物品移動装置
【課題】隔離用柵や隔離用カバー、および緊急停止装置を必要とせず、簡単な構成かつ低推力で物品の移動を行うことができる物品移動装置を提供する。
【解決手段】物品移動装置1は、ワーク2を載置するワーク台11と、前記ワーク台11に接続される複数の液体容器12・13と、前記複数の液体容器12・13間を連通する液体通路であるホース19と、前記ホース19を通じて前記複数の液体容器12・13間を移動可能な液体20とを備え、前記液体20を前記一方の液体容器12から他方の液体容器13へ、または他方の液体容器13から一方の液体容器12へ移動させることにより、前記ワーク台11を移動させる。
【解決手段】物品移動装置1は、ワーク2を載置するワーク台11と、前記ワーク台11に接続される複数の液体容器12・13と、前記複数の液体容器12・13間を連通する液体通路であるホース19と、前記ホース19を通じて前記複数の液体容器12・13間を移動可能な液体20とを備え、前記液体20を前記一方の液体容器12から他方の液体容器13へ、または他方の液体容器13から一方の液体容器12へ移動させることにより、前記ワーク台11を移動させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡単な構成かつ低推力で物品の移動を行うことが可能な物品移動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、エンジン等の加工工程では、エンジンの構成部材であるシリンダブロックやシリンダヘッド等の大物重量部品は搬送装置により搬送されており、例えば前記大物重量部品を昇降移動させるためにリフター装置が用いられている。
前記リフター装置は、ワークとなる大物重量部品を載置したワーク台を昇降させることにより、ワークを上下に移動させるように構成されており、例えば特許文献1に記載されるリフター装置が知られている。
【0003】
このようなリフター装置においては、前記ワーク台を昇降させるための動力源として、モータや油圧シリンダやエアーシリンダ等が用いられている。
例えば、特許文献1に記載される搬出用リフターは駆動モータにより昇降動作が行われており、該搬出用リフターとワイヤにて接続されたドロップリフターのフォークは、前記搬出用リフターの駆動力(つまり前記駆動モータの駆動力)を利用して昇降動作を行うように構成されている。
【特許文献1】特開2005−298155号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のように、従来のリフター装置では、ワーク台を昇降させるための動力源として、モータや油圧シリンダ等のアクチュエータを用いていたが、これらのアクチュエータは大きな推力を有しているため、リフター装置を稼動させているときに前記アクチュエータを作業者等から隔離するための隔離用柵や隔離用カバーを設けたり、作業者等が前記アクチュエータの動作領域に侵入したときにリフター装置の動作を停止させる緊急停止装置を設けたりする必要があり、装置が大型化および複雑化していた。また、リフター装置における異常動作発生時の処置や修理・調整の作業が煩雑であった。
【0005】
前述の特許文献1に記載されているリフター装置では、ドロップリフターのフォークの上昇動作を行う際に搬出用リフターの自重下降の力を利用するとともに、搬出用リフターの上昇動作を行う際に前記フォークの自重下降の力を利用することにより、搬出用リフターおよびドロップリフターのフォークの昇降に必要な駆動力の低減を図っているが、駆動力としてモータ等のアクチュエータを使用しているために推力を低減するには限度があり、依然として前記隔離用柵や隔離用カバーや緊急停止装置等を設ける必要があって装置が大型化および複雑化するとともに、異常動作発生時の処置や修理・調整の作業が煩雑であった。
【0006】
そこで、本発明においては、前記柵やカバー、および緊急停止装置等を必要とせず、簡単な構成かつ低推力で物品の移動を行うことができる物品移動装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する物品移動装置は、以下の特徴を有する。
即ち、請求項1記載の如く、物品移動装置は、物品を載置するワーク台と、前記ワーク台に接続される複数の液体容器と、前記複数の液体容器間を連通する液体通路と、前記液体通路を通じて前記複数の液体容器間を移動可能な液体とを備え、前記液体を前記一方の液体容器から他方の液体容器へ、または他方の液体容器から一方の液体容器へ移動させることにより、前記ワーク台を移動させる。
これにより、物品移動装置は、モータや油圧シリンダやボールネジ等のアクチュエータを用いることなく、低推力でワークの上下移動等の移動動作を行うことが可能となり、前記アクチュエータを用いた場合のように、隔離用柵や隔離用カバーや緊急停止装置等を設ける必要がなく、装置を簡単な構成で小型に構成することができるとともに、異常動作発生時の処置や修理・調整の作業が容易となる。
【0008】
また、請求項2記載の如く、前記一方の液体容器と前記ワーク台が、プーリに巻き掛けられる紐状体を介して接続され、前記紐状体の前記プーリよりも一側に前記一方の液体容器が配設され、前記プーリよりも他側に前記他方の液体容器および前記ワーク台が配設されており、前記液体を前記一方の液体容器から他方の液体容器へ移動させることにより、前記ワーク台を下方移動させ、前記液体を前記他方の液体容器から一方の液体容器へ移動させることにより、前記ワーク台を上方移動させる。
これにより、停止しているワーク台が上下移動動作を開始するだけの重量差をプーリの両側に付与するだけで、該ワーク台に載置したワークの昇降を行うことができるので、超低推力で該ワークを昇降させることが可能となり、例えば物品移動装置に異常が生じたときには、小さな力で容易にワークの昇降動作を停止させることが可能であり、装置の取り扱いを容易とすることができる。
【0009】
また、請求項3記載の如く、前記プーリの一側には、さらに前記ワーク台と同等の重量を有する錘部材が配設される。
これにより、ワーク台にワークを載置していないときのプーリの両側の重量バランスを同じにすることができるので、ワークを上昇動作させるために必要な液体容器内に貯溜する液体の量を少なくすることができ、装置をさらに小型化および軽量化することができる。
【0010】
また、請求項4記載の如く、前記ワーク台は水平方向に回転自在に支持されており、前記複数の液体容器は、それぞれ前記ワーク台の回転中心から半径方向へ所定寸法離れた位置に紐状体を介して接続され、前記液体を前記一方の液体容器から他方の液体容器へ移動させることにより前記ワーク台を一方向へ回転移動させ、前記他方の液体容器から一方の液体容器へ移動させることにより前記ワーク台を他方向へ回転移動させる。
これにより、停止しているワーク台が水平方向への回転動作を開始するだけの重量差を両液体容器間に付与するだけで、該ワーク台に載置したワークの水平回転動作を行うことができるので、超低推力で該ワークを方向転換させることが可能となり、装置を簡単な構造かつ小型に構成することができる。
【0011】
また、請求項5記載の如く、前記ワーク台は垂直方向に回転自在に構成され、前記複数の液体容器は、それぞれ前記ワーク台の回転中心から半径方向へ所定寸法離れた位置に紐状体を介して接続され、前記液体を前記一方の液体容器から他方の液体容器へ移動させることにより前記ワーク台を一方向へ回転移動させ、前記他方の液体容器から一方の液体容器へ移動させることにより前記ワーク台を他方向へ回転移動させる。
これにより、停止しているワーク台が垂直方向への回転動作を開始するだけの重量差を両液体容器間に付与するだけで、該ワーク台に載置したワークの垂直回転動作を行うことができるので、超低推力で該ワークを反転させることが可能となり、装置を簡単な構造かつ小型に構成することができる。
【0012】
また、請求項6記載の如く、前記ワーク台は水平方向に直線移動自在に構成され、前記複数の液体容器は、それぞれ前記ワーク台の移動方向における一側および他側に紐状体を介して接続され、前記液体を前記一方の液体容器から他方の液体容器へ移動させることにより前記ワーク台を一方向へ直線移動させ、前記他方の液体容器から一方の液体容器へ移動させることにより前記ワーク台を他方向へ直線移動させる。
これにより、停止しているワーク台が水平方向への直線移動動作を開始するだけの重量差を両液体容器間に付与するだけで、該ワーク台に載置したワークの直線移動動作を行うことができるので、超低推力で該ワークを直線移動させることが可能となり、装置を簡単な構造かつ小型に構成することができる。
【0013】
また、請求項7記載の如く、前記複数の液体容器には、それぞれ気体通路が接続され、該気体通路を通じて前記液体容器に給排される気体の圧力により、前記液体容器間での液体の移動が行われる。
これにより、液体容器内へ給排させる気体として、予め工程内に用意されている圧縮空気を用いることができるため、前記液体を液体容器間で移動させるための液体ポンプ等の大掛かりな部品を新たに備える必要もなく、物品移動装置を小型で低コストに構成することができる。
さらに、特別な動力を使用することなく液体を移動させることができ、省エネルギー化およびCO2の発生量削減を図ることができる。
【0014】
また、請求項8記載の如く、前記液体の移動は、
前記一方の液体容器内の気体を前記気体通路を通じて排出し、負圧となった一方の液体容器内に、他方の液体容器から液体を流入させることで行う。
これにより、該液体容器内に気体を供給して加圧し、その加圧力により一方の液体容器内の液体を押し出して、他方の液体容器内へ移動させるようにした場合のように、前記加圧力により液体容器が破裂して内部に貯溜される液体が外部に飛散するといったことを防止できる。
【0015】
また、請求項9記載の如く、前記液体の移動は、前記液体通路に介装される液体ポンプにより行われる。
これにより、液体の移動量を正確に把握することができ、必要最小限の液体の移動でワーク2の昇降動作を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、モータや油圧シリンダやボールネジ等のアクチュエータを用いることなく、低推力でワークの移動動作を行うことが可能となり、前記アクチュエータを用いた場合のように、隔離用柵や隔離用カバーや緊急停止装置等を設ける必要がなく、装置を簡単な構成で小型に構成することができるとともに、異常動作発生時の処置や修理・調整の作業が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明を実施するための形態を、添付の図面を用いて説明する。
【0018】
図1、図2に示す物品移動装置1は、例えばエンジン等の加工工程において、エンジンの構成部材であるシリンダブロックやシリンダヘッド等の大物重量部品等の物品をワーク2として昇降移動させるための装置であり、床面5に立設される支柱17と、該支柱17の上端部に軸受16aにより回転自在に支持されるプーリ16と、前記ワーク2を載置するワーク台11と、前記ワーク台11に接続される複数の液体容器12・13と、前記複数の液体容器12・13間を連通するための液体通路を構成するホース19と、前記液体通路19を通じて前記複数の液体容器12・13内に流入可能な液体20とを備えている。
【0019】
用いる液体20の種類は特に問わないが、入手が容易で安価であり、比重や粘性、および液体容器12・13やホース19等の各部材に対する腐食性等の観点から、本例では水を液体20として用いている。
また、前記液体容器12・13は、例えば、入手が容易で安価であり、若干の可撓性を有し、比較的良好な耐久性を備えた合成樹脂製のタンクを用いている。
【0020】
前記前記プーリ16には紐やワイヤ等の紐状体14が巻き掛けられており、該紐状体14の一側端部には錘部材21が接続され、該錘部材21の下方にはブラケット15を介して液体容器12が接続されている。
なお、前記プーリ16の外周面には溝部16b(図2参照)が形成されており、該溝部16bに前記紐状体14を巻き掛けることによって、該紐状体14がプーリ16から外れないようにしている。
