説明

特定の無菌状態の鳥類の卵およびトリの改善された生産方法

本発明は、特定の無菌状態のトリを飼育する改善された方法を提供する。具体的には、本発明は、親ドリから取り出したときの、無菌状態の外科的に取り出した卵の孵化率および生存率を上昇させるための方法に関連する。この方法は、親ドリとしてトリを飼育する工程、生殖管内での未成熟卵の位置と、殻形成および石灰化の点から未成熟卵の発生段階とを決定する工程、卵が親ドリの排出腔へと移動する前に親ドリからその殻内にある状態の卵を外科的に取り出す工程、卵を孵化する工程、ならびに、卵を孵化して卵からトリを孵す工程を包含する。本発明はまた、特定の無菌状態の鳥類の卵の生産およびその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、特定の無菌状態のトリの改善された飼育方法に関する。具体的には、本発明は、親ドリの腹部から滅菌様式で取り出された卵(無菌状態のものである)の孵化率および生存率を上昇させるための方法に関し、そしてさらに、特定の無菌状態の鳥類の卵の生産にも関する。
【0002】
本明細書において、用語「汚染物質を含まない」および「無菌」は、交換可能に用いられる。これらの用語は、非常に広い意味で用いられ、鳥類、特に、ニワトリ、シチメンチョウおよび他の鳥類種のような家禽によって伝染され得る多くの病原体および感染媒体に関連する。これらの家禽は、商業生産用の有精卵を生産するため、ならびに、人間の消費用の卵および食肉を生産するために繁殖させるためのトリの群れをもたらすために広く使用される。さらに、このような卵およびトリは、人間および動物における治療および予防の両方の用途のための、ワクチン、抗体、モノクローナル抗体、線維芽細胞およびタンパク質を含む広範囲の生物学的物質の製造において使用される。これらはさらに、トランスジェニックの卵およびトリの診断検査および生産のために広く用いられる。これらの用途の多くは、これらから生産される卵および/またはトリが、全てまたは感染媒体のような特定の汚染物質(種々の種類の寄生生物、細菌、マイコプラズマ、ウイルス、レトロウイルス、プリオン、DNAおよびRNAのフラグメントを含む)を含まないことを必要とする。ときおり、ウイルスは、ピコルナウイルスおよびパルボウイルスを含めた、小さなウイルスであり得る。頻繁に卵を汚染するいくつかの細菌としては、クロストリジウム属および腸内細菌が挙げられる。制限されるべき多くの非病原生物も存在する。同様に、寄生生物、好気性細菌および嫌気性細菌、片利共生種および消化管および排出腔に関連する種を含む多くの微生物も、望ましくない。同様に、マイコプラズマ、レトロウイルスを含むウイルス、プリオン、真菌、酵母およびカビもまた望ましくない。
【0003】
したがって、用語「特定の汚染物を含まない」または「無菌状態」は、これらのうちいくつかまたは全てを含み得、そして、特定の病原体を含まないに過ぎないという状態よりもかなり広い。例えば、従来の特定病原体を含まない(SPF)とは、いくつかのウイルスを含まないものと特定されるのではなく、実際には、細菌およびウイルスで汚染されている可能性がある。したがって、特定の用途については、これらは十分であり得る。その卵およびトリの使用用途が、その卵またはトリが含んではならない汚染物質を決定する。従来の無菌卵およびいくつかのSPF卵は、自然に産卵されたばかりの卵を消毒剤および抗生物質を含む化学物質で処理し、そして、隔離装置中に置くことによって得られる。このような自然に産卵された卵は、選択された繁殖用の親ドリから取って来られる。これらの方法はSPF卵の生産において比較的成功しているが、これらは、汚染物質を含まない卵の生産において、真の意味で成功しているわけではない。しかし、化学物質は、例えば、産卵の直前および/または直後で、かつ消毒前の、卵殻の孔から侵入する細菌からの汚染を排除できない。SPFであれ、無菌であれ、ノトバイオートであれ、卵の汚染は、規定の遵守を損ない、多くの場合、商業的な価値および有用性を損ねる。
【背景技術】
【0004】
(発明の背景)
特許文献1は、インビトロでの鳥類胚の培養技術を記載し、卵の胚発生をいくらか詳細に記載する。この明細書は、胚がその殻から取り出された後に、密閉された容器内で胚を保温することに関する。実際は、この明細書において、使用される容器は、好ましくは、培養のために同じ種から選択されたか、または、本発明の観点から、同様の雌鶏に由来する卵殻の一部である。この発明は、家禽の遺伝子操作に関するものであるが、また、鳥類の発生の基本的な機構の研究にも関する。同様に、特許文献2は、雌鶏の受精させた卵子のインビトロ培養方法を開示し、この方法においては、まさに受精させたばかりの胚が産卵後約1時間以内に雌鶏の卵管の有頭骨の上側部分から取られ、その後、培養される。しかし、これらの明細書は共に、単に、卵の人工培養を開示するだけであり、本発明の目的については取り扱わない。
【0005】
特許文献3は、特定の汚染物質を含まない状態のトリの飼育方法に関する。この明細書に開示される一般的な方法は、トリを親ドリとして飼育する工程と、卵が親ドリの排出腔に移動する前に親ドリから卵を滅菌的に取り出す工程と、卵を保温する工程と、卵を孵化させて、トリを卵から孵す工程とを包含する。この出願はまた、特定の汚染物質を含まない状態の鳥類の卵の生産にも関する。
【0006】
しかし、このような方法の改善は常に必要とされている。孵化率を上げ、そして、生きて産まれたヒナドリの死亡率を下げることが望ましい。商業上、安定した結果と、高い孵化率を含む結果の両方を達成する(理想的には、>85%の商業的な範囲であるが、必ず安定して>50%の結果を達成する)ことが非常に望ましい。これは、例えば、トランスジェニックトリのような、小規模、希少かつ非常に高価な個体群を用いて作業する場合に、特に、そして、致命的に重要である。
【特許文献1】欧州特許第0 295 964号明細書
【特許文献2】欧州特許第0 511 431号明細書
【特許文献3】欧州特許出願第01650109号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、先の出願とは対照的に、無菌卵の安定して高い孵化率を達成するための改善された方法を提供する。したがって、本発明は、欧州特許出願第01650109号に記載されるプロセスを洗練および改善することに関する。
【0008】
(発明の言明)
本発明は、特定の無菌状態のトリを飼育する改善された方法に関する。具体的には、本発明は、未成熟卵が排出腔に入る前にその殻内にある状態で取り出され、そして、本発明に従って滅菌のままであることを確実にするために使用され得る特定の技術の用途に関する。
【0009】
本発明のより一般的な実施形態によれば、親ドリからのその殻内にある状態の未成熟卵の取り出しが行われるべきタイミングを決定するための方法が提供される。
【0010】
本発明の第一の局面によれば、親ドリから取り出された場合に、外科的に取り出された無菌状態の卵の孵化率および生存率を高めるための方法が提供され、この方法は、親ドリから、未成熟卵を取り出す前に滅菌環境において行われ、そして、以下:
(a)トリを親ドリとして飼育する工程;
(b)以下:
(i)未成熟卵が親ドリの排出腔へと移動する前に、親ドリの生殖管内での未成熟卵の位置を決定する工程;ならびに
(ii)殻形成および石灰化の点から未成熟卵の発生段階を決定することによって、必要とされるレベルの卵殻形成および石灰化が起こっている時点を確定する工程
により、親ドリから未成熟卵を取り出すべきタイミングを決定する工程
を包含する。
