説明

物性と高温熱安定性に優れるポリオレフィン微多孔膜

【課題】優れた穿孔強度及び気体透過度と共に、優れた高温における熱安定性の、高容量/高出力電池用セパレーターに好適なポリオレフィン微多孔膜を提供する。
【解決手段】膜厚5〜40μm、空間率30〜60%、透過度2.0×10−5〜8.0×10−5Darcyであり、バブルポイント法で測定した最大孔径が0.1μm以下であり、常温における穿孔強度が0.20N/μm以上で、120℃における穿孔強度が0.05N/μm以上であって、厚さで標準化された外部からの力に対してTMA(Thermo-Mechanical Analysis)上の横方向(TD)最大収縮率が0%以下であるポリオレフィン系微多孔膜。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池用セパレーターに使用できるポリオレフィン系微多孔膜及びその熱的特性に関する。本発明によるポリオレフィン系微多孔膜は、膜厚5〜40μm、空間率30〜60%、透過度2.0×10−5〜8.0×10−5Darcyであり、バブルポイント法で測定した最大孔径が0.1μm以下であり、常温における穿孔強度が0.20N/μm以上で、120℃における穿孔強度が0.05N/μm以上であって、厚さで標準化された外部からの力に対してTMA(Thermo-Mechanical Analysis)上の横方向(TD)最大収縮率が0%以下であることを特徴とする。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン微多孔膜(microporous film)は、その化学的安定性と優れた物性により、各種電池用隔離膜(battery separator)、分離用フィルタ及び微細濾過用分離膜(membrane)などに広く利用されている。この中で、二次電池用隔離膜は、電池の安全性に対する要求と共に、最も高い水準の品質が要求されている。最近は、二次電池の高容量、高出力趨勢に合わせて、隔離膜の熱的安定性と、充放電時二次電池の電気的安全性のための隔離膜の特性向上に対する要求がさらに高まっている。リチウム二次電池の場合、隔離膜の熱安定性が劣ると、電池内温度上昇により発生する隔離膜の損傷あるいは変形と、これによる電極間短絡が生じ得て、電池の過熱もしくは火災の危険性が存在する。なお、二次電池の活用範囲がハイブリッド用自動車などに拡大されつつ、過充電による電池の安全性確保が重要な要求事項となり、過充電による電気的な圧力に耐えられる隔離膜の特性が要求されている。
【0003】
電池の熱安全性は、隔離膜の閉温度、溶融破断温度及び横方向(電極/隔離膜が巻かれる方向に垂直方向)溶融収縮率と、高温における隔離膜強度などに影響を受ける。
【0004】
閉温度は、電池の異常現象により電池の内部温度が非理想的に増加する時、隔離膜の微多孔が閉じ、それ以上電流が流れなくなる温度である。溶融破断温度は、閉温度以上に電池の温度が上がり続ける時、隔離膜が溶融破断され、電流が再び流れるようになる(電極間短絡が発生する)温度である。電池の熱安定性のためには、閉温度は低く、溶融破断温度は高い方が好ましい。
【0005】
横方向溶融収縮率は、隔離膜が溶融される過程で発生する収縮の程度で、横方向溶融収縮率が大きいと、電池内部が高温になった時、収縮過程で電極の縁部分が露出され、電極間の短絡が発生するようになり、これにより発熱/発火/爆発などが発生する。隔離膜の溶融破断温度が高くても、横方向溶融収縮率が大きいと、隔離膜が溶融される過程で電極の縁部分が露出され、電極間の短絡が発生する可能性がある。
【0006】
高い高温隔離膜強度は、電池の充放電過程において、電極で生成されるデンドライトなどにより生じ得る高温における隔離膜損傷を防ぎ、電極間の短絡を防止するために必要である。なお、高温において隔離膜強度が弱いと、膜破断による短絡も生じ得る。すると、電極間短絡による発熱/発火/爆発などが発生するようになる。
【0007】
したがって、前記の電池の熱安全性のための隔離膜の因子の中、横方向溶融収縮率と高温隔離膜強度は、電極間の短絡を根本的に防止するものであって、電池の熱安全性に最も重要な因子である。
【0008】
電池の熱安定性の向上のために、隔離膜の溶融破断温度を高めるための方法は、隔離膜を架橋させる方法、無機物を添加する方法、そして耐熱性のある樹脂を使用する方法などがある。
【0009】
その中、隔離膜を架橋させる方法は、米国特許第6,127,438号及び米国特許第6,562,519号に示されている。これらの方法は、フィルムを、電子線架橋をさせるか、化学的架橋をさせる方法である。しかしながら、これらの方法は、電子線架橋の場合、放射線を使用する電子線架橋装置の設置、生産速度の制約、及び不均一架橋による品質偏差などの短所がある。なお、化学的架橋の場合、押出混練過程が複雑で、不均一架橋によりフィルムにゲルが発生する可能性が高く、長時間の高温エージングが必要であるという短所がある。
【0010】
米国特許第6,949,315号には、超高分子量ポリエチレンに5〜15重量%のチタニウムオキシドなどの無機物を混練して、隔離膜の熱安定性を向上させる方法が示されている。しかしながら、この方法は、超高分子量ポリオレフィン使用による押出負荷の増大、押出混練性の低下、及び未延伸の発生による生産性の低下などの問題がある。さらに、無機物投入による混練不良と、これによる品質不均一、及びピンホールの発生などの問題が発生しやすく、無機物と高分子樹脂界面の親和力(Compatibility)不足により、フィルム物性の低下が発生する。
【0011】
耐熱性に優れる樹脂を混練して使用する方法は、米国特許第5,641,565号に示されている。この技術は、ポリエチレンと、異種樹脂であるポリプロピレンと、無機物の添加による物性低下を防ぐために、分子量100万以上の超高分子量分子が必要である。なお、使用された無機物を抽出、除去するための工程が追加され、工程が複雑となる短所がある。
【0012】
上記の方法は、上述した短所の他にも、隔離膜の溶融破断温度の向上にのみ効果があって、隔離膜の横方向溶融収縮や高温強度を全く考慮しておらず、電池の熱安全性を向上させるに限界があり、商業的によく使用されていない。
【0013】
