説明

特定物質抽出装置

【課題】簡単な構造で人為的ミスの防止をして確実な回収を図ることができる特定物質抽出装置を提供すること。
【解決手段】抽出カートリッジ11を保持するとともに、抽出カートリッジ11の液の排出口17が廃液容器23内に位置する容器ホルダ3の第1取付位置、または排出口17が回収容器25内に位置する容器ホルダ3の第2取付位置に選択的に取付け可能なカートリッジホルダ4と、カートリッジホルダ4が容器ホルダ3上の第1取付位置または第2取付位置のいずれかにあることを指定する選択手段と、カートリッジホルダ4の容器ホルダ3での実際の位置が選択手段の指定と同じであるときのみ加圧エア供給機構5を稼動可能とする制限手段と、を備える特定物質抽出装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルター部材を備えた特定物質抽出カートリッジを用いて試料液の特定物質を抽出する特定物質抽出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特定物質(例えば核酸等)の抽出装置の一例として、エアポンプと、抽出カートリッジの内圧を検出する圧力センサと、この圧力センサの検出に応じて開閉バルブを制御することにより、複数の抽出カートリッジへのエア供給を行うようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特定物質抽出装置の他の一例として、単一の加圧ノズルから加圧エアを供給し、加圧ノズルと容器保持機構とを相対移動させることにより、エア供給を行うようにしたものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
特定物質抽出装置のさらに他の一例として、保持機構により回収容器を複数配列させて保持し、加圧エア供給機構により単一の加圧ノズルから抽出カートリッジに加圧エアを導入し、分注機構の分注ノズルにより抽出カートリッジの洗浄液及び回収液をそれぞれ分注し、移動手段により加圧エア供給機構の加圧ノズルと保持機構とを相対移動させるようにしたものが知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2005−95159号公報
【特許文献2】特開2005−328730号公報
【特許文献3】特開2005−328730号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記特許文献1及び上記特許文献2に開示された特定物質抽出装置においては、複数の抽出カートリッジへのエア供給が、圧力センサを検出しながらのシーケンシャル動作になるために、抽出時間を長く取る必要がある。特に、上記特許文献1では、エア回路が複雑になって装置全体が高価になるのに加えて、エア漏れ等の懸念がある。一方、上記特許文献3は、上記特許文献1及び上記特許文献2の問題点を解決するために提案されたものであり、回収容器と廃液容器とを自動で選択的に交換するようにしている。しかし、このような特定物質抽出装置においては、自動で各容器の交換を行うための機構が複雑になってしまう。そこで、より簡便な構造で手軽に利用できる装置が望まれており、その一つとしては、多くの部分を手動で動か装置が提案され、例えば、回収容器と廃棄容器とを手動で選択的に交換する構成となるが、この場合、交換忘れ・容器移動間違いによる人為的ミスが発生する虞がある。
【0007】
本発明は、上記問題点を鑑みなされたもので、その課題としては、簡単な構造にも拘わらず人為的ミスを抑制して確実な回収を図ることができる特定物質抽出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る上記課題は、下記構成により達成される。
(1) 筐体内に配置されてフィルター部材を備えた特定物質抽出カートリッジを用い、該特定物質抽出カートリッジに特定物質を含む試料液を分注し加圧して該特定物質を該フィルター部材に吸着させた後、前記特定物質抽出カートリッジ内を洗浄液で洗浄してから、該特定物質抽出カートリッジに回収液を分注し加圧して該フィルター部材に吸着した該特定物質を分離して該回収液とともに回収する特定物質抽出装置であって、
前記抽出カートリッジへ単一の加圧ノズルから各加圧時の加圧エアを導入する加圧エア供給機構と、
前記抽出カートリッジから吐出される試料液及び洗浄液を収容する廃液容器と、
前記抽出カートリッジから吐出される回収液を収容する回収容器と、
前記廃液容器と前記回収容器とを並べて保持する容器ホルダと、
前記抽出カートリッジを保持するとともに、この抽出カートリッジの液の排出口が前記廃液容器内に位置する前記容器ホルダの第1取付位置、または該排出口が前記回収容器内に位置する該容器ホルダの第2取付位置に選択的に取付け可能なカートリッジホルダと、
前記カートリッジホルダが前記容器ホルダ上の前記第1取付位置または前記第2取付位置のいずれかにあることを指定する選択手段と、
前記カートリッジホルダの前記容器ホルダでの実際の位置が前記選択手段の指定と同じであるときのみ前記加圧エア供給機構を稼動可能とする制限手段と、を備える特定物質抽出装置。
【0009】
この構成によれば、まず、抽出カートリッジの液の排出口が廃液容器内に位置する容器ホルダの第1取付位置にあるか、もしくは、抽出カートリッジの液の排出口が回収容器内に位置する容器ホルダの第2取付位置にあるか、ということが選択手段によって指定される。この選択手段の指定が、カートリッジホルダの容器ホルダでの実際の位置と同じであるときにのみ制限手段によって加圧エア供給機構が稼動される。これにより、抽出カートリッジの液の排出口が廃液容器内に位置する容器ホルダの第1取付位置に実際にあり、試料液または洗浄液を注入・エア加圧可能状態であるか、或いは抽出カートリッジの液の排出口が回収容器内に位置する容器ホルダの第2取付位置に実際にあり、回収液を注入・エア加圧可能状態であるか、のいずれかが確実となり加圧エア供給機構が稼動される。従って、簡単な構造で人為的ミスの防止をして確実な回収を図ることができる。
【0010】
(2) 前記選択手段が前記第1取付位置または前記第2取付位置の選択スイッチを有し、前記制限手段が前記カートリッジホルダの各設置位置に設けられた位置検出センサを有し、更に前記選択スイッチの選択位置と前記位置検出センサの検出位置とが一致した場合のみ前記加圧エア供給機構を電源接続可能とする制御手段を前記制限手段が有する上記(1)記載の特定物質抽出装置。
【0011】
この構成によれば、制御手段は、選択スイッチの選択位置が第1取付位置であり、且つ位置検出センサの検出位置がカートリッジホルダの容器ホルダでの第1取付位置であるAND論理が成立したときに、加圧エア供給機構を電源接続することで加圧し、これとは異なり、選択スイッチの選択位置が第2取付位置であり、且つ位置検出センサの検出位置がカートリッジホルダの容器ホルダでの第2取付位置であるAND論理が成立したときに、加圧エア供給機構を電源接続することで加圧する。これにより、複雑な回路構成をすることなく、選択スイッチと位置検出センサとの簡単な組み合わせで論理構成をすることができる。
【0012】
(3) 前記加圧エア供給機構は、前記加圧ノズルを保持する加圧ヘッドと、該加圧ヘッドが前記抽出カートリッジの注入口に密着して加圧エアの供給を可能にするエア供給位置と該注入口から離れる退避位置との間で該加圧ヘッドを変位させるヘッド変位機構と、を前記筐体に保持する上記(1)記載の特定物質抽出装置。
【0013】
この構成によれば、加圧エア供給機構は、ヘッド変位機構が、加圧ヘッドを変位させる際に、エア供給位置において抽出カートリッジの注入口に対して加圧ヘッドを密着させて加圧エアを供給し、退避位置において抽出カートリッジの注入口から加圧ヘッドを離すことで、抽出カートリッジの液の排出口が廃液容器内に位置する容器ホルダの第1取付位置にあることで試料液または洗浄液を注入して加圧する際と、抽出カートリッジの液の排出口が回収容器内に位置する容器ホルダの第2取付位置にあることで回収液を注入して加圧する際とにおいて、試料液または洗浄液の注入と回収液の注入とを加圧ヘッドの退避位置で行うことができるために、抽出カーリッジから加圧ヘッドを取り外すことなく、効率良く注入を行うことができる。