【0021】
また、前記紐状体14の他側端部には前記ワーク台11が接続されており、該ワーク台11の下方にはブラケット15を介して液体容器12が接続されている。
つまり、前記紐状体14の前記プーリ16よりも一側に前記錘部材21および一方の液体容器12が配設され、前記プーリ16よりも他側に前記ワーク台11および他方の液体容器13が配設されている。
【0022】
前記支柱17の錘部材21配設側面にはリニアガイド18のレール18aが上下方向に取り付けられ、該レール18a上に摺動自在に設けられる前記リニアガイド18のスライドブロック18bには前記錘部材21が取り付けられており、該錘部材21および前記液体容器12がレール18aに沿って上下移動可能に構成されている。
また、前記支柱17のワーク台11配設側面にもリニアガイド18のレール18aが上下方向に取り付けられ、該レール18a上に摺動自在に設けられる前記リニアガイド18のスライドブロック18bには前記ワーク台11が取り付けられており、該ワーク台11および前記液体容器13がレール18aに沿って上下移動可能に構成されている。
【0023】
このように、前記ワーク台11、錘部材21、および液体容器12・13をリニアガイド18のレール18aに沿って上下移動可能に構成することで、これらの部材は水平面方向にふらつくことなくスムーズに上下移動することができる。
なお、各リニアガイド18の下端部には、スライドブロック18bがそれ以上下方へ移動しないように停止させるストッパ18cが設けられている。
【0024】
このように上下移動可能に構成されるワーク台11および錘部材21は、それぞれ前記プーリ16に巻き掛けられる紐状体14の両端部に接続されているので、例えばワーク台11および錘部材21の一方が上昇移動すると他方は下降移動し、他方が上昇移動すると一方は下降移動することとなる。
【0025】
前記液体容器12・13には、それぞれ液体給排管12a・13aが挿入されている。該液体給排管12a・13aの上端は液体容器12・13の外部に突出し、下端は液体容器12・13内に侵入しており、該液体給排管12a・13aの下端は液体容器12・13内の底面近くまで延出している。ただし、液体給排管12a・13aの下端と液体容器12・13の底面とは接しておらず、両者の間には若干の隙間を設けている。
また、前記液体容器12・13の液体給排管12a・13aが挿入される部分と、該液体給排管12a・13aとの間は気密性を保持するためにシール材によりシールされている。
【0026】
前記液体容器12における液体給排管12aの上端部と、前記液体容器13における液体球排管13aの上端部とは、前記ホース19により接続されており、これらの液体給排管12a、液体球排管13a、およびホース19により、液体容器12内と液体容器13内とを連通する液体通路が構成されている。
このように、前記液体給排管12a・13aおよびホース19により前記液体容器12と液体容器13とを連通することで、該液体容器12・13内に貯溜される液体20が前記液体給排管12a・13aおよびホース19を通じて、液体容器12から液体容器13へ、および液体容器13から液体容器12へ移動可能となっている。
【0027】
また、前記錘部材21は前記ワーク台11の重量と略同じ重量に構成され、前記液体容器12と液体容器13とは略同じ流量および略同じ容量に構成されている。
従って、該ワーク台11に前記ワーク2が載置されておらず、かつ、前記液体容器12・13に液体20が貯溜されていなくて空の状態にあるとき、または液体容器12・13に同量の液体20が貯溜されているときには、前記紐状体14におけるワーク台11側端部にかかる重量と錘部材21側端部にかかる重量とが略等しくなって、前記ワーク台11および錘部材21は昇降せずに静止状態となる。
【0028】
一方、ワーク台11に前記ワーク2が載置されておらず、かつ、前記液体容器12・13の何れか一方に、他方よりも多くの液体20が貯溜されているときには、錘部材21およびワーク台11のうち、液体容器12・13に多くの液体が貯溜されている方が重くなるため下降し、貯溜されている液体が少ない方が軽くなるため上昇することとなる。
つまり、前記プーリ16に巻き掛けられる紐状体14の一側と他側との重量バランスに応じてワーク台11が昇降するように構成されている。
【0029】
また、前記液体容器12・13には、それぞれ気体給排管12b・13bが挿入されている。
該気体給排管12b・13aの上端は液体容器12・13の外部に突出し、下端は液体容器12・13内に侵入している。この場合、前記液体給排管12a・13aの下端は液体容器12・13内の上面近くに位置していて、液体容器12・13内に貯溜される液体20に触れないように構成されている。
また、前記液体容器12・13の気体給排管12b・13bが挿入される部分と、該気体給排管12b・13bとの間は気密性を保持するためにシール材によりシールされている。
【0030】
前記気体給排管12b・13bには、それぞれエジェクタ22・22が接続され、該エジェクタ22・22は切り換えバルブ23に接続されている。
前記エジェクタ22は、圧縮空気が供給されることにより他の気体を吸引するように構成された装置であり、本例の場合は、圧縮空気の供給により、液体容器12・13内の空気を気体給排管12b・13bを通じて外部に排出するように構成されている。
【0031】
前記切り換えバルブ23は、例えばクローズド3ポジションソレノイドバルブに構成されており、ポンプ24からの圧縮空気を液体容器12・13の何れに供給するかの切り換えを行うものである。
例えば、切り換えバルブ23を第1の位置23aに切り換えると、ポンプ24からの圧縮空気が液体容器12のエジェクタ22に供給されて、該液体容器12内の空気が外部に排出され、液体容器12内は負圧となる。この場合、液体容器13は大気解放される。
また、切り換えバルブ23を第2の位置23bに切り換えると、ポンプ24からの圧縮空気が液体容器13のエジェクタ22に供給されて、該液体容器13内の空気が外部に排出され、液体容器13内は負圧となる。この場合、液体容器12は大気解放される。
【0032】
このように、容器内へ気体を給排するための気体通路となる気体給排管12b・13bを液体容器12・13に設けて、該液体容器12・13内の一方の空気を排出することで、該一方の液体容器12・13内を負圧にすることができ、大気解放されている他方の液体容器13・12内に貯溜された液体20を、負圧により生じる吸引力により吸引して一方の液体容器12・13内へ移動させることが可能となっている。
例えば、図3に示すように、液体容器13に液体20が貯溜された状態で、前記切り換えバルブ23を第1の位置23aに切り換えると、液体容器12内の空気がエジェクタ22により排出されて該液体容器12内が負圧となり、液体容器13内の液体20が液体給排管12a・13a及びホース19を通じて液体容器12内に流入し、液体容器13から液体容器12への液体20の移動が行われる。
【0033】
以上のように構成される物品移動装置1においては、前記ワーク台11上に載置したワーク2の昇降動作が次のようにして行われる。
図1に示すように、液体20の略全量がワーク台11側の液体容器13内に貯溜されている状態では、ワーク台11が設けられている側が錘部材21が設けられている側よりも重くなっているため、ワーク台11は下降して、該ワーク台11が取り付けられるリニアガイド18のスライドブロック18bがストッパ18cに係止し、上下移動範囲の最下方に位置している。逆に、ワーク台11とはプーリ16の反対側に位置している錘部材21は最上方に位置している。
【0034】
ワーク2を下方位置から上昇移動させる場合には、まず、このように最下方に位置しているワーク台11にワーク2を載置する。
ワーク台11にワーク2を載置した後は、前記切り換えバルブ23を第1の位置23aに切り換えて、液体容器12側のエジェクタ22を作動させ、該液体容器12内を負圧状態とする。
液体容器12内が負圧になると、その負圧により生じる吸引力により、液体容器13内に貯溜される液体20が液体給排管13a、ホース19、および液体給排管12aを順に通じて移動し、液体容器12内に流入する。
液体容器12内の負圧状態はエジェクタ22の作動中は維持されるので、液体容器13内の液体20の略全量が液体容器12内に移動するまでの間前記エジェクタ22の作動を継続させておく。
【0035】
前記液体容器13から液体容器12に移動される液体20の重量は、ワーク2の重量よりも若干重い重量となるように設定されており、液体20が液体容器13から液体容器12へ移動された後は、前記紐状体14のプーリ16よりワーク台11側にかかる重量よりも、錘部材21側にかかる重量の方が重くなる。
これにより、最上方に位置している錘部材21は液体容器13の重量により下降し、逆に最下方に位置しているワーク台11は上昇する。その後、図4に示すように、錘部材21が最下方にまで達して前記ストッパ18cに当接して停止し、ワーク台11は最上方位置で停止する。
このように、液体容器13から液体容器12へ液体20を移動させることで、ワーク台11を最下方位置から最上方位置へ上昇移動させるようにしている。
【0036】
ここで、前述の「液体容器13から液体容器12に移動される液体20の重量が、ワーク2の重量よりも若干重い重量である」ということは、液体容器13から移動されて液体容器12に貯溜される液体20の重量が、ワーク2の重量よりも、ワーク台11(および錘部材21)が停止している状態から、該ワーク台11に上昇動作を開始させる(および錘部材21に下降動作を開始させる)ことができるだけの重量だけ重くなっているということである。
本例の場合は、例えば、ワーク2の重量が10kgwであった場合には液体容器12に貯溜される液体20の重量が10.5kgwとなるように設定し、ワーク2の重量が12kgwであった場合には液体容器12に貯溜される液体20の重量が12.5kgwとなるように設定している。
【0037】
一方、図4に示すように、液体容器12内に液体20が貯溜されるとともに、液体容器13が空である場合には、ワーク2が載置されたワーク台11は最上方に位置しているが、その最上方に位置しているワーク台11を下降動作させる場合には、
まず、前記切り換えバルブ23を第2の位置23bに切り換えて、液体容器13側のエジェクタ22を作動させ、該液体容器13内を負圧状態とする。
液体容器13内が負圧になると、その負圧により生じる吸引力により、液体容器12内に貯溜される液体20が液体給排管12a、ホース19、および液体給排管13aを順に通じて移動し、液体容器13内に流入する。
【0038】
液体20の液体容器13内への流入開始後、該液体容器13へ所定の重量の液体が流入して、前記紐状体14のプーリ16よりワーク台11側にかかる重量が、錘部材21側にかかる重量よりも重くなると、最上方に位置しているワーク台11が下降を開始し、最下方に位置している錘部材21が上昇を開始する。
その後、ワーク台11が最下方にまで達して前記ストッパ18cに当接して停止し、錘部材21が最上方位置で停止する。
【0039】
なお、液体20が液体容器13内へ流入してワーク台11が下降を開始した後は、液体容器13内を負圧状態としているエジェクタ22の動作を停止して、該液体容器13内への液体20の流入を停止させてもよく、また、ワーク台11の下降開始後も前記エジェクタ22の動作を継続して、液体容器12内の液体20の略全量を液体容器13内へ流入させてもよい。
【0040】
以上のように、本物品移動装置1においては、液体20を液体容器12から液体容器13へ、または液体容器13から液体容器12へ移動させることにより、ワーク台11上に載置したワーク2を昇降動作させるようにしている。
このように、液体20の移動によりプーリ16のワーク台11側の重量と錘部材21側の重量とのバランスを変化させて、プーリ16の両側の重量差によりワーク2を昇降動作させるように構成しているので、モータや油圧シリンダやボールネジ等のアクチュエータを用いることなく、低推力でワーク2の上下移動動作を行うことが可能となる。
