説明

物品収納用箱体の施錠機構

【課題】 物品の預け入れ側となる人物が積極的に施錠動作を行う必要がなく、簡易な構成によって確実に施錠できる物品収納用箱体の施錠機構を提供する。
【解決手段】 本発明に係る物品収納用箱体の施錠機構は、手荷物や宅配物等が本体ケース13内に載置されたことを底板15の開孔16から突出した突起部42が下降することにより検出し、アーム41の支持部材44を支点として他端に設けられた係合体43が上昇した状態で表側開閉扉11が閉鎖された際、当該表側開閉扉11に設けられた係合部46と上昇した係合体43とが係合することで確実に表側開閉扉11を施錠することができる。従って、物品の預け入れ人は、単に所定の箇所に物品を収納し、扉を閉じるだけで確実に施錠できるので積極的な施錠動作を行う必要がなく、鍵や暗証番号、ICカードやICタグといったものを管理する煩わしさを解消することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品収納用箱体の施錠機構に関し、特に宅配物や手荷物等を収納する宅配ロッカーやコインロッカー等の物品収納用箱体の施錠機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、駅や公共施設等に設置される手荷物や物品を収納するためのロッカーの施錠機構としては鍵穴に鍵を差し込んで施錠するシリンダー錠タイプを用いるのが一般的である。このシリンダー錠タイプの場合、デットボルト(カンヌキ)及びストライク(カンヌキ受け)を物品収納口に設けられる開閉扉及び物品収納箱本体と開閉扉との接触部近傍に設ける必要があり、必然的に設計上の制約を受けざるを得ない構造となっているものであった。
【0003】
また近年では、鍵を携帯管理するといった煩わしさを解消すべく、暗証番号、ICカードやICタグ、携帯電話等を利用して物品収納用箱体、いわゆるロッカーの施錠を行う電気制御方式の施錠機構が流通している。この電気制御方式の施錠機構は、ロッカー内に物品が収納され、開閉扉が閉められたことをセンサにより検知して電気制御で自動施錠するものである。
【0004】
このような従来の物品収納用箱体の施錠機構は、何れのタイプも物品を預け入れる側の人物が積極的に施錠するための動作を行わなければ施錠できないものであった。つまり、シリンダー錠タイプの場合には、鍵穴に鍵を挿入して回転することで施錠する必要があり、また、電気制御方式の場合には、暗証番号の入力やICカード、ICタグ、携帯電話機に記憶されている電子情報を読み取らせることで電気制御により自動施錠させる必要があった。
【0005】
また、電気制御方式による施錠機構を採用する場合、内部機構として電源回路を設ける必要があるため、重量が嵩むといった問題ばかりか、複雑な配線も必要となるため電気系統の故障により定期的なメンテナンスが不可欠であり、保守面でもコスト高を招くことになる。
【0006】
そこで、電気的な装置を用いることなくロッカーの開閉扉の施錠を行える宅配物収納ロッカーが特許文献1で提案されている。
特許文献1に開示される宅配物収納ロッカーは、宅配物の重量により傾きが変移するように本体ケース内に取り付けられた底板と、この底板に連結され、底板の傾きの変移を受けて本体ケースに対してドアを施錠状態とする施錠機構部と、収納された宅配物を受取人側のみで取り出すことのできる取り出し用ドアとから構成されている。
【特許文献1】特開平7−139236号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1で提案されている宅配物収納ロッカーの施錠機構は、宅配物が載置された底板の傾きの変位を連結部材及び連結バネを介して錠部材に伝達する機構であるため、施錠が長時間に亘る場合には、連結バネが伸びきった状態となるため過度の負担をかけることとなり、連結バネの破損を招く虞がある。
【0008】
また、底板の傾きの変位によって施錠する構造とした場合、物品が載置される場所によっては施錠するのに十分な底板の傾きを得ることができず、開閉扉の施錠を確実なものとする点において疑問がある。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、物品の預け入れ側となる人物が積極的に施錠動作を行う必要がなく、簡易な構成で確実に施錠を行うことができる物品収納用箱体の施錠機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、物品を収納する箱体の施錠機構であって、前記箱体の物品の預け入れ側となる開口を覆う開閉扉に設けられた係合部と、前記箱体の底部上面に空洞領域を隔てて配置される底板に設けられた開孔から突出する突起部を一端に設け、前記係合部と係合するための係合体を他端に設けたアームと、前記アームの両端における揺動を可能ならしめる支点となる支持部材と、を有し、前記アームは、前記開孔から突出した前記突起部に物品を載置されて該突起部が下降し、他端に設けられた前記係合部が上昇した状態で前記開閉扉を閉鎖されると、前記係合部と前記係合体とが係合することで施錠することを特徴とする。
