特に回内及び回外の両方又はこれらのいずれか一方を調整する調節可能な安定性向上システムを備えた履物
【課題】使用時の用途の広さと信頼性の高さを実現するだけでなく、簡易で実用的な構造を備えた新規の調節可能な安定性向上システムを設けた履物を提供する。
【解決手段】特に回内現象と回外現象の両方及びこれらのいずれか一方を調整する調節可能な安定性向上システムを備えたソール部を有する履物1であって、前記調節可能な安定性向上システムは、前記ソール部の構成材4に設けたシート部内における位置を少なくとも2通り切り替えることができる調節部材12を少なくとも1つ備え、前記調節部材12は、圧縮度の異なる領域を少なくとも2つ備える。
【解決手段】特に回内現象と回外現象の両方及びこれらのいずれか一方を調整する調節可能な安定性向上システムを備えたソール部を有する履物1であって、前記調節可能な安定性向上システムは、前記ソール部の構成材4に設けたシート部内における位置を少なくとも2通り切り替えることができる調節部材12を少なくとも1つ備え、前記調節部材12は、圧縮度の異なる領域を少なくとも2つ備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、履物に関し、特に調節可能な安定性向上システムを備えたソール部を有するスポーツ用の履物に関する。
【背景技術】
【0002】
足の運び方、すなわち、歩行時又はランニング時における足の接地の仕方は、対象となるものの形態学的な特徴と生体力学的な特徴の両方又はいずれか一方の特徴に応じて、個々人ごとに異なる。一部の人間は、生体力学的な見地から実質的に正しいとされる「中立位置を維持した」歩き方で、足を接地している。一方、それ以外の人の場合には、特に過度な回内(内側に傾いた足の置き方)又は回外(外側に傾いた足の置き方)が起因して、足を接地した時にいくつかの問題が生じる。簡潔に述べると、回内の場合、体重の重みのほとんどが足の内側(専門用語で、「ミディアル(medial)」)の端部にかかってしまうようなポジションに足が位置してしまう。一方、回外の場合、体重の重みが足の外側(専門用語で、「ラテラル(lateral)」)の端部にかかってしまうようなポジションに足が位置してしまう。普通にウォーキングしている時には、歩き方の欠点に起因した影響が生じない人であっても、ランニング時又はスポーツ時において、過度な回内又は回外に苦しむことがある。
【0003】
上記のようなことが理由となって、現在では、「中立位置維持型」の履物と「安定性向上型」の履物とが、市場(特にランニングシューズの市場)で入手可能になっている。
【0004】
「中立位置維持型」の履物は、均一な硬さのミッドソールを備えるため、足の接地の際に生じる欠点に苦しむことがない人に用いられる。一方、「安定性向上型」の履物は、部分的に硬さの異なるミッドソールを備えるため、過度な回内又は回外に悩む人、特に長距離走時にそれが顕著な人に用いられる。
【0005】
「安定性向上型」の履物のミッドソールは、踵の内側域に、他の部分よりも高い硬度を有する1つ以上の部位を組み入れ、この部位の領域内ではミッドソールの圧縮に対する抵抗力が増すように形成されている。これにより、足を接地した際の回内を調整、サポートし、足への補助を向上させることが可能となる。欧州特許出願0315340号には、このような解決手段が記載されており、上記問題点の詳細な実験を記載した前記先行技術文献を紹介している。
【0006】
したがって、履物の製造業者は、「中立位置維持型」の履物と「安定性向上型」の履物の両方を製造しなければならない。前記のような部位を組み入れた「安定性向上型」の履物では、ミッドソールの硬度又は圧縮力が相互に異なるように、同型の履物を数種類製造する必要がある(足の接地時にかかる荷重は、生体力学及び個人の体重によって異なるからである。)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記製品の種類を多様化した場合、製造業者にとっては、多様な製品の製造が可能な工場設備を建設しなければならないという問題があり、小売業者にとっては、それぞれ異なる顧客の要求に対応することができるように同型の履物の種類をかなり多く準備しておかなければならないという問題がある。
【0008】
前記の問題点を解消する観点から、ミッドソールに少なくとも1つのエアチャンバー(空気室)を規定する部位と、弁機構を備えた調節手段とを設けて、空気圧を異ならせて膨らませることができる履物が提案されている。前記タイプの解決手段を採用した場合、ミッドソールの形状は、矯正が必要な回内の範囲内で変形する。前記手段の実施例は、国際出願98/56272号に記載されている。前記タイプの解決手段は、ミッドソールの圧縮度を調節する目的で使用するのが困難であるばかりでなく、複雑で費用がかかるという問題がある。前記の問題とは別に、弁が壊れた場合には、調節システムが使用できなくなるという問題もある。
【0009】
欧州特許出願0258718号に記載された公知のランニング用の履物では、過度な回内に抗する手段として緩衝用のストリップを設け、該緩衝用のストリップは、踵部分の外側のミッドソールを囲み、ミッドソールに対して着脱可能な方法で固定されている。前記解決手段では、時間が経過すれば有効でないことが判明している。前記履物を使用した場合、ミッドソールに対して着脱可能に固定された緩衝用のストリップ及び手段を損傷するという危険性があるからである。
【特許文献1】欧州特許出願0315340号
【特許文献2】国際出願98/56272号
【特許文献3】欧州特許出願0258718号
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記観点から、本発明は、使用時の用途の広さと信頼性の高さを実現するだけでなく、簡易で実用的な構造を備えた新規の調節可能な安定性向上システムを設けた履物、特に、回内と回外の両方又はこれらのいずれか一方を調整する履物を製造することを目的とする。前記目的の範囲内で、本発明は、特に、各ソール部の圧縮度を調節する段階を容易かつ単純化し、製造者、小売業者、及び消費者がこれを利用できるように着想した安定性向上システムを有する履物を製造することを目的とする。