これにより、物品移動装置1には、前記アクチュエータを用いた場合のように、隔離用柵や隔離用カバーや緊急停止装置等を設ける必要がなく、装置を簡単な構成で小型に構成することができる。
【0041】
特に、本物品移動装置1は、停止しているワーク台11が上下移動動作を開始するだけの重量差をプーリ16の両側に付与するだけで、該ワーク台11に載置したワーク2昇降を行うことができるので、超低推力で該ワーク2を昇降させることが可能となり、例えば物品移動装置1に異常が生じたときには、小さな力で容易にワーク2の昇降動作を停止させることが可能であり、装置の取り扱いが容易となっている。
【0042】
また、物品移動装置1においては、プーリ16のワーク台11が配置される側とは反対の側に、該ワーク台11と略同等の重量を有する錘部材21を設けて、ワーク台11にワーク2を載置していないときのプーリ16の両側の重量バランスを同じにしているので、ワーク2を上昇動作させるために必要な前記液体容器12内に貯溜する液体20は、ワーク2の重量に若干の重量(昇降動作を開始するために必要な重量)を加えた重量の液体20でよく、液体容器12・13に貯溜する液体20の量を少なくすることができる。
これにより、物品移動装置1を全体的に小型化することができるとともに、前記液体容器12・13間での液体20の移動時間を短縮させることができ、工程のラインタクトを満足するワーク2の昇降動作を行うことができる。
【0043】
また、液体容器12・13間での液体20の移動は、前記気体給排管12b・13bを通じて前記液体容器12・13内へ気体を給排させることにより行っており、液体容器12・13内へ給排させる気体は、予め工程内に用意されている圧縮空気を用いることができるため、前記液体20を液体容器12・13間で移動させるための液体ポンプ等の大掛かりな部品を新たに備える必要もなく、物品移動装置1を小型で低コストに構成することができる。
さらに、特別な動力を使用することなく液体を移動させることができ、省エネルギー化およびCO2の発生量削減を図ることができる。
【0044】
特に、本例の場合は、エジェクタ22を用いて液体容器12・13内の気体を外部に排出して、気体を排出した液体容器12・13内へ液体20を吸引するように構成しているので、該液体容器12・13内に気体を供給して加圧し、その加圧力により一方の液体容器12・13内の液体20を押し出して、他方の液体容器13・12内へ移動させるようにした場合のように、前記加圧力により液体容器12・13が破裂して内部に貯溜される液体20が外部に飛散するといったこともない。
【0045】
ただし、前記ホース19等、液体容器12・13間における液体20の通路の途中に液体ポンプを設けて、該液体ポンプにより液体容器12・13間での液体20の移動を直接行うように構成することも可能である。
このように、液体ポンプにより直接液体20を移動させるように構成することで、液体20の移動量を正確に把握することができ、必要最小限の液体20の移動でワーク2の昇降動作を行うことが可能となる。
【0046】
なお、本例においては、ワーク台11に載置して昇降移動させるワーク2として、エンジンのシリンダブロックやシリンダヘッド等を適用しているが、トランスミッションを構成するミッションケース等、他の部品を適用することもできる。
【0047】
また、前記物品移動装置1は、次のように、ワーク2を水平方向へ回転移動させるように構成することもできる。
例えば、図5に示す物品移動装置30は、工程の第1ラインL1を搬送されてきたワーク2を、回転軸33を中心にして水平方向に回転自在に支持されるワーク台31により、水平方向に略90°回転移動させる装置であり、物品移動装置30により回転移動されたワーク2は、前記第1ラインL1と略直交する方向へ進行する第2ラインL2に受け継がれていくように構成されている。
【0048】
図6〜図8に示すように、前記ワーク台31は、回転軸33により支持台32に水平方向へ回転自在に支持されている。
前記ワーク台31の裏面の2箇所には、フック31a・31bが固設されており、該フック31a・31bに、それぞれ紐状体34a・34bを介して液体容器35a・35bが接続されている。
前記液体容器35a・35bが接続されている前記フック31a・31bは、ワーク台31裏面における回転軸33から半径方向へ所定寸法だけ離れており、該フック31a・31bの回転方向における位相が180°異なる箇所に配置されている。
【0049】
また、前記ワーク台31の一側方向には、前記支持台32に支持される上部プーリ37a・37bが所定の間隔を隔てて設けられており、該上部プーリ37a・37bの下方には、それぞれ下部プーリ38a・38bが設けられている。
前記上部プーリ37aおよび下部プーリ38aには、前記フック31aからワーク台31の一側方向へ略水平方向に延出する紐状体34aが巻き掛けられており、該紐状体34aの先端部は下方に延出して液体容器35aに接続されている。
同様に、前記上部プーリ37bおよび下部プーリ38bには、前記フック31bからワーク台31の一側方向へ略水平方向に延出する紐状体34bが巻き掛けられており、該紐状体34bの先端部は下方に延出して液体容器35bに接続されている。
【0050】
また、前記液体容器35aと液体容器35bとは、前述の液体容器12・13の場合と同様に、液体給排管12a・13aおよびホース19により連通されている。
さらに、各液体容器35a・35bにはそれぞれ前記気体給排管12b・13bを通じてエジェクタ22・22が接続されており、該液体容器35a・35b内の空気を外部に排出可能となっている。
【0051】
このように、ワーク台31と液体容器35a・35bは、それぞれ上部プーリ37a・37bおよび下部プーリ38a・38bに巻き掛けられる紐状体34a・34bにより接続されており、該液体容器35a・35bが上下移動することにより前記ワーク台31が水平方向に回転移動するように構成されている。
【0052】
例えば、図6〜図8においては、ワーク台31が最も右に回転した姿勢にある状態の物品移動装置30を示しており、この状態では、前記フック31aが前記上部プーリ37aから最も離れた箇所に位置しており、前記フック31bが前記上部プーリ37bから最も近づいた箇所に位置している。
また、この状態においては、前記フック31aに接続される液体容器35a内には液体20が貯溜されておらず、該液体容器35aは上下移動範囲の最上方に位置しており、前記フック31bに接続される液体容器35bには所定量の液体20が貯溜されていて、該液体容器35bは上下移動範囲の最下方に位置している。
【0053】
この状態から、前記液体容器35aのエジェクタ22を作動させて該液体容器35a内を負圧にすると、液体容器35b内に貯溜される液体20が移動して液体容器35a内へ流入することとなる。
液体容器35a内に液体20が流入して、該液体容器35a内に貯溜される液体20の重量が、液体容器35b内に貯溜される液体20の重量よりも所定重量だけ大きくなると、ワーク台31のフック31aにかかる一側方向への力がフック31bにかかる一側方向への力よりも大きくなって、該ワーク台31は回転軸33を中心に左回転を開始し、
液体容器35aが下方へ移動するとともに、液体容器35bが上方へ移動する。
【0054】
つまり、液体容器35a内の液体20の重量が、液体容器35b内の液体20の重量よりも大きくなると、前記液体容器35bが接続されるフック31bがワーク台31の一側方向へ引っ張られる力よりも、前記液体容器35aが接続されるフック31aがワーク台31の一側方向へ引っ張られる力が大きくなって、前記フック31aと上部プーリ37aとが近づく方向(前記フック31bと上部プーリ37bとが離れる方向)へワーク台31が回転することとなる。
なお、ワーク台31の回転は、液体容器35aが最下方位置に達するとともに、液体容器35bが最上方位置に達すると停止するが、本例の場合は、ワーク台31の回転角度が略90°となるように構成されている。
【0055】
また、液体容器35aが最下方に位置し、液体容器35bが最上方に位置していて、ワーク台31が最も左に回転した姿勢にある状態で、液体容器35aから液体容器35bへ液体20を移動させ、該液体容器35bの液体20の重量が、液体容器35aの液体20の重量よりも所定重量だけ大きくなると、ワーク台31のフック31bにかかる一側方向への力がフック31aにかかる一側方向への力よりも大きくなって、該ワーク台31は回転軸33を中心に右回転する。
【0056】
このように、物品移動装置30を、ワーク台31が水平方向に回転するように構成することで、該物品移動装置30を、工程内におけるライン間等においてワーク2を方向変換させる装置として用いることができ、該ワーク2を低推力で方向転換させることができて、装置を簡単な構造かつ小型に構成することができる。
【0057】
また、前記物品移動装置1は、次のように、ワーク2を垂直方向へ回転移動させるように構成することもできる。
例えば、図9に示す物品移動装置40は、工程の第1ラインL1を搬送されてきたワーク2を、回転軸43を中心にして垂直方向に回転自在に支持されるワーク台41により、垂直方向に略180°回転移動させる(つまりワーク2を反転させる)装置であり、物品移動装置40により回転移動されたワーク2は、第1ラインL1の後工程となる第2ラインL2に受け継がれていくように構成されている。
【0058】
図10〜図12に示すように、前記ワーク台41は、ワーク2の上下面を支持する上部台41aおよび下部台41b、ならびに、該上下部台41a・41bの前後端部をそれぞれ支持する円環状部材である前回転台41cおよび後回転台41dにて構成されており、該前後回転台41c・41dは、支持台42に取り付けられる支持ローラ46・46によりそれぞれ支持されている。
支持ローラ46・46に支持される前後回転台41c・41dは、回転軸43を中心にして略垂直方向に回転可能に構成されている。
【0059】
図11に示すように、前記前回転台41cの外周には全周にわたって溝部41eが形成されており、該溝部41eには紐状体44aが巻き掛けられている。
紐状体44aの基端部は前回転台41cの左右一側端部に接続され、該紐状体44aは基端部から前回転台41c外周の下側の略半周にわたって巻き掛けられた後、前第1プーリ47aおよび前第2プーリ48aに巻き掛けられており、紐状体44aの先端部は前記前第2プーリ48aよりも高位置に固定されている。
また、前記前第2プーリ48aには液体容器45aが吊り下げられている。
【0060】
また、図12に示すように、前記後回転台41dの外周には全周にわたって溝部41eが形成されており、該溝部41eには紐状体44bが巻き掛けられている。
紐状体44bの基端部は後回転台41dの左右一側端部に接続され、該紐状体44bは基端部から後回転台41d外周の上側の略半周にわたって巻き掛けられた後、後プーリ48bに巻き掛けられており、紐状体44bの先端部は前記後プーリ48bよりも高位置に固定されている。
また、前記後プーリ48bには液体容器45bが吊り下げられている。
なお、前回転台41cに接続される前記紐状体44aの基端部と、後回転台41dに接続される前記紐状体44bの基端部とは、ワーク台41の左右方向の同じ側に接続されている。
【0061】
また、前記液体容器45aと液体容器45bとは、前述の液体容器12・13の場合と同様に、液体給排管12a・13aおよびホース19により連通されている。
さらに、各液体容器45a・45bにはそれぞれ前記気体給排管12b・13bを通じてエジェクタ22・22が接続されており、該液体容器45a・45b内の空気を外部に排出可能となっている。
【0062】
このように、ワーク台41の前回転台41cと液体容器45aは、前第1プーリ47aおよび前第2プーリ48aに巻き掛けられる紐状体44aにより接続され、ワーク台41の後回転台41dと液体容器45bは、後プーリ48bに巻き掛けられる紐状体44bにより接続されており、該液体容器45a・45bが上下移動することにより前記ワーク台41が回転軸43を中心として垂直方向に回転移動するように構成されている。
