説明

特徴的な孔径を有する多孔質SiO2キセロゲル、その安定な乾燥前駆体およびその使用。

本発明は、ゲルの亜臨界乾燥によるゾル−ゲルプロセスによる製造プロセスの最後に熱酸化により除去される一時的な孔充填剤または固体骨格支持体(例えば炭素または有機物)を用いて製造された多孔質SiOキセロゲルに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造プロセスの最後に熱酸化により除去される一時的孔充填剤または固体骨格支持体(例えば炭素または有機物)を用いてゲルの亜臨界乾燥を伴うゾル−ゲルプロセスにより製造された1マイクロメートル未満という特徴的な孔径を有する多孔質SiOキセロゲルに関する。前記無機ゲル中の追加的な有機粒子、または高分子、または炭素粒子により、前記亜臨界乾燥プロセスにおける無機ネットワークの崩壊が防止される。これらの孔充填剤または固体骨格支持体は、その後、300℃を超える熱処理により可能な限り酸化除去される。その結果、80%を超える多孔度、シリケート構造に化学結合していないかあるいは弱くしか化学結合していない10%未満の炭素含量、および1マイクロメートル未満の範囲の孔、を有する(繊維含量5重量%未満の)SiOキセロゲルが生じる。
【背景技術】
【0002】
エアロゲル、クリオゲルおよびキセロゲルは多くの分野で用いられている。前記材料は基本的に乾燥方法の種類によって区別されている。エアロゲルは孔が空気で満たされた低固形分率のゲル全てに対する総称であるが、狭い意味では超臨界乾燥プロセスによっても定義づけられ、クリオゲルは凍結乾燥によって定義づけられ、キセロゲルは対流亜臨界乾燥によって定義づけられる。
【0003】
本発明に係る本エアロゲルについていえば、これはそれゆえ厳密に言えば全体としてはキセロゲルである。
【0004】
シリカエアロゲルは、その非常に低い密度と典型的には85%以上という高い多孔率のため、有機材料とは対照的に高温でも使用可能な優れた断熱材料である。非脱気材料の場合、有機成分は250℃を超えると空気中に存在する酸素により燃焼する。
【0005】
ゾル−ゲル法により高度に多孔質な固体を製造するには、通常、多孔質構造を得るために超臨界乾燥工程が必要である。一般的に、孔中の溶剤を最初に交換する必要があるため、この乾燥は一方では時間および資源について要求の多いものである。他方で、オートクレーブは高圧で作動するため、この乾燥はエネルギー集約的でもある。オートクレーブ中での処理は、その不連続的な性質(バッチ処理)を考慮すると、プロセス設計の観点からも不利なものである。大きな毛細管力が発生するため、1バールでの対流乾燥(亜臨界乾燥)により多孔質構造は崩壊し、このため高い多孔度を有する一体型(monolithic)材料を製造することは困難であった。このことは、キセロゲルが、エアロゲルと比べてより高い密度を有し、それゆえ、より劣った断熱性能を示すことをも意味している。
【0006】
WO2005068361において製造されたエアロゲルは超臨界で乾燥されなければならず、このためその製造は高価で複雑である。
【0007】
超臨界乾燥を避けつつ、しかしながら低い密度を達成するためには、幾つかの一般的な手法がある。アイナルスドら(Einarsud et al.)は、ウエットゲル中のゲル構造を硬くすることにより、亜臨界乾燥の際に起こる収縮を減少させる方法を開発した(Einarsrud, M.A., E. Nilsen, A. Rigacci, G. M. Pajonk, S. Buathier, D. Valette, M. Durant, B. Chevalier, P. Nitz, and F. Ehrburger−Dolle, Strengthening of silica gels and aerogels by washing and aging processes. Journal of Non−Crystalline Solids, 285 (2001) 1−7)。しかし、この方法を用いると、局所的にゲル構造中のシリカ粒子の間での接触が体系的に増加するため、生じるキセロゲルの密度が低いにも関わらず、固体(solid body)熱伝導は増加する。
【0008】
さらなる不利は、2つの時間のかかる溶媒交換工程を含む追加的に必要とされる方法工程およびマクロスコピックな成形体を亀裂無しに乾燥するために必要な長い時間である。
【0009】
