説明

状態判定装置、状態判定方法及びプログラム

【課題】平常と非平常のデータ区間に重なりがあっても平常/非平常の判定を正確に行えるようにし、これにより誤報の発生を減らす。
【解決手段】学習フェーズにおいて、センサデータの度数分布の区間ごとの非平常発生確率を算出すると共に、過去の複数の計測タイミングにおけるセンサデータとユーザ自身が設定したアノテーション情報をもとにHMMモデルの学習を行い、上記算出された非平常発生確率とHMMモデルの学習結果をもとに重み係数及びしきい値を設定する。次に判定フェーズにおいて、取得されたセンサデータをもとに数値的特徴に対する処理による非平常発生確率を算出すると共に、時系列的特徴に対する処理による各計測タイミングでの非平常発生確率を算出し、これらを上記設定された重み係数を用いて加重平均し、その結果を上記設定されたしきい値と比較することにより平常か非平常かを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ユーザの状態や環境の状態をセンシングしてその状態が平常であるか又は非平常であるかを判定するための装置、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ユーザが身に付けたセンサにより得られるセンサデータをもとに当該ユーザの日常的な平常/非平常を判定し、その判定結果をもとにユーザの健康管理を行う方法が提案されている。例えば、ユーザが日常の生活をおくる中で、ユーザが身に付けているセンサにより得られた過去のセンサデータ値をもとにしきい値を決定し、最新のセンサデータについて上記しきい値をもとに平常/非平常を判定する。上記しきい値は、一定の時間間隔で得られた過去のセンサデータ値と、当該センサデータ値が得られた時点でのユーザの主観的判断による平常/非平常のアノテーションから、平常及び非平常時データの統計分布が最もよく乖離する位置に設定される。
【0003】
そして、平常/非平常の判定結果が正常の場合には、一定の周期(例えば毎月)でその健康状態を表すデータをユーザの端末と契約医師や病院の端末へ送信する。これに対し、判定結果が異常の場合には、当該データを直ちにユーザの端末と契約医師や病院の端末へ送信すると共に、健康状態を監視する装置とユーザの携帯端末に表示する。このシステムを利用すると、病院等で受診しなくてもユーザの日常的な平常/非平常を検知することが可能となる(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−150718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、前記従来の判定方法では、各時点におけるセンサデータの単発的な値をしきい値と比較することにより平常/非平常の判定が行われる。このため、平常と非平常のデータ区間に重なりがあると、平常/非平常の誤判定が増加して誤報が増えるという問題点があった。
この発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、平常と非平常のデータ区間に重なりがあっても平常/非平常の判定を正確に行えるようにし、これにより誤報の発生を減らした状態判定装置、状態判定方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためにこの発明の第1の観点は、以下のような構成要素を備えている。すなわち、監視対象の状態を計測するセンサから当該計測結果を表すセンサデータを受信して記憶すると共に、複数の計測時点における前記監視対象物の状態を表すアノテーション情報を受信して記憶する。そして、上記記憶されたセンサデータをもとにその度数分布を表す情報を生成してこの度数分布を複数の区間に分け、これらの区間ごとに上記アノテーション情報をもとに第1の非平常発生確率を算出して、この算出された第1の非平常発生確率をもとに数値的特徴に対する処理による第2の非平常発生確率を算出する。また、上記センサデータ及びアノテーション情報をもとに平常/非平常を二つの隠れ状態とした確率モデルを学習し、この学習された確率モデルをもとに時系列的特徴に対する処理による前記各計測時点での第3の非平常発生確率を算出する。そして、予め設定した重み係数を用いて、前記算出された第2の非平常発生確率と前記各計測時点での第3の非平常発生確率との加重平均値を算出し、この算出された加重平均値を予め設定されたしきい値と比較することにより、前記計測時点ごとに前記監視対象の状態が平常か非平常かを判定する。
【0007】
したがって、平常と非平常のデータ区間に重なりがあっても平常/非平常の判定を正確に行えるようになり、その結果数値的特徴に対する処理による非平常発生確率のみをもとに平常か非平常かを判定する場合に比べ、高精度の平常/非平常判定を行うことが可能となる。
【0008】
また、この発明の一観点は以下のような態様を備えることを特徴とする。
第1の態様は、第2の非平常発生確率を算出する際に、記憶されたセンサデータを前記分けられた区間ごとに量子化し、この量子化されたセンサデータの該当する区間と同じ区間における第1の非平常発生確率を数値的特徴に対する処理による第2の非平常発生確率として出力するものである。
このようにすると、特別な演算処理を必要とすることなく第2の非平常発生確率を求めることができる。
