説明

特にイヤピースの立体リトグラフィー製造のための低粘度の放射線硬化可能な組成物

本発明は、医療技術において使用するため特にイヤピースを製造するため、特に立体リトグラフィー用の生体に適合する低粘度の放射線硬化可能な組成物に関し、ビスフェノールA又はビスフェノールFに基く55〜95重量%の単量体又は低重合体のジメタクリレート、4より小さい反応性度及び15Pa sより小さい粘度を持つ0〜0重量%のウレタンメタクリレート、5Pa sより小さい粘度を持つ2〜15重量%の単量体の脂肪族又は脂環式ジメタクリレート、3Pa sより小さい粘度を持つ0〜15重量%の単官能メタクリレート、使用されるレーザ光線の波長範囲にある吸収を持つ0.5〜6重量%の1つの光開始剤又は複数の光開始剤の組合わせ、既知の抑制剤とも関連する0.0001〜2重量%の抑制剤2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−イロキシ(遊離基)、0〜40重量%の充填材、0〜5重量%の顔料、紫外線安定剤又は流展添加剤のような0〜5重量%の普通の添加剤を含み、成分a)〜h)の割合が全体で100重量%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療技術製品の立体リトグラフィー製造のため特にイヤピースの製造のため、基を重合可能な少なくとも2つの化合物、及び適当な化合物の重合に適し少なくとも1つの光開始剤、及び立体リトグラフィー樹脂の安定化のために用いられる少なくとも1つの抑制剤2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−イロキシ(遊離基)に基く、低粘度の放射線硬化可能な組成物に関し、抑制剤は、立体リトグラフィー樹脂用技術において既に公知の他の抑制剤のほかに、このような組成物のための非常に有利な組成成分として適している。
【背景技術】
【0002】
米国特許第4,575,330号明細書から、立体リトグラフィーにより三次元物体を製造するための低粘度の放射線硬化可能樹脂又は樹脂混合物を使用できることが公知である。
【0003】
更に米国特許第5,487,012号明細書及び国際公開第WO01/87001号から、イヤピースを製造するため立体リトグラフィーを有利に使用できることが公知である。立体リトグラフィー法では、組成物のそれぞれ1つの薄い層(約0.0025〜0.01mm)が化学線により所定のように予備硬化されて、形成される層がこの個所における物体の所望の断面形状を示す。同時に、形成される層が、前の段階で硬化された層に重合される。物体全体の構成は、例えばNd:YV0固体レーザ(米国3D System社の(Viper si SLA System)のようにコンピュータ制御されるレーザシステムによって行われる。製造される成形体は、場合によっては、例えば放射線硬化によって後硬化される。
【0004】
立体リトグラフィープロセスにおいて使用可能な樹脂組成物には、特別な要求が課される。ここでは特に放射線感度、樹脂組成物の粘度、及びレーザ硬化により予備硬化される成形体の強度があげられる。完全には硬化されないこの成形体は立体リトグラフィーの技術では生素材と称され、弾性係数及び曲げ強度によって特徴づけられるこの素材の強度は生強度と称される。生強度は、立体リトグラフィーの慣習では重要なパラメータである。なぜならば、小さい生強度を持つ成形体は、立体リトグラフィープロセス中に、その自重で変形するか、又はキセノンアーク灯又はハロゲン灯による後硬化中に沈下又は曲がることがあるからである。従って上記の要求を考慮して、複雑に調合されかつ構成される組成物が使用される。
【0005】
例えば Rev. Sci. Mstrum. 52(11),1170〜1173(1981)においてH.Kodamaにより、低粘度の放射線硬化可能な樹脂組成物が開示され、この組成物は不飽和ポリエステル、アクリル酸エステル、スチロール及び重合開始剤から成っている。しかし立体リトグラフィー技術における使用に関して、この樹脂組成物は小さい生強度及び不充分な光感度しか持っていない。
【0006】
同様に生産技術の視点からも不充分な光感度を、米国特許第4,100,141号明細書に開示された樹脂組成物も持っている。小さい光感度は、成形体の製造のために長い時間が必要になることを意味している。従って立体リトグラフィー樹脂組成物の光感度を調節して、低粘度の放射線硬化可能な樹脂組成物へのレーザ光線の得られる侵入深さと消費される放射線エネルギとの関係から、小さい放射線エネルギによりできるだけ大きい硬化深さが、同時に高い重合度、良好な生強度、及び自己重合に対する樹脂組成物の充分な安定性で得られるようにせねばならない。上記の要求を一部満たす液状の放射線硬化可能な樹脂組成物は、例えば米国特許第5,476,748号明細書又は国際公開第WO99/50711号に記載されている。