乾燥中の表面ヒドロキシ基の架橋(毛細管力によってゲルが圧縮される場合)を防止しそれにより不可逆的収縮を防止するために、EP0690023A2、WO001998005591A1またはWO001996022942A1におけるように、これらの基をシリル化剤を用いて変換することが出来る。しかし、この方法は、さらに引き延ばされた溶媒交換およびさらなる合成工程を常に意味し、亜臨界乾燥の際のサンプルの大きな一時的収縮を防止はしない。このため、特にcm範囲以上の寸法を有する成形体の場合に亀裂を容易に生じ、あるいは非常にゆっくりした乾燥が必要とされる。これらのシリル化疎水化ゲルは250℃を超える適用温度では使用できない。このような適用温度では、有機表面基は破壊され、そのため例えばWO001998005591A1の場合の疎水性のような所望の効果も破壊されるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開WO2005068361A1
【特許文献2】欧州特許出願公開EP0690023A2
【特許文献3】国際公開WO001998005591A1
【特許文献4】国際公開WO001996022942A1
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Einarsrud, M.A., E. Nilsen, A. Rigacci, G. M. Pajonk, S. Buathier, D. Valette, M. Durant, B. Chevalier, P. Nitz, and F. Ehrburger−Dolle, Strengthening of silica gels and aerogels by washing and aging processes. Journal of Non−Crystalline Solids, 285 (2001) 1−7
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、エアロゲルの低い密度およびそれに対応した低い熱伝導率の両方を有し、300℃を超える温度でも使用可能で、良好な機械的安定性(5MPaを超える弾性率)を示す多孔質SiOキセロゲルである。製造は亜臨界乾燥によって行われる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】1つの手法を模式的に示す図である。
【図2】1つの手法を模式的に示す図である。
【図3】本発明に係る、固体骨格支持体を有するSiOキセロゲルの弾性率の例を示す図ある。
【図4】本発明に係る、固体骨格支持体を有するSiOキセロゲルの孔径の例を示す図ある。
【発明を実施するための形態】
【0014】
キセロゲル、つまり亜臨界で乾燥されたゲル、の場合における低密度と低熱伝導性とを達成するために、本発明によれば安定な乾燥中間体または安定な乾燥前駆体の提供を解決するために2つの手法がある。
【0015】
解決のための第1のアプローチは有機物または炭素成分によって部分的に充填された孔を有するSiOキセロゲルを提供することである。20重量%未満の灰分含量を有する成分のことを以下では有機成分と称する。乾燥の間にゾル−ゲルプロセスによって形成される構造を力学的に支持するためにゲル中に有機分または炭素成分が取り入れられ、これらはゾル−ゲルプロセスにおいて形成された孔の部分を満たし、それにより乾燥中のゲル構造の収縮を機械的に防止または減少させる。孔充填剤()としての有機または炭素成分を有する無機ネットワーク()が図1に模式的に示されている。この状況において、粒子サイズは許容可能な最大孔サイズ未満の範囲でなければならない。
【0016】
解決のための第2の手法はSiOネットワーク中に化学的に取り込まれたスフェロイダル(回転楕円体形:spheroidal)の有機成分を有するSiOキセロゲルによって達成される。乾燥中の毛細管圧に耐え、それによりネットワークの崩壊や不可逆的収縮に対抗するため、固体骨格中の機械的支持体として有機スフェロイダル成分が要求される(図1および2;左)。
【0017】
続いて行われる酸化工程()により、これらの有機または炭素成分は、第1の手法では孔から、第2の手法では固体骨格から、出来る限り除去される(図1および2;右)。このことは、部分的に満たされた孔の場合は図1(右)に、有機ネットワークに一体化された成分の場合は図2(右)に模式的に表されている。酸化の結果形成される欠陥あるいは孔は()として示され、酸化によっても除去されなかったことによる残留非シリケート成分は各場合において()として示されている。
【0018】