【0014】
(4) 前記制限手段が、前記ヘッド変位機構のエア供給側に接触配置されて自由端である一端を回動自在として他端を前記筐体に支持されている制限レバーを有し、前記選択手段が、該制限レバー自由端先端を該筐体外表面に露出させる選択窓であり、該選択窓内に前記第1取付位置及び前記第2取付位置の選択用の設定位置が配置されている上記(3)記載の特定物質抽出装置。
【0015】
この構成によれば、ヘッド変位機構のエア供給側に接触配置されて自由端である一端を回動自在として他端を筐体に支持されている制限レバーを、選択窓内の第1取付位置用または第2取付位置用の設定位置に設定するだけで、加圧エア供給機構の工程を確定することができ、簡単な構造で、作業者に目視確認し易い制限手段を構成することができる。
【0016】
(5) 前記制限レバーの下方側位置で前記ヘッド変位機構の変位方向へのみ移動可能に前記カートリッジホルダ側部に保持されたスライダが備えられ、前記容器ホルダの前記回収容器用位置で前記スライダの対応位置にのみ該スライダを嵌入可能な凹所が備えられ、前記制限レバー自由端部の前記スライダ対向位置に下方に突出する突起が備えられ、前記選択窓の第2取付位置用設定位置では前記制限レバーが前記スライダの直上に位置し、前記突起が前記スライダを前記容器ホルダの第2取付位置の前記凹所に嵌入させる位置に前記容器ホルダが位置する場合に前記ヘッド変位機構がエア供給位置まで達する上記(4)記載の特定物質抽出装置。
【0017】
この構成によれば、制限レバーの自由端先端を露出させる選択窓における第1取付位置用または第2取付位置用の位置設定で、制限レバーが選択位置に配置される。そして、例えば、特定物質をフィルター部材に吸着させ、この特定物質抽出カートリッジ内を洗浄液で洗浄する処理が終了の状態において、特定物質の回収作業に移る場合、制限レバーは第2取付位置に設定される。この時、カートリッジホルダが廃棄・洗浄容器の位置(第1取付位置)に残ったままの状態であると、ヘッド変位機構を退避位置からエア供給位置へ移行させようとしたとき、制限レバーの自由端部に備えられた突起がカートリッジホルダに備えられたスライダを押圧するが、廃棄・洗浄容器の位置(第1取付位置)にはスライダの嵌入用凹所がないので、スライダは動ない。結果として、エア供給は実施されない。つまり、選択窓における選択と、容器ホルダでのカートリッジホルダの位置が一致していないと回収工程が実施できない。このように、スライダに突起が当接することでヘッド変位機構の動きを制限し、スライダが凹所に嵌入されてスライダに制限レバーの突起が当接しないようにすることでヘッド変位機構の制限を解除することができ、制限レバーの突起、スライダとそれに対応する凹所という簡単な構造で、人為的ミスの防止をして確実な回収を図ることができる。
【0018】
(6) 前記筐体に前記制限レバーを保持して前記ヘッド変位機構の変動を阻止するストッパーが備えられている上記(4)または上記(5)のいずれか記載の特定物質抽出装置。
【0019】
この構成によれば、筐体に設けたストッパーによって制限レバーが保持されることで不要なときのヘッド変位機構の動きを簡単な構造で制限することができる。
【0020】
(7) 前記抽出カートリッジが複数個整列配置され、前記廃液容器、前記回収容器は該抽出カートリッジに対応して配置されている上記(1)〜上記(6)のいずれかに記載の特定物質抽出装置。
【0021】
この構成によれば、複数の抽出カートリッジに対応して加圧ノズルと廃液容器と回収容器とがそれぞれ配置されているために、一括的に多数の抽出を行って、効率のよい抽出作業を実施することができる。
【0022】
(8) 前記抽出カートリッジに注入される液は、核酸を含む試料液及び前記フィルター部材に付着した核酸を分離して回収する回収液、更に該フィルター部材に付着した核酸以外の不純物を洗い流す洗浄液である上記(1)〜上記(7)のいずれかに記載の特定物質抽出装置。
【0023】
この構成によれば、抽出カートリッジに核酸を含む試料液を注入し加圧して核酸をフィルター部材に吸着させた後、抽出カートリッジに回収液を分注し加圧してフィルター部材に吸着した核酸を分離して回収液とともに回収し、その後に、洗浄液を用いてフィルター部材に付着した核酸以外の不純物を洗い流すために、抽出カートリッジを繰り返し用いることにより、抽出カートリッジを無駄なく使用することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によって、特定物質の抽出において簡単な構造で人為的ミスの防止をして確実な回収を図ることができる特定物質抽出装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
まず、本発明の特定物質抽出装置の詳細な説明の前に核酸の抽出処理について説明する。
図1(a)は本発明の実施形態による特定物質抽出装置に用いられる抽出カートリッジの外観斜視図、図1(b)は図1(a)のI−I線断面図、図2(a)〜(g)は抽出動作のそれぞれ工程図である。
【0026】
図1(a)に示すように、抽出カートリッジ11は、上端が開口した筒状本体13の底部にフィルター部材である核酸吸着性多孔膜15が保持され、筒状本体13の核酸吸着性多孔膜15より下方部位はロート状に形成され、下端中心部に細管ノズル状の排出口17が所定長さに突出形成され、筒状本体13の側部両側に縦方向の突条19が形成されてなる。
【0027】
カートリッジ11の上部の注入口21より後述の試料液、洗浄液、回収液が分注された後、注入21より加圧エアが導入され、核酸吸着性多孔膜15を通して各液を排出口17より後述の廃液容器23又は回収容器25に流下排出する。なお、図示の場合、筒状本体13は上部と下部に分割され嵌着する構造となっている。
【0028】
図1(b)に示すように、注入口21は、内周面をテーパ状にカットした傾斜面27を有し、この傾斜面27は、後述する加圧ノズル69先端の傾斜外周面に略一致するように形成されている。
【0029】
図2(a)に示すように、抽出動作の最初の工程において、廃液容器23上に位置する抽出カートリッジ11に、溶解処理された核酸を含む試料液Sを注入する。
【0030】
図2(b)に示すように、次の工程で抽出カートリッジ11に加圧エアを導入して加圧し、核酸吸着性多孔膜15を通して試料液Sを通過させ、この核酸吸着性多孔膜15に核酸を吸着させ、通過した液状成分を廃液容器23に排出する。
【0031】
図2(c)に示すように、次の工程で抽出カートリッジ11に洗浄液Wを分注し、図2(d)に示す次の工程で抽出カートリッジ11に加圧エアを導入して加圧し、核酸吸着性多孔膜15に核酸を保持したまま、その他の不純物の洗浄除去を行い、通過した洗浄液Wを廃液容器23に排出する。この図2(c)の工程及び図2(d)の工程は複数回繰り返してもよい。
【0032】
図2(e)に示すように、次の工程で抽出カートリッジ11の下方の廃液容器23を回収容器25に交換してから、図2(f)の工程でカートリッジ11に回収液Rを分注し、図2(g)の工程で抽出カートリッジ11に加圧エアを導入して加圧し、核酸吸着性多孔膜15と核酸の結合力を弱め、吸着されている核酸を離脱させて、核酸を含む回収液Rを回収容器25に排出して回収する。
【0033】
次に、本発明の特定物質抽出装置の基本構造について説明する。
図3は特定物質抽出装置の基本構造を説明する外観斜視図である。
【0034】
図3に示すように、特定物質抽出装置1は、筐体2内に、容器ホルダ3と、カートリッジホルダ4と、加圧エア供給機構5と、を主として備える。本実施形態では、カートリッジ11を8個並べてほぼ同時に処理を実施できる構成としているが、個数により制限されることはない。
【0035】
