説明

特異的突然変異を有する植物を選択する方法

本発明は、植物ゲノムの選択領域における化学的及び/又は物理的な突然変異原による突然変異の導入、その後のハイスループットシークエンシングを使用して、対象の領域における突然変異の存在に関する突然変異した初代M1植物の少なくとも一部分の解析による遺伝的突然変異の選択によって突然変異集団を提供する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特異的突然変異を有する植物を選択する方法に関する。特に、本方法は、遺伝的変異の改善及び表現型の改善をもたらし得る所望のゲノム領域において突然変異を有する植物を選択する方法に関する。
【0002】
優良遺伝資源の育種は時間とコストとがかかるプロセスである。優良株が確立されると、育種家は、株の最適な遺伝的構造を崩壊するという理由から、非適合遺伝資源による従来の交雑法及び選択法を回避する。反対に、突然変異誘導法の使用によって、特定の育種株で遺伝的変異を作り出すことへの関心が高まっている。作物の品種改良に対する突然変異の誘導の効果は、新規の誘導変異を保有する、2316個の正式に登録された変異型(正式に登録された突然変異型に関するIAEAデータベース)に反映されている。さらに、これらの約4分の3が、γ線による処理に由来する直接突然変異型であり、これにより突然変異による遺伝的変異型の作出の重要性が強調される。このことは全て、現在数十億ドル及び数百万ヘクタールの耕作地に値する、農業及び食糧生産に対する巨大な経済的影響へと変わる。しかしながら、突然変異の誘導の農業における可能性は十分に理解されているが、突然変異の利用には解決すべき課題が依然として存在する。
【0003】
突然変異誘発剤は、3つのカテゴリーに分類することができる:物理的(例えばγ線)、化学的(例えばエチルメタンスルホン酸、EMS)、及び転位因子(例えばトランスポゾン、レトロトランスポゾン、T−DNA、レトロウイルス)。現在のところ、植物における分子レベルで誘導される遺伝作用範囲、並びにこれらの異なるカテゴリーの突然変異誘発剤及びそれらによって生じる突然変異の特異性及び相対的有効性に関して利用可能なデータは限られている。これらの作用はDNA損傷を包含し、これにより塩基対変化(一塩基変異多型(single/simple nucleotide polymorphisms)、SNP)、小さい挿入及び欠失(インデル)及び染色体再配置が起こる。突然変異の誘導がエピジェネティックプロセス、例えばメチル化、レトロ要素の活性化、及び高次DNA構造の摂動(perturbation)にどのように相互作用するかについて知られていることは少ない。
【0004】
育種家は、遺伝資源の遺伝的基盤を広げるために突然変異の誘導を使用し、且つ交雑育種プログラムにおける新たな変異型又は新たな変異源として突然変異株を直接使用しているが、誘導される突然変異の正確な性質の知識は必須というわけではなかった。直感的に(Intuitively)小さい塩基対の再配置及び欠失の保存レベルは理想的なものであると考えられていた。現在、突然変異誘発法の使用は、育種における適用を超えて遺伝子発見及び逆遺伝子学にまで拡大している。これらの新規のハイスループットアプリケーションには、作物の植物ゲノム全体で高い有効性を伴って誘導される特定の群の突然変異が必要であり、結果として、誘導される突然変異の正確な性質の知識が問題となる。
【背景技術】
【0005】
従来のハイスループット遺伝子発見法は、挿入による「ノックアウト」株、現在では従来型の「遺伝子合成機(gene machines)」及び「ノックアウト」ライブラリの欠損に強く依存する。挿入による突然変異は、理論上、ゲノムにおける遺伝子ごとに、トランスポゾン挿入によって不活性化される一連の株を生産するために、既知の転位因子の転位活性を誘導することを包含する。これらの株を、特定の表現型を生じる遺伝子を同定するのに使用することができ、又は反対に、特定の既知の遺伝子の不活性化に関連する表現型に関して探査することによって遺伝子機能を同定するのに使用することができる。しかしながら、挿入による突然変異型は、遺伝子機能が強く障害を受け(perturbed)、通常では完全な遺伝子ノックアウトを示すという欠点を有する。多くの場合、遺伝子を除去するのではなく、遺伝子を修飾する突然変異が望まれる。挿入による突然変異に対して、従来の突然変異誘導(特にEMS等の化学的な突然変異誘発剤)により、点突然変異、及びしたがって広範な潜在的対立遺伝子変異を誘導するという利点が与えられる。
【0006】
比較的新しく且つ重要な逆遺伝子学アプローチは、「遺伝子変異導入法(targeting induced local lesions in genomes)」(TILLING)である。この場合、DNA塩基対置換又はわずか数個の塩基対にわたる小さい欠失のいずれかである小さい変化の多くが一連の株で誘導される。これらの株では、表現型を、生じ得る特定の遺伝子及び既知の遺伝子の新規の対立遺伝子における変化と関連付けることによって、遺伝子機能を確認することができる。
【0007】
これから数年で、これらのような新規の技術により、実際の植物育種における影響が増してくるであろう。突然変異プロセスを調整するために、ゲノムの所望の部分に突然変異を含有する突然変異型の選択を容易にする技術に対する必要性が存在する。さらに、突然変異を安定して導入し、すなわち育種において使用することができ、またゲノム全体に分布されている変異型を多くの突然変異型から選択する技法に対する必要性が存在する。過去には、これは解析ツール及び解析法がないという理由で不可能であった。今日では、特に並列シークエンシング法を含むハイスループットDNAシークエンシング法、単一分子シークエンシングが上記のミッシングリンクの一部を提供する。例えば好例は、出願人らの技術及びキーポイントを示す同時係属出願の特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2007037678
