない物品を保管または運搬するために、この物品を一時的に収納するための物品収納用のケースである。本実施形態においては、物品包装具10内に収納される収納対象物として、自動車の車体の前後に取り付けられるバンパーを想定している。
【0018】
物品包装具10は、本体部11を備えている。本体部11は、収納対象物を包装可能な形状および大きさで形成された平らな袋体であり、重ね合わせた2枚のシート体、具体的には、表側シート体12と内側シート体13とによって構成されている。本実施形態においては、図1における平面視において図示左右方向に延びる縦580mm、横2150mmの長方形状に形成されている。
【0019】
表側シート体12は、本体部11の表側を構成する半透明のシート状の部品であり、ニ軸延伸ポリプロピレン(OPP)製の気泡緩衝材によって構成されている。この場合、気泡緩衝材とは、ポリプロピレンやポリエチレンなどの樹脂製の膜の間に多くの気泡を挟んでシート状に形成した一般的な緩衝材である。本実施形態においては、表側シート体12は、約2.5mmの厚さで形成されている。一方、内側シート体13は、本体部11の内側を構成する半透明のシート状の部品であり、ポリエチレン(PE)製の気泡緩衝材シートの表面に高発泡ポリエチレンシートを貼り合わせて構成されている。この場合、高発泡ポリエチレンシートは、ポリエチレンシート基材に高発泡率で無数の独立気泡を形成したシート体であり、緩衝材、保温材または断熱材として一般的に用いられているものである。本実施形態においては、内側シート体12は、約3.0mmの厚さで形成されている。
【0020】
この本体部11は、重ね合わせた表側シート体12および内側シート体13における互いに対向する端部11a側と端部11b側とをそれぞれ縫合糸20でそれぞれ縫合した後、端部11b上に端部11a側が重なるように互いに折り曲げられるとともに、折り曲げられた2つのシート体における図示左右方向の両端部分が縫合糸21で縫合されることにより形成されている。これにより、本体部11における一方の表面中央部において端部11b上に端部11a側が重なった状態で物品出納部14が形成されるとともに、本体部11の内側に本体部11の外形状に沿った長方形状の物品収納部15が形成される。
【0021】
物品出納部14は、本体部11の内側に形成された物品収納部15内に収納対象物を出し入れするための開閉可能な開口部であり、本体部11の端部11aと同端部11aの下方にて対向する本体部11の表面(端部11b側の表面)によって構成されている。すなわち、物品出納部14は、物品収納部15に連通した状態で本体部11の長手方向に沿って形成されている。物品収納部15は、収納対象物を収納する部分であり、内側シート体13における高発泡ポリエチレンシートで囲まれて形成されている。
【0022】
物品出納部14を構成する端部11aと同辺11aの下方にて対向する本体部11の表面とには、一対の面ファスナ16a,16bが設けられている。この面ファスナ16a,16bは、物品出納部14を開閉可能な状態で閉じるための留め具であり、物品出納部14に沿って略等間隔に配置されている。本実施形態においては、物品出納部14に沿って5つの面ファスナ16a,16bが設けられている。
【0023】
面ファスナ16a,16bを構成する一方の面ファスナ16aは、その表面に鉤状の突起物が多数形成されており、物品出納部14を構成する端部11aの表裏面を挟んで2つ折りされて、換言すればU字状に形成されて同端部11aから突出して設けられている。一方、面ファスナ16a,16bを構成する他方の面ファスナ16bは、その表面にパイル状の突起物が多数形成されており、面ファスナ16aに対向する本体部11の表面上の位置に同面ファスナ16aの形成方向に沿って同面ファスナ16aよりも長く形成されている。
【0024】
縫合糸20,21は、重ね合わせた表側シート体12および内側シート体13の端部11aおよび端部11bと、本体部11における図示左右方向の両端部とをそれぞれ縫合する樹脂製の糸である。本実施形態においては、線径が約0.3mmのポリエチレン製の糸を縫合糸20,21として用いている。これらの縫合糸20,21うち、縫合糸20は、1本の糸で構成されている。一方、縫合糸21は、本体部11における一方の表面(図2および図3において上側の表面)に露出する上糸21aと、本体部11における他方の表面(図2および図3において下側の表面)に露出する下糸21bとによって構成されている。