【0011】
本発明の第二の局面によれば、滅菌環境で無菌状態のトリを飼育する方法が提供され、この方法は、以下:
a)トリを親ドリとして飼育する工程;
b)以下:
i.未成熟卵が親ドリの排出腔へと移動する前に、親ドリの生殖管内での未成熟卵の位置を決定する工程;ならびに
ii.殻形成および石灰化の点から未成熟卵の発生段階を決定することによって、必要とされるレベルの卵殻形成および石灰化が起こっている時点を確定する工程
により、親ドリからその殻内にある状態の未成熟卵を取り出すべきタイミングを決定する工程;
c)必要とされるレベルの卵殻形成および石灰化が起こり、未成熟卵が親ドリの排出腔へと移動する前に、その殻内にある状態の未成熟卵を親ドリから取り出す工程;ならびに
d)その殻内にある状態の未成熟卵を保温し、未成熟卵を孵化させて、卵からトリを孵す工程
を包含する。
【0012】
本発明の第三の局面によれば、卵が排出腔に入る前に、卵巣を含む生殖管内にある間に未成熟卵を感染させ得る微生物を取り除くための方法が提供される。
【0013】
本発明の第四の局面によれば、本発明に従って生産される卵は、治療上および予防上の目的のための生物学的物質の生産に使用される。
【0014】
本発明の第五の局面によれば、本発明の方法は、トリのストックの補充のための滅菌状態のトリを提供するために使用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(発明の詳細な説明)
排出腔は、トリの体内の主な汚染領域である。排出腔は、トリの消化系および生殖系の両方に連結された房であり、従って、卵と糞便とが排出腔内に同時に存在し得る。主として、卵は、排出腔に入る前は、汚染物質を含まない。しかし、卵殻は短時間多孔性となるので、卵が排出腔に入る際の外部の汚染が大きな問題となる。したがって、本発明は、滅菌性および無菌状態を維持しつつ未成熟卵を親ドリから取り出すためには特定の方法が必要とされることを認識している。
【0016】
具体的には、本発明は、その殻内にある状態の未成熟卵の親ドリからの取り出しが行われるべき時期を決定するための方法を改善および洗練する必要性を認識している。したがって、本発明は、親ドリから取り出されたときに、その無菌状態の取り出された卵の孵化率および生存率を高めるための方法を提供する。無菌状態の卵の孵化率および/または生存率のいかなる上昇も、その割合が比較的大きくないものであったとしても、商業上かなり大きな意味を持つ。
【0017】
本発明はまた、生殖管内に存在する間、かつ、卵が排出腔内に入る前に、卵を感染し得る、微生物、細菌、マイコプラズマ、ウイルス、レトロウイルス、プリオン、寄生虫の除去が、無菌卵の産出には重要であることを認識している。
【0018】
具体的には、本発明は、親ドリ内でのその発生の完了前でかつ親ドリからの取り出しの前の、生殖管内の未成熟卵の位置と発生段階とを正確に決定する必要性を認識する。このことは、未成熟卵が、卵の生存性を確実にするための正確な時点で親ドリから取り出されること、そして、卵からトリを孵すことを確実にする。未成熟卵が時期尚早に取り出される場合、卵は、柔らかく、石灰化していない殻を有し得、これは、より特別な培養条件を必要とし、そしてまた、生存能力のある卵をもたらせない場合がある。排出腔へと入る前に生殖管から未成熟卵を取り出すことは、卵と、卵から生まれるトリとの汚染を防止する。本発明は、いつ親ドリから卵を取り出すかを確定させ、そして、未成熟卵が、殻形成および石灰化の観点から正確な時点で親ドリから取り出され、生存能力のある卵と、卵から孵ったトリとをもたらすことを確実にするための特別な方法を提供する。
【0019】
一般に、卵の取り出し前に、親ドリの産卵パターンを経時的に記録して、卵が遠位生殖管および排出腔へと移動する推定時間を導き出す。この段階で、卵およびその殻は、完全に形成されている。このことは、腹部からの卵の滅菌状態での取り出しが、その推定移動時間前ではあるがこの推定移動時間に可能な限り近い時点で行われ得るようにするための指標を提供する。
【0020】
理想的には、卵殻は、X線撮影のような診断法を用いて、または、穏やかな指先での圧迫、触診および殻の歪曲の観察によってさえも、定量化され得る、進行した段階へと石灰化されているべきである。部分的に石灰化した殻、特に、石灰化のレベルが低い殻は、通常、柔らかくそして壊れやすく、したがって、低い孵化率のレベルを有する。本発明は、結果としてもたらされる卵およびトリの最適な孵化率および生存率が所望される場合、未成熟卵がこの段階で取り出されるべきではないことを認識する。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、特に、親ドリから卵を取り出す前の殻の沈積(deposition)および生殖管内での位置に関連して、発生段階を規定するための方法は、以下を含み得る:継続的な観察、または、通常の頻度(例えば、毎日)、および、種と個々のトリとに適用可能な通常もしくは変化された産卵周期のいずれかでの産卵時点の微速度ビデオ録画のいずれかによる観察。排卵および産卵の時点に関する、各卵が子宮を含めた生殖管の異なる部分に存在する時点とその長さの観察。これらの種々の組み合わせの観察の相関は、例えば、次の卵が子宮内に存在する時点だけでなく、その発生段階、例えば、卵殻形成および石灰化の程度の予測をも可能にする。
【0022】
この方法は、特定のより大型種(例えば、ニワトリ)において、腹部における卵の物理的な位置により洗練され得る。このアプローチは、触診による観察と、卵の発生段階および生殖管内での位置との間の必然的な相関を確立させた後に、慣習的に使用するために特に有用である。
【0023】
腹部および骨盤の触診、可視化技術(超音波、X線またはMRIなど)を含む物理的な方法、ならびに/または、全身麻酔および外科手術もしくは死後検査による直接的な観察による、生殖管内での卵の位置、および、殻の存在の確認もまた、観察技術と組み合わせて、または、単独で使用され得る。
【0024】
可視化技術は通常、例えば、ハロタンおよび酸素を用いたトリの全身麻酔を必要とする。ネコおよびイヌの可視化に使用される獣医学的機器は、しばしば、露光設定に体系的な調整を施した後、トリに適切となる。超音波は、腹部に羽毛がほとんどないか、または全くない場合にのみ、トリにおいて可能となる。
【0025】
触診は、通常、トリをほぼ通常の立った位置に保持して行われるべきである。腹部の触診は、操作者の親指と指との間でなされる。触診は、トリまたは腹部内の卵のいずれかに対するあらゆる損傷を回避するために、やさしく行われるべきである。
【0026】
引き続いて、大まかに従来の保温および孵化の条件が使用される予定の場合、卵は、殻の石灰化の前にトリから取り出されるべきではない。柔らかくかつ石灰化していないか、またはそれより早い段階の殻をもつ卵のような、より未成熟な卵は、特別な培養条件および/または受器たる卵殻を必要とする。特定のトリおよび卵について不確実性が存在する場合、卵の取り出しは、観察している卵が産まれるまで延期されるべきである。ついで、その後の卵が取り出され得る。
【0027】
これらの技術は、処置を施す人による主観的な評価を含む。触診は、卵が柔らかくかつ石灰化していないか、またはそうではないかを決定する。この技術は、腹部内の卵の位置を決定するための技術と組み合され得る。卵は、骨盤の出口の前に位置すべきである。好ましくは、卵は、胸骨の尾側面と坐骨隆起との間の実質的に中間にあるべきである。この距離は、トリごとに変化する。好ましくは、触診は、X線、MRIまたは超音波の可視化技術と組み合わせて使用される。
