説明

犬忌避機能付電柱防護標識板

【課題】電柱に対する犬の放尿を有効に防止し得、ランニングコストを含め低廉なコストで電柱に対する犬の放尿を有効に防止することができる犬忌避機能付電柱防護標識板を提供する。
【解決手段】電柱の存在を注意喚起するための電柱防護標識として機能させる電柱防護標識部1と、前記電柱防護標識部1に対して分割可能にその下方で前記電柱に取り付けられる犬忌避機能部2とを有し、少なくとも前記犬忌避機能部は犬を忌避するための臭いを含む物質を素材3中に含ませた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は犬忌避機能付電柱防護標識板に関し、特に電柱に対する犬の放尿を忌避する場合に適用して有用なものである。
【背景技術】
【0002】
犬が臭い付け等のため電柱、杭、板塀等に放尿する習性を持っていることはよく知られている。中でも電柱は犬のマーキング(放尿)行為の格好の対象となっている。かかる放尿行為が繰り返された場合、尿の強酸性により金属製電柱の根元、地際部が腐食してくる。また、放尿行為の対象となった電柱及びその周辺からは悪臭が発生するとともに不衛生な状況となって、電柱周辺の居住者や店舗を営む事業者等に不快感を与えることになる。
【0003】
かかる不具合を解消するため、電柱の下部周面に装着される取付帯とこの取付帯の外表面から放射状に張り出した枝とで構成され、放射状に張り出した枝により犬を電柱に近づけないようにした電柱への犬の放尿防止用具が提案されている(特許文献1参照)。また、反射面が異形となった付設部材を電柱に取り付け、反射面に写る自身の像が異形となることにより犬が電柱に近づくのを忌避するようにした装置も提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−196753号公報
【特許文献2】特開2005−269961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示されるような電柱への犬の放尿防止用具の構成では、電柱から放射状に張り出した枝が歩行者の歩行や自転車・自動車の走行の妨げとなり、思わぬ怪我や事故を招く等の不具合が考えられる。
【0006】
また、特許文献2では、一定の忌避効果は得られるものの、形状が比較的複雑である等に起因してコスト的に割高なものとならざるを得ず、また車等の接触により簡単に変形、破損する虞もあり、ランニングコストの点で不利な面がある。
【0007】
本発明は、上記従来技術に鑑み、電柱に対する犬の放尿を有効に防止し得、ランニングコストを含め低廉なコストで電柱に対する犬の放尿を有効に防止することができる犬忌避機能付電柱防護標識板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明の第1の態様は、
電柱の存在を注意喚起するための電柱防護標識として機能させる電柱防護標識部と、前記電柱防護標識部に対して分割可能にその下方で前記電柱に取り付けられる犬忌避機能部とを有し、少なくとも前記犬忌避機能部は犬を忌避するための臭いを含む物質を素材中に含ませたことを特徴とする犬忌避機能付電柱防護標識板にある。
【0009】
本態様によれば、従来の電柱防護標識板としての機能は、電柱防護標識部に受け持たせることができる。同時に、電柱防護標識部の下方、すなわち通常犬の鼻に、より近接している部分である犬忌避機能部には犬を忌避するための臭いを含む物質が素材中に含ませてあるので、この部分からは犬を忌避する臭いが発生している。この結果、犬が電柱に近づくのを防止することができる。
【0010】
また、犬忌避機能部は電柱防護標識部と分割して分離することができるようになっているので、時間の経過とともに弱くなる臭いによる犬の忌避効果が有効に機能しなくなった場合には、犬忌避機能部を電柱防護標識部から分離して電柱から取り外すとともに、犬の忌避効果を充分有する新しい犬忌避機能部と容易に取り替えることができる。同様に、既存の電柱防護標識を利用してその下方に犬忌避機能部を追加するだけで容易に全体を犬忌避機能を兼備する電柱防護標識として機能させることができる。