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特定の遺伝子において誘導される突然変異を選択するためのキーポイントの使用は実際には、M2として保存される特別に作製された突然変異集団、又はさらに後世代の近交集団に制限され得る。初代突然変異M1種子の少なくとも1回の自殖には、実際にはDNA解析前に体細胞キメラを取り除く必要があると考えられる。かかる突然変異集団の構築及び伝播にかかる時間及び資源の投資が相当量になるため、かかる突然変異集団を構築及び伝播することは稀であり、通常かかる突然変異集団は育種家の作物の優良遺伝資源の大部分を占めるものではない。優良育種材料の品種改良における突然変異集団の実用的使用には、これは深刻な欠点である。そのため、突然変異誘発、並びに任意の育種株、及び育種プログラムでの任意の段階又は系統における突然変異型の選択を可能にする本方法に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ここで本発明者は、上記の課題に対する解決策を見出している。この解決策は、初代突然変異種子によりキメラ植物が生じるが、セクター解析を使用して、遺伝的突然変異を特異的に選択することができるという考えに基づいている。胚性頂端幹細胞で発生するこれらの突然変異だけが、植物体全体に組み込まれ、最終的に子孫へと伝えられる。非幹細胞の突然変異は一般的に、植物の異なる部位の主要部、例えば幼植物体における第1の系列の本葉又は花を支配せず、一般的に生殖細胞系列には広がらない。この考えは、種子の突然変異の直後に、植物の任意のM1集団における遺伝的突然変異に関してスクリーニングする本発明に活用される。
【0011】
本方法は、植物の異なる部位、例えば多次元マトリクスの一次座標(x)において第一本葉、二次座標(y)において第二本葉、及び3Dプーリングの場合、三次座標(z)において第三本葉をプールする、特異的な多次元(二次元を超える)グリッディング戦略を使用する(図参照)。本葉の代わりに、植物の花又は他の部位(例えば花粉)を使用してもよい。キーポイント(Cel1等の酵素の代わりに突然変異の検出及び同定のためのハイスループットシークエンシング法を用いるTilling技術)解析後の3つの座標全てで検出された突然変異は、全ての連続葉又は他の器官に常に存在しているため、幹細胞に由来していたと考えられる。1つだけ又は2つの座標で検出され、第3の座標にはなかった突然変異は体細胞領域にある。
【0012】
本発明は、限られた時間での突然変異集団のサンプリング及びシークエンシングを提供する。個々の突然変異型植物は、任意の所望のサイズの集団から選択することができ、高い確率で特異的な遺伝的突然変異を保有して植物を繁殖させる。集団の残りは廃棄することができる。このアプローチの利点は、実際の要求に応じて、様々な作物及びそれらの優良株(複数可)で特異的に突然変異させることができることである。また、突然変異型選択には、個々の突然変異型植物を成長させる種子のみが必要であり、子孫又は世代時間は必要とされないため、世代時間が長い植物((果)樹、ブドウ等)で受け入れられる。
【0013】
第1の態様において、本発明は、植物において特異的突然変異を導入及び選択する方法であって、
(a)複数の突然変異種子を準備する工程と、
(b)N次元格子(N≧1、好ましくは2、より好ましくは3)で突然変異種子を播種する工程と、
(c)種子から植物(又は苗木)を成長させる工程と、
(d)植物の一部分からDNA含有材料をサンプリングする工程と、
(e)N次元格子のN次元の一次元にDNA含有材料をプールする工程と、
(f)プールからDNAを単離する工程と、
(g)苗木の異なる部分で、N次元格子の任意の二次元及びさらなる次元に関して工程(d)〜工程(f)を繰り返す工程と、
(h)プールのそれぞれで反応産物を得るために、対象となる突然変異位置を含有するDNA(の一部)を増幅するプライマー組(該プライマーの少なくとも1つがプール特異的タグを含有する)で、プールしたDNAを増幅する工程と、
(i)反応産物をプールする工程と、
(j)反応産物のヌクレオチド配列を決定する工程と、
(k)格子においてそれぞれの植物(又は苗木)を同定するために、プール特異的タグを使用して工程(h)のプールからのヌクレオチド配列をデコンボリューションする工程と、
(l)所望の突然変異を保有する植物(又は苗木)を選択する工程と、
を含む、方法に関する。
【0014】
本発明の方法は、植物における特異的突然変異の導入及び選択に関する。好ましくは、突然変異は安定な突然変異であり、すなわち従来の交雑の世代間で無制限に遺伝される。特異的突然変異は、遺伝子又は少なくとも1つのコード領域に位置するのが好ましい。典型的には、選択される突然変異は、対象となる遺伝子のタンパク質コード領域に位置する。同様に、選択される突然変異は、タンパク質をコードしないが、任意の他の所望の又は不要の機能を示す任意の他のDNA配列(例えば遺伝子調節配列、プロモータ、エンハンサ等)に位置し得る。遺伝子は、耐性遺伝子又は疾患関連遺伝子、収率又は任意の発生学的機能、物理学的機能若しくは生化学的機能について知られている特異的遺伝子等の対象となる任意の遺伝子から仮想的に選択することができる。この場合、選択された遺伝子は、その遺伝子調節配列、プロモータ、エンハンサ等を含んでいる。好ましくは、突然変異は対象となる遺伝領域に位置している。特異的突然変異の選択を、任意の事前の表現型の特徴付けをせずに、すなわち導入される突然変異が植物の表現型を変化させるか否かを事前に解析せずに行うことができる。
【0015】
また本発明は、生得的機能(ascribed function)を有してはいないが、少なくとも幾つかのヌクレオチド配列情報が知られている、すなわち、遺伝子に特有のプローブを与えるのに少なくとも十分である、対象となる遺伝子において突然変異の同定を可能にすることにより、遺伝子機能の解析における第1の工程を提供する。これにより、本発明は、任意の種の植物で適用可能であり得るTILLING及びキーポイントに類似した逆遺伝的なツールを提供する。
【0016】
このようにして、第1の工程で、複数の突然変異種子を準備する。かかる複数の種子は、手持ちのケース(case at hand)に応じて、少なくとも100個の種子、又は少なくとも1000個の種子又はさらには少なくとも5000個又は50000個もの種子であり得る。種子は任意の植物由来であり得る。種子は、任意の既知の手段で突然変異させることができるが、化学的手段が好ましい。複数の種子は例えば、種子バッチで構成することができ、それによりそれぞれのバッチは同じ若しくは異なる突然変異誘発手段を使用して突然変異されているか、又はその後の若しくは並行した突然変異誘発(mutagenisation)を行っている。本発明での突然変異誘発手段は、化学的又は物理的な手段であり、例えばエチルメタンスルホン酸(EMS)、DMS、N−エチル−N−ニトロソ尿素(ENU)、N−メチル−N−ニトロソ尿素(MNU)、PRC、メチルメタンスルホン酸(MMS)、クロラムブシル、メルファラン、アジ化ナトリウム、臭化エチジウム、ブロモウラシル、ブロミン若しくは亜硝酸、塩酸プロカルバジン、シクロホスファミド、硫酸ジエチル、アクリルアミドモノマー、トリエチレンメラミン(TEM)、ナイトロジェンマスタード、ビンクリスチン、ジメチルニトロソアミン、N−メチル−N'−ニトロ−ニトロソグアニジン(MNNG)、7,12ジメチルベンズ(ザ)アントラセン(DMBA)、酸化エチレン、ヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)、ビスルファン、ジエポキシブタン(DEB)等の化学的な突然変異誘発剤の中から選択される。