【0011】
前記目的は、後述することで、より明らかになるであろうし、本出願の記述内容の不可欠な部分として、「特許請求の範囲」に記載された特徴を有する本発明の履物によって達成される。
【0012】
本発明のさらなる目的、特徴及び有利な点は、後述の説明及び添付の図面によって明らかになるが、後述の説明及び添付の図面は、非限定的な説明に使用される単なる実施例として提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1では、本発明のアスレチック用の履物又はランニング用の履物の全体が、参照符号1で示されている。履物1は、上方部2と下方部(ソール部)とを有し、本件で実施例として提示された下方部は、アウトソール3とミッドソール4とからなる。
【0014】
上方部2及びアウトソール3の詳細は、本発明の範囲外の事項であるので、詳細については説明を省略する。アウトソール3が、単一片又は複数の分離片からなる合成材(例えば、異なる硬度のゴム材)で作られていればよいということを述べれば十分である。
【0015】
ミッドソール4は、上方面と下方面と周面(周端部)とからなる本体部4aを有する。前記周面は、図2に示された外側区域と、図3に示された内側区域とを有する。内側区域は、履物1を履いた時に着用者のもう一方の足と向かい合うミッドソール4の周面の一部であるのに対し、外側区域は、内側区域の反対側に位置する周面の一部である。
【0016】
ミッドソール4は、上方部2とアウトソール3との間にあって、該アウトソール3上に位置する。履物1の内側には、不図示のアーチサポート型の中敷きが敷かれている。ミッドソール4の上方領域には、前記中敷き用の凹部4bが規定され、該凹部内には、少なくとも中敷きの一部が収納される。
【0017】
ミッドソール4の本体部4aは、弾性力を有した軽量の圧縮材(例えば、EVA材)を成形して製造され、例えば、本体部4a上面の周縁部に接着剤を塗布して上方部2に固定される。アウトソール3は、接着剤で本体部4aの下面に固定される。
【0018】
本発明の主な特徴は、ミッドソール4に、図1においてDの符号を用いて(全体を)示した調節可能な安定性向上システムを設け、回内と回外の両方又はいずれか一方を調整することにある。
【0019】
図4〜図6は、ミッドソール4の本体部4aを示している。これらの図においては、本体部4aの外側区域のみが示されているが(図5)、その加工は内側区域も同様であると考えればよい(例えば、図3参照)。
【0020】
図4に見られるように、シート部(キャビティ部)10が、本体部4aの後部、具体的には踵の領域に設けられ、該シート部10は、円形状の葉状区画を有する。本件ではシート部10の周壁は、4つの葉状部10a,10b,10c,10dを規定するように形成され、葉状部10aは本体部4aの後端に面し、葉状部10bは本体部4aの前端に面している。一方、葉状部10cは前記外側区域に面し、葉状部10dは前記内側区域に面している。シート部10の周壁は、開口路を介して本体部4aの外側と連通している。被覆材11が、図5及び図6に示したように、前記開口部の形状に対応して取り付けられている。実施例においては、被覆材11の少なくとも一部を透明の合成材料で形成して、例えば、図5に表されているように、シート部10の内部に面する窓部11aを設ける。後述のように、前記窓部11は検査手段を具体化したものであり、本発明の対象である安定性向上システムで設定された調節状態を視覚的に検査することができる。
【0021】
シート部10は、図7及び図8において12の参照数字を用いて全体を示した調節部材を保持するように構成され、その形状は、シート部10の大きさよりわずかに小さく、シート部10の形状と実質的に相互補完するような構成となっている。調節部材12は、略ディスク状で、約90°毎に配置された4つの葉状部12a,12b,12c,12dが調節部材12の周壁沿いに規定されている。
【0022】
調節部材12は、硬度の異なる(圧縮度の異なる)領域が隣接するように構成されている。実施例として図7に示されたものでは、調節部材12は、S1,S2及びS3の符号を用いて示された3つの領域からなる。領域S1には葉状部12a及び葉状部12dが含まれ、領域S2には葉状部12bが含まれ、領域S3には葉状部12cが含まれる。簡単な例を挙げれば、領域S1の硬度を55ショアCとし、領域S2の硬度を65ショアCとし、領域S3の硬度を75ショアCとする。
【0023】
調節部材12は、単一の材料で製造されてもよいが、硬度又は密度の異なる複数の領域が形成されていなければならない。また、調節部材12を、異なった硬度の複数の材料で製造し、硬度の異なる領域をそれぞれ形成してもよい。調節部材12を構成する材料は、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、伸張性のある二液型ポリウレタン(ヘキソシアン酸塩ポリオール)、ペバックス(登録商標、ポリアミド及びTPU)、EVAのような伸張性と架橋特性のある材料等、射出成形又は熱成形可能なものであればよい。調節部材12の合成体は、略環状のキャビティ部を設けるように構成されていてもよい。前記キャビディ部は、圧縮度の異なる区域が規定されるように、圧力差を設けて流動体(例えば、空気)を充填する補助チャンバーごとに分割される。
【0024】
図8に示されたように、円形ハウジング12eが、中央に六角形シート部12fを備えた調節部材12の下面に形成されている。調節部材12には、中央軸穴12gが設けられ、該中央軸穴12gの端部は、開口してシート部12fと連通する。
【0025】
ハウジング12eは、図9〜図11で示されたプレート13で構成された挿入部材を保持するように構成されている。プレート13は、例えば、熱可塑性プラスチック材のような剛性材料を単片にして形成されている。プレート13は、円形ベース壁13aを備える。円形ベース壁13aの中央から、管状部13bが突出し、実施例として示されたものでは、六角形状の内側域と外側域とを備える。