【0011】
本発明の第2の態様は、
第1の態様に記載する犬忌避機能付電柱防護標識板において、前記犬忌避機能は水平方向に亘る切れ目を垂直方向における複数箇所に設けることにより前記切れ目に沿い分割可能に形成されていることを特徴とする犬忌避機能付電柱防護標識板にある。
【0012】
本態様によれば、犬忌避機能部の一部を適当な切れ目に沿って分離することにより電柱防護標識部の下端から電柱の根本までの距離を調節して効果的に犬を忌避し得る位置に犬忌避機能部を配設することができる。
【0013】
本発明の第3の態様は、
第1又は第2の態様に記載する犬忌避機能付電柱防護標識板において、前記素材を樹脂とし、犬を忌避するための臭いを含む物質を前記樹脂中に混入させたことを特徴とする犬忌避機能付電柱防護標識板にある。
【0014】
本態様によれば、犬の忌避臭を容易に樹脂に一体化させることができ、犬忌避機能部を容易且つ安価に形成することができる。
【0015】
本発明の第4の態様は、
第1又は第2の態様に記載する犬忌避機能付電柱防護標識板において、前記素材は多孔質材料として犬を忌避するための臭いを含む物質を前記素材中に含浸させるとともに、下端部を除く左右両端部及び上端部を含め表面をコーティング膜で覆って形成したことを特徴とする犬忌避機能付電柱防護標識板にある。
【0016】
本態様によれば、犬忌避機能部の下端部を除く左右両端部及び上端部を含め表面がコーティング膜で覆われているので、犬の忌避臭は下端部のみから空気中に拡散する。すなわち、犬が放尿の際、必ず鼻を近づける電柱の根本近傍で忌避臭が最も強くなっており、この結果、効果的に犬の放尿行為を忌避することができる。また、必要最小限度の領域に忌避臭を拡散させることができるので、忌避臭が効果的に継続する期間を長期化することができ、ランニングコストが特に安価なものとなる。
【0017】
本発明の第5の態様は、
第1乃至第4の態様の何れか一つに記載する犬忌避機能付電柱防護標識板において、犬を忌避するための臭いを含む物質としてシトロネラ、メントール、カプサイシン、木酢の少なくとも一つを前記素材に含ませたことを特徴とする犬忌避機能付電柱防護標識板にある。
【0018】
本態様によれば、犬の忌避臭を具体的に選択し得るばかりでなく、何れも天然成分であり、人体や他の動植物に対して害を及ぼすことはない。
【発明の効果】
【0019】
従来の電柱防護標識板は、電柱の存在を通行する車両、歩行者等、周囲に注意喚起する目的のため取り付けられている。
【0020】
本発明によれば、従来の電柱防護標識板としての機能は、電柱防護標識部に受け持たせることができ、その上で犬忌避機能部が発する臭いにより犬が電柱に近づくのを防止することができる。この結果、電柱に対する犬の放尿を有効に防止することができ、放尿に伴う金属電柱の腐食や悪臭の発生を防止することができる。
【0021】
ここで、犬忌避機能部は忌避臭を含ませるだけで従来の電柱防護板と同様に作製することができ、また忌避臭の効果が薄れた場合の取り替えも容易であるためランニングコストも安価なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る犬忌避機能付電柱防護標識板を示す正面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る犬忌避機能付電柱防護標識板を電柱に取付けた態様を示す断面図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係る犬忌避機能付電柱防護標識板の犬忌避機能部を示す図で、(a)はその正面図、(b)は横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0024】
図1は本発明の第1の実施の形態に係る犬忌避機能付電柱防護標識板を示す正面図である。同図に示すように、本形態に係る犬忌避機能付電柱防護標識板Iは、電柱防護標識部1と犬忌避機能部2からなる。電柱防護標識部1は、電柱の存在を人、車等に告知して注意を喚起するための従来と同様の電柱防護標識として機能する部分であり、黒地の素材3に垂直方向に伸びる複数の反射板(通常黄色)4を形成したものであり、その上部には「でんきの柱に のぼるのは やめよう」という、特に子供に対するメッセージが記載されている。