【0028】
本発明の一実施形態によれば、方法は、観察および/または物理的な方法の組み合わせを含む。理想的には、上記物理的方法としては、腹部および骨盤の触診、超音波、X線および/またはMRIスキャニングが挙げられる。理想的には、観察方法は、親ドリの産卵パターンを経時的に監視および記録し、推定移動時間を導き出す工程を包含する。最も適切な方法の選択は、触診における操作者の手の器用さおよび技能、ならびに、トリのサイズのような他の要因に依存する。さらなる洗練は、日中のトリが通常産卵する時点を決定するための個々のトリの注意深い観察によってもたらされ得る;目標は、予想される産卵に近く、そして、そのわずか前に卵を取り出すことである。
【0029】
本発明の別の実施形態によれば、生殖管(卵巣を含む)に存在する間でかつ、卵が排出腔へと入る前に、卵を感染し得る微生物による未成熟卵の感染を防止するための方法が提供される。このタイプの感染は、経卵巣経路によるものであり得る。微生物は、標的とする微生物に適切な抗菌剤を、親ドリおよび/または卵のいずれかに投与することによって、発生途中の卵への侵入の獲得を防止され得るか、または、未だ産まれていない卵から取り除かれ得る。この実施形態は、卵子中の標的とする微生物に対して活性であることが知られる抗菌剤を選択し、そして、それを親ドリまたは未だ産まれていない卵に投与することによって、未だ産まれていない未成熟卵から汚染物質を取り除くための方法を提供する。
【0030】
妥当な抗菌剤、ならびにその用量、レジメンおよび投与経路の選択は、卵における濃度、および、卵の特定の発生段階に特異的な、卵において得られる時間に基づく。これらの投薬レジメンおよび経路は、一般的な疾患の慣用的な処置において、より代表的に使用されるものとは異なり得る。
【0031】
この方法は一般に、標準的な研究室の微生物識別技術を用いた、標的とする微生物の識別と、その後、その微生物を殺傷するために適切な抗菌剤の選択とを含む。
【0032】
抗菌剤、投薬レジメンおよび投与経路の選択は、しばしば、CLSのような国および国際的な基準に則って臨床微生物研究室において慣用的に使用されるように、標準的なインビトロ感受性試験の結果によって決定され得る。最適な結果を得るために、卵において、投薬時間および卵の特定の発生段階に関連した、抗菌剤の濃度および時間の決定が使用されるべきである。個々の抗菌剤の卵内の濃度は、一連の異なる発生段階の卵のサンプルにおいて決定された卵の濃度についての薬物動態データを必要とする。これは、産卵中の雌鶏(この雌鶏はついで、一連の適切な時点(抗菌剤の投与に依存して、例えば、投与後0.5時間、1時間、2時間、4時間、8時間、12時間、20時間および24時間)で安楽死させられる)に既知用量の抗菌剤を投与し、そして、死後に適切な卵のサンプルを集めることによって決定され得る。卵内の抗菌剤濃度は、卵材料に用いるために適合および特別に実証された従来の方法を用いて決定されるべきである。
【0033】
フルオロキノロン、セファロスポリンおよびマクロライド系抗菌剤は、トリの種における抗菌剤の感受性および安全性に依存して、細菌およびマイコプラズマを減少または排除するために使用され得る。エンロフロキサシン(enrofloxacin)のようなフルオロキノロン抗菌剤は、濃度依存性の細菌またはマイコプラズマの殺傷を達成するために投与され、そして、少なくとも慣用的な治療用途に推奨される投薬レジメンを用いるべきである。例えば、エンロフロキサシンは、2〜5時間の間に、水中、10〜30mg/kg/日で投与される。セファロスポリンおよびマクロライド系抗菌剤は、時間依存性の細菌の殺傷に基づいた、最大の曝露を確実にするための投薬レジメンを用いるべきである。他の分類の抗菌剤もまた使用され得る。
【0034】
このような微生物は、標的とする微生物に適切な抗菌剤を、親ドリおよび/または卵のいずれかに投与することによって、発生途中の卵への侵入の獲得を防止され得るか、または、未だ産まれていない卵から取り除かれ得る。抗菌剤は通常、経口的(強制飼養または食餌中もしくは水中により)、または、皮下、筋肉内もしくは静脈内の経路によって非経口的にのいずれかで投与される。雌鶏内の発生途中の卵への超音波誘導または腹腔鏡による直接注入もまた可能である。
【0035】
理想的には、卵は、親ドリの腹部から滅菌様式で外科的に取り出される。
【0036】
本発明はさらに、以下の工程を包含する滅菌の外科的取り出しの方法を提供する:
側腹部切開を行い、そして、縫合糸を用いてトリの卵管を両端で結紮する工程;
各縫合糸から遠位に離れた位置で卵管を切断する工程;
卵を卵管中に包まれた状態で取り出す工程;
卵管を滅菌する工程;
卵を取り出す工程;および
卵を滅菌する工程。
【0037】
あるいは、滅菌の外科的取り出しの方法は、以下の工程を包含し得る:
トリの皮膚に切開をつくる工程;
子宮を表面へと操作する工程;
子宮に切開をつくり、そして、卵および子宮を取り出すか、または、子宮をクランプ留めし、そして卵を取り出す工程。
【0038】
子宮をクランプ留めして卵を取り出す場合、トリがより多くの卵を産むことが可能となり得るように、子宮が修復され得る。この局面は、親ドリが高価であり、そして、屠殺すべきでない状況において重要である。この状況において、トリは麻酔をかけられる。あるいは、トリは、卵を滅菌状態で取り出す前に安楽死され得る。
【0039】
卵の滅菌外科的取り出しは、最良には、胚の生存性を損ねることを回避するために、安楽死または麻酔から約30分未満で迅速に完了される。麻酔の延長した使用、または、親ドリの安楽死と卵の取り出しとの間の過度の遅延は、胚の生存性に不利な影響を及ぼす。
【0040】
卵は、いったん親ドリから取り出されると、ついで、滅菌環境下で保温され、そして、卵を孵すために孵化される。
【0041】
本質的に、本発明が果たすのは、卵から孵ったトリに微生物の制御を与えるための、卵および取り出されたトリの生産における、親ドリから人工的に取り出された卵の使用を提供することである。上記卵およびトリは、その有用性に適切であるように、慣習的に、または、隔離装置もしくは滅菌環境のいくつかの形式において、のいずれかで、引き続いて孵化、飼育、維持および繁殖される。
【0042】
理想的には、トリを滅菌環境下で親ドリとして飼育し、トリに滅菌した食餌を与える。次いで、卵が親ドリ内の汚染の可能性がある領域に移動する前に卵を親ドリから取り出し、次いで、卵を保温し、そして、孵化させて卵からトリを孵し、この卵から孵ったトリをこの滅菌環境下に維持する。
【0043】
本発明の一実施形態において、親ドリは、全て同じ条件下で飼育されている同種のトリの群れから選択される。
【0044】
本発明の別の実施形態において、親ドリは、滅菌環境下で、類似の既存の汚染物質を含まない状態のトリの群れから、自然に孵化される。
【0045】
本発明のさらなる実施形態において、親ドリは、制御された条件下での適切な選択および自然状態での飼育方法によって生産された、別の汚染物質を含まない状態のトリの群れのうちの一羽であり、この方法は、異なる汚染物質を含まない状態のトリを提供するために使用される。
【0046】
好ましくは、卵から孵ったトリは、群れの一部を形成し、そして、卵から孵ったトリが孵化された後、その群れの汚染物質を含まない状態の指標を提供するために、卵から孵ったトリのサンプルが取り出され、そして、特定の汚染物質について検査される。理想的には、特定の汚染物質を含まない状態が卵から孵ったトリにおいて達成されていない場合、その卵から孵ったトリは、この方法において親ドリとして使用される。このプロセスを繰り返すことにより、最終的には、事実上滅菌状態および無菌状態のトリの群れをもたらすことが可能となる。