容器ホルダ3は、カートリッジ11の個々に対応する廃液容器23の列と回収容器25の列とを平行に並べて保持する機能を有し、直方体状に形成されており、前面に取手31が設けられている。容器ホルダ3の上面前部には、廃液容器23を保持するための廃液容器保持溝33がカートリッジ11の並び方向に並べて形成されている。また、容器ホルダ3の上面後部には、回収容器25を保持するための回収容器保持溝35が廃液容器保持溝33に並列に並べて形成されている。廃液容器保持溝33と回収容器保持溝35とは、それぞれ同じピッチで8個形成されている。容器ホルダ3の前面には、廃液容器保持溝33まで貫通するスリット37が形成されている。廃液容器23は透明な樹脂により形成されており、スリット37を通して廃液容器23を目視することにより、廃液容器23がその時点で収容している収容量を確認することができる。
【0036】
容器ホルダ3の側面には、カートリッジ11を保持するカートリッジホルダ4の支持脚39が載置される第1差込溝41と第2差込溝43とが前後に並べて形成されている。カートリッジホルダ4は、支持脚39を第1差込溝41に差し込む第1取付位置A1と、支持脚39を第2差込溝43に載置する第2取付位置A2とのいずれかに選択的に取り付けることができる。
【0037】
本実施形態のカートリッジホルダ4は、液注入及び排出に障害とならないように1列に並ぶ8個の抽出カートリッジ11の中央部を保持する構造であって、カートリッジホルダ4の長手方向両端部には、前述したように容器ホルダ3に支持される2本の支脚部39が下方に向けて突出形成されている。そして、カートリッジホルダ4を容器ホルダ3の第1取付位置A1に取り付けたときには、抽出カートリッジ11の排出口17が廃液容器23に挿入される。一方、カートリッジホルダ4を容器ホルダ3の第2取付位置A2に取り付けたときには、抽出カートリッジ11の排出口17が回収容器25に挿入される。
【0038】
カートリッジホルダ4の上面には、抽出カートリッジ11を保持するカートリッジ保持孔45が長手方向に1列に並べて形成されているとともにカートリッジ保持孔45の円周上に凹溝47が形成されている。カートリッジ保持孔45は、所定ピッチで8つ形成されており、凹溝47に抽出カートリッジ11の突条19を係合させて抽出カートリッジ11が挿入される。
【0039】
カートリッジホルダ4の内部には、可動の抽出カートリッジ保持及び保持解除機構が備えられ、抽出カートリッジの廃棄時にはカートリッジホルダ4の下方から人の手が触れることなく送出できる。これにより、手を汚さずに、交換が必要になった使用後の抽出カートリッジ11を廃棄することができる。また、抽出カートリッジ11を上方に取り出すことなく落下させて取り外せるので、抽出カートリッジ11の先端部がカートリッジホルダ4に接触することがないため、カートリッジホルダ4が汚れることがなくコンタミネーションを防止することができる。
【0040】
カートリッジホルダ4が取り付けられた容器ホルダ3は、筐体2に有するトレイ51に一旦載置した後に、スライド移動させることにより、加圧エア供給装置5に装着される。トレイ51の載置部は、容器ホルダ3の幅方向の長さとほぼ同じサイズを有している。加圧エア供給装置5の筐体2から突出して突き当てブロック53が設けられ、容器ホルダ3を奥行き方向へスライド移動させて突き当てブロック53に突き当て、容器ホルダ3が位置決めされる。そして、カートリッジホルダ4は、保持している複数の抽出カートリッジ11の注入口21のそれぞれが加圧エア供給装置5に備えた8個の加圧ノズル55の直下に位置するところに位置決めされる。
【0041】
ここで、容器ホルダ3の突き当てはカートリッジホルダ4の後面であることから、カートリッジホルダ4が容器ホルダ3の第1取付位置A1と第2取付位置A2のいずれに取り付けられている場合であっても、保持する複数の抽出カートリッジ11を、加圧ノズル55の直下にそれぞれ位置させることができる。
【0042】
加圧エア供給機構5は、加圧ヘッド57と、ヘッド変位機構59と、を備える。8機の加圧ヘッド57は、それぞれエア供給ユニットを内包している。8機のエア供給ユニットは、軸63に沿って並べられており、互いには固定されておらず、軸63を介して連結されている。エア供給ユニットは、それぞれ不図示のエアポンプと、これらエアポンプの前部に接続されたチェックバルブと、これらチェックバルブの下流側に接続された加圧ノズルと、から構成されている。軸63は、モータ65(図4参照)によって回転させることができ、これとは異なり、軸63に着脱自在に接続される手動式のハンドル67によって回転させることも可能である。ハンドル67は軸63に嵌合される。なお、ハンドル67は、ギア等の減速機構を介して軸63に接続してもよい。モータ65及びハンドル67が、軸63を回転させる駆動部になる。
【0043】
ヘッド変位機構59は、引っ張りばね69と、回転軸71と、この回転軸71に固定されたカム73と、この回転軸71の両端部に固定された把持部75と、から構成されている。
【0044】
引っ張りばね69は、上端が筐体2の側部に取り付けられており、下端が加圧ヘッド57に取り付けられている。この引っ張りばね69により、加圧ヘッド57は軸63を中心にして図3中の時計回りに付勢され、カム73に常時押し付けられている。
【0045】
把持部75は、操作者に把持され操作される部位であり、把持部75を操作することにより、回転軸71を介してカム73が回転する。カム73は、第1接触面77及び第2接触面79を有する。カム73は、第1接触面77が加圧ヘッド57の上面に接触する第1位置B1と、第2接触面79が加圧ヘッド57の上面に接触する第2位置B2との間で回動する。カム73が第1位置B1にあるときの加圧ヘッド57の位置を退避位置と称し、カム73が第2位置B2にあるときの加圧ヘッド57の位置をエア供給位置と称する。カム73の回転によって、加圧ヘッド57は軸63を中心として揺動する。
【0046】
エア供給ユニット61は、軸63に不図示の偏心ポンプが結合されているために、この偏心ポンプが動作することで、加圧ノズル55に加圧エアが生成される。加圧エアの圧力は特に限定されないが、好ましくは80kPa〜200kPaの範囲内であり、さらに好ましくは120kPa〜180kPaの範囲内である。
【0047】
次に、図4〜図7を参照して、特定物質抽出装置1における電気的制御手段と制御動作について説明する。
図4は特定物質抽出装置1の電気的制御手段の回路図、図5は電気的制御手段をもつ特定物質抽出装置1の正面図、図6は電気的制御手段をもつ特定物質抽出装置1の制御動作の第1状態での側面図、図7は電気的制御手段をもつ特定物質抽出装置1の制御動作の第2状態での側面図である。
【0048】
図4に示すように、電気的制御手段81は、電源Bと、モータ65と、メインスイッチSW1と、レバー圧着検出スイッチSW2と、回収選択スイッチSW3と、洗浄選択スイッチSW4と、第1取付位置検出スイッチ(位置検出センサ)SW5と、第2取付位置検出スイッチ(位置検出センサ)SW6と、を備える。
【0049】
回収選択スイッチSW3は、第2取付位置検出スイッチSW6と、電源Bと、レバー圧着検出スイッチSW2と、に直列に接続されている。洗浄選択スイッチSW4は、試料液注入選択兼用であって、第1取付位置検出スイッチSW6と、電源Bと、レバー圧着検出スイッチSW2と、に直列に接続されている。
【0050】
図5に示すように、回収選択スイッチSW3と洗浄選択スイッチSW4とは、筐体2の前面における作業者の手の届きやすい位置に取付けられている。
【0051】
図6、図7に示すように、レバー圧着検出スイッチSW2は、加圧ヘッド57近傍に取付けられており、カム73の第1接触面77が加圧ヘッド57の上面に接触する第1位置B1である退避位置でオフされ、カム73の第2接触面79が加圧ヘッド57の上面に接触する第2位置B2であるエア供給位置でオンとなる。
【0052】
第1取付位置検出スイッチSW5は、筐体2のトレイ51に取付けられており、カートリッジホルダ4が容器ホルダ3の第1取付位置A1に取付けられているとオンされ、カートリッジホルダ4が容器ホルダ3の第1取付位置A1に取付けられていないとオフされる。
【0053】
第2取付位置検出スイッチSW6は、第1取付位置検出スイッチSW5と同様に、筐体2のトレイ51に取付けられており、カートリッジホルダ4が容器ホルダ3の第2取付位置A2に取付けられているとオンされ、カートリッジホルダ4が容器ホルダ3の第2取付位置A2に取付けられていないとオフされる。
【0054】