隔離膜の横方向収縮を小さくするための努力は、日本特開1999−322989号に紹介されている。しかしながら、この方法は、横方向熱収縮を減らすために、フィルムを縦方向にのみ延伸するか、総延伸比を小さくした。したがって、延伸過程を通じて得られる物性向上効果が得られなく、物性に優れていない。実施例の製品は、常温における穿孔強度が0.06〜0.11N/μm程度と非常に低く、高温における物性には触れていないが、温度による穿孔強度の減少傾向を考慮すると、物理的損傷の可能性が大きくて、電池の熱安全性を大きく向上させることは難しい。
【0014】
日本特開2003−119306号にも、収縮率が1%未満の隔離膜が紹介されているが、これも同様に隔離膜の強度に対する測定自体が全くなく、特に高温における強度を全く考慮していないため、電池の安全性を極大化することは難しい。
【0015】
二次電池の安全性に重要なもう一つの要素は、電池過充電特性である。過充電特性は、電池の充電過程で使用電圧以上の電圧で過充電を施す時、電解液の漏液、爆発、発火などの現象に対する安全性を意味する。ハイブリッド用自動車などのような高容量、高出力電池の活用範囲が拡大される現状況では、電池安全性に重要な要求特性の一つである。二次電池の過充電特性の向上のために、隔離膜は、必要以上に過度に大きい気孔が存在することは好ましくない。一般に、大きい気孔は、電池の寿命と出力向上に役に立つが、一定大きさ以上になると、寿命と出力の向上はそれ以上なく、過充電特性などの電池の安全性を阻害するようになる。なお、気孔は、その形成過程で分布を有するしかない。このような分布により、過度に大きい気孔が隔離膜内に形成されると、これらの気孔が、電池充電過程で加えられる電気的な圧力に対し、抵抗力の弱い部分として作用し、電池の過充電特性を阻害するようになる。
【0016】
大韓民国公開特許2006−0103932号にも、高い耐電圧と優れたシャットダウン性能のために、気孔の孔径分布が狭い隔離膜に対する言及がある。しかしながら、気孔の大きさが大きすぎる場合、実際電池で発生する過充電特性の低下などのような電池安全性問題が発生するが、これを考慮していなかった。この発明に言及されている平均孔径と最大孔径の比(孔径分布)が重要となれる理由も、最大孔径の大きさが耐電圧などのような電池の安全性に重要な要素であるからである。
【0017】
以上のように、既存の技術では、高容量/高出力二次電池の熱安全性のために、隔離膜の必須要件である低い横方向溶融収縮率と高い高温穿孔強度を保有すると同時に、充放電過程で安全性のために適当な大きさの気孔を保有した隔離膜は、製造されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許第6,127,438号
【特許文献2】米国特許第6,562,519号
【特許文献3】米国特許第6,949,315号
【特許文献4】米国特許第5,641,565号
【特許文献5】特開1999−322989号
【特許文献6】特開2003−119306号
【特許文献7】大韓民国公開特許2006−0103932号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明者らは、上述の従来技術の問題点を解決するために鋭意研究した結果、高い穿孔強度と気体透過度と共に、高温における電池安全性と過充電特性を向上できる、下記のような高容量/高出力用セパレーターを開発した。
【0020】
(1)膜厚5〜40μm、空間率30〜60%、透過度2.0×10−5〜8.0×10−5Darcyであり、バブルポイント法で測定した最大孔径が0.1μm以下であり、常温における穿孔強度が0.20N/μm以上で、120℃における穿孔強度が0.05N/μm以上であって、外部からの力を厚さで標準化した値が2mN/μmでTMA上の横方向最大収縮率が0%以下であるポリオレフィン系微多孔膜。
(2)(1)において、120℃で1時間放置時、縦方向、横方向に収縮率が10%以下であるポリオレフィン系微多孔膜。
(3)(2)において、ハーフドライ法で測定した平均孔径が0.02〜0.06μmであるポリオレフィン系微多孔膜。
(4)(3)において、TMA測定において、外部から加えた力を隔離膜の厚さで割った値が1.5mN/μmの場合、横方向最大収縮率が0%以下であるポリオレフィン系微多孔膜。
(5)(3)において、TMA測定において、外部から加えた力を隔離膜の厚さで割った値が1.3mN/μmの場合、横方向最大収縮率が0%以下であるポリオレフィン系微多孔膜。
【課題を解決するための手段】
【0021】
以下、本発明をさらに具体的に説明する。
【0022】
本発明のポリオレフィン系微多孔膜の膜厚は、5〜40μmであるが、膜強度と電池の軽量化、電池安全性を考慮して5〜30μmであり、さらに好ましくは、7〜25μmである。膜厚が5μmより薄いと、電池製造過程で外部応力と電池充放電時に発生するデンドライトのような針状に対する抵抗力が悪くなり、安全性を確保することができない。なお、膜厚が40μmより厚いと、透過性が悪くなり、電池が必要以上に厚くなる問題がある。
【0023】
空間率は、30〜60%であるが、膜強度と電池内イオン伝導特性を考慮すると、好ましくは40〜60%である。空間率が30%より低いと、透過性が低く電池の特性が悪くなり、60%より高いと、電池安定性を確保できるような十分な強度が得られない。
【0024】
透過度は、2.0×10−5〜8.0×10−5Darcyであるが、電池安全性を確保するための膜強度と電気特性のために、好ましくは、2.0×10−5〜7.0×10−5Darcyであり、さらに好ましくは、2.5×10−5〜7.0×10−5Darcyである。透過度が2.0×10−5Darcyより低いと、イオン透過性が悪くて電気特性が低下し、透過度が8.0×10−5Darcyより高いと、透過性が過度に高く、気孔構造も弱くなり、安全性を確保することが難しい。
【0025】
バブルポイント法で測定した最大孔径が0.1μm以下で、また、ハーフドライ法で測定した平均孔径が0.02μm〜0.06μm以下、好ましくは、0.03〜0.06μmである。気孔の平均孔径が0.02μm以下であると、一度に通過できるイオンの数が限定され、電池の出力を一定以上向上させることができなく、充放電過程で発生する不純物により気孔が閉塞され易く、電池の容量低下が発生し、電池の寿命を減らしてしまう結果となる。なお、平均孔径が0.06μm以上になると、孔径が0.1μm以上である気孔の存在可能性が高くなり、電池の過充電特性が低下する可能性があって、耐電圧が低くなり、電池の安全性を確保することができない。
【0026】