【0017】
一般的に、X線、γ線、中性子等により、DNAの破壊が引き起こされる。DNA破壊の細胞修復機構により、再配置及び欠失を含む大きな損傷を含有するDNA領域が生じる。本発明によると、他の種類の突然変異の解析が好ましいが、より多くの塩基を包含するという点でより大規模になる傾向がある放射線誘導性の突然変異の解析も本発明に包含される。UV光誘導性の突然変異は主に単一ヌクレオチド変化である。
【0018】
好ましい実施の形態において、突然変異生物は、少なくとも約1個の突然変異が10000個〜1000個の遺伝子ごとに生じるように突然変異している。好ましくは、突然変異誘発工程は、1/500、好ましくは1/100、より好ましくは1/10の生物の平均頻度で生物において対象となる遺伝子に(遺伝的)突然変異を導入することを含む。突然変異誘発法を、例えば突然変異誘発手段に曝す期間を延ばすことによって、これらの割合を達成するために適合させることができる。好ましくは、上記の方法のいずれかにおける突然変異は、例えば約1個〜10個の塩基対の範囲での単一塩基対突然変異又は短い挿入又は欠失の突然変異である。
【0019】
続いて、種子をN次元格子で成長させる。格子が少なくとも1D、すなわちN≧1であり、N=1は個別の単一の植物の解析を示唆している。より多くの次元が特異的突然変異を保有すれば、変異が遺伝性である可能性が高くなるので、この格子は、手持ちのケースに応じて所望であれば又は有用であると考えられれば、より高次の次元を有することができる。実際、シークエンシングコスト(要求される冗長性が増大するので、Nが大きくなればより高くなる)と、遺伝性に関する信頼度との間には二律背反(trade off)が存在する。その都度、最適なNを求めることができるが、典型的にはN≧3が好ましい。好ましい実施の形態では、Nは、3、4、5、6、7、8、9、10、好ましくは3、4、5、6、より好ましくは3から成る群から選択される。種子から、苗木を植物へと成長させる。苗木(又は得られる植物の一部)を、例えば葉又は花を穿孔することによってサンプリングすることができるが、可能であれば本葉又は花全体をサンプリングするのが好ましい。植物又は苗木それぞれから、DNA含有材料の試料を、植物の一部分から採取する。突然変異種子を播種することにより得られたそれぞれの植物又は苗木に対して、試料を、同じ部分、例えば第一本葉又は第一花から採取する。格子におけるそれぞれの次元で、DNA含有材料をサンプリングする。それぞれの次元で、DNA含有材料を植物の別の部分からサンプリングする。このため、二次元では、例えば第二本葉等から材料をサンプリングする。本発明の一実施の形態では、植物の一部分はそれぞれ独立して、花、葉、枝、幹又は地上に位置する植物の他の部位、及びそれらの組合せから選択される。本発明の一実施の形態では、一部分は葉、好ましくは本葉である。本発明の一実施の形態では、格子の一次元に関する部分が第一本葉であり、二次元に関する部分が第二本葉であり、三次元に関する部分が第三本葉である。
【0020】
DNA含有材料をプールし、それにより、それぞれの部分をプールの各次元にプールする。このため、三次元格子では、植物の第1の部分由来のDNA含有材料をプールの一次元にプールし、植物の第2の部分由来のDNA含有材料をプールの二次元にプールし、以下同様に続け、続いてDNAの単離に関して従来の方法及び手段のいずれかを使用して、DNAをプールから単離する。
【0021】
ここで、プールしたDNAを、DNAの増幅に関して従来の手段、例えばPCRを使用して増幅することができるが、他の技法でも同様に十分であり得る。PCR増幅の場合、対象となる領域又は遺伝子を含有するDNA(の一部)を増幅する(又はスパンする)プライマー組を用いてプールしたDNAを増幅させる。好ましくは、プライマーの少なくとも1つは、タグ、好ましくは、プールを同定するヌクレオチドタグを含有する。このように、反応産物をそれぞれのプールで得ることにより、反応産物をプールと連結させることができ、プールからプール特異的タグを使用して反応産物を増幅した。これによりここで、全てDNA断片を含有し、異なる植物を基としており、対象となる領域で多様の突然変異を含有すると思われる反応産物のプールが得られる。
【0022】
「タグ」又は「ヌクレオチドタグ」という用語、「タギング(tagging)」という動詞は、核酸試料を第2の又はさらなる核酸試料又は増幅産物と区別させるための、タグの核酸試料への付加を表す。例えば、増幅中の配列識別子の付加、又は当該技術分野で既知の任意の他の手段によってタギングを行うことができる。かかる配列識別子は例えば、特定の核酸試料を同定するのに独自に使用され、変化するが、規定の長さの特有の塩基配列であり得る。その典型例は例えばZIP配列である。かかるタグを使用して、さらなるプロセシングの際に試料の起源を決定することができる。異なる核酸試料に由来するプロセシング産物を組み合わせる場合、異なるタグを使用して、異なる核酸試料を同定することができる。タグは識別子配列と呼ばれることもある。上述のように、かかる識別子配列は、比較される核酸試料の量に応じて様々な長さであり得る。約4塩基の長さ(4=256の異なり得るタグ配列)は通常、限定数の試料(最大256個)の起源間で区別するのに十分であるが、タグ配列は、区別される試料の間で2つ以上の塩基が異なるのが好ましい。このため必要に応じて、タグ配列の長さを調整することができる。タグはプライマーの5’末端に位置するのが好ましい。
【0023】
ここで、望ましくは反応産物をプールし、シークエンシングにかけることができる。当該技術分野においてシークエンシングに関して既知の方法のいずれかを使用して、シークエンシングを行うことができる。シークエンシングしなければいけない配列の数が大量である場合は、国際公開第03/004690号、国際公開第03/054142号、国際公開第2004/069849号、国際公開第2004/070005号、国際公開第2004/070007号、及び国際公開第2005/003375号(全て454 Life Sciencesの名前で)において、またSeo et al.(2004)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101 :5488-93によって開示される方法のような、並びにHelios, Solexa, US Genomicsの技術等のハイスループットシークエンシング法が好ましい(これらは参照により本明細書中に援用される)。記載の454 Life Sciences技術により現在では、1回で最大1億個の塩基のシークエンシングが可能であり、これは競合技術よりも100倍迅速且つ安価である。1つの反応当たりの解読長が増大すると、及び/又は並行反応の数が増大すると、これが増大する。シークエンシング技術は大まかに5つの工程から成る:1)一本鎖DNA(ssDNA)のライブラリを作製するためのDNAの断片化及び特定のアダプタのライゲーション;2)ssDNAのビーズへのアニーリング、油中水型マイクロリアクタにおけるビーズの乳化、及びビーズ上の個々のssDNA分子を増幅するためのエマルションPCRの実行;3)それらの表面上に増幅ssDNA分子を含有するビーズの選択/濃縮;4)PicoTiterPlate(登録商標)におけるDNA保有ビーズの堆積;並びに5)ピロリン酸光シグナルの発生による複数のウェルにおける同時シークエンシング。