図2(a)、図2(b)に示した試料液注入加圧工程を実行するに際し、作業者は、複数の抽出カートリッジ11を保持したカートリッジホルダ4を、複数の廃液容器23及び回収容器25を保持した容器ホルダ3の第1取付位置A1に取り付ける。これにより、各抽出カートリッジ11の排出口17は各廃液容器23に挿入した状態になる。第1取付位置検出スイッチSW5はオンされる。この後、各抽出カートリッジ11に、核酸を含んだ試料液Sを手動で分注する。
【0055】
次に、容器ホルダ3とカートリッジホルダ4とをトレイ51上に載置してスライド移動させ、突き当てブロック53に突き当てて加圧エア供給機構5に装着させる。このとき、加圧ヘッド57は退避位置である第1位置B1にあり、各抽出カートリッジ11の注入口21は、加圧ノズル55の直下に位置する。そして、作業者は、把持部75を把持して回転操作することで、回転軸71及びカム73を介して加圧ヘッド57がエア供給位置である第2位置B2に移動され、レバー圧着検出スイッチSW2がオンされる。
【0056】
次に、作業者は、洗浄選択スイッチSW4をオンしてから、メインスイッチSW1をオンする。これにより、レバー圧着検出スイッチSW2がオン、洗浄選択スイッチSW4がオン、第1取付位置検出スイッチSW5がオン、メインスイッチSW1がオン、のAND論理が成立することで、モータ65が電源Bに接続され、加圧ノズル55から抽出カートリッジ11内に加圧エアが注入される。モータ65は予め定められた設定時間を過ぎると駆動を停止し、試料液注入加圧工程が完了する。
【0057】
このとき、作業者が、複数の抽出カートリッジ11を保持したカートリッジホルダ4を容器ホルダ3の第2取付位置A2に取り付けていると、レバー圧着検出スイッチSW2がオン、洗浄選択スイッチSW4がオン、メインスイッチSW1がオン、であるが、第1取付位置検出スイッチSW5がオフになってAND論理が成立しなくなるために、モータ65に電源Bが接続されず、作業者に手順の間違いがあることが促される。
【0058】
次に、図2(c)、図2(d)に示した洗浄液注入加圧工程を実行するに際し、作業者は、容器ホルダ3とカートリッジホルダ4とを取り出して各抽出カートリッジ11に洗浄液Wを分注してから加圧エア供給装置1に再び装着する。洗浄液Wに対する加圧処理は、試料液Sに対する加圧処理と同様に行われ、作業者が、カートリッジホルダ4を容器ホルダ3の第2取付位置A2に取り付けていると、モータ65に電源Bが接続されず、作業者に手順の間違いがあることが促される。
【0059】
次に、図2(e)、図2(f)、図2(g)に示した回収液注入加圧工程を実行するに際し、作業者は、容器ホルダ3とカートリッジホルダ4とを取り出して各抽出カートリッジ11に回収液Rを分注し、複数の抽出カートリッジ11を保持したカートリッジホルダ4を、複数の廃液容器23及び回収容器25を保持した容器ホルダ3の第2取付位置A2に取り付ける。これにより、各抽出カートリッジ11の排出口17は各回収容器25に挿入した状態になる。第2取付位置検出スイッチSW6はオンされる。
【0060】
次に、容器ホルダ3とカートリッジホルダ4とをトレイ51上に載置してスライド移動させ、突き当てブロック53に突き当てて加圧エア供給機構5に装着させる。このとき、加圧ヘッド57は第1位置B1にあり、各抽出カートリッジ11の注入口21は、加圧ノズル55の直下に位置する。そして、作業者は、把持部75を把持して回転操作することで、回転軸71及びカム73を介して加圧ヘッド57が第2位置B2に移動され、レバー圧着検出スイッチSW2がオンされる。
【0061】
次に、作業者は、回収選択スイッチSW3をオンしてから、メインスイッチSW1をオンする。これにより、レバー圧着検出スイッチSW2がオン、回収選択スイッチSW3がオン、第2取付位置検出スイッチSW6がオン、メインスイッチSW1がオン、のAND論理が成立することで、モータ65が電源Bに接続され、加圧ノズル55から抽出カートリッジ11内に加圧エアが注入される。モータ65は予め定められた設定時間を過ぎると駆動を停止し、回収液注入加圧工程が完了し、把持部75を回転操作して加圧ヘッド57を第1位置B1に退避移動させ、容器ホルダ3とカートリッジホルダ4とを取り出して、全ての核酸抽出処理が完了する。
【0062】
このとき、作業者が、複数の抽出カートリッジ11を保持したカートリッジホルダ4を容器ホルダ3の第1取付位置A1に取り付けたまま回収工程に入ろうとすると、レバー圧着検出スイッチSW2がオン、回収選択スイッチSW3がオン、メインスイッチSW1がオンであるが、第2取付位置検出スイッチSW6はオフ状態であり、AND論理が成立しなくなるために、モータ65に電源Bが接続されず、作業者に手順の間違いがあることが促される。
【0063】
以上説明した電気的制御手段81を有する特定物質抽出装置1によれば、抽出カートリッジ11の液の排出口17が廃液容器23内に位置する容器ホルダ3の第1取付位置A1にあるか、抽出カートリッジ11の液の排出口17が回収容器25内に位置する容器ホルダ3の第2取付位置A2にあるか、が選択手段である回収選択スイッチSW3と洗浄選択スイッチSW4とによって指定され、この選択手段の指定が、カートリッジホルダ4の容器ホルダ3での実際の位置と同じであるときにのみ制限手段である第1取付位置検出スイッチSW5と第2取付位置検出スイッチSW6とによって加圧エア供給機構5が稼動される。これにより、抽出カートリッジ11の液の排出口17が廃液容器23内に位置する容器ホルダ3の第1取付位置A1にあることで試料液Sまたは洗浄液Wを注入して加圧するべきか、或いは抽出カートリッジ11の液の排出口17が回収容器25内に位置する容器ホルダ3の第2取付位置A2にあることで回収液Rを注入して加圧するべきか、のいずれかが確定したうえで加圧エア供給機構5が稼動される。これにより、簡単な構造で人為的ミスの防止をして確実な回収を図ることができる。
【0064】
また、特定物質抽出装置1によれば、電気的制御手段81は、洗浄選択スイッチSW4の選択位置が第1取付位置であり、且つ第1位置検出スイッチSW5の検出位置がカートリッジホルダ4の容器ホルダ3での第1取付位置A1であるAND論理が成立したときに、加圧エア供給機構5を電源接続することで加圧し、これとは異なり、回収選択スイッチSw3の選択位置が第2取付位置A2であり、且つ位置検出センサSW6の検出位置がカートリッジホルダ4の容器ホルダ3での第2取付位置A2であるAND論理が成立したときに、加圧エア供給機構5を電源接続することで加圧する。これにより、複雑な回路構成をすることなく、選択スイッチSW3,4と位置検出センサSW5,6との簡単な組み合わせで論理構成をすることができる。
【0065】
また、特定物質抽出装置1によれば、加圧エア供給機構5は、ヘッド変位機構59が、加圧ヘッド57を変位させる際に、エア供給位置において抽出カートリッジ11の注入口21に対して加圧ヘッド57を密着させて加圧エアを供給し、退避位置において抽出カートリッジ11の注入口21から加圧ヘッド57を離すことで、抽出カートリッジ11の液の排出口17が廃液容器23内に位置する容器ホルダ3の第1取付位置A1にあることで試料液Sまたは洗浄液Wを注入して加圧する際と、抽出カートリッジ11の液の排出口17が回収容器25内に位置する容器ホルダ3の第2取付位置A2にあることで回収液Rを注入して加圧する際とにおいて、試料液Sまたは洗浄液Wの注入と回収液Rの注入とを加圧ヘッド57の退避位置で行うことができるために、抽出カーリッジ11から加圧ヘッド57を取り外すことなく、効率良く注入を行うことができる。
【0066】
また、特定物質抽出装置1によれば、複数の抽出カートリッジ11に対応して加圧ノズル55と廃液容器23と回収容器25とがそれぞれ配置されているために、一括的に多数の抽出を行って、効率のよい抽出作業を実施することができる。
【0067】
また、特定物質抽出装置1によれば、抽出カートリッジ11に核酸を含む試料液Sを注入し加圧して核酸を核酸吸着性多孔質膜15に吸着させた後、抽出カートリッジ11に回収液Rを分注し加圧して核酸吸着性多孔質膜15に吸着した核酸を分離して回収液Rとともに回収し、その後に、洗浄液Wを用いて核酸吸着性多孔質膜15に付着した核酸以外の不純物を洗い流すために、抽出カートリッジ11を繰り返し用いることにより、抽出カートリッジ11を無駄なく使用することができる。