【0026】
図12及び図13は、調節可能な安定性向上システムを備えたミッドソール4の平面図と断面図である。
【0027】
調節部材12は、シート部10内に挿入され、シート部10の葉状部10a〜10dを葉状部12a〜12dで塞いだ状態にする。プレート13が固定された調節部材12の下面は、シート部10の底面に設置される。安定性向上システムが収納された場合には、調節部材12の2つの対向する葉状部、例えば、葉状部12c及び12dを、被覆材11の窓部11aを介して部分的に視認することができる。
【0028】
ミッドソール4の製造は、非常に容易である。
【0029】
ミッドソール4の本体部4aは、例えば、EVAを、公知の方法及び手段で成形することにより製造される。被覆材11用の開口路を備えたシート部10が設けられる。透明材を備えた被覆材11は、本体部4aに覆い成形されてもよいし、又は、一体成形されてもよい。また、前記被覆材11は、本体部4aの成形後に本体部4aに接着固定されてもよい。
【0030】
管状部13bのシート部12fに挿入してプレート13を調節部材12に固定した後、この調節部材12は、シート部10に収納される。プレート13は、ベース壁13aの幅広な平坦面を接着面として使用し、調節部材12のハウジング12e内に接着固定されるのが好ましい。
【0031】
上方部2をソール部上に取り付けた後、アーチサポート型の中敷きを、凹部4bがある履物1の内側に敷いて、調節可能な安定性向上システムを保護してもよい。図に示されているように、ミッドソール4の周面の内側区域と外側区域に設けた被覆材11の窓部を覗くと、調節部材12の葉状部12c及び葉状部12dを、部分的に視認することができる。本発明の好ましい実施形態においては、3つの領域S1,S2及びS3は、視覚的に異なった色又は外観形状で構成され、又は、窓部11aを介して視認できる部分に異なった印が付されるように構成される。
【0032】
履物の調節システムは、非常に容易に機能させることができる。
【0033】
調節部材12は、本体部4aのシート部10に固定されていないので、図4及び図5においてXで示された軸を中心にして360°回転させることができ、シート部10内で複数の切替位置を選択することができる。実施例として示されたものでは、シート部10の葉状部と調節部材12の葉状部とを組み合わせて、調節部材12の角度位置を4通り切り替えることができる。
【0034】
調節部材12が回転するように、調節部材12の中央軸穴12gに適当な工具の先端を挿入することができるようにすればよい。実施例として示されたものでは、前記工具は、アーレンキー(Allen key)であり、プレート13の管状部13bの六角状部に嵌合するのに適したサイズである(管状部13bは、種類の異なる工具(例えば、正方形断面のねじ回し又はスパナ)の先端に一致するような形状であってもよいことは明らかである。)。アーチサポート型の中敷きを履物1から取り外すことによって、中央軸穴12gを利用することができるようにしてもよいし、あるいは、中央軸穴12gと実質的に同軸の通路を、アーチサポート型の中敷きに設けてもよい。
【0035】
工具を使用して、調節部材12を時計回り又は反時計回りに回転させ、踵の内側区域又は外側区域の所望の位置に領域S1〜S3を移動させることができる。前記したように、調節部材12を90°ごとに回転させて、その位置を変更することができるので、踵の内側区域と外側区域に位置する前記領域S1〜S3の組み合わせは、4通りになる。具体的には、前記組み合わせは、(1)内側区域=S3−外側区域=S1、(2)内側区域=S2−外側区域=S1、(3)内側区域=S1−外側区域=S3、(4)内側区域=S1−外側区域=S2、の4通りである。
【0036】
前記安定性向上システムは、硬度の異なる部分を2つ以上備えているので、ミッドソール4の圧縮に対する抵抗力を変化させ、足の回内と回外の両方又はこれらのいずれか一方を調整することができる。
【0037】
アーチサポート型の中敷きを取り外した状態で調節する時でも、被覆材11内に挿入された2つの対向する葉状部によって、調節部材12がシート部10内に保持されるのが好ましい。本体部4aと調節部材12を構成する材料が変形して、調節部材12が「段階的に」回転する。調節部材12の葉状部とシート部10の葉状部とが嵌合することで、セットされた調節位置を確実に維持することができる。
【0038】
前記領域S1,S2,S3を色分けしたり、前記領域S1,S2,S3に印を付したりすることで、被覆材11の窓部11aを介して履物1の内側区域及び外側区域の外側から、調節を直接確認することができる。
【0039】
前記のことから、非常に簡易な方法で、ミッドソール4の圧縮度を、使用者の形態学的な特徴及び生体力学的な特徴に応じて変更できることは明らかである。前記手段は、履物の製造業者や小売業者だけでなく、同じ履物でも使用する状況が異なる場合を想定して調節しなければならない消費者にとっても特に有効なものとなる。前記の調節可能な安定性向上システムは、通常、アスレチック用の履物又はスポーツ用の履物(例えば、ランニングシューズやテニスシューズ)のミッドソールに適用されるものであるが、本発明は、あらゆる種類の履物に使用することも可能である。
【0040】
当然、「特許請求の範囲」に記載された本発明の範囲を逸脱しない範囲内で、説明及び図示された構造の細部及び実施の形態を変更することができる。
【0041】
前記非限定的な実施例では、本発明の安定性向上システムは、履物1の踵領域で作用するように構成されているが、前記安定性向上システムは、足の前方領域に設けてもよいことは明らかである。履物は前記と全く同一のもので、この履物に2つ以上の調節可能な安定性向上システムDを設けてもよく、例えば、1つを踵領域に、もう1つを足の前方領域に設ける。
【0042】
