説明

物理量センサー

【課題】高い精度で物理量を検出し、製造誤差等があっても正確な物理量検出を可能にする調整機能を備えた物理量センサーを提供する。
【解決手段】第1系統の周波数信号12を発生する第1系統の周波数信号発生部10と、加速度の変化に応じた第2系統の周波数信号22を発生する第2系統の周波数信号発生部20と、第2系統のPLL出力信号27を出力する分数分周方式の第2系統のPLL回路90と、第1系統の周波数信号に基づく基準値生成信号のクロック数をカウントする第1系統のカウント部30と、第2系統のPLL出力信号のクロック数をカウントする第2系統のカウント部40と、デジタル演算部50と、検出信号生成部60と、加速度が加わっていない状態における基準値生成信号と第2系統のPLL出力信号の周波数が一致するように第2系統のPLL回路を制御する制御部80とを含む物理量センサー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物理量センサー等に関する。
【背景技術】
【0002】
物体の速度や移動距離等の物理量を検出するために、用途に応じて様々なセンサーが用いられている。例えば、送波器から信号反射面に向けてパルス変調された送波信号を出射し、信号反射面で散乱された送波信号を各受波器で受信して、ドップラー効果によって生じた周波数差等から移動体の走行速度を検出する速度センサーが知られている。
【0003】
この速度センサーに対し、特許文献1の速度センサーは送波信号を必要とせず、少なくとも一方が加速度検出片である2つの周波数信号発生源からの信号に基づいて、より簡単な構成で速度を検出することができるという利点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−76166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の速度センサーでは、検波信号に対してローパスフィルターでアナログ処理するため、最終的な速度値出力にはアナログ回路で発生するノイズが重畳される。従って、特許文献1の速度センサーは、高い検出精度が要求される用途にそのまま利用することが難しい場合もある。
【0006】
また、特許文献1の速度センサーでは、一定速度の状態にて位相比較器に入力する2つの周波数信号の周波数が一致することを要する。しかし、量産時を考慮すると、製造誤差による周波数の不一致が、速度センサーとしての機能するための許容範囲を超える恐れがある。よって、前記の位相比較器に入力される周波数信号に相当する2つの信号の周波数を、速度センサーが調整して一致させる機能を有することが好ましい。ただし、例えばVCXO(Voltage Controlled Xtal Oscillator)といった手法では、バリキャップによる可変周波数の幅が想定される製造誤差に比べて狭く、十分でない可能性がある。
【0007】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明のいくつかの態様によれば、高い精度で所与の物理量(例えば、速度、移動距離、加速度、力等)を検出し、製造誤差等があっても正確な物理量検出を可能にする調整機能を備えた物理量センサーを提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明は、所与の物理量を検出する物理量センサーであって、第1系統の共振器を有し、前記第1系統の共振器の共振周波数と対応づけられた周波数の第1系統の周波数信号を発生する第1系統の周波数信号発生部と、加速度の変化に応じて共振周波数が変化する第2系統の共振器を有し、前記第2系統の共振器の共振周波数と対応づけられた周波数の第2系統の周波数信号を発生する第2系統の周波数信号発生部と、前記第2系統の周波数信号を基準信号として第2系統のPLL出力信号を出力する、分数分周方式の第2系統のPLL回路と、前記第1系統の周波数信号に基づいて生成される基準値生成信号のクロック数をカウントする第1系統のカウント部と、前記第2系統のPLL出力信号のクロック数をカウントする第2系統のカウント部と、前記第1系統のカウント部のカウント値と前記第2系統のカウント部のカウント値に基づいて、前記基準値生成信号のクロック数と前記第2系統のPLL出力信号のクロック数の差を表すクロック差分値を計算するデジタル演算部と、前記デジタル演算部が計算した前記クロック差分値に基づいて、前記物理量に応じたデジタル値の検出信号を生成する検出信号生成部と、前記第1系統の周波数信号を受け取り、加速度が加わっていない状態における前記基準値生成信号の周波数と前記第2系統のPLL出力信号の周波数が一致するように前記第2系統のPLL回路を制御する制御部と、を含む。
【0009】
本発明によれば、この物理量センサーに加速度が加わっている状態では、加速度に応じて第2系統の周波数信号の周波数が変化する。そして、第2系統の周波数信号に基づく第2系統のPLL出力信号のクロック数をカウントする第2系統のカウント部のカウント値も加速度に応じて変化する。そのため、加速度が加わっている間は、第1系統のカウント部のカウント値と第2系統のカウント部のカウント値との差が変化する。
【0010】
本発明の物理量センサーは、加速度が加わっていない状態(静止時又は定速時)においては、基準値生成信号のクロック数(第1系統のカウント部のカウント対象)と第2系統のPLL出力信号のクロック数(第2系統のカウント部のカウント対象)とを一致させる。そのため、加速度が加わらなければ、第1系統のカウント部のカウント値と第2系統のカウント部のカウント値との差は変化しない。従って、本発明の物理量センサーによれば、第1系統のカウント部のカウント値と第2系統のカウント部のカウント値との差に基づいて、例えば速度、移動距離、加速度といった物理量を検出することができる。
【0011】
そして、本発明の物理量センサーは、第1系統の周波数信号に基づく信号のクロック数と第2系統の周波数信号に基づく信号のクロック数の差をデジタル演算で求めるという比較的簡単な構成でありながら、2つの周波数信号の位相差に基づくアナログ処理により物理量を検出する場合と比較して、より高い精度で物理量を検出することができる。
【0012】
また、本発明の物理量センサーは、製造誤差等により静止時(又は定速時)において第1系統の周波数信号の周波数と第2系統の周波数信号の周波数が一致しない場合であっても、正しい測定が可能である。この物理量センサーは、第1系統の周波数信号と第2系統の周波数信号ではなく、基準値生成信号と第2系統のPLL出力信号のクロック数をカウントして物理量を検出する。このうち、第2系統のPLL出力信号は、分周数を時分割で切り替える分数分周方式の第2系統のPLL回路で生成される。よって、通常の1/N分周器に比べて細かく周波数を変更することができる。つまり、1/N分周器では分周数Nは自然数であり、そのステップが粗く第2系統のPLL出力信号として得られる周波数が限定されてしまう。しかし、分数分周方式では分周数を時分割で切り替えるため、その中間の周波数を得ることが可能である。
【0013】
したがって、この物理量センサーは、第1系統の周波数信号の周波数と第2系統の周波数信号の周波数とが誤差により一致しない場合でも、適切な分周数を設定することで誤差の影響を無くして正確な物理量測定をすることができる。
【0014】
本発明は、以上のように、アナログ処理により物理量を検出する場合と比較して高い精度で物理量を検出し、製造誤差等があっても正確な物理量検出を可能にする物理量センサーを提供するものである。なお、第1系統のカウント部がクロック数をカウントする基準値生成信号は、第1系統の周波数信号を逓倍した信号でも、分周した信号でも、変形した信号でもよいし、第1系統の周波数信号そのものであってもよい。
【0015】
(2)この物理量センサーにおいて、前記第2系統のPLL回路は、分周数としてPまたはP+1のいずれかを選択できる分周器であるデュアルモジュールプリスケーラーと、カウント動作中は前記デュアルモジュールプリスケーラーに前記分周数としてP+1を選択させ、カウント停止中は前記分周数としてPを選択させるスワローカウンターと、を含み、前記制御部は、前記スワローカウンターがカウントを停止するタイミングを指定してもよい。