【0025】
犬忌避機能部2は電柱防護標識部1に対して分割可能にその下方で電柱に取り付けられるよう電柱防護標識部1との間に水平に伸びるミシン目の分割線5が形成してある。本形態における犬忌避機能部2は電柱防護標識部1と同様の素材3で一体的に形成されており、その表面には反射板4と同様の反射板6が形成されている。ここで、犬忌避機能部2は水平方向に亘る切れ目7を垂直方向における複数箇所(図では3箇所)に設けることにより切れ目7に沿い分割可能に形成されている。このように切れ目7を形成することは必須ではないが、一部を適当な切れ目7に沿って分離することにより電柱防護標識部1の下端から電柱の根本までの距離を調節して効果的に犬を忌避し得る位置に犬忌避機能部2を配設することができる。
【0026】
また、素材3は、例えば黒色ポリエチレン樹脂で好適に形成することができ、本形態の場合にはこのポリエチレン樹脂中に犬を忌避するための臭いを含む物質を混入させてある。この場合、犬の忌避臭を容易に素材3内に一体化させることができ、犬忌避機能部を容易且つ安価に形成することができる。この結果、本形態に係る犬忌避機能付電柱防護標識板はその全体から犬を忌避するための臭いが周囲に拡散されている。この場合の犬を忌避するための臭いを含む物質としては、シトロネラ、メントール、カプサイシン、木酢等が好適である。これらの物質は何れも天然成分であり、犬忌避臭として機能するばかりでなく、人体や他の動植物に対して害を及ぼすことはないという効果も奏する。なお、犬忌避機能部2の上部には、「ペットの オシッコ ご遠慮下さい」というペットの飼い主に対するメッセージが記載されている。
【0027】
かかる犬忌避機能付電柱防護標識板Iには電柱に締結する際のバンドを通すための孔8が左右両端部の垂直方向にそれぞれ複数個形成されている。本形態では、電柱防護標識部1の上下部に二組、犬忌避機能部2の切れ目7で分割される各領域(4個の領域)の左右両側に一組づつの孔8が形成されている。
【0028】
図2は当該犬忌避機能付電柱防護標識板を電柱に取付けた態様を示す断面図である。同図に示すように、犬忌避機能付電柱防護標識板Iは電柱9の表面に沿わせて当接させてあり、この状態で孔8を挿通させたバンド10の両端部をボルト・ナット等の締結部材11で締結することにより電柱9に固定してある。したがって、犬忌避機能付電柱防護標識板Iの全体としての交換、又は犬忌避機能部2の選択的な交換の場合には、締結部材11を緩めることにより容易に取り外すことができる。
【0029】
本形態によれば、従来の電柱防護標識板としての機能は、電柱防護標識部1に受け持たせることができる。同時に、当該犬忌避機能付電柱防護標識板Iからは犬を忌避するための臭いが周囲に拡散しているので、犬が電柱9に近づくのを防止することができる。
【0030】
また、犬忌避機能部2は電柱防護標識部1と分割して分離することができるようになっているので、時間の経過とともに弱くなる臭いによる犬の忌避効果が有効に機能しなくなった場合には、犬忌避機能部2を電柱防護標識部1から分離して電柱9から取り外すとともに、犬の忌避効果を充分有する新しい犬忌避機能部2と取り替えれば良い。
【0031】
同様に、既存の電柱防護標識を利用してその下方に犬忌避機能部2を追加して取付けるだけで容易に全体を犬忌避機能を兼備する電柱防護標識として機能させることができる。
【0032】
図3は本発明の第2の実施の形態に係る犬忌避機能付電柱防護標識板の犬忌避機能部を示す図で、(a)はその正面図、(b)は横断面図である。両図に示すように、本形態における犬忌避機能付電柱防護標識板IIの犬忌避機能部22はその素材23を多孔質材料として犬を忌避するための臭いを含む物質を素材23中に含浸させるとともに、下端部を除く左右両端部及び上端部を含め表面を透明のコーティング膜24で覆って形成したものである。すなわち、下端部のみが大気中に臨む構造となっており、この部分が犬の忌避臭の拡散のための開口部となっている。
【0033】