【0024】
シークエンシング後、シークエンシング工程から直接得られる断片の配列を、好ましくはコンピュータ内でトリミングして、任意のビーズアニーリング配列、シークエンシングプライマー、又はアダプタ関連配列情報を取り除いてもよい。コンピュータ内でこれを行うことにより、タグによって与えられる情報を、DNAプールにおいて発見された遺伝的突然変異(遺伝子)とアドレスとを後に結び付けるように、別々のデータベース領域に保存することができる。
【0025】
典型的には、任意の付加されたアダプタ/プライマー及び/又は識別子配列に関してトリミングされている配列データで、すなわち核酸試料に由来する断片からの配列データのみを使用して、アラインメント又はクラスタリングを行う。
【0026】
比較目的での配列のアラインメント法は当該技術分野で既知である。様々なプログラム及びアラインメントアルゴリズムが、Smith and Waterman(1981)Adv. Appl. Math. 2:482;Needleman and Wunsch(1970)J. Mol. Biol. 48:443;Pearson and Lipman(1988)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444;Higgins and Sharp(1988)Gene 73:237-244;Higgins and Sharp(1989)CABIOS 5:151-153;Corpet et al.(1988)Nucl. Acids Res. 16:10881-90;Huang et al.(1992)Computer Appl. in the Biosci. 8:155-65;並びにPearson et al.(1994)Meth. Mol. Biol. 24:307-31(これらは参照により本明細書中に援用される)に記載されている。Altschul et al.(1994)Nature Genet. 6:119-29(参照により本明細書中に援用される)には、配列アラインメント法及び相同性の計算の詳細な考察が示されている。
【0027】
NCBIのBasic Local Alignment Search Tool(BLAST)(Altschul et al., 1990)は、配列解析プログラムであるblastp、blastn、blastx、tblastn及びtblastxと関連させて使用するのに、全米バイオテクノロジー情報センター(NCBI、Bethesda, Md.)を含む幾つかのソースから、及びインターネット上で利用可能である。BLASTは、<http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/>でアクセス可能である。このプログラムを使用してどのように配列同一性を決定するかという記載は、<http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/blast_help.html>で利用可能である。データベースは、EST配列、対象となる種のゲノム配列、及び/又はGenBankの非冗長配列データベース又は同様の配列データベースを含むのが好ましい。
【0028】
ハイスループットシークエンシング法を、Shendure et al. Science, Vol 309, Issue 5741, 1728-1732に記載されるように使用することができる。その例は、微小電気泳動シークエンシング、ハイブリダイゼーションシークエンシング/シークエンシングバイハイブリダイゼーション(SBH)、増幅分子上の環状アレイシークエンシング、単一分子上の環状アレイシークエンシング、非環状単一分子リアルタイム法、例えばポリメラーゼシークエンシング、エキソヌクレアーゼシークエンシング、ナノ細孔シークエンシングである。
【0029】
最良の結果のためには、断片又は増幅産物を十分な冗長性でシークエンシングすることが興味深い。冗長性とは、シークエンシングエラーと生来のゲノム配列との区別を可能にするものである。或る特定の実施の形態では、シークエンシングの冗長性は、好ましくは少なくとも4、より好ましくは少なくとも5であり、6を超える、好ましくは8を超える、又はさらに10を超える冗長性が好都合であると考えられるが、本発明の概念には必須のものではない。
【0030】
シークエンシング後に続く工程では、苗木がそれぞれ格子において、プール特異的タグを使用することによる工程(h)の配列のデコンボリューションによって同定される。それぞれの苗木又は植物で、格子の次元数に合わせて、同じ突然変異とプール関連タグとの組合せを回収することができるか否かを求める。言い換えれば、格子が三次元を含有する場合、同じ突然変異が特定の苗木又は植物と結び付くプールアドレスを同定する3つのタグと共に3回回収されれば、さらなるプロセシングが検討されるような形で誘導突然変異が導入されている可能性がある。図1における方法の概略図も参照されたい。これらの選択された苗木又は植物を成長させてもよく、突然変異の遺伝を次の世代で確認することができる。苗木又は植物を成長させ、育種に使用することもできる。ここで、選択された苗木又は植物を、対象となる表現型の有無に関して解析することができ、言い換えれば選択された突然変異を、異なる表現型を与えることができるか、又は突然変異が試験した表現型とは無関係であるかに関して評価することができる。遺伝的に存在するが、対象となる領域には突然変異を保有しない、すなわち解析する植物のあらゆる部分に回収される突然変異種子の元となる集団の一部を廃棄することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】格子上でのサンプリング及び分布の方法の概略図である。