【0063】
例えば、図10〜図12においては、ワーク台41が、上部台41aが上方に位置し、下部台41bが下方に位置する姿勢にある状態の物品移動装置40を示しており、この状態では、前回転台41c側の液体容器45a内に液体20が貯溜されて、該液体容器45aは上下移動する範囲の最下方に位置している。また、後回転台41d側の液体容器45b内には液体20が貯溜されておらず、該液体容器45bは上下移動する範囲の最上方に位置している。
【0064】
ワーク台41には、紐状体44aを介して前回転台41cに接続される液体容器45aの重量により、該紐状体44aの前回転台41cに対する巻き付けが解かれる方向(図11における矢印で示す方向)へ回転する力がかかるとともに、紐状体44bを介して後回転台41dに接続される液体容器45bの重量により、該紐状体44bの後回転台41dに対する巻き付けが解かれる方向(図12における矢印で示す方向であって、前回転台41cにかかる方向とは逆の方向)へ回転する力がかかっているが、図10〜図12に示す状態では、液体容器45a内に貯溜される液体20の重量分だけ前回転台41cへかかる回転方向の力が大きいため、ワーク台41は回転範囲内において最も左に回転した状態(図11に示す状態)で停止している。
【0065】
この状態から、前記液体容器45bのエジェクタ22を作動させて該液体容器45b内を負圧にすると、液体容器45a内に貯溜される液体20が移動して液体容器45b内へ流入することとなる。
液体容器45b内に液体20が流入して、該液体容器45b内に貯溜される液体20の重量が、液体容器45a内に貯溜される液体20の重量よりも所定重量だけ大きくなると、液体容器45aの重量により前回転台41cにかかる回転方向の力よりも、液体容器45bの重量により後回転台41dにかかる回転方向の力が大きくなって、ワーク台41は右方向(紐状体44aが前回転台41cに巻き付く方向、かつ紐状体44bが後回転台41dから巻き解かれる方向)に回転する。
【0066】
なお、ワーク台41の回転は、液体容器45bが最下方位置に達するとともに、液体容器45aが最上方位置に達すると停止するが、本例の場合は、ワーク台41の回転角度が略180°となるように構成されている。
従って、ワーク台41が、図10〜図12に示す状態から右回転した場合は、上部台41aが下方に位置するとともに、下部台41bが上方に位置する姿勢となった時点で回転を停止する。
【0067】
このように、物品移動装置40を、ワーク台41が垂直方向に回転するように構成することで、該物品移動装置40を、工程内におけるライン間等においてワーク2の上下面を反転させる装置として用いることができ、該ワーク2を低推力で上下反転させることができて、装置を簡単な構造かつ小型に構成することができる。
【0068】
また、前記物品移動装置1は、次のように、ワーク2を水平方向へ直線移動させるように構成することもできる。
例えば、図13に示す物品移動装置50は、ワーク2を載置するワーク台51が、リニアガイド58を介して支持台52上に直線移動可能に支持されている。
該リニアガイド58はレール58aと該レール58a上に摺動自在に設けられるスライドブロック58bとを備えており、レール58aを支持台52上面に取り付け、スライドブロック58bをワーク台51に取り付けることで、該ワーク台51を支持台52上でスムーズに直線移動可能としている。
【0069】
前記ワーク台51における移動方向の一端部には紐状体54aを介して液体容器55aが接続されており、移動方向の他端部には紐状体54bを介して液体容器55bが接続されている。
前記紐状体54aは、該ワーク台51から移動方向一側へ向けて略水平方向へ延出され、前記支持台52に支持されるプーリ57aに巻き掛けられた後に下方へ延出して、その先端部には液体容器55aが接続されている。
また、前記紐状体54bは、該ワーク台51から移動方向他側へ向けて略水平方向へ延出され、前記支持台52に支持されるプーリ57bに巻き掛けられた後に下方へ延出して、その先端部には液体容器55bが接続されている。
【0070】
また、前記液体容器55aと液体容器55bとは、前述の液体容器12・13の場合と同様に、液体給排管12a・13aおよびホース19により連通されている。
さらに、各液体容器55a・55bにはそれぞれ前記気体給排管12b・13bを通じてエジェクタ22・22が接続されており、該液体容器55a・55b内の空気を外部に排出可能となっている。
【0071】
このように、ワーク台51と液体容器55a・55bは、それぞれプーリ57a・57bに巻き掛けられる紐状体54a・44bにより接続されており、該液体容器55a・55bが上下移動することにより前記ワーク台51が水平方向に直線移動するように構成されている。
【0072】
例えば、図13においては、ワーク台51が最も左方(移動方向における一端部)に位置した姿勢にある状態の物品移動装置50を示しており、この状態においては、
ワーク台51の一端部に接続される液体容器55a内には所定量の液体20が貯溜されていて、該液体容器55aは上下移動範囲の最下方に位置しており、ワーク台51の他端部に接続される液体容器55b内には液体20が貯溜されておらず、該液体容器55bは上下移動範囲の最上方に位置している。
【0073】
この状態から、前記液体容器55bのエジェクタ22を作動させて該液体容器55b内を負圧にすると、液体容器55a内に貯溜される液体20が移動して液体容器55b内へ流入することとなる。
液体容器55b内に液体20が流入して、該液体容器55b内に貯溜される液体20の重量が、液体容器55a内に貯溜される液体20の重量よりも所定重量だけ大きくなると、液体容器55bの重量によりワーク台51にかかる移動方向における他側への力が、液体容器55aの重量によりワーク台51にかかる移動方向における一側への力よりも大きくなって、該ワーク台51は移動方向における他側へ移動を開始し、液体容器55bが下方へ移動するとともに、液体容器55aが上方へ移動する。
【0074】
つまり、前記ワーク台51は、液体容器55aにより移動方向の一側に引っ張られ、液体容器55bにより移動方向の他側に引っ張られているが、液体容器55aおよび液体容器55bのうち、内部に貯溜される液体20の重量が多い側の引っ張り力が大きくなるため、該ワーク台51は内部に貯溜される液体20の重量が多い液体容器55a・55bの側に直線移動することとなる。
【0075】
このように、物品移動装置50を、ワーク台51が水平方向に直線移動するように構成することで、該物品移動装置50を、工程内におけるライン間等においてワーク2を直線移動させる装置として用いることができ、該ワーク2を低推力で直線移動させることができて、装置を簡単な構造かつ小型に構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】ワーク台が設置された側の液体容器に液体が貯溜された状態の物品移動装置を示す正面図である。
【図2】ワーク台が設置された側の液体容器に液体が貯溜された状態の物品移動装置を示す側面図である。
【図3】複数の液体容器の連通状態、および書く液体容器への気体の給排機構を示す正面図である。
【図4】ワーク台が設置された側とは反対側の液体容器に液体が貯溜された状態の物品移動装置を示す正面図である。
【図5】ワークを方向転換させるように構成した物品移動装置を示す概略平面図である。
【図6】ワークを方向転換させるように構成した物品移動装置を示す側面断面図である。
【図7】ワークを方向転換させるように構成した物品移動装置を示す正面断面図である。
【図8】ワークを方向転換させるように構成した物品移動装置を示す平面図である。
【図9】ワークを上下反転させるように構成した物品移動装置を示す概略平面図である。
【図10】ワークを上下反転させるように構成した物品移動装置を示す側面断面図である。
【図11】ワークを上下反転させるように構成した物品移動装置を示す正面図である。
【図12】ワークを上下反転させるように構成した物品移動装置を示す背面図である。
【図13】ワークを水平方向に直線移動させるように構成した物品移動装置を示す側面図である。
【符号の説明】
【0077】
1 物品移動装置
2 ワーク
11 ワーク台
12・13 液体容器
12a・13a 液体給排管
12b・13b 気体給排管
14 紐状体
15 ブラケット
16 プーリ
19 ホース
21 錘部材
22 エジェクタ
23 切り換えバルブ
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡単な構成かつ低推力で物品の移動を行うことが可能な物品移動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、エンジン等の加工工程では、エンジンの構成部材であるシリンダブロックやシリンダヘッド等の大物重量部品は搬送装置により搬送されており、例えば前記大物重量部品を昇降移動させるためにリフター装置が用いられている。
前記リフター装置は、ワークとなる大物重量部品を載置したワーク台を昇降させることにより、ワークを上下に移動させるように構成されており、例えば特許文献1に記載されるリフター装置が知られている。
【0003】
このようなリフター装置においては、前記ワーク台を昇降させるための動力源として、モータや油圧シリンダやエアーシリンダ等が用いられている。
例えば、特許文献1に記載される搬出用リフターは駆動モータにより昇降動作が行われており、該搬出用リフターとワイヤにて接続されたドロップリフターのフォークは、前記搬出用リフターの駆動力(つまり前記駆動モータの駆動力)を利用して昇降動作を行うように構成されている。
【特許文献1】特開2005−298155号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のように、従来のリフター装置では、ワーク台を昇降させるための動力源として、モータや油圧シリンダ等のアクチュエータを用いていたが、これらのアクチュエータは大きな推力を有しているため、リフター装置を稼動させているときに前記アクチュエータを作業者等から隔離するための隔離用柵や隔離用カバーを設けたり、作業者等が前記アクチュエータの動作領域に侵入したときにリフター装置の動作を停止させる緊急停止装置を設けたりする必要があり、装置が大型化および複雑化していた。また、リフター装置における異常動作発生時の処置や修理・調整の作業が煩雑であった。
【0005】
前述の特許文献1に記載されているリフター装置では、ドロップリフターのフォークの上昇動作を行う際に搬出用リフターの自重下降の力を利用するとともに、搬出用リフターの上昇動作を行う際に前記フォークの自重下降の力を利用することにより、搬出用リフターおよびドロップリフターのフォークの昇降に必要な駆動力の低減を図っているが、駆動力としてモータ等のアクチュエータを使用しているために推力を低減するには限度があり、依然として前記隔離用柵や隔離用カバーや緊急停止装置等を設ける必要があって装置が大型化および複雑化するとともに、異常動作発生時の処置や修理・調整の作業が煩雑であった。
【0006】
そこで、本発明においては、前記柵やカバー、および緊急停止装置等を必要とせず、簡単な構成かつ低推力で物品の移動を行うことができる物品移動装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する物品移動装置は、以下の特徴を有する。
即ち、請求項1記載の如く、物品移動装置は、物品を載置するワーク台と、前記ワーク台に接続される複数の液体容器と、前記複数の液体容器間を連通する液体通路と、前記液体通路を通じて前記複数の液体容器間を移動可能な液体とを備え、前記液体を前記一方の液体容器から他方の液体容器へ、または他方の液体容器から一方の液体容器へ移動させることにより、前記ワーク台を移動させる。