エアロゲルはナノメートル範囲におけるスフェロイダル一次粒子の三次元ネットワーク化された鎖からなる。シリカエアロゲル中の総体熱伝導率は、気体熱伝導、放射熱伝導および固体(solid body)熱伝導という3つの因子から決定される。シリカエアロゲルは赤外線放射に対して殆ど完全に透明であるため、特に高温(〜T)においては放射による熱伝達は無視するべきでない。この寄与分は不透明化剤(opacifying agent)(=顔料)の添加もしくは取り込み、または低放射放出の境界(低放出境界(low−e boundaries))の使用により十分に低減することが出来る。エアロゲルおよびキセロゲルは一般的に高い光学的透明性を示す。不透明断熱材料など、光学的透明性が必要とされない用途においては、特に光学的透明性をなしとすることも可能である。材料の赤外波長領域における透過率を減少させそれにより放射による熱輸送を減少させる成分を取り込むと、一般的には、吸収または拡散により材料が光学的に曇る(dimmining)ことになる。放射輸送を効果的に抑制するために、本発明によれば、可視スペクトル域においても透明性が低いキセロゲルが好ましい。
【0019】
気体熱伝導による寄与分は、孔中の気体分子同士が衝突する際に起こる熱移動によって引き起こされる。孔サイズが減少するにつれて気体分子間の衝突の確率が減少するため、孔径が1マイクロメートル未満であると前記寄与分は大きく減少しうる。ゲル構造がある一定の密度の場合、毛細管力により、孔サイズが減少するにつれて亜臨界乾燥中に起こるサンプルの収縮は増加し、そのため生じるキセロゲルの密度も増加する。材料の密度が増加すると固体(solid−body)伝導の寄与分が増加する。そのため、材料中の孔サイズを1000nm未満とし、可能な限りにおいて300nm未満とさえし、また、亜臨界乾燥として溶媒交換を省略しても十分に低い密度(400kg/m未満)のキセロゲルを達成することが課題となる。亜臨界乾燥中の毛細管圧に耐え、それによりネットワークの崩壊や不可逆的収縮に対抗するために、本発明によれば、少なくとも10%の孔において有機もしくは炭素含有スフェロイダル成分が機械的支持体として必要とされ、あるいは固体骨格中に有機若しくは炭素含有スフェロイダル成分が取り込まれる。
【0020】
本発明は、シリケート化合物、例えばケイ素アルコキシド(例えばTMOSもしくはTEOS)またはケイ酸ナトリウム、から酸性または塩基性媒体中で製造されるキセロゲルであって、その出発溶液に、ゾル相に、または(孔充填キセロゲルのための)ゲル化の開始後に、例えば、炭化水素、エポキシド類、アミン類、ポリエステル、ポリイミド、ポリウレタン、タンパク質もしくは多糖類(小麦粉、米デンプン、糖蜜、甜菜糖蜜)などのバイオポリマー、細菌(例えば乳酸細菌)またはカーボンブラック(カーボンブラック、導電性カーボンブラック、フィラーカーボンブラック)、カーボンナノチューブ、フラーレン、グラファイトパウダー、に基づく適当な有機または炭素成分が、あるいは固体骨格支持体を有するキセロゲルの場合は、例えば、有機高分子(例えば炭化水素、エポキシド、アミン、ポリエステル、ポリイミド、ポリウレタン、タンパク質)などの適当な有機成分が、添加されているキセロゲルに関する。良好な分散性を有する非凝集性粒子もしくは良好な溶解性を有する分子の選択、または例えば超音波処理もしくは破砕といった手段によるものなど特定の分散補助により、材料全体を通じての成分の均一な分布を確実なものとできる(Tillotson, T. M., Hrubesh, L. W., Simpson, R. L., Lee, R. S., Swansiger, R. W., Simpson, L. R. Sol−gel processing of energetic materials. Journal of Non−Crystalline Solids, 1998. 225(1), 358−363)。無機ネットワークのための長いゲル化時間において、微粒子有機または炭素粒子の均一な分布は最初に無機ネットワークを形成させ、しかしその無機ネットワークを超音波処理または破砕により部分的に破壊することによって達成される。モノマーの取り込みについては、良好な溶解性が確保できるような遊離体が選択される。これはモノマーを適切に選択することで、または合成されたポリマーを前記ネットワークに共有結合的に連結するために連結基を用いることで、行われる。これは、本発明においては、シリカゾル粒子の表面に適切な官能基をその場(in situ)で付与することで達成される。前記修飾有機粒子を例えばTEOSやTMOSなどの単純なシリカ前駆体と共に変換すると、孔充填キセロゲルの場合は一次粒子からなる対応した鎖がキセロゲルが粒子の周りに形成され、固体骨格支持体を有するキセロゲルの場合はこれらはSiOネットワークに取り込まれ、ゲル構造の安定性が追加的な有機/無機ネットワーク形成により確保される。