常温における穿孔強度は0.20N/μm以上であるが、好ましくは、0.22N/μm〜0.50N/μmであり、さらに好ましくは、0.24N/μm〜0.50N/μmである。0.20N/μmより低いと、電池製造過程で生じ得る外傷に対する抵抗力が低く、安全性が確保できない。
【0027】
120℃における穿孔強度は、0.05N/μm以上であるが、好ましくは、0.10N/μm〜0.30N/μmである。120℃における穿孔強度が0.05N/μmより低いと、充放電過程で形成されたデンドライトなどにより高温で隔離膜が損傷し、その安全性を確保できない。
【0028】
厚さで標準化した外部から加えられた力に対して、TMA(Thermo-Mechanical Analysis)上の横方向最大収縮率が0%以下である。TMAは、一定な力が加えれた状態で昇温させながら、試片の収縮される程度を測定する装置であって、加えられる力によって収縮される程度が異なる。なお、収縮は、同じ力が加えられても、試片の厚さによってその大きさが異なるため、外部から加えられた力を厚さで標準化する必要がある。本発明による隔離膜は、厚さで標準化した外部から加えられた力が2mN/μm(加えられる力/試片厚)の場合、TMA上の横方向最大収縮率が0%以下であり、好ましくは1.5mN/μmで、さらに好ましくは、1.3N/μmでTMA上の横方向最大収縮率が0%以下である。2mN/μmで横方向収縮率が0%以上であると、電池内部が高温になった時、溶融及び収縮過程で電極の縁部分が露出され、電極間の短絡が発生し、電池の安全性が低下する。
【0029】
応力が加えられなかった状態で120℃で収縮率は、横方向、縦方向にそれぞれ10%以下であることが好ましい。それぞれ8%以下がさらに好ましい。収縮率が10%以上であると、収縮により電極間の短絡が発生し、電池の安全性を確保することができない。
【0030】
本発明で使用されるポリオレフィンは、エチレン、プロピレン、αオレフィン、4−メチル−1−ペンテンなどを単量体と共単量体として使用するポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−4−メチル−1−ペンテンなど、ポリオレフィン単独あるいは共重合体及びその混合物などである。適合したポリオレフィンの一例は、強度、押出混練性、延伸性の観点で、最適のポリオレフィンは、共単量体含量が2%未満の高密度ポリオレフィンで、重量平均分子量が2×10〜4.5×10であり、好ましくは、2×10〜4.0×10である。2×10以下の分子量は、隔離膜の強度が弱い問題があり、4.5×10以上の分子量は、押出混練性及び延伸性が悪く、隔離膜の概観及び均一性がよくない。
【0031】
本発明の隔離膜を製造する工程は、次の工程を含む。
【0032】
(a)ポリオレフィン(成分I)20〜55重量%と、ポリオレフィンと160〜280℃で液−液相分離される特性を有する希釈剤(diluent)(成分II)80〜45重量%とを含有する混合物を、液−液相分離温度以上で溶融/混練/押出して、押出機内で熱力学的に単一相にする段階;、
(b)製造した溶融物を、液−液相分離温度範囲に調節されたゾーンを通過させて、液−液相分離を進行する段階; 、
(c) (b)段階で製造した溶融物を、T−ダイなどを通じて押出し、シート状に成形する段階;
(d)前記シートを、ロール方式またはテンター方式を含む逐次あるいは同時延伸方法により、横方向、縦方向にそれぞれ4倍以上、総延伸比が25〜60倍になるように延伸する段階;
(e)延伸されたフィルムに一定の張力を加えた状態で、希釈剤を抽出して乾燥する段階;
(f)乾燥されたフィルムの残留応力などを除去し、フィルムの収縮率を減少させる熱固定段階。
【0033】
以下、(a)〜(f)の工程を詳細に説明する。
【0034】
ポリオレフィン(成分I)と希釈剤(成分II)を溶融/混練/押出する(a)工程では、ポリオレフィンの比率は20〜55重量%が好ましい。ポリオレフィンの比率が20重量%未満であると、微多孔膜の強度及び混練性を確保し難く、55重量%以上であると、押出成形性が低下し、隔離膜の透過度が大きく低下する現象が発生する。
【0035】
ポリオレフィンと、前記ポリオレフィンと液−液相分離をすることができるが、高温では単一相をなし得る希釈剤とを、高温で熱力学的単一相に押出/混練して徐々に冷却すると、ポリオレフィンが結晶化される前に、ポリオレフィンと希釈剤が液体状態で相分離が発生する。この際、相分離される各相は、ポリオレフィンが大部分の含量を構成するポリオレフィン多含有相(polyolefin rich phase)と、希釈剤に溶けている少量のポリエチレンと希釈剤とから形成された希釈剤多含有相(diluent rich phase)からなる。熱力学的に相分離された二つの相は、二つの相ともに移動性 (mobility)がある状態に存在するようになると、時間が経つにつれて、同じ相同士が固まるCoarsening作用により、相分離された相の大きさが大きくなる。この時、Coarsening作用により相分離された相の大きさと組成は、液−液相分離状態における滞留時間と、液−液相分離状態が維持される温度によって変わる。液−液相分離を望むだけ進行させた後、溶融物を完全に冷却しポリオレフィン多含有相を固体化させた後、希釈剤多含有相を有機溶剤で抽出すると、ポリオレフィン微多孔膜が形成される。
【0036】
微多孔膜の基本物性は、相分離過程において、ポリオレフィン多含有相内のポリオレフィン濃度によって決定される。相分離が十分なされ、ポリオレフィン多含有相のポリオレフィン濃度が十分高くなると、延伸時、ポリオレフィン鎖の流動性が低下され、強制配向効果が増大する結果をもたらし、延伸後、機械的強度が増加する。なお、ポリオレフィン多含有相に存在するポリオレフィンは、結晶化過程で融点の高い結晶が形成され、微多孔膜の熱安定性を向上できる。また、微多孔膜の基本気孔構造は、相分離過程で決定される。
【0037】