【図2】AN1及びRTに関する突然変異型におけるキメリズムパターンを示す図である。丸は花冠に相当する。黒色は突然変異型組織を示し、白色は野生型組織を示す。丸の垂直方向の並び(vertical stack)はそれぞれ花序を示し、最下部の円は初めに形成された花であり、最上部の円は5番目の花である。部分的に黒い円は、温室で観察されるような実際の色素パターンでキメラ花を示している。
【図3】RT遺伝子に関する個々のF1突然変異型植物のサンガーシークエンシングによって検出された、EMS誘導性の点突然変異の位置を示す図である。突然変異は赤色で示し、基準となるWTヌクレオチドは青緑色で示す。
【図4】ハイスループット突然変異解析に使用されるRT遺伝子の断片を示す図である。矢印は、ゲノムDNAのプールからのこの断片の増幅に使用されるプライマーを示す(表1も参照されたい)。黒色で印を付けたヌクレオチドは、表現型で選択されたEMS突然変異型m2及びm17における突然変異の位置であり、塩基の変化を括弧内に示す。
【図5】三座標格子におけるプールした植物のハイスループット配列解析の結果を示す図である。X軸は座標軸を示す(X、Y、Zはそれぞれ、黒色、灰色及びストライプである)。Y軸はRT断片の特異的点突然変異がそれぞれの座標に由来する配列解読において生じる回数を示す。2つの突然変異型m2及びm17で、3つの(X、Y、Z)座標の特有の組合せはバックグラウンドよりも強調して見ることができる。これらの組合せは単一の植物に相当し、格子におけるこれらの突然変異型の所定の位置に適合している。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、実施例に基づいて説明する。
【実施例】
【0033】
キメリズムの突然変異誘発及び解析
記載の方法を実証するため、及びその成功に寄与する組織サンプリングパラメータを推測するために、本発明者らは、図2に示されるように、ペチュニア・ハイブリダ(Petunia hybrida:ペチュニア)において遺伝的スキームを使用した。赤紫色の花をつけるF1ハイブリッドのペチュニアを近交株W5(act1、AN1::dTph1、rt::dTph3)とM1(act1、AN1、RT)との交雑から産生し、2つの花色遺伝子で劣性対立遺伝子(AN1、rt)を保有する二重ヘテロ遺伝子型が生じた。これらの2つの遺伝子の1つ(AN1)は、花冠におけるアントシアニン色素の産生に必要とされる転写因子である(Spelt et al. 2000)。AN1でのヌル突然変異型により、白色花が生じる。第2の遺伝子(RT)はUDPラムノース:アントシアニン−3−グルコシドラムノシルトランスフェラーゼである。本明細書中で使用される遺伝的バックグラウンドでは、RTのヌル突然変異型が、シアニジン−3−グルコシドの集積の結果として赤色の花をつける(Kroon et al. 1994, Brugliera et al. 1994)。両方の劣性色のマーカーは、それぞれdTph1及びdTph3挿入を保有するトランスポゾン挿入対立遺伝子であることに留意されたい(Spelt et al. 2000, Kroon et al. 1994)。親株とF1ハイブリッドとの両方がdTph1の活性化因子を喪失しており(act1、Stuurman and Kuhlemeier 2005 The Plant Journal Volume 41 Issue 6, Pages 945-955)、dTph3が転位欠損であるため(Kroon et al. 1994)、これらのエレメントの転位は起こらない。F1ハイブリッド種子のエチルメタンスルホン酸(EMS)による突然変異誘発処理の際、得られる植物の幾つかは、AN1又はRTの野生型対立遺伝子において新規の突然変異を保有する。かかる植物はキメラであり、赤紫色の花の背景色に対する白色又は赤色の花冠又は花冠部位の割合によって視覚的に同定され得る。
【0034】
3600個のF1植物集団をEMS処理種子から成長させ、花色に関するセクタリングパターンを、初代の花序のみで視覚的に記録した。二次花序が腋生分裂組織から成長し、それらのがい葉にクローン的に由来するのに対し(Furner and Pumfrey 1992)、初代の花序は胚性茎頂分裂組織にクローン的に由来すると規定される。結果を概略的に図2に示す。総数19個の突然変異型がAN1及びRTで共に観察された。図に示すように、キメリズムは、大きい領域でのみ起こり(花のほぼ半分)、花序の加齢に従って徐々にキメリズムが消失するという所定のパターンに従っていた。5つの花をつけた後、キメリズムは消失し、植物は、安定して突然変異型の色を獲得するか、又は完全な野生型を発生した。安定した突然変異型及び野生型の数はほぼ等しく、これは胚性頂端分裂組織における2つの不安定な始原細胞(幹細胞)を反映していると思われる。
【0035】
種子で突然変異させた、ペチュニアの大きいF1集団は、初代花序で5番目の花の後に非キメラとして扱うことができることが、これらのデータから結論付けられる。実際、このことは突然変異をDNAスクリーニング法のいずれかによって特異的遺伝子で探査する場合、この段階で又はこの段階の後で、花序組織を節(nodes)からサンプリングすればよいということを示唆している。これらの試料が特定の点突然変異を示す場合、植物は全ての組織、及び続いて発生する枝において突然変異を安定して保有する。図2から分かるように、サンプリングを、より早い段階、例えば2番目の花の後で行ってもよく、安定した突然変異型として発生する個体を同定する機会としては極めて良好である。
【0036】
サンガーシークエンシングによる突然変異の分子的確認
花色に関する表現型でのスクリーニングがAN1又はRTの遺伝子における突然変異によるものであったことを実証するために、完全に突然変異型のF1個体の5番目の花序節由来の苞葉を、ゲノムDNAの単離及び遺伝子配列の解析のために採取した。RT遺伝子はイントロンを含有せず、約1.5kbのコード配列全体を単一のプライマー対でPCR増幅させる。便宜上、RTのみを詳細に解析し、結果は、類似性によりAN1に適用すると推測される(assumed)。RTに関するプライマーを、W5親ではなくM1親由来の対立遺伝子のみを増幅させるように設計した。この特異性は、2つの親間での天然RT配列多型に基づいており、設計されるオリゴヌクレオチドプライマーを差別化することができた(図示せず)。これにより、W5株に存在していたトランスポゾン挿入対立遺伝子ではなく、M1親由来の排他的なEMS誘導性の対立遺伝子のシークエンシングが可能となった。
【0037】
7個の赤色の花をつけるF1突然変異型全てにおいて、RTコード領域全体の従来のサンガーシークエンシングを、細菌プラスミドベクターにクローン化したPCR産物で行った。突然変異型F1植物それぞれに関して、20個の独立した組み換えプラスミドにおけるRT産物をシークエンシグした。この解析により、1つを除いて全てのF1植物で点突然変異が明らかにされた。これらの突然変異の種類及び位置を図3に示す。