【0021】
孔充填キセロゲルおよび固体骨格支持体を有するキセロゲルのいずれもボトムアップ法またはトップダウン法のいずれかを用いて形成することができる。「トップダウン」は、固体または粉体から粉砕により所望の粒子サイズの有機または炭素成分を製造するルートを一般的に表す。本明細書に記載される方法に関していえば、これは利用可能な固体粒子を材料に取り込むことを意味する。「ボトムアップ」方法についていうと、この方法は分子前駆体に基づくもので、所望の粒子はその場(in situ)で形成される。
【0022】
孔充填キセロゲルおよびトップダウン法を用いたその製造の場合、ゲル化の間にSiOネットワーク()が有機粒子()の周りに、有機粒子をネットワーク中に取り込むことなく形成される。そのため、これらのスフェロイダル(spheroidal)粒子()は、ネットワーク()に最大でも弱くしか化学結合しない。
【0023】
孔充填キセロゲルおよびボトムアップ法を用いたその製造の場合、有機スフェロイダル(spheroidal)ポリマー()は開始溶液中でその場(in situ)で(例えば共ゲル化および/または相分離により)構築され、孔中に最大でも弱くしか化学的に埋め込まれず、乾燥中に無機ネットワーク()を部分的に支持する。
【0024】
固体骨格支持体を有するキセロゲルおよびトップダウン法を用いたその製造の場合、SiOネットワーク()のゲル化の間に有機粒子()が取り込まれる。これらのスフェロイダル(spheroidal)粒子()は、それゆえ、ネットワーク()に直接一体化され、そこで化学結合する。
【0025】
固体骨格支持体を有するキセロゲルおよびボトムアップ法を用いたその製造の場合、有機スフェロイダル(spheroidal)ポリマー()は開始溶液中に構築され、SiOネットワーク()の形成の際にその中に取り込まれる。あるいは、最初にゾル−ゲル転移をさせ、形成されたウエットゲルネットワークを機械的に(例えば超音波または破砕機(shredder)を用いて)部分的に破壊し、有機成分を添加して官能基によりSiOネットワークとの化学的ネットワーク形成を開始することも可能である。これらのスフェロイダル(spheroidal)粒子()は、これにより、ネットワーク()に直接一体化され、そこで化学的に結合する。
【0026】
これらのスフェロイダル(spheroidal)有機または炭素粒子は一時的な孔充填材または一時的な固体骨格支持体として用いられ、ゲルの乾燥が起こった後に燃え尽きさせられ()、その結果、調節可能なサイズの追加的孔()が無機ネットワーク中に露出するか、あるいはSiOネットワーク中に中断が生じる。
【0027】
孔充填キセロゲルの場合、有機分または炭素が燃え尽きさせられた後に対応する孔()が生じ、その結果、密度が減少し、それに付随して固体(solid−body)伝導が減少する。
【0028】
固体骨格支持体を有するキセロゲルの場合、有機分が燃え尽きさせられた後に、対応する欠陥()が固体骨格中に生じ、その結果、同様に固体(solid−body)伝導が減少し、小さい孔が残る。
【0029】
製造されたこれら2つの材料の形態的および物理的特性は互いに殆ど区別できない。これは、孔および欠陥が異なる源から生じるとはいえ、同桁の大きさで存在することが明らかに可能で、そのため本発明に係る同じ所望の効果が生じるからである。必要ならば、孔充填手法の場合、有機または炭素成分のサイズによって、無機ゲル単独のゾル−ゲル転移から生じる孔径とは明らかに異なる孔径をキセロゲル中に規定することが可能である。そのようなキセロゲル中には、二峰性の孔半径分布が存在する。
【0030】
ゾル−ゲルプロセス中およびその後のウエットゲル中のどちらにも追加的な顔料(pigment)を取り込むことが可能である。
【0031】
トップダウン法工程およびボトムアップ法工程のどちらの後においても、有機もしくは炭素粒子が充填された孔、あるいは固体骨格支持体を有する無機キセロゲルが存在する。このキセロゲルの密度は150kg/m〜600kg/mの間で、有機または炭素粒子の一時的体積含有率は10%〜60%の間である。
【0032】
本発明によれば、キセロゲルに対して300℃超の熱処理が行われる。この付随する方法工程において、ゲル構造から有機または炭素粒子が可能な限り除去される。