本発明で使用される希釈剤としては、ポリオレフィン20〜55重量%と混合して100%をなす組成比において、160〜280℃で液−液相分離される特性を有するあらゆる有機液状化合物(organic liquid)が可能である。その例としては、ジブチルフタレート(dibutyl phthalate)、ジヘキシルフタレート(dihexyl phthalate)、ジオクチルフタレート(dioctyl phthalate)などのフタル酸エステル(phthalic acid ester)類; ジフェニルエーテル(diphenyl ether)、ベンジルエーテル(benzyl ether)などの芳香族エーテル類; パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの炭素数10〜20個の脂肪酸類; パルミチン酸アルコール、ステアリン酸アルコール、オレイン酸アルコールなどの炭素数10〜20個の脂肪酸アルコール類; パルミチン酸モノ−、ジ−またはトリエステル、ステアリン酸モノ−、ジ−またはトリエステル、オレイン酸モノ−、ジ−またはトリエステル、リノール酸モノ−、ジ−、またはトリエステルなどの脂肪酸群の炭素元素数4〜26個の飽和及び不飽和脂肪酸の一つまたは二つ以上の脂肪酸が、ヒドロキシ基が1〜8個で且つ炭素数が1〜10個のアルコールとエステル結合された脂肪酸エステル類が挙げられる。160〜280℃でポリオレフィンと液−液相分離される条件を満たせば、上記物質の混合物も使用可能であり、特に、パラフィンオイル、鉱油、またはワックスを一つ以上混合して使用することも可能である。
【0038】
液−液相分離温度が160℃未満であると、液−液相分離を十分進行させるために、押出後端部の温度を160℃以下に十分下げる必要があるが、この場合、ポリオレフィンの融点に近い温度で押出を行わなければならないため、ポリオレフィンが十分溶融されず、粘度が非常に高くなって、押出機に機械的に無理を与えるようになり、シートの表面も粗くなって、正常的な押出加工ができなくなる。逆に、液−液相分離温度が280℃を超過する場合、初期押出時、熱力学的単一相を作るために、280℃以上の十分な温度で混練をしなければならないが、この場合、温度が高すぎて、組成物の酸化分解反応が急激に促進されるため、所望の物性を有する製品を生産できなくなる。
【0039】
前記組成物には、必要に応じて、隔離膜の特性が大きく低下しない範囲で、酸化安定剤、UV安定剤、帯電防止剤などの、特定機能の向上のための一般添加剤をさらに添加することができる。
【0040】
前記組成物を、希釈剤とポリオレフィンとの混練のためにデザインされた二軸コンパウンダー、混練機、あるいはバンバリーミキサーなどを利用して、液−液相分離より高い温度で溶融/押出して、単一相の混合物を得る。このような単一相の溶融物を、液−液相分離温度以下に維持される混練装備内部の区間を30秒より長い滞留時間で通過させて、液−液相分離が前記加工機械内で発生・進行されるようにする。
【0041】
上記のように得られた液−液相分離された混合物をT−ダイを通じて押出し、冷却しながらシート状に成形する。ポリエチレンとオイルは、予めブレンディングしてコンパウンダーに投入してもよく、分離された供給機(feeder)からそれぞれ投入してもよい。
【0042】
溶融物から、T−ダイを通じてシート状の成形物を製造する(c)段階には、 水冷、空冷式を利用した一般的なキャスティング(casting)あるいはカレンダリング(calendaring)方法のいずれも使用できる。ダイより吐出される溶融物をキャスティングやカレンダリングで成形する段階において、溶融物がT−ダイから吐出される幅に比べ、成形後のシートの幅が10〜25%程度狭くなるように縦方向に引っ張ると、樹脂が縦方向に配向される。シートの樹脂が縦方向に配向されると、後続の延伸過程で横方向に延伸をしても、縦方向に配向されなかったシートに比べ、隔離膜において樹脂の横方向への配向が少なくなる。このように横方向への配向が少ない隔離膜は、昇温後、溶融状態で横方向への収縮が小さく、横方向TMA収縮率が小さい長所がある。
【0043】
シートを延伸する過程の(d)工程は、ロール方式またはテンター方式の逐次あるいは同時延伸により行うことができる。ここで、延伸比は、縦方向及び横方向にそれぞれ4倍以上であり、総延伸比は、25〜60倍であることが好ましい。一方向の延伸比が4倍未満である場合は、隔離膜内のポリオレフィンの配向が十分ではなく、隔離膜の物性が高くなく、且つ隔離膜内のポリオレフィンの融点を低く、高温穿孔強度を確保し難い。一般的な半結晶性高分子は、配向程度が大きくなるにつれて、隔離膜の融点が上昇し、融点の高い隔離膜が、低い隔離膜に比べ、温度上昇による穿孔強度の減少が大きくないため、高い高温穿孔強度を確保することができる。また、総延伸比が25倍未満であると、未延伸が発生するばかりか、物性もよくなく、60倍を超過すると、延伸中、破断が発生する可能性が高く、最終フィルムの収縮率が増加する短所がある。
【0044】
最終隔離膜の横方向TMA収縮率は、延伸過程で形成される樹脂配向の影響が大きい。優れた機械的性質を保有し、横方向のTMA収縮率を低めるためには、樹脂が一定程度以上配向されて、横方向への配向が、縦方向に比べ相対的に少ない必要がある。したがって、本発明の好ましい延伸比は、縦方向に6倍以上、10倍以下、横方向に4倍以上、7倍以下であり、横方向延伸比に対する縦方向延伸比(縦方向延伸比/横方向延伸比)の相対的比率が1.3〜2.3である。即ち、縦方向の延伸比が横方向の延伸比に比べ、常に1.3〜2.3倍大きくなければならない。相対比が1.3倍以下であると、横方向TMA収縮率が大きくて電池の安定性が確保できなく、2.3以上であると、横方向に機械的強度が過度に低く、横方向に加えられる外部応力に脆弱であって、隔離膜の取り扱い過程で問題が発生する可能性がある。なお、延伸温度は、樹脂と希釈剤の組成別に差があるが、使用するポリエチレン自体の溶融温度より3〜20℃低い温度で行うことが好ましい。3℃より高い温度で延伸すると、延伸機内部フィルムの強度が弱すぎて、延伸が均一になされず、20℃より低い温度で延伸する場合は、ピンホールなどの比較的大きい孔が発生する製品不良の可能性が高くなり、作業時、シートの破断が頻繁に起こるようになる。
【0045】