【0016】
本発明によれば、第2系統のPLL回路はPまたはP+1(Pは自然数)のいずれかを選択できるデュアルモジュールプリスケーラー(Dual-Modulus Prescaler)と、前記選択を行うスワローカウンター(Swallow Counter)を含むことで、分数分周方式のPLLを実現してもよい。後述のように、分周数としてPまたはP+1を選択しているため、その分解能(周波数分解能)を最も高くでき、第2系統のPLL出力信号の周波数をより細かく調整することが可能となる。また、スワローカウンターを用いることで、制御部が行う制御が簡単になる。
【0017】
(3)この物理量センサーにおいて、前記第1系統の周波数信号を基準信号とし、第1系統のPLL出力信号を出力する第1系統のPLL回路を含み、前記第1系統の共振器は、加速度の変化に応じて共振周波数が変化し、前記基準値生成信号は前記前記第1系統のPLL出力信号であり、前記制御部は、前記第1系統の周波数信号に代えて前記第1系統のPLL出力信号を受け取り、加速度が加わっていない状態における前記基準値生成信号の周波数と前記第2系統のPLL出力信号の周波数が一致するように前記第1系統のPLL回路および前記第2系統のPLL回路を制御してもよい。
【0018】
本発明によれば、第1系統の共振器と第2系統の共振器はともに加速度センサーである。また、第1系統および第2系統でPLL回路を含む。
【0019】
この構成により、第1系統および第2系統の加速度センサーが出力する周波数信号について、PLL回路によりそれぞれ逓倍した信号を得ることができる。そして、一般に知られるように、逓倍した信号同士で差分をとることで、もとの周波数信号について差分をとる場合に比べて感度を良くすることができる。
【0020】
ただし、このとき第1系統の周波数信号と第2系統の周波数信号とに誤差があった場合、その誤差は逓倍信号で増幅される可能性がある。このときも、本発明によれば、分周数を時分割で切り替え、このような誤差の影響が生じないようにできる。
【0021】
なお、第1系統の共振器と第2系統の共振器に、特性が同じ加速度センサーを用いることが可能である。この場合、第1系統の周波数信号の周波数と第2系統の周波数信号の周波数との誤差を比較的小さくすることが可能になる。そして、第2系統のPLL出力信号を調整する場合の設定値(例えばスワローカウンターのタイミング)が予測しやすくなる。
【0022】
また、第1系統の共振器と第2系統の共振器に、特性が同じ加速度センサーを用いた場合には、例えば温度特性なども同じになる。よって、第2系統の共振器のみが加速度センサーである場合と比較して、使用環境温度が上昇した場合等に第2系統のPLL出力信号を再調整する頻度が少なくなる。
【0023】
(4)この物理量センサーにおいて、前記第1系統の共振器及び前記第2系統の共振器は、加速度の検出方向が互いに逆方向になるように配置されていてもよい。
【0024】
本発明によれば、加速度が加わると第1系統の共振器と前記第2系統の共振器とで、互いに共振周波数の変化の方向が逆になる。そのため、第2系統の共振器のみが加速度センサーである場合と比較して、第1系統のカウント部のカウント値と第2系統のカウント部のカウント値との差が大きくなるので、物理量の検出感度をより高くすることができる。
【0025】
(5)この物理量センサーにおいて、前記第1系統の周波数信号を受け取り、前記第1系統の周波数信号を分周した分周信号を出力する第1系統の分周回路を含み、前記基準値生成信号は前記分周信号であってもよい。
【0026】
本発明によれば、第1系統の周波数信号側においても第1系統の分周回路によって周波数の調整が可能になることにより、静止時(又は定速時)において、基準値生成信号のクロック数と第2系統のPLL出力信号のクロック数とを一致させやすくする。また、第1系統の周波数信号として使用可能な周波数の幅が広がるため、第1系統の共振器の選択の幅が広がる。
【0027】
(6)この物理量センサーにおいて、前記検出信号生成部は、前記デジタル演算部が計算した前記クロック差分値に所与の係数を乗算し、速度に応じたデジタル値の前記検出信号である速度信号を生成してもよい。
【0028】
(7)この物理量センサーにおいて、前記検出信号生成部は、前記速度信号を積分し、移動距離に応じたデジタル値の前記検出信号を生成してもよい。
【0029】
(8)この物理量センサーにおいて、前記検出信号生成部は、前記速度信号を微分し、加速度に応じたデジタル値の前記検出信号を生成してもよい。
【0030】
本発明の物理量センサーによれば、比較的簡単な構成でありながら、2つの周波数信号の位相差に基づくアナログ処理により速度を検出する場合と比較して、より高い精度で速度や移動距離や加速度を検出することができる。
【0031】
また、本発明の物理量センサーは、製造誤差等により静止時(又は定速時)において第1系統の周波数信号の周波数と第2系統の周波数信号の周波数が一致しない場合であっても、適切な分周数を設定することで誤差の影響を抑えて、正確な物理量測定をすることができる。
【0032】
(9)この物理量センサーにおいて、前記第2系統の周波数信号発生部は、前記第2系統の共振器を発振させるとともに、入力されたアナログ信号に基づいて前記第2系統の周波数信号を調整でき、前記制御部は、D/Aコンバーターを含み、前記D/Aコンバーターから出力される前記アナログ信号を制御してもよい。
【0033】
本発明によれば、第2系統の周波数信号発生部は、例えばVCXO(Voltage Controlled Xtal Oscillator)であって、制御部は固定または変動するデジタル値から生成したアナログ信号(発振制御電圧)によって、第2系統の共振器の発振周波数を調整(微調整)してもよい。このような、第2系統の共振器の発振周波数に対する微調整を補助的に用いることによって、静止時(又は定速時)における基準値生成信号のクロック数と第2系統のPLL出力信号のクロック数とをより精度よく一致させることができる。また、使用環境の微小な温度変動などが生じたときに、この微調整によって、静止時(又は定速時)における基準値生成信号のクロック数と第2系統のPLL出力信号のクロック数とが一致し続けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本実施形態に係る物理量センサーのブロック図の一例。
【図2】図2(A)は通常のPLL回路の一例、図2(B)は本実施形態の第2系統のPLL回路の一例。
【図3】本実施形態の第2系統のPLL回路の波形図の一例。
【図4】第1実施形態の速度センサーの構成を示す図。
【図5】第1実施例における水晶発振器(XO)の構成例を示す図。
【図6】第1実施例における水晶発振器(VCXO)の構成を示す図。
【図7】第2系統のPLL回路の構成例を示す図。
【図8】図8(A)〜図8(C)は、第1実施形態の速度センサーにおける水晶振動子の一例について説明するための図。
【図9】第1実施形態の速度センサーの動作の一例について説明するためのタイミングチャート図。
【図10】別の実施形態に係る物理量センサーのブロック図の一例。
【図11】第2実施形態の速度センサーの構成を示す図。
【図12】図12(A)〜図12(B)は、第2実施形態の速度センサーにおける水晶振動子の一例について説明するための図。
【図13】第2実施形態の速度センサーの動作の一例について説明するためのタイミングチャート図。
【図14】距離センサーの構成を示す図。
【図15】加速度センサーの構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0036】
1.物理量センサー
図1は、本実施形態に係る物理量センサーのブロック図の一例である。
【0037】