【0033】
SiOネットワークから熱処理によっても除去できなかった、あるいはそこに特異的に存在している、材料中の炭素残分()(<10%)は、材料の赤外線減光に寄与する。この結果、シリカキセロゲルの総体的熱伝導率に対し、例えば0℃において30%〜50%、170℃において最大90%というような、特に高温において無視できない寄与を果たす放射熱伝導が減少する。
【0034】
本発明に係るシリカキセロゲルは以下の性質を示す:
1000nm〜50nmの間の孔サイズ
400kg/m〜100kg/mの間の範囲の密度
孔の平均サイズdは、キセロゲルの巨視的密度(macroscopic density)ρおよび外部比表面積(specific external surface)Sextから決定される。この状況において、SextはBET法による比表面積SBET(ISO9277:1995およびDIN66135−2:2001−06)と細孔比表面積SMik(ISO15901−3)との差として求められ、よってdは
d=4×(1/ρ−1/ρSiO2)/Sext
により与えられる。ここでρは成形体の巨視的密度(macroscopic density)であり、ρSiO2は非多孔質の非晶質SiOガラスの密度(=2.2g/cm)である。一つの孔群の径が100nm未満である二峰性孔分布の場合、100nm未満の孔分布はDIN66134(1998−02)基準による窒素吸着等温線のBJH分析を用いて決定され、対応する平均値はd’’と表される。100nmを超える孔の平均サイズd’は総体的孔容積VP,Gesamt = (1/r−1/rSiO2)と測定された等温線からギュルビッチ(Gurvich)則により求められる100nm未満の孔の孔容積Vp,<100との間の差、および外部表面積(external surface)Sextと100nmより小さい孔の外部表面積(external surface)Sext,<100 = 4×(Vp,<100)/d’との間の差によって、
d=4×( VP,Gesamt− Vp,<100)/(Sext−ext,<100
として与えられる。100nmを超える孔を有する二峰性分布の場合、分布は水銀ポロシメータ(ISO15901−1)の助けにより決定される。
【0035】
300KでのRosseland平均IR吸光係数は、顔料を有さない場合少なくとも50m/gであり、顔料を有する場合少なくとも80m/kgである(1.4μm〜35.0μmの分光平均間隔)。この値は1.4μm〜35.0μmの波長範囲における直接の半球透過および反射を決定することにより確認できる。
【0036】
力学的安定性は5MPaを超える弾性率によって特徴付けられる。弾性率はサンプル長の相対変化(ΔL/L)を一方向圧力pにおいて決定する静的法によって求めることもできる。
【数1】


あるいは、弾性率は密度をρとしてE=νρにより音速νから計算することも出来る。
【0037】
本発明に係る、固体骨格支持体を有するSiOキセロゲルの弾性率および孔径の例が図3および図4に示されている。
【0038】
[例示]
本発明に係る方法の全てについて、極性プロトン性溶媒(好ましくは水とアルコール(好ましくはエタノール)との混合液)中でポリマーネットワークを形成することができる成分またはその混合物であれば全て、シリケートネットワークに適している。例えば、ケイ酸ナトリウム、シリカ類(アエロジル(登録商標)などの焼成シリカ類、沈降シリカ類)、積層シリケート類、アルコキシシラン類、変性アルコキシシラン類である。好ましくは一般式Si(OR)(Rは有機残基)を有するアルコキシシラン類(ここで好ましくはテトラエトキシシラン(TEOS、Si(OEt)))および一般式
Si(OR’)4−n(n=0〜3;R,R’=有機残基)
を有する有機変性アルコキシシラン類である。
【0039】
本発明に係る前記2つのボトムアップ法について、基本的に、極性プロトン性溶媒(好ましくは水とアルコール(ここで好ましくはエタノール)との混合物)に可溶で、ネットワーク化可能な、ポリマー、重縮合物もしくは重付加物の前駆体(つまりモノマー)または共重合体、共縮合物もしくは共付加物の前駆体の全て、およびそれらの混合物、例えばレゾルシノール−ホルムアルデヒド樹脂、エポキシド類、アミン類、ポリエステル、ポリイミドまたはポリウレタン用モノマー、が適している。
【0040】