延伸されたフィルムは、(e)工程で有機溶媒を利用して内部の希釈剤を抽出して乾燥される。抽出と乾燥過程で延伸されたフィルムは、一定量だけ縦方向、横方向に収縮するようになる。本発明では、縦方向の配向性を高めて、横方向の配向性を少なくし物性を向上させて、横方向TMA収縮率を低めるために、抽出、乾燥過程で縦方向に張力を加え縦方向に0%〜5%ほど増加させて、横方向に収縮を8%〜15%程度誘発して、延伸されたフィルム内の配向された樹脂の応力を横方向に緩和させることにより、隔離膜の横方向TMA収縮率を小さくする。横方向に収縮を8%以下に誘発すると、隔離膜の収縮率が大きく、15%以上に収縮を誘発すると、隔離膜の透過度が低下する。本発明で使用可能な有機溶媒は、特に限定されず、樹脂押出に使用された希釈剤を抽出できる溶剤であればいずれも使用可能であるが、好ましくは、抽出効率が高く、乾燥が速いメチルエチルケトン、メチレンクロライド、ヘキサンなどが好ましい。抽出方法は、浸漬(immersion)方法、溶剤スプレー(solvent spray)方法、超音波(ultrasonic)法などの一般的な溶媒抽出方法を単独あるいは組み合せて使用できる。抽出時、残留希釈剤の含量は、2重量%以下でなければならない。残留希釈剤が2重量%を超えると、物性が低下し且つフィルムの透過度が減少する。残留希釈剤の量(抽出率)は、抽出温度と抽出時間により大きく左右される。抽出温度は、希釈剤と溶剤の溶解度増加のために、高いことが好ましいが、溶剤の沸き(boiling)による安定性問題を考慮すると、40℃以下が好ましい。抽出温度が希釈剤の凝固点以下であると、抽出効率が大きく低下するため、必ず希釈剤の凝固点より高くなければならない。抽出時間は、生産されるフィルムの厚さによって異なるが、10〜30μm厚の一般的な微多孔膜を生産する場合、2〜4分が好ましい。
【0046】
乾燥されたフィルムは、(f)工程において、最後に残留応力を除去し最終フィルムの収縮率を減少させる熱固定を行う。熱固定工程は、熱を加えた状態で、収縮しようとするフィルムを強制に固定し、残留応力を除去する過程で、熱固定温度と固定比率により収縮率と高温穿孔強度は影響を受ける。熱工程温度が高いと、樹脂の応力が低くなり、収縮率が小さくなって、高温穿孔強度も高くなる。穿孔強度は、測定温度が上昇するほど、樹脂の応力緩和が発生し、低くなる現象が現れるが、熱固定温度が高い場合は、熱固定過程で十分な応力緩和がなされ、温度上昇による穿孔強度の減少幅が大きくないため、高温穿孔強度が高くなるのである。しかしながら、熱固定温度が高すぎる場合は、フィルムが部分的に溶けて、形成された微多孔が目詰まって、透過度が低下する。好ましい熱固定温度は、フィルムの結晶部分の10〜30重量%が溶ける温度範囲で選択することが好ましい。前記熱固定温度が、前記フィルムの結晶部分の10重量%が溶ける温度より低い温度範囲から選択されると、フィルム内のポリエチレン分子の再配列(reorientation)が十分ではなく、フィルムの残留応力の除去効果が得られなく、フィルムの結晶部分の30重量%が溶ける温度より高い温度範囲で選択されると、部分的溶融により微多孔が目詰まって、透過度が低下される。なお、熱固定時、テンター方式の機械を利用して段階別熱固定をして、引張強度と穿孔強度などの機械的物性を向上させて収縮率を減少させる。熱固定過程において、第1の段階で20〜50%だけ横方向に延伸し透過度を増加させて、引張強度と穿孔強度を向上させる。50%を超過して延伸すると、透過度及び引張強度が向上される長所がある反面、収縮率が大きくなって、横方向の配向性が増加し、横方向TMA収縮率も増加して、気孔の大きさが過度に大きくなる短所がある。第2の段階では、第1の段階で延伸されたフィルムの幅を15〜40%ほど収縮させる。熱を加えた状態で、横方向収縮を通じて応力を緩和させて、樹脂の配向性を緩和し、収縮率と横方向TMA収縮率を減少させる。この際、40%以上に製品幅を収縮させると、透過度と穿孔強度が過度に低くなる問題があり、15%以下に収縮させると、応力及び樹脂配向性が緩和されず、収縮率と横方向TMA収縮率が大きくなり、気孔の大きさが大きく維持され、電池の安定性が確保できなくなる。そして、熱固定時間は、熱固定温度が高い場合は、相対的に短くして、熱固定温度が低い場合は、相対的に長くすることができる。好ましくは15秒〜2分程度である。
【0047】
延伸、抽出、熱固定段階は、連続工程で行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0048】
表1に示したように、本発明の方法により製造されるポリオレフィン微多孔膜は、優れた透過度と強度を有しながらも、特に高温における熱安定性に優れており、高容量/高出力電池用セパレーターに好適である。
【0049】
本発明の単純な変形乃至変更は、全て本発明の領域に属し、本発明の具体的な保護範囲は、添付の特許請求の範囲により明確になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
以下、実施例を通じて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0051】
1.分子量
ポリオレフィンの分子量及び分子量分布の測定は、Polymer Laboratory社の高温GPC(Gel Permeation Chromatography)により測定された。
【0052】
2.空間率(%)
空間率は、隔離膜内空間を計算して算出した。サンプルをAcm×Bcmの長方形(厚さTμm)に裁断して、質量を測定し、同一な体積の樹脂重量と隔離膜重量(Mg)の比率を通じて空間率を算出した。その数学式は下記のようである。
空間率(%)=100×{1−M×10000/(A×B×Tρ)}
式のρ(g/cm)は、樹脂の密度である。
【0053】
3.気体透過度(Darcy)
気体透過度は、孔隙測定機(porometer:PMI社のCFP-1500-AEL)で測定された。一般に、気体透過度は、ガーレー数(Gurley number)で表されるが、ガーレー数は、フィルム厚の影響が補正されず、フィルム自体の孔隙構造による相対的透過度が分かり難い。これを解決するために、本発明では、Darcy’s透過度常数を使用した。Darcy’s透過度常数は、下記数学式から得られて、本発明では、窒素を使用した。
C=(8FTV)/(πD(P−1))
ここで、C=Darcy透過度常数
F=流速
T=サンプル厚
V=気体の粘度(0.185 for N2)
D=サンプル直径
P=圧力
本発明では、100〜200psi領域で、Darcy’s透過度常数の平均値を使用した。
【0054】
4.平均孔径と最大孔径
平均孔径と最大孔径は、ASTM F316−03に基づき、孔隙測定機(porometer:PMI社のCFP-1500-AEL)で測定した。平均孔径は、ハーフドライ法により測定し、最大孔径は、バブルポイント法により測定した。孔径測定のために、PMI社で提供するGalwick液(surface tension: 15.9dyne/cm)を使用した。
【0055】
5.穿孔強度
Instron社のUTM(universal testing machine)に直径1mm、曲率半径0.5mmのピンを装着し、温度23℃で移動速度を120mm/minとして隔離膜を破断させる時の隔離膜の強度を測定した。