当然、調節部材12の切替位置の数は、4つより多くなってもよいし、少なくなってもよく、履物の種類に応じて異なるようにすればよい。シート部10と調節部材12の形状は、複数の位置に切り替えることが可能なように構成されていれば、実施例で示された形状と異なったものであってもよい。また、調節部材12の外形寸法は、履物の種類に応じて異なるようにしてもよい(例えば、トレーニング用の履物のミッドソールは、通常、競走用の履物に比べて幅広で、厚めに構成されるものである。)。
【0043】
実施可能な変形例として、例えば、体育館で使用される履物の場合、調節システムが履物の外側から直接調節できるように設計されていてもよい。このような変形例では、被覆材11は、開口部を備え、該開口部を介して、調節部材12の各周縁端部がミッドソール4の外側に突出するように設計される。この場合、調節部材12は、前記周縁端部を手で掴んで回転するハンドルのような役目を果たし、工具を使う必要がない。
【0044】
さらに実施可能な変形例として、被覆材11及びこれに関連する開口路を設けず、調節部材12をシート部10に対して着脱可能にし、角度位置を切り替えるように構成してもよい。この場合、履物1には、離脱可能なアーチサポート型の中敷きが敷かれることになる。
【0045】
図14及び図15には、本発明の実施可能な変形例が示されている。既述したものと技術的に同一の部材については、図1〜図13で使用された参照数字と同一の数字が付されている。この変形例では、調節部材12は、単一の材料(例えば、EVA)で成形され、空気その他の流動体を異なった圧力で充填する複数のチャンバー(充填室)が規定され、複数のチャンバー(充填室)は、それぞれS1a,S2a,S3aで示されている。各チャンバーは、調節部材12の各領域S1,S2,S3内で延在し、該各領域S1,S2,S3の圧縮度は、それぞれ異なっている。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明のスポーツ用の履物の側面図である。
【図2】「外側区域」を示した図1の履物のミッドソールの側面図である。
【図3】「内側区域」を示した図1の履物のミッドソールの側面図である。
【図4】図2及び図3のミッドソールの本体部の平面図である。
【図5】図2及び図3のミッドソールの本体部の側面図である。
【図6】図4のVI−VI線断面図である。
【図7】本発明の履物の安定性向上システムの一部を構成する調節部材の正面図である。
【図8】図7のVIII−VIII線断面図である。
【図9】図7の調節部材に挿入されるプレートの正面図である。
【図10】図7の調節部材に挿入されるプレートの側面図である。
【図11】図10のXI−XI線断面図である。
【図12】図4〜図6の本体部に図7及び図8の調節部材及び図9〜図11のプレートを挿入した状態のミッドソールの平面図である。
【図13】図12のXIII−XIII線断面図である。
【図14】本発明の変形例の安定性向上システムの一部を構成する調節部材の正面図である。
【図15】図14のXV−XV線断面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 履物
2 上方部
3 ソール部
4 ミッドソール
4a 本体部
4b 凹部
10シート部
10a,10b,10c,10d シート部の葉状部
11 被覆材
11a 窓部
D 安定性向上システム
12 調節部材
12a,12b,12c,12d 調節部材の葉状部
S1,S2,S3 圧縮度の異なる領域
13 プレート
13a 円形ベース壁
13b 管状部
【技術分野】
【0001】
本発明は、履物に関し、特に調節可能な安定性向上システムを備えたソール部を有するスポーツ用の履物に関する。
【背景技術】
【0002】
足の運び方、すなわち、歩行時又はランニング時における足の接地の仕方は、対象となるものの形態学的な特徴と生体力学的な特徴の両方又はいずれか一方の特徴に応じて、個々人ごとに異なる。一部の人間は、生体力学的な見地から実質的に正しいとされる「中立位置を維持した」歩き方で、足を接地している。一方、それ以外の人の場合には、特に過度な回内(内側に傾いた足の置き方)又は回外(外側に傾いた足の置き方)が起因して、足を接地した時にいくつかの問題が生じる。簡潔に述べると、回内の場合、体重の重みのほとんどが足の内側(専門用語で、「ミディアル(medial)」)の端部にかかってしまうようなポジションに足が位置してしまう。一方、回外の場合、体重の重みが足の外側(専門用語で、「ラテラル(lateral)」)の端部にかかってしまうようなポジションに足が位置してしまう。普通にウォーキングしている時には、歩き方の欠点に起因した影響が生じない人であっても、ランニング時又はスポーツ時において、過度な回内又は回外に苦しむことがある。
【0003】
上記のようなことが理由となって、現在では、「中立位置維持型」の履物と「安定性向上型」の履物とが、市場(特にランニングシューズの市場)で入手可能になっている。
【0004】
「中立位置維持型」の履物は、均一な硬さのミッドソールを備えるため、足の接地の際に生じる欠点に苦しむことがない人に用いられる。一方、「安定性向上型」の履物は、部分的に硬さの異なるミッドソールを備えるため、過度な回内又は回外に悩む人、特に長距離走時にそれが顕著な人に用いられる。
【0005】
「安定性向上型」の履物のミッドソールは、踵の内側域に、他の部分よりも高い硬度を有する1つ以上の部位を組み入れ、この部位の領域内ではミッドソールの圧縮に対する抵抗力が増すように形成されている。これにより、足を接地した際の回内を調整、サポートし、足への補助を向上させることが可能となる。欧州特許出願0315340号には、このような解決手段が記載されており、上記問題点の詳細な実験を記載した前記先行技術文献を紹介している。
【0006】
したがって、履物の製造業者は、「中立位置維持型」の履物と「安定性向上型」の履物の両方を製造しなければならない。前記のような部位を組み入れた「安定性向上型」の履物では、ミッドソールの硬度又は圧縮力が相互に異なるように、同型の履物を数種類製造する必要がある(足の接地時にかかる荷重は、生体力学及び個人の体重によって異なるからである。)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記製品の種類を多様化した場合、製造業者にとっては、多様な製品の製造が可能な工場設備を建設しなければならないという問題があり、小売業者にとっては、それぞれ異なる顧客の要求に対応することができるように同型の履物の種類をかなり多く準備しておかなければならないという問題がある。