【0068】
次に、図8〜図21を参照して、特定物質抽出装置1における機械的制御手段と制御動作について説明する。
ここで、図8は図3に示した特定物質抽出装置に機械的制御手段の構成を加えた概略斜視図である。図3と同じ作用構成の要素には同一の符号を付し、説明を流用する。
【0069】
機械的制御手段83の一部として筐体2には制限レバー85と選択窓87が、カートリッジホルダ4の支脚部39にはスライダ89が備えられている。
制限レバー85は、棒形状の軸部材であって、ヘッド変位機構59のエア供給側に接触可能に配置され、その支持端85bが筐体2内部で保持され、他端である自由端85aが回動自在且つ加圧エア供給機構5の下側側辺に当接可能に支持されている。この制限レバー85は、下方に向けて突出した突起93を有する。自由端85aの最先端部は特定物質抽出装置1の前面に開口する選択窓87から外表面へ露出し、選択窓の範囲でその移動が制限される。
【0070】
スライダ89は、カートリッジホルダ4の側部に配置され、特定物質抽出装置1でのカートリッジホルダ4の装着位置において、制限レバー85に突出配置された突起93が支脚部39に当接する位置に備えられ、上下方向にスライド可能に保持されている。更に、スライダ89は、ヘッド変位機構59の変位方向へその変位に合わせて移動可能に上下に移動自在に保持されている。ここで、容器ホルダ3は、第2差込溝43にのみスライダ89を落とし込むための凹所95が形成されている。
【0071】
図9は機械的制御手段をもつ特定物質抽出装置1の平面図、図10は機械的制御手段をもつ特定物質抽出装置1の第1状態での平面図、図11は機械的制御手段をもつ特定物質抽出装置1の第1状態での正面図、図12は機械的制御手段をもつ特定物質抽出装置1の第1状態での側面図、図13は機械的制御手段をもつ特定物質抽出装置1の第2状態での平面図、図14は機械的制御手段をもつ特定物質抽出装置1の第2状態での正面図、図15(a)は機械的制御手段をもつ特定物質抽出装置1の第2状態での部分正面図、図15(b)は機械的制御手段をもつ特定物質抽出装置1の第2状態での側面図である。
【0072】
また、図16は機械的制御手段をもつ特定物質抽出装置1の第3状態での平面図、図17は機械的制御手段をもつ特定物質抽出装置1の第3状態での正面図、図18(a)は機械的制御手段をもつ特定物質抽出装置1の第3状態での部分正面図、図18(b)は機械的制御手段をもつ特定物質抽出装置1の第3状態での側面図、図19は機械的制御手段をもつ特定物質抽出装置1の第4状態での平面図、図20は機械的制御手段をもつ特定物質抽出装置1の第4状態での正面図、図21は機械的制御手段をもつ特定物質抽出装置1の第4状態での側面図である。
【0073】
図9、図10、図11、図12に基づき、機械的制御手段83の第1状態の作動状況を説明する。
前述のように、選択窓87は、制限レバー85の自由端を筐体2の外表面に露出させる位置に配置され、且つ選択窓87の範囲に自由端が移動を制限されている。そして、選択窓87には第1取付位置A1を設定する洗浄印Wと、第2取付位置A2を設定する回収印Eと、ニュートラル位置を設定するニュートラル印Nと、がヘッド変位機構59の軸方向に平行に配置記載されている。
【0074】
筐体2の内側にはストッパー91が固定配置され、制限レバー85がストッパー91に係止される状態は、選択窓87では自由端85aがニュートラル印Nに設定されているときであり、制限レバー85を筐体2に係止保持することで、ヘッド変位機構59に有する加圧ヘッド57の変動に抵抗し、圧力注入動作を発動させない。
【0075】
つまり、作業者によって、制限レバー85が選択窓87のニュートラル印Nに設定されると、必然的に制限レバー85はストッパー91上に配置されるために下方に向けて回動されず、この状態で、制限レバー85が加圧エア供給機構5における加圧ヘッド57の下側に接触配置されるために、モータ65が電源に接続されたとしても、制限レバー85によって加圧ヘッド57は動かない。
【0076】
図13、図14、図15(a),図15(b)に示すように、図2(c)、図2(d)に示した洗浄液注入加圧工程(試料液注入加圧工程)を実行するに際し、カートリッジホルダ4を容器ホルダ3の第1取付位置A1に取り付けて筐体2に装着した後に、作業者が制限レバー85を選択窓87の洗浄印Wに設定すると、制限レバー85はストッパー91から外れて下方に向けて回動可能になり、加圧エア供給機構5における加圧ヘッド57を下方に向けて揺動自在とするために、モータ65が電源に接続されることで、加圧ヘッド57が駆動され、加圧エアが第1取付位置A1にある抽出カートリッジ11内に注入される。
この制限レバー85の洗浄印W位置は、カートリッジホルダ4の支脚部39の更に外側位置であり、制限レバー85に突出配置された突起93がスライダ89に干渉することはない。
【0077】
図16、図17、図18(a)、図18(b)に示すように、図2(e),図2(f),図2(g)に示した回収液注入加圧工程を実行するに際し、カートリッジホルダ4を容器ホルダ3の第2取付位置A2に取り付けて筐体2に装着した後に、作業者が制限レバー85を選択窓87の回収印Eに設定する。この選択窓87の回収印Eの位置は制限レバー85の突起93がスライダ89に干渉する位置であるが、スライダ89が第2取付位置A2の凹所95に落とし込まれているために、突起93がスライダ89の落とし込まれた空間に入り込んで制限レバー85が揺動可能となり、加圧ヘッド57を下方に向けて回動可能とするために、モータ65が電源に接続されることで、加圧ヘッド57が駆動され、加圧エアが第2取付位置A2にある抽出カートリッジ11内に注入される。
【0078】
ここで、図19、図20、図21に示すように、図2(e),図2(f),図2(g)に示した回収液注入加圧工程を実行するに際し、カートリッジホルダ4が容器ホルダ3の第1取付位置A1に取り付けたままで、作業者が制限レバー85を選択窓87の回収印Eに設定してモータ65が電源に接続されると、スライダ89が凹所95に落とし込まれていないので、突起93がスライダ89により支えられ、制限レバー85の移動が阻止され、加圧ヘッド57が下方に向けて回動されず、抽出カートリッジ11が間違って取付けられていることが作業者に促される。なお、制限レバー85によって加圧ヘッド57の揺動を規制する力は、モータ65のアーマチュアが焼き切れない程度である。また、モータ65と加圧ヘッド57との間にトルククラッチ等を介在させて、加圧ヘッド57が揺動しないときに、モータ65のみが空回りするようにしても良い。
【0079】
機械的制御手段83をもつ特定物質抽出装置1によれば、ヘッド変位機構59のエア供給側に接触配置されて自由端である一端を回動自在として他端を筐体2に支持されている制限レバー85を、選択窓87内の第1取付位置または第2取付位置に設定するだけで、加圧エア供給機構5の稼動を確定することができるので、簡単な構造で、作業者に目視確認し易い制限手段を構成することができる。
【0080】
また、特定物質抽出装置1によれば、スライダ89に突起93が当接することでヘッド変位機構59の動きを制限し、スライダ89が凹所95に嵌入されてスライダ89に突起93が当接しないようにすることでヘッド変位機構59の制限を解除することができる。
【0081】
また、特定物質抽出装置1によれば、ストッパー91によって制限レバー85が保持されることでヘッド変位機構59の動きを簡単な構造で制限することができる。
【0082】
なお、カートリッジ11に内有する核酸吸着性多孔膜15としては、基本的には核酸が通過可能な多孔性であり、その表面は試料液中の核酸を化学的結合力で吸着する特性を有し、洗浄液による洗浄時にはその吸着を保持し、回収液による回収時に核酸の吸着力を弱めて離すように構成されてなる。
【0083】
抽出カートリッジ11に内有する核酸吸着性多孔膜15は、イオン結合が実質的に関与しない相互作用で核酸が吸着する多孔性膜である。これは、多孔性膜側の使用条件で「イオン化」していないことを意味し、環境の極性を変化させることで、核酸と多孔性膜が引き合うようになると推定される。これにより分離性能に優れ、しかも洗浄効率よく、核酸を単離精製することができる。好ましくは、核酸吸着性多孔性膜は、親水基を有する多孔性膜であり、環境の極性を 変化させることで、核酸と多孔性膜の親水基同士が引き合うようになると推定される。