【0009】
第2の態様は、確率モデルを学習する際に、前記複数の区間に分けられたセンサデータを、前記区間ごとに前記監視対象の状態が平常から平常、平常から非平常、非平常から非平常、非平常から平常へ遷移する時に生成される4種類のセンサデータに分類し、この4種類に分類されたセンサデータを用いて前記各区間における確率モデルの各遷移確率を求めるものである。
このようにすると4種類のセンサデータを取り扱えばよいので、比較的簡単な処理により確率モデルの学習を行うことができる。
【0010】
第3の態様は、第3の非平常発生確率を算出する際に、先ず記憶されたセンサデータの中から特定の時間窓に対応する時系列データを抽出して、この抽出された時系列データに対し前記学習された確率モデルを用いて想定し得るすべての状態系列の発生確率を算出する。次に、この算出された状態系列の発生確率の総和を算出すると共に、前記算出された状態系列の発生確率のうち平常/非平常の判定対象としている時間区間において非平常の状態をとっているものの発生確率の総和を算出し、これらの算出された発生確率の総和の比により非平常発生確率を求めて、この求められた非平常発生確率を時系列的特徴に対する処理による前記各計測時点での第3の非平常発生確率として出力するものである。
このようにすると、時間窓を適宜設定することで、時系列的特徴に対する処理による非平常発生確率を、処理負荷を抑えつつ精度良く算出することが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
すなわちこの発明によれば、平常と非平常のデータ区間に重なりがあっても平常/非平常の判定を正確に行えるようにし、これにより誤報の発生を減らした状態推定装置、方法及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の一実施形態における状態判定装置を中核として備える判定システムの概略構成図である。
【図2】この発明の一実施形態における状態推定装置の機能構成を示すブロック図である。
【図3】図2に示した状態推定装置において実行される平常/非平常判定処理の学習フェーズの処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
【図4】図2に示した状態推定装置において実行される平常/非平常判定処理の判定フェーズの処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
【図5】図3に示した学習フェーズ中の非平常発生確率算出処理を説明するための図である。
【図6】図3に示した学習フェーズ中のHMMモデルの学習処理を説明するための図である。
【図7】図3に示した学習フェーズ中のHMMモデルの学習処理を説明するための図である。
【図8】図3に示した学習フェーズ中のHMMモデルの学習処理を、脈拍数を例にとって説明した図である。
【図9】図3に示した学習フェーズ中のしきい値決定処理の第1の実施例を説明するための図である。
【図10】図4に示した判定フェーズ中の、数値的特徴に対する処理による各時点における非平常発生確率算出処理を説明するための図である。
【図11】図4に示した判定フェーズ中の、各状態時系列の発生確率算出処理を説明するための図である。
【図12】図4に示した判定フェーズ中の、平常/非平常判定処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照してこの発明に係わる実施形態を説明する。
この発明の一実施形態における平常/非平常判定システムは、複数のユーザの各々についてその脈拍、体温或いは血圧等のバイタルデータをもとにユーザの状態が平常か非平常かを判定するもので、以下のように構成される。図1はこの平常/非平常判定システムの概略構成図である。
【0014】
すなわち、監視対象となる複数のユーザの各々にはセンサ11〜1nが取着されている。これらのセンサ11〜1nはそれぞれユーザの脈拍、体温或いは血圧等を計測し、その計測データ(センサデータ)を例えば携帯電話網、無線LAN(Local Area Network)又はBT(Blue Tooth)(登録商標)等の無線通信手段を介してデータベースサーバ2へ送信する。データベースサーバ2は、例えば定期的或いは任意のタイミングで上記センサ11〜1nからセンサデータを受信して蓄積する。状態判定装置3はこの判定システムの中核をなすもので、上記データベースサーバ2から例えばインターネット等の通信手段を利用して各ユーザのセンサデータを受信し、このセンサデータに対し後述する判定処理を行ってユーザの状態が平常か非平常かを判定する。そして、その判定結果を表す通知情報を、ユーザ本人が所持又は所有する携帯端末又は固定端末41〜4mへ携帯電話網又はインターネットを含む固定通信網を介して送信する。
【0015】
ところで、状態判定装置3は次のように構成される。図2はその機能構成を示すブロック図である。すなわち、状態判定装置3は例えばパーソナル・コンピュータからなり、入力部31と、記憶部32と、処理部33と、出力部34を備えている。
【0016】
入力部31は、ハードウエアとして、キーボードやマウスを有する入力デバイスと、データベースサーバ2との間で通信を行う通信インタフェースを備える。また、ソフトウエアとして、アノテーション入力部311と、センサデータ入力部312を備えている。