しかし「ハイブリッドシステム」と称されるこれらの組成物は、基及び陽イオンで重合可能な成分の組合わせを含んでいる。これらの組成物は、第1には、液状の2機能又は多機能エポキシ化合物の混合物から成り、第2には、陽イオン光開始剤又は複数の陽イオン光開始剤の混合物から成り、第3には、遊離基重合のための光開始剤又は複数の光開始剤の混合物と、2より大きい(メタクリレート)アクリレート反応性度を持つ低粘度のポリ(メタクリレート)アクリレート、ジアクリレート及び水酸基で終わるポリエーテル、ポリエステル及びポリウレタンの群から成るポリアルコール成分とから成っている。このような組成物が毒物学的な観点から危険と評価され、従って医薬品の製造には全く使用できないか又は限定されてのみ使用できることは、当業者に周知である。例えば陽イオン光開始剤が皮膚刺戟及びアレルギー反応の原因となることは周知である。このような組成物に使用されるエポキシ機能を持つ化合物についても、同じことが当てはまる。更にアクリレート化合物も同様に高いアレルギー可能性を持ち、従って欧州特許第0425441号、第0914242号及び第0579503号明細書に記載されているように、生体適合性の観点で例えばイヤピースの製造のために使用することができない。医療技術で使用するために、ビスフェノールA又はビスフェノールFに基く単量体又は低重合体のジメタクリレート及び2以上の反応性度を持つウレタンメタクリレートがよいことがわかった。しかしアクリレート化合物の群と比較して、立体リトグラフィーの技術のために、メタクリレート化合物の群は一層小さい反応性を持っている。その結果レーザ光線の侵入深さ及び予備硬化される物体の生強度に関する欠点が生じる。この化合物クラスの小さい反応性のため、更に遊離基重合のための1つ又は複数の光開始剤のもつと高い濃度を使用することが必要である。これは、樹脂組成物の自己重合の安定化の減少の原因となる。更に立体リトグラフィーの技術において、小さい質量の多数の小部分の物体を製造する際、立体リトグラフィー樹脂組成物の高い機械的及び熱的負荷が存在し、立体リトグラフィー樹脂の自己重合又は樹脂組成物及びこれから形成される成形体の変化する性質の原因となることが周知である。これは、一方では、僅かな樹脂消費で、台板上に固定されて予備硬化される成形体を、比較的頻繁に立体リトグラフィー装置の構成空間から除去せねばならないことに帰因する。その結果構成空間における立体リトグラフィー樹脂の温度変動が生じる。他方では、イヤピースの製造の際、形成される成形体の比較的大きい表面積−体積比が生じる。遊離基重合の際、酸素侵入の結果成形体の表面に抑制層が残ることが周知である。不完全にしか重合開始又は重合完了しない樹脂は、試料体の表面の構成過程中に、立体リトグラフィー樹脂へ溶け込むことがある。
【0007】
これらの点から、立体リトグラフィー技術によりイヤピースを製造する際、低粘度の放射線硬化可能な樹脂組成物の安定化が重要なパラメータであることが明らかである。従って製造技術的な観点から、レーザ光線のできるだけ一定な侵入深さで、立体リトグラフィー樹脂組成物の臨界エネルギを使用に応じて設定できることが望ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、医療製品特にイヤピースの製造ために立体リトグラフィー樹脂組成物を利用可能にし、この組成物が、機械的、毒物学的要求及び立体リトグラフィーによる急速製造に課される要求を満たすことである。
【0009】
さてビフェノールA又はビフェノールFに基きかつ1つ又は互いに異なる複数の単量体又は低重合体のジメタクリレートから成る樹脂混合物が、更に4より小さい反応性度及び10Pa sより小さい粘度を持つウレタンメタクリレート、3Pa sより小さい粘度を持つ単量体の脂肪族又は脂環式ジメタクリレート、及び2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−イロキシ(遊離基)を含み、立体リトグラフィーの技術のために使用でき、レーザによる硬化の際予備硬化されかつ高い生強度の点ですぐれている成形体を生じることがわかった。驚くべきことに、抑制剤2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−イロキシ(遊離基)により、放射線硬化可能な低粘度立体リトグラフィー樹脂組成物が製造可能であり、レーザ光線の侵入深さに対する臨界エネルギの比が広い範囲内で設定可能であることがわかった。硬化により得られる成形体は、良好な機械的特性のほかに、すぐれた生体適合性を持ち、弾性的であり、例えば研摩塗装のように後処理可能である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従って本発明の対象は、
a)ビスフェノールA又はビスフェノールFに基く55〜95重量%の単量体又は低重合体のジメタクリレート、
b)4より小さい反応性度及び15Pa sより小さい粘度を持つ0から0重量%のウレタンメタクリレート、