【0056】
6.高温穿孔強度
120℃で穿孔強度は、穿孔強度測定に使用する装置をそのまま使用し、ピンとサンプル支持台を、温度が120℃に維持されるオーブンに装着した状態で、120mm/minで隔離膜を破断させる時の隔離膜の強度とした。温度安定化のために、サンプルを3分以上放置した後、穿孔強度を測定して、温度安定化と時間的効率を考慮すると、5分が好ましい。
【0057】
7.TMAを利用した横方向収縮率
隔離膜の昇温過程における横方向収縮と溶融状態で横方向収縮を確認するために、TMA(Thermo-mechanical analysis)を行った。測定に使用された装備は、Mettler toledo社のTMA/SDTA840である。横方向に外部応力を加えた状態で、30℃から160℃まで5℃/minで昇温させながら、横方向の長さの変化を確認した。試片の大きさは、横方向に15mm、縦方向に6mmであった。初期試片の長さを0%として、初期長さに対して変化する長さの比を百分率で表示する方式で結果を求めたため、収縮が発生した時は(+)%となり、隔離膜が高温で溶融され長さが長くなると、(−)%となる方式で結果が表示された。その式は、下記のようである。
TMA収縮率(%)=100×(初期長さ−各温度における試片の長さ)/初期長さ
【0058】
8.120℃における収縮率
隔離膜を15cm×15cmに裁断した後、縦方向と横方向に10cm間隔で表示し、紙で挟んで、120℃に温度安定化がなされたオーブンに入れて、60分間放置した後、間隔変化を測定して収縮率を算出した。収縮率の算出は、下記の式に従った。
収縮率(%)=100×(初期間隔−120℃に放置後の間隔)/初期間隔
【0059】
9.過充電テスト
電池の安全性を確認する過充電テストは、下記の方法により行った。正極(cathode)は、アルミニウム薄膜にLiCoOを両面にコーティングし、112mm×77mmの大きさに製造して、負極(anode)は、銅にgraphiteを両面にコーティングし、115mm×77mmの大きさに製造した。正極、負極、隔離膜を次のような順で積んで、プレスを利用して圧着し、プラスチックでコーティングされたアルミニウム袋に入れて、正極と負極から電極タップを溶接して付着した。
(C/2)/S/A/S/C/S/A/S〜/C/S/A/S/(C/2)
(C/2):片面のみコーティングされた正極
C:両面コーティングされた正極
A:両面コーティングされた負極
S:隔離膜
【0060】
電池セルに注入する電解液は、エチレンカーボネート(ethylene carbonate)とエチルメチルカーボネート(ethyl methyl carbonate)を3:4の比率で混合した溶液に、LiPFを1.4mol/Lとなるように溶かして製造し、電極と隔離膜が入っているアルミニウム袋に注入して密封し、リチウムイオン電池を製造した。この全ての過程は、水分が浸透することを防止するために、グローブボックスで進行された。
【0061】
上記の方法により製造されたリチウムイオン電池を、200mAの電流を加えて4.2Vまで充電し、200mAの電流で3Vまで放電して、一サイクルを充放電した後、1000mAの一定な電流を加え4.2Vまで充電し、電圧を一定に維持して、充電電流が30mA以下となるまで放置し、その後、1000mAで5.2Vまで昇圧して電圧を維持しながら、電池の概観と電池の温度変化を観察し、過充電に対する安全性を確認した。過充電特性がよくないと、電池の爆発や発火が発生するようになり、その発生時間も速くなる。
【0062】
(実施例1)
成分Iとして、重量平均分子量が2.1×10で、溶融温度が135℃である高密度ポリエチレンを使用して、成分IIは、40℃で動粘度が160cSTのパラフィンオイルとジブチルフタレートを2:1の比率で混合して使用した。成分Iと成分IIの比は、25%と75%であった。
【0063】
前記組成物をT−ダイ付き二軸コンパウンダーを利用して240℃で押出して、180℃に設定された区間を通過し、液−液相分離を誘発して、キャスティングロールを利用して1000μm厚のシートを製造した。この際、幅が350mmとして押出されるシートを縦方向に速やかにキャスティングし、幅を280mm(20%減少)にして、このシートを、縦方向に114℃で7倍、横方向に120℃で5倍に逐次延伸した。延伸されたフィルムは、25〜30℃のメチレンクロライドを利用して希釈剤を抽出して、抽出過程で縦方向に張力を加え縦方向への収縮を防止し、横方向に約10%ほど収縮するようにした。熱固定は、130℃で行って、延伸段階で、横方向に、初期幅に対して140%まで増やし、収縮段階で、延伸段階の最終幅に対して21.4%収縮させた。得られた隔離膜の物性を表1に示した。
【0064】
(実施例2)
成分Iとして、重量平均分子量が3.0×10で、溶融温度が135℃である高密度ポリエチレンを使用して、成分IIは、ジブチルフタレートを使用した。成分Iと成分IIの比は、25%と75%であった。
【0065】
前記組成物をT−ダイ付き二軸コンパウンダーを利用して250℃で押出して、190℃に設定された区間を通過し、液−液相分離を誘発して、キャスティングロールを利用して1500μm厚のシートを製造した。この際、幅が350mmとして押出されるシートを縦方向に速やかにキャスティングし、幅を270mm(23%減少)にして、このシートを、縦方向に118℃で9倍、横方向に130℃で5倍に逐次延伸した。延伸されたフィルムは、25〜30℃のメチレンクロライドを利用して希釈剤を抽出して、抽出過程で縦方向に張力を加え縦方向への収縮を防止し、横方向に約12%ほど収縮するようにした。熱固定は、129℃で行って、延伸段階で、横方向に、初期幅に対して150%まで増やし、収縮段階で、延伸段階の最終幅に対して26.7%収縮させた。得られた隔離膜の物性を表1に示した。
【0066】
(実施例3)
成分Iとして、重量平均分子量が3.8×10で、溶融温度が135℃である高密度ポリエチレンを使用して、成分IIは、動粘度が160cSTのパラフィンオイルとジオクチルフタレートを1:1の比率で混合して使用した。成分Iと成分IIの比は、25%と75%であった。
【0067】