【0017】
アノテーション入力部311は、上記通信インタフェースを用いて前記データベースサーバ2に対しアクセスすることにより、当該データベースサーバ2からアノテーション情報を受信し、この受信したアノテーション情報を記憶部32へ出力する処理を行う。アノテーション情報は、ユーザが携帯端末41又は固定端末42を用いて自ら入力した自身の状態(平常か非平常か)を表す情報とその時刻を表す情報とからなり、この入力情報は携帯端末41又は固定端末42から携帯電話網又はインターネットを含む固定通信網を介してデータベースサーバ2に送られ記憶される。なお、アノテーション情報は、ユーザが状態判定装置2の入力デバイスを用いて入力することも可能である。
【0018】
センサデータ入力部312は、任意の計測タイミング又は予め決められた計測タイミングで上記通信インタフェースを用いて前記データサーバ2に対しアクセスすることにより、当該データサーバ2から判定対象のユーザのセンサデータを取得し、この取得したセンサデータをその計測タイミングを表す情報と共に記憶部32へ出力する処理を行う。
【0019】
記憶部32は、ハードウエアとして例えばハードディスクドライブ又は半導体メモリを備えたもので、これらの記憶媒体により構成される記録領域上に、アノテーション記憶部321と、センサデータ記憶部322と、非平常発生確率記憶部323と、HMM(Hidden Markov Model)モデル記憶部324と、重み係数・しきい値記憶部325を設けている。
【0020】
アノテーション記憶部321は、上記アノテーション入力部311から出力されたアノテーション情報を記憶するために使用される。センサデータ記憶部322は、上記センサデータ入力部312から出力されたセンサデータとその計測タイミングを表す情報を互いに対応付けて記憶するために使用される。
【0021】
非平常発生確率記憶部323は、後述する処理部33により計算される、センサデータの度数分布の各定義域における非平常発生確率を保存するために使用される。HMMモデル記憶部324は、後述する処理部33により計算される、HMMモデルの計算結果を表す情報を保存するために使用される。重み係数・しきい値記憶部325には、後述する処理部33による判定処理に用いる重み係数としきい値が格納される。
【0022】
処理部33は、ハードウエアとしてCPUを有し、ソフトウエアとして非平常発生確率算出処理部331と、HMMモデル学習処理部332と、重み係数・しきい値設定処理部333と、平常/非平常判定処理部334を備えている。
【0023】
非平常発生確率算出処理部331は、以下の各処理を上記CPUに実行させる。
(1) 上記センサデータ記憶部322に記憶されたセンサデータと、上記アノテーション記憶部321に記憶されたアノテーション情報をもとに、当該センサデータの度数分布を表す情報を生成し、この生成されたセンサデータの度数分布を複数の区間に分けてこれらの区間ごとに非平常発生確率を算出する処理。
(2) 上記(1) により算出された、センサデータの度数分布の区間ごとの非平常発生確率をもとに、数値的特徴に対する処理による非平常発生確率を算出する処理。具体的には、上記センサデータ記憶部322に記憶されたセンサデータを上記分割された区間ごとに量子化し、この量子化されたセンサデータの該当する区間と同じ区間における第1の非平常発生確率を数値的特徴に対する処理による第2の非平常発生確率とする。
(3) 後述するHMMモデル学習処理部332により学習されたHMMモデルをもとに、時系列的特徴に対する処理による上記各計測タイミングでの非平常発生確率を算出する処理。具体的には、先ず上記センサデータ記憶部322に記憶されたセンサデータの中から特定の時間窓に対応する時系列データを抽出して、この抽出された時系列データに対し後述するHMMモデルを用いて想定し得るすべての状態系列の発生確率を算出する。次に、この算出された状態系列の発生確率の総和を算出すると共に、上記算出された状態系列の発生確率のうち平常/非平常の判定対象としている時間区間において非平常の状態をとっているものの発生確率の総和を算出し、これらの算出された発生確率の総和の比により非平常発生確率を求めて、この求められた非平常発生確率を時系列的特徴に対する処理による各計測時点での第3の非平常発生確率とする。
【0024】
HMMモデル学習処理部332は、上記センサデータ記憶部322に記憶されたセンサデータと、上記アノテーション記憶部321に記憶されたアノテーション情報をもとに、平常/非平常を二つの隠れ状態としたHMMモデルを学習するための処理を、上記CPUに実行させる。
【0025】
重み係数・しきい値設定処理部333は、平常/非平常の判定に必要な重み係数及びしきい値を設定する処理をCPUに実行させる。この重み係数及びしきい値を設定する処理手法には以下の3種類がある。
(1) 第1の設定処理手法は、システム設計者又はユーザ自身が、入力部31の入力デバイスを操作して手動により重み係数及びしきい値を入力した場合に、この手動入力された重み係数及びしきい値を上記記憶部へ32の重み係数・しきい値記憶部325に記憶させるものである。