【0025】
これらの縫合糸20,21は、それぞれ本体部11とは異なる色で構成されている。この場合、さらに、縫合糸21における上糸21aと下糸21bとは、互いに異なる色で構成されている。本実施形態においては、縫合糸20は黄色で構成されており、上糸21aは赤色で構成されており、下糸21bは紺色で構成されている。なお、この場合、縫合糸20,21を構成する各色は、選択された色の種類自体に意味はない。すなわち、縫合糸20,21を構成する各色は、前記と異なる色で構成してもよいことは当然である。
【0026】
そして、これらの縫合糸20,21のうち、縫合糸21を構成する上糸21aおよび下糸21bによって本体部11の両端部が縫合されることにより、本体部11の内部における両端部が閉塞されて物品収納部15が形成される。なお、本実施形態においては、本体部11は、所謂本縫いによって縫合されている。
【0027】
(物品包装具10の作動)
次に、上記のように構成した物品包装具10の作動について説明する。まず、物品包装具10の製造過程における作動を説明する。この物品包装具10の製造過程においては、前記したように、表側シート体12と内側シート体13とは、互いに重ね合わされて端部11aおよび端部11bが縫合糸20によって縫合される。そして、物品包装具10を製造する作業者は、縫合が適正に行なわれた否かを確認するために、表側シート体12と内側シート体13との縫合部分における縫合状態を目視により検査する。この場合、作業者は、縫合糸20が本体部11とは異なる色で構成されているため、縫合糸20の糸切れや目飛びなどの縫合欠陥を容易かつ迅速に発見することができる。これにより、物品包装具10の製造時における縫合欠陥の検査作業の作業負担を軽減しつつ縫合欠陥の発見漏れを有効に防止することができる。
【0028】
次に、縫合糸20によって縫合された表側シート体12および内側シート体13は、本体部11の端部11a側が端部11b上に重ねられるように互いに折り曲げられた後、同本体部11における長手方向の両端部分が縫合糸21によってそれぞれ縫合される。これにより、本体部11に長手方向の両端部が閉塞されることにより、本体部11の内部に物品収納部15が形成されると同時に物品出納部14が形成される。そして、作業者は、縫合糸21による縫合が適正に行なわれた否かを確認するために、本体部11の両側部分における縫合部分の縫合状態を目視により検査する。この場合においても、作業者は、縫合糸21が本体部11とは異なる色で構成されているため、縫合糸21の糸切れや目飛びなどの縫合欠陥を容易かつ迅速に発見することができる。
【0029】
また、この場合、縫合糸21における上糸21aと下糸21bとが互いに異なる色で構成されている。このため、作業者は、本体部11の一方の表面(図2および図3において上側の表面)か他方の表面(図2および図3において下側の表面)かを容易に認識でき、検査漏れ(検査そのものがなされない)などを防いで検査精度を向上させることができる。これらにより、物品包装具10の製造時における縫合欠陥の検査作業の作業負担を軽減しつつ縫合欠陥の発見漏れを有効に防止することができる。すなわち、この上糸21aが、本発明に係る第1の縫合糸に相当し、下糸21bが本発明に係る第2の縫合糸に相当する。なお、このような縫合糸20,21の縫合欠陥の発見は、縫合部分の検査工程以外の他の工程でも発見し易くなるため、縫合欠陥の発見漏れが更に有効に防止される。
【0030】
次に、物品包装具10の使用過程における作動について説明する。まず、物品包装具10内に収納対象物を収納する作業者は、物品包装具10およびこの物品包装具10内に収納する収納対象物(本実施形態においては自動車用バンパー)を用意する。次に、作業者は、物品包装具10の縫合糸20,21に縫合欠陥がないか目視により確認する。この場合、縫合糸21に縫合欠陥が存在すると、物品包装具10の耐久性を著しく低下させるとともに、物品包装具10内への異物の侵入や収納した収納対象物の漏出により収納対象物に不測の損傷を生じさせるため、特に慎重な確認作業が求められる。
【0031】
