説明

状態基準修理プロセスで使用するためのシステムおよび方法

【課題】システムまたはコンポーネントの受入状態に基づく固有の、コスト効率の高い(拡張)修理作業範囲を生成する。
【解決手段】コンピューティングデバイス105は、コンポーネントに関連付けられているデータを格納するように構成されているメモリデバイス110と、コンポーネントに関連付けられたデータを受信する入力チャネルと、メモリデバイスおよび入力チャネルに結合されたプロセッサ115を備える。プロセッサ115は、コンポーネントを拡張修理作業範囲に対する候補として評価することの適格性を判定する入力チャネルを介した検査前マニュアルの入力に応じて標準化修理作業範囲および拡張修理作業範囲のうちの一方へのコンポーネントの経路指定を行う。経路指定は、入力チャネルを介してコンポーネント作業範囲経路指定システムに伝送される緊急検査後コンポーネントデータに応じても決定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で説明されている実施形態は、一般に、修理の方法およびプロセスに関するものであり、より具体的には、高価な資産において状態基準修理(condition−based repair)を決定するためのネットワークベースのコンポーネント作業範囲経路指定システム(network−based component workscope routing system)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高価な資産に対する少なくともいくつかの知られている保守修理プロセスでは、類似の標準化されたすべての機器に適用される検査および修理方法を使用する。例えば、工業用ガスタービンエンジンなどの大型の複雑で高価な資産の多くの知られているルーチン保守によるオーバーホールでは、典型的には数千もの個別コンポーネントが標準化された作業範囲を通して処理される。そのような標準化された作業範囲は、それぞれのコンポーネントに適用される受入検査、分解、および補正修理手順を含みうる。これまで場合によっては、それぞれのコンポーネントの実際の状態に関係なくコンポーネントを修理することがロジスティック上都合よかった。そのため、欠陥がほとんど、またはまったくないコンポーネントであっても、重大な欠陥のあるコンポーネントと同様のリソースを消費して処理される可能性がある。このようなリソースの消費は、財務上の観点からは次善であるとみなされる。
【0003】
いくつかの知られている保守修理プロセスは、検査手順の統一性に依存している。しかし、統一性のレベルは、検査担当者の経験、および/または検査指針の主観的解釈に依存することが多い。したがって、保守オーバーホールのコストは、不要な保守活動に対応するために実質的に増大する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7783507号明細書
【発明の概要】
【0005】
一態様では、コンポーネント修理活動を決定する方法が提供される。この方法は、コンピュータベースのコンポーネント作業範囲経路指定システムを実現することを含む。この方法は、複数の所定の標準化修理作業範囲活動(predetermined standardized repair workscope activities)を含む標準化修理作業範囲(standardized repair workscope)および拡張修理作業範囲(enhanced repair workscope)のうちの1つに対してコンポーネントが適格であるかどうかの第1の決定を行うことも含む。拡張修理作業範囲は、所定の数の標準化修理作業範囲活動より少ないいくつかの拡張修理作業範囲活動ならびにそれら複数の標準化修理作業範囲活動と範囲が異なる検査および修理活動のうちの少なくとも1つを含む。この方法は、標準化修理作業範囲または拡張修理作業範囲に対してコンポーネントが適格であるかどうかの第2の判定を行うことをさらに含む。
【0006】
別の態様では、ネットワークベースのコンポーネント作業範囲経路指定システムが実現される。システムは、少なくとも1つのコンピューティングデバイスを備える。コンピューティングデバイスは、コンポーネントおよび少なくとも1つの入力チャネルに関連付けられているデータを格納するように構成されたメモリデバイスを備える。入力チャネルは、コンポーネントに関連付けられたデータを受信するように構成されている。コンピューティングデバイスは、メモリデバイスおよび少なくとも1つの入力チャネルに結合されたプロセッサも備える。プロセッサは、コンポーネントを標準化修理作業範囲および拡張修理作業範囲のうちの一方へ導く経路を選択するようにプログラムされる。このような経路指定は、少なくとも1つの入力チャネルを介してネットワークベースのコンポーネント作業範囲経路指定システムに少なくとも1回検査前マニュアル入力を行うことで決まる。この入力により、コンポーネントを拡張修理作業範囲に対する候補としてさらに評価することの適格性が決定される。このような経路指定は、少なくとも1つの入力チャネルを介してネットワークベースのコンポーネント作業範囲経路指定システムに伝送される緊急検査後コンポーネントデータによっても決まる。
【0007】