物理量センサー1は、基準値生成信号25のクロック数をカウントする第1系統1001の機能ブロックと、加速度の変化に応じて変化する第2系統のPLL出力信号27のクロック数をカウントする第2系統1002の機能ブロックと、制御部80などのその他の機能ブロックを含む。なお、第1系統1001と第2系統1002は、それぞれが同じ機能ブロックや同じ性質の信号を含む場合がある。そこで、機能ブロック等に「第1系統の」又は「第2系統の」という修飾語を付して区別する。
【0038】
1.1.周波数信号発生部
物理量センサー1は、第1系統の周波数信号発生部10を含む。第1系統の周波数信号発生部10は、第1系統の共振器11を有し、第1系統の共振器11の共振周波数と対応づけられた周波数の第1系統の周波数信号12を発生する。第1系統の共振器11は、加速度が加わっているか否かによらず共振周波数が一定の共振器であってもよいし、加速度の変化に応じて共振周波数が変化する加速度センサーであってもよい。
【0039】
物理量センサー1は、第2系統の周波数信号発生部20を含む。第2系統の周波数信号発生部20は、第2系統の共振器21を有し、第2系統の共振器21の共振周波数と対応づけられた周波数の第2系統の周波数信号22を発生する。第2系統の共振器21は、加速度の変化に応じて共振周波数が変化する加速度センサーである。
【0040】
第1系統の周波数信号12及び第2系統の周波数信号22の各周波数は、第1系統の共振器11及び第2系統の共振器21の各共振周波数とそれぞれ対応づけられていればよく、必ずしも第1系統の共振器11及び第2系統の共振器21の各共振周波数とそれぞれ一致している必要はない。
【0041】
第1系統の共振器及び第2系統の共振器は、振動子を用いて構成してもよく、例えば、水晶振動子やセラミック振動子、ニオブ酸リチウム振動子、タンタル酸リチウム振動子などの単結晶材料を用いた振動子や、酸化亜鉛圧電薄膜振動子、酸化アルミニウム圧電薄膜振動子などの圧電性薄膜を用いた振動子等のいずれであってもよい。
【0042】
1.2.分周回路
物理量センサー1は、第1系統の分周回路70を含んでいてもよい。第1系統の分周回路70は、第1系統の周波数信号12を分周した信号である基準値生成信号25を出力してもよい。また、第1系統の分周回路70の分周数は整数であってもよい。第1系統の分周回路70によって第1系統の共振器11の選択肢が広がるが、第1系統の周波数信号12が第1系統の分周回路70を経由することなく基準値生成信号25として出力されてもよい。
【0043】
1.3.PLL回路
物理量センサー1は、第2系統のPLL(Phase Locked Loop)回路90を含む。第2系統のPLL回路90は、基準信号として第2系統の周波数信号22を入力し、第2系統の周波数信号22を逓倍した信号である第2系統のPLL出力信号27を出力する。第2系統のPLL回路90は分数分周方式であり、細かく分周数を設定することが可能である。例えば、物理量センサー1の量産時などにおいて、第2系統の共振器の製造ばらつきにより第2系統の周波数信号22の周波数が誤差を有する可能性がある。このとき、第2系統のPLL回路90における分周数を適切に設定することにより誤差の調整を行い、正確に物理量を測定する物理量センサー1を提供することができる。
【0044】
1.4.制御部
物理量センサー1は制御部80を含む。制御部80は、第1系統の周波数信号12をクロックとして受け取り、制御信号26によって第2系統のPLL回路90における分周数を設定する。具体的には、物理量センサー1に加速度が加わっていない状態における基準値生成信号25の周波数と第2系統のPLL出力信号27の周波数とが一致するように分周数を設定する。ここで、加速度が加わっていない状態とは、物理量センサー1が静止している状態か一定の速度で移動している状態のいずれであってもよい。
【0045】
なお、第2系統の周波数信号発生部20が第2系統の周波数信号22の周波数を入力信号に応じて調整する機能を有する場合には、制御部80はアナログ信号33によってこの調整を行ってもよい。例えば、アナログ信号33による第2系統の周波数信号22の周波数の調整可能範囲は狭く(例えば80ppm)、製造ばらつき等による第2系統の周波数信号22の周波数の誤差を調整しきれない場合がある。このとき、第2系統のPLL回路90における分周数を適切に設定することで誤差が80ppm以下になるまで調整を行い、その後にアナログ信号33による調整を行ってもよい。例えば、制御部80はD/Aコンバーターを含み、アナログ信号33はD/Aコンバーターの出力として与えられてもよい。制御部80は、調整可能なデジタル値をD/Aコンバーターに入力して、その値に応じたアナログ信号33を出力してもよい。この構成によれば、比較的容易にアナログ信号33を制御することが可能になる。
【0046】
1.5.カウント部
物理量センサー1は、第1系統のカウント部30を含む。第1系統のカウント部30は、基準値生成信号25のクロック数をカウントする。
【0047】
物理量センサー1は、第2系統のカウント部40を含む。第2系統のカウント部40は、第2系統のPLL出力信号27のクロック数をカウントする。
【0048】
1.6.その他の機能ブロック
物理量センサー1は、デジタル演算部50を含む。デジタル演算部50は、第1系統のカウント部30のカウント値32と第2系統のカウント部40のカウント値42に基づいて、基準値生成信号25のクロック数と第2系統のPLL出力信号27のクロック数の差に応じたクロック差分値52を計算する。
【0049】
物理量センサー1は、検出信号生成部60を含む。検出信号生成部60は、デジタル演算部50が計算したクロック差分値52に基づいて、所与の物理量に応じたデジタル値の検出信号62を生成する。ここで、所与の物理量は、例えば、物理量センサー1の速度、加速度、移動距離、力等である。
【0050】
1.7.分数分周方式
ここで、第2系統のPLL回路90が用いる分数分周方式について説明する。物理量センサー1は、正確な物理量測定を行うために、加速度が加わっていない状態における基準値生成信号25の周波数と第2系統のPLL出力信号27の周波数とを一致させる必要がある。例えば、第2系統の周波数信号22の周波数についての期待値が40kHzであるとする。しかし、製造ばらつきによって5%程度の誤差が生じる恐れがあるとすると、例えば第2系統の周波数信号22の周波数が38kHz(−5%)であっても調整できる必要がある。しかも、製造された物理量センサー1はそれぞれ個別の誤差を有する。
【0051】
第2系統の共振器として高いQ値を有する水晶振動子を用いた場合、第2系統の周波数信号発生部20が電圧制御水晶発振器(VCXO)であったとしても5%の誤差は調整しきれない。そこで、この誤差を第2系統のPLL回路90における分周数を設定することで調整できることが好ましい。
【0052】
図2(A)は、一般によく用いられるPLL回路(以下、通常のPLL回路)の構成を示す。通常のPLL回路は、基準信号942と比較信号952との位相差を比較して差信号944を発生する位相比較器900と、ローパスフィルターであって差信号944に基づく制御電圧946を出力するループフィルター902と、制御電圧946によって出力周波数948を制御するVCO(voltage controlled oscillator)904と、出力周波数948を分周した比較信号952を生成する1/N分周器906とを含む。1/N分周器906は、外部からの制御信号950によって分周数Nを変更できるプログラマブル分周器である。しかし、Nは自然数であって、分周数を変更する場合のステップが粗いという欠点がある。そのため、通常のPLL回路では、例えば製造ばらつきといった物理量センサー1が有する個別の誤差を調整しきれない恐れがある。
【0053】
そこで、第2系統のPLL回路90として図2(B)のような分数分周回路92を含むPLL回路を用いる。なお、図2(B)の位相比較器900、ループフィルター902、VCO904とこれらを接続する信号は図2(A)と同じであり説明を省略する。また、第2系統の周波数信号22と第2系統のPLL出力信号27は図1と同じであり説明を省略する。
【0054】