これにより、物品移動装置は、モータや油圧シリンダやボールネジ等のアクチュエータを用いることなく、低推力でワークの上下移動等の移動動作を行うことが可能となり、前記アクチュエータを用いた場合のように、隔離用柵や隔離用カバーや緊急停止装置等を設ける必要がなく、装置を簡単な構成で小型に構成することができるとともに、異常動作発生時の処置や修理・調整の作業が容易となる。
【0008】
また、請求項2記載の如く、前記一方の液体容器と前記ワーク台が、プーリに巻き掛けられる紐状体を介して接続され、前記紐状体の前記プーリよりも一側に前記一方の液体容器が配設され、前記プーリよりも他側に前記他方の液体容器および前記ワーク台が配設されており、前記液体を前記一方の液体容器から他方の液体容器へ移動させることにより、前記ワーク台を下方移動させ、前記液体を前記他方の液体容器から一方の液体容器へ移動させることにより、前記ワーク台を上方移動させる。
これにより、停止しているワーク台が上下移動動作を開始するだけの重量差をプーリの両側に付与するだけで、該ワーク台に載置したワークの昇降を行うことができるので、超低推力で該ワークを昇降させることが可能となり、例えば物品移動装置に異常が生じたときには、小さな力で容易にワークの昇降動作を停止させることが可能であり、装置の取り扱いを容易とすることができる。
【0009】
また、請求項3記載の如く、前記プーリの一側には、さらに前記ワーク台と同等の重量を有する錘部材が配設される。
これにより、ワーク台にワークを載置していないときのプーリの両側の重量バランスを同じにすることができるので、ワークを上昇動作させるために必要な液体容器内に貯溜する液体の量を少なくすることができ、装置をさらに小型化および軽量化することができる。
【0010】
また、請求項4記載の如く、前記ワーク台は水平方向に回転自在に支持されており、前記複数の液体容器は、それぞれ前記ワーク台の回転中心から半径方向へ所定寸法離れた位置に紐状体を介して接続され、前記液体を前記一方の液体容器から他方の液体容器へ移動させることにより前記ワーク台を一方向へ回転移動させ、前記他方の液体容器から一方の液体容器へ移動させることにより前記ワーク台を他方向へ回転移動させる。
これにより、停止しているワーク台が水平方向への回転動作を開始するだけの重量差を両液体容器間に付与するだけで、該ワーク台に載置したワークの水平回転動作を行うことができるので、超低推力で該ワークを方向転換させることが可能となり、装置を簡単な構造かつ小型に構成することができる。
【0011】
また、請求項5記載の如く、前記ワーク台は垂直方向に回転自在に構成され、前記複数の液体容器は、それぞれ前記ワーク台の回転中心から半径方向へ所定寸法離れた位置に紐状体を介して接続され、前記液体を前記一方の液体容器から他方の液体容器へ移動させることにより前記ワーク台を一方向へ回転移動させ、前記他方の液体容器から一方の液体容器へ移動させることにより前記ワーク台を他方向へ回転移動させる。
これにより、停止しているワーク台が垂直方向への回転動作を開始するだけの重量差を両液体容器間に付与するだけで、該ワーク台に載置したワークの垂直回転動作を行うことができるので、超低推力で該ワークを反転させることが可能となり、装置を簡単な構造かつ小型に構成することができる。
【0012】
また、請求項6記載の如く、前記ワーク台は水平方向に直線移動自在に構成され、前記複数の液体容器は、それぞれ前記ワーク台の移動方向における一側および他側に紐状体を介して接続され、前記液体を前記一方の液体容器から他方の液体容器へ移動させることにより前記ワーク台を一方向へ直線移動させ、前記他方の液体容器から一方の液体容器へ移動させることにより前記ワーク台を他方向へ直線移動させる。
これにより、停止しているワーク台が水平方向への直線移動動作を開始するだけの重量差を両液体容器間に付与するだけで、該ワーク台に載置したワークの直線移動動作を行うことができるので、超低推力で該ワークを直線移動させることが可能となり、装置を簡単な構造かつ小型に構成することができる。
【0013】
また、請求項7記載の如く、前記複数の液体容器には、それぞれ気体通路が接続され、該気体通路を通じて前記液体容器に給排される気体の圧力により、前記液体容器間での液体の移動が行われる。
これにより、液体容器内へ給排させる気体として、予め工程内に用意されている圧縮空気を用いることができるため、前記液体を液体容器間で移動させるための液体ポンプ等の大掛かりな部品を新たに備える必要もなく、物品移動装置を小型で低コストに構成することができる。
さらに、特別な動力を使用することなく液体を移動させることができ、省エネルギー化およびCO2の発生量削減を図ることができる。
【0014】
また、請求項8記載の如く、前記液体の移動は、
前記一方の液体容器内の気体を前記気体通路を通じて排出し、負圧となった一方の液体容器内に、他方の液体容器から液体を流入させることで行う。
これにより、該液体容器内に気体を供給して加圧し、その加圧力により一方の液体容器内の液体を押し出して、他方の液体容器内へ移動させるようにした場合のように、前記加圧力により液体容器が破裂して内部に貯溜される液体が外部に飛散するといったことを防止できる。
【0015】
また、請求項9記載の如く、前記液体の移動は、前記液体通路に介装される液体ポンプにより行われる。
これにより、液体の移動量を正確に把握することができ、必要最小限の液体の移動でワーク2の昇降動作を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、モータや油圧シリンダやボールネジ等のアクチュエータを用いることなく、低推力でワークの移動動作を行うことが可能となり、前記アクチュエータを用いた場合のように、隔離用柵や隔離用カバーや緊急停止装置等を設ける必要がなく、装置を簡単な構成で小型に構成することができるとともに、異常動作発生時の処置や修理・調整の作業が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明を実施するための形態を、添付の図面を用いて説明する。
【0018】
図1、図2に示す物品移動装置1は、例えばエンジン等の加工工程において、エンジンの構成部材であるシリンダブロックやシリンダヘッド等の大物重量部品等の物品をワーク2として昇降移動させるための装置であり、床面5に立設される支柱17と、該支柱17の上端部に軸受16aにより回転自在に支持されるプーリ16と、前記ワーク2を載置するワーク台11と、前記ワーク台11に接続される複数の液体容器12・13と、前記複数の液体容器12・13間を連通するための液体通路を構成するホース19と、前記液体通路19を通じて前記複数の液体容器12・13内に流入可能な液体20とを備えている。
【0019】
用いる液体20の種類は特に問わないが、入手が容易で安価であり、比重や粘性、および液体容器12・13やホース19等の各部材に対する腐食性等の観点から、本例では水を液体20として用いている。
また、前記液体容器12・13は、例えば、入手が容易で安価であり、若干の可撓性を有し、比較的良好な耐久性を備えた合成樹脂製のタンクを用いている。
【0020】
前記前記プーリ16には紐やワイヤ等の紐状体14が巻き掛けられており、該紐状体14の一側端部には錘部材21が接続され、該錘部材21の下方にはブラケット15を介して液体容器12が接続されている。
なお、前記プーリ16の外周面には溝部16b(図2参照)が形成されており、該溝部16bに前記紐状体14を巻き掛けることによって、該紐状体14がプーリ16から外れないようにしている。
【0021】
また、前記紐状体14の他側端部には前記ワーク台11が接続されており、該ワーク台11の下方にはブラケット15を介して液体容器12が接続されている。
つまり、前記紐状体14の前記プーリ16よりも一側に前記錘部材21および一方の液体容器12が配設され、前記プーリ16よりも他側に前記ワーク台11および他方の液体容器13が配設されている。
【0022】
前記支柱17の錘部材21配設側面にはリニアガイド18のレール18aが上下方向に取り付けられ、該レール18a上に摺動自在に設けられる前記リニアガイド18のスライドブロック18bには前記錘部材21が取り付けられており、該錘部材21および前記液体容器12がレール18aに沿って上下移動可能に構成されている。
また、前記支柱17のワーク台11配設側面にもリニアガイド18のレール18aが上下方向に取り付けられ、該レール18a上に摺動自在に設けられる前記リニアガイド18のスライドブロック18bには前記ワーク台11が取り付けられており、該ワーク台11および前記液体容器13がレール18aに沿って上下移動可能に構成されている。
【0023】
このように、前記ワーク台11、錘部材21、および液体容器12・13をリニアガイド18のレール18aに沿って上下移動可能に構成することで、これらの部材は水平面方向にふらつくことなくスムーズに上下移動することができる。
なお、各リニアガイド18の下端部には、スライドブロック18bがそれ以上下方へ移動しないように停止させるストッパ18cが設けられている。
【0024】
このように上下移動可能に構成されるワーク台11および錘部材21は、それぞれ前記プーリ16に巻き掛けられる紐状体14の両端部に接続されているので、例えばワーク台11および錘部材21の一方が上昇移動すると他方は下降移動し、他方が上昇移動すると一方は下降移動することとなる。
【0025】
前記液体容器12・13には、それぞれ液体給排管12a・13aが挿入されている。該液体給排管12a・13aの上端は液体容器12・13の外部に突出し、下端は液体容器12・13内に侵入しており、該液体給排管12a・13aの下端は液体容器12・13内の底面近くまで延出している。ただし、液体給排管12a・13aの下端と液体容器12・13の底面とは接しておらず、両者の間には若干の隙間を設けている。
また、前記液体容器12・13の液体給排管12a・13aが挿入される部分と、該液体給排管12a・13aとの間は気密性を保持するためにシール材によりシールされている。
【0026】
前記液体容器12における液体給排管12aの上端部と、前記液体容器13における液体球排管13aの上端部とは、前記ホース19により接続されており、これらの液体給排管12a、液体球排管13a、およびホース19により、液体容器12内と液体容器13内とを連通する液体通路が構成されている。
このように、前記液体給排管12a・13aおよびホース19により前記液体容器12と液体容器13とを連通することで、該液体容器12・13内に貯溜される液体20が前記液体給排管12a・13aおよびホース19を通じて、液体容器12から液体容器13へ、および液体容器13から液体容器12へ移動可能となっている。
【0027】
また、前記錘部材21は前記ワーク台11の重量と略同じ重量に構成され、前記液体容器12と液体容器13とは略同じ流量および略同じ容量に構成されている。
従って、該ワーク台11に前記ワーク2が載置されておらず、かつ、前記液体容器12・13に液体20が貯溜されていなくて空の状態にあるとき、または液体容器12・13に同量の液体20が貯溜されているときには、前記紐状体14におけるワーク台11側端部にかかる重量と錘部材21側端部にかかる重量とが略等しくなって、前記ワーク台11および錘部材21は昇降せずに静止状態となる。
【0028】
一方、ワーク台11に前記ワーク2が載置されておらず、かつ、前記液体容器12・13の何れか一方に、他方よりも多くの液体20が貯溜されているときには、錘部材21およびワーク台11のうち、液体容器12・13に多くの液体が貯溜されている方が重くなるため下降し、貯溜されている液体が少ない方が軽くなるため上昇することとなる。
つまり、前記プーリ16に巻き掛けられる紐状体14の一側と他側との重量バランスに応じてワーク台11が昇降するように構成されている。
【0029】
また、前記液体容器12・13には、それぞれ気体給排管12b・13bが挿入されている。