さらに他の態様では、1つまたは複数のコンピュータ可読ストレージ媒体を備える。ストレージ媒体は、その上にコンピュータ実行可能命令を具現化している。コンピュータ実行可能命令が少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、これらのコンピュータ実行可能命令により少なくとも1つのプロセッサがプロセッサ内に伝送された検査前マニュアル選択入力に基づき標準化修理作業範囲および拡張修理作業範囲のうちの一方に対する適格性をコンポーネントが有しているという第1の判定を生成する。コンピュータ実行可能命令により少なくとも1つのプロセッサが標準化修理作業範囲および拡張修理作業範囲のうちの一方に対する適格性をコンポーネントが有しているという第2の判定を生成する。この第2の判定は、少なくとも部分的には、検査前マニュアル選択が入力され、緊急検査後コンポーネントデータがプロセッサ内に伝送されたときに存在しているレガシーコンポーネントデータ(legacy component data)に基づく。
【0008】
本明細書で説明されている実施形態は、添付図面と併せて以下の説明を参照するとさらによく理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】例示的なコンピューティングデバイスのブロック図である。
【図2】例示的なコンピュータベースのコンポーネント作業範囲経路指定システムのブロック図である。
【図3】例示的なガスタービンエンジンの略図、領域Aの周りで切り取った例示的な燃焼器アセンブリの拡大図、および領域Bの周りで切り取った例示的なトランジッションピースの拡大図である。
【図4】図3に示されているガスタービンエンジンの例示的なアセンブリ階層を示す例示的な流れ図である。
【図5】図3に示されている燃焼器アセンブリなどのコンポーネントの状態基準修理に関して適格性アセスメント(eligibility assessment)を実行するために使用することができる例示的な方法を示す例示的な流れ図である。
【図6】インターネットベースのコンポーネント経路指定を適用する例示的な方法の流れ図である。
【図7】コンポーネント特有の検査および修理指針を適用する例示的な方法の流れ図である。
【図8】例示的な受入コンポーネント情報およびデータ構造の表である。
【図9】例示的なデータベース情報の図である。
【図10】例示的な作業範囲決定エンジンの流れ図である。
【図11】例示的な修理リスティングおよび経路指定の表である。
【図12】例示的な拡張修理作業範囲生成の図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、例示的なコンピューティングデバイス105のブロック図である。例示的な実施形態において、コンピューティングデバイス105は、メモリデバイス110と命令を実行するためにメモリデバイス110に結合されているプロセッサ115とを備える。いくつかの実施形態では、実行可能命令がメモリデバイス110に格納される。コンピューティングデバイス105は、プロセッサ115をプログラムすることによって本明細書で説明されている1つまたは複数のオペレーションを実行する。例えば、プロセッサ115は、1つのオペレーションを1つまたは複数の実行可能命令として符号化し、実行可能命令をメモリデバイス110に収めるという形でプログラムすることができる。プロセッサ115は、1つまたは複数の処理ユニットを(例えば、マルチコア構成で)備えることができる。
【0011】
メモリデバイス110は、情報、例えば、実行可能命令をおよび/または他のデータの伝送結果の格納および取り出しを可能にする1つまたは複数のデバイスである。メモリデバイス110は、限定はしないが、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)、半導体ディスク、および/またはハードディスクなどの1つまたは複数のコンピュータ可読媒体を備えることができる。メモリデバイス110は、限定はしないが、コンピュータ実行可能命令、標準化修理作業範囲および活動、拡張修理作業範囲および活動、コンピュータ特有の物理的構成データ、コンポーネント特有の操作履歴データ、拡張修理作業範囲指針、定義済みコンポーネントスクリーニング質問、特定のタイプの欠陥に対する検査基準の説明、状態基準検査の結果、コンポーネント修理活動のタイプ、コンポーネント修理活動を実施するための分解のレベル、定義済み欠陥パラメータ、コンポーネント物理的状態データと定義済み欠陥のパラメータとの比較結果、コンポーネントに対する修理手順、実際の修理資源支出と推定される修理資源支出との比較結果、修理データ(例えば、生産用資産を修理するために必要な資材および/または労力)、および/または他の任意のタイプのデータを格納するように構成することができる。いくつかの実施形態では、メモリデバイス110は、モデル番号、図面番号、コンポーネント物理的属性、および/またはその中の選択されたコンポーネントの動作仕様などの資産属性データを格納する。
【0012】
