説明

犬猫用忌避剤

【課題】優れた忌避効果を発現するとともに、生体に対する安全性に優れ、不快な臭気を発しない犬猫用忌避剤を提供すること。
【解決手段】有効成分として、イソトリデシルアルコールを含有してなる犬猫用忌避剤、さらにシンナミックアルデヒドおよびリモネンの少なくとも1種を含有する前記犬猫用忌避剤、ならびに有効成分として、シンナミックアルデヒドおよびリモネンを含有してなる犬猫用忌避剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、犬猫用忌避剤に関する。さらに詳しくは、犬猫に対して優れた忌避効果を発現する犬猫用忌避剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、犬および猫による被害が問題となっている。例えば、家庭での残飯、不用物などが入っているポリ袋、紙袋などの廃棄物をゴミ収集場所に廃棄した後、ゴミ収集車がこれを回収する前に犬や猫が食い破り、その中の残飯などが路上に散乱し、悪臭を放ったり、路面が不衛生となることがある。また、野犬などによる咬傷事件や、公園などの砂場で猫が糞尿をすることが社会問題として取りあげられている。
【0003】
そこで、近年、例えば、タバコのヤニや葉を有効成分とする忌避剤(例えば、特許文献1および2参照)、ケロシンを有効成分として含有する忌避剤(例えば、特許文献3参照)、レモングラス油を主成分とする忌避剤(例えば、特許文献4参照)、リモネンを有効成分とする忌避剤(例えば、特許文献5参照)、シンナミックアルデヒドを含有する忌避剤(例えば、特許文献6参照)などの種々の犬猫用忌避剤が開発されている。
【0004】
前記忌避剤は、確かにある程度の忌避効果があるが、近年、さらに一層優れた忌避効果を発現し、生体に対する安全性に優れ、不快な臭気を発しない犬猫用忌避剤の開発が望まれている。
【0005】
【特許文献1】特開昭58−134008号公報
【特許文献2】特開2002−114619号公報
【特許文献3】特開平7−247207号公報
【特許文献4】特開昭57−74158号公報
【特許文献5】特開平3−31203号公報
【特許文献6】特開平7−327575号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、優れた忌避効果を発現するとともに、生体に対する安全性に優れ、不快な臭気を発しない犬猫用忌避剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
(1)有効成分として、イソトリデシルアルコールを含有してなる犬猫用忌避剤、
(2)さらに、シンナミックアルデヒドおよびリモネンの少なくとも1種を含有する前記犬猫用忌避剤、ならびに
(3)有効成分として、シンナミックアルデヒドおよびリモネンを含有してなる犬猫用忌避剤
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の犬猫用忌避剤によれば、優れた忌避効果を発現するとともに、生体に対する安全性に優れ、不快な臭気を発しないという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の第1の犬猫用忌避剤は、前記したように、有効成分として、イソトリデシルアルコールを含有するか、またはさらに有効成分として、シンナミックアルデヒドおよびリモネンの少なくとも1種を含有するものである。このように、本発明の犬猫用忌避剤は、有効成分として、生体に対する安全性に優れ、不快な臭気を発しないイソトリデシルアルコールを含有するので、優れた犬猫の忌避効果を発現するとともに、生体に対する安全性に優れ、不快な臭気を発しないという効果を発現する。なお、イソトリデシルアルコールは、商業的に容易に入手しうる化合物である。
【0010】
犬猫用忌避剤におけるイソトリデシルアルコールの含有量は、その犬猫用忌避剤の使用態様などによって異なるので一概には決定することができないが、通常、犬猫の忌避効果を十分に発現させる観点および臭気が強くならないようにする観点から、0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜5重量%であることが望ましい。
【0011】
また、イソトリデシルアルコールは、シンナミックアルデヒドおよびリモネンの少なくとも1種(以下、併用有効成分という)と併用することができる。このように、イソトリデシルアルコールと併用有効成分とを併用した場合には、両者併用による相乗効果として、それらの成分を単独で使用した場合と対比して、犬猫の忌避効果をより一層高めることができる。