(2) 第2の設定処理手法は、重み係数については手動設定し、しきい値については計算により自動設定するものである。
重み係数の設定処理は、上記入力部31の入力デバイスの手動入力操作により入力された値を、上記記憶部へ32の重み係数・しきい値記憶部325に記憶させることによりなされる。しきい値の自動設定処理は、学習用に収集した各センサデータに対し、数値的特徴に対する処理による非平常発生確率と時系列的特徴に対する処理による各計測タイミングにおける非平常発生確率を重み付け平均し、F値を最大にする割合をしきい値として設定することによりなされる。
(3) 第3の設定処理手法は、重み係数及びしきい値の両方を自動設定するものである。この重み係数及びしきい値の自動設定処理は、パーセプトロンによる学習を利用することによりなされる。
【0026】
平常/非平常判定処理部334は、以下の処理をCPUに実行させる。
(1) 上記重み係数・しきい値記憶部325に記憶された重み係数を用いて、上記非平常発生確率算出処理部331により算出された数値的特徴に対する処理による非平常発生確率と、上記時系列的特徴に対する処理による各計測タイミングでの非平常発生確率との加重平均値を算出する処理。
(2) 上記(1) により算出された非平常発生確率の加重平均値を、上記重み係数・しきい値記憶部325に記憶されたしきい値と比較することにより、上記計測タイミングごとにユーザの状態が平常か非平常かを判定する処理。
【0027】
出力部34は、ハードウエアとしては表示デバイスと、通信インタフェースを備える。また、ソフトウエアとしては判定結果通知部341を備える。この判定結果通知部341は、上記処理部33の平常/非平常判定処理部334により得られたユーザの状態の判定結果を表す情報を、上記通信インタフェースから携帯電話網又はインターネットを含む固定通信網を介して携帯端末又は固定端末41〜4mへ送信する処理を行う。
【0028】
次に、以上のように構成された状態判定装置の動作を説明する。
(1)平常/非平常判定処理のための学習フェーズ
この学習フェーズは、平常/非平常判定処理に先立ち判定に必要な重み係数及びしきい値を設定するもので、以下のように行われる。図3はその処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
【0029】
すなわち、先ずユーザのバイタルデータが任意のタイミング又は予め決められたタイミングでセンサ11〜1nにより計測され、この計測されたセンサデータはデータベースサーバ2に送信されて蓄積される。また、ユーザは上記バイタルデータの計測タイミングにおける自身の状態、つまり平常か非平常かを表す情報を、自身の携帯端末41又は固定端末42を用いて主観により入力する。そうすると、この入力された自身の状態を表す情報は、上記計測タイミングを表す情報と共に、アノテーション情報として携帯端末41又は固定端末42から携帯電話網又は固定通信網を介してデータベースサーバ2に送られ、記憶される。
【0030】
さて、この状態で状態判定装置3において学習フェーズが起動すると、先ずステップS31において、入力部31のセンサデータ入力部312及びアノテーション入力部31の制御の下で、データベースサーバ2から上記センサデータ及びアノテーション情報が取得され、それぞれ記憶部32内のセンサデータ記憶部322及びアノテーション記憶部321に保存される。
【0031】
次にステップS32において非平常発生確率算出処理部332が起動し、その制御の下でセンサデータの度数分布の各区間における非平常発生確率の算出が行われる。この非平常発生確率の算出処理は以下のように行われる。
すなわち、先ず上記記憶部32のセンサデータ記憶部322からセンサデータを読み出し、この読み出したセンサデータの度数分布を算出する。そして、この生成されたセンサデータの度数分布を複数の区間に分割する。続いて、記憶部32のアノテーション記憶部321から、上記センサデータと計測タイミングが対応するアノテーション情報を読み出し、この読み出したユーザのアノテーション情報をもとに、上記分割された各区間における平常、非平常の割合から、当該各区間における非平常発生確率を算出する。
【0032】
図5は、脈拍数を例にとった場合のセンサデータの度数分布の各区間における非平常発生確率の算出処理の概要を示すもので、区間ごとに非平常発生確率p1i(i=1,2,…,n)が算出される。同図では、区間1及び区間2における非平常発生確率p11,p12を例示している。なお、i は度数分布における区間の番号、bi は区間i における全センサデータの頻度、ai は区間i における非平常の頻度をそれぞれ示している。
以上のように算出された、センサデータの度数分布の区間ごとの非平常発生確率の値は、ステップS34により記憶部32の非平常発生確率記憶部323に保存される。
【0033】
次に、ステップS33においてHMMモデル学習処理部332が起動し、その制御の下でHMMモデルの学習処理が以下のように行われる。すなわち、先ず平常、非平常の二状態からなるモデルが定義される。図6はこのときのHMMモデルを示す状態遷移図であり、A11(i) 〜A22(i) は区間iにおけるセンサデータを出力しながら状態S1 とS2 との間で遷移する確率である。図7は上記各状態S1 とS2 におけるセンサデータの値の一例を示す。