【0011】
また、本発明において、前記係合体は、円柱状の係合部材であり、その上面が物品の預け入れ側となる開口に向かって緩やかに傾斜し、前記開閉扉が閉鎖された際、前記係合体と前記係合部に設けられた係合穴とが係合することで施錠することを特徴とする。
【0012】
また、本発明において、前記支持部材は、前記箱体の底部に固定することを特徴とする。
【0013】
さらに、本発明において、前記開閉扉は、シリンダー錠や電気制御方式による施錠機構を設けていることを特徴とする。

【発明の効果】
【0014】
本発明に係る物品収納用箱体の施錠機構によれば、手荷物や宅配物等が物品収納用箱体内に載置されたことを底板の開孔から突出した突起部の下降により検出し、アームの支持部材を支点として他端に設けられた係合体が上昇した状態で物品預け入れ用の表側開閉扉が閉鎖された際、当該表側開閉扉に設けられた係合部と上昇した係合体とが係合することによって確実に表側開閉扉を施錠することができる。従って、物品の預け入れ人は、単に物品収納用箱体の所定の箇所に物品を収納し、扉を閉じるだけで確実に扉の施錠を行うことができるので、従来のように積極的な施錠動作を行う必要がなく、鍵や暗証番号、ICカードやICタグといったものを管理する煩わしさを解消することができる。
【0015】
また、本発明に係る物品収納用箱体の施錠機構によれば、物品の受取人側に設けられる裏側開閉扉を開放して宅配物を取り出すことで表側開閉扉を解錠することができるという簡易な構造であるため、電気的な制御を行う構造と比較して、繰り返し使用しても故障することが少なく、保守・点検等にかかるコストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、添付図面を参照して、本発明に係る物品収納用箱体の施錠機構の実施形態を詳細に説明する。
図1から図3は、本発明に係る物品収納用箱体の施錠機構を用いた一実施形態としての宅配物収納ロッカーの外観構成を示す斜視図である。図1から図3に示すロッカーユニット1は、マンションや個人宅の玄関等に設置される宅配物収納ロッカーであり、例えば、宅配物が配達人により物品預け入れ用の表側開閉扉11又は21から収納され、マンションの住人や個人宅の家主によって物品取り出し用の裏側開閉扉30から宅配物を回収できる構造となっている。
【0017】
図1は、宅配物収納ロッカーの表側を示した外観斜視図であり、図2は、宅配物収納ロッカーの表側に設けられた物品預け入れ用の開閉扉が開放している状態を示す外観斜視図である。
ロッカーユニット1は、上段ロッカー10と、下段ロッカー20とを一体構築し、物品取り出し用の開閉扉30を上段ロッカー10及び下段ロッカー20共通の一枚扉として構成している。
なお、図1に示すロッカーユニット1は、上段ロッカー10と下段ロッカー20とを上下方向に二段配置する構成であるが、三段、四段と重ねて配置してもよく、上下方向だけでなく水平方向に複数列配置する構成も当然ながら可能である。また、設置場所に応じては、複数個のロッカーからなるロッカーユニットとして構成する必要はなく、例えば、個人宅の場合には単体ロッカーとして配置することも可能である。
【0018】
図1及び図2に示すように、上段ロッカー10は、取っ手12が設けられている表側開閉扉11と本体ケース13とで構成されている。なお、下段ロッカー20は、上段ロッカー10と実質的に同一の構成であることから、上段ロッカー10についてのみ詳説する。
【0019】
図2に示すように、表側開閉扉11は蝶番14a,14bによって本体ケース13に対して水平方向に開閉自在となるように取り付けられている。本体ケース13の底部の上面には、空洞領域を隔てて宅配物を載置するための底板15が設けられ、当該底板15の略中央部分に開孔16が形成されている。
【0020】
図3は、宅配物収納ロッカーの裏側に設けられた物品取り出し用の開閉扉が開放している状態を示す外観斜視図である。
物品取り出し用の裏側開閉扉30は、表側開閉扉11又は21と同様に横開きの扉であり、上段ロッカー10及び下段ロッカー20の物品取り出し用共通扉となっている。この裏側開閉扉30は、蝶番31a,31bによってロッカーユニット1に対して水平方向に開閉自在となるように取付けられている。この裏側開閉扉30の施解錠については、公知の技術によって施解錠機構を設けることが可能である。
