説明

物品移送装置

【構成】物品を把持する把持機構を水平方向に移動可能に構成し、この把持機構をホルダ2の移送ラインL1から水平方向にずらした移送ラインL2上で物品に対する処理を行うことを特徴とする。また、前記移送ラインL2上で物品のみを排出することにより、ホルダと物品とを分離排出することを特徴とする。
【効果】物品の把持機構をホルダの移送ラインから水平方向にずらした状態において処理を行うため、物品の底面に対する印字や検査等の処理作業がやり易く、その作業性が大幅に改善される。前記把持機構の水平方向の位置を制御して移送ラインL2上で物品のみを排出することにより不良品や特定品種の物品を選択的に排出することができる。移送の途中で物品の一部を排出してもホルダに関する循環移送ライン中のホルダ総数には変化が生じないので、連続運転のためにホルダを補給する手間はいらない。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、物品に対する種々の処理ラインにおいて用いられる物品移送装置に関し、より詳しくは物品の下部を収容した状態において物品を移送するホルダを用いた物品移送装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、この種のホルダを用いた物品移送装置において、その作業上の流れに応じて物品をホルダから抜取る場合には、ホルダを支持する支持機構と物品を把持する把持機構との間に相対的な移動を起こして抜取ることが広く行われている(実開昭62−132910号公報、実開平1−166621号公報)。しかしながら、従来の移送装置においては、ホルダから抜取った物品の移送ラインが前記ホルダの移送ラインの上方に位置していたため、特に物品の底面に対する印字や検査等の処理作業を行う際にそのホルダが作業の支障になった。このため、従来においては、物品の底面に対して印字等を行う場合にはホルダの底部に形成した開口部を介して処理したり、下流側に別個のラインを設置して処理したりしていた。また、従来の移送装置においても、物品とホルダとを別々に分離した状態で排出することはできるが、不良品を排除したり、特定の種類の物品を選択的に排出する部分的な分離排出には不向きであった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような従来の事情に鑑みてなされたもので、物品の底面に対する印字や検査などの処理作業がし易く、また不良品や特定品種の物品に対する選択的な排出のための部分的な分離排出にも適合し得る物品移送装置を提供することを目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、物品の下部を収容して該物品を移送するホルダを支持する支持機構と、前記物品を把持する把持機構との相対的な移動により、前記ホルダから前記物品を抜取るとともに、前記把持機構を水平方向に移動可能に構成することにより、該把持機構を前記ホルダの移送ラインから水平方向にずらした状態において前記物品に対する処理を行うことを特徴とする。また、請求項2記載の発明は、物品の下部を収容して該物品を移送するホルダを支持する支持機構と、前記物品を把持する把持機構との相対的な移動により、前記ホルダから前記物品を抜取るとともに、前記把持機構を水平方向に移動可能に構成し、該把持機構を前記ホルダの移送ラインから水平方向にずらした状態において前記物品のみを排出することにより、前記ホルダと物品とを分離排出することを特徴とする。
【0005】
【作用】以上のように、本発明においては、物品の把持機構を水平方向に移動することにより、把持機構をホルダの移送ラインから水平方向にずらした状態において物品に対する処理を行うため、物品の底面に対する印字や検査等の処理作業がやり易い。また、物品の把持機構を水平方向に移動することにより、把持機構をホルダの移送ラインから水平方向にずらした状態において物品のみを排出することによってホルダと分離排出するため、前記把持機構の水平方向の位置を制御することにより不良品や特定品種の物品を選択的に排出することができる。また、その分離排出が移送の途中で所定の物品のみを排出し、しかる後に空のホルダと共に残りの物品をホルダに収容して排出するという順序で行われるため、ホルダの循環移送ライン中のホルダ総数には変化が生じない。
【0006】
