説明

特殊活性化剤を使用する鋳造ポリアミドの調製

【課題】成形型内でアニオン重合される鋳造ポリアミドを調整するための組成物を提供する。
【解決手段】a)ラクタムのアニオン重合のための少なくとも1種の触媒;およびb)ラクタムのアニオン重合のための少なくとも1種の活性化剤を含み、前記少なくとも1種の活性化剤は、環状イソシアネート、少なくとも1種のアロファネートおよびこれらの混合物からなる群から選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳造ポリアミドの調製に使用できる組成物、およびこの組成物を使用して実施される鋳造ポリアミドの調製方法に関する。本発明の他の主題は、一方では、この方法によって得られるポリアミドの成形物品、他方では、鋳造ポリアミドを調製するための、特殊活性化剤と触媒および活性化剤の特殊組成物との使用である。
【背景技術】
【0002】
原理的に、ポリアミド成形物品を調製するための2つの方法がある。1つの方法は、すでに調製されたポリアミドを対応する成形型(mold)に射出成形することを含む。別の方法はいわゆる鋳造ポリアミドを調製することを含む。鋳造ポリアミドは特に大きな分子量のポリアミドである。調製は、純粋に化学的な方法で、また通常圧力を用いることなく、実施される。鋳造ポリアミドの調製の間、ラクタムが、少なくとも1種の触媒および少なくとも1種の活性化剤と一緒に成形型に注入され、次いで、この成形型内でアニオン重合される。この方法では、成形型に存在する親化合物は、通常、熱の作用の下で重合する。得られるものは、結晶性の点で、押出成形されたポリアミドに勝る均質な材料である。
【0003】
鋳造ポリアミドは、熱可塑性樹脂として、複雑な部品の製造に適している。多くの熱可塑性樹脂とは対照的に、これらは、溶かされる必要はないが、たった数分以内で、120から150℃の成形型内においてラクタムの無加圧アニオン重合により得られる。直立(standing)鋳造、回転鋳造および遠心鋳造のような、知られている全ての鋳造法が、このプロセスに用いることができる。それぞれの場合に、得られる最終製品は、軽量、高い機械的耐久性、非常に良好な滑り性および優れた耐化学薬品性によって特徴付けられ、また、鋳型が加圧下に充填されないために内部応力がほんの僅かにすぎない、高分子量の結晶性ポリアミドによる成形物品である。鋳造ポリアミドは、のこぎりで切ることができ、穿孔、切削、研磨、溶着および印刷または塗装ができる。複雑な中空成形品以外に、乗用エレベーターのローラー、ならびに、例えば、自動車産業用の管、棒および板のような半完成製品がこのポリマーから製造される。
【0004】
いわゆる活性化アニオン重合によって、低粘度ラクタム溶融物と触媒および活性化剤とから出発する鋳造ポリアミドパーツの製造は、それ自体よく知られている(例えば、Vieweg、Muller;Kunststoff−Handbuch、vol.VI、Carl Hansa Verlag、ミュンヘン、1966年)。この目的のために、触媒およびラクタムまたは活性化剤およびラクタムの2種の混合物が、通常、互いに別々に調製され、成形型内で、または直前に混合される。
【0005】
対応する方法は、例えば、ε−カプロラクタムのアニオン重合による鋳造ポリマーの製造についてのFraunhofer Institute for Applied Polymer Research IAPの2003年の年報(54頁)に記載されている。
【0006】
充填または強化鋳造ポリアミドの製造方法(重合されようとする溶融物はチキソトロピー状態にされ、次いで重合される。)が、欧州特許出願公開第0641816号明細書により知られている。アルカリまたはアルカリ土類アクタメート(actamate)は触媒として役立ち、ヘキサメチレンジイソシアネートのオリゴマーが、好ましくは、活性化剤として用いられる。
【0007】
従来技術から分かる鋳造ポリアミドの製造方法の特徴は、ポリアミドを生じるアニオン重合が、ラクタムが触媒および活性化剤からなる成型システムに接触させられるとすぐに起こることである。しかし、しばしば、アニオン重合がもっと後で、すなわち、遅れた時点で(例えば、ラクタムおよび添加剤の親化合物が適当な成形型内で均質に混ざる十分な時間が与えられた後で)始まることが望まれる。これまでは、遅れた時点でアニオン重合が始まるためには、ラクタム含有反応混合物(educt mixture)に、活性化剤または触媒のいずれかを、後で加えることが必要とされる。しかし、この活性化剤または触媒は、遅れた時点で添加され、可能であれば、アニオン重合の開始時に、対応するラクタム中に均質に分布して存在しなければならない。別の見方をすれば、これは、一般的に、触媒および活性化剤がラクタムと一緒に均質な状態で成形型に充填される場合にのみ可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0641816号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Vieweg、Muller;Kunststoff−Handbuch、vol.VI、Carl Hansa Verlag、ミュンヘン、1966年
【非特許文献2】Fraunhofer Institute for Applied Polymer Research IAPの2003年の年報(54頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
こうして、本発明の目的は、ラクタムのアニオン重合にそれぞれ適する、触媒と、別個に活性化剤とを含むシステムを提供することからなり、鋳造ポリアミドを生成するためのアニオン重合はすぐには、すなわち、ラクタムが触媒および活性化剤からなるシステムに接触した直後には起こらない。
【0011】
さらに、鋳造ポリアミドの優れた結晶性が要求されるため、ラクタムのアニオン重合のための触媒および活性化剤からなり、同時に良好な結晶性を有する鋳造ポリアミドを生ずるシステムを提供することが本発明の別の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、これらの目的は、