前記組成物をT−ダイ付き二軸コンパウンダーを利用して250℃で押出して、185℃に設定された区間を通過し、液−液相分離を誘発して、キャスティングロールを利用して1050μm厚のシートを製造した。この際、幅が350mmとして押出されるシートを縦方向に速やかにキャスティングし、幅を300mm(14%減少)にして、このシートを、縦方向に115℃で8.5倍、横方向に128℃で4倍に逐次延伸した。延伸されたフィルムは、25〜30℃のメチレンクロライドを利用して希釈剤を抽出して、抽出過程で縦方向に張力を加え縦方向への収縮を防止し、横方向に約10%ほど収縮するようにした。熱固定は、129℃で行って、延伸段階で、横方向に、初期幅に対して145%まで増やし、収縮段階で、延伸段階の最終幅に対して34.5%収縮させた。得られた隔離膜の物性を表1に示した。
【0068】
(実施例4)
成分Iとして、重量平均分子量が3.8×10で、溶融温度が135℃である高密度ポリエチレンを使用して、成分IIは、40℃で動粘度が160cSTのパラフィンオイルとジブチルフタレートを2:1の比率で混合して使用した。成分Iと成分IIの比は、30%と70%であった。
【0069】
前記組成物をT−ダイ付き二軸コンパウンダーを利用して240℃で押出して、180℃に設定された区間を通過し、液−液相分離を誘発して、キャスティングロールを利用して1900μm厚のシートを製造した。この際、幅が350mmとして押出されるシートを縦方向に速やかにキャスティングし、幅を310mm(11.4%減少)にして、このシートを、縦方向に117℃で9倍、横方向に130℃で6.5倍に逐次延伸した。延伸されたフィルムは、25〜30℃のメチレンクロライドを利用して希釈剤を抽出して、抽出過程で縦方向に張力を加え縦方向への収縮を防止し、横方向に約10%ほど収縮するようにした。熱固定は、128℃で行って、延伸段階で、横方向に、初期幅に対して145%まで増やし、収縮段階で、延伸段階の最終幅に対して20.7%収縮させた。得られた隔離膜の物性を表1に示した。
【0070】
(実施例5)
成分Iとして、重量平均分子量が3.0×10で、溶融温度が135℃である高密度ポリエチレンを使用して、成分IIは、40℃で動粘度が160cSTのパラフィンオイルとジオクチルフタレートを1:1の比率で混合して使用した。成分Iと成分IIの比は、30%と70%であった。
【0071】
前記組成物をT−ダイ付き二軸コンパウンダーを利用して250℃で押出して、185℃に設定された区間を通過し、液−液相分離を誘発して、キャスティングロールを利用して600μm厚のシートを製造した。この際、幅が350mmとして押出されるシートを縦方向に速やかにキャスティングし、幅を270mm(22.9%減少)にして、このシートを、縦方向に116℃で7.5倍、横方向に132℃で5倍に逐次延伸した。延伸されたフィルムは、25〜30℃のメチレンクロライドを利用して希釈剤を抽出して、抽出過程で縦方向に張力を加え縦方向への収縮を防止し、横方向に約12%ほど収縮するようにした。熱固定は、131℃で行って、延伸段階で、横方向に、初期幅に対して150%まで増やし、収縮段階で、延伸段階の最終幅に対して23.3%収縮させた。得られた隔離膜の物性を表1に示した。
【0072】
(実施例6)
成分Iとして、重量平均分子量が3.8×10で、溶融温度が135℃である高密度ポリエチレンを使用して、成分IIは、オレイン酸トリグリセライドとリノレン酸トリグリセライドを1:1の比率で混合して使用した。成分Iと成分IIの比は、40%と60%であった。
【0073】
前記組成物をT−ダイ付き二軸コンパウンダーを利用して250℃で押出して、190℃に設定された区間を通過し、液−液相分離を誘発して、キャスティングロールを利用して1000μm厚のシートを製造した。この際、幅が350mmとして押出されるシートを縦方向に速やかにキャスティングし、幅を300mm(14.3%減少)にして、このシートを、縦方向に120℃で8.5倍、横方向に134℃で6倍に逐次延伸した。延伸されたフィルムは、25〜30℃のメチレンクロライドを利用して希釈剤を抽出して、抽出過程で縦方向に張力を加え縦方向に3%延伸し、横方向に約12%ほど収縮するようにした。熱固定は、132℃で行って、延伸段階で、横方向に、初期幅に対して120%まで増やし、収縮段階で、延伸段階の最終幅に対して16.7%収縮させた。得られた隔離膜の物性を表1に示した。
【0074】
(実施例7)
成分Iとして、重量平均分子量が3.8×10で、溶融温度が135℃である高密度ポリエチレンを使用して、成分IIは、ジオクチルフタレートを使用した。成分Iと成分IIの比は、30%と70%であった。
【0075】
前記組成物をT−ダイ付き二軸コンパウンダーを利用して250℃で押出して、190℃に設定された区間を通過し、液−液相分離を誘発して、キャスティングロールを利用して700μm厚のシートを製造した。この際、幅が350mmとして押出されるシートを縦方向に速やかにキャスティングし、幅を270mm(22.9%減少)にして、このシートを、126℃で、縦方向に7倍、横方向に4.5倍に同時延伸した。延伸されたフィルムは、25〜30℃のメチレンクロライドを利用して希釈剤を抽出して、抽出過程で縦方向に張力を加え、縦方向への収縮を防止し、横方向に約8%ほど収縮するようにした。熱固定は、129℃で行って、延伸段階で、横方向に、初期幅に対して140%まで増やし、収縮段階で、延伸段階の最終幅に対して28.6%収縮させた。得られた隔離膜の物性を表1に示した。
【0076】
(比較例1)
成分Iとして、重量平均分子量が3.8×10で、溶融温度が135℃である高密度ポリエチレンを使用して、成分IIは、40℃で動粘度が160cSTのパラフィンオイルを使用した。成分Iと成分IIの比は、35%と65%であった。
【0077】
前記組成物をT−ダイ付き二軸コンパウンダーを利用して210℃で押出して、キャスティングロールを利用して850μm厚のシートを製造した。この際、幅が350mmとして押出されるシートを縦方向に速やかにキャスティングし、幅を310mm(11.4%減少)にして、このシートを、縦方向に116℃で6.5倍、横方向に127℃で6倍に逐次延伸した。延伸されたフィルムは、25〜30℃のメチレンクロライドを利用して希釈剤を抽出して、抽出過程で縦方向に弱い張力を加え、縦方向に3%収縮し、横方向に約7%ほど収縮するようにした。熱固定は、126℃で行って、延伸段階で、横方向に、初期幅に対して110%まで増やし、収縮段階で、延伸段階の最終幅に対して9.1%収縮させた。得られた隔離膜の物性を表1に示した。
【0078】
(比較例2)