c)5Pa sより小さい粘度を持つ2〜15重量%の単重量体の脂肪族又は脂環式ジメタクリレート、
d)3Pa sより小さい粘度を持つ0〜15重量%の単官能メタクリレート、
e)使用されるレーザ光線の波長範囲にある吸収を持つ0.5〜6重量%の1つの光開始剤又は複数の光開始剤の組合わせ、
f)既知の抑制剤とも関連する0.0001〜2重量%の抑制剤2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−イロキシ(遊離基)
g)0〜40重量%の充填材、
h)0〜5重量%の顔料
i)紫外線安定剤又は流展添加剤のような0〜5重量%の普通の添加剤を含み、
成分a)〜h)の割合が全体で100重量%である、低粘度の放射線硬化可能な立体リトグラフィー樹脂である。
【0011】
本発明による混合物は、好ましくは、
a)10より小さいエトキシ化度を持つn重にエトキシ化された60〜90重量%のビスフェノール−A−ジメタクリレート、又は10より小さいエトキシ化度を持つn重にエトキシ化されたビスフェノール−A−ジメタクリレートの混合物、
b)4より小さい反応性度及び10Pa sのより小さい粘度を持つ5〜17重量%の脂肪族又は脂環式ウレタンメタクリレート、
c)3Pa sより小さい粘度を持つ3〜10重量%の単重体の脂肪族又は脂環式ジメクリレート、
d)3Pa sより小さい粘度を持つ2〜10重量%の単官能メタクリレート、
e)使用されるレーザ光線の波長範囲にある吸収をもつ1〜4重量%の1つの光開始剤又は複数の開始剤の組合わせ、
f)既知の抑制剤とも関連する0.005〜0.05重量%の抑制剤2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−イロキシ(遊離基)、
g)0〜20重量%の充填材、
h)0〜5重量%の顔料、
i)紫外線安定剤又は流展添加剤のような0.01〜3重量%の普通の添加剤を含み、
成分a)〜h)の割合が全体で100重量%である。
【0012】
成分a)の化合物として、例えばビスフェノール−A−エトキシレート(2)ジメタクリレート、ビスフェノール−A−プロポキシレート(2)ジメタクリレート、ビスフェノール−A−プロポキシレート(4)ジメタクリレートのような(n)アルコオキシ化ビスフェノールAのジメタクリレート、及びビスフェノール−F−エトキシレート(2)ジメタクリレート、ビスフェノール−F−エトキシレート(4)ジメタクリレート、ビスフェノール−F−プロポキシレート(2)ジメタクリレート、ビスフェノール−F−プロキシレート(4)ジメタクリレート及びこれらの混合物のような(n)−アルコオキシ化ビスフェノールFのジメタクリレートが適している。ビスフェノールAに基く単量体又は低重合体のジメタクリレート、特にビスフェノール−A−エトキシレート(2)ジメタクリレート及びビスフェノール−A−エトキシレート(4)ジメタクリレートが好んで使用される。ビスフェノール−A−エトキシレート(2)ジメタクリレートより大きい割合のビスフェノール−A−エトキシレート(4)ジメタクリレートを持つビスフェノール−A−に基くこれら両方のジメタクリレートの混合物が特に好ましい。
【0013】
本発明による組成物において成分b)として使用される4より小さい反応性度を持つウレタンメタクリレートは周知であり、例えば水酸基で終わるポリウレタンとメタクリル酸とを反応させて適当なウレタンメタクリレートにするか、又はイソシアネートで終わる初期重合体とヒドロキシメタクリレートとを反応させることによって、周知のように製造することができる。適当な方法は欧州特許第0579503号明細書から公知である。ウレタンメタクリレートは市販で得られ、例えばPiccadilly Chemical社の登録商標PC−Currで、Startomer社の製品名CN1963で、またRahn社の登録商標Genomerで販売されている。
【0014】
ウレタンメタクリレートとして、好ましくは、4より小さい反応性度で脂肪族遊離体から製造されるもの、特にHEMA及びTMDIから得られる異性体混合物7,7,9−(又は7,9,9−)トリメチル−4,13−ジオキソ−3,14−ジアクサ−5,12−ジアザヘキサデカン−1,16−ジオール−ジメタクリレートが使用される。
【0015】
成分c)の化合物として、例えば1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,6ヘキサンジオールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート及びなるべく1,4−ブタンジオールジメタクリレートを使用することができる。このような製品は、市販で例えばStartomer社から得られる。
【0016】