【0034】
続いて、上記ステップS32において算出されたセンサデータの度数分布と、記憶部32のアノテーション記憶部321に保存されたユーザのアノテーション情報をもとに、HMMモデルの遷移確率が算出される。図8は、脈拍数を例にとったときのHMMモデルの学習処理の概要を示すものである。同図において、c11(i) は平常から平常へ状態遷移する際に区間iに収まる値が出現する頻度、c12(i) は平常から非平常へ状態遷移する際に区間iに収まる値が出現する頻度、c22(i) は非平常から非平常へ状態遷移する際に区間iに収まる値が出現する頻度、c21(i) は非平常から平常へ状態遷移する際に区間iに収まる値が出現する頻度である。そして、これらの頻度c11(i) ,c12(i) ,c22(i) ,c21(i) をもとに、状態遷移の確率A11(i) ,A12(i) ,A22(i) ,A21(i) が以下のように算出される。
【数1】

そして、上記状態遷移の確率A11(i) ,A12(i) ,A22(i) ,A21(i) の算出結果は、HMMモデルの学習結果として、ステップS34により記憶部32のHMMモデル記憶部324に保存される。
【0035】
次に、ステップS35において重み係数・しきい値設定処理部333が起動され、その制御の下で重み係数及びしきい値を設定するための処理が行われる。なお、重み係数及びしきい値の設定方法には、先に述べたようにシステム管理者又はユーザが重み係数及びしきい値の両方を手動設定する第1の設定処理方法と、重み係数のみを手動設定してしきい値は計算により自動設定する第2の設定処理方法と、重み係数及びしきい値の両方を自動設定する第3の設定処理方法があるが、ここでは第2の設定処理方法と第3の設定処理方法について説明する。
【0036】
(第2の設定処理方法)
重み係数・しきい値設定処理部333は、先ず入力部31の入力デバイスにおいてユーザが重み係数w1 ,w2 を入力すると、この入力された重み係数w1 ,w2 を記憶部2内の重み係数・しきい値記憶部325に格納する。
【0037】
次に重み係数・しきい値設定処理部333は、しきい値の自動設定処理を行う。この自動設定処理は、学習用にデータベースサーバ2から取得した各センサデータに対し、数値的特徴に対する処理による非平常発生確率を算出すると共に、時系列的特徴に対する処理による各計測タイミングでの非平常発生確率を算出する。そして、上記算出された数値的特徴に対する処理による非平常発生確率に、上記算出された時系列的特徴に対する処理による非平常発生確率を加重平均し、F値を最大にする割合をしきい値として設定することによりなされる。
【0038】
図9は上記しきい値の自動設定処理の一例を示すものである。同図では、学習用のセンサデータに対して、例えば0.5〜1.0間(刻み幅は1.0又は0.05等に設定される)で、数値的特徴に対する処理による非平常発生確率と、時系列的特徴に対する処理による非平常発生確率をそれぞれ算出している。そして、この各計測タイミングにおいて算出された各非平常発生確率xをしきい値としたときに、最大のF値(Fmax )を与える非平常発生確率zを、しきい値Thとして設定する。すなわち、
【数2】

とする。
【0039】
上記F(x) は(しきい値xでの適合率+しきい値xでの再現率)に対する、(2×しきい値xでの適合率×しきい値xでの再現率)の割合として定義される。ただし、適合率は、学習フェーズで判定した非平常の総数に対する、正解と一致する非平常の検知数の割合として求められる。また再現率は、非平常の正解総数に対する、正解と一致する非平常の検知数の割合として求められる。
上記のように設定されたしきい値Thは、ステップS36により記憶部2内の重み係数・しきい値記憶部325に格納される。
【0040】
(第3の設定処理方法)
この設定処理方法には、パーセプトロンによる学習が用いられる。その学習式は次のように表される。
i,t+1=Wi,t +ΔWi =Wi,t +η(T(t) −y(t) )Pi (t)
ただし、各変数は以下のように表される。
【数3】

上記学習式を用いることで、重み係数w1 ,w2 及びしきい値Thを設定することができ、この設定された重み係数w1 ,w2 及びしきい値ThはステップS36により記憶部2内の重み係数・しきい値記憶部325に格納される。
【0041】
(2)平常/非平常判定処理のための判定フェーズ
上記学習フェーズが終了すると、状態判定装置3では平常/非平常判定処理のための判定フェーズが次のように行われる。図4はその処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
【0042】
すなわち、先ずステップS41においてセンサデータ入力部312が起動し、その制御の下で、データベースサーバ2から最新のセンサデータが取得されて記憶部32内のセンサデータ記憶部322に保存される。なお、上記センサデータの取得は、データベースサーバ2を経由して状態判定装置3に取り込むようにしているが、データベースサーバ2を経由せずにセンサ11〜1nから直接センサデータを状態判定装置3に取り込むようにすることも可能である。
【0043】