ここで、コーティング膜24は切れ目7に沿って簡単に破ることができる材質及び厚さとなっている。これらの点を除き黒地の素材23上に第1の実施の形態と同様に反射板6が形成され、またバンド10(図2参照)を通すための孔8が設けられている。
【0034】
本態様によれば、犬忌避機能部22の下端部を除く左右両端部及び上端部を含め表面がコーティング膜24で覆われているので、犬の忌避臭は下端部のみから空気中に拡散する。すなわち、犬が放尿の際、必ず鼻を近づける電柱9(図2参照)の根本近傍で忌避臭が最も強くなっており、この結果、効果的に犬の放尿行為を忌避することができる。また、コーティング膜24が撥水膜としても機能し、素材23中に染み込むのを防止することができるので、雨水による含浸物質の希釈化を有効に防止して必要最小限度の領域に忌避臭を拡散させることができ、忌避臭が効果的に継続する期間を長期化することができ、ランニングコストが特に安価なものとなる。
【0035】
なお、第1の実施の形態では電柱防護標識部1と、犬忌避機能部2とが一体の場合に関して説明したが、両者は最初から別体であっても構わない。すなわち、既設の電柱防護標識の下方に犬忌避機能部2のみを取付けることにより全体を本発明の犬忌避機能付電柱防護標識板として機能させることもできる。また、犬忌避機能部2には反射板6を設ける必要は必ずしもない。電柱防護標識部1に反射板4が設けられていれば電柱9(図2参照)の存在を通行する車両、歩行者等、周囲に注意喚起する目的は最低限発揮されるからである。ちなみに、電柱防護標識部1は乗用車が下向きにヘッドライトを点灯した際、反射板4からの反射光がドライバーに認識されるように、電柱9の地際から例えば60cm程度の位置にその下端が位置するように取付けられる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は電柱を所有する電力業界等の産業分野において利用することができる。
【符号の説明】
【0037】
I、II 犬忌避機能付電柱防護標識板
1 電柱防護標識部
2、22 犬忌避機能部
3、23 素材
4、6 反射板
5 分割線
7 切れ目
9 電柱
24 コーティング膜



【特許請求の範囲】
【請求項1】
電柱の存在を注意喚起するための電柱防護標識として機能させる電柱防護標識部と、
前記電柱防護標識部に対して分割可能にその下方で前記電柱に取り付けられる犬忌避機能部とを有し、
少なくとも前記犬忌避機能部は犬を忌避するための臭いを含む物質を素材中に含ませたことを特徴とする犬忌避機能付電柱防護標識板。
【請求項2】
請求項1に記載する犬忌避機能付電柱防護標識板において、
前記犬忌避機能部は水平方向に亘る切れ目を垂直方向における複数箇所に設けることにより前記切れ目に沿い分割可能に形成されていることを特徴とする犬忌避機能付電柱防護標識板。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載する犬忌避機能付電柱防護標識板において、
前記素材を樹脂とし、犬を忌避するための臭いを含む物質を前記樹脂中に混入させたことを特徴とする犬忌避機能付電柱防護標識板。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載する犬忌避機能付電柱防護標識板において、
前記素材は多孔質材料として犬を忌避するための臭いを含む物質を前記素材中に含浸させるとともに、下端部を除く左右両端部及び上端部を含め表面をコーティング膜で覆って形成したことを特徴とする犬忌避機能付電柱防護標識板。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか一つに記載する犬忌避機能付電柱防護標識板において、
犬を忌避するための臭いを含む物質としてシトロネラ、メントール、カプサイシン、木酢の少なくとも一つを前記素材に含ませたことを特徴とする犬忌避機能付電柱防護標識板。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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