本発明による組成物において、成分d)として例えば次の化合物を得ることができる。即ちアリルメタクリレート、メチル−、エチル−、n−プロピル−、n−ブチル、イソブチル、n−ヘキシル−、2−エチルヘキシル−、n−オクチル−、n−デシル、n−ドデシル、イソボルニル、イソデシル、ラウリル−、ステアリル−メタクリレート、2−ヒドロキシエチル−、2−及び3−ヒドロキシプロピル−メタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート及びシクロヘキシルメタクリレート。特にエチルメタクリレートが好ましい。
【0017】
成分e)として、光開始剤として、適当な照射の際遊離基を形成するすべての形式を使用することができる。公知の光開始剤は次のような化合物である。即ちベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル及びベンゾインアセテートのようなベンゾイン類、ベンゾインエーテルの化合物、アセトフェノン、2,2−ジメトキシアセトフェノン及び1,1−ジクロルアセトフェノンのようなアセトフェノン類、ベンジルジメチルケタール及びベンジルジエチルケタールのようなベンジルケタール、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−第3−ブチルアントラキノン、1−クロルアントラキノン及び2−アミルアントラキノンのようなアントラキノン類、例えば2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィン酸化物(Lugirin TPO)及びビス(2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニル)−フォスフィン酸化物のようなトリフェニルフォスフィン、ベンゾイルフォスフィン酸化物類、ベンゾフェノン及び4,4′−ビス−(N,N′−ジメチルアミノ)−ベンゾフェノンのようなベンゾフェノン類、チオキサントン類及びキサントン類、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、キノオクザリン誘導体又は1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−0−ベンゾイルオキシム、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、フェニル−(1−ヒドロキンイソプロピル)−ケトン及び4−イソプロピルフェニル−(1−ヒドロキンイソプロピル)−ケトンのような1−アミノフェニルケトン類又は1−ヒドロキンフェニルケトン類、Nd:YV0固体レーザと組合わせて使用される特に好ましい化合物は、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィン酸化物、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィン酸化物、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン及びこれらの光開始剤の混合物である。
【0018】
本発明による混合物では、抑制剤又は安定剤として2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−イロキシ(遊離基)が使用される。組成物例1における2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−イロキシ(遊離基)の濃度がレーザ光線の侵入深さ及び臨界エネルギに及ぼす影響が図1及び2に示されている。レーザ侵入深さ及び臨界エネルギは、P.F.Jacobs und D.T.Reid in Rapid Prototyping & Manufacturing, Society of Manufacturing Engineers,Dearborn,MI,1992,1st.ed., S.263−280に記載されているWindowpane法により求められた。図からわかるように、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−イロキシ(遊離基)の僅かな添加でも、レーザ光線の侵入深さにおいて臨界エネルギの著しい上昇を生じる。立体リトグラフィー樹脂の重要なパラメータEc(臨界エネルギ、mJ/cm)及びDp(レーザ侵入深さ、mils)へ抑制剤2,2,6,6−テトラメチルピペリジン(遊離基)が及ぼすこの影響は、従来技術に相当する立体リトグラフィー樹脂に加えられる例えばハイドロキノン−モノメチルエーテルのような抑制剤の影響とは相違している。組成物例2においてEc及びDpへ及ぼすハイドロキノン−モノメチルエーテルの影響が図3及び4に示されている。抑制剤2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−イロキシ(遊離基)の影響と比較して、立体リトグラフィー樹脂の臨界エネルギは、著しく小さい範囲において、著しく高い濃度のハイドロキノンモノメチルエーテルの濃度によってのみ調節可能である。