a)ラクタムのアニオン重合のための少なくとも1種の触媒、および
b)ラクタムのアニオン重合のための少なくとも1種の活性化剤
を含むシステムにより達成される。
【0013】
本発明による組成物は、使用される活性化剤が、環状イソシアネート、アロファネート(allophanate)およびこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の趣旨の範囲内のシステムは、本発明により使用される、
a)ラクタムのアニオン重合のための少なくとも1種の触媒、および
b)ラクタムのアニオン重合のための少なくとも1種の活性化剤
の1つのユニットであると理解されており、
構成成分a)およびb)は、互いに組み合わされ、ラクタムのアニオン重合に使用されるが、空間的に隣接している必要はない(いわゆる、キットオブパーツ)。しかし、構成成分a)およびb)はまた、空間的に隣接して存在していてもよい。これに関連して、システムは、本発明による組成物とも呼ばれる。
【0015】
本発明によるシステムまたは組成物は、環状イソシアネート、アロファネートおよびこれらの混合物からなる群から選択される、ラクタムのアニオン重合のための少なくとも1種の活性化剤を含む。本発明の趣旨の範囲内の混合物は、アロファネートを含む環状イソシアネートによる混合物だけでなく、排他的に、環状イソシアネートだけ、またはアロファネートだけによる混合物の両方である。
【0016】
環状イソシアネート
本発明に関連する範囲内において、環状イソシアネートは、少なくとも2つのジオキソジアゼチジン結合を形成する少なくとも2つのイソシアネートの環状反応生成物である。
【0017】
【化1】

【0018】
対応する環状イソシアネートの調製は、それ自体当業者によく知られており、欧州特許出願公開第1422223号明細書に記載の手順に従って、ホスフィン含有触媒システムを用いて行うことができる。さらに、環状イソシアネートは、欧州特許出願公開第1521789号明細書(触媒として、1,2,3−または1,2,4−トリアゾレート(triazolate)を用いる。)、論文「Catalysis in polyisocyanate manufacture」、Polymer Preprints(American Chemical Society)、2003年、44(1)、46−47頁(触媒としてポリフルオリドを用いる。)、欧州特許出願公開第1352006号明細書(触媒として超酸を用いる。)および欧州特許出願公開第0572995号明細書(イミダゾール含有ポリマーを用いる。)に記載の方法に従って調製できる。
【0019】
本発明の方法において、本発明に従って使用される環状イソシアネートは、実質的に、しかし好ましくは排他的に、ポリアミド生成条件の下での環構造の開環と、生成される遊離イソシアネート(これが、次いで、実際の活性化剤として機能する。)によってのみ作用する。したがって、本発明に関連する範囲内において、マスキングされたイソシアネートによる特別な実施形態が提供される。
【0020】
環状イソシアネートは、連結した少なくとも2つのイソシアネート基を有し、これらは、分子内で、ジオキシダゼチン(dioxidazetine)結合の形で存在している。
【0021】
環状ジイソシアネート構造を開裂させる温度は活性化剤の正確な構造に依存する。しかし、100から160℃の広い温度範囲、好ましくは110から150℃の温度が、活性化剤の環状構造を開裂させるのに必要とされる。
【0022】
環状イソシアネートは、二量体、三量体、オリゴマーまたはポリマーであり得る、すなわち、対応する数の単量体イソシアネートから構成され得る。しかし、二量体イソシアネート、すなわち、ウレトジオン(uretdion)の使用が特に好ましい。これらのウレトジオンはまた、オリゴマーまたはポリマー状ウレトジオン(すなわち、個々のウレトジオン環が連結してオリゴマーまたはポリマーを形成している)としても存在し得る。対応するオリゴマーまたはポリマーの生成は、特に、二官能性または多官能性イソシアネートが単量体イシシアネートとして用いられる時に起こる。
【0023】
原理的に、環状ジイソシアネートは、脂肪族、脂環式または芳香族残基を有する単量体イソシアネートに基づくことが可能である。本発明に関連する範囲内で、「基にして」または「基づく」という句は、環状ジイソシアネートが、基本的(単量体)イソシアネートを用いて出発する環化によって得られることを意味すると理解されている。
【0024】
環状ジイソシアネートが脂肪族または脂環式イソシアネートに基づく場合、脂肪族または脂環式イソシアネートは、好ましくは6から40個の炭素原子、特に好ましくは6から15個の炭素原子を有する。
【0025】
脂肪族または脂環式残基を有するイソシアネートに基づく環状イソシアネートの適切な例は、それら自体当業者に知られており、対応する単量体イソシアネートには、例えば、イソホロンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシルジイソシアネート、1,1−メチレン−ビス−(4−イソシアネートシクロヘキサン)、1,2−ビス−(4−イソシアナトノニル)−3−ヘプチル−4−ペンチルシクロヘキサンおよびヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネートが含まれる。ここで、イソホロンジイソシアネートおよびヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネートの使用が好ましい。
【0026】
さらに、本発明に関連する範囲内において、芳香族イソシアネートに基づいて得られる環状イソシアネートを活性化剤として使用することが可能である。この芳香族イソシアネートは、好ましくは6から20個の炭素原子、特に好ましくは6から15個の炭素原子を有する。適切な芳香族イソシアネート単量体は、例えば、2,4−ジイソシアナトトルエン、2,6−ジイソシアナトトルエン、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネート、1,3−ビス−(3−イソシアナト−4−メチルフェニル)−2,4−ジオキソジアゼチジン、N,N’−ビス−(4−メチル−3−イソシアナトフェニル)−ウレアおよびテトラメチルキシレンジイソシアネートからなる群から選択できる。これらの芳香族イソシアネートの中で、2,4−ジイソシアナトトルエン、2,6−ジイソシアナトトルエンおよび4,4’−メチレン−ビス(フェニルジイソシアネート)が好ましい。2,6−ジイソシアナトトルエンおよび4,4’−メチレン−ビス(フェニルジイソシアネート)が、特に好ましい。2,6−ジイソシアナトトルエンは特にさらに好ましい。