【0008】
前記の問題点を解消する観点から、ミッドソールに少なくとも1つのエアチャンバー(空気室)を規定する部位と、弁機構を備えた調節手段とを設けて、空気圧を異ならせて膨らませることができる履物が提案されている。前記タイプの解決手段を採用した場合、ミッドソールの形状は、矯正が必要な回内の範囲内で変形する。前記手段の実施例は、国際出願98/56272号に記載されている。前記タイプの解決手段は、ミッドソールの圧縮度を調節する目的で使用するのが困難であるばかりでなく、複雑で費用がかかるという問題がある。前記の問題とは別に、弁が壊れた場合には、調節システムが使用できなくなるという問題もある。
【0009】
欧州特許出願0258718号に記載された公知のランニング用の履物では、過度な回内に抗する手段として緩衝用のストリップを設け、該緩衝用のストリップは、踵部分の外側のミッドソールを囲み、ミッドソールに対して着脱可能な方法で固定されている。前記解決手段では、時間が経過すれば有効でないことが判明している。前記履物を使用した場合、ミッドソールに対して着脱可能に固定された緩衝用のストリップ及び手段を損傷するという危険性があるからである。
【特許文献1】欧州特許出願0315340号
【特許文献2】国際出願98/56272号
【特許文献3】欧州特許出願0258718号
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記観点から、本発明は、使用時の用途の広さと信頼性の高さを実現するだけでなく、簡易で実用的な構造を備えた新規の調節可能な安定性向上システムを設けた履物、特に、回内と回外の両方又はこれらのいずれか一方を調整する履物を製造することを目的とする。前記目的の範囲内で、本発明は、特に、各ソール部の圧縮度を調節する段階を容易かつ単純化し、製造者、小売業者、及び消費者がこれを利用できるように着想した安定性向上システムを有する履物を製造することを目的とする。
【0011】
前記目的は、後述することで、より明らかになるであろうし、本出願の記述内容の不可欠な部分として、「特許請求の範囲」に記載された特徴を有する本発明の履物によって達成される。
【0012】
本発明のさらなる目的、特徴及び有利な点は、後述の説明及び添付の図面によって明らかになるが、後述の説明及び添付の図面は、非限定的な説明に使用される単なる実施例として提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1では、本発明のアスレチック用の履物又はランニング用の履物の全体が、参照符号1で示されている。履物1は、上方部2と下方部(ソール部)とを有し、本件で実施例として提示された下方部は、アウトソール3とミッドソール4とからなる。
【0014】
上方部2及びアウトソール3の詳細は、本発明の範囲外の事項であるので、詳細については説明を省略する。アウトソール3が、単一片又は複数の分離片からなる合成材(例えば、異なる硬度のゴム材)で作られていればよいということを述べれば十分である。
【0015】
ミッドソール4は、上方面と下方面と周面(周端部)とからなる本体部4aを有する。前記周面は、図2に示された外側区域と、図3に示された内側区域とを有する。内側区域は、履物1を履いた時に着用者のもう一方の足と向かい合うミッドソール4の周面の一部であるのに対し、外側区域は、内側区域の反対側に位置する周面の一部である。
【0016】
ミッドソール4は、上方部2とアウトソール3との間にあって、該アウトソール3上に位置する。履物1の内側には、不図示のアーチサポート型の中敷きが敷かれている。ミッドソール4の上方領域には、前記中敷き用の凹部4bが規定され、該凹部内には、少なくとも中敷きの一部が収納される。
【0017】
ミッドソール4の本体部4aは、弾性力を有した軽量の圧縮材(例えば、EVA材)を成形して製造され、例えば、本体部4a上面の周縁部に接着剤を塗布して上方部2に固定される。アウトソール3は、接着剤で本体部4aの下面に固定される。
【0018】
本発明の主な特徴は、ミッドソール4に、図1においてDの符号を用いて(全体を)示した調節可能な安定性向上システムを設け、回内と回外の両方又はいずれか一方を調整することにある。
【0019】
図4〜図6は、ミッドソール4の本体部4aを示している。これらの図においては、本体部4aの外側区域のみが示されているが(図5)、その加工は内側区域も同様であると考えればよい(例えば、図3参照)。
【0020】
図4に見られるように、シート部(キャビティ部)10が、本体部4aの後部、具体的には踵の領域に設けられ、該シート部10は、円形状の葉状区画を有する。本件ではシート部10の周壁は、4つの葉状部10a,10b,10c,10dを規定するように形成され、葉状部10aは本体部4aの後端に面し、葉状部10bは本体部4aの前端に面している。一方、葉状部10cは前記外側区域に面し、葉状部10dは前記内側区域に面している。シート部10の周壁は、開口路を介して本体部4aの外側と連通している。被覆材11が、図5及び図6に示したように、前記開口部の形状に対応して取り付けられている。実施例においては、被覆材11の少なくとも一部を透明の合成材料で形成して、例えば、図5に表されているように、シート部10の内部に面する窓部11aを設ける。後述のように、前記窓部11は検査手段を具体化したものであり、本発明の対象である安定性向上システムで設定された調節状態を視覚的に検査することができる。
【0021】
シート部10は、図7及び図8において12の参照数字を用いて全体を示した調節部材を保持するように構成され、その形状は、シート部10の大きさよりわずかに小さく、シート部10の形状と実質的に相互補完するような構成となっている。調節部材12は、略ディスク状で、約90°毎に配置された4つの葉状部12a,12b,12c,12dが調節部材12の周壁沿いに規定されている。