更にレーザ侵入が深さに及ぼす抑制剤ハイドロキノンモノメチルエーテルの影響は、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−イロキシ(遊離基)を使用する場合より大きい。これは、着色又は不透明立体リトグラフィー樹脂のパラメータを調節せねばならない時に特に不利である。なぜならば、色素又は染料の添加により、レーザ侵入深さが同様に低下されるからである。上記の説明によれば、こうして製造技術的な観点から成形体の構成時間の望ましくない延長が起こることがある。しかし医療技術の分野における立体リトグラフィー樹脂の場合、特にイヤピースを製造するための立体リトグラフィー樹脂の場合、着色又は不透明立体リトグラフィー樹脂組成物は特に重要である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
例1
70.3−x重量% ビスフェノール−A−エトキシレート(4)ジメタクリレート
14.4重量% ビスフェノール−A−エトキシレート(2)ジメタクリレート
9.2重量% 7,7,9−(又は7,9,9−)トリメチル−4,13−ジオ キソ−3,14−ジオキサ−5,12ジアザ−ヘキサデカン−1 .16−ジオール−ジメタクリレート
4.6重量% 1,4−ブタンジオールジメタクリレート
1.5重量% ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフ ィン酸化物
x重量% 2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−イロキシ(遊離 基)
2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−イロキシ(遊離基)は、x=0,0.005;0.01,0.02及び0.05重量%の濃度で使用された。
【0020】
例2
70.3−x重量% ビスフェノール−A−エトキシレート(4)ジメタクリレート
14.4重量% ビスフェノール−A−エトキシレート(2)ジメタクリレート
9.2重量% 7,7,9−(又は7,9,9−)トリメチル−4,13−ジオ キソ−3,14−ジオキサ−5,12ジアザ−ヘキサデカン−1 ,16−ジオール−ジメタクリレート
4.6重量% 1,4−ブタンジオールジメタクリレート
1.5重量% ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィ ン酸化物
x重量% ハイドロキノン−モノメチルエーテル
抑制剤ハイドロキノン−モノメチルエーテルは、x=0,0.1,0.2,0.4,0.6及び1重量%の濃度で使用された。
【0021】
図1は、例1による樹脂組成物のレーザ侵入深さに及ぼす2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−イロキシの濃度の影響を示している。
【0022】
図2は、例1の樹脂組成物の臨界エネルギに及ぼす2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−イロキシの濃度の影響を示している。
【0023】
図3は、例2の樹脂組成物のレーザ侵入深さDpに及ぼすハイドロキノン−モノメチルエーテルの濃度の影響を示している。
【0024】
図4は、例2の樹脂組成物の臨界エネルギに及ぼすハイドロキノン−モノメチルエーテルの濃度の影響を示している。
【0025】
本発明による混合物には、必要な場合、周知の添加物例えば流展添加剤、紫外線安定剤、湿潤剤、充填材、染料及び色素を添加することができる。本発明の意味において特に適した染料は、例えばBayer社からMacrolexの名称で販売されているようなアントラキノン染料調合剤である。
【0026】
使用例
例3 黄ばんだ不透明な立体リトグラフィー樹脂
66.69重量% ビスフェノール−A−エトキシレート(4)ジメタクリレート
15.6重量% ビスフェノール−A−エトキシレート(2)ジメタクリレート
10重量% 7,7,9−(又は7,9,9−)トリメチル−4,13−ジオ キソ−3,14−ジオキサ−5,12−ジアザ−ヘキサデカン− 1,16−ジオール−ジメタクリレート
5重量% 1,4−ブタンジオールジメタクリレート
1.5重量% ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニールフォス フィン酸化物
0.8重量% 発熱性珪酸
0.4重量% 酸化鉄色素
0.01重量% 2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−イロキシ(遊離 基)
【0027】
例4 青色の透明な立体リトグラフィー樹脂
69.035重量% ビスフェノール−A−エトキシレート(4)ジメタクリレート
15.6重量% ビスフェノール−A−エトキシレート(2)ジメタクリレート