【0027】
アロファネート
環状ジイソシアネート以外に、アロファネート(カルバモイルカルバメート)もまた、本発明に関連する範囲内において、鋳造ポリアミドの調製のための、マスキングされた活性化剤として使用できる。本発明により使用されるアロファネートは(I)の一般構造を有する。
【0028】
【化2】

式中、
RおよびR’は、1から20個の炭素原子を有するイソシアネート含有アルキル残基または6から20個の炭素原子を有するイソシアネート含有アリール残基を表し;
R”は、C−C20−アルキル、好ましくは、C−C12−アルキル、特に、C−C−アルキルを表す。
【0029】
これらのアロファネート基含有化合物は、通常、任意のウレタン含有および/またはウレア基含有親化合物(一般式(R”OOC−NHR’)を有する単位を含む。)を、一般式R−NCOを有するモノイソシアネートと、あるいは、一般式OCN−A−NCOを有するジイソシアネートと反応させることによって得られ、ここで、RまたはAは、好ましくは、1から20個の炭素原子を有するアルキル残基または6から20個の炭素原子を有するアリール残基である。
【0030】
20個までの炭素原子を有する任意の芳香族、脂肪族および脂環式モノイソシアネート、例えば、メチルイソシアネート、イソプロピルイソシアネート、n−ブチルイソシアネート、n−ヘキシルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、ステアリルイソシアネート、場合によりハロゲン化されたフェニルイソシアネート、1−ナフチルイソシアネート、場合により塩素化またはフッ素化されたm−、o−およびp−トロイルイソシアネート、p−イソプロピルフェニルイソシアネート、2,6−ジイソプロピルフェニルイソシアネートおよびp−トルエンスルホニルジイソシアネートが、モノイソシアネートとして適切である。
【0031】
6から40個の炭素原子、好ましくは6から15個の炭素原子を有する任意の芳香族、脂肪族および脂環式ジイソシアネート、例えば、イソホロンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシルジイソシアネート、1,1−メチレン−ビス−(イソシアネートヘキサン)、1,2−ビス−(9−イソシアナトノニル)−3−ヘプチル−4−ペンチルシクロヘキサン、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、2,4−ジイソシアナトトルエン、2,6−ジイソシアナトトルエン、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネート、1,3−ビス−(3−イソシアネート−4−メチルフェニル)−2,4−ジオキソジアゼチジン、N,N’−ビス−(4−メチル−3−イソシアナトフェニル)−ウレアおよびテトラメチルキシレンジイソシアネートがジイソシアネートとして適切である。これらの中で、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネートが好ましい。
【0032】
本発明に関連する範囲内で特に好ましいアロファネートは、一般式(II)を有するアロファネートである。
【0033】
【化3】

式中、Rは、C−C−アルキルを表し、RIVは、C−C−アルキル、好ましくは−(CH−を表す。
【0034】
対応するアロファネートおよびこれらの調製は、例えば、欧州特許出願公開第0000194号明細書に記載されており、これらのアロファネートに関連するこの開示は、参照により本発明に組み込まれる。
【0035】
存在する親化合物のウレタン基に関して、アロファネートの生成に用いられるイソシアネートは、少ないモル量で、等モル量で、さらには過剰に使用され得る。後者の場合、反応が完了した後、過剰のイソシアネートは、例えば蒸留または抽出のような、当業者に知られた方法に従って分離されなければならない。したがって、親化合物の1.0molのウレタンおよびウレア基当たり、0.1から1.0molのイソシアネートを使用することが好ましく、0.5から1.0molのイソシアネートの使用が特に好ましい。
【0036】
モノイソシアネートによるウレタンまたはウレア基のアロファネートまたはビウレットの生成は、好ましくは、触媒を用いて実施される。
【0037】
カルボジイミド
本発明において使用されるカルボジイミド化合物として、一般によく知られた方法によって合成されるものが使用され得る。この化合物は、例えば、様々なポリイソシアネートの脱炭酸縮合反応を、有機リン化合物または有機金属化合物を触媒として用い、約70℃以上の温度で、どのような溶媒も用いることなく、または不活性溶媒を用いて実施することによって得ることができる。
【0038】
前記カルボジイミド化合物に含まれるモノカルボジイミド化合物の例は、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジメチルカルボジイミド、ジイソブチルカルボジイミド、ジオクチルカルボジイミド、tert−ブチルイソプロピルカルボジイミド、2,6−ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド、ジ−tert−ブチルカルボジイミドおよびジ−β−ナフチルカルボジイミドであり、これらの中で、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたはジイソプロピルカルボジイミドが、工業的に容易に入手できるという点で、特に好ましい。
【0039】