無機ネットワークと同様の範囲にpH値および温度を設定することにより重合または縮合するモノマーまたはその混合物を選択することが好ましい。触媒、およびラジカル重合の場合はラジカル開始剤、に加え、添加剤は物理的または化学的結合により有機ポリマー粒子の分散性または溶解性を増大させる全ての物質であり、例えば可溶化剤である。混合物中に含まれる一般式RSi(OR’)4−n(n=0〜3;R,R’=有機残基)を有するシリコンアルコキシドは、炭素含有相とシリケート相との分離を防止し、あるいは有機粒子と無機ネットワークとの間に連結基を形成する。「有機ポリマー前駆体またはその混合物」は、よって、極性プロトン性溶媒中でポリマーネットワークを形成するのに必要な全ての成分を指す。
【0041】
本発明に係る前記2つのトップダウン法について、基本的に、極性プロトン性溶媒(好ましくは水とアルコール(ここで好ましくはエタノール)との混合物)に分散あるいは溶解可能で酸化的に除去可能な、1μm未満の径を有する粒子であれば全て適している。有機重合物、重縮合物(例えばレゾルシノール−ホルムアルデヒド樹脂)もしくは重付加物、または共重合体、共縮合物もしくは共付加物の幾つかの例は、炭化水素類、エポキシド類、アミン類、ポリエステル、ポリイミド、ポリウレタンであるが、例えば多糖類(小麦粉、米デンプン、糖蜜、甜菜糖蜜)などのバイオポリマーであってもよい。無機であるが酸化的に除去可能な孔充填剤の例は、カーボンブラック類(カーボンブラック、導電性カーボンブラック、フィラーカーボンブラック)、カーボンナノチューブ、フラーレン、グラファイトパウダーなどの炭素類である。
【0042】
触媒に加え、添加剤は物理的または化学的結合により有機ポリマー粒子または炭素粒子の分散性または溶解性を増大させる全ての物質であり、例えば可溶化剤である。混合物中に含まれる一般式RSi(OR’)4−n(n=0〜3;R,R’=有機残基)を有するシリコンアルコキシドは、炭素含有相とシリケート相との分離を防止し、あるいは有機粒子と無機ネットワークとの間に連結基を形成する。「有機ポリマーまたはその混合物」は、よって、極性プロトン性溶媒中で分散を達成するのに必要な全ての成分を指す。
【0043】
本発明に係る方法においては、一般式Si(OR)を有するシリコンアルコキシドまたは(イオン交換体によってカチオンを分離した後の)ケイ酸ナトリウムなどのケイ素化合物は、有機ナノ粒子または炭素粒子と適切な添加剤との分散物中の酸性または塩基性媒体中で水と共に変換されるか、あるいはケイ素化合物は酸性または塩基性媒体中で水と共に変換され、超音波で中断されたゲル化中に(径が1マイクロメートル未満の)有機または炭素粒子と混合され、その後ゲル化が続けられる。ゲル化が完了した後、ウエットゲルは1バールで乾燥され、その後、有機相が300℃を超える熱処理により除去される。
【0044】
例示的実施形態1
レゾルシノールをエタノールに溶解し、撹拌しながら50℃で水、ホルムアルデヒドおよび0.1規定炭酸ナトリウム水溶液と混合し、撹拌する。混合液を20℃に冷却した後、撹拌しながらテトラエトキシシラン(TEOS)、エタノール、水および0.05モル水酸化アンモニウム溶液を加え、混合液を短時間撹拌して30℃の密閉容器に注ぎ、ゲル化する。ゲル化が終了したら、形成された一体化物(monolith)をエタノール中に7日間置き、その後1バールの環境気圧下30℃で乾燥する。次に、得られたキセロゲルを不活性ガス(アルゴン)雰囲気中550℃で熱分解し、その後含酸素雰囲気中、550℃で加熱する。
【0045】
例示的実施形態2
テトラエトキシシラン(TEOS)をエタノール、水および0.05モル水酸化アンモニウム溶液と混合し、20℃で反応させる。溶液が粘稠になったら(ゲル化の開始)すぐに、反応溶液をカーボンブラックのエタノール懸濁液と混合しながら超音波(高強度)に曝す。反応混合物により粒子が分散したら、撹拌することなく密閉容器中30℃でゲル化を続ける。ゲル化が終了したら、形成された一体化物(monolith)をエタノール中に7日間置き、その後1バールの環境気圧下30℃で乾燥する。次に、得られたキセロゲルを不活性ガス(アルゴン)雰囲気中550℃で熱分解し、その後含酸素雰囲気中550℃で加熱する。
【0046】
例示的実施形態3
ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルを50℃でジエチレントリアミンと共にエタノール中で撹拌しながら変換する。その後、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(GLYMO)を加え、反応混合液を50℃で撹拌する。冷却後、水および0.05モル水酸化アンモニウム溶液を反応混合液に添加し、20℃でさらに撹拌する。