該気体給排管12b・13aの上端は液体容器12・13の外部に突出し、下端は液体容器12・13内に侵入している。この場合、前記液体給排管12a・13aの下端は液体容器12・13内の上面近くに位置していて、液体容器12・13内に貯溜される液体20に触れないように構成されている。
また、前記液体容器12・13の気体給排管12b・13bが挿入される部分と、該気体給排管12b・13bとの間は気密性を保持するためにシール材によりシールされている。
【0030】
前記気体給排管12b・13bには、それぞれエジェクタ22・22が接続され、該エジェクタ22・22は切り換えバルブ23に接続されている。
前記エジェクタ22は、圧縮空気が供給されることにより他の気体を吸引するように構成された装置であり、本例の場合は、圧縮空気の供給により、液体容器12・13内の空気を気体給排管12b・13bを通じて外部に排出するように構成されている。
【0031】
前記切り換えバルブ23は、例えばクローズド3ポジションソレノイドバルブに構成されており、ポンプ24からの圧縮空気を液体容器12・13の何れに供給するかの切り換えを行うものである。
例えば、切り換えバルブ23を第1の位置23aに切り換えると、ポンプ24からの圧縮空気が液体容器12のエジェクタ22に供給されて、該液体容器12内の空気が外部に排出され、液体容器12内は負圧となる。この場合、液体容器13は大気解放される。
また、切り換えバルブ23を第2の位置23bに切り換えると、ポンプ24からの圧縮空気が液体容器13のエジェクタ22に供給されて、該液体容器13内の空気が外部に排出され、液体容器13内は負圧となる。この場合、液体容器12は大気解放される。
【0032】
このように、容器内へ気体を給排するための気体通路となる気体給排管12b・13bを液体容器12・13に設けて、該液体容器12・13内の一方の空気を排出することで、該一方の液体容器12・13内を負圧にすることができ、大気解放されている他方の液体容器13・12内に貯溜された液体20を、負圧により生じる吸引力により吸引して一方の液体容器12・13内へ移動させることが可能となっている。
例えば、図3に示すように、液体容器13に液体20が貯溜された状態で、前記切り換えバルブ23を第1の位置23aに切り換えると、液体容器12内の空気がエジェクタ22により排出されて該液体容器12内が負圧となり、液体容器13内の液体20が液体給排管12a・13a及びホース19を通じて液体容器12内に流入し、液体容器13から液体容器12への液体20の移動が行われる。
【0033】
以上のように構成される物品移動装置1においては、前記ワーク台11上に載置したワーク2の昇降動作が次のようにして行われる。
図1に示すように、液体20の略全量がワーク台11側の液体容器13内に貯溜されている状態では、ワーク台11が設けられている側が錘部材21が設けられている側よりも重くなっているため、ワーク台11は下降して、該ワーク台11が取り付けられるリニアガイド18のスライドブロック18bがストッパ18cに係止し、上下移動範囲の最下方に位置している。逆に、ワーク台11とはプーリ16の反対側に位置している錘部材21は最上方に位置している。
【0034】
ワーク2を下方位置から上昇移動させる場合には、まず、このように最下方に位置しているワーク台11にワーク2を載置する。
ワーク台11にワーク2を載置した後は、前記切り換えバルブ23を第1の位置23aに切り換えて、液体容器12側のエジェクタ22を作動させ、該液体容器12内を負圧状態とする。
液体容器12内が負圧になると、その負圧により生じる吸引力により、液体容器13内に貯溜される液体20が液体給排管13a、ホース19、および液体給排管12aを順に通じて移動し、液体容器12内に流入する。
液体容器12内の負圧状態はエジェクタ22の作動中は維持されるので、液体容器13内の液体20の略全量が液体容器12内に移動するまでの間前記エジェクタ22の作動を継続させておく。
【0035】
前記液体容器13から液体容器12に移動される液体20の重量は、ワーク2の重量よりも若干重い重量となるように設定されており、液体20が液体容器13から液体容器12へ移動された後は、前記紐状体14のプーリ16よりワーク台11側にかかる重量よりも、錘部材21側にかかる重量の方が重くなる。
これにより、最上方に位置している錘部材21は液体容器13の重量により下降し、逆に最下方に位置しているワーク台11は上昇する。その後、図4に示すように、錘部材21が最下方にまで達して前記ストッパ18cに当接して停止し、ワーク台11は最上方位置で停止する。
このように、液体容器13から液体容器12へ液体20を移動させることで、ワーク台11を最下方位置から最上方位置へ上昇移動させるようにしている。
【0036】
ここで、前述の「液体容器13から液体容器12に移動される液体20の重量が、ワーク2の重量よりも若干重い重量である」ということは、液体容器13から移動されて液体容器12に貯溜される液体20の重量が、ワーク2の重量よりも、ワーク台11(および錘部材21)が停止している状態から、該ワーク台11に上昇動作を開始させる(および錘部材21に下降動作を開始させる)ことができるだけの重量だけ重くなっているということである。
本例の場合は、例えば、ワーク2の重量が10kgwであった場合には液体容器12に貯溜される液体20の重量が10.5kgwとなるように設定し、ワーク2の重量が12kgwであった場合には液体容器12に貯溜される液体20の重量が12.5kgwとなるように設定している。
【0037】
一方、図4に示すように、液体容器12内に液体20が貯溜されるとともに、液体容器13が空である場合には、ワーク2が載置されたワーク台11は最上方に位置しているが、その最上方に位置しているワーク台11を下降動作させる場合には、
まず、前記切り換えバルブ23を第2の位置23bに切り換えて、液体容器13側のエジェクタ22を作動させ、該液体容器13内を負圧状態とする。
液体容器13内が負圧になると、その負圧により生じる吸引力により、液体容器12内に貯溜される液体20が液体給排管12a、ホース19、および液体給排管13aを順に通じて移動し、液体容器13内に流入する。
【0038】
液体20の液体容器13内への流入開始後、該液体容器13へ所定の重量の液体が流入して、前記紐状体14のプーリ16よりワーク台11側にかかる重量が、錘部材21側にかかる重量よりも重くなると、最上方に位置しているワーク台11が下降を開始し、最下方に位置している錘部材21が上昇を開始する。
その後、ワーク台11が最下方にまで達して前記ストッパ18cに当接して停止し、錘部材21が最上方位置で停止する。
【0039】
なお、液体20が液体容器13内へ流入してワーク台11が下降を開始した後は、液体容器13内を負圧状態としているエジェクタ22の動作を停止して、該液体容器13内への液体20の流入を停止させてもよく、また、ワーク台11の下降開始後も前記エジェクタ22の動作を継続して、液体容器12内の液体20の略全量を液体容器13内へ流入させてもよい。
【0040】
以上のように、本物品移動装置1においては、液体20を液体容器12から液体容器13へ、または液体容器13から液体容器12へ移動させることにより、ワーク台11上に載置したワーク2を昇降動作させるようにしている。
このように、液体20の移動によりプーリ16のワーク台11側の重量と錘部材21側の重量とのバランスを変化させて、プーリ16の両側の重量差によりワーク2を昇降動作させるように構成しているので、モータや油圧シリンダやボールネジ等のアクチュエータを用いることなく、低推力でワーク2の上下移動動作を行うことが可能となる。
これにより、物品移動装置1には、前記アクチュエータを用いた場合のように、隔離用柵や隔離用カバーや緊急停止装置等を設ける必要がなく、装置を簡単な構成で小型に構成することができる。
【0041】
特に、本物品移動装置1は、停止しているワーク台11が上下移動動作を開始するだけの重量差をプーリ16の両側に付与するだけで、該ワーク台11に載置したワーク2昇降を行うことができるので、超低推力で該ワーク2を昇降させることが可能となり、例えば物品移動装置1に異常が生じたときには、小さな力で容易にワーク2の昇降動作を停止させることが可能であり、装置の取り扱いが容易となっている。
【0042】
また、物品移動装置1においては、プーリ16のワーク台11が配置される側とは反対の側に、該ワーク台11と略同等の重量を有する錘部材21を設けて、ワーク台11にワーク2を載置していないときのプーリ16の両側の重量バランスを同じにしているので、ワーク2を上昇動作させるために必要な前記液体容器12内に貯溜する液体20は、ワーク2の重量に若干の重量(昇降動作を開始するために必要な重量)を加えた重量の液体20でよく、液体容器12・13に貯溜する液体20の量を少なくすることができる。
これにより、物品移動装置1を全体的に小型化することができるとともに、前記液体容器12・13間での液体20の移動時間を短縮させることができ、工程のラインタクトを満足するワーク2の昇降動作を行うことができる。
【0043】
また、液体容器12・13間での液体20の移動は、前記気体給排管12b・13bを通じて前記液体容器12・13内へ気体を給排させることにより行っており、液体容器12・13内へ給排させる気体は、予め工程内に用意されている圧縮空気を用いることができるため、前記液体20を液体容器12・13間で移動させるための液体ポンプ等の大掛かりな部品を新たに備える必要もなく、物品移動装置1を小型で低コストに構成することができる。
さらに、特別な動力を使用することなく液体を移動させることができ、省エネルギー化およびCO2の発生量削減を図ることができる。
【0044】
特に、本例の場合は、エジェクタ22を用いて液体容器12・13内の気体を外部に排出して、気体を排出した液体容器12・13内へ液体20を吸引するように構成しているので、該液体容器12・13内に気体を供給して加圧し、その加圧力により一方の液体容器12・13内の液体20を押し出して、他方の液体容器13・12内へ移動させるようにした場合のように、前記加圧力により液体容器12・13が破裂して内部に貯溜される液体20が外部に飛散するといったこともない。
【0045】
ただし、前記ホース19等、液体容器12・13間における液体20の通路の途中に液体ポンプを設けて、該液体ポンプにより液体容器12・13間での液体20の移動を直接行うように構成することも可能である。
このように、液体ポンプにより直接液体20を移動させるように構成することで、液体20の移動量を正確に把握することができ、必要最小限の液体20の移動でワーク2の昇降動作を行うことが可能となる。
【0046】
なお、本例においては、ワーク台11に載置して昇降移動させるワーク2として、エンジンのシリンダブロックやシリンダヘッド等を適用しているが、トランスミッションを構成するミッションケース等、他の部品を適用することもできる。
【0047】
また、前記物品移動装置1は、次のように、ワーク2を水平方向へ回転移動させるように構成することもできる。
例えば、図5に示す物品移動装置30は、工程の第1ラインL1を搬送されてきたワーク2を、回転軸33を中心にして水平方向に回転自在に支持されるワーク台31により、水平方向に略90°回転移動させる装置であり、物品移動装置30により回転移動されたワーク2は、前記第1ラインL1と略直交する方向へ進行する第2ラインL2に受け継がれていくように構成されている。
【0048】
図6〜図8に示すように、前記ワーク台31は、回転軸33により支持台32に水平方向へ回転自在に支持されている。
前記ワーク台31の裏面の2箇所には、フック31a・31bが固設されており、該フック31a・31bに、それぞれ紐状体34a・34bを介して液体容器35a・35bが接続されている。
前記液体容器35a・35bが接続されている前記フック31a・31bは、ワーク台31裏面における回転軸33から半径方向へ所定寸法だけ離れており、該フック31a・31bの回転方向における位相が180°異なる箇所に配置されている。
【0049】