さらに、前記カルボジイミド化合物に含まれるポリカルボジイミド化合物として、様々な方法によって製造されたものが使用され得るが、基本的には、ポリカルボジイミドの通常の製造方法[例えば、米国特許第2941956号明細書;日本国特許第4733279号公報、J.Org.Chem.、28、2069−2075頁(1963年)およびChemical Review、1981年、Vol.81、No.4、619から621頁に開示された方法]によって製造されたものを使用することができる。
【0040】
ポリカルボジイミド化合物を製造するための原材料としての有機ジイソシアネートには、例えば、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートまたはこれらの混合物が含まれ、具体的には、1,5−ナフタレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートおよび2,6−トリレンジイソシアネートの混合物、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,6−ジイソプロピルフェニレンイソシアネートおよび1,3,5−トリイソプロピルベンゼン−2,4−ジイソシアネートが含まれる。
【0041】
さらに、前記ポリカルボジイミド化合物の場合、これらの重合度は、ポリカルボジイミド化合物の末端イソシアネート基と反応できるモノイソシアネートのような化合物を用いることによって、適切なレベルに制御できる。
【0042】
ポリカルボジイミド化合物の末端基をキャッピング(capping)することによってこれらの重合度を制御するためのモノイソシアネートには、フェニルイソシアネート、トリルイソシアネート、ジメチルフェニルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、ブチルイソシアネートおよびナフチルイソシアネートが含まれる。
【0043】
さらに、ポリカルボジイミド化合物の末端基をキャッピングすることによってこれらの重合度を制御する末端キャッピング剤は、前記モノイソシアネートに限られず、これらには、イソシアネートと反応できる活性水素を有する化合物、例えば、(i)−OH基を有する脂肪族、芳香族または脂環式化合物、例えば、メタノール、エタノール、フェノール、シクロヘキサノール、N−メチルエタノールアミン、オリゴおよびポリエチレングリコールモノアルキルエーテルならびにオリゴ−およびポリプロピレングリコールモノメチルエーテル、脂肪およびオレイルアルコール;(ii)=NH基を有する化合物、例えば、ジエチルアミンおよびジシクロヘキシルアミン;(iii)=NH基を有する化合物、例えば、ブチルアミンおよびシクロヘキシルアミン;(iv)−COOH基を有する化合物、例えば、コハク酸、安息香酸およびシクロヘキサンカルボン酸;(v)−SH基を有する化合物、例えば、エチルメルカプタン、アリルメルカプタンおよびチオフェノール;ならびに(vi)エポキシ基を有する化合物が含まれる。
【0044】
前記有機ジイソシアネートの脱炭酸縮合反応は、適切なカルボジイミド化触媒の存在下に実施される。使用されるカルボジイミド化触媒として、有機リン化合物および有機金属化合物(一般式、M−(OR)によって表される化合物であり、式中、Mはチタン(Ti)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、バナジウム(V)、タングステン(W)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、鉛(Pb)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、カルシウム(Ca)およびバリウム(Ba)などであり;Rは、1から20個の炭素原子を有するアルキル基またはアリール基である。)が好ましく、有機リン化合物の中では、ホスホレンオキシド、ならびに有機金属化合物の中では、チタン、ハフニウム、およびジルコニウムのアルコキシドが、活性の観点から特に好ましい。強塩基、例えば、アルカリおよびアルカリ土類の水酸化物、酸化物、アルコラートおよびフェノラートもまた使用され得る。
【0045】
前記ホスホレンオキシドには、具体的には、3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド、3−メチル−1−エチル−2−ホスホレン−1−オキシド、1,3−ジメチル−2−ホスホレン−1−オキシド、1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド、1−エチル−2−ホスホレン−1−オキシド、1−メチル−2−ホスホレン−1−オキシドおよびこれらの2重結合異性体が含まれる。これらの中で、3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシドが、工業的に容易に入手できるという理由で、特に好ましい。
【0046】
前記機能のためのカルボジイミド化合物には、特に、4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド(重合度=2から20)、テトラメチルキシレンカルボジイミド(重合度=2から20)、N,N−ジメチルフェニルカルボジイミド(重合度=2から20)およびN,N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド(重合度=2から20)などが含まれ、これらは、前記機能を有する1つの分子に少なくとも1つのカルボジイミド基を化合物が有する限り、特に限定されない。
【0047】
本発明の趣旨の範囲内において、適切なカルボジイミドは、特に、単量体、二量体またはポリマーのカルボジイミドである。
【0048】
以下に、好ましいカルボジイミド化合物のいくつかの様相を詳細に記載する。
【0049】
本発明の第1の形態において、単量体カルボジイミドが本発明の範囲内で使用される。
【0050】
本発明のこの形態において、カルボジイミドは、好ましくは、一般式(III)によって表される。
【0051】
【化4】

式中、残基RおよびRは、互いに独立に、線状または分岐状のC−からC20−アルキル残基、C−からC20−シクロアルキル残基、C−からC15−アリール残基、またはC−からC15−アラルキル残基を表す。
【0052】