【0022】
調節部材12は、硬度の異なる(圧縮度の異なる)領域が隣接するように構成されている。実施例として図7に示されたものでは、調節部材12は、S1,S2及びS3の符号を用いて示された3つの領域からなる。領域S1には葉状部12a及び葉状部12dが含まれ、領域S2には葉状部12bが含まれ、領域S3には葉状部12cが含まれる。簡単な例を挙げれば、領域S1の硬度を55ショアCとし、領域S2の硬度を65ショアCとし、領域S3の硬度を75ショアCとする。
【0023】
調節部材12は、単一の材料で製造されてもよいが、硬度又は密度の異なる複数の領域が形成されていなければならない。また、調節部材12を、異なった硬度の複数の材料で製造し、硬度の異なる領域をそれぞれ形成してもよい。調節部材12を構成する材料は、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、伸張性のある二液型ポリウレタン(ヘキソシアン酸塩ポリオール)、ペバックス(登録商標、ポリアミド及びTPU)、EVAのような伸張性と架橋特性のある材料等、射出成形又は熱成形可能なものであればよい。調節部材12の合成体は、略環状のキャビティ部を設けるように構成されていてもよい。前記キャビディ部は、圧縮度の異なる区域が規定されるように、圧力差を設けて流動体(例えば、空気)を充填する補助チャンバーごとに分割される。
【0024】
図8に示されたように、円形ハウジング12eが、中央に六角形シート部12fを備えた調節部材12の下面に形成されている。調節部材12には、中央軸穴12gが設けられ、該中央軸穴12gの端部は、開口してシート部12fと連通する。
【0025】
ハウジング12eは、図9〜図11で示されたプレート13で構成された挿入部材を保持するように構成されている。プレート13は、例えば、熱可塑性プラスチック材のような剛性材料を単片にして形成されている。プレート13は、円形ベース壁13aを備える。円形ベース壁13aの中央から、管状部13bが突出し、実施例として示されたものでは、六角形状の内側域と外側域とを備える。
【0026】
図12及び図13は、調節可能な安定性向上システムを備えたミッドソール4の平面図と断面図である。
【0027】
調節部材12は、シート部10内に挿入され、シート部10の葉状部10a〜10dを葉状部12a〜12dで塞いだ状態にする。プレート13が固定された調節部材12の下面は、シート部10の底面に設置される。安定性向上システムが収納された場合には、調節部材12の2つの対向する葉状部、例えば、葉状部12c及び12dを、被覆材11の窓部11aを介して部分的に視認することができる。
【0028】
ミッドソール4の製造は、非常に容易である。
【0029】
ミッドソール4の本体部4aは、例えば、EVAを、公知の方法及び手段で成形することにより製造される。被覆材11用の開口路を備えたシート部10が設けられる。透明材を備えた被覆材11は、本体部4aに覆い成形されてもよいし、又は、一体成形されてもよい。また、前記被覆材11は、本体部4aの成形後に本体部4aに接着固定されてもよい。
【0030】
管状部13bのシート部12fに挿入してプレート13を調節部材12に固定した後、この調節部材12は、シート部10に収納される。プレート13は、ベース壁13aの幅広な平坦面を接着面として使用し、調節部材12のハウジング12e内に接着固定されるのが好ましい。
【0031】
上方部2をソール部上に取り付けた後、アーチサポート型の中敷きを、凹部4bがある履物1の内側に敷いて、調節可能な安定性向上システムを保護してもよい。図に示されているように、ミッドソール4の周面の内側区域と外側区域に設けた被覆材11の窓部を覗くと、調節部材12の葉状部12c及び葉状部12dを、部分的に視認することができる。本発明の好ましい実施形態においては、3つの領域S1,S2及びS3は、視覚的に異なった色又は外観形状で構成され、又は、窓部11aを介して視認できる部分に異なった印が付されるように構成される。
【0032】
履物の調節システムは、非常に容易に機能させることができる。
【0033】
調節部材12は、本体部4aのシート部10に固定されていないので、図4及び図5においてXで示された軸を中心にして360°回転させることができ、シート部10内で複数の切替位置を選択することができる。実施例として示されたものでは、シート部10の葉状部と調節部材12の葉状部とを組み合わせて、調節部材12の角度位置を4通り切り替えることができる。
【0034】
調節部材12が回転するように、調節部材12の中央軸穴12gに適当な工具の先端を挿入することができるようにすればよい。実施例として示されたものでは、前記工具は、アーレンキー(Allen key)であり、プレート13の管状部13bの六角状部に嵌合するのに適したサイズである(管状部13bは、種類の異なる工具(例えば、正方形断面のねじ回し又はスパナ)の先端に一致するような形状であってもよいことは明らかである。)。アーチサポート型の中敷きを履物1から取り外すことによって、中央軸穴12gを利用することができるようにしてもよいし、あるいは、中央軸穴12gと実質的に同軸の通路を、アーチサポート型の中敷きに設けてもよい。
【0035】
工具を使用して、調節部材12を時計回り又は反時計回りに回転させ、踵の内側区域又は外側区域の所望の位置に領域S1〜S3を移動させることができる。前記したように、調節部材12を90°ごとに回転させて、その位置を変更することができるので、踵の内側区域と外側区域に位置する前記領域S1〜S3の組み合わせは、4通りになる。具体的には、前記組み合わせは、(1)内側区域=S3−外側区域=S1、(2)内側区域=S2−外側区域=S1、(3)内側区域=S1−外側区域=S3、(4)内側区域=S1−外側区域=S2、の4通りである。
【0036】