【0038】
しかしながら、全てのF1植物において、20個の組み換えプラスミド全てが突然変異を示したわけではなく、1つの植物当たりの突然変異による挿入頻度は3〜6に及ぶ。これは、サンプリングした組織が突然変異型の対立遺伝子に関して遺伝型がホモ型ではなかったことを示している。植物の表現型がホモ型であった場合、F1突然変異型は、植物体の組織原基盤である、3つのクローン細胞層L1、L2、L3の1つに突然変異を保有する周縁キメラであった。L1層は花冠の表皮を構成し、アントシアニン色素沈着は表皮に限定されることが知られている(参考文献)。このため、解析したRT突然変異型は、完全に突然変異型のL1層を含有していたが、L2及びL3層は野生型であった。
【0039】
表現型によるF1突然変異型の選択により周縁キメラが同定され、点突然変異が予測遺伝子で見出されると結論付けられた。このため、遺伝型による突然変異スクリーニングを3600個のF1植物全てで行い、個々の植物1つの初代花序の4番目の花節を超えた少なくとも2つの連続した花節で特定の突然変異が見出される場合、その植物は、3つの細胞層L1、L2又はL3の(少なくとも)1つにおいて安定した周縁キメラである。
【0040】
ハイスループットシークエンシングにより突然変異型が正しく同定される
本発明がハイスループットモードでの特異的遺伝子における突然変異のF1選択を可能にすることをさらに実証するために、454 Life Sciencesのシークエンシング技術(Margulies et al. 2005)を使用して、個々の植物の大きな集合においてRTアンプリコン配列を解析した。総数3600個のEMS突然変異F1ハイブリッドから採取した1440個の植物の部分集合を温室内で格子状に配置した。格子は、35個の座標(x1〜x9、y1〜y10、z1〜z16)を有する三座標軸(x、y、z=行、ブロック、列)から成っており、個々の植物の総数は、9×10×16=1440個であった。格子におけるそれぞれの植物は、3つの軸それぞれにおける1つの座標の特有の(x、y、z)組合せに対応する。この群の1440個の植物では、2つの周縁RT突然変異型(図3のm2及びm17)が含まれ、特有の既知の位置に位置していた(m2=X10、Y2、Z8;m17=X1、Y1、Z2)。これらの突然変異型はRT遺伝子の199塩基対セグメント内にEMS誘導性の点突然変異を含有するものとして選択され、これはGS−FLX Genome Sequencer(Roche, 454 Life Sciences)の平均解読長内であった。
【0041】
格子における1440個の植物全ての花序における4番目、5番目及び6番目の花節における苞葉から組織サンプリングを行った。4番目の花節はブロックを表し、5番目の花節は行を表し、6番目の花節は列を表していた。それぞれの植物及びそれぞれの試料で等量の組織を採取することに注意した。組織試料をそれらの座標に従ってプールし、9+10+16=35個の組織プールを得た。これらのプールした組織をホモジナイズした後、ゲノムDNAを抽出した。これにより、1440個の植物全てが35個のDNA試料で表された。したがってプーリングのレベルは、1つの行当たり1440/9=160個の植物、1つのブロック当たり1440/10=144個の植物、及び1つの列当たり1440/16=90個の植物に対応している。
【0042】
これらの35個のDNA試料のそれぞれの中で、RT遺伝子の特異的な199bpセグメント(図4)を、RT特異的プライマーを使用するPCRによって増幅した。これらのプライマーは、特異的な5塩基のヌクレオチド配列(以下タグと呼ぶ)によって5’末端で伸長し、格子における35個の座標それぞれがタグの異なる配列によって規定された。プライマーは、M1親に由来するRT対立遺伝子のみを増幅するように設計し、このRT対立遺伝子は表現型によるスクリーニングによって同定されたEMS誘導性の点突然変異を保有しているとされる。得られる35個のPCR産物集合は、DNA試料を構成していた個々の植物由来の産物の混合物である。35個のPCR産物全てをプールし、GS−FLX Genome Analyzer(Roche)でシークエンシングして、総数549646個の個々の配列解読を得た。個々の解読は、RT特異的な増幅プライマーの配列の直前に座標特異的な5’タグを保有するので、格子の35個の単一座標の1つを割り当てることができる。特定の配列変異型(すなわちEMS誘導性の点突然変異)により、3つの座標軸(例えばx1、y1、z1)の特有の組合せが生じる場合、この変異型を個々の植物1つに対する実際の(true)点突然変異として割り当てることができる。ペチュニアのこの特定の実施例において、4番目の花序節を超えた組織からDNA試料を採取していれば、1つだけ(又は稀に2つの)座標で生じる他の突然変異は全てシークエンシングエラーであるといえる。
【0043】
格子の所定の位置に含まれていた既知の配列を有する3つのRT突然変異型に関して(m1、m2及びm17、図3)、これらの特定のヌクレオチド突然変異を、突然変異型塩基を含んでいた12個の塩基配列ストリングの完全な適合を求めることによって配列のデータセットにおいて探査した。これらの探査は、順(5’→3’)方向及び逆相補(3’→5’)方向の両方で行った。続いて、突然変異型塩基を含有していた配列解読の中で、5塩基タグを同定し計測した。図5から分かるように、これらの植物の位置は、(x、y、z)座標の特有の組合せによって容易に同定することができ、ここで突然変異が、任意の他の座標よりも非常に高い頻度で発生した。これらのデータは、安定した突然変異型植物を、表現型による選択をせずに、総数1440個の植物から正しく同定することができることを示している。植物のこの数は増やすことができる。
【0044】
材料及び方法
EMS突然変異誘発
(W5×M1)F1ハイブリッドのペチュニアの乾燥種子(およそ5000個の種子)360mgを、10mlの試験管中の0.5%(v/v)エチルメタンスルホン酸(EMS、Sigma-Aldrich)5mlに浸漬させ、十分に混合した。種子を室温で14時間EMS溶液中に置いた。それから種子を、水10mlで10回十分に洗浄し、土の上に播種した。苗木が2つの第一本葉をつけた後、苗木を40ポット(8×5)トレーに移し、2008年1月に温室内で三次元格子状に配置した。苗木を24℃で明期16時間で成長させた。
【0045】
RT突然変異型のキメラ植物のサンガーシークエンシング