残基RからRが、C−からC20−アルキル残基、または、C−からC20−シクロアルキル残基であることが好ましい。
【0053】
残基RからRが、C−からC20−アルキル残基であることがさらに好ましい。
【0054】
本発明において、C−からC20−アルキルおよびC−からC20−シクロアルキルは、好ましくは、エチル、プロピル、イソプロピル、sec−ブチル、tert−ブチル、シクロヘキシルおよび/またはドデシルを表し、イソプロピル残基が特に好ましい。
【0055】
本発明において、C−からC15−アリールおよびC−からC15−アラルキルは、好ましくは、フェニル、トリル、ベンジルまたはナフチルを表す。
【0056】
本発明の範囲内で使用に適する個々のカルボジイミドは、Rhein Chemie Rheinau GmbHからAdditin(登録商標)8500、Stabaxol(登録商標)1、Stabaxol(登録商標)1 LFの商標で市販されている。本発明の範囲内で使用に適するさらなるカルボジイミドは、RaschingからStabilisator 3000、7000および7000 Aの商標で市販されている。
【0057】
本発明の第2の形態において、ポリマーカルボジイミドが使用される。
【0058】
個々のポリマーカルボジイミドは、一般式(IV)を有する。
R’−(N=C=N−R)−R” (IV)
式中、
− Rは、芳香族、脂肪族、脂環式またはアラルキレン基を表し、この基は、芳香族またはアラルキレン残基の場合、カルボジイミド基の付いた芳香族炭素原子に対して、少なくとも1つのオルト位に、好ましくは両方のオルト位に、少なくとも2個のC−原子を有する脂肪族および/または脂環式置換基、好ましくは、少なくとも3個のC−原子を有する分岐状または環状の脂肪族基が付いていてもよく、
− R’は、アリール、アラルキルまたはR−NCO、R−NHCONHR、R−NHCONRおよびR−NHCOORを表し、
− R”は、−N=C=N−アリール、−N=C=N−アルキル、−N=C=N−シクロアルキル、−N=C=N−アラルキル、−NCO、−NHCONHR、−NHCONRまたは−NHCOORを表し、
ここで、R’およびR”において、互いに独立に、RおよびRは同じであるまたは異なり、アルキル、シクロアルキルもしくはアラルキル基を表し、Rは、Rの意味の1つを有するまたはポリエステルもしくはポリアミド基を表し、
− nは、2から5,000、好ましくは2から500の整数を表す。
【0059】
この形態の好ましい第1の実施形態において、Rは、芳香族またはアラルキレン基を表し、この基は、芳香族またはアラルキレン基の場合、カルボジイミド基の付いた芳香族炭素原子に対して、少なくとも1つのオルト位に、好ましくは両方のオルト位に、少なくとも2個のC−原子を有する脂肪族および/または脂環式置換基、好ましくは、少なくとも3個のC−原子を有する分岐状または環状の脂肪族基、より好ましくはイソプロピル残基が付いている。
【0060】
特に、カルボジイミド基の付いた芳香族炭素原子に対する複数のオルト位がイソプロピルによって置換されており、カルボジイミド基の付いた芳香族炭素原子に対するパラ位もまたイソプロピルによって置換されている、一般式(I)または(II)のカルボジイミドが好ましい。
【0061】
これらのポリマーカルボジイミドのさらなる好ましい実施形態において、Rは芳香族残基を表し、この基は、C−からC−アルキル基、好ましくはC−からC−アルキル基によってカルボジイミド基と結合している。
【0062】
さらに、例えばイソホロンジアミンまたはH12−MDI(水素化MDI)に基づく、ポリマー脂肪族カルボジイミドを使用でき、これらは日清紡によって市販されている。
【0063】
それぞれ、一般式(I)、(II)のカルボジイミドおよび/またはポリカルボジイミドを調製するためには、モノまたはジイソシアネートが、出発化合物として、触媒の存在下に、高温で、例えば、40から200℃で、二酸化炭素を放出して、縮合され得る。適切な方法は、ドイツ特許出願公開第1130594号明細書およびFR 1 180 370に記載されている。例えば、強塩基またはリン化合物が触媒として満足すべきものであることが分かっている。ホスホレンオキシド、ホスホリジンおよびホスホリンオキシドならびにそれぞれのスルフィドが好ましく使用される。さらに、第3級アミン、塩基性反応性金属化合物、カルボニル酸の金属塩、非塩基性有機金属化合物もまた触媒として使用され得る。
【0064】
カルボジイミドおよびポリマーカルボジイミドの調製に適切であるのは、全てのイソシアネートであり、ここで、C−からC−アルキルによって置換された芳香族イソシアネート、例えば、2,6−ジイソプロピルフェニルイソシアネート、2,4,6−トリイソプロピルフェニル 1,3−ジイソシアネート、2,4,6−トリエチルフェニル 1,3−ジイソシアネート、2,4,6−トリメチルフェニル 1,3−ジイソシアネート、置換ジイソシアナトジフェニル−メタン、例えば、2,4’−ジイソシアネート−ジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトライソプロピル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラエチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタンおよびテトラメチルキシロールジイソシアネートならびにこれらの混合物;置換アラルキル、例えば1,3−ビス(1−メチル−1−イソシアネートエチル)ベンゼンが好ましくは使用される。特に、カルボジイミドが2,4,6−トリイソプロピルフェニル 1,3−ジイソシアネートに基づくことが好ましい。
【0065】
ポリカルボジイミドは、これらが出発物質としてのイソシアネートから調製される場合、反応性のNCO−基および錯体結合した単量体イソサイネート(isocynate)を含む。
【0066】
これらのNCO−基含有ポリカルボジイミドは、存在するイソシアネート基が、反応性水素を含む化合物、例えば、アルコール、フェノールまたはアミンと反応するように変性され得る(比較、ドイツ特許出願公開第1156401号明細書およびドイツ特許出願公開第2419968号明細書)。これに関して、特に、プロピレングルコールモノアルキルエーテル、脂肪およびオレイルアルコール残基もまた挙げられる。