次に、ステップS42において非平常発生確率算出処理部331が起動し、その制御の下で、上記最新のセンサデータがセンサデータ記憶部322から読み出される。そして、この読み出された最新のセンサデータの該当するデータ区間が算出される。該当するデータ区間の算出処理は、センサデータ記憶部322から読み出したセンサデータが、予め定められた度数分布の各データの区間の中でどの区間に納まるのかを調べるものである。
この該当するデータ区間の算出が終了すると、続いてステップS43により、当該算出されたセンサデータ区間における非平常発生確率が記憶部32のセンサデータ記録部322から選択的に読み出される。この読み出された非平常発生確率が、数値的特徴に対する処理による非平常発生確率となる。
【0044】
図10は、脈拍数を例にとった場合の、上記該当するデータの区間の算出処理と数値的特徴に対する処理による非平常発生確率の算出処理の概要を示すものである。同図に示すように、先ず時刻tにおけるセンサデータが度数分布の各区間に分類される。続いて、該当する定義域における非平常発生確率P1 (k)が
1 (k)=P1I
として求められる。ただし、Iは時刻tのセンサデータが分類された区間を示すもので、この例では区間「4」である。
【0045】
次に、ステップS44において、各状態時系列の発生確率の算出処理が以下のように行われる。
すなわち、先ず予め設定した特定の窓長を用いてセンサデータを区切る。窓長は5〜7程度の窓長を想定している。この処理も、先に述べた各センサデータの該当するデータの区間の算出処理と同様に、各時点におけるセンサデータを度数分布の各区間に分類し、センサデータ記憶部322から読み出したセンサデータの時系列が納まる、各データ区間の時系列を得ることによりなされる。図11は、脈拍数を例にとった場合のセンサデータの分類処理の一例を示したものである。
【0046】
続いて、特定窓長と同じ長さの状態系列を全時系列に対し用意し、上記ステップS33において学習したHMMモデルをHMMモデル記憶部324から読み出して、各状態系列の発生確率を求める。例えば、状態系列がm通りの場合、入力データ時系列の各点が収まる定義域の時系列と、状態系列発生確率は以下のように表される。
【数4】

【0047】
次に、ステップS45において、時系列的特徴に対する処理による各計測タイミングでの非平常発生確率の算出処理が、以下のように行われる。
すなわち、上述のように求められた各状態系列の発生確率から、先ず1時点ごとの非平常発生確率を算出する。ある1時点に注目し、各状態系列の中から、注目する1時点において非平常の状態をとっている系列の発生確率の総和を分子とし、全ての系列の発生確率の総和を分母として、これを時系列的特徴に対する処理による各時点での非平常発生確率とする。
【0048】
例えば、時系列的特徴に対する処理による時刻kにおける非平常の発生確率をP2 (k) とすると、この非平常発生確率P2 (k) は
【数5】

により算出される。
【0049】
この結果、例えば状態系列がm通りの場合、入力データ時系列の各点が収まる定義域の時系列と、状態系列発生確率は以下のように表される。
【数6】

【0050】
次に、ステップS46において平常/非平常判定処理部334が起動し、その制御の下で以下のように平常/非平常の判定処理が行われる。
すなわち、先ず前記学習フェーズにより設定した重み係数が、記憶部32内の重み係数・しきい値記憶部325から読み出される。そして、先にステップS43において算出された数値的特徴に対する処理による非平常発生確率と、上記ステップS45により算出された時系列的特徴に対する処理による各時点での非平常発生確率を、上記読み出された重み係数を用いて加重平均する処理が行われる。
【0051】
例えば、数値的特徴に対する処理による非平常発生確率をP1(k) とすると共に、時系列的特徴に対する処理による非平常発生確率をP2(k) とし、これらの非平常発生確率P1(k) ,P2(k) に対する重み係数をそれぞれw1 ,w2 とすると、時刻t=kにおける非平常発生確率をP(k) は次式により算出される。
【数7】

【0052】
続いて、記憶部32の重み係数・しきい値記憶部325からしきい値Thが読み出され、この読み出されたしきい値Thを用いて、上記算出された時刻t=kにおける非平常発生確率P(k) がしきい値Th以上であるか否かが判定される。この判定処理を次式に示す。
【数8】

【0053】
すなわち、時刻t=kにおける非平常発生確率P(k) がしきい値Th以上であればこのときのユーザの状態は状態S2と判定され、一方しきい値Th未満であればこのときのユーザの状態は状態S1と判定される。図12は上記平常/非平常判定処理の動作を示すものである。同図に示すように、この実施形態の判定方法によれば、数値的特徴に対する処理による非平常発生確率P1(k) のみで判定せず、窓により切り出された時系列的特徴に対する処理による非平常発生確率P2(k) を考慮して判定が行われるので、ユーザの平常/非平常の判定精度が高められる。
【0054】
最後に、ステップS47において、上記判定結果に基づいてユーザの平常/非平常を表すラベルが生成される。そして、この生成されたユーザの平常/非平常を表すラベルは、出力部34の判定結果通知部341により該当するユーザ端末(例えば携帯端末41)に向け通信インタフェースから送信される。
【0055】