【0084】
親水基とは、水との相互作用を持つことができる有極性の基(原子団)を指し、核酸の吸着に関与する全ての基(原子団)が当てはまる。親水基としては、水との相互作用の強さが中程度のもの(化学大事典、共立出版株式会社発行、「親水基」の項の「あまり親水性の強くない基」参照)が良く、例えば、水酸基、カル ボキシル基、シアノ基、オキシエチレン基等を挙げることができる。好ましくは水酸基である。
【0085】
ここで、親水基を有する多孔性膜とは、多孔性膜を形成する材料自体が、親水性基を有する多孔性膜、または多孔性膜を形成する材料を処理またはコーティングすることによって親水基を導入した多孔性膜を意味する。多孔性膜を形成する材料は有機物、無機物のいずれでも良い。例えば、多孔性膜を形成する材料自体が親水基を有する有機材料である多孔性膜、親水基を持たない有機材料の多孔性膜を処理して親水基を導入した多孔性膜、親水基を持たない有機材料の多孔性膜に 対し親水基を有する材料でコーティングして親水基を導入した多孔性膜、多孔性膜を形成する材料自体が親水基を有する無機材料である多孔性膜、親水基を持たない無機材料の多孔性膜を処理して親水基を導入した多孔性膜、親水基を持たない無機材料の多孔性膜に対し親水基を有する材料でコーティングして親水基を導入した多孔性膜等を、使用することができるが、加工の容易性から、多孔性膜を形成する材料は有機高分子等の有機材料を用いることが好ましい。
【0086】
親水基を有する材料の多孔性膜としては、水酸基を有する有機材料の多孔性膜を挙げることができる。水酸基を有する有機材料の多孔性膜としては、ポリヒドロ キシエチルアクリル酸、ポリヒドロキシエチルメタアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリオキ シエチレン、アセチルセルロース、アセチル価の異なるアセチルセルロースの混合物等で、形成された多孔性膜を挙げることができるが、特に多糖構造を有する 有機材料の多孔性膜を好ましく使用することができる。
【0087】
水酸基を有する有機材料の多孔性膜として、好ましくは、アセチル価の異なるアセチルセルロースの混合物から成る有機高分子の多孔性膜を使用することができる。アセチル価の異なるアセチルセルロースの混合物として、トリアセチルセルロースとジアセチルセルロースの混合物、トリアセチルセルロースとモノアセチ ルセルロースの混合物、トリアセチルセルロースとジアセチルセルロースとモノアセチルセルロースの混合物、ジアセチルセルロースとモノアセチルセルロース の混合物を好ましく使用する事ができる。特にトリアセチルセルロースとジアセチルセルロースの混合物を好ましく使用することができる。トリアセチルセルロースとジアセチルセルロースの混合比(質量比)は、99:1〜1:99である事が好ましく、90:10〜50:50である事がより好ましい。
【0088】
更に好ましい、水酸基を有する有機材料としては、特開2003−128691号公報に記載の、アセチルセルロースの表面鹸化物が挙げられる。アセチルセルロースの表面鹸化物とは、アセチル価の異なるアセチルセルロースの混合物を鹸化処理したものであり、トリアセチルセルロースとジアセチルセルロース混合物 の鹸化物、トリアセチルセルロースとモノアセチルセルロース混合物の鹸化物、トリアセチルセルロースとジアセチルセルロースとモノアセチルセルロース混合 物の鹸化物、ジアセチルセルロースとモノアセチルセルロース混合物の鹸化物も好ましく使用することができる。より好ましくは、トリアセチルセルロースとジアセチルセルロース混合物の鹸化物を使用することである。トリアセチルセルロースとジアセチルセルロース混合物の混合比(質量比)は、99:1〜1:99 であることが好ましい。更に好ましくは、トリアセチルセルロースとジアセチルセルロース混合物の混合比は、90:10〜50:50であることである。この場合、鹸化処理の程度(鹸化率)で固相表面の水酸基の量(密度)をコントロールすることができる。核酸の分離効率をあげるためには、水酸基の量(密度)が 多い方が好ましい。例えば、トリアセチルセルロース等のアセチルセルロースの場合には、鹸化率(表面鹸化率)が約5%以上であることが好ましく、10%以 上であることが更に好ましい。また、水酸基を有する有機高分子の表面積を大きくするために、アセチルセルロースの多孔性膜を鹸化処理することが好ましい。この場合、多孔性膜は、表裏対称性の多孔性膜であってもよいが、裏非対称性の多孔性膜を好ましく使用することができる。
【0089】
鹸化処理とは、アセチルセルロースを鹸化処理液(例えば水酸化ナトリウム水溶液)に接触させることを言う。これにより、鹸化処理液に接触したアセチルセルロースの部分に、再生セルロースとなり水酸基が導入される。こうして作成された再生セルロースは、本来のセルロースとは、結晶状態等の点で異なっている。又、鹸化率を変えるには、水酸化ナトリウムの濃度を変えて鹸化処理を行えば良い。鹸化率は、NMR、IR又はXPSにより、容易に測定することができる(例えば、カルボニル基のピーク減少の程度で定めることができる)。
【0090】
親水基を持たない有機材料の多孔性膜に親水基を導入する方法として、ポリマー鎖内または側鎖に親水基を有すグラフトポリマー鎖を多孔性膜に結合することができる。有機材料の多孔性膜にグラフトポリマー鎖を結合する方法としては、多孔性膜とグラフトポリマー鎖とを化学結合させる方法と、多孔性膜を起点として重合可能な二重結合を有する化合物を重合させグラフトポリマー鎖とする2つの方法がある。
【0091】
まず、多孔性膜とグラフトポリマー鎖とを化学結合にて付着させる方法においては、ポリマーの末端または側鎖に多孔性膜と反応する官能基を有するポリマーを使用し、この官能基と、多孔性膜の官能基とを化学反応させることでグラフトさせることができる。多孔性膜と反応する官能基としては、多孔性膜の官能基と反応し得るものであれば特に限定はないが、例えば、アルコキシシランのようなシランカップリング基、イソシアネート基、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、エポキシ基、アリル基、メタクリロイル基、アクリロイル基等を挙げることができる。
【0092】
ポリマーの末端、または側鎖に反応性官能基を有するポリマーとして特に有用な化合物は、トリアルコキシシリル基をポリマー末端に有するポリマー、アミノ基 をポリマー末端に有するポリマー、カルボキシル基をポリマー末端に有するポリマー、エポキシ基をポリマー末端に有するポリマー、イソシアネート基をポリマー末端に有するポリマーが挙げられる。この時に使用されるポリマーとしては、核酸の吸着に関与する親水基を有するものであれば特に限定はないが、具体的には、ポリヒドロキシエチルアクリル酸、ポリヒドロキシエチルメタアクリル酸及びそれらの塩、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸及びそれらの塩、ポリオキシエチレン等を挙げることができる。
【0093】
多孔性膜を基点として重合可能な二重結合を有する化合物を重合させ、グラフトポリマー鎖を形成させる方法は、一般的には表面グラフト重合と呼ばれる。表面グラフト重合法とは、プラズマ照射、光照射、加熱等の方法で基材表面上に活性種を与え、多孔性膜と接するように配置された重合可能な二重結合を有する化合物を重合によって多孔性膜と結合させる方法を指す。
【0094】
基材に結合しているグラフトポリマー鎖を形成するのに有用な化合物は、重合可能な二重結合を有しており、核酸の吸着に関与する親水基を有するという、2つの特性を兼ね備えていることが必要である。これらの化合物としては、分子内に二重結合を有していれば、親水基を有するポリマー、オリゴマー、モノマーのいずれの化合物をも用いることができる。特に有用な化合物は親水基を有するモノマーである。
【0095】