しかし、この場合においても、作業者は、縫合糸21が本体部11とは異なる色で構成されていることにより縫合糸21の糸切れや目飛びなどの縫合欠陥を容易かつ迅速に発見することができる。また、縫合糸21における上糸21aと下糸21bとが互いに異なる色で構成されているため、作業者は、本体部11の一方の表面か他方の表面かを容易に認識でき、検査漏れなどを防いで検査精度を向上させることができる。これらにより、縫合欠陥を有する物品包装具10が誤って使用されることが防止される。
【0032】
作業者は、この縫合欠陥の確認作業において縫合糸20,21に縫合欠陥が発見された場合には、別の物品包装具10を用意して縫合欠陥の有無の確認作業を再度行なう。一方、この縫合欠陥の確認作業において縫合糸20,21に縫合欠陥が発見されなかった場合には、作業者は、この物品包装具10内に収納対象物を収納する。具体的には、作業者は、物品出納部14に設けられた面ファスナ16a,16bを互いに分離することにより物品出納部14を開口して、この物品出納部14を介して物品収納部15内に収納対象物を収納する。この場合、物品出納部14における端部11aおよび端部11bのうち、下側に配置された端部11b側に柔軟な接合面からなる面ファスナ16bが設けられているため、収納対象物を傷つけることなく物品収納部15内に収納することができる。
【0033】
次に、作業者は、物品出納部14に設けられた面ファスナ16a,16bを互いに貼り合わせることにより物品出納部15を閉じる。これにより、収納対象物は、物品包装具10内から漏出しない状態で収納されて保管または輸送可能な状態となる。この場合、物品収納部15の内壁面が内側シート体13における高発泡ポリエチレンシートで構成されているため、物品収納部15内に収納された収納対象物に傷や貼り付き跡などを付けることなく保管または輸送を行なうことができる。
【0034】
次に、物品収納具10から収納対象物を取り出す際には、作業者は、物品出納部14に設けられた面ファスナ16a,16bを互いに分離することにより物品出納部14を開口して、この物品出納部14を介して物品収納部15内に収納された収納対象物を取り出す。この場合においても、物品出納部14の端部11b側に柔軟な接合面からなる面ファスナ16bが設けられているため、収納対象物を傷つけることなく物品収納部15内から取り出すことができる。収納対象物が取り出された物品収納具10は、再度、物品収納具10として利用することができる。
【0035】
このように、物品収納具10が繰り返し使用されている間においても、縫合糸21が本体部11とは異なる色で構成されているため、作業者は、縫合糸21の糸切れや目飛びなどの縫合欠陥を発見し易い。これにより、縫合欠陥を有する物品包装具10が誤って使用され続けることが防止される。また、縫合糸21における上糸21aと下糸21bとが互いに異なる色で構成されているため、作業者は、物品収納具10の一方の表面か他方の表面かを容易に認識でき、物品収納具10の取り扱いの利便性が向上する。
【0036】
また、所定の回数または時間使用された物品収納具10や、破損した物品収納具10は廃棄される。この場合、縫合糸20,21は本体部11と同一または同種の素材、具体的には、樹脂素材によって構成されているため、縫合糸20,21と本体部11とを分離することなく廃棄することができる。すなわち、物品収納具10の廃棄に掛かる作業負担が軽減される。
【0037】
上記作動説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、表側シート体12と内側シート体13とを折り曲げて重ね合わせた本体部11を縫合糸21で縫合することにより袋状に形成された物品包装具10は、縫合に用いた縫合糸21が本体部11の色とは異なる色で構成されている。これにより、物品包装具10の製造時や使用時において、物品包装具10における縫合糸の糸切れや目飛びなどの縫合欠陥を容易に発見することができる。この結果、物品包装具10の製造時における縫合欠陥の検査作業の作業負担を軽減しつつ縫合欠陥の発見漏れを有効に防止することができるとともに、縫合欠陥を有する物品包装具が製造され使用されて縫合欠陥に起因して生じる前記種々の弊害を防止することができる。
【0038】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、下記各変形例において、上記実施形態と同様の構成部分については同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0039】