以上述べたようにこの実施形態では、以下のような処理が行われる。すなわち、先ず学習フェーズにおいて、センサデータの度数分布の区間ごとの非平常発生確率を算出すると共に、過去の複数の計測タイミングにおけるセンサデータとユーザ自身が設定した上記各計測タイミングにおけるアノテーション情報をもとにHMMモデルの学習を行い、上記算出された非平常発生確率と上記HMMモデルの学習結果をもとに重み係数及びしきい値を設定する。次に、判定フェーズにおいて、最新の計測タイミングにおけるセンサデータをもとに数値的特徴に対する処理による非平常発生確率を算出すると共に、時系列的特徴に対する処理による各計測タイミングにおける非平常発生確率を算出し、これらの非平常発生確率を上記学習フェーズで設定された重み係数を用いて加重平均し、その結果を上記設定されたしきい値と比較することにより平常か非平常かを判定するようにしている。
したがって、平常と非平常のデータ区間に重なりがあっても平常/非平常の判定を正確に行えるようになり、数値的特徴に対する処理による非平常発生確率のみをもとに平常か非平常かを判定する場合に比べ、高精度の判定を行うことが可能となる。
【0056】
なお、この発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、前記実施形態では、状態判定装置3がデータベースサーバ2からセンサデータ及びアノテーション情報を取得して記憶部32に保存すると、以後この保存されたセンサデータ及びアノテーション情報をもとに学習及び判定のための一連の処理を実行し、その過程で得られた非平常発生確率やHMMモデル、重み係数、しきい値を記憶部32内の各記憶部323〜325に保存するようにした。すなわち、平常/非平常判定のための学習フェーズ及び判定フェーズの一連の処理を状態判定装置3内ですべて実行する場合を例示した。しかし、平常/非平常判定のための学習フェーズ及び判定フェーズの一連の処理を、センサ11〜1n、データベースサーバ2、状態処理装置3及びユーザ端末41〜4mにより分散して実行するように構成してもよい。
【0057】
また、前記実施形態では脈拍のセンサデータをもとにユーザの平常/非平常を判定する場合を例にとって説明したが、他に体温や血圧等のその他のバイタルデータをもとにユーザの平常/非平常を判定するようにしてもよい。また、人に限らず環境の平常/非平常を判定するようにしてもよい。
【0058】
その他、平常/非平常判定処理装置の構成、平常/非平常の判定対象となるセンサデータの種類、学習フェーズ及び判定フェーズの処理手順と処理内容、しきい値の設定方法、確率モデルの種類(HMMモデル以外でもよい)等についても、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施可能である。
【0059】
要するにこの発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0060】
11〜1n…センサ、2…データベースサーバ、3…状態判定装置、41〜4m…ユーザ端末、31…入力部、32…記憶部、33…処理部、34…出力部、311…アノテーション入力部、312…センサデータ入力部、321…アノテーション記憶部、322…センサデータ記憶部、323…非平常発生確率記憶部、325…重み係数・しきい値記憶部、331…非平常発生確率算出処理部、332…HMMモデル学習処理部、333…重み係数・しきい値設定処理部、334…平常/非平常判定処理部、341…判定結果通知部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視対象の状態を計測するセンサから当該計測結果を表すセンサデータを受信し、この受信されたセンサデータを記憶する手段と、
複数の計測時点における前記監視対象物の状態を表すアノテーション情報を受信し、この受信されたアノテーション情報を記憶する手段と、
前記記憶されたセンサデータ及びアノテーション情報をもとに当該センサデータの度数分布を表す情報を生成し、この生成されたセンサデータの度数分布を複数の区間に分けてこれらの区間ごとに第1の非平常発生確率を算出する手段と、
前記記憶されたセンサデータ及びアノテーション情報をもとに、平常/非平常を二つの隠れ状態とした確率モデルを学習する手段と、
前記算出された第1の非平常発生確率をもとに、数値的特徴に対する処理による第2の非平常発生確率を算出する手段と、
前記学習された確率モデルをもとに、時系列的特徴に対する処理による前記各計測時点での第3の非平常発生確率を算出する手段と、
予め設定した重み係数を用いて、前記算出された第2の非平常発生確率と前記各計測時点での第3の非平常発生確率との加重平均値を算出する手段と、
前記算出された加重平均値を予め設定されたしきい値と比較することにより、前記計測時点ごとに前記監視対象の状態が平常か非平常かを判定する手段と
を具備することを特徴とする状態判定装置。
【請求項2】
前記第2の非平常発生確率を算出する手段は、
前記記憶されたセンサデータを前記分けられた区間ごとに量子化する手段と、
前記量子化されたセンサデータの該当する区間と同じ区間における前記第1の非平常発生確率を、数値的特徴に対する処理による第2の非平常発生確率として出力する手段と
を備えることを特徴とする請求項1記載の状態判定装置。