特に有用な親水基を有するモノマーの具体例としては、次のモノマーを挙げることができる。例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、グリセロールモノメタクリレート等の水酸性基含有モノマーを特に好ましく用いることができる。また、アクリル酸、メタアクリル酸等のカルボキシル基含有モノマー、もしくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩も好ましく用いることができる。
【0096】
親水基を持たない有機材料の多孔性膜に親水基を導入する別の方法として、親水基を有する材料をコーティングすることができる。コーティングに使用する材料 は、核酸の吸着に関与する親水基を有するものであれば特に限定はないが、作業の容易さから有機材料のポリマーが好ましい。ポリマーとしては、ポリヒドロキシエチルアクリル酸、ポリヒドロキシエチルメタアクリル酸及びそれらの塩、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸及びそれらの塩、ポリオキシエチレン、アセチルセルロース、アセチル価の異なるアセチルセルロースの混合物等を挙げることができるが、多糖構造を有するポリマーが好ましい。
【0097】
また、親水基を持たない有機材料の多孔性膜に、アセチルセルロースまたは、アセチル価の異なるアセチルセルロースの混合物をコーティングした後に、コーティングしたアセチルセルロースまたは、アセチル価の異なるアセチルセルロースの混合物を鹸化処理することもできる。この場合、鹸化率が約5%以上である ことが好ましい。さらには、鹸化率が約10%以上であることが好ましい。
【0098】
親水基を有する無機材料である多孔性膜としては、シリカ化合物を含有する多孔性膜を挙げることができる。シリカ化合物を含有する多孔性膜としては、ガラス フィルターを挙げることができる。また、特許公報第3058342号に記載されているような、多孔質のシリカ薄膜を挙げることができる。この多孔質のシリカ薄膜とは、二分子膜形成能を有するカチオン型の両親媒性物質の展開液を基板上に展開した後、基板上の液膜から溶媒を除去することによって両親媒性物質の 多層二分子膜薄膜を調整し、シリカ化合物を含有する溶液に多層二分子膜薄膜を接触させ、次いで前記多層二分子膜薄膜を抽出除去することで作製することができる。
【0099】
親水基を持たない無機材料の多孔性膜に親水基を導入する方法としては、多孔性膜とグラフトポリマー鎖とを化学結合させる方法と、分子内に二重結合を有している親水基を有するモノマーを使用して、多孔性膜を起点として、グラフトポリマー鎖を重合する2つの方法がある。
【0100】
多孔性膜とグラフトポリマー鎖とを化学結合にて付着させる場合は、グラフトポリマー鎖の末端の官能基と反応する官能基を無機材料に導入し、そこにグラフトポリマーを化学結合させる。また、分子内に二重結合を有している親水基を有するモノマーを使用して、多孔性膜を起点として、グラフトポリマー鎖を重合する場合は、二重結合を有する化合物を重合する際の起点となる官能基を無機材料に導入する。
【0101】
親水性基を持つグラフトポリマー、および分子内に二重結合を有している親水基を有するモノマーとしては、上記、親水基を持たない有機材料の多孔性膜とグラフトポリマー鎖とを化学結合させる方法において、記載した親水性基を持つグラフトポリマー、および分子内に二重結合を有している親水基を有するモノマーを好ましく使用することができる。
【0102】
親水基を持たない無機材料の多孔性膜に親水基を導入する別の方法として、親水基を有する材料をコーティングすることができる。コーティングに使用する材料は、核酸の吸着に関与する親水基を有するものであれば特に限定はないが、作業の容易さから有機材料のポリマーが好ましい。ポリマーとしては、ポリヒドロキシエチルアクリル酸、ポリヒドロキシエチルメタアクリル酸及びそれらの塩、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸及びそれらの塩、ポリオキシエチレン、アセチルセルロース、アセチル価の異なるアセチルセルロースの混合物等を挙げることができる。
【0103】
また、親水基を持たない無機材料の多孔性膜に、アセチルセルロースまたは、アセチル価の異なるアセチルセルロースの混合物をコーティングした後に、コーティングしたアセチルセルロースまたは、アセチル価の異なるアセチルセルロースの混合物を鹸化処理することもできる。この場合、鹸化率が約5%以上であることが好ましい。さらには、鹸化率が約10%以上であることが好ましい。
【0104】
親水基を持たない無機材料の多孔性膜としては、アルミニウム等の金属、ガラス、セメント、陶磁器等のセラミックス、もしくはニューセラミックス、シリコン、活性炭等を加工して作製した多孔性膜を挙げることができる。
【0105】
上記の核酸吸着性多孔性膜15は、溶液が内部を通過可能であり、厚さが10μm〜500μmである。さらに好ましくは、厚さが50μm〜250μmである。洗浄がし易い点で、厚さが薄いほど好ましい。
【0106】
上記の溶液が内部を通過可能な核酸吸着性多孔性膜は、最小孔径が0.22μm以上である。さらに好ましくは、最小孔径が0.5μm以上である。また、最大孔径と最小孔径の比が2以上である多孔性膜を用いる事が好ましい。これにより、核酸が吸着するのに十分な表面積が得られるとともに、目詰まりし難い。さらに好ましくは、最大孔径と最小孔径の比が5以上である。
【0107】
上記の溶液が内部を通過可能な核酸吸着性多孔性膜15は、空隙率が50〜95%である。さらに好ましくは、空隙率が65〜80%である。また、バブルポイントが、0.1〜10kgf/cmである事が好ましい。さらに好ましくは、バブルポイントが、0.2〜4kgf/cmである。
【0108】
上記の溶液が内部を通過可能な核酸吸着性多孔性膜15は、圧力損失が、0.1〜100kPaである事が好ましい。これにより、過圧時に均一な圧力が得られる。さらに好ましくは、圧力損失が、0.5〜50kPaである。ここで、圧力損失とは、膜の厚さ100μmあたり、水を通過させるのに必要な最低圧力である。
【0109】
上記の溶液が内部を通過可能な核酸吸着性多孔性膜は、25℃で1kg/cmの圧力で水を通過させたときの透水量が、膜1cmあたり1分間で1〜5000mlであることが好ましい。さらに好ましくは、25℃で1kg/cmの圧力で水を通過させたときの透水量が、膜1cmあたり1分間で5〜1000mlである。
【0110】
上記の溶液が内部を通過可能な核酸吸着性多孔性膜15は、多孔性膜1mgあたりの核酸の吸着量が0.1μg以上である事が好ましい。さらに好ましくは、多孔性膜1mgあたりの核酸の吸着量が0.9μg以上である。
【0111】
上記の溶液が内部を通過可能な核酸吸着性多孔性膜は、一辺が5mmの正方形の多孔性膜をトリフルオロ酢酸5mmに浸漬したときに、1時間以内では溶解しないが48時間以内に溶解するセルロース誘導体が、好ましい。また、一辺が5mmの正方形の多孔質膜をトリフルオロ酢酸5mmに浸漬したときに1時間以内に溶解するが、ジクロロメタン5mmに浸漬したときには24時間以内に溶解しないセルロース誘導体がさらに好ましい。
【0112】
核酸吸着性多孔性膜中を、核酸を含む試料溶液を通過させる場合、試料溶液を一方の面から他方の面へと通過させることが、液を多孔性膜へ均一に接触させることができる点で、好ましい。核酸吸着性多孔性膜中を、核酸を含む試料溶液を通過させる場合、試料溶液を核酸吸着性多孔性膜の孔径が大きい側から小さい側に通過させることが、目詰まりし難い点で好ましい。
【0113】
核酸を含む試料溶液を、核酸吸着性多孔性膜を通過させる場合の流速は、液の多孔性膜への適切な接触時間を得るために、膜の面積cmあたり、2〜1500μl/secである事が好ましい。液の多孔性膜への接触時間が短すぎると十分な核酸抽出効果が得られず、長すぎると操作性の点から好ましくない。さらに、上記流速は、膜の面積cmあたり、5〜700μl/secである事が好ましい。
【0114】
また、使用する溶液が内部を通過可能な核酸吸着性多孔性膜15は、1枚であってもよいが、複数枚を使用することもできる。複数枚の核酸吸着性多孔性膜15は、同一のものであっても、異なるものであって良い。