例えば、物品包装具10の大きさ、形状および素材は、物品包装具10内に収納させる収納対象物、物品包装具10の使用環境および物品包装具10に求められる仕様などに応じて適宜決定されるものであり、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、表側シート体12をポリプロピレンに代えてポリエチレンなどの他の樹脂で構成してもよい。また、表側シート体12、内側シート体13を樹脂材に代えてコート紙などの紙材によって構成してもよい。これらによっても、上記実施形態と同様の効果が期待できる。
【0040】
また、上記実施形態においては、本体部11を表側シート体12および内側シート体13の2枚のシート体で構成した。しかし、本体部11は、重ね合わせたシート体の間に収納対象物を収納可能な物品収納部15と、同物品収納部15内に収納対象物を出し入れするための物品出納部14とを形成できれば、必ずしも2枚のシート体で構成される必要はない。すなわち、1枚のシート体または3枚以上のシート体の集合体で本体部11を構成してもよいことは当然である。これらによっても、上記実施形態と同様の効果が期待できる。
【0041】
また、上記実施形態においては、縫合糸20,21は、ポリエチレン製の糸で構成した。しかし、縫合糸20,21は、本体部11を縫合して袋状に形成することができれば、他の素材、例えば、綿製や紙製の糸であってもよいことは当然である。これらによっても、上記実施形態と同様の効果が期待できる。
【0042】
また、上記実施形態においては、縫合糸21は、上糸21aと下糸21bとで構成した。しかし、縫合糸21は、本体部11を縫合できればよいため、必ずしも2本の糸で構成する必要はない。すなわち、縫合糸21は、縫合糸20と同様に、1本の糸で構成することもできる。したがって、表側シート体12および内側シート体13を縫合する縫い方も所謂本縫い以外の縫い方、例えば、所謂環縫いなどの縫い方を用いることができる。これらによっても、上記実施形態と同様の効果が期待できる。
【0043】
また、上記実施形態においては、縫合糸21は、上糸21aと下糸21bとで互いに異なる色で構成した。しかし、縫合糸21は、本体部11、より具体的には、表側シート体12の表面の色とは異なる色で構成されていればよく、互いに異なる色で構成する必要はない。すなわち、上糸21aと下糸21bとを同じ色で構成することもできる。これによれば、本体部11を縫合する縫合糸21の種類が1種類となるため、物品包装具10の製造時における縫合糸21の管理負担が軽減される。
【0044】
また、上記実施形態においては、縫合糸20,21は、それぞれ1色の色で構成した。しかし、縫合糸20,21は本体部11、より具体的には、表側シート体12の表面の色とは異なる色で構成されていればよい。すなわち、縫合糸20,21を、2色以上の色を組み合わせて構成することもできる。これによれば、縫合糸20,21が視認し易くなるため、縫合欠陥の発見がより容易になる。
【0045】
また、上記実施形態においては、1つの物品包装具10の使用について説明したが、当然、物品包装具10を複数製作して用いることができる。この場合、物品包装具10を縫合糸21の色ごとに製作するようにするとよい。これによれば、各色ごとの物品包装具10を用いる者は、縫合糸20,21の色によって物品包装具10を使い分けることにより、物品包装具10や物品包装具10内に収納した収納対象物を特定することができる。例えば、物品包装具10の製造時期、製造場所、素材または性能などの物品包装具10に関する情報を縫合糸20,21の色によって表すことにより、容易にこれらの情報を認識することができる。また、例えば、物品包装具10内に収納する収納対象物の製造時期、製造場所、素材、形状、色、用途または性能などの収納対象物に関する情報を縫合糸20,21の色によって表すことにより、これらの情報を物品包装具10を開封することなく容易に認識することができる。特に、物品包装具10は、半透明の素材で構成されているため、物品包装具10を開封することなく収納対象物に関する情報を認識できることは有意義である。
【0046】