なお、本実施形態に示す裏側開閉扉30は、上段ロッカー10と下段ロッカー20との共通扉としているが、上段ロッカー10及び下段ロッカー20のそれぞれに物品取り出し用の開閉扉を設ける構成としてもよい。
【0021】
次に、図4及び図5を参照して、本発明に係る物品収納用箱体の施錠機構について具体的に説明する。
図4は、ロッカーの底板下部に設けられた施錠機構の構成を示す斜視図であり、当該施錠機構を物品預け入れ側から見た際にロッカーの手前側左隅となるように配置したものである。また、図5は、表側開閉扉が閉鎖された状態の施錠機構をロッカー内部側から見た斜視図である。
【0022】
施錠装置40は、本体ケース13の底部とその上面に配置される不図示の底板とで形成される空洞領域内に設置されており、アーム41と、突起部42と、係合体43と、支持部材44と、係合部45と、から構成されている。アーム41は、一方の端部に物品が載置されたことを検出するための突起部42を設け、他方の端部に係合体43を設けた板状の部材であり、本体ケース13の中央付近から物品預け入れ側の手前左隅まで延伸している。このアーム41の中央部やや内より(突起部42側)には、当該アーム41を支持するための支持部材44が本体ケース13の底部に固定され、「てこの原理」によって突起部42が下降すると、もう一方の端部に設けられた係合体が所定の位置まで上昇する構造となっている。
なお、この支持部材44は、本体ケース13の底部にてアーム41を支持するように固定されているが、当該底部の上面に空洞領域を設けて配置される底板の裏面で支持する構成とすることも可能である。
【0023】
突起部42は、物品が載置されていない時に、不図示の底板の中央付近に形成される開孔から突出するように調整され、当該突起部42上に宅配物等の物品が載置されると、支持部材44を支点として不図示の底板下部に沈み込む(下降)ように配置されている。
【0024】
係合体43は、円柱状の係合部材であり、その上面が物品預け入れ側となる表側開閉扉に向かって緩やかな傾斜を有しているものである。
【0025】
案内部材45は、アーム41が上下に揺動する際に係合体43と後述の表側開閉扉に設けられる係合穴とを確実に係合させるための適切な位置に案内するガイドレールであり、係合体43が位置する箇所を2方向から覆うように本体ケース13の底部に固定されている。
【0026】
係合部46は、表側開閉扉11に設けられ、当該表側開閉扉11が閉鎖された際、係合体43と係合可能な位置(図4の場合、物品預け入れ側左側手前)に取り付けられ、に係合体43の直径よりも大きい係合穴46aを具備している。施錠する際には、物品が不図示の底板に形成された開孔から突出した突起部42上に載置された状態で表側開閉扉11が閉鎖されると、係合体45は「てこの原理」によって案内部材45に沿って上昇した係合体43の傾斜した上面を押し沈めるようにして進み、最終的に係合穴46aと係合体43とが係合することで施錠することができる。
なお、係合体43の上面が物品預け入れ側に向かってのみ傾斜を有していることから、閉鎖されている表側開閉扉11を開放しようとして引っ張っても、係合穴46と係合体43とがしっかりと係合されているため容易に開放することはできない。
また、本体ケース13に設けられた開孔16の位置やアーム41の長さは任意であり、施錠する部位に併せて適宜設計変更することが可能である。
【0027】
図6(a)〜(d)は、宅配物の預け入れ時におけるロッカーの施錠動作を示す断面図であり、ロッカーを左横方向から見たものである。図6を参照して、本発明係る物品収納用箱体の施錠動作について説明する。
【0028】
図6(a)に示すように、物品の預け入れ人は、ロッカーの本体ケース13内の底板15に形成された開孔16から突出している突起部42を下側に押し込む位置へ宅配物100を載置する。
【0029】
次に、図6(b)に示すように、宅配物100が突起部42を押し込む位置で底板15に載置されると、当該宅配物100の加重によって突起部42が下側に押し込まれる。
この突起部42の下降に合わせてアーム41が支持部材44を支点として、係合体43が設けられた他方の端部が上昇する。
【0030】
次に、図6(c)に示すように、表側開閉扉11が閉じられると、当該表側開閉扉に設けられている係合部46が係合体43の上面に当接する。係合体43の上面は、表側開閉扉11に向かって傾斜した形状となっているため、係合体43の上面に当接している係合部46は、物品の預け入れ人によって表側開閉扉11を閉めようとする力によって、傾斜に沿って係合体43を下方へ押し下げるようにしながら所定の位置まで移動する。
【0031】