【0115】
複数枚の核酸吸着性多孔性膜15は、無機材料の核酸吸着性多孔性膜と有機材料の核酸吸着性多孔性膜との組合せであっても良い。例えば、ガラスフィルターと再生セルロースの多孔性膜との組合せを挙げることができる。また、複数枚の核酸吸着性多孔性膜15は、無機材料の核酸吸着性多孔性膜と有機材料の核酸非吸着性多孔性膜との組合せであってもよい、例えば、ガラスフィルターと、ナイロンまたはポリスルホンの多孔性膜との組合せを挙げることができる。
【0116】
そして、以上に説明した核酸吸着性多孔性膜15は、抽出カートリッジ11の形状に応じて、膜状以外の形態にすることができる。例えば、チップ状やブロック状等とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】(a)は本発明の実施形態による特定物質抽出装置に用いられる抽出カートリッジの外観斜視図、(b)は(a)のI−I線断面図である。
【図2】(a)〜(g)は抽出動作のそれぞれ工程図である。
【図3】特定物質抽出装置の基本構造を説明する外観斜視図である。
【図4】特定物質抽出装置の電気的制御手段の回路図である。
【図5】電気的制御手段をもつ特定物質抽出装置の正面図である。
【図6】電気的制御手段をもつ特定物質抽出装置の制御動作の第1状態での側面図である。
【図7】電気的制御手段をもつ特定物質抽出装置の制御動作の第2状態での側面図である。
【図8】図3に示した特定物質抽出装置に機械的制御手段の構成を加えた概略斜視図である。
【図9】機械的制御手段をもつ特定物質抽出装置の平面図である。
【図10】機械的制御手段をもつ特定物質抽出装置の第1状態での平面図である。
【図11】機械的制御手段をもつ特定物質抽出装置の第1状態での正面図である。
【図12】機械的制御手段をもつ特定物質抽出装置の第1状態での側面図である。
【図13】機械的制御手段をもつ特定物質抽出装置の第2状態での平面図である。
【図14】機械的制御手段をもつ特定物質抽出装置の第2状態での正面図である。
【図15】(a)は機械的制御手段をもつ特定物質抽出装置の第2状態での部分正面図、(b)は機械的制御手段をもつ特定物質抽出装置の第2状態での側面図である。
【図16】機械的制御手段をもつ特定物質抽出装置の第3状態での平面図である。
【図17】機械的制御手段をもつ特定物質抽出装置の第3状態での正面図である。
【図18】(a)機械的制御手段をもつ特定物質抽出装置の第3状態での部分正面図、(b)機械的制御手段をもつ特定物質抽出装置の第3状態での側面図である。
【図19】機械的制御手段をもつ特定物質抽出装置の第4状態での平面図である。
【図20】機械的制御手段をもつ特定物質抽出装置の第4状態での正面図である。
【図21】機械的制御手段をもつ特定物質抽出装置の第4状態での側面図である。
【符号の説明】
【0118】
1 特性物質抽出装置
2 筐体
3 容器ホルダ
4 カートリッジホルダ
5 加圧エア供給機構
11 特定物質抽出カートリッジ(抽出カートリッジ)
15 核酸吸着性多孔質膜(フィルター部材)
17 排出口
21 注入口
23 廃液容器
25 回収容器
55 加圧ノズル
57 加圧ヘッド
81 電気的制御手段(制御手段)
85 制限レバー
87 選択窓(選択手段)
89 スライダ
91 ストッパー
95 凹所
R 回収液
S 試料液
SW3 回収選択スイッチ(選択スイッチ)(選択手段)
SW4 洗浄選択スイッチ(選択スイッチ)(選択手段)
SW5 第1取付位置検出スイッチ(位置検出センサ)(制限手段)
SW6 第2取付位置検出スイッチ(位置検出センサ)(制限手段)
W 洗浄液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内に配置されてフィルター部材を備えた特定物質抽出カートリッジを用い、該特定物質抽出カートリッジに特定物質を含む試料液を分注し加圧して該特定物質を該フィルター部材に吸着させた後、前記特定物質抽出カートリッジ内を洗浄液で洗浄してから、該特定物質抽出カートリッジに回収液を分注し加圧して該フィルター部材に吸着した該特定物質を分離して該回収液とともに回収する特定物質抽出装置であって、
前記抽出カートリッジへ単一の加圧ノズルから各加圧時の加圧エアを導入する加圧エア供給機構と、
前記抽出カートリッジから吐出される試料液及び洗浄液を収容する廃液容器と、
前記抽出カートリッジから吐出される回収液を収容する回収容器と、
前記廃液容器と前記回収容器とを並べて保持する容器ホルダと、
前記抽出カートリッジを保持するとともに、この抽出カートリッジの液の排出口が前記廃液容器内に位置する前記容器ホルダの第1取付位置、または該排出口が前記回収容器内に位置する該容器ホルダの第2取付位置に選択的に取付け可能なカートリッジホルダと、
前記カートリッジホルダが前記容器ホルダ上の前記第1取付位置または前記第2取付位置のいずれかにあることを指定する選択手段と、
前記カートリッジホルダの前記容器ホルダでの実際の位置が前記選択手段の指定と同じであるときのみ前記加圧エア供給機構を稼動可能とする制限手段と、を備える特定物質抽出装置。
【請求項2】
前記選択手段が前記第1取付位置または前記第2取付位置の選択スイッチを有し、前記制限手段が前記カートリッジホルダの各設置位置に設けられた位置検出センサを有し、更に前記選択スイッチの選択位置と前記位置検出センサの検出位置とが一致した場合のみ前記加圧エア供給機構を電源接続可能とする制御手段を前記制限手段が有する請求項1記載の特定物質抽出装置。
【請求項3】
前記加圧エア供給機構は、前記加圧ノズルを保持する加圧ヘッドと、該加圧ヘッドが前記抽出カートリッジの注入口に密着して加圧エアの供給を可能にするエア供給位置と該注入口から離れる退避位置との間で該加圧ヘッドを変位させるヘッド変位機構と、を前記筐体に保持する請求項1記載の特定物質抽出装置。
【請求項4】
前記制限手段が、前記ヘッド変位機構のエア供給側に接触配置されて自由端である一端を回動自在として他端を前記筐体に支持されている制限レバーを有し、前記選択手段が、該制限レバー自由端先端を該筐体外表面に露出させる選択窓であり、該選択窓内に前記第1取付位置及び前記第2取付位置の選択用の設定位置が配置されている請求項3記載の特定物質抽出装置。
【請求項5】
前記制限レバーの下方側位置で前記ヘッド変位機構の変位方向へのみ移動可能に前記カートリッジホルダ側部に保持されたスライダが備えられ、前記容器ホルダの前記回収容器用位置で前記スライダの対応位置にのみ該スライダを嵌入可能な凹所が備えられ、前記制限レバー自由端部の前記スライダ対向位置に下方に突出する突起が備えられ、前記選択窓の第2取付位置用設定位置では前記制限レバーが前記スライダの直上に位置し、前記突起が前記スライダを前記容器ホルダの第2取付位置の前記凹所に嵌入させる位置に前記容器ホルダが位置する場合に前記ヘッド変位機構がエア供給位置まで達する請求項4記載の特定物質抽出装置。
【請求項6】
前記筐体に前記制限レバーを保持して前記ヘッド変位機構の変動を阻止するストッパーが備えられている請求項4または請求項5のいずれか記載の特定物質抽出装置。
【請求項7】
前記抽出カートリッジが複数個整列配置され、前記加圧ノズル、前記廃液容器、前記回収容器は該抽出カートリッジに対応して配置されている請求項1〜請求項6のいずれか1項記載の特定物質抽出装置。
【請求項8】
前記抽出カートリッジに注入される液は、核酸を含む試料液及び前記フィルター部材に付着した核酸を分離して回収する回収液、更に該フィルター部材に付着した核酸以外の不純物を洗い流す洗浄液である請求項1〜請求項7のいずれか1項記載の特定物質抽出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2007−330845(P2007−330845A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−162472(P2006−162472)
【出願日】平成18年6月12日(2006.6.12)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】