個々の植物の5番目の花の下にある苞葉組織を採取した。全ゲノムDNAをQiagenのDNeasy植物ミニキットを使用して単離した。完全なRTコード配列を、それぞれRT遺伝子の5’及び3’非コードリーダー及びトレーラーに位置しているプライマー08A281及び08A282を使用してPCR増幅した(表1を参照されたい)。反応液は、総量50μlで、25pmolの各プライマー、0.2mMのdNTP、1×PCR緩衝液、50ngのゲノムDNA、1ユニットのAmpliTaq Gold DNAポリメラーゼ(Applied Biosystems)から成っていた。熱サイクルは、最初の95℃で10分間の後に、95℃で30秒、55℃で60秒、72℃で60秒を35サイクル、その後最終伸長を72℃で6分行った。産物をアガロースゲル電気泳動での単一バンドとして確認し、細菌プラスミドベクターでクローン化した。標準的なサンガー連鎖ターミネータ法を利用して、20個の無作為にピックアップしたコロニー由来の組み換えプラスミドを自動キャピラリシーケンサを使用してシークエンシングした。同じ塩基変化が20個の配列集合で3回以上起こった場合、EMS誘導性の突然変異(SNP)を表していた。
【0046】
GS FLXシークエンシング法によるハイスループット突然変異検出
植物を温室内の厳密に保持された位置に保った。4番目、5番目又は6番目の花の下にある苞葉を個々の植物それぞれで採取し、このシステムにおける35個の座標に従ってプールした。苞葉組織の35個のプール全てを液体窒素中でホモジナイズし、−80℃で保存した。QiagenのDNeasy植物ミニキットを使用する全ゲノムDNAの単離のために組織粉末試料を採取した。RT遺伝子の単一セグメントのPCR増幅を、表1に列挙されるプライマーを使用して行った。35個の座標それぞれで、それぞれの座標がPCR産物の両方の末端上で単一タグによって特定されるように、同じ5塩基タグを保有する1対のフォワードプライマー及びリバースプライマーを使用した。反応は、総量25μlで、30ngのゲノムDNA、0.5mMのdNTP、25pmolの各プライマー、1ユニットのAmpliTaqDNAポリメラーゼ(Applied Biosystems)を用いて実施した。熱サイクルは、最初の95℃で5分間、その後94℃で30秒、65℃で30秒、72℃で30秒を35サイクル行った。PCR産物を、QIAquick PCR精製キット(Qiagen)を使用して精製し、アガロースゲル電気泳動の後単一バンドとして確認した。
【0047】
25℃で15分間、総量40μlで1mMのdNTPの存在下において0.5ユニットのKlenow酵素と共にインキュベーションすることにより、35個のPCR産物全てを平滑末端化させた(blunt)。最終濃度が10mMになるまでEDTAを添加し、その後72℃で20分間加熱することによって反応を停止させた。それから試料をQIAquick PCR精製キット(Qiagen)を使用して精製し、10mMのTris(pH=8.5)中に溶出した。続いて35個の平滑末端化した産物全てを、37℃で30分間、総量40μlで0.25mMのATPの存在下で20ユニットのT4ポリヌクレオチドキナーゼと共にインキュベーションことにより5’リン酸化させ、その後QIAquick PCR精製キット(Qiagen)を使用して精製し、10mMのTris(pH=8.5)中に溶出した。
【0048】
3Dプール由来の平滑末端化したリン酸化増幅産物を、Margulies et al.(2005)によって記載されたように、454 Life Sciencesの技術を使用してGS−FLXシーケンサ(Roche)でハイスループットシークエンシングを行った。35個のPCR産物全てを、25℃で4時間、総量12μlで、1×リガーゼ緩衝液(Roche Life Sciences、GS DNAライブラリ調製キット)、0.1μlのアダプタ(Roche Life Sciences、GS DNAライブラリ調製キット)及び1WeissユニットのT4 DNAリガーゼにおいてPCR産物50ngをインキュベーションすることにより、454 Life Sciencesのアダプタ配列に別々にライゲーションした。続いて、ライゲーションした産物を、標準的なPCR増幅プライマー(Roche Life Sciences、GS DNAライブラリ調製キット)を使用してPCR増幅した。熱サイクルは、総量25μlで、4μlのライゲーションミックス、0.5mMのdNTP、25pmolの各プライマー、1ユニットのAmpliTaq DNAポリメラーゼ(Applied Biosystems)を用いて行った。熱サイクルは、最初の72℃で60秒、95℃で5分、その後94℃で30秒、55℃で30秒、72℃で30秒を25サイクル行った。増幅産物をアガロースゲル電気泳動で解析し、1つの最終試料にプールした。それからこの試料を、製造業者の取扱説明書に従ってGS−FLX装置(Roche Life Sciences)を使用してプロセシング及びシークエンシングした。
【0049】
配列出力の中で突然変異を検出するために、生の配列(549646個の解読)を、突然変異型m2及びm17に存在するSNP突然変異の存在に関して探査した。ストリング「m2フォワード」:GGTTTAGTTCAG[配列番号1]及び「m2リバース」:CTGAACTAAACC[配列番号2]、並びに「m17フォワード」:GGTGACCAGATT[配列番号3]及び「m17リバース」:AATCTGGTGACC[配列番号4]に対する100%適合を同定することによって探査を行った。これらのストリングに適合した解読を、座標同定のためにこれらの5’タグの配列に従って分類し、計測した。それから図5のように計測値を表示した。
【0050】
参考資料
Spelt C, Quattrocchio F, MoI JN, Koes R. (2000) Anthocyanini of petunia encodes a basic helix-loop-helix protein that directly activates transcription of structural anthocyanin genes. Plant Cell 12(9): 1619-32.

Brugliera F, Holton TA, Stevenson TW, Farcy E, Lu CY, Cornish EC. (1994) Isolation and characterization of a cDNA clone corresponding to the Rt locus of Petunia hybrida. Plant J. 5(1):81-92.

Kroon J, Souer E, de Graaff A, Xue Y, MoI J, Koes R. (1994) Cloning and structural analysis of the anthocyanin pigmentation locus Rt of Petunia hybrida: characterization of insertion sequences in two mutant alleles. Plant J. 5(1):69-80.