分数分周回路92は、デュアルモジュールプリスケーラー(以下、DMP)920と、DMP920からの分周信号972を受け取り、クロック数をカウントするスワローカウンター924と主カウンター922を含む。
【0055】
DMP920は、分周数としてPまたはP+1のいずれかを選択できる(Pは自然数)。スワローカウンター924はカウント値がA(Aは整数)になるまでカウントを行い以降はカウント動作を停止する。DMP920は、スワローカウンター924がカウント中であることを示す(又は、停止中であることを示す)内部信号976を受け取る。そして、DMP920は、スワローカウンター924がカウント中であれば分周数としてP+1を選択し、停止中であれば分周数としてPを選択する。
【0056】
主カウンター922は、DMP920からの分周信号972に基づいて、位相比較器900が第2系統の周波数信号22と位相を比較する比較信号974を生成する。主カウンター922は、比較信号974を生成するための分周器を含んでいてもよい(図7の分周器923参照)。主カウンター922はカウント値がB(Bは自然数)になるまでカウントを行う。そして、Bまでカウントするとカウント値をリセットして再びカウント動作を行う。また、主カウンター922のリセットに連動して、スワローカウンター924もリセットされてカウント動作が再開される。主カウンター922のリセットのタイミングは内部信号978によってスワローカウンター924に伝えられる。
【0057】
スワローカウンター924と主カウンター922が用いる値A、Bは、それぞれ制御部80からの制御信号26A、26Bによってセットされる。制御信号26A、26Bは図1の制御信号26に対応する。ここで、値A、BについてはB>Aの関係を満たす必要はあるが、制御部80が自由に設定することができる。
【0058】
ここで、主カウンター922がBまでカウントする時間は、PLL出力信号27のクロック数を単位として(P+1)*A+P*(B−A)で表すことができる。P+1およびPは分周数であり、Aおよび(B−A)はそれぞれをカウントする回数である。この式を展開すると、主カウンター922がBまでカウントする時間はP*B+Aであり、AおよびBは制御部80により自由に設定が可能である。
【0059】
図3は、分数分周回路92を含む第2系統のPLL回路90の波形図の一例を示す。
【0060】
ここでは、DMP920は1/5分周信号(1/P+1、P=4)と1/4分周信号(1/P、P=4)を選択して分周信号972を出力する。この例では、主カウンター922は、分周信号972をそのまま比較信号974として出力するものとして、比較信号974について説明する。
【0061】
この例では、分周数として100/23(=4+8/23)が必要であるとする。主カウンターの値Bを23とすると、P*B+A=100を満たすAの値は8である。このとき、B>Aの関係を満たす。よって、制御部80は第2系統のPLL回路90に対して、これらの値(A=8、B=23)を設定する。
【0062】
図3では、スワローカウンター924が8までの値をカウントアップしている間は、比較信号974として1/5分周信号が出力される。その後、スワローカウンター924が停止してからは比較信号974として1/4分周信号が出力される。
【0063】
このとき、主カウンターがB(=23)までカウントするまでの区間T1において、PLL出力信号27のクロック数は100であるのに対し、比較信号974のクロック数は23である。よって、区間T1で平均すると分周数は100/23となる。
【0064】
このように、分数分周方式の第2系統のPLL回路90では、1/N分周器を用いる通常のPLL回路(図2(A))に比べて、細かい分周数の設定が可能となる。そして、分数分周回路92に対する値A、Bの設定により、第2系統の周波数信号22に生じた誤差の調整を行い、正確に物理量を測定する物理量センサー1を提供することが可能となる。
【0065】
なお、図3は前記の値A、Bの設定について説明するための波形図であり、そのパルス幅やカウント値の変化などについては図3の例に限るものではない。
【0066】
2.速度センサー(第1実施形態)
以下では、物理量センサーの具体例の一つである速度センサーについて説明する。図4は、第1実施形態の速度センサーの構成を示す図である。速度センサー1Aは、第1系統の共振器11(図1参照)において、加速度が加わっているか否かによらず共振周波数が一定の水晶振動子100を用いる。また、第1系統の分周回路70(図1参照)を含まない構成をとる。よって、基準値生成信号25はクロック信号120そのものである。
【0067】
2.1.周波数信号発生部
第1実施形態の速度センサー1Aは、水晶発振器14を含んで構成されている。水晶発振器14は、水晶振動子100及び発振回路110を含んで構成されている。前記の通り、本実施形態では水晶振動子100は共振周波数が一定の水晶発振子として構成されている。図5に、水晶発振器14のより具体的な構成例を示す。図5に示すように、発振回路110に含まれるキャパシター111、112、抵抗113、114、インバーター115により水晶振動子100を発振させる発振ループが形成され、水晶振動子100は共振周波数に等しい周波数で発振する。そして、水晶振動子100の駆動信号すなわちインバーター115の出力信号がクロック信号120として出力される。
【0068】
なお、水晶発振器14は図1における第1系統の共振器11に対応し、クロック信号120は図1における第1系統の周波数信号12に対応する。
【0069】
第1実施形態の速度センサー1Aは、水晶発振器24を含んで構成されている。水晶発振器24は、水晶振動子200及び発振回路210を含んで構成されている。本実施形態では、水晶振動子200は、加速度の変化に応じて共振周波数が変化する水晶発振子として構成されている。図6に、水晶発振器24のより具体的な構成例を示す。図6に示すように、発振回路210に含まれるキャパシター211、212、抵抗213、214、インバーター215により水晶振動子200を発振させる発振ループが形成され、水晶振動子200は共振周波数(加わった加速度に応じて変化する)に等しい周波数で発振する。そして、水晶振動子200の駆動信号すなわちインバーター215の出力信号がクロック信号220として出力される。すなわち、水晶発振器24は加速度に応じて出力信号(クロック信号220)の周波数が変化する加速度センサーとして機能する。
【0070】
ここで、本実施形態の水晶発振器24は、電圧制御水晶発振器(VCXO)であるとする。バリキャップ216は、アノード端子が接地され、カソード端子が抵抗218を介してアナログ信号(発振制御電圧)33と接続されている。なお、発振制御電圧33は、制御部80に含まれるD/Aコンバーター(図外)で生成され、制御部80から出力されている。
【0071】
図6の水晶発振器24では、発振制御電圧33のレベルに応じてバリキャップ216の容量が変動し、その容量の変動に応じてクロック信号220の周波数が変化する。発振制御電圧33が高いほどバリキャップ216の容量は小さくなり、クロック信号220の周波数は高くなる。逆に、発振制御電圧33が低いほどバリキャップ216の容量は大きくなり、クロック信号220の周波数は低くなる。ここで、VCXOの周波数の可変率は、一般に、0.1%未満である。
【0072】
なお、水晶発振器24は図1における第2系統の共振器21に対応し、クロック信号220は図1における第2系統の周波数信号22に対応する。
【0073】
2.2.PLL回路および制御部
第1実施形態の速度センサー1Aは、第2系統のPLL回路90Aおよび制御部80を含んで構成される。制御部80は、水晶発振器24に対する発振制御電圧33だけでなく、第2系統のPLL回路90Aに対する制御信号26(具体例として、図7の26A、26B)を供給する。図7に第2系統のPLL回路90Aのより具体的な構成例を示す。
【0074】
図7に示すように、本実施形態の第2系統のPLL回路90Aは主カウンター922Aに分周器923を含み、DMP920からの分周信号972をさらに分周して比較信号974を生成する。第2系統のPLL回路90Aのその他の構成要素については、図2(B)と同じであり説明を省略する。