【請求項3】
前記確率モデルを学習する手段は、
前記複数の区間に分けられたセンサデータを、前記区間ごとに前記監視対象の状態が平常から平常、平常から非平常、非平常から非平常、非平常から平常へ遷移する時に生成される4種類のセンサデータに分類する手段と、
前記4種類に分類されたセンサデータを用いて、前記各区間における確率モデルの各遷移確率を求める手段と
を備えることを特徴とする請求項1記載の状態判定装置。
【請求項4】
前記第3の非平常発生確率を算出する手段は、
前記記憶されたセンサデータの中から特定の時間窓に対応する時系列データを抽出し、この抽出された時系列データに対し、前記学習された確率モデルを用いて想定し得るすべての状態系列の発生確率を算出する手段と、
前記算出された状態系列の発生確率の総和を算出し、かつ前記算出された状態系列の発生確率のうち、平常/非平常の判定対象としている時間区間において非平常の状態をとっているものの発生確率の総和を算出する手段と、
前記算出された発生確率の総和の比により非平常発生確率を求め、この求められた非平常発生確率を時系列的特徴に対する処理による前記各計測時点での第3の非平常発生確率として出力する手段と
を備えることを特徴とする請求項1記載の状態判定装置。
【請求項5】
監視対象の状態を計測するセンサから当該計測結果を表すセンサデータを受信し、この受信されたセンサデータを記憶する過程と、
複数の計測時点における前記監視対象物の状態を表すアノテーション情報を受信し、この受信されたアノテーション情報を記憶する過程と、
前記記憶されたセンサデータ及びアノテーション情報をもとに当該センサデータの度数分布を表す情報を生成し、この生成されたセンサデータの度数分布を複数の区間に分けてこれらの区間ごとに第1の非平常発生確率を算出する過程と、
前記記憶されたセンサデータ及びアノテーション情報をもとに、平常/非平常を二つの隠れ状態とした確率モデルを学習する過程と、
前記算出された第1の非平常発生確率をもとに、数値的特徴に対する処理による第2の非平常発生確率を算出する過程と、
前記学習された確率モデルをもとに、時系列的特徴に対する処理による前記各計測時点での第3の非平常発生確率を算出する過程と、
予め設定した重み係数を用いて、前記算出された第2の非平常発生確率と前記各計測時点での第3の非平常発生確率との加重平均値を算出する過程と、
前記算出された加重平均値を予め設定されたしきい値と比較することにより、前記計測時点ごとに前記監視対象の状態が平常か非平常かを判定する過程と
を具備することを特徴とする状態判定方法。
【請求項6】
前記第2の非平常発生確率を算出する過程は、
前記記憶されたセンサデータを前記分けられた区間ごとに量子化する過程と、
前記量子化されたセンサデータの該当する区間と同じ区間における前記第1の非平常発生確率を、数値的特徴に対する処理による第2の非平常発生確率として出力する過程と
を備えることを特徴とする請求項1記載の状態判定方法。
【請求項7】
前記確率モデルを学習する過程は、
前記複数の区間に分けられたセンサデータを、前記区間ごとに前記監視対象の状態が平常から平常、平常から非平常、非平常から非平常、非平常から平常へ遷移する時に生成される4種類のセンサデータに分類する過程と、
前記4種類に分類されたセンサデータを用いて、前記各区間における確率モデルの各遷移確率を求める過程と
を備えることを特徴とする請求項1記載の状態判定方法。
【請求項8】
前記第3の非平常発生確率を算出する過程は、
前記記憶されたセンサデータの中から特定の時間窓に対応する時系列データを抽出し、この抽出された時系列データに対し、前記学習された確率モデルを用いて想定し得るすべての状態系列の発生確率を算出する過程と、
前記算出された状態系列の発生確率の総和を算出し、かつ前記算出された状態系列の発生確率のうち、平常/非平常の判定対象としている時間区間において非平常の状態をとっているものの発生確率の総和を算出する過程と、
前記算出された発生確率の総和の比により非平常発生確率を求め、この求められた非平常発生確率を時系列的特徴に対する処理による前記各計測時点での第3の非平常発生確率として出力する過程と
を備えることを特徴とする請求項1記載の状態判定方法。
【請求項9】
請求項1乃至3のいずれかに記載の状態判定装置が備える各手段に対応する処理を、当該状態判定装置のコンピュータに実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−279644(P2010−279644A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−137360(P2009−137360)
【出願日】平成21年6月8日(2009.6.8)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2009年2月26日 社団法人電子情報通信学会発行の「電子情報通信学会技術研究報告 信学技報 Vol.108 No.462」に発表、平成21年3月10日 社団法人情報処理学会発行の「情報処理学会 第71回全国大会(平成21年)講演論文集」に発表
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】