次に、テトラエトキシシラン(TEOS)を加え、さらに短時間撹拌し、混合液を30℃の密閉容器中に注いでゲル化させる。ゲル化が終了したら、形成された一体化物(monolith)をエタノール中に7日間置き、その後1バールの環境気圧下30℃で乾燥する。次に、得られたキセロゲルを不活性ガス(アルゴン)雰囲気中550℃で熱分解し、その後含酸素雰囲気中、550℃で加熱する。
【0047】
例示的実施形態4
テトラエトキシシラン(TEOS)および0.05モル水酸化アンモニウム溶液を、エタノール/水混合液中のヒドロキシプロピルセルロース溶液に加え、30℃で反応させ、短時間撹拌し、混合液を30℃の密閉容器中に注いでゲル化させる。ゲル化が終了したら、形成された一体化物(monolith)をエタノール中に7日間置き、その後1バールの環境気圧下30℃で乾燥する。次に、得られたキセロゲルを不活性ガス(アルゴン)雰囲気中550℃で熱分解し、その後含酸素雰囲気中、550℃で加熱する。
【0048】
参考文献
国際公開WO001998005591A1
欧州特許出願公開EP0690023A2
独国特許発明DE3346180C2
国際公開WO2005068361
【符号の説明】
【0049】
1 SiO構造
2 有機または炭素成分
3 有機成分の燃焼
4 保存された孔あるいは欠陥
5 残留する炭素含有成分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
50nm超1000nm未満、特には500nm未満、特には300nm未満、特には100nm未満の孔を有し、400kg/m未満、特には290kg/m未満、特には200kg/m未満の密度を有し、炭素含有率が10%未満、特には5%未満であり、800℃での熱伝導率が0.060W/m・K未満、400℃での熱伝導率が0.040W/m・K未満、および200℃での熱伝導率が0.030W/m・K未満であることを特徴とする、多孔質SiOキセロゲル。
【請求項2】
5MPa以上の弾性率を示すことを特徴とする、請求項1に記載のSiOキセロゲル。
【請求項3】
(含酸素雰囲気中)560℃以下の温度で長期的な熱安定性を有することを特徴とする、請求項1または2に記載のSiOキセロゲル。
【請求項4】
追加的顔料無しに50m/gを超えるIR吸光係数を示すことを特徴とする、請求項1、2または3に記載のSiOキセロゲル。
【請求項5】
追加的顔料と共に80m/gを超えるIR吸光係数を示すことを特徴とする、請求項1、2または3に記載のSiOキセロゲル。
【請求項6】
一体型(monolithic)成形体、粒状体または粉体であることを特徴とする、請求項1、2、3または4に記載のSiOキセロゲル。
【請求項7】
繊維含有率が5重量%未満であることを特徴とする、請求項1、2、3または4に記載のSiOキセロゲル。
【請求項8】
非燃焼性または不燃性の、透明もしくは半透明もしくは不透明な断熱材としての、断熱性を与える機械的支持体、触媒支持体、フィルタ、吸着剤、非燃焼性もしくは不燃性の、透明もしくは半透明もしくは不透明な軽量建材、電子部品用誘電体としての、制御されたもしくは迅速な薬物放出システムとしての、熱拡散プロセスの利用を可能にするコーティングとしての、鋳型としての、センサー技術におけるセンサー分子用の支持体としての、音減衰用の、湿度調節用の、または複合体のためのマトリクス材料としての、請求項1〜7のうちの1項に記載のSiOキセロゲルの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−511460(P2013−511460A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539336(P2012−539336)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【国際出願番号】PCT/EP2010/067821
【国際公開番号】WO2011/061289
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(512132756)ベーエスハー ボッシュ ウント シーメンス ハオスゲレート ゲーエムベーハー (2)
【出願人】(512132767)バイエリッシュ ツェントゥルム フューア アンゲヴァントエネルギーフォルシュング エー.フォア. (2)
【Fターム(参考)】