【0075】
本実施形態の速度センサー1Aは、加速度が加わっていない状態におけるクロック信号120と、第2系統のPLL出力信号27の周波数とを一致させる必要がある。本実施形態における一つの例では、加速度が加わっていない状態において、水晶発振器14からのクロック信号120の周波数は40MHzであり、水晶発振器24からのクロック信号220の周波数の期待値は40kHzであるとする。そして、第2系統のPLL回路90Aはクロック信号220を基準信号として受け取り、期待値(40kHz)通りの場合には1000倍した40MHzの第2系統のPLL出力信号27を出力する。このとき、クロック信号120と第2系統のPLL出力信号27の周波数が一致する。
【0076】
ここで、例えば製造ばらつきにより、水晶発振器24からのクロック信号220の周波数が5%の誤差を伴っていたとする。つまり、クロック信号220は38kHzであるとする。このとき、発振制御電圧33によってはクロック信号220の周波数を調整しきれない。そこで、第2系統のPLL回路90Aにおける値AおよびBを適切に設定して調整を行う必要がある。
【0077】
図7の第2系統のPLL回路90Aでは、DMP920は分周数として11又は10を選択可能である(P=10)。そして、主カウンター922Aの分周器923によって、さらに100分周された信号が比較信号974として出力される。
【0078】
ここで、分周信号972については、第2系統のPLL出力信号27(40MHz)を400/38分周する必要がある。B=38とすると、A=20のときに、P*B+A=400を満たす。よって、制御信号26A、26Bによって、スワローカウンター924の値Aを20とし、主カウンター922Aの値Bを38と設定する。
【0079】
ここで、DMP920のPの値について分解能(周波数分解能)の観点から検討する。水晶発振器24からのクロック信号220の周波数の期待値は40kHzである。P=10の場合、第2系統のPLL出力信号27の周波数は40MHz〜44MHzとなる。この周波数の幅をΔfとすると、Δf=4MHz(=44MHz−40MHz)である。本実施形態の速度センサー1Aについて、10Hz(=0.1秒)の応答が求められているとすると、0.1秒の間に、位相比較器900、ループフィルター902、VCO904と分数分周回路92で作る経路をR=4000回ループすることになる。(40kHz/10)。
【0080】
すると、周波数分解能は、Δf/R=1000Hzとなる。これは、水晶発振器24からのクロック信号220に対応する値に換算すると1Hzであり、前記の期待値の25ppmに相当する。そして、25ppmであれば、制御部80が発振制御電圧33によって調整することが可能である。本実施形態においては、第2系統のPLL回路90Aの分周数を設定した後で、発振制御電圧33によってクロック信号220の周波数を微調整してもよい。
【0081】
このような手法により、本実施形態の速度センサー1Aは、例えば5%程度の誤差がある場合でも加速度が加わっていない状態におけるクロック信号120と、第2系統のPLL出力信号27の周波数とを一致させることができる。
【0082】
なお、DMP920の分周数をPとP+1以外にした場合には、前記の周波数分解能の計算においてΔfの値が大きくなってしまう。つまり、選択できる分周数を1だけ異なるようにすることにより、周波数分解能を最も高くでき、第2系統のPLL出力信号の周波数をより細かく調整することが可能となる。
【0083】
2.3.カウント部
再び、図4を用いて説明する。第1実施形態の速度センサー1Aは、同期式カウンター300及び400を含んで構成されている。同期式カウンター300は、クロック信号120のクロック数をカウントするnビットカウンターとして構成され、nビットのカウント値302を出力する。同様に、同期式カウンター400は、第2系統のPLL出力信号27のクロック数をカウントするnビットカウンターとして構成され、nビットのカウント値402を出力する。
【0084】
なお、同期式カウンター300及び400は、それぞれ、図1における第1系統のカウント部30及び第2系統のカウント部40に対応し、カウント値302及びカウント値402は、それぞれ、図1におけるカウント値32及びカウント値42に対応する。
【0085】
2.4.その他の機能ブロック
第1実施形態の速度センサー1Aは、減算処理部500及びレジスター510を含んで構成されている。減算処理部500は、デジタル処理により、nビットのカウント値302とnビットのカウント値402の一方から他方を減算する処理を行い、nビットの減算値502を出力する。減算処理部500は、専用のデジタル回路として実現してもよいし、CPU(Central Processing Unit)が減算プログラムを実行することによりその機能を実現するようにしてもよい。nビットの減算値502は、所与のタイミング、例えば、クロック信号120の立ち下がりエッジでレジスター510に格納される。
【0086】
なお、減算処理部500とレジスター510により構成される回路は図1におけるデジタル演算部50に対応し、レジスター510に格納された減算値512は図1におけるクロック差分値52に対応する。
【0087】
第1実施形態の速度センサー1Aは、乗算処理部600を含んで構成されている。乗算処理部600は、デジタル処理により、nビットの減算値512とMビットの所与の係数kを乗算して乗算結果を速度検出信号602として出力する。乗算結果(速度検出信号602)の最下位ビットの計算において必要に応じて丸め処理を行ってもよい。乗算処理部600は、専用のデジタル回路として実現してもよいし、CPUが乗算プログラムを実行することによりその機能を実現するようにしてもよい。例えば、α=2(nは正の整数)であれば、乗算処理部600はnビットシフト回路として簡易な構成で実現することができる。
【0088】
なお、乗算処理部600は図1における検出信号生成部60に対応し、速度検出信号602は図1における検出信号62に対応する。
【0089】
2.5.双音叉振動子(水晶振動子の具体例)
図8(A)〜図8(C)は、本実施形態における水晶振動子200の一例について説明するための図である。水晶振動子200は、図8(A)〜図8(C)に示す双音叉振動片201とカンチレバー206がパッケージ(図示せず)の内部に気密封止された双音叉振動子として構成される。水晶振動子200として、優れた安定性と速い応答性を有する双音叉型振動子を使用することで正確な加速度検出を行うことができる。
【0090】
図8(A)は、双音叉振動片201の正面図であり、双音叉振動片201の概略的な構造を示している。図8(A)において、202、203は基部であり、2つの振動腕204、205がそれらをつないでいる。
【0091】
図8(B)は、カンチレバー206に固定された双音叉振動片201を示す側面図である。図8(B)において、カンチレバー206は、固定端部207と自由端部208を有し、連結部209がそれらをつないでいる。固定端部207は直接に、又はパッケージ(図示せず)などにより間接的に、速度センサー1Aに固定されている。そして、双音叉振動片201の基部203はカンチレバー206の固定端部207に固着され、双音叉振動片201の基部202はカンチレバー206の自由端部208に固着されている。
【0092】
図8(C)は、速度センサー1Aが加速したときの双音叉振動片201の形状の変化を示している。速度センサー1Aが、カンチレバー206の固定端部207、連結部209、自由端部208で作られる軸に対して垂直方向に、かつ、カンチレバー206から双音叉振動片201へ向かう方向に加速した場合、カンチレバー206の自由端部208に加速と反対方向に慣性力Fが作用するので、カンチレバー206の連結部209は加速と反対方向に曲がる。
【0093】