Furner I. J., Pumfrey J. E. (1992) Cell fate in the shoot apical meristem of Arabidopsis thaliana. Development 115, 755-764

Margulies M, Egholm M, Altman WE, Attiya S, Bader JS, et al. (2005) Genome sequencing in microfabricated high-density picolitre reactors. Nature 437:376-80
【0051】
【表1−1】

【0052】
【表1−2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物において特異的突然変異を導入及び選択する方法であって、
(a)複数の突然変異種子を準備する工程と、
(b)N次元格子(N≧1)で前記突然変異種子を播種する工程と、
(c)前記種子から植物を成長させる工程と、
(d)前記植物の一部分からDNA含有材料をサンプリングする工程と、
(e)前記N次元格子のN次元の一次元に前記DNA含有材料をプールする工程と、
(f)プールからDNAを単離する工程と、
(g)前記植物の異なる部分で、前記N次元格子の任意の二次元及びさらなる次元に関して工程(d)〜工程(f)を繰り返す工程と、
(h)前記プールのそれぞれで反応産物を得るために、対象となる突然変異位置を含有するDNA(の一部分)を増幅するプライマー組(該プライマーの少なくとも1つがプール特異的タグを含有する)で、前記プールしたDNAを増幅する工程と、
(i)前記反応産物をプールする工程と、
(j)前記反応産物のヌクレオチド配列を決定する工程と、
(k)前記格子においてそれぞれの植物を同定するために、前記プール特異的タグを使用して工程(h)のプールからの前記ヌクレオチド配列をデコンボリューションする工程と、
(l)少なくともN−1個、好ましくはN個のサンプリング部分それぞれで所望の突然変異を保有する植物を選択する工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
選択植物を成長させ、前記突然変異の遺伝を次の世代で確認する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Nが1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、好ましくは2、3、4、5、6、より好ましくは3から成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記植物の一部分が、花、葉、枝、幹、花粉、又は地上に位置する該植物の他の部位及びそれらの組合せから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記一部分が葉又は花、好ましくは本葉である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記格子の一次元に関する部分が第一花又は第一本葉であり、二次元に関する部分が第二本葉であり、三次元に関する部分が第三本葉である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記複数個の種子が少なくとも100個の種子、より好ましくは少なくとも1000個の種子、さらにより好ましくは少なくとも5000個の種子である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
突然変異誘発剤が化学的又は物理的な突然変異誘発剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
化学的な突然変異誘発剤が、EMS、DMS、ENU、MNU、PRC、DEB、MMS、クロラムブシル、メルファラン、アジ化ナトリウム、臭化エチジウム、ブロモウラシル、ブロミン又は亜硝酸から成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
物理的な突然変異誘発剤が、UV放射線、放射性α又はγ放射線等の電離放射線である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記タグが、少なくとも4個のヌクレオチドを含有するヌクレオチドタグであり、好ましくは前記プライマーの5’末端に位置する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
シークエンシングが、ハイスループットシークエンシングに基づく、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
選択植物が所望の表現型の有無と相関がある、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法によって入手可能な突然変異集団。
【請求項15】
植物育種における前記方法の使用。
【請求項16】
前記方法によって誘導及び選択される突然変異を保有する種子。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図3−4】
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【図3−5】
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【図3−6】
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【図3−7】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−539925(P2010−539925A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−526837(P2010−526837)
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【国際出願番号】PCT/NL2008/000209
【国際公開番号】WO2009/041810
【国際公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(508186875)キージーン ナムローゼ フェンノートシャップ (5)
【Fターム(参考)】