【0047】
一実施形態において、卵から孵ったトリは、卵を産ませるために滅菌環境から取り出され、次いで、この卵が孵化され、さらなる卵から孵ったトリをもたらす。
【0048】
別の実施形態において、卵から孵ったトリは、滅菌環境から取り出され、そして、正常な腸の微生物叢を含む食餌を与えられる。この方法により生産されたトリは、正常な腸の微生物叢を有し、低コストで維持され得、そして、食品産業における消費および使用に適している。
【0049】
さらなる実施形態において、ニワトリの無菌卵または成体のトリは、選択された非病原性生物(潜在的な共生細菌および寄生虫を含む)もしくは選択された病原因子で感染させられ得るか、または、非病原因子と病原因子との組み合わせで感染させられ得る。このようにして生産された卵またはトリは、例えば、宿主−病原因子相互作用、宿主−片利共生相互作用、ならびに、トリもしくは哺乳動物のいずれかにおける用途のための新規の処置および予防の方法および製品の発見および開発の科学的研究のために使用され得る。
【0050】
代表的には、トリはニワトリであるが、この方法は、全てのトリについて行われ得る。
【0051】
上記の内容において、本明細書は、全体として、家禽、具体的に雌鶏に関連するが、本発明は、他のトリについても行われ得るものと理解される。
【0052】
好ましくは、トリが特定の汚染物質を含まない状態を有する卵から孵ったトリから孵化され、そして、卵から孵ったトリではない場合、このようにして卵から孵ったトリは、同じかまたはより少ない量の低い汚染物質を含む状態の卵から孵ったトリの引き続いての孵化のために、滅菌環境下で飼育される。
【0053】
本発明はまた、本発明の方法のいずれかにより生産された卵およびトリを提供する。
【0054】
本発明のさらなる局面によれば、本発明はさらに、滅菌環境下で、特定の汚染物質を含まない状態の卵を提供する方法を提供し、この方法は、以下:
本発明の方法に従って提供されるような、同じかまたはより高いレベルの汚染物質を含まない状態を有する卵から孵ったトリを収容する工程;
卵から孵ったトリを用いて卵を産ませる工程;および
別の滅菌環境に卵を移動させる工程
を包含する。
【0055】
理想的には、卵は、産卵されると直ぐに取り出され、そして、卵の殻が滅菌される。
【0056】
次いで、この卵から孵ったトリは、卵を産ませるために使用され得、この卵自体が最終産物であり得るか、あるいは、トリへと孵化されて無菌状態のトリの群れを形成し得るか、または、そのトリが卵から孵ったトリではない場合には、卵から孵ったトリを受精させるために使用され得る。
【0057】
好ましくは、トリは、その殻内の卵を取り出す前に、麻酔をかけられるか、または、安楽死もしくは畜殺により屠殺される。雌性の親ドリは、生きていても、ごく最近に畜殺されていてもよい。生きたトリは、倫理、法律、および動物の福祉の考慮と両立するように、完全に意識があって落ち着いていても、麻酔されてもよい。卵および卵子(eggs and ova)は、有精または無精のいずれかであり得る。
【0058】
本発明により制御され得る感染性生物としては、問題とされる種に対し病原性でも非病原性でもあり得る生物が挙げられる。これらとしては、鳥類種(代表的には、ニワトリ、家禽およびシチメンチョウ)、ヒトおよび他の哺乳動物(代表的には、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ラットおよびマウス)が挙げられる。本発明の目的に関して、微生物としては、寄生生物、細菌(嫌気性種および好気性種、片利共生種および腸に関する種を含む)、マイコプラズマ、ウイルス(レトロウイルスを含む)、プリオン、真菌、酵母、カビ、ならびに、DNAおよびRNAのフラグメントが挙げられる。
【0059】
受精卵を用いて子孫または取り出されたトリ(derived bird)を生産する場合、卵は、微生物の侵入を制御するため、そして無菌状態を維持するために、従来の畜産システム、SPFシステムにおいて、または、隔離装置においてのいずれかで孵化、飼育、維持、および繁殖させられ得る。
【0060】
本発明によれば、微生物を含まない程度を最大にするために、卵は、好ましくは、親の雌から無菌的に取り出されるべきであり(親の雌もまた無菌またはノトバイオートでない限り)、そして、生活環は、隔離装置内で一周されるべきである。SPFの卵およびトリが生産される場合、生活環は、隔離装置の外側で一周され得る。
【0061】
本発明によれば、卵の無菌的な取り出し、ならびに、適切な場合、トリの孵化、飼育、維持および繁殖、は、微生物による汚染を制御する別の方法と組み合わせて使用され得る。このような方法としては、消毒剤、抗菌剤、抗生物質、抗ウイルス剤、駆虫薬、免疫調節因子およびワクチンが挙げられる。
【0062】
特定の状況下で、選択したトリを親ドリとして用いる場合、もたらされる卵から孵ったトリは、実際には、妥当な品質の卵から孵ったトリをもたらすには十分に汚染物質を含まない状態でない可能性があることが理解される。次いで、このような卵から孵ったトリから生産された卵を用いて、再度同じ工程を行い、これらの卵から孵ったトリから卵を人工的に取り出して、さらなる卵から孵ったトリ(望ましくは、汚染物質を含まない状態である)を提供することが必要とされ得る。
【0063】
卵から孵ったトリではないトリが孵化される場合、これらは次いで、卵から孵ったトリのその後の受精のために保持されることが理解される。このようにして、群れ全体が滅菌状態にされ得る。
【0064】
本発明において、その後の用途のために、単に卵を生産することも可能である。無菌状態の卵が必要とされる場合、最初にすべきことは、親ドリから外科的に取り出した卵を保温することである。
【0065】
特定の汚染物質を含まない環境または滅菌環境中に維持しつつ、トリを健康かつ産出能力のある状態で飼育および繁殖させることは、例えば、従来の環境中でトリの腸または皮膚に見られる汚染物質によって通常生成される特定の栄養物を欠くことを補償するために、特別の食餌を必要とする。
【0066】
本発明のなおさらなる実施形態によれば、本発明に従ってもたらされた滅菌卵に由来する、治療用および予防用の生物学的生成物を得るための方法が提供される。このような生成物としては、ワクチン(生ワクチンおよび死菌ワクチン)、抗体、モノクローナル抗体(例えば、インターフェロン)、治療用および予防用のタンパク質、ならびに、他の類似の生物学的生成物(全て、周知技術によって生産される)が挙げられる。血清学的検査または他の診断試験のための抗原もまた生産され得る。卵は、組織/細胞培養、培地の生産、ならびに、研究の用途のために使用され得る。例えば、モノクローナル抗体の生産のための卵の使用は、生産される抗体または他のタンパク質が高い活性を有し、そして、例えば、グリコシル化の点で、ヒト抗体と同じ形状であるという利点を有する。さらに、生きた微生物、ならびに、それに由来する毒素または汚染性生成物の除去は、追加の、そしてしばしば費用のかかる処理(また、頻繁に、標的タンパク質のより低い収量および/または効力をひきおこす)を必要とするので、得られるタンパク質生成物/モノクローナル抗体の精製に関連するコストは低下させられ得る。
【0067】
必要に応じて、親ドリは、外来性タンパク質または他の物質を生成する卵を産む、トランスジェニックのトリ(すなわち、外来性DNAを持つように遺伝子を改変されたトリ)であり得る。