10重量% 7,7,9−(又は7,9,9−)トリメチル−4,13−ジオ キソ−3,14−ジオキサ−5,12−ジアザ−ヘキサデカン− 1,16−ジオール−ジメタクリレート
3.8重量% 1,4−ブタンジオールジメタクリレート
1.5重量% ビス(2,4,6−トワメチルベンゾイル)−フェニールフォス フィン酸化物
0.03重量% アントラキノン−染料−調合剤(C.I.溶剤青97を含む)
0.025重量% 紫外線安定剤
0.01重量% 2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−イロキシ(遊離 基)
【0028】
例5 赤の透明な立体リトグラフィー樹脂
69.055重量% ビスフェノール−A−エトキシレート(4)ジメタクリレート
15.6重量% ビスフェノール−A−エトキシレート(2)ジメタクリレート
10重量% 7,7,9−(又は7,9,9−)トリメチル−4,13−ジオ キソ−3,14−ジオキサ−5,12−ジアザ−ヘキサデカン− 1,16−ジオール−ジメタクリレート
3.8重量% 1,4−ブタンジオールジメタクリレート
1.5重量% ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニールフォス フィン酸化物
0.025重量% 紫外線安定剤
0.01重量% アゾ染料赤H
0.01重量% 2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−イロキシ(遊離 基)
【0029】
立体リトグラフィーの技術にとって重要な上記樹脂のパラメータが表1に示されている。すべての粘度測定は、23℃においてBohlin Mstruments社のCVO120−Rheometerにより行われた。曲げ強度、弾性係数及び伸びの決定はZwick社のZwick1−TestmaschineによりENISO178(1996)に従って行われた。上記のWindowpane法によりEc及びDpの値を求めるため、10個のWindowpane試料体から平均値が求められた。試料体は、Nd:YVO固体レーザを備えたViper si SLA装置により製造された、生素材は、Mnovation Meditech社のストロボスコープ露光装置SonoluxPRにより、4000フラッシュによって後硬化された。
【0030】
例3〜5の立体リトグラフィー樹脂組成物の完全に硬化された試料体により、更に組成物の細胞毒、刺激及びアレルギー化又は感作の可能についての調査が行われた。
【0031】
刺激効果を測定するため、ISO10993−10(2002)、ISO10993−12(2002)及びISO17025(1999)に基いて、白いニュージーランド飼兎についてのテストが行われた。これらの兎に、検査液及び試料体のテスト抽出物が皮内注射された。テストの結果、上記の立体リトグラフィー組成物の刺激は無視できることがわかった。
【0032】
試料体に対する哺乳動物細胞培養の生物学的反応を測定するための別のテスト系列において、ISO10993−5(1999)、ISO10993−12(2004)及びISO17025(1999)による溶出テストが行われた。L929哺乳動物細胞の生物学的反応性(0度)は見出されなかった。従って上記の材料は細胞毒がなく、ISO10993−5の規定を満足している。更に試料体のアレルギー化可能性及び感作特性が、ISO10993−10(2002)、ISO10993−12(2002)に基く検査系列により、F.N.Marzulli und H.I.Maibach(eds.),5thed.,1996,Seiten 403,440−441,Hemisphere Publishing Corporation,New York,B.Magnusson und A.M.Kligman,J.Invest.Dermatol.52:268−276(1969),B.Magnusson und A.M.Kligman,1970,Allergic contact dermatitis in the guinea pig.Identification of contactallergens,Springfield,IL.:Thomasに従って評価された。上記の立体リトグラフィー組成物は生物学的反応を生じなかった(0%の感作)。Kligmanによる階級によれば、それは1度の反応なので、立体リトグラフィー組成物のアレルギー化の可能性は弱いものと格づけされる。Magnusson及びKligmanによる1度の感作割合は著しいものとはみなされない。これらの結果から、本発明による立体リトグラフィー組成物が医療技術の分野において、特にイヤピースの製造のために使用可能なことが明らかになる。
【0033】