前記安定性向上システムは、硬度の異なる部分を2つ以上備えているので、ミッドソール4の圧縮に対する抵抗力を変化させ、足の回内と回外の両方又はこれらのいずれか一方を調整することができる。
【0037】
アーチサポート型の中敷きを取り外した状態で調節する時でも、被覆材11内に挿入された2つの対向する葉状部によって、調節部材12がシート部10内に保持されるのが好ましい。本体部4aと調節部材12を構成する材料が変形して、調節部材12が「段階的に」回転する。調節部材12の葉状部とシート部10の葉状部とが嵌合することで、セットされた調節位置を確実に維持することができる。
【0038】
前記領域S1,S2,S3を色分けしたり、前記領域S1,S2,S3に印を付したりすることで、被覆材11の窓部11aを介して履物1の内側区域及び外側区域の外側から、調節を直接確認することができる。
【0039】
前記のことから、非常に簡易な方法で、ミッドソール4の圧縮度を、使用者の形態学的な特徴及び生体力学的な特徴に応じて変更できることは明らかである。前記手段は、履物の製造業者や小売業者だけでなく、同じ履物でも使用する状況が異なる場合を想定して調節しなければならない消費者にとっても特に有効なものとなる。前記の調節可能な安定性向上システムは、通常、アスレチック用の履物又はスポーツ用の履物(例えば、ランニングシューズやテニスシューズ)のミッドソールに適用されるものであるが、本発明は、あらゆる種類の履物に使用することも可能である。
【0040】
当然、「特許請求の範囲」に記載された本発明の範囲を逸脱しない範囲内で、説明及び図示された構造の細部及び実施の形態を変更することができる。
【0041】
前記非限定的な実施例では、本発明の安定性向上システムは、履物1の踵領域で作用するように構成されているが、前記安定性向上システムは、足の前方領域に設けてもよいことは明らかである。履物は前記と全く同一のもので、この履物に2つ以上の調節可能な安定性向上システムDを設けてもよく、例えば、1つを踵領域に、もう1つを足の前方領域に設ける。
【0042】
当然、調節部材12の切替位置の数は、4つより多くなってもよいし、少なくなってもよく、履物の種類に応じて異なるようにすればよい。シート部10と調節部材12の形状は、複数の位置に切り替えることが可能なように構成されていれば、実施例で示された形状と異なったものであってもよい。また、調節部材12の外形寸法は、履物の種類に応じて異なるようにしてもよい(例えば、トレーニング用の履物のミッドソールは、通常、競走用の履物に比べて幅広で、厚めに構成されるものである。)。
【0043】
実施可能な変形例として、例えば、体育館で使用される履物の場合、調節システムが履物の外側から直接調節できるように設計されていてもよい。このような変形例では、被覆材11は、開口部を備え、該開口部を介して、調節部材12の各周縁端部がミッドソール4の外側に突出するように設計される。この場合、調節部材12は、前記周縁端部を手で掴んで回転するハンドルのような役目を果たし、工具を使う必要がない。
【0044】
さらに実施可能な変形例として、被覆材11及びこれに関連する開口路を設けず、調節部材12をシート部10に対して着脱可能にし、角度位置を切り替えるように構成してもよい。この場合、履物1には、離脱可能なアーチサポート型の中敷きが敷かれることになる。
【0045】
図14及び図15には、本発明の実施可能な変形例が示されている。既述したものと技術的に同一の部材については、図1〜図13で使用された参照数字と同一の数字が付されている。この変形例では、調節部材12は、単一の材料(例えば、EVA)で成形され、空気その他の流動体を異なった圧力で充填する複数のチャンバー(充填室)が規定され、複数のチャンバー(充填室)は、それぞれS1a,S2a,S3aで示されている。各チャンバーは、調節部材12の各領域S1,S2,S3内で延在し、該各領域S1,S2,S3の圧縮度は、それぞれ異なっている。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明のスポーツ用の履物の側面図である。
【図2】「外側区域」を示した図1の履物のミッドソールの側面図である。
【図3】「内側区域」を示した図1の履物のミッドソールの側面図である。
【図4】図2及び図3のミッドソールの本体部の平面図である。
【図5】図2及び図3のミッドソールの本体部の側面図である。
【図6】図4のVI−VI線断面図である。
【図7】本発明の履物の安定性向上システムの一部を構成する調節部材の正面図である。
【図8】図7のVIII−VIII線断面図である。
【図9】図7の調節部材に挿入されるプレートの正面図である。
【図10】図7の調節部材に挿入されるプレートの側面図である。
【図11】図10のXI−XI線断面図である。
【図12】図4〜図6の本体部に図7及び図8の調節部材及び図9〜図11のプレートを挿入した状態のミッドソールの平面図である。
【図13】図12のXIII−XIII線断面図である。
【図14】本発明の変形例の安定性向上システムの一部を構成する調節部材の正面図である。
【図15】図14のXV−XV線断面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 履物
2 上方部
3 ソール部
4 ミッドソール
4a 本体部
4b 凹部
10シート部
10a,10b,10c,10d シート部の葉状部
11 被覆材
11a 窓部
D 安定性向上システム
12 調節部材
12a,12b,12c,12d 調節部材の葉状部
S1,S2,S3 圧縮度の異なる領域
13 プレート
13a 円形ベース壁
13b 管状部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に回内現象と回外現象の両方及びこれらのいずれか一方を調整する調節可能な安定性向上システムを備えたソール部を有する履物であって、
前記調節可能な安定性向上システムは、前記ソール部の構成材に設けたシート部内における位置を少なくとも2通り切り替えることができる調節部材を少なくとも1つ備え、
前記調節部材は、圧縮度の異なる領域を少なくとも2つ備えることを特徴とする、履物。