また、前記ワーク台31の一側方向には、前記支持台32に支持される上部プーリ37a・37bが所定の間隔を隔てて設けられており、該上部プーリ37a・37bの下方には、それぞれ下部プーリ38a・38bが設けられている。
前記上部プーリ37aおよび下部プーリ38aには、前記フック31aからワーク台31の一側方向へ略水平方向に延出する紐状体34aが巻き掛けられており、該紐状体34aの先端部は下方に延出して液体容器35aに接続されている。
同様に、前記上部プーリ37bおよび下部プーリ38bには、前記フック31bからワーク台31の一側方向へ略水平方向に延出する紐状体34bが巻き掛けられており、該紐状体34bの先端部は下方に延出して液体容器35bに接続されている。
【0050】
また、前記液体容器35aと液体容器35bとは、前述の液体容器12・13の場合と同様に、液体給排管12a・13aおよびホース19により連通されている。
さらに、各液体容器35a・35bにはそれぞれ前記気体給排管12b・13bを通じてエジェクタ22・22が接続されており、該液体容器35a・35b内の空気を外部に排出可能となっている。
【0051】
このように、ワーク台31と液体容器35a・35bは、それぞれ上部プーリ37a・37bおよび下部プーリ38a・38bに巻き掛けられる紐状体34a・34bにより接続されており、該液体容器35a・35bが上下移動することにより前記ワーク台31が水平方向に回転移動するように構成されている。
【0052】
例えば、図6〜図8においては、ワーク台31が最も右に回転した姿勢にある状態の物品移動装置30を示しており、この状態では、前記フック31aが前記上部プーリ37aから最も離れた箇所に位置しており、前記フック31bが前記上部プーリ37bから最も近づいた箇所に位置している。
また、この状態においては、前記フック31aに接続される液体容器35a内には液体20が貯溜されておらず、該液体容器35aは上下移動範囲の最上方に位置しており、前記フック31bに接続される液体容器35bには所定量の液体20が貯溜されていて、該液体容器35bは上下移動範囲の最下方に位置している。
【0053】
この状態から、前記液体容器35aのエジェクタ22を作動させて該液体容器35a内を負圧にすると、液体容器35b内に貯溜される液体20が移動して液体容器35a内へ流入することとなる。
液体容器35a内に液体20が流入して、該液体容器35a内に貯溜される液体20の重量が、液体容器35b内に貯溜される液体20の重量よりも所定重量だけ大きくなると、ワーク台31のフック31aにかかる一側方向への力がフック31bにかかる一側方向への力よりも大きくなって、該ワーク台31は回転軸33を中心に左回転を開始し、
液体容器35aが下方へ移動するとともに、液体容器35bが上方へ移動する。
【0054】
つまり、液体容器35a内の液体20の重量が、液体容器35b内の液体20の重量よりも大きくなると、前記液体容器35bが接続されるフック31bがワーク台31の一側方向へ引っ張られる力よりも、前記液体容器35aが接続されるフック31aがワーク台31の一側方向へ引っ張られる力が大きくなって、前記フック31aと上部プーリ37aとが近づく方向(前記フック31bと上部プーリ37bとが離れる方向)へワーク台31が回転することとなる。
なお、ワーク台31の回転は、液体容器35aが最下方位置に達するとともに、液体容器35bが最上方位置に達すると停止するが、本例の場合は、ワーク台31の回転角度が略90°となるように構成されている。
【0055】
また、液体容器35aが最下方に位置し、液体容器35bが最上方に位置していて、ワーク台31が最も左に回転した姿勢にある状態で、液体容器35aから液体容器35bへ液体20を移動させ、該液体容器35bの液体20の重量が、液体容器35aの液体20の重量よりも所定重量だけ大きくなると、ワーク台31のフック31bにかかる一側方向への力がフック31aにかかる一側方向への力よりも大きくなって、該ワーク台31は回転軸33を中心に右回転する。
【0056】
このように、物品移動装置30を、ワーク台31が水平方向に回転するように構成することで、該物品移動装置30を、工程内におけるライン間等においてワーク2を方向変換させる装置として用いることができ、該ワーク2を低推力で方向転換させることができて、装置を簡単な構造かつ小型に構成することができる。
【0057】
また、前記物品移動装置1は、次のように、ワーク2を垂直方向へ回転移動させるように構成することもできる。
例えば、図9に示す物品移動装置40は、工程の第1ラインL1を搬送されてきたワーク2を、回転軸43を中心にして垂直方向に回転自在に支持されるワーク台41により、垂直方向に略180°回転移動させる(つまりワーク2を反転させる)装置であり、物品移動装置40により回転移動されたワーク2は、第1ラインL1の後工程となる第2ラインL2に受け継がれていくように構成されている。
【0058】
図10〜図12に示すように、前記ワーク台41は、ワーク2の上下面を支持する上部台41aおよび下部台41b、ならびに、該上下部台41a・41bの前後端部をそれぞれ支持する円環状部材である前回転台41cおよび後回転台41dにて構成されており、該前後回転台41c・41dは、支持台42に取り付けられる支持ローラ46・46によりそれぞれ支持されている。
支持ローラ46・46に支持される前後回転台41c・41dは、回転軸43を中心にして略垂直方向に回転可能に構成されている。
【0059】
図11に示すように、前記前回転台41cの外周には全周にわたって溝部41eが形成されており、該溝部41eには紐状体44aが巻き掛けられている。
紐状体44aの基端部は前回転台41cの左右一側端部に接続され、該紐状体44aは基端部から前回転台41c外周の下側の略半周にわたって巻き掛けられた後、前第1プーリ47aおよび前第2プーリ48aに巻き掛けられており、紐状体44aの先端部は前記前第2プーリ48aよりも高位置に固定されている。
また、前記前第2プーリ48aには液体容器45aが吊り下げられている。
【0060】
また、図12に示すように、前記後回転台41dの外周には全周にわたって溝部41eが形成されており、該溝部41eには紐状体44bが巻き掛けられている。
紐状体44bの基端部は後回転台41dの左右一側端部に接続され、該紐状体44bは基端部から後回転台41d外周の上側の略半周にわたって巻き掛けられた後、後プーリ48bに巻き掛けられており、紐状体44bの先端部は前記後プーリ48bよりも高位置に固定されている。
また、前記後プーリ48bには液体容器45bが吊り下げられている。
なお、前回転台41cに接続される前記紐状体44aの基端部と、後回転台41dに接続される前記紐状体44bの基端部とは、ワーク台41の左右方向の同じ側に接続されている。
【0061】
また、前記液体容器45aと液体容器45bとは、前述の液体容器12・13の場合と同様に、液体給排管12a・13aおよびホース19により連通されている。
さらに、各液体容器45a・45bにはそれぞれ前記気体給排管12b・13bを通じてエジェクタ22・22が接続されており、該液体容器45a・45b内の空気を外部に排出可能となっている。
【0062】
このように、ワーク台41の前回転台41cと液体容器45aは、前第1プーリ47aおよび前第2プーリ48aに巻き掛けられる紐状体44aにより接続され、ワーク台41の後回転台41dと液体容器45bは、後プーリ48bに巻き掛けられる紐状体44bにより接続されており、該液体容器45a・45bが上下移動することにより前記ワーク台41が回転軸43を中心として垂直方向に回転移動するように構成されている。
【0063】
例えば、図10〜図12においては、ワーク台41が、上部台41aが上方に位置し、下部台41bが下方に位置する姿勢にある状態の物品移動装置40を示しており、この状態では、前回転台41c側の液体容器45a内に液体20が貯溜されて、該液体容器45aは上下移動する範囲の最下方に位置している。また、後回転台41d側の液体容器45b内には液体20が貯溜されておらず、該液体容器45bは上下移動する範囲の最上方に位置している。
【0064】
ワーク台41には、紐状体44aを介して前回転台41cに接続される液体容器45aの重量により、該紐状体44aの前回転台41cに対する巻き付けが解かれる方向(図11における矢印で示す方向)へ回転する力がかかるとともに、紐状体44bを介して後回転台41dに接続される液体容器45bの重量により、該紐状体44bの後回転台41dに対する巻き付けが解かれる方向(図12における矢印で示す方向であって、前回転台41cにかかる方向とは逆の方向)へ回転する力がかかっているが、図10〜図12に示す状態では、液体容器45a内に貯溜される液体20の重量分だけ前回転台41cへかかる回転方向の力が大きいため、ワーク台41は回転範囲内において最も左に回転した状態(図11に示す状態)で停止している。
【0065】
この状態から、前記液体容器45bのエジェクタ22を作動させて該液体容器45b内を負圧にすると、液体容器45a内に貯溜される液体20が移動して液体容器45b内へ流入することとなる。
液体容器45b内に液体20が流入して、該液体容器45b内に貯溜される液体20の重量が、液体容器45a内に貯溜される液体20の重量よりも所定重量だけ大きくなると、液体容器45aの重量により前回転台41cにかかる回転方向の力よりも、液体容器45bの重量により後回転台41dにかかる回転方向の力が大きくなって、ワーク台41は右方向(紐状体44aが前回転台41cに巻き付く方向、かつ紐状体44bが後回転台41dから巻き解かれる方向)に回転する。
【0066】
なお、ワーク台41の回転は、液体容器45bが最下方位置に達するとともに、液体容器45aが最上方位置に達すると停止するが、本例の場合は、ワーク台41の回転角度が略180°となるように構成されている。
従って、ワーク台41が、図10〜図12に示す状態から右回転した場合は、上部台41aが下方に位置するとともに、下部台41bが上方に位置する姿勢となった時点で回転を停止する。
【0067】
このように、物品移動装置40を、ワーク台41が垂直方向に回転するように構成することで、該物品移動装置40を、工程内におけるライン間等においてワーク2の上下面を反転させる装置として用いることができ、該ワーク2を低推力で上下反転させることができて、装置を簡単な構造かつ小型に構成することができる。
【0068】
また、前記物品移動装置1は、次のように、ワーク2を水平方向へ直線移動させるように構成することもできる。
例えば、図13に示す物品移動装置50は、ワーク2を載置するワーク台51が、リニアガイド58を介して支持台52上に直線移動可能に支持されている。
該リニアガイド58はレール58aと該レール58a上に摺動自在に設けられるスライドブロック58bとを備えており、レール58aを支持台52上面に取り付け、スライドブロック58bをワーク台51に取り付けることで、該ワーク台51を支持台52上でスムーズに直線移動可能としている。
【0069】
前記ワーク台51における移動方向の一端部には紐状体54aを介して液体容器55aが接続されており、移動方向の他端部には紐状体54bを介して液体容器55bが接続されている。
前記紐状体54aは、該ワーク台51から移動方向一側へ向けて略水平方向へ延出され、前記支持台52に支持されるプーリ57aに巻き掛けられた後に下方へ延出して、その先端部には液体容器55aが接続されている。
また、前記紐状体54bは、該ワーク台51から移動方向他側へ向けて略水平方向へ延出され、前記支持台52に支持されるプーリ57bに巻き掛けられた後に下方へ延出して、その先端部には液体容器55bが接続されている。
【0070】
また、前記液体容器55aと液体容器55bとは、前述の液体容器12・13の場合と同様に、液体給排管12a・13aおよびホース19により連通されている。
さらに、各液体容器55a・55bにはそれぞれ前記気体給排管12b・13bを通じてエジェクタ22・22が接続されており、該液体容器55a・55b内の空気を外部に排出可能となっている。