【0068】
胚を持った卵を通して伝染された病原因子により、ワクチンが汚染される危険性が存在する。過去に、ワクチンを首尾よく生産するためには、特定の汚染物質を含まない(SPF)群れからの胚を用いることで、危険性を最小限にし、あるいは、もしくはこれに加えて、この群れを非常に清浄な環境下に維持した。無菌状態の卵を生産するこの新しい方法は、ワクチンの生産において使用される卵が、滅菌状態であって、そして、ヒトもしくは動物の用途には安全でないと思われるワクチンをもたらし得る汚染および滅菌上の問題を克服することを確実にする。この新しい方法は、本質的に、微生物によって汚染されていない滅菌卵の代替的な供給源を提供する。これは、汚染に関して以前に遭遇した問題を克服するという利点を有する。
【0069】
本発明に従って生産された卵は、病原性微生物を単離するため、ワクチン、抗体、モノクローナル抗体ならびに他の治療上および予防上の分子(例えば、ペプチドおよびたんぱく質)を生産するため、そして、血清学検査において使用するための抗原を生産するために使用され得る。
【0070】
ウイルスのような微生物に対するワクチンの卵からの生産は、一般に、以下の方法によって行われる。適切なウイルス株を選択し、次いで、卵内で増殖させるように適合させる。これらの適合されたウイルス株は、有精卵内に注入され、その後、保温されて、ウイルスの増殖を可能にする。次いで、大量のウイルスが、卵が孵化段階に達する前に、卵から回収され得る。次いで、この回収したウイルスを混合し、そして、数段階の工程を経て処理し、最終的に、適切なように、ヒトまたは動物のワクチン接種のための完全に処方されたワクチンを生産し得る。数百万までの卵の大規模なバッチを回収し、処理し、そして、ブレンドして、ワクチン生成物を形成する。標的ウイするを用いた卵の感染を開始するため、そしてまた、ウイルスの安全性を評価するため(例えば、ワクチン中に外因性の因子や標的ウイルスの不適切な処理がないことを確認するため)のウイルスの種の作製のために、かなりの数の卵が使用される。
【0071】
ワクチンは、死菌の病原微生物、微生物の生きた株、組換え株、サブユニットおよび/または単離された特定の抗原から構成され得ることが理解される。
【0072】
本発明のなおさらなる局面によれば、トリのストックを補充するための、微生物学的に半滅菌状態のトリ、または、特定の病原因子を含まないと特定されたトリの生産のための方法が提供される。これは、従来の繁殖および/またはSPFの群れが崩壊し、そして、特定の病原因子に感染しているような状況で、特に有益である。これらの状況において、SPFの群れを回復するための最も迅速かつ効率的な方法の一つは、既存の感染した群れを用い、これらの感染した群れからスクリーニングおよび選択したトリから、滅菌様式で取り出された無菌卵を生成することによって、この感染した群れから新しい群れを誘導することである。このアプローチは、感染したトリが、遺伝学上または遺伝子操作上特別な価値を有する場合に、特に有益である。これは、特に、例えば、鳥類インフルエンザウイルスまたはいくつかの細菌種(例えば、サルモネラ)に感染したトリのストックに応用できる。
【0073】
鳥類インフルエンザまたは「トリインフルエンザ」は、家禽の接触伝染病である。全てのトリ種が感受性であると考えられているが、家禽の群れは、特に、伝染病の規模に迅速に到達し得る感染に対して脆弱である。最も重要な制御手段としては、曝露されたトリの迅速な破壊、死骸の適切な廃棄、および、残りのトリの群れの厳しい消毒が挙げられる。本発明の無菌状態のトリを生産するための方法は、このようなウイルスの急激な増加が起こり、トリのストックが補充される必要のある状況に対して適用できる。この方法は、滅菌状態であるか、もしくは少なくとも半滅菌状態であるか、または、特定の微生物(鳥類インフルエンザウイルスを含む)を含まないという状況を含めた特定の状況にあるトリのストックを復旧するための安全かつ信頼できる方法を提供する。
【0074】
トリのストックを補充するための、無菌、半滅菌、または特定の病原因子を含まない卵の生産のための方法は、先の請求項のいずれかに記載の方法を含み、この方法において、親ドリは、補充されるべきトリの群れ、または、適切な代替物のいずれかから得られ、そこから、本発明の方法に従って生産された卵から孵ったトリは、無菌状態の指標を提供するように検査され、そして、いったん所望の無菌状態が得られると、卵から孵ったトリが、特許請求の範囲に記載の方法を用いて子孫を生成し、そして、適切な無菌状態のトリの群れを形成するために使用される。
【0075】
あるいは、トリおよび卵は、食料および人間が消費する用途、または、動物のための用途(特に、感染に対して通常より高い感受性を有する脆弱な患者、または、感染を回避することが望ましいあらゆる動物もしくは人間のための特別な状況におけるもの)のために提供され得る。
【0076】
本発明は、全ての鳥類および爬虫類種(ニワトリ、シチメンチョウ、ウズラ、アヒル、ガチョウ、ホロホロチョウ、キジ、ヤマウズラ、オウムおよびライチョウが挙げられるがこれらに限定されない)に適用されることが理解される。
【0077】
本発明は、本発明に従う方法の以下の説明からより明確に理解される。
【実施例】
【0078】
実施例1
方法
既知のSPF状態の50羽の成体の雌および5羽の成体の雄のニワトリの1つの群れを、選択した食餌で維持し、自然繁殖させた。2週間の期間にわたり、各雌について個々に、産卵(egg laying)(産卵(oviposition))の時期を記録した。卵を産む平均日数(時間、L)を各雌について計算した。L−3hの日数を計算し、L−3からLまでの時間を、取り出し間隔とみなした。この間隔は、各トリにおいて最も発生が進行した卵を取り出すために、無菌外科的開腹術を行う時点であった。
【0079】
この手順のために、頚椎脱臼によりトリを安楽死させ、その直後に調製した。トリを消毒液に5分間浸漬させた。腹側胸郭および腹部から羽毛を取り除き、そして、露出された皮膚を、37℃に加熱したアルコール中50%のヨウ素溶液を用いて滅菌した。次いで、各トリを、特別に適合された外科手術用隔離装置(5%の過酢酸溶液で滅菌され、かつ、滅菌した機器とアルコール中のヨウ素溶液を含む500mlフラスコを備える)に配置した。トリを滅菌したドレープで覆い、次いで、隔離装置の滅菌した入口ポートを、ドレープを覆って配置した。開腹切開を創り、そして、縫合材料を用いて、卵管(代表的には子宮)を卵の両側で結紮した。次いで、卵から両方の縫合までから遠位に離れた位置で卵管を切断し、そして、卵を含む卵管を、雌の腹部から取り出した。次いで、子宮に包まれた卵を、ヨウ素/アルコール溶液中に5分間入れ、その後、卵管に包まれた卵を、入口ポートを介して、外科手術用隔離装置から受容用の隔離装置へと移した。この受容用の隔離装置において、卵管を切開し、そして、卵を取り出し、消毒溶液で消毒し、そして、孵化用保温装置として適合された隔離装置へと移した。
【0080】
孵化の1日以内に、生きたニワトリを孵化用の隔離装置から取り出し、そして、若いニワトリの群れの飼育に適した2つの大規模飼育用の隔離装置へと移した。ニワトリは、放射線照射により滅菌した市販の食餌で飼育した。18日齢において、5羽のニワトリを飼育用の隔離装置の各々から取り出して安楽死させ、そして、好気性培養および嫌気性培養によって細菌学的にサンプリングした。これらのサンプルには、肝臓、脾臓、心臓の血液、膣/排出腔、盲嚢および小腸の消化物ならびに糞便を含めた。
【0081】
結果