さらに、図6(d)に示すように、係合部46は、係合体43を押し下げるようにして所定の位置まで移動すると、当該係合部46に設けられた係合穴46aと係合体43とが穴係合するこの状態は、宅配物100が取り出されるまで継続する。
【0032】
なお、上述した実施形態は、ロッカーの裏側から物品を取り出す方法を開示するものであるが、アームに設けられた係合体を押し込む機構をロッカーの表側から操作可能な構造とすることにより、複数個あるロッカーの場合には一斉に解錠したり、又は、個別に解錠したりする構成とすることも可能である。
【0033】
また、他の実施形態として、収納される物品の重量に関わらず、突起部42が押し下げられ、係合体43が上昇した状態でロックする機構を設け、裏側開閉扉の開放に連動してロックを解除するような構成とすることにより、物品事態の重量に関係なく確実に扉を施錠することが可能である。
【0034】
さらに、他の実施形態として、本実施形態における施錠機構とは別に、表側開閉扉にシリンダー錠や、ICカード、ICタグを読み取るスキャナ、暗証番号を入力するためのテンキーといった従来の施錠機構を設けてもよい。これにより、表側開閉扉に設けた施錠機構と、本実施形態における施錠機構とで二重の施錠をすることができるため、より確実な施錠を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態に係る宅配物収納ロッカーの表側を示す外観斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る宅配物収納ロッカーの表側開閉扉が開放している状態を示す外観斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係る宅配物収納ロッカーの裏側開閉扉が開放している状態を示す外観斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係る宅配物収納ロッカーの底板下部に設けられた施錠機構の構成を示す斜視図である。
【図5】本発明の実施形態に係る宅配物収納ロッカーの表側開閉扉が閉鎖された状態を示す斜視図である。
【図6】本発明の実施形態に係る宅配物収納ロッカーの施錠動作を示す断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 ロッカーユニット
10 上側ロッカー
20 下側ロッカー
11、21 表側開閉扉
12、22 取っ手
13、23 本体ケース
14a、14b、31a、31b 蝶番
15、25 底板
16 開穴
30 裏側開閉扉
40 施錠装置
41 アーム
42 突起部
43 係合体
44 支持部材
45 案内部材
46 係合部
46a 係合穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を収納する箱体の施錠機構であって、
前記箱体の物品の預け入れ側となる開口を覆う開閉扉
に設けられた係合部と、
前記箱体の底部上面に空洞領域を隔てて配置される底板に設けられた開孔から突出する突起部を一端に設け、前記係合部と係合するための係合体を他端に設けたアームと、
前記アームの両端における揺動を可能ならしめる支点となる支持部材と、を有し、
前記アームは、
前記開孔から突出した前記突起部に物品を載置されて該突起部が下降し、他端に設けられた前記係合部が上昇した状態で前記開閉扉を閉鎖されると、前記係合部と前記係合体とが係合することで施錠することを特徴とする物品収納用箱体の施錠機構。
【請求項2】
前記係合体は、
円柱状の係合部材であり、その上面が物品の預け入れ側となる開口に向かって緩やかに傾斜し、前記開閉扉が閉鎖された際、前記係合体と前記係合部に設けられた係合穴とが係合することで施錠することを特徴とする請求項1記載の物品収納用箱体の施錠機構。
【請求項3】
前記支持部材は、
前記箱体の底部に固定することを特徴とする請求項1又は2記載の物品収納用箱体の施錠機構。
【請求項4】
前記開閉扉は、
シリンダー錠や電気制御方式による施錠機構を設けていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の物品収納用箱体の施錠機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−303603(P2008−303603A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−151457(P2007−151457)
【出願日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(390005094)株式会社フルタイムシステム (11)