【実施例】以下、図面を用いて本発明の実施例に関して説明する。図1は本発明の一実施例における全体のレイアウトを示した平面図である。図中、1は導入ラインを構成するホルダコンベヤで、移送の対象である容器等の物品は、その下部を該ホルダコンベヤ1上のホルダ2に収容された状態で移送される。この物品を収容したホルダ2はストッパ機構3によってタイミングをとりながらスターホイール4を介してロータリ形の物品処理装置5に供給される。物品処理装置5においては、後述のように、前記物品は、該物品を把持する把持機構とホルダ2を支持する支持機構との相対的な移動によりホルダ2から抜取られ、把持状態のままホルダ2の移送ラインL1から水平方向にずれた移送ラインL2に沿って移送されながら各種の処理が行われることになる。この物品の移送ラインL2は、所定の処理が終了する部位より下流側に分岐点Bが形成されており、前記ホルダ2の移送ラインL1から水平方向にずれたままの状態で排出ホイール6に接続する移送ラインL3と、同移送ラインL1の上方に移行する移送ラインL4とに分岐される。なお、図中、7は底面用ラベラ、8はインクジェット装置、9は読取り用カメラ、10は品種チェック用バーコードリーダを示す。
【0007】しかして、前記物品に対する所定の処理作業は、物品が前記移送ラインL2に沿って移送される間に行われ、分岐点Bに到達すると、移送ラインL3と移送ラインL4に振り分けられることになる。すなわち、不良品や特定品種の物品は選択的に移送ラインL3側に移送され、残りの物品は移送ラインL4に移送される。移送ラインL3側に移送された物品は、さらに排出ホイール6からの排出タイミングを前記読取り用カメラ9やバーコードリーダ10からの出力信号に応じて制御することにより、不良品の場合は蓄積部11に接続する排出コンベヤ12側に、また特定品種として選択された物品は他の処理装置等に接続する排出コンベヤ13側に振り分けられる。また、移送ラインL4側に移送された物品は、前記ホルダ2の移送ラインL1の真上に戻り、しかる後、前記物品の把持機構とホルダ2の支持機構との相対的な移動による下降により下部をホルダ2内に収容され、その収容状態でホルダ2と共にスターホイール14を介して他の処理装置等に接続する排出コンベヤ15に排出される。
【0008】次に、図2に基づいて本物品移送装置の動作に関して具体的に説明する。図2は本発明をロータリ形の物品処理装置に適用した一実施例の要部を示した縦断面図である。図中、16は物品処理装置5の回転軸部を示したもので、この回転軸部16の下部には図示しない駆動ギヤと噛合するギヤを周囲に形成した駆動円板17が固定されており、この駆動円板17を介してその回転軸部16が回転駆動されるように構成されている。この駆動円板17の周辺部には、容器等の物品18の下部を収容して移送する各ホルダ2に対応して、そのホルダ2の支持機構を構成する支持台19が軸部20を介して摺動自在に支持されており、図示しない下方に配設される公知の昇降カム機構等によって回転角に応じて昇降するように構成されている。また、前記回転軸部16の上部には支持用円板21が固定されており、この支持用円板21を介して前記物品18を把持する把持機構22が水平方向に移動可能に支持されている。なお、図3はその把持機構22の具体例を例示したもので、それぞれ支軸23に回動自在に支持された適宜数の把持片24を有しており、(A)はそれらの各把持片24を広げた把持前の状態、(B)は各把持片24を縮めた把持動作時の状態を示したものである。この把持片24の作動制御は、作動シリンダ25に対する加圧流体の供給制御を介して行われ、その流体圧でピストン26を作動し、テーパー状部材27を上下駆動して各把持片24の上端部に付設されたローラ28間に挿入離脱することによって行われる。
【0009】次に、前記把持機構22の支持用円板21に対する支持機構に関してより具体的に説明する。図2に示すように、把持機構22は支持用円板21に対して水平方向に摺動自在に支持された水平移動部材29の先端部に昇降自在に支持されている。図中、30はその水平移動部材29の摺動用軸受け部、31は把持機構22の昇降用作動シリンダである。また、前記水平移動部材29の内側端部には、装置本体の固定側に固着されたカム板32に形成されたカム溝に遊嵌するカムフォロア33が装着されており、そのカム溝に誘導されて前記把持機構22が水平方向に移動するように構成されている。このカム溝Cは、図4に示すように、前記物品の移送ラインL2の軌跡と一致するように形成され、前記分岐点Bにおいて、前述の移送ラインL3及び移送ラインL4に合わせて分岐されている。図中、34はこの分岐点Bにおける進路を制御するための制御カムで、移送ラインL3側を選択するためのカム面35及び移送ラインL4側を選択するためのカム面36を有しており、図5に示す作動シリンダ37による摺動によって制御用カムフォロア38を選択的に接触させることにより進路を制御できるように構成されている。