【0067】
一般式(II)のポリマーカルボジイミドは、イソシアネート化合物と末端で反応し得る。
【0068】
ポリマーカルボジイミドは、Rhein Chemie Rheinau GmbHから、Stabaxol(登録商標)P、Stabaxol(登録商標)P100、Stabaxol(登録商標)P200およびStabaxol(登録商標)P400の名称で市販されている。さらに、個々のカルボジイミドが、Raschingから、Stabilisator 2000、9000および11000の名称で市販されている。
【0069】
カルボジイミドはまた、様々なカルボジイミドの混合物として使用され得る。
【0070】
本発明のさらなる実施形態において、様々なカルボジイミドの混合物を用いることもまた可能である。様々なカルボジイミドの混合物が用いられる場合、使用されるカルボジイミドは、単量体、二量体およびポリマーカルボジイミドからなる群から選択され得る。単量体、二量体およびポリマーカルボジイミドに関しては、上の説明が参照される。
【0071】
さらに、使用されるカルボジイミドは、遊離イソシアネートの含量が低減されていることが好ましい。好ましいカルボジイミドは、遊離イソシアネートが1重量%未満に低減されている。
【0072】
本発明に従って使用される活性化剤の作用の様式
本発明によれば、活性化剤として本発明の趣旨の範囲内での環状イソシアネートまたはアロファネートを用いることにより、実際に作用する化学種は、触媒を含む本発明による組成物において直ちに利用可能でなく、環状イソシアネートの環構造が開かれる、またはアロファネートが開裂される一定の時間の後になって初めて放出されるので、重合の開始が遅れるに至ることが見出された。これは、環状イソシアネートのウレトジオン基のジオキソジアセチン(dioxodiacetine)結合、およびアルファネートにおける開裂される結合が、高温でのみ開裂され、その後、単量体イソシアネートが生成し、次いで、これが活性種として作用するためである。
【0073】
活性化剤の放出が遅れるおかげで、特に、重合が早期に開始すると一般的に成形物品が不均質になる、大きな鋳造ポリアミド成形物品を製造することが可能である。
【0074】
さらに、鋳造ポリアミドの優れた結晶性が、本発明による活性化剤を用いて実現されることが、本発明により見出された。
【0075】
触媒に対して、本発明によるシステム(キットオブパーツ)または本発明による組成物は、好ましくは5から500重量%、特に好ましくは10から250重量%、特に15から100重量%の活性化剤を含む。鋳造ポリアミドを製造するために、少なくとも1種の触媒および本発明による少なくとも1種の活性化剤からなる本発明によるシステムまたは本発明による組成物が使用される場合、本発明による組成物は、好ましくは、重合される少なくとも1種のラクタムを含む。
【0076】
少なくとも4個の炭素原子を環に有するラクタムが、鋳造ポリアミドを製造するためのラクタムとして適切である。好ましいラクタムは、カプロラクタム、エナントラクタム(oenanthic lactam)、カプリルラクタム、ラウリルラクタム、ラウリンラクタム、さらにはこれらの混合物である。カプロラクタムおよびラウリルラクタム、特にε−カプロラクタムは、本発明に関連する範囲内で特に好ましく用いられる。好ましくは、本発明による組成物は、重合性成分、すなわち、特に単量体として、ラクタムだけを含む。
【0077】
ラクタムのアニオン重合のための本発明によるシステム(キットオブパーツ)または本発明による組成物において、本発明に関連する範囲内で使用される触媒は、それ自体、当業者に知られている。このような触媒には、例えば、アルカリ金属、例えば、ナトリウム;ラクタムのアルカリ金属塩、例えば、カプロラクタム塩、エナントラクタム塩、カプリルラクタム塩、ラウリルラクタム塩、ラウリンラクタム塩およびこれらの混合物;アルカリ金属水素化物、例えば、水素化ナトリウム;アルカリ金属アルコラート、例えば、ナトリウムメタノラート;ラクタムマグネシウムブロミドおよびラクタムマグネシウムヨージド、例えば、カプロラクタムマグネシウムブロミドおよびカプロラクタムマグネシウムヨージド;アルカリ金属水酸化物、例えば、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウム;ならびに有機金属化合物、例えば、グリニャール化合物が含まれる。
【0078】
ラクタムのアルカリ金属塩が、本発明に関連する範囲内で好ましい。本発明によれば、カプリルラクタムのナトリウム塩、カプロラムタムのナトリウム塩(例えば、ε−カプロラクタムのナトリウム塩)およびラウリルラクタムのナトリウム塩が特に好ましく用いられる。
【0079】
最も好ましくは、カプロラクタムのナトリウム塩と、カプロラクタム、特にε−カプロラクタムとの混合物が触媒として用いられる。
【0080】
さらに、本発明による組成物は、ポリアミドのための、少なくとも1種の機能性添加剤を含む。あり得る1つの添加剤はケイ酸である。他の機能性添加剤は、例えば、以下からなる群から選択される:
1.強化フィラー、例えば、ガラス繊維、炭素繊維およびポリマー繊維;
2.非強化フィラー、例えば、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、シリケート、例えば、ウォラストナイト、カオリン、マイカ、ホルンブレンド(hornblend)、石英、ガラススフィアおよびPTFE;
3.難燃剤、例えば、ホスホア(phosphor)化合物、例えば、有機ホスフェート、トリイル(triyl)ホスフェート、アンモニウムホスフェートおよびハロゲン化有機化合物;
4.発泡剤、例えば、シリコーンオイルおよび高融点ワックス;
5.滑剤、例えば、オイル、例えば、パラフィンオイル;
6.帯電防止剤、例えば、第4級アンモニウム塩;
7.熱および電気の伝導性を増す作用剤、例えば、カーボンブラック、金属、金属酸化物およびカーボンナノチューブ;
8.着色剤または顔料;