表3には、医療技術的使用のために構想されているVantico社の商業的に得られる不透明な立体リトグラフィー樹脂LLS71410の機械的及び化学的パラメータが示されている。この表から、本発明による組成物は、有利に著しく小さい粘度と高いDp値を持っていることがわかる。更に開示されている組成物の機械的性質即ち曲げ強度及び弾性係数は、商業的に得られる製品の値より著しく上にある。その上Vantico社の材料は細胞毒なしとして格付けされるが、細胞毒性を決定するための実験系列において、1度に相当する軽微な生物学的反応を生じる。医療技術分野における使用を考慮して、本発明による組成物ではそうではない。
【0034】
例3〜5の本発明によるすべての立体リトグラフィー組成物は、製造技術上の観点から、2250mPa sの理想的粘度及び生強度を持っている。イヤピースを製造するための従来の技術は、耳型の雌型へ注入される自己重合又は光硬化材料に基いている。イヤピースを製造するため従来の技術において使用される材料(例えばDreve Otoplastik GmbH社の登録商標名Fotoplast)と比較して、完全に硬化した成形体の機械的値即ち曲げ強度及び弾性係数は著しく高い。
【0035】

【0036】

【0037】

【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】例1の樹脂組成物のレーザ侵入深さに及ぼす濃度の影響を示す線図である。
【図2】例1の樹脂組成物の臨界エネルギに及ぼす濃度の影響を示す線図である。
【図3】例2の樹脂組成物のレーザ侵入深さに及ぼす濃度の影響を示す線図である。
【図4】例2の樹脂組成物の臨界エネルギに及ぼす濃度の影響を示す線図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療技術において使用するため特にイヤピースを製造するため、特に立体リトグラフィー用の生体に適合する低粘度の放射線硬化可能な組成物であって、
a)ビスフェノールA又はビスフェノールFに基く55〜95重量%の単量体又は低重合体のジメタクリレート、
b)4より小さい反応性度及び15Pa sより小さい粘度を持つ0〜0重量%のウレタンメタクリレート、
c)5Pa sより小さい粘度を持つ2〜15重量%の単量体の脂肪族又は脂環式ジメタクリレート、
d)3Pa sより小さい粘度を持つ0〜15重量%の単官能メタクリレート、
e)使用されるレーザ光線の波長範囲にある吸収を持つ0.5〜6重量%の1つの光開始剤又は複数の光開始剤の組合わせ、
f)既知の抑制剤とも関連する0.0001〜2重量%の抑制剤2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−イロキシ(遊離基)、
g)0〜40重量%の充填材、
h)0〜5重量%の顔料、
i)紫外線安定剤又は流展添加剤のような0〜5重量%の普通の添加剤を含み、
成分a)〜h)の割合が全体で100重量%である、
組成物。
【請求項2】
a)10より小さいエトキシ化度を持つn重にエトキシ化された60〜90重量%のビスフェノール−A−ジメタクリレート、又は10より小さいエトキシ化度を持つn重にエトキシ化されたビスフェノール−A−ジメタクリレートの混合物、
b)4より小さい反応性度及び10Pa sのより小さい粘度を持つ5〜17重量%の脂肪族又は脂環式ウレタンメタクリレート、
c)3Pa sより小さい粘度を持つ3〜10重量%の単量体の脂肪族又は脂環式ジメタクリレート、
d)3Pa sより小さい粘度を持つ2〜10重量%の単官能メタクリレート、
e)使用されるレーザ光線の波長範囲にある吸収をもつ1〜4重量%の1つの光開始剤又は複数の開始剤の組合わせ、
f)既知の抑制剤とも関連する0.005〜0.05重量%の抑制剤2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−イロキン(遊離基)、
g)0〜20重量%の充填材、
h)0〜5重量%の顔料、
i)紫外線安定剤又は流展添加材のような0.01〜3重量%の普通の添加剤を含み、
成分a)〜h)の割合が全体で100重量%である、
請求項1に記載の混合物の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−500759(P2007−500759A)
【公表日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−520655(P2006−520655)
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【国際出願番号】PCT/DE2004/001262
【国際公開番号】WO2005/001570
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(597083323)ドレーベ−オートプラステイーク・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング (2)
【氏名又は名称原語表記】Dreve−Otoplastik GmbH
【Fターム(参考)】