また、上記実施形態においては、縫合糸20,21を本体部11を構成する表側シート体12および内側シート体13と同一または同種の素材、具体的には樹脂材で構成した。これにより、物品包装具10を廃棄する際、本体部11と縫合糸20,21とを分離することなく廃棄することができ、物品包装具10の廃棄の利便性が向上する。しかし、縫合糸20,21と本体部11を構成する表側シート体12および内側シート体13とを互いに異なる種類の素材で構成することを排除するものではない。例えば、本体部11を紙材で構成するとともに縫合糸20,21を樹脂材で構成することもできる。
【0047】
また、上記実施形態においては、物品包装具10内に収納する収納対象物を自動車の車体の前後に取り付けられるバンパーとした。しかし、収納対象物は、自動車用バンパー以外の物品であってもよいことは当然である。
【符号の説明】
【0048】
10…物品包装具、11…本体部、11a…端部、11b…端部、12…表側シート体、13…内側シート体、14…物品出納部、15…物品収納部、16a,16b…面ファスナ、20,21…縫合糸、21a…上糸、21b…下糸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重ね合わせたシート体の少なくとも一部を縫合することにより袋状に形成した本体部に、
前記重ね合わせたシート体の間に物品を収納する物品収納部と、
前記物品収納部内に収納対象となる物品を出し入れするための物品出納部とを有した物品包装具であって、
前記重ね合わせたシート体の少なくとも一部を縫合する縫合糸が、前記本体部とは異なる色で構成されることを特徴とする物品包装具。
【請求項2】
請求項1に記載した物品包装具において、
複数の前記物品包装具が、互いに異なる色の前記縫合糸によって色ごとに構成されることを特徴とする物品包装具。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載した物品包装具において、
前記縫合糸は、前記本体部における一方の表面に露出する第1の縫合糸と、同第1の縫合糸とは異なる色で構成され、前記本体部における他方の表面に露出する第2の縫合糸とで構成されることを特徴とする物品包装具。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1つに記載した物品包装具において、
前記縫合糸は、前記本体部と同種の素材で構成されることを特徴とする物品包装具。
【請求項5】
重ね合わせたシート体の少なくとも一部を縫合することにより袋状に形成した本体部に、
前記重ね合わせたシート体の間に物品を収納する物品収納部と、
前記物品収納部内に収納対象となる物品を出し入れするための物品出納部とを有した物品包装具における縫合方法であって、
前記重ね合わせたシート体の少なくとも一部を縫合する縫合糸が、前記本体部とは異なる色で構成されることを特徴とする物品包装具の縫合方法。
【請求項6】
請求項5に記載した物品包装具の縫合方法において、
複数の前記物品包装具が、互いに異なる色の前記縫合糸によって色ごとに構成されることを特徴とする物品包装具の縫合方法。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載した物品包装具の縫合方法において、
前記縫合糸は、前記本体部における一方の表面に露出する第1の縫合糸と、同第1の縫合糸とは異なる色で構成され、前記本体部における他方の表面に露出する第2の縫合糸とで構成されることを特徴とする物品包装具の縫合方法。
【請求項8】
請求項5ないし請求項7のうちのいずれか1つに記載した物品包装具の縫合方法において、
前記縫合糸は、前記本体部と同種の素材で構成されることを特徴とする物品包装具の縫合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−57281(P2011−57281A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−212250(P2009−212250)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【出願人】(591285756)静岡王子コンテナー株式会社 (3)
【出願人】(502108640)トミタパックス株式会社 (4)
【出願人】(508137936)タイヨ―化学工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】