生育できるニワトリを、人工的に取り出した卵から首尾よく孵化させた(孵化率>50%、より頻繁に>90%)。サンプリングしたニワトリからは、嫌気性細菌も好気性細菌も単離されなかった。
【0082】
結論
ニワトリにおける無菌有精卵の人工的な生産のための安全な方法が確立された。卵は生育可能であり、そして、生育可能な無菌のニワトリを生産した。これらのトリは、隔離装置内で首尾よく維持された。欧州特許出願第01650109号に開示される上記方法は、明らかに、無菌のヒナの生産を可能にした。しかし、この方法を繰り返し使用すると、結果が大きく変動し、そしてしばしば、比較的低い孵化率(例えば、<30%)をもたらした(これは、一般に、商業的には容認できない)ことが示された。
【0083】
実施例2
2年の期間にわたって行った一連のさらなる研究は、実施例1の方法を改善および洗練するために、実施例1のプロトコールに従って行った。
【0084】
合計106羽のトリ(種々の年齢および遺伝子型の6つの群れ)を、無菌卵を取り出すための一連の小規模な研究(各々が9〜20羽のトリを用いる)において使用した。この期間、ヒナの孵化率および生物学的な無菌状態の両方についての結果は、非常に多様であり、孵化率は0〜40%の範囲に及んだ。これは、先に見られた結果よりも顕著に低かった。別の混乱を増大させる要因は、無菌状態を得るためのいくつかの研究における失敗であり、卵を取り出すための手順の間の微生物による汚染に起因するものである。この結果ゆえに、麻酔または安楽死のいずれかを導入した後に卵を取り出すために要する時間は、しばしば、滅菌性を確実にするための努力において延長された。
【0085】
したがって、取り出された卵からの孵化率およびヒナの微生物学的状態に対する、卵の取り出し手順における種々の差異の影響を評価するために、一連の研究を行った(実施例2A〜D)。これらの変動要因には、安楽死または麻酔の導入から親の腹部からの卵の取り出しまでの時間、および、予想される産卵時期および生殖管内の卵の発生/成熟の段階に関する卵の取り出しのタイミングを含んだ。評価には、卵の未成熟度(例えば、柔らかい殻、または、無傷で取り出すには未成熟過ぎる卵)、孵化率、滅菌率、および組織の操作の容易さ(後者は、安楽死/麻酔から卵の取り出しまでの時間の実質的な増加を引き起こす)を含めた。変動要因は、個々に評価した。
【0086】
滅菌側腹部切開により取り出した有精卵の滅菌率および生存率に影響を及ぼす変動要因をこの実施例において評価した。この研究においてなされた評価および得られた結果を以下に提供する。
【0087】
実施例2A
予想される産卵と、親ドリからの卵の滅菌外科的取り出しとの時間の差の、卵の生存率および滅菌率、ならびに外科手術操作の容易さに対する影響。
【0088】
結果
孵化率:
対照(自然に産まれた卵)、85〜100%の孵化率、80〜100%の滅菌率;
麻酔または安楽死から30分以内に子宮から取り出した卵、13〜40%の孵化率、80〜100%の滅菌率;
安楽死から60分後に子宮から取り出した卵、14%の孵化率、80〜92%の滅菌率。
【0089】
これらの結果は、雌鶏における未成熟卵の生存率が、安楽死後の時間の経過と共に低下することを確立するものである。
【0090】
外科手術操作の容易さ:
対照、適用不可;
上述のとおり30分、良好、組織は容易に持ち上がった;
上述のとおり60分、困難、組織は持ち上がりにくかった(早期の死後硬直)。
【0091】
これらの結果は、無菌外科手術用隔離装置内での卵の滅菌外科的取り出しが、30分以内に外科手術を完了させることにより容易となることを確立するものである。
【0092】
実施例2B
時間設定した産卵 対 触診 対 これらの技術の組み合わせの、完全な殻 対 柔らかい殻を有する卵の割合に対する、生存率(通常、孵化の時点で生存するヒナ)に対する、ならびに、外科手術操作の容易さに対する、影響。
【0093】
結果
時間設定のみ、柔らかい殻でかつ取り出しに適切な卵がない割合8〜71%、生存率13〜50%、滅菌率75〜100%、外科手術操作の容易さ、可変;
触診のみ、柔らかい殻でかつ取り出しに適切な卵がない割合13〜71%、生存率13〜54%、滅菌率89〜100%、外科手術操作の容易さ、良好;
触診と組み合わせた時間設定、柔らかい殻でかつ取り出しに適切な卵がない割合10〜23%、生存率14〜57%、滅菌率92〜100%、外科手術操作の容易さ、良好。
【0094】
これらの結果は、触診、または時間設定と組み合わせた触診が、特に、卵を腹部から取り出すときの操作の容易さの観点から、時間設定のみを上回るいくつかの利点を有し得ることを示唆するものである。データのさらなる解析は、時間設定+触診が卵の取り出しに要する時間が最も短い傾向があり、そして、時間設定のみが最も長い時間を要しており、おそらくは、時間設定+触診の群において柔らかい殻の卵が少なかったことを反映するものであることを示した。柔らかい殻の卵が少ないことは、卵の取り出しの間のより容易かつより迅速な操作を促進する。
【0095】
実施例2C
経卵巣細菌およびマイコプラズマ感染の排除、ならびに、胚およびその後のヒナの生存率および滅菌率に対する、抗生物質(例えば、経口投与されたフルオロキノロン)の影響。
【0096】
結果
抗生物質なし、生存率22〜60%および滅菌率86〜92%;
抗生物質あり、生存率13〜57%および滅菌率89〜100%。
【0097】
これらの結果は、経卵巣感染(例えば、サルモネラ)を取り除くための抗生物質を使用することの利益と、無菌的に取り出した卵の生存率に対して不利な影響がないこととを確立するものである。
【0098】
実施例2D
安楽死と卵の取り出しとの間の時間(0〜180分)の、生存率および操作の容易さ、孵化率および滅菌率に対する影響。
【0099】
結果
滅菌率 100%、
操作は、30分後には次第に困難になった。
孵化率は、安楽死から60分後、40分後および20分後に取り出した卵について、20%、40%および80%であった(各時間ごとにn=10)。
【0100】
これらの結果は、無菌外科手術用隔離装置内でトリの腹部から卵を滅菌状態で取り出すことは、約20分以内に外科手術を完了させることにより容易になるということを確立するものである。
【0101】
実施例3
実施例2A〜2Dにおける研究からの結果を再考すると、取り出した卵の最大の孵化率と微生物学的な滅菌率とは、時間設定した産卵と手での触診との組み合わせに基づくと、安楽死させたトリで達成される可能性が高いようであり(麻酔をかけたトリは、操作がより困難であった)、この場合、卵は、安楽死させた後可能な限り迅速に(15〜30分以内)取り出され、そして、卵殻は堅く、かつ十分に形成されている(卵の成熟が十分に進み、柔らかい殻の卵はない)ことが示唆された。取り出した未成熟卵について最適な保温条件を規定するために使用した他のデータに基づいて、保温の最初の18日間は、低い(約25%)相対湿度を選択した。以下に概説するこの方法は、確認研究であり、この研究において、実施例2で同定した全ての変動要因を、これらの変動要因間の相互作用を評価するのに最適の様式でまとめた。
【0102】
方法および材料:
7つの連続する群に分けた、既知のSPF状態の合計180羽の成体の雌の繁殖用ニワトリ(種々の年齢および遺伝子型)を、選択した食餌で維持し、そして、自然に繁殖させた。時間設定および触診の組み合わせを用いて、トリの腹部からの卵の取り出しに最適な時間を決定した。
【0103】