【請求項2】
前記シート部内の前記調節部材の位置の切替は、圧縮度の異なる領域の1つの位置を、前記ソール部の周面の特定の区域に対して切り替えることである請求項1に記載の履物。
【請求項3】
前記シート部は、ソール部の周面の内側区域と外側区域との間で延在し、
少なくとも一つの位置に前記調節部材を切り替えた時、圧縮度の異なる1つの領域の少なくとも一部が、前記内側区域に位置し、前記領域とは別の領域の少なくとも一部が、前記外側区域に位置する請求項2に記載の履物。
【請求項4】
前記調節部材が、一定角度ごとに回転できるように構成され、又は、シート部内において若しくはシート部に対して移動自在である請求項1に記載の履物。
【請求項5】
前記シート部と前記調節部材とが、実質的に相互補完的な周壁を有する請求項1又は2に記載の履物。
【請求項6】
前記ソール部の構成材は、圧縮材で作られたミッドソールの本体部を備え、前記調節部材が、略ディスク状に構成され、前記シート部が、略円形状の区域を有する請求項4に記載の履物。
【請求項7】
前記シート部と前記調節部材は、2つ以上の葉状部を規定した周壁を有する請求項4に記載の履物。
【請求項8】
前記シート部は、ソール部の構成材の周縁端部において開口した少なくとも1つの開口路と連通し、履物の外側から前記開口路を介して、前記調節部材の一領域の少なくとも一部を視認、及び/又は、掴むことができる請求項1に記載の履物。
【請求項9】
前記開口路を介して視認することができる前記調節部材の各領域の一部が、相互に異なった色若しくは形状で構成され、又は、前記各領域の一部に、相互に異なった印が付されている請求項8に記載の履物。
【請求項10】
前記開口路が、少なくとも一部を透明材で形成した部材で覆われている請求項8又は9に記載の履物。
【請求項11】
前記調節部材は、工具で、一定角度ごとに位置を切り替えて移動するように配置されている請求項4に記載の履物。
【請求項12】
圧縮度の異なる前記調節部材の各領域に、流動体を充填した少なくとも1つのチャンバーをそれぞれ設け、該チャンバー内の圧縮度がそれぞれ異なるように構成されている請求項1に記載の履物。
【請求項13】
前記シート部が、ソール部の踵部分に形成されている請求項1〜12のいずれかに記載の履物。
【請求項1】
特に回内現象と回外現象の両方及びこれらのいずれか一方を調整する調節可能な安定性向上システムを備えたソール部を有する履物であって、
前記調節可能な安定性向上システムは、前記ソール部の構成材に設けたシート部内における位置を少なくとも2通り切り替えることができる調節部材を少なくとも1つ備え、
前記調節部材は、圧縮度の異なる領域を少なくとも2つ備えることを特徴とする、履物。
【請求項2】
前記シート部内の前記調節部材の位置の切替は、圧縮度の異なる領域の1つの位置を、前記ソール部の周面の特定の区域に対して切り替えることである請求項1に記載の履物。
【請求項3】
前記シート部は、ソール部の周面の内側区域と外側区域との間で延在し、
少なくとも一つの位置に前記調節部材を切り替えた時、圧縮度の異なる1つの領域の少なくとも一部が、前記内側区域に位置し、前記領域とは別の領域の少なくとも一部が、前記外側区域に位置する請求項2に記載の履物。
【請求項4】
前記調節部材が、一定角度ごとに回転できるように構成され、又は、シート部内において若しくはシート部に対して移動自在である請求項1に記載の履物。
【請求項5】
前記シート部と前記調節部材とが、実質的に相互補完的な周壁を有する請求項1又は2に記載の履物。
【請求項6】
前記ソール部の構成材は、圧縮材で作られたミッドソールの本体部を備え、前記調節部材が、略ディスク状に構成され、前記シート部が、略円形状の区域を有する請求項4に記載の履物。
【請求項7】
前記シート部と前記調節部材は、2つ以上の葉状部を規定した周壁を有する請求項4に記載の履物。
【請求項8】
前記シート部は、ソール部の構成材の周縁端部において開口した少なくとも1つの開口路と連通し、履物の外側から前記開口路を介して、前記調節部材の一領域の少なくとも一部を視認、及び/又は、掴むことができる請求項1に記載の履物。
【請求項9】
前記開口路を介して視認することができる前記調節部材の各領域の一部が、相互に異なった色若しくは形状で構成され、又は、前記各領域の一部に、相互に異なった印が付されている請求項8に記載の履物。
【請求項10】
前記開口路が、少なくとも一部を透明材で形成した部材で覆われている請求項8又は9に記載の履物。
【請求項11】
前記調節部材は、工具で、一定角度ごとに位置を切り替えて移動するように配置されている請求項4に記載の履物。
【請求項12】
圧縮度の異なる前記調節部材の各領域に、流動体を充填した少なくとも1つのチャンバーをそれぞれ設け、該チャンバー内の圧縮度がそれぞれ異なるように構成されている請求項1に記載の履物。
【請求項13】
前記シート部が、ソール部の踵部分に形成されている請求項1〜12のいずれかに記載の履物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2006−346463(P2006−346463A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−165801(P2006−165801)
【出願日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(504256648)ディアドラ・インヴィクタ・ソシエタ・ペル・アチオニ (2)
【氏名又は名称原語表記】DIADORA−INVICTA S.p.A.
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(504256648)ディアドラ・インヴィクタ・ソシエタ・ペル・アチオニ (2)
【氏名又は名称原語表記】DIADORA−INVICTA S.p.A.
【Fターム(参考)】
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