双音叉振動片201はカンチレバー206に固着されているため、圧縮力Fが作用する。この圧縮力Fの作用により双音叉振動片201の共振周波数が低くなる。例えば、速度センサー1Aが加速していないときの双音叉振動片201の共振周波数が40.00kHzであったとすると、図8(C)の場合の双音叉振動片201の共振周波数は例えば39.99kHzに変化する。双音叉振動片201は接続電極(図示せず)を介して発振回路210と接続されており、水晶発振器24の発振周波数が低くなる。
【0094】
逆に、速度センサー1Aが図8(C)の場合と逆方向に加速したときには、慣性力Fも図8(C)の場合と反対方向に作用するので、双音叉振動片201を伸ばそうとする引張力が作用する。例えば、速度センサー1Aが加速していないときの双音叉振動片201の共振周波数が40.00kHzであったとすると、速度センサー1Aが図8(C)の場合と逆方向に加速したときの双音叉振動片201の共振周波数は例えば40.01kHzに変化する。そのため、水晶発振器24の発振周波数が高くなる。
【0095】
2.6.速度の検出
図9は、本実施形態の速度センサー1Aの動作の一例について説明するためのタイミングチャート図である。
【0096】
図9は、速度センサー1Aが、時刻t以前は静止しており、時刻t〜tにかけて加速度αで加速し、時刻t以降は一定の速度で移動するケースのタイミングチャート図である。
【0097】
図9において、時刻t以前は、速度センサー1Aが静止しているので、クロック信号120の周波数と第2系統のPLL出力信号27の周波数は等しい。
【0098】
そして、同期式カウンター300がクロック信号120の立ち上がりエッジでカウントアップ動作を行うことによりカウント値302がカウントアップされる。同様に、同期式カウンター400が第2系統のPLL出力信号27の立ち上がりエッジでカウントアップ動作を行うことによりカウント値402がカウントアップされる。
【0099】
時刻t以前は、クロック信号120の周波数と第2系統のPLL出力信号27の周波数が等しいため、カウント値302のカウントアップとカウント値402のカウントアップのスピードは同じである。
【0100】
ここで、減算処理部500がカウント値302からカウント値402を減算して減算値502を出力し、レジスター510がクロック信号120の立ち下がりエッジで減算値502を取り込むとすると、減算値512(レジスター510の出力)は0のまま変化しない。
【0101】
時刻t〜tにかけて速度センサー1Aに加速度αが加わると、水晶振動子200が図8(C)に示した状態になるため、水晶発振器24の発振周波数が低くなる。そのため、第2系統のPLL出力信号27の周波数がクロック信号120の周波数よりも低くなる。従って、時刻t〜tでは、カウント値402のカウントアップがカウント値302のカウントアップよりも遅くなる。その結果、減算値512は、時刻t、t、tの各タイミングで1、2、3と増えていく。
【0102】
時刻tにおいて、加速度が0になり、速度センサー1Aが一定の速度で移動するようになると、クロック信号120の周波数と第2系統のPLL出力信号27の周波数は等しくなる。従って、時刻t以降は、カウント値302のカウントアップとカウント値402のカウントアップが同じスピードになる。その結果、減算値512は3のまま変化しない。
【0103】
このように、図9のケースでは、減算値512が0、1、2、3と増加するので、速度検出信号602のデジタル値は0、k、2k、3kと段階的に増加する。ここで、係数kを減算値512が1である時の速度vに設定しておけば、速度検出信号602のデジタル値は、時刻t〜tにかけて加わった加速度αに応じて0から3vまで3段階に上昇する速度の軌跡を示すことになる。
【0104】
以上のように、第1実施形態の速度センサー1Aは、同期式カウンター300のカウント値302と同期式カウンター400のカウント値402の差をデジタル演算で求めるという比較的簡単な構成でありながら、2つのクロック信号の位相差に基づくアナログ処理により速度を検出する場合と比較して、より高い精度で速度を検出することができる。そして、第1実施形態の速度センサー1Aは、製造誤差等があっても正確な物理量検出を可能にする調整機能(第2系統のPLL回路90A)を備えている。
【0105】
3.物理量センサー(別の実施形態)
図10は、別の実施形態に係る物理量センサー1Fのブロック図である。本実施形態の物理量センサー1Fは、先の物理量センサー1と比べて第1系統1001の機能ブロックと制御部80Aが異なっている。特に、第1系統の分周回路70に代えて第1系統のPLL回路72が用いられることが異なる。このとき、基準値生成信号25は第1系統のPLL出力信号29である。以下においては相違点のみを説明する。なお、図1と同じ構成要素には同一の符号を付している。
【0106】
物理量センサー1Fは、第1系統の周波数信号発生部10Aを含む。第1系統の周波数信号発生部10Aは、第1系統の共振器11Aを有し、第1系統の共振器11Aの共振周波数と対応づけられた周波数の第1系統の周波数信号12Aを発生する。本実施形態の第1系統の共振器11Aは、加速度の変化に応じて共振周波数が変化する加速度センサーである。
【0107】
物理量センサー1Fは、第1系統のPLL回路72を含む。第1系統のPLL回路72は、基準信号として第1系統の周波数信号12Aを入力し、第1系統の周波数信号12Aを逓倍した信号である第1系統のPLL出力信号29を出力する。前記のように本実施形態では基準値生成信号25、すなわち第1系統のカウント部30がクロック数をカウントする信号は、第1系統のPLL出力信号29である。なお、本実施形態において、基準値側である第1系統1001に含まれる第1系統のPLL回路72は、通常のPLL回路である(図2(A)参照)。
【0108】
物理量センサー1Fは制御部80Aを含む。制御部80Aは、第1系統のPLL出力信号29をクロックとして受け取り、制御部80(図1)の制御信号に加えて、制御信号28を有し、第1系統のPLL回路72の分周数を設定してもよい。具体的には、物理量センサー1Fに加速度が加わっていない状態における第1系統のPLL出力信号29の周波数と第2系統のPLL出力信号27の周波数とを一致させることができるように、1/N分周器906(図2(A)参照)の分周数を設定してもよい。
【0109】
本実施形態の物理量センサー1Fでは、第1系統1001および第2系統1002の加速度センサー(11A、21)が出力する周波数信号(12A、22)について、PLL回路によりそれぞれ逓倍した信号(29、27)を得ることができる。そして、一般に知られるように、逓倍した信号同士で差分をとることで、もとの周波数信号について差分をとる場合に比べて感度を良くすることができる。
【0110】
ただし、このとき第1系統の周波数信号12Aと第2系統の周波数信号22とに誤差があった場合、その誤差は逓倍信号で増幅される可能性がある。このときも、本発明によれば、第2系統のPLL回路90において分周数を時分割で切り替えることにより、このような誤差を調整することができる。
【0111】
なお、第1系統の共振器11Aと第2系統の共振器21に、特性が同じ加速度センサーを用いることが可能である。この場合、第1系統の周波数信号12Aの周波数と第2系統の周波数信号22の周波数との誤差を比較的小さくすることが可能になる。
【0112】
4.速度センサー(第2実施形態)
4.1.構成
図11は、第2実施形態の速度センサーの構成を示す図である。
【0113】
第2実施形態の速度センサー1Bの構成は、第1実施形態の速度センサー1Aの構成と類似する。ただし、第2実施形態においては、水晶発振器24だけでなく水晶発振器14も加速度センサーとして構成される。そして、物理量センサー1Fにおいて説明した第1系統のPLL回路72や制御部80Aを含む。また、乗算処理部600は、第1実施形態の速度センサー1Aにおける乗算時の係数kの1/2の係数(k/2)で乗算処理を行う。なお、図4や図10と同じ構成については同じ番号を付しており、説明は省略する。
【0114】
4.2.双音叉振動子(水晶振動子の具体例)
図12(A)及び図12(B)は、本実施形態における水晶振動子100及び水晶振動子200の一例について説明するための図である。