【0012】
イソトリデシルアルコールと併用有効成分とを併用した場合の具体的な態様としては、(1)イソトリデシルアルコールとシンナミックアルデヒドとの併用、(2)イソトリデシルアルコールとリモネンとの併用、および(3)イソトリデシルアルコールとシンナミックアルデヒドとリモネンとの併用が挙げられ、これらの態様は、いずれも、併用による相乗効果として、優れた犬猫の忌避効果を発現する。これらの態様の中では、優れた犬猫の忌避効果を発現させる観点から、イソトリデシルアルコールとシンナミックアルデヒドとリモネンとの併用が好ましい。
【0013】
シンナミックアルデヒドは、天然に産出され、生体に対する安全性が高く、不快な臭気を発しない成分であり、例えば、ケイヒ油(カシア油)、日本産ケイヒ油(肉桂脂)、シンナモン油(セイロンシナモン油)などのクスノキ科植物の精油に多く含まれる成分である。本発明においては、これらの精油をそのまま用いることができるほか、これらの精油から抽出されたシンナミックアルデヒドを用いることもできる。なお、シンナミックアルデヒドは、商業的に容易に入手しうる化合物である。
【0014】
リモネンは、シンナミックアルデヒドと同様に、天然に産出され、生体に対する安全性が高く、不快な臭気を発しない成分である。リモネンは、例えば、ライム油、オレンジ油、グレープフルーツ油、ベルガモット油、マンダリン油、レモン油などのミカン科植物の精油や、ハッカ油、スペアミント油などのシソ科植物の精油などに含まれている。本発明においては、これらの精油をそのまま用いることができるほか、これらの精油から抽出されたリモネンを用いることもできる。なお、リモネンは、商業的に容易に入手しうる化合物である。
【0015】
イソトリデシルアルコールと併用有効成分とを併用する場合、両者の割合(イソトリデシルアルコール/併用有効成分:重量比)は、両者併用による相乗効果として、犬猫の忌避効果を十分に発現させる観点から、1/10〜10/1、好ましくは1/2〜1/1であることが望ましい。
【0016】
犬猫用忌避剤におけるイソトリデシルアルコールと併用有効成分との合計含有量は、その犬猫用忌避剤の使用態様などによって異なるので一概には決定することができないが、通常、0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜5重量%であることが望ましい。
【0017】
本発明の第2の犬猫用忌避剤は、前記したように、有効成分として、シンナミックアルデヒドおよびリモネンを含有するものである。本発明の犬猫用忌避剤は、このように、有効成分として、シンナミックアルデヒドとリモネンとが併用されているので、両者併用による相乗効果として、それらを単独で使用した場合と対比して、犬猫の忌避効果をより一層高めることができる。
【0018】
シンナミックアルデヒドとリモネンとの割合(シンナミックアルデヒド/リモネン:重量比)は、両者併用による相乗効果として、犬猫の忌避効果を十分に発現させる観点から、1/10〜10/1、好ましくは1/1〜3/1であることが望ましい。
【0019】
また、犬猫用忌避剤におけるシンナミックアルデヒドとリモネンとの合計含有量は、その犬猫用忌避剤の使用態様などによって異なるので一概には決定することができないが、通常、0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜5重量%であることが望ましい。
【0020】
本発明の犬猫用忌避剤には、必要により、例えば、マスキング剤、防腐剤、防黴剤、殺菌剤、消臭剤、酸化防止剤、安定化剤、誤食防止剤、着色剤などの添加剤を適宜含有させることができる。添加剤の量は、その種類などによって異なるので一概には決定することができない。通常、添加剤の量は、本発明の目的が阻害されない範囲で調整することが好ましい。
【0021】
本発明の犬猫用忌避剤の剤型としては、例えば、粒剤、粉剤、乳剤、エアゾール剤などが挙げられるが、本発明は、かかる提示のみに限定されるものではない。これらは、いずれも、その使用の簡便性に優れている。
【0022】
液剤としては、例えば、アルコール類、石油類、水などの溶媒に、有効成分および必要により添加剤を適量で溶解させたり、分散させることにより、調製することができる。なお、溶媒として、水を用いる場合には、界面活性剤を適量で用いることができる。
【0023】
エアゾール剤は、例えば、前記液剤と、LPG(液化石油ガス)、DME(ジメチルエーテル)、LPGとDMEとの混合ガスなどの噴射剤を、ブリキ製やアルミニウム製などの耐圧容器内に充填し、バルブを取付けることによって製造することができる。