成分Iとして、重量平均分子量が3.0×10で、溶融温度が135℃である高密度ポリエチレンを使用して、成分IIは、40℃で動粘度が160cSTのパラフィンオイルとジオクチルフタレートを2:1の比率で混合して使用した。成分Iと成分IIの比は、30%と70%であった。
【0079】
前記組成物をT−ダイ付き二軸コンパウンダーを利用して240℃で押出して、180℃に設定された区間を通過し、液−液相分離を誘発して、キャスティングロールを利用して600μm厚のシートを製造した。この際、幅が350mmとして押出されるシートを縦方向に速やかにキャスティングし、幅を330mm(5.7%減少)にして、このシートを、縦方向に118℃で8倍、横方向に130℃で3倍に逐次延伸した。延伸されたフィルムは、25〜30℃のメチレンクロライドを利用して希釈剤を抽出して、抽出過程で縦方向に張力を加え縦方向への収縮を防止し、横方向に約10%ほど収縮するようにした。熱固定は、125℃で幅の変化無しに行った。得られた隔離膜の物性を表1に示した。
【0080】
(比較例3)
成分Iとして、重量平均分子量が3.8×10で、溶融温度が135℃である高密度ポリエチレンを使用して、成分IIは、40℃で動粘度が160cSTのパラフィンオイルとジブチルフタレートを2:1の比率で混合して使用した。成分Iと成分IIの比は、25%と75%であった。
【0081】
前記組成物をT−ダイ付き二軸コンパウンダーを利用して240℃で押出して、180℃に設定された区間を通過し、液−液相分離を誘発して、キャスティングロールを利用して1800μm厚のシートを製造した。この際、幅が350mmとして押出されるシートを縦方向に速やかにキャスティングし、幅を335mm(4.3%減少)にして、このシートを、縦方向に116℃で8倍、横方向に129℃で7倍に逐次延伸した。延伸されたフィルムは、25〜30℃のメチレンクロライドを利用して希釈剤を抽出して、抽出過程で縦方向に張力を加え縦方向への収縮を防止し、横方向に約12%ほど収縮するようにした。熱固定は、127℃で行って、延伸段階で、横方向に、初期幅に対して180%まで増やし、収縮段階で、延伸段階の最終幅に対して16.7%収縮させた。得られた隔離膜の物性を表1に示した。
【0082】
(比較例4)
成分Iとして、重量平均分子量が2.1×10で、溶融温度が135℃である高密度ポリエチレンを使用して、成分IIは、ジオクチルフタレートを使用した。成分Iと成分IIの比は、35%と65%であった。
【0083】
前記組成物をT−ダイ付き二軸コンパウンダーを利用して250℃で押出して、190℃に設定された区間を通過し、液−液相分離を誘発して、キャスティングロールを利用して600μm厚のシートを製造した。この際、幅が350mmとして押出されるシートは、幅を300mm(14.3%減少)にして、このシートを128℃で、縦方向に4.5倍、横方向に5倍に同時延伸した。延伸されたフィルムは、25〜30℃のメチレンクロライドを利用して希釈剤を抽出して、抽出過程で縦方向に弱い張力を加え、縦方向に3%収縮し、横方向に約6%ほど収縮するようにした。熱固定は、124℃で行って、延伸段階で、横方向に、初期幅に対して130%まで増やし、収縮段階で、延伸段階の最終幅に対して19.2%収縮させた。得られた隔離膜の物性を表1に示した。
【0084】
(比較例5)
成分Iとして、重量平均分子量が3.8×10で、溶融温度が135℃である高密度ポリエチレンを使用して、成分IIは、40℃で動粘度が160cSTのパラフィンオイルとジオクチルフタレートを1:1の比率で混合して使用した。成分Iと成分IIの比は、30%と70%であった。
【0085】
前記組成物をT−ダイ付き二軸コンパウンダーを利用して250℃で押出して、190℃に設定された空間を通過し、液−液相分離を誘発して、キャスティングロールを利用して700μm厚のシートを製造した。この際、幅が350mmとして押出されるシートは、幅を280mm(20.0%減少)にして、このシートを、縦方向に118℃で7倍、横方向に133℃で5倍に逐次延伸した。延伸されたフィルムは、25〜30℃のメチレンクロライドを利用して希釈剤を抽出して、抽出過程で縦方向に強い張力を加え、縦方向に3%増やし、横方向に約18%ほど減らした。熱固定は、129℃で行って、延伸段階で、横方向に、初期幅に対して150%まで増やし、収縮段階で、延伸段階の最終幅に対して46.7%収縮させた。得られた隔離膜の物性を表1に示した。
【0086】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜厚5〜40μm、空間率30〜60%、透過度2.0×10−5〜8.0×10−5Darcyであり、バブルポイント法で測定した最大孔径が0.1μm以下であり、常温における穿孔強度が0.20N/μm以上で、120℃における穿孔強度が0.05N/μm以上であって、隔離膜厚で標準化した外部応力2mN/μmにおけるTMA上の横方向最大収縮率が0%以下であり、120℃で1時間放置時、縦方向、横方向に収縮率が10%以下であるポリオレフィン系微多孔膜。
【請求項2】
ハーフドライ法で測定した平均孔径が0.02〜0.06μmであることを特徴とする、請求項1に記載のポリオレフィン系微多孔膜。
【請求項3】
隔離膜厚で標準化した外部応力1.5mN/μmにおけるTMA上の横方向最大収縮率が0%以下であることを特徴とする、請求項2に記載のポリオレフィン系微多孔膜。
【請求項4】
隔離膜厚で標準化した外部応力1.3mN/μmにおけるTMA上の横方向最大収縮率が0%以下であることを特徴とする、請求項2に記載のポリオレフィン系微多孔膜。
【請求項5】
常温における穿孔強度が0.24N/μm以上であることを特徴とする、請求項2乃至4のいずれか一つの項に記載のポリオレフィン系微多孔膜。


【公開番号】特開2013−32535(P2013−32535A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−219298(P2012−219298)
【出願日】平成24年10月1日(2012.10.1)
【分割の表示】特願2008−284484(P2008−284484)の分割
【原出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【出願人】(308007044)エスケー イノベーション  カンパニー リミテッド (53)
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【Fターム(参考)】