【0115】
本実施形態では、図12(A)に示すように、水晶振動子100及び水晶振動子200は、検出方向が互いに逆方向になるように配置されている。ここで、本実施形態における水晶振動子200は、図8(A)及び図8(B)に示した構造と同じであるため、図12(A)において、水晶振動子200の各要素に対して図8(A)及び図8(B)と同じ番号を付しており、その説明を省略する。また、水晶振動子100の構造は水晶振動子200の構造と同じであり、水晶振動子100の各要素101〜109は、それぞれ水晶振動子200の各要素201〜209に対応する。
【0116】
図12(B)は、速度センサー1Bが加速したときの双音叉振動片101、201の形状の変化を示している。速度センサー1Bが、カンチレバー206の固定端部207、連結部209、自由端部208で作られる軸に対して垂直方向に、かつ、カンチレバー206から双音叉振動片201へ向かう方向に加速した場合、双音叉振動片201の変化は図8(C)と同じであり、双音叉振動片201の共振周波数が低くなる。そのため、水晶発振器24の発振周波数が低くなる。
【0117】
一方、カンチレバー106の自由端部108にも加速と反対方向に慣性力Fが作用するので、カンチレバー106の自由端部108も加速と反対方向に曲がる。双音叉振動片101はカンチレバー106に固着されているため、引張力Fが作用する。この引張力Fの作用により双音叉振動片101の共振周波数が高くなる。例えば、速度センサー1Bが加速していないときの双音叉振動片101の共振周波数が40.00kHzであったとすると、図12(B)の場合の双音叉振動片101の共振周波数は例えば40.01kHzに変化する。双音叉振動片101は接続電極(図示せず)を介して発振回路110と接続されており、水晶発振器14の発振周波数が高くなる。
【0118】
逆に、速度センサー1Aが図12(B)の場合と逆方向に加速したときには、慣性力Fも図12(B)の場合と反対方向に作用するので、双音叉振動片201を伸ばそうとする引張力が作用するとともに双音叉振動片101を縮めようとする圧縮力が作用する。この引張力と圧縮力の作用により、双音叉振動片201の共振周波数が高くなるとともに双音叉振動片101の共振周波数が低くなる。例えば、速度センサー1Aが加速していないときの双音叉振動片101及び201の共振周波数が40.00kHzであったとすると、速度センサー1Aが図12(B)の場合と逆方向に加速したときの双音叉振動片201の共振周波数は例えば40.01kHzに変化し、双音叉振動片101の共振周波数は例えば39.99kHzに変化する。そのため、水晶発振器24の発振周波数が高くなり、水晶発振器14の発振周波数が低くなる。
【0119】
このように、水晶振動子100と水晶振動子200を検出方向が互いに逆方向になるように配置すると、水晶発振器14と水晶発振器24は互いに発振周波数の変化の方向が逆になる。そのため、第2実施形態の速度センサー1Bでは、減算値502の変化量が第1実施形態の速度センサー1Aの2倍になることで速度の検出感度を高めることができる。
【0120】
なお、水晶振動子100と水晶振動子200が同じ特性であることが好ましい。このようにすれば、例えば、温度ドリフトに伴うクロック信号120とクロック信号220の周波数差の誤差を抑えることができるので、温度変化に対しても安定した速度検出を行うことが可能となる。
【0121】
4.3.速度の検出
図13は、本実施形態の速度センサー1Bの動作の一例について説明するためのタイミングチャート図である。
【0122】
図13は、速度センサー1Bが、時刻t以前定速状態であり(例えば、図9の時刻t以降)、時刻t〜t16にかけて加速度−α(図9のケースと逆向きかつ同じ大きさの加速度)で減速し、時刻t16以降は静止するケースのタイミングチャート図である。
【0123】
図13において、時刻t以前は、速度センサー1Bに加速度が加わっていないので、第1系統のPLL出力信号29の周波数と第2系統のPLL出力信号27の周波数は等しく、カウント値302のカウントアップとカウント値402のカウントアップのスピードも同じである。従って、減算値512は、一定値である6のまま変化しない。
【0124】
時刻t〜t16にかけて速度センサー1Bに加速度−αが加わると、水晶振動子100と水晶振動子200がそれぞれ図12(B)の例とは逆方向に曲がった状態になるため、水晶発振器14の発振周波数が低くなるとともに水晶発振器24の発振周波数が高くなる。そのため、第1系統のPLL出力信号29の周波数が低くなるとともに第2系統のPLL出力信号27の周波数が高くなるので、カウント値302のカウントアップスピードが低下するとともにカウント値402のカウントアップスピードが上昇する。その結果、減算値512は、時刻t10、t11、t12、t13、t14、t15の各タイミングで5、4、3、2、1、0と減っていく。
【0125】
時刻t16において、加速度が0になり、速度センサー1Bが静止すると、第1系統のPLL出力信号29の周波数と第2系統のPLL出力信号27の周波数は等しくなる。従って、時刻t16以降は、カウント値302のカウントアップとカウント値402のカウントアップが同じスピードになる。その結果、減算値512は0のまま変化しない。
【0126】
このように、図13のケースでは、減算値512が6、5、4、3、2、1、0と減少するので、速度検出信号602のデジタル値は3k、2.5k、2k、1.5k、k、0.5k、0と段階的に減少する。ここで、係数kを前述の速度vに設定しておけば、速度検出信号602のデジタル値は、時刻t〜t16にかけて加わった加速度−αに応じて3vから0まで6段階に下降する速度の軌跡を示すことになる。
【0127】
以上のように、第2実施形態の速度センサー1Bでは、第1実施形態の速度センサー1Aと比べて速度の検出感度が2倍になる。
【0128】
5.距離センサー
図14は、距離センサーの構成例を示す図である。
【0129】
速度を積分すると積分開始時点からの距離を得ることができる。そこで、図14に示すように、本実施形態の距離センサー1Dでは、図11に示した第2実施形態の速度センサー1Bの出力に積分処理部610が追加されている。図14において、図11と同じ構成には同じ符号を付しており、その説明を省略又は簡略する。
【0130】
積分処理部610は、デジタル処理により、速度検出信号602の離散時間での積分計算を行い積分結果を距離検出信号612として出力する。積分結果(距離検出信号612)の最下位ビットの計算において必要に応じて丸め処理を行ってもよい。積分処理部610は、専用のデジタル回路として実現してもよいし、CPUが積分計算プログラムを実行することによりその機能を実現するようにしてもよい。
【0131】
なお、乗算処理部600と積分処理部610により構成される回路は図1における検出信号生成部60に対応し、距離検出信号612は図1における検出信号62に対応する。
【0132】
この距離センサー1Dによれば、同期式カウンター300のカウント値302と同期式カウンター400のカウント値402の差に基づいて移動距離を検出することができる。
【0133】
6.加速度センサー
図15は、加速度センサーの構成例を示す図である。
【0134】
速度を微分すると加速度を得ることができる。そこで、図15に示すように、本実施形態の加速度センサー1Eでは、図11に示した第2実施形態の速度センサー1Bの出力に微分処理部620が追加されている。図15において、図11と同じ構成には同じ符号を付しており、その説明を省略又は簡略する。
【0135】
微分処理部620は、デジタル処理により、速度検出信号602の離散時間での微分計算を行い微分結果を加速度検出信号622として出力する。微分結果(加速度検出信号622)の最下位ビットの計算において必要に応じて丸め処理を行ってもよい。微分処理部620は、専用のデジタル回路として実現してもよいし、CPUが微分計算プログラムを実行することによりその機能を実現するようにしてもよい。
【0136】