【0071】
このように、ワーク台51と液体容器55a・55bは、それぞれプーリ57a・57bに巻き掛けられる紐状体54a・44bにより接続されており、該液体容器55a・55bが上下移動することにより前記ワーク台51が水平方向に直線移動するように構成されている。
【0072】
例えば、図13においては、ワーク台51が最も左方(移動方向における一端部)に位置した姿勢にある状態の物品移動装置50を示しており、この状態においては、
ワーク台51の一端部に接続される液体容器55a内には所定量の液体20が貯溜されていて、該液体容器55aは上下移動範囲の最下方に位置しており、ワーク台51の他端部に接続される液体容器55b内には液体20が貯溜されておらず、該液体容器55bは上下移動範囲の最上方に位置している。
【0073】
この状態から、前記液体容器55bのエジェクタ22を作動させて該液体容器55b内を負圧にすると、液体容器55a内に貯溜される液体20が移動して液体容器55b内へ流入することとなる。
液体容器55b内に液体20が流入して、該液体容器55b内に貯溜される液体20の重量が、液体容器55a内に貯溜される液体20の重量よりも所定重量だけ大きくなると、液体容器55bの重量によりワーク台51にかかる移動方向における他側への力が、液体容器55aの重量によりワーク台51にかかる移動方向における一側への力よりも大きくなって、該ワーク台51は移動方向における他側へ移動を開始し、液体容器55bが下方へ移動するとともに、液体容器55aが上方へ移動する。
【0074】
つまり、前記ワーク台51は、液体容器55aにより移動方向の一側に引っ張られ、液体容器55bにより移動方向の他側に引っ張られているが、液体容器55aおよび液体容器55bのうち、内部に貯溜される液体20の重量が多い側の引っ張り力が大きくなるため、該ワーク台51は内部に貯溜される液体20の重量が多い液体容器55a・55bの側に直線移動することとなる。
【0075】
このように、物品移動装置50を、ワーク台51が水平方向に直線移動するように構成することで、該物品移動装置50を、工程内におけるライン間等においてワーク2を直線移動させる装置として用いることができ、該ワーク2を低推力で直線移動させることができて、装置を簡単な構造かつ小型に構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】ワーク台が設置された側の液体容器に液体が貯溜された状態の物品移動装置を示す正面図である。
【図2】ワーク台が設置された側の液体容器に液体が貯溜された状態の物品移動装置を示す側面図である。
【図3】複数の液体容器の連通状態、および書く液体容器への気体の給排機構を示す正面図である。
【図4】ワーク台が設置された側とは反対側の液体容器に液体が貯溜された状態の物品移動装置を示す正面図である。
【図5】ワークを方向転換させるように構成した物品移動装置を示す概略平面図である。
【図6】ワークを方向転換させるように構成した物品移動装置を示す側面断面図である。
【図7】ワークを方向転換させるように構成した物品移動装置を示す正面断面図である。
【図8】ワークを方向転換させるように構成した物品移動装置を示す平面図である。
【図9】ワークを上下反転させるように構成した物品移動装置を示す概略平面図である。
【図10】ワークを上下反転させるように構成した物品移動装置を示す側面断面図である。
【図11】ワークを上下反転させるように構成した物品移動装置を示す正面図である。
【図12】ワークを上下反転させるように構成した物品移動装置を示す背面図である。
【図13】ワークを水平方向に直線移動させるように構成した物品移動装置を示す側面図である。
【符号の説明】
【0077】
1 物品移動装置
2 ワーク
11 ワーク台
12・13 液体容器
12a・13a 液体給排管
12b・13b 気体給排管
14 紐状体
15 ブラケット
16 プーリ
19 ホース
21 錘部材
22 エジェクタ
23 切り換えバルブ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を載置するワーク台と、
前記ワーク台に接続される複数の液体容器と、
前記複数の液体容器間を連通する液体通路と、
前記液体通路を通じて前記複数の液体容器間を移動可能な液体とを備え、
前記液体を前記一方の液体容器から他方の液体容器へ、または他方の液体容器から一方の液体容器へ移動させることにより、前記ワーク台を移動させる、
ことを特徴とする物品移動装置。
【請求項2】
前記一方の液体容器と前記ワーク台が、プーリに巻き掛けられる紐状体を介して接続され、
前記紐状体の前記プーリよりも一側に前記一方の液体容器が配設され、前記プーリよりも他側に前記他方の液体容器および前記ワーク台が配設されており、
前記液体を前記一方の液体容器から他方の液体容器へ移動させることにより、前記ワーク台を下方移動させ、前記液体を前記他方の液体容器から一方の液体容器へ移動させることにより、前記ワーク台を上方移動させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の物品移動装置。
【請求項3】
前記プーリの一側には、さらに前記ワーク台と同等の重量を有する錘部材が配設される、
ことを特徴とする請求項2に記載の物品移動装置。
【請求項4】
前記ワーク台は水平方向に回転自在に支持されており、
前記複数の液体容器は、それぞれ前記ワーク台の回転中心から半径方向へ所定寸法離れた位置に紐状体を介して接続され、
前記液体を前記一方の液体容器から他方の液体容器へ移動させることにより前記ワーク台を一方向へ回転移動させ、前記他方の液体容器から一方の液体容器へ移動させることにより前記ワーク台を他方向へ回転移動させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の物品移動装置。
【請求項5】
前記ワーク台は垂直方向に回転自在に構成され、
前記複数の液体容器は、それぞれ前記ワーク台の回転中心から半径方向へ所定寸法離れた位置に紐状体を介して接続され、
前記液体を前記一方の液体容器から他方の液体容器へ移動させることにより前記ワーク台を一方向へ回転移動させ、前記他方の液体容器から一方の液体容器へ移動させることにより前記ワーク台を他方向へ回転移動させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の物品移動装置。
【請求項6】
前記ワーク台は水平方向に直線移動自在に構成され、
前記複数の液体容器は、それぞれ前記ワーク台の移動方向における一側および他側に紐状体を介して接続され、
前記液体を前記一方の液体容器から他方の液体容器へ移動させることにより前記ワーク台を一方向へ直線移動させ、前記他方の液体容器から一方の液体容器へ移動させることにより前記ワーク台を他方向へ直線移動させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の物品移動装置。
【請求項7】
前記複数の液体容器には、それぞれ気体通路が接続され、該気体通路を通じて前記液体容器に給排される気体の圧力により、前記液体容器間での液体の移動が行われる、
ことを特徴とする請求項2〜請求項6の何れかに記載の物品移動装置。
【請求項8】
前記液体の移動は、
前記一方の液体容器内の気体を前記気体通路を通じて排出し、負圧となった一方の液体容器内に、他方の液体容器から液体を流入させることで行う、
ことを特徴とする請求項7に記載の物品移動装置。
【請求項9】
前記液体の移動は、
前記液体通路に介装される液体ポンプにより行われる、
ことを特徴とする請求項7に記載の物品移動装置。
【請求項1】
物品を載置するワーク台と、
前記ワーク台に接続される複数の液体容器と、
前記複数の液体容器間を連通する液体通路と、
前記液体通路を通じて前記複数の液体容器間を移動可能な液体とを備え、
前記液体を前記一方の液体容器から他方の液体容器へ、または他方の液体容器から一方の液体容器へ移動させることにより、前記ワーク台を移動させる、
ことを特徴とする物品移動装置。
【請求項2】
前記一方の液体容器と前記ワーク台が、プーリに巻き掛けられる紐状体を介して接続され、
前記紐状体の前記プーリよりも一側に前記一方の液体容器が配設され、前記プーリよりも他側に前記他方の液体容器および前記ワーク台が配設されており、
前記液体を前記一方の液体容器から他方の液体容器へ移動させることにより、前記ワーク台を下方移動させ、前記液体を前記他方の液体容器から一方の液体容器へ移動させることにより、前記ワーク台を上方移動させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の物品移動装置。
【請求項3】
前記プーリの一側には、さらに前記ワーク台と同等の重量を有する錘部材が配設される、
ことを特徴とする請求項2に記載の物品移動装置。
【請求項4】
前記ワーク台は水平方向に回転自在に支持されており、
前記複数の液体容器は、それぞれ前記ワーク台の回転中心から半径方向へ所定寸法離れた位置に紐状体を介して接続され、
前記液体を前記一方の液体容器から他方の液体容器へ移動させることにより前記ワーク台を一方向へ回転移動させ、前記他方の液体容器から一方の液体容器へ移動させることにより前記ワーク台を他方向へ回転移動させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の物品移動装置。
【請求項5】
前記ワーク台は垂直方向に回転自在に構成され、
前記複数の液体容器は、それぞれ前記ワーク台の回転中心から半径方向へ所定寸法離れた位置に紐状体を介して接続され、
前記液体を前記一方の液体容器から他方の液体容器へ移動させることにより前記ワーク台を一方向へ回転移動させ、前記他方の液体容器から一方の液体容器へ移動させることにより前記ワーク台を他方向へ回転移動させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の物品移動装置。
【請求項6】
前記ワーク台は水平方向に直線移動自在に構成され、
前記複数の液体容器は、それぞれ前記ワーク台の移動方向における一側および他側に紐状体を介して接続され、
前記液体を前記一方の液体容器から他方の液体容器へ移動させることにより前記ワーク台を一方向へ直線移動させ、前記他方の液体容器から一方の液体容器へ移動させることにより前記ワーク台を他方向へ直線移動させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の物品移動装置。
【請求項7】
前記複数の液体容器には、それぞれ気体通路が接続され、該気体通路を通じて前記液体容器に給排される気体の圧力により、前記液体容器間での液体の移動が行われる、
ことを特徴とする請求項2〜請求項6の何れかに記載の物品移動装置。
【請求項8】
前記液体の移動は、
前記一方の液体容器内の気体を前記気体通路を通じて排出し、負圧となった一方の液体容器内に、他方の液体容器から液体を流入させることで行う、
ことを特徴とする請求項7に記載の物品移動装置。
【請求項9】
前記液体の移動は、
前記液体通路に介装される液体ポンプにより行われる、
ことを特徴とする請求項7に記載の物品移動装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−230836(P2008−230836A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−76755(P2007−76755)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(506169805)有限会社オカテツ (3)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(506169805)有限会社オカテツ (3)
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