この手順のために、頚椎脱臼によりトリを安楽死させ、その直後に卵の取り出しのために準備した。腹側胸郭および腹部から羽毛を取り除き、そして、露出された皮膚を、アルコール中50%のヨウ素溶液を用いて滅菌した。次いで、各トリを、特別に適合された外科手術用隔離装置(5%の過酢酸溶液で滅菌され、かつ、滅菌した機器を備える)に配置した。トリを滅菌したドレープで覆い、次いで、隔離装置の滅菌した入口ポートを、ドレープを覆って配置した。開腹切開を創り、そして、注意深い切開に続き、子宮/生殖管の遠位面から排出腔の近位まで、から卵を取り出した。次いで、卵を、無菌状態下で、孵化用の保温器として適合された隔離装置へと移動させた。安楽死から13〜22分後に、良好な殻を有する合計153個のを首尾よく回収し、保温に適しているとみなした。
【0104】
振動がなく換気ありのプラスチック製の卵トレー内で18〜20℃にて約6〜24時間貯蔵した後、卵を秤量し、次いで、卵を、小型の揺れている保温器に入れた。保温器を、約25%のRHおよび37.6℃に維持した。卵は、空気の空洞が上向きになるように保持し、そして、保温の0日目、7日目および18日目に個々に秤量した。18日目に、全ての保温器を、約65%のRHを提供するように調節した。孵り、ヒナが生育可能な卵の数を記録した。
【0105】
孵化から7日以内に、生きたニワトリを孵化用の隔離装置から取り出し、そして、若いニワトリの群れの飼育に適した大規模飼育用の隔離装置へと移した。ニワトリは、放射線照射により滅菌した市販の補充用食餌で飼育した。ヒナが14〜21日齢のとき、糞便サンプルとスワブとを、飼育用隔離装置の各々から取り出し、そして、好気性富化培養および嫌気性富化培養によって細菌学的にサンプリングした。
【0106】
結果:
人工的に取り出した未成熟卵から、生育能力のあるニワトリを首尾よく孵化させた。サンプルからは、嫌気性細菌も好気性細菌も単離されなかった。(安楽死前9日間に親ドリによって自然に産まれた卵は、86%の生育能力のあるヒナの孵化率を有した。このことは、雌により産まれた卵における自然な繁殖力が正常またはより高いレベルであることを確認するものである)
7つの群の無菌卵の孵化率は、60%(15羽中9羽)〜77%(22羽中17羽)の範囲にわたり、平均は74%であった。
【0107】
結論:
ニワトリにおいて無菌の有精卵を人工的に生産するための安全かつ効率的な方法を確立した。卵は生育可能であり、そして、生育可能な無菌のニワトリをもたらし、これらのニワトリを隔離装置内に首尾よく維持した。この研究は、7つの連続するニワトリの群れにわたって多数の卵を用いて、先に記載した無菌の有精卵を生産するための方法と比較して、取り出した卵の孵化率における変動が少ないことと、100%の一貫した無菌の微生物学的状態とは、十分に成熟した卵を有するトリを選択し(自然に産まれる時点に近い時点;産卵の時間設定と触診との組み合わせに基づいて選択)、雌性の親ドリから卵を迅速に取り出し(安楽死または麻酔の開始から15〜30分)、次いで、約25%のRH(自然に産まれる卵よりかなり低い)で保温することによって達成され得ることを確認した。
【0108】
本願において開示される技術を用いて、本発明者らは、一貫してかなりより高い孵化率(一貫して60%よりも高い孵化率)を達成することができる。これは、以前には、このような一貫した基準(basis)では不可能だった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親ドリから取り出された場合に無菌状態の卵の孵化率および生存率を高めるための方法であって、該方法は、親ドリから、その殻内にある状態の未成熟卵を取り出す前に滅菌環境において行われ、そして、以下:
(a)トリを親ドリとして飼育する工程;
(b)以下:
(i)該未成熟卵が該親ドリの排出腔へと移動する前に、該親ドリの生殖管内での該未成熟卵の位置を決定する工程;ならびに
(ii)殻形成および石灰化の点から該未成熟卵の発生段階を決定することによって、必要とされるレベルの卵殻形成および石灰化が起こっている時点を確定する工程
により、該親ドリから該未成熟卵を取り出すべきタイミングを決定する工程
を包含する、方法。
【請求項2】
前記工程(b)が、観察方法および/または物理的方法の組み合わせによって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記物理的方法が、腹部および骨盤の触診、超音波診断法、X線診断法ならびに/またはMRI診断法を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法が、前記親ドリから前記未成熟卵を取り出す前に、該親ドリの骨盤から出る前の該未成熟卵の位置を決定することを可能にする、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記未成熟卵が前記親ドリの胸骨の尾側面と坐骨隆起との間の実質的に中間にあるかどうかの決定を可能にする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記観察方法が、経時的に前記親ドリの産卵パターンを監視および記録して、該卵が遠位の生殖管および排出腔へと移動する推定時間を導き出す工程を包含する、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
滅菌環境で無菌状態のトリを飼育する方法であって、
a)トリを親ドリとして飼育する工程;
b)以下:
i.未成熟卵が該親ドリの排出腔へと移動する前に、該親ドリの生殖管内での該未成熟卵の位置を決定する工程;ならびに
ii.殻形成および石灰化の点から該未成熟卵の発生段階を決定することによって、必要とされるレベルの卵殻形成および石灰化が起こっている時点を確定する工程
により、該親ドリからその殻内にある状態の該未成熟卵を取り出すべきタイミングを決定する工程;
c)該必要とされるレベルの卵殻形成および石灰化が起こり、該未成熟卵が該親ドリの排出腔へと移動する前に、その殻内にある状態の該未成熟卵を該親ドリから取り出す工程;ならびに
d)その殻内にある状態の該未成熟卵を保温し、該未成熟卵を孵化させて、卵からトリを孵す工程
を包含する、方法。
【請求項8】
前記工程(b)が、観察方法および/または物理的方法の組み合わせにより行われる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記物理的方法が、腹部および骨盤の触診、超音波診断法、X線診断法ならびに/またはMRI診断法を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記方法が、前記親ドリから前記未成熟卵を取り出す前に、該親ドリの骨盤から出る前の該未成熟卵の位置を決定することを可能にする、請求項7〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記未成熟卵が前記親ドリの胸骨の尾側面と坐骨隆起との間の実質的に中間にあるときに、該未成熟卵が取り出される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記観察方法が、経時的に前記親ドリの産卵パターンを監視および記録して、該卵が遠位の生殖管および排出腔へと移動する推定時間を導き出す工程を包含する、請求項7〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記未成熟卵の取り出しが、該卵が前記親ドリの前記排出腔へと自然に移動する時間よりも前であるが、該移動時間に可能な限り近い時点において行われる、請求項7〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記生殖管内にある間に前記未成熟卵を感染させる微生物を取り除く工程をさらに包含する、請求項7〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、以下:
i.前記生殖管内にある間に前記未成熟卵を感染させる標的微生物を識別する工程;
ii.フルオロキノロン、セファロスポリンおよびマクロライド系抗菌剤のような該標的微生物と闘うのに適切な抗菌剤を選択する工程;ならびに
iii.前記親ドリおよび/または卵中の該未成熟卵に該抗菌剤を投与する工程
を包含する、方法。
【請求項16】
前記生殖管内での前記未成熟卵の感染が、経卵巣経路で起こる、請求項14または15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記抗菌剤の投薬量レベルが、卵内で決定される、請求項14〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記親ドリが屠殺、安楽死または麻酔され、前記工程(c)における前記未成熟卵の取り出しが、該親ドリの屠殺、安楽死または麻酔の時点から約30分未満で行われる、請求項7〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記親ドリが、全て同一条件下で飼育された同種のトリの群れから選択される、請求項1〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記親ドリが、既存の同種の汚染物質を含まない状態のトリの群れから、滅菌環境下で自然に孵化される、請求項1〜19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれかに記載の方法であって、前記親ドリが、制御された条件下での適切な選択および自然な飼育方法により生産された、別の汚染物質を含まない状態のトリの群れのうちの一羽であり、該方法が、異なる汚染物質を含まない状態のトリを生産するために使用される、方法。
【請求項22】
請求項7〜21のいずれかに記載の方法であって、前記卵から孵ったトリが群れの一部を形成し、該卵から孵ったトリが孵化された後、該卵から孵ったトリのサンプルが取り出され、そして、特定の汚染物質について検査され、該群れの該汚染物質を含まない状態の指標を提供する、方法。
【請求項23】
請求項7〜22のいずれかに記載の方法であって、前記特定の汚染物質を含まない状態が、前記卵から孵ったトリにおいて達成されず、該卵から孵ったトリが該方法において親ドリとして使用される、方法。
【請求項24】
前記卵が前記親ドリの腹部から外科的に取り出される、請求項7〜23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
請求項24に記載の方法であって、以下:
i.前記トリの皮膚に切開をつくる工程;
ii.該トリの子宮を表面へと操作する工程;
iii.該子宮に切開をつくって前記卵を取り出すか、または、該子宮をクランプして該卵を取り出す工程
を包含する、方法。
【請求項26】
請求項7〜25のいずれかに記載の方法であって、前記麻酔、安楽死または屠殺した親ドリからの前記未成熟卵の取り出しが、滅菌環境下で行われ、そして、該手順の滅菌性が、該手順全体を通じて確認される、方法。
【請求項27】
請求項7〜26のいずれかに記載の方法であって、前記卵から孵ったトリが、卵を産ませるために前記滅菌環境から取り出され、次いで、該卵が孵化されて、さらに卵からトリを孵す、方法。
【請求項28】
請求項7〜27のいずれかに記載の方法であって、前記卵から孵ったトリが、前記滅菌環境から取り出され、そして、正常な腸の微生物叢を含む食餌を与えられる、方法。
【請求項29】
前記トリがニワトリである、請求項1〜28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
請求項7〜29のいずれかに記載の方法であって、トリが、前記特定の汚染物質を含まない状態を持つ卵から孵ったトリから孵化され、かつ卵から孵ったトリでない場合、こうして産まれた該トリは、同等かまたはより低いレベルの汚染物質を含まない状態の卵から孵ったトリのその後の受精のために、滅菌環境で飼育される、方法。
【請求項31】
無菌状態の卵を滅菌環境中に提供する方法であって、以下:
i.請求項7〜30のいずれかに記載の方法に従って提供されるような同等かまたはより良い無菌状態を持つ卵から孵ったトリを飼育する工程;
ii.該卵から孵ったトリを用いて卵を産ませる工程;および
iii.該卵を別の滅菌環境へと取り出す工程
を包含する、方法。
【請求項32】
前記卵が産卵後直ちに取り出され、そして、該卵の殻が滅菌される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
請求項31または32に記載の方法に従って生産される、卵。
【請求項34】
請求項33に記載の卵から孵化された、トリ。
【請求項35】
請求項7〜30のいずれかに記載の方法に従って孵化された、トリ。
【請求項36】
請求項7〜30のいずれかに記載の方法に従って飼育された、卵から孵ったトリによって産卵された卵から孵化された、トリ。
【請求項37】
ワクチン、抗体、モノクローナル抗体、線維芽細胞、血清学的試験用のタンパク質および/もしくは抗原、または、他の類似のタンパク質生成物のような、治療用および予防用の生物学的物質の生産における、請求項31〜32のいずれかに従って生産される卵の使用。
【請求項38】
ワクチンの生産における請求項37に記載の使用であって、前記卵に選択したウイルス株が注入され、次いで、該卵が保温されてウイルスを生成し、そして、そこから生成された該ウイルスがワクチンを形成する、使用。
【請求項39】
前記卵が外来性タンパク質を生成する、請求項37に記載の使用。
【請求項40】
治療法および予防法において使用するための、請求項1〜32のいずれかに記載の方法により生産された卵を用いて調製された、生物学的生成物。
【請求項41】
ワクチン、抗体、モノクローナル抗体、線維芽細胞、血清学的試験用のタンパク質および/もしくは抗原、または、他の類似のタンパク質生成物である、請求項40に記載の生物学的生成物。
【請求項42】
前記生成物がワクチン、好ましくは、インフルエンザウイルスのためのワクチンである、請求項41に記載の生物学的生成物。
【請求項43】
請求項7〜30のいずれかに記載の方法に従う、トリのストックを補充するための、半滅菌卵の生産のための方法であって、親ドリは、補充されるべきトリの群れから得られ、そこから生産された卵から孵ったトリは、無菌状態の指標を提供するように検査され、そして、いったん該所望の無菌状態が得られると、該卵から孵ったトリおよびその子孫が、適切な無菌状態のトリの群れを形成する、方法。

【公表番号】特表2009−527242(P2009−527242A)
【公表日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−555800(P2008−555800)
【出願日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際出願番号】PCT/EP2007/051737
【国際公開番号】WO2007/096418
【国際公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(508254945)オバジェン インターナショナル リミテッド (3)
【Fターム(参考)】