【0010】しかして、前記駆動円板17を介して回転軸部16が回転駆動されると、その回転角に応じて、前記昇降用作動シリンダ31及び把持片24駆動用の作動シリンダ25に対する加圧流体の供給制御が行われ、ホルダ2に収容されて移送される物品18に対する前記把持機構22による把持作業が行われる。しかる後、図示しない公知の昇降カム機構等によりホルダ2の支持機構を構成する前記支持台19が軸部20を介して下降され、あるいは昇降用作動シリンダ31により把持機構22が上昇して、物品18がホルダ2から抜取られる。しかる後、今度は前記支持用円板21に対して水平方向に摺動自在に支持された水平移動部材29がカム板32に形成されたカム溝Cに遊嵌するカムフォロア33に誘導されて水平方向に移動し、把持機構22、すなわち物品18が移送ラインL2に沿って移送される間に前述のように種々の処理作業が行われる。この場合、物品18の移送ラインL2はホルダ2の移送ラインL1に対して水平方向にずれるため、図2に示すようにホルダ2が作業の邪魔にならないので、特に底面に対する処理作業のし易さが大幅に改善される。しかして、前記分岐点Bに至ると、前記読取り用カメラ9や品種チェック用バーコードリーダ10からの出力信号により作動シリンダ37が駆動制御され、不良品や特定品種の物品は選択的に移送ラインL3側に移送され、残りの物品は移送ラインL4に移送されることになる。さらに、前述の通り、移送ラインL3側に移送された物品18は、排出ホイール6により不良品の場合は蓄積部11に接続する排出コンベヤ12側に、特定品種として選択された物品は他の処理装置等に接続する排出コンベヤ13側に振り分けられ、また移送ラインL4側に移送された物品18は、ホルダ2に戻されて共にスターホイール14を介して他の処理装置等に接続する排出コンベヤ15に排出される。なお、以上の実施例の説明においては、本発明をロータリ形処理装置に適用した場合に関して説明したが、直線形の処理装置に適用したり、物品の振分け装置として用いることもできるものである。
【0011】
【発明の効果】本発明は、その構成に基づいて次の効果を得ることができる。
(1)物品の把持機構をホルダの移送ラインから水平方向にずらした状態において処理を行うため、物品の底面に対する印字や検査等の処理作業がやり易く、その作業性が大幅に改善される。
(2)物品の把持機構を水平方向に移動することにより、把持機構をホルダの移送ラインから水平方向にずらした状態において物品のみを排出することによって分離排出できるので、前記把持機構の水平方向の位置を制御することにより不良品や特定品種の物品を選択的に排出することができる。
(3)その分離排出は、移送の途中で所定の物品のみを排出し、しかる後に空のホルダと共に残りの物品をホルダに収容して排出するという順序で行われるため、途中で物品の一部を排出してもホルダに関する循環移送ライン中のホルダ総数には変化が生じないので、連続運転のためにホルダを補給する手間はいらない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例におけるレイアウトを示した平面図である。
【図2】 本発明の実施例の要部を示した縦断面図である。
【図3】 同実施例の把持機構の具体例に関する作動説明図である。
【図4】 同実施例のカム溝の分岐点部分を示したカム板の底面図である。
【図5】 同カム溝の分岐点部分を示した縦断面図である。
【符号の説明】
1‥‥ホルダコンベヤ 2‥‥ホルダ
3‥‥ストッパ機構 4‥‥スターホイール
5‥‥物品処理装置 6‥‥排出ホイール
7〜10‥‥各処置装置 12,13‥‥排出コンベヤ
14‥‥スターホイール 15‥‥排出コンベヤ
16‥‥回転軸部 18‥‥物品
20‥‥昇降用の軸部 22‥‥把持機構
29‥‥水平移動部材 31‥‥昇降用作動シリンダ
32‥‥カム板 33‥‥カムフォロア
34‥‥制御カム 35,36‥‥カム面
37‥‥作動シリンダ 38‥‥制御用カムフォロア
L1‥‥ホルダの移送ライン L2‥‥物品の移送ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】 物品の下部を収容して該物品を移送するホルダを支持する支持機構と、前記物品を把持する把持機構との相対的な移動により、前記ホルダから前記物品を抜取るとともに、前記把持機構を水平方向に移動可能に構成し、該把持機構を前記ホルダの移送ラインから水平方向にずらした状態において前記物品に対する処理を行うことを特徴とする物品処理装置における物品移送装置。
【請求項2】 物品の下部を収容して該物品を移送するホルダを支持する支持機構と、前記物品を把持する把持機構との相対的な移動により、前記ホルダから前記物品を抜取るとともに、前記把持機構を水平方向に移動可能に構成し、該把持機構を前記ホルダの移送ラインから水平方向にずらした状態において前記物品のみを排出することにより、前記ホルダと物品とを分離排出することを特徴とする物品移送装置。

【図1】
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【図4】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【公開番号】特開平6−263243
【公開日】平成6年(1994)9月20日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−80119
【出願日】平成5年(1993)3月15日
【出願人】(000253019)澁谷工業株式会社 (503)