【0024】
粒剤としては、例えば、粒子状の多孔質担体に本発明における有効成分を担持させたもの、粒子状の多孔質担体に有効成分の溶液を含浸させたもの、ゼオライト、ベントナイト、ケイ藻土、ケイ砂、タルクなどの無機粉体やナイロンパウダー、セルロースパウダーなどの有機粉体をグリセリン、エチレングリコールなどの多価アルコール類やポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコールなどからなる粘結剤で練り固めた担体に有効成分の溶液を含浸させたものなどが挙げられる。
【0025】
かくして得られる本発明の犬猫用忌避剤は、前記したように、優れた忌避効果を発現するとともに、生体に対する安全性に優れ、不快な臭気を発しないので、例えば、一般家庭用ゴミを収集する際には、使用されるポリ袋や紙袋内に散布したり、その外表面に直接付着させることによって使用することができ、また、公園などの砂場などに猫が排泄をするのを防止する場合には、その砂場などに直接散布することによって使用することができる。
【実施例】
【0026】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0027】
実施例1〜5および比較例1〜4
表1に示す各成分を表1に示す割合で混合し、液状の犬猫用忌避剤を調製した。得られた犬猫用忌避剤の臭気および忌避効果を以下の方法に基づいて調べた。その結果を表1に示す。
【0028】
(1)臭気
得られた犬猫用忌避剤0.01gを滴下した2×4cmのろ紙を500mL容のガラス瓶に入れた後、その臭気を男性5名および女性5名の計10名に嗅いでもらい、以下の判定基準に基づいて評価を行った。
【0029】
(評価基準)
○:不快な臭気を感じると判断した人数が2名以下
△:不快な臭気を感じると判断した人数が5〜3名
×:不快な臭気を感じると判断した人数が6名以上
【0030】
(2)忌避効果
犬猫用忌避剤0.1gを滴下した2×4cmのろ紙を、成猫用ペットフード150gを入れた食餌皿(ポリ容器製、直径10cm)の内側面に貼りつけた(以下、処理区という)。
【0031】
また、対照として、無処理のろ紙を、成猫用ペットフード150gを入れた食餌皿(ポリ容器製、直径10cm)の内側面に貼りつけた(以下、無処理区という)。
【0032】
次に、これらの食餌皿を200cm×200cm×200cmの大きさの猫飼育用小屋の床面の中央部分に設置した後、1日間絶食状態にしておいた猫(雌、5才位)4匹を猫飼育用小屋に入れて猫に餌を与え、1日経過後に、猫の食餌を終了した。
【0033】
食餌終了後の食餌皿を猫飼育用小屋から取り出し、餌の残存率を式:
〔餌の残存率〕
=〔試験後の餌重量(g)/試験前の餌重量(g)〕×100
に基づいて計算し、忌避効果を評価した。
【0034】
【表1】

【0035】
表1に示された結果から、各実施例で得られた忌避剤は、いずれも不快な臭気を発せず、しかも比較例1〜2で得られたイソトリデシルアルコールのみを含有する忌避剤およびリモネンのみを含有する忌避剤と対比して、猫に対する忌避効果に優れていることがわかる。また、各実施例で得られた忌避剤は、猫に対して優れた忌避効果を発現することから、犬に対して優れた忌避効果を奏するものと判断される。
【0036】
また、表1に示された結果から、前記忌避剤のなかでは、イソトリデシルアルコールとリモネンを含有する忌避剤、イソトリデシルアルコールとシンナミックアルデヒドを含有する忌避剤、およびシンナミックアルデヒドとリモネンを含有する忌避剤、特に、イソトリデシルアルコールとリモネンを含有する忌避剤は、より優れた忌避効果を奏するものであることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分として、イソトリデシルアルコールを含有してなる犬猫用忌避剤。
【請求項2】
さらに、シンナミックアルデヒドおよびリモネンの少なくとも1種を含有する請求項1記載の犬猫用忌避剤。
【請求項3】
有効成分として、シンナミックアルデヒドおよびリモネンを含有してなる犬猫用忌避剤。

【公開番号】特開2006−96681(P2006−96681A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−282154(P2004−282154)
【出願日】平成16年9月28日(2004.9.28)
【出願人】(000112853)フマキラー株式会社 (155)
【出願人】(504365032)田口化学産業株式会社 (1)
【出願人】(504365043)宮坂香料株式会社 (1)
【Fターム(参考)】