9.安定剤、例えば、UV安定剤、例えば、ベンゾフェノン誘導体;耐加水分解剤、例えば、カルボジイミド、ポリカルボジイミド(例えば、Rhein Chemie RheinauによるStabaxol);酸化防止剤、例えば、立体障害アミンおよびフェノール;
10.軟化剤、例えば、アジペートおよびフタレート;
11.ブロッキング防止剤、例えば、パラフィン−ポリエチレンワックスおよびモンタンワックス;
12.増粘剤、例えば、ビニル芳香族(vinyl aromate)ジエンコポリマー;
13.耐衝撃性改良剤、例えば、ABSコポリマー、ゴムまたはポリオレフィン;ならびに
14.加工性添加剤または補助加工性物質、例えば、反応遅延剤および核剤、例えば、硫化モリブデン。
【0081】
ポリアミドに対する好ましい機能性添加剤は、強化フィラー;難燃剤;熱および電気の伝導性を増す作用剤、例えば、特に、カーボンブラック;安定剤、例えば、特に、耐加水分解剤およびUV安定剤、さらには耐衝撃性改良剤である。
【0082】
本発明の好ましい実施形態において、少なくとも1種の強化フィラー、特に好ましくは強化性ガラス繊維、例えば、好ましい球状すりガラス繊維(ground spherical−glass fiber)が機能性添加剤として用いられる。
【0083】
本発明の好ましい実施形態において、重合性組成物、すなわち、活性化剤の他に触媒も含む組成物は、それぞれの場合に重合性組成物の全量に対して、少なくとも約15重量%、特に好ましくは少なくとも約30重量%、より好ましくは少なくとも約40重量%、さらに好ましくは約50重量%の量の強化フィラーを含む。重合性組成物、すなわち、活性化剤の他に触媒も含む組成物の調製に用いられる添加剤のパッケージが、相応に大量の強化フィラーを場合により含んでいてよい。特に、ケイ酸の使用と結び付いた、強化フィラーの使用が好ましい。
【0084】
本発明の別の主題は、アニオン重合による鋳造ポリアミドの調製における活性化剤としての本発明の趣旨の範囲内の環状イソシアネートまたはアロファネートの使用およびラクタムのアニオン重合による鋳造ポリアミドの調製方法(この方法において、活性化剤として、環状イソシアネート、アロファネートまたはこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つが用いられる。)である。
【0085】
前記使用または方法は、通常、活性化剤および触媒が、それぞれの場合に別々に、重合されるラクタムの複数の受器に計量して供給され、また得られる混合物が均質化され、その結果、触媒および活性化剤が、それぞれの場合に別々に、重合されるラクタム中に溶けた状態で存在するように行なわれる。ラクタム中の触媒および活性化剤の別々の混合物は、重合されるラクタムのタイプに応じて、ラクタムが十分に流動できる温度で調製され、反応は、好ましくは90から160℃、特に100から150℃、特に好ましくは120から140℃で行なわれる。重合の遅れの点で、温度が高すぎない、例えば、120℃未満であることが好ましい。
【0086】
本発明による活性化剤の量は、(成形型で、触媒、活性化剤、ラクタムおよび場合により添加剤を含む全ての成分を混合した後)重合されるラクタムに対して、通常0.01から10重量%、特に0.1から5重量%、殊に0.5から2.5重量%である。
【0087】
触媒の量は、それ自体、当業者に知られており、従来技術により知られている量が用いられ得る。
【0088】
前駆体混合物が調製された後、得られた混合物は通常、鋳造ポリアミドの調製のための成形型に導入される。
【0089】
場合により用いられる添加剤の添加は、重合の開始前の適切な時点で、例えば、前駆体混合物に行なわれる。
【0090】
特に、本発明による前記組成物は、この使用のコンテクストの範囲内にて適用される。したがって、ラクタムのアニオン重合によるポリアミドの調製のための、これらの組成物の本発明による使用は、特に、本発明による前記組成物の使用を含み、ここで、活性化剤および触媒は、通常、最初に、別々のラクタムバッチに計量して供給され、ラクタムと共に均質化され、次いで、成形型内で一緒にされる。
【0091】
本発明により使用される組成物は、前もって製造される鋳造ポリアミドパーツ、さらには、半製品の鋳造ポリアミド製品およびコンポジット材料の調製のいずれにも用いられる。無加圧さらには加圧プロセス(例えば、反応射出成形法)のいずれも用いることができる。他の具体的プロセスは、直立鋳造、回転鋳造および遠心鋳造である。さらに、開放型または密閉型の成形型が使用され得る。プロセスにおいては、通常の成形型温度、加熱時間および注入時間が適用される。
【0092】
本発明の別の主題は、ポリアミド組成物であり、これは、成形物品の状態で場合により得られ、この組成物は、少なくとも1種のラクタムのアニオン重合によって得られ、アニオン重合には、触媒および活性化剤からなる本発明によるシステムまたは本発明による組成物が用いられる。本発明によれば、このプロセスにおいて、得られるポリアミド組成物は優れた結晶性を有することが見出された。
【0093】
本発明が、以下の実施例を参照してより詳細に説明されるが、これらの実施例は本発明を限定しない。
【実施例】
【0094】
(実施例1)
装置および試薬
溶融加工のための器具は以下からなる:
・2つの3つ口フラスコ(500ml)、オイルバス中で加熱
・2つのKPG撹拌用具、スリーブ付
・2つのガスキャップ、1つはコック付、1つはコックなし、
・真空ポンプ、コールドトラップ、マノメーター付。
温度を測る器具は以下からなる:
・温度測定装置、例えば、Testo 175−T3、IRシリアルインターフェイス付
・サーモワイヤ、硬化した試料に留まる
・ビーカー、600ml(トール形)
・ビーカーのための加熱システム(金属ブロック、油浴)
・実験用ストップウォッチ(目盛り:1秒)
【0095】
試薬
・乾燥カプロラクタム(EP>69℃)
・活性化剤:
・二量体TDI(本発明に適合、Rhein Chemie Rheinau GmbH(マンハイム)からAddolink(登録商標)として市販されている。)
・脂肪族ポリイソシアネート溶液
・乾燥窒素
・触媒 NL−Neu(Rhein Chemie−カプロラクタムと、ラクタムのナトリウム塩との混合物)
【0096】
実施および測定