なお、乗算処理部600と微分処理部620により構成される回路は図1における検出信号生成部60に対応し、加速度検出信号622は図1における検出信号62に対応する。
【0137】
加速度センサー1Eによれば、同期式カウンター300のカウント値302と同期式カウンター400のカウント値402の差に基づいて加速度を検出することができる。
【0138】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0139】
1…物理量センサー、1A…速度センサー、1B…速度センサー、1D…距離センサー、1E…加速度センサー、1F…物理量センサー、10…第1系統の周波数信号発生部、10A…第1系統の周波数信号発生部、11…第1系統の共振器、11A…第1系統の共振器、12…第1系統の周波数信号、12A…第1系統の周波数信号、14…水晶発振器、20…第2系統の周波数信号発生部、21…第2系統の共振器、22…第2系統の周波数信号、24…水晶発振器、25…基準値生成信号、26…制御信号、26A…制御信号、26B…制御信号、27…第2系統のPLL出力信号、28…制御信号、29…第1系統のPLL出力信号、30…第1系統のカウント部、32…カウント値、33…アナログ信号(発振制御電圧)、40…第2系統のカウント部、42…カウント値、50…デジタル演算部、52…クロック差分値、60…検出信号生成部、62…検出信号、70…第1系統の分周回路、72…第1系統のPLL回路、80…制御部、80A…制御部、90…第2系統のPLL回路、90A…第2系統のPLL回路、92…分数分周回路、100…水晶振動子、101…双音叉振動片、102…基部、103…基部、104…振動腕、105…振動腕、106…カンチレバー、107…固定端部、108…自由端部、109…連結部、110…発振回路、111…キャパシター、112…キャパシター、113…抵抗、114…抵抗、115…インバーター、120…クロック信号、200…水晶振動子、201…双音叉振動片、202…基部、203…基部、204…振動腕、205…振動腕、206…カンチレバー、207…固定端部、208…自由端部、209…連結部、210…発振回路、211…キャパシター、212…キャパシター、213…抵抗、214…抵抗、215…インバーター、216…バリキャップ、218…抵抗、220…クロック信号、300…同期式カウンター、302…カウント値、400…同期式カウンター、402…カウント値、500…減算処理部、502…減算値、510…レジスター、512…減算値、600…乗算処理部、602…速度検出信号、610…積分処理部、612…距離検出信号、620…微分処理部、622…加速度検出信号、900…位相比較器、902…ループフィルター、904…VCO(voltage controlled oscillator)、906…1/N分周器、920…デュアルモジュールプリスケーラー(DMP)、922…主カウンター、922A…主カウンター、923…分周器、924…スワローカウンター、942…基準信号、944…差信号、946…制御電圧、948…出力周波数、950…制御信号、952…比較信号、972…分周信号、974…比較信号、976…内部信号、978…内部信号、1001…第1系統、1002…第2系統

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所与の物理量を検出する物理量センサーであって、
第1系統の共振器を有し、前記第1系統の共振器の共振周波数と対応づけられた周波数の第1系統の周波数信号を発生する第1系統の周波数信号発生部と、
加速度の変化に応じて共振周波数が変化する第2系統の共振器を有し、前記第2系統の共振器の共振周波数と対応づけられた周波数の第2系統の周波数信号を発生する第2系統の周波数信号発生部と、
前記第2系統の周波数信号を基準信号として第2系統のPLL出力信号を出力する、分数分周方式の第2系統のPLL回路と、
前記第1系統の周波数信号に基づいて生成される基準値生成信号のクロック数をカウントする第1系統のカウント部と、
前記第2系統のPLL出力信号のクロック数をカウントする第2系統のカウント部と、
前記第1系統のカウント部のカウント値と前記第2系統のカウント部のカウント値に基づいて、前記基準値生成信号のクロック数と前記第2系統のPLL出力信号のクロック数の差を表すクロック差分値を計算するデジタル演算部と、
前記デジタル演算部が計算した前記クロック差分値に基づいて、前記物理量に応じたデジタル値の検出信号を生成する検出信号生成部と、
前記第1系統の周波数信号を受け取り、加速度が加わっていない状態における前記基準値生成信号の周波数と前記第2系統のPLL出力信号の周波数が一致するように前記第2系統のPLL回路を制御する制御部と、を含む、物理量センサー。
【請求項2】
請求項1に記載の物理量センサーにおいて、
前記第2系統のPLL回路は、
分周数としてPまたはP+1のいずれかを選択できる分周器であるデュアルモジュールプリスケーラーと、
カウント動作中は前記デュアルモジュールプリスケーラーに前記分周数としてP+1を選択させ、カウント停止中は前記分周数としてPを選択させるスワローカウンターと、を含み、
前記制御部は、
前記スワローカウンターがカウントを停止するタイミングを指定する、物理量センサー。
【請求項3】
請求項1乃至2のいずれかに記載の物理量センサーにおいて、
前記第1系統の周波数信号を基準信号とし、第1系統のPLL出力信号を出力する第1系統のPLL回路を含み、
前記第1系統の共振器は、加速度の変化に応じて共振周波数が変化し、
前記基準値生成信号は前記前記第1系統のPLL出力信号であり、
前記制御部は、
前記第1系統の周波数信号に代えて前記第1系統のPLL出力信号を受け取り、加速度が加わっていない状態における前記基準値生成信号の周波数と前記第2系統のPLL出力信号の周波数が一致するように前記第1系統のPLL回路および前記第2系統のPLL回路を制御する、物理量センサー。
【請求項4】
請求項3に記載の物理量センサーにおいて、
前記第1系統の共振器及び前記第2系統の共振器は、加速度の検出方向が互いに逆方向になるように配置されている、物理量センサー。
【請求項5】
請求項1乃至2のいずれかに記載の物理量センサーにおいて、
前記第1系統の周波数信号を受け取り、前記第1系統の周波数信号を分周した分周信号を出力する第1系統の分周回路を含み、
前記基準値生成信号は前記分周信号である、物理量センサー。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の物理量センサーにおいて、
前記検出信号生成部は、
前記デジタル演算部が計算した前記クロック差分値に所与の係数を乗算し、速度に応じたデジタル値の前記検出信号である速度信号を生成する、物理量センサー。
【請求項7】
請求項6に記載の物理量センサーにおいて、
前記検出信号生成部は、
前記速度信号を積分し、移動距離に応じたデジタル値の前記検出信号を生成する、物理量センサー。
【請求項8】
請求項6に記載の物理量センサーにおいて、
前記検出信号生成部は、
前記速度信号を微分し、加速度に応じたデジタル値の前記検出信号を生成する、物理量センサー。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の物理量センサーにおいて、
前記第2系統の周波数信号発生部は、
前記第2系統の共振器を発振させるとともに、入力されたアナログ信号に基づいて前記第2系統の周波数信号を調整でき、
前記制御部は、
D/Aコンバーターを含み、
前記D/Aコンバーターから出力される前記アナログ信号を制御する、物理量センサー。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2011−232144(P2011−232144A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101963(P2010−101963)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)