フラスコAに196.8gのカプロラクタムおよび3.2gの活性化剤、フラスコBに192gのカプロラクタムおよび8gの触媒NL−Neuを入れる。
油浴中122℃(±2℃)で、これらの溶融物を、真空中(<15mbar)で20分間処理する。
窒素により常圧に戻し、両成分を3つ口フラスコ中で一緒にし、短時間撹拌し、600mlのビーカーに移す。
成形型(ビーカー)温度を160℃にしなければならない。
溶融物を3つ口フラスコ内で一緒にした後、直ちに時間の計測を開始する。
【0097】
ポットライフの決定
重合しているラクタム溶融物の温度を、10秒毎に測り、記録する。
記録を15分間続ける。これにより、ゆっくりと硬化するラクタム溶融物もまた含まれることが確認される。
通常、10分間で十分である。
重合混合物の温度曲線を経時的に描き、温度増加が最大である時点(温度−時間曲線の変極点)を求める。反応混合物を合わせた時から最大温度増加の時点までの時間をポットライフと呼ぶ。
【0098】
表1は結果を示す。
【0099】
【表1】

【0100】
実施例の比較から明らかであるように、本発明によるシステムが使用された時、遅れて重合が起こる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ラクタムのアニオン重合のための少なくとも1種の触媒;および
b)ラクタムのアニオン重合のための少なくとも1種の活性化剤
を含み、
少なくとも1種の活性化剤は、環状イソシアネート、アロファネートおよびこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とするシステム。
【請求項2】
環状イソシアネートが二量体、三量体、オリゴマーまたはポリマーであることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
環状イソシアネートがウレトジオンであることを特徴とする、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
環状イソシアネートがウレトジオン単位を含み、ウレトジオン単位が互いに結合してオリゴマーまたはポリマーを形成していることを特徴とする、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
環状イソシアネートが基づく単量体イソシアネートが、6から40個の炭素原子、好ましくは6から15個の炭素原子を有する脂肪族または脂環式イソシアネートであることを特徴とする、請求項2から4の一項に記載のシステム。
【請求項6】
脂肪族または脂環式イソシアネートが、1,4−シクロヘキシルジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシルジイソシアネート、1,1−メチレン−ビス−(4−イソシアナトシクロヘキサン)および1,2−ビス−(9−イソシアナトノニル)−3−ヘプチル−4−ペンチルシクロヘキサンからなる群から選択されることを特徴とする、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
環状イソシアネートが基づく単量体イソシアネートが、6から20個の炭素原子を有する芳香族イソシアネートであることを特徴とする、請求項4に記載のシステム。
【請求項8】
芳香族イソシアネートが、テトラメチルキシレンジイソシアネート、4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネート、2,4−ジイソシアナトトルエン、2,6−ジイソシアナトトルエン、1,5−ナフチレンジイソシアネート、1,3−ビス−(3−イソシアナト−4−メチルフェニル)−2,4−ジオキソジアゼチジンおよびN,N’−ビス−(4−メチル−3−イソシアナトフェニル)−ウレアからなる群から選択されることを特徴とする、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
一般式
【化5】

[式中、RIVはC−C−アルキレン、好ましくは−(CH−であり、RはC−C−アルキルである。]を有するアロファネートが活性化剤として使用されることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
ラクタムのアニオン重合のための少なくとも1種の触媒が、アルカリ金属、ラクタムのアルカリ金属塩、アルカリ金属水素化物、アルカリ金属アルコラート、アルカリ金属水素化物および有機金属化合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から9の一項に記載のシステム。
【請求項11】
キットオブパーツまたは組成物の形態の、請求項1から10の一項に記載のシステム。
【請求項12】
鋳造ポリアミドを調製するための活性化剤としての少なくとも1種の環状イソシアネートまたはアロファネートの使用。
【請求項13】
活性化剤が少なくとも1種の触媒と組み合わせて使用されることを特徴とする、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
活性化剤および/または触媒が、ラクタムのアニオン重合によってポリアミドを調製するために、添加剤のパッケージとしておよび/または部分混合物として、使用される、請求項12または13に記載の使用。
【請求項15】
少なくとも1種の環状イソシアネートまたは少なくとも1種のアロファネートの使用を含む、ラクタムのアニオン重合によるポリアミドの調製方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法により得られるポリアミド。

【公開番号】特開2009−197231(P2009−197231A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−36074(P2009−36074)
【出願日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(501074227)ライン ヘミー ライナウ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (15)
【Fターム(参考)】