いくつかの実施形態では、コンピューティングデバイス105は、プロセッサ115に結合されているプレゼンテーションインターフェイス120を備える。プレゼンテーションインターフェイス120は、ユーザーインターフェース、アプリケーションソースコード、入力イベント、および/または検証結果などの情報をアドミニストレータまたはユーザー125に提示する。例えば、プレゼンテーションインターフェイス120は、陰極線管(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)、有機LED(OLED)ディスプレイ、および/または「電子インク」ディスプレイなどの表示デバイスに結合することができるディスプレイアダプタ(図1には示されていない)を備えることができる。いくつかの実施態様では、プレゼンテーションインターフェイス120は、1つまたは複数の表示デバイスを含む。それに加えて、またはそれに代えて、プレゼンテーションインターフェイス120は、オーディオ出力デバイス(例えば、オーディオアダプターおよび/またはビーカー)および/またはプリンタを備えることができる。
【0013】
いくつかの実施形態では、コンピューティングデバイス105は、ユーザー入力インターフェイス135または通信インターフェイス140などの入力インターフェイス130を備える。入力インターフェイス130は、本明細書で説明されている方法とともに使用するのに適した情報を受信するように構成することができる。
【0014】
例示的な実施形態では、ユーザー入力インターフェイス135がプロセッサ115に結合されており、ユーザー125から入力を受け取る。ユーザー入力インターフェイス135として、例えば、キーボード、ポインティングデバイス、マウス、スタイラス、タッチパネル(例えば、タッチパッドもしくはタッチスクリーン)、ボアスコープ、カメラ、三次元座標測定機、および/またはオーディオ入力インターフェイス(例えば、マイクロホンを含む)が挙げられる。タッチスクリーンなどの、単一のコンポーネントは、プレゼンテーションインターフェイス120およびユーザー入力インターフェイス135の両方の表示デバイスとして機能することができる。
【0015】
通信インターフェイス140は、プロセッサ115に結合され、また少なくとも1つの入力/出力チャネル145を介して別のコンピューティングデバイス105などの1つまたは複数のリモートデバイスと結合され通信するように構成されている。例えば、通信インターフェイス140として、限定はしないが、シリアル通信アダプタ、有線ネットワークアダプタ、無線ネットワークアダプタ、および/または移動体通信アダプタが挙げられる。通信インターフェイス140は、データを1つまたは複数のリモートデバイスに伝送することもできる。例えば、一方のコンピューティングデバイス105の通信インターフェイス140が、予測生産資産故障、是正シナリオ、コスト情報、および/または保守タスクを他方のコンピューティングデバイス105の通信インターフェイス140に伝送することができる。さらに、入力/出力チャネル145を使用すると、プロセッサ115とプレゼンテーションインターフェイス120およびユーザー入力インターフェイス135との間の通信が容易になる。
【0016】
この例示的な実施形態では、コンピューティングデバイス105の1つの特定のアーキテクチャが示されている。あるいは、本明細書で説明されているようにコンピューティングデバイス105を有効に利用できるコンピューティングアーキテクチャが使用される。
【0017】
図2は、例示的なコンピュータベースのコンポーネント作業範囲経路指定システム200のブロック図である。システム200は、例示的な実施形態ではコンピューティングデバイス105と実質的に類似のものである、第1のクライアントデバイス210を備える。例示的な実施形態では、第1のクライアントデバイス210は、第1のユーザー、例えば、機器の保守担当者215によって操作される。機器保守担当者215は、本明細書では、高価な資産、例えば、ガスタービンエンジン(図示せず)の操作および保守を行う少なくとも一部の責任を負うユーザーとして定義される。システム200は、第1のクライアントデバイス210と実質的に類似のものである、第2のユーザー、例えば、審査担当者225によって操作される第2のクライアントデバイス220も備える。審査担当者は、本明細書では、機器保守担当者210によって行われる提案された保守活動を審査する少なくとも一部の責任を負うユーザーとして定義される。
【0018】
システム200は、第1のクライアントデバイス210と実質的に類似のものである、第3のユーザー、例えば、検査担当者235によって操作される第3のクライアントデバイス230をさらに備える。検査担当者235は、本明細書では、機器保守担当者210による検査のため用意された高価な資産からのコンポーネント(図2には示されていない)のうちの少なくともいくつかを物理的に検査するユーザーとして定義される。システム200は、第1のクライアントデバイス210と実質的に類似のものである、第4のユーザー、例えば、修理工場職員245によって操作される第4のクライアントデバイス240も備える。修理工場職員245は、本明細書では、機器保守担当者210によって用意された高価な資産から出荷されたコンポーネント(図2には示されていない)に関連する修理および他の保守活動に対する少なくとも一部の責任を有するユーザーとして定義される。機器保守担当者215、審査担当者225、検査担当者235、および修理工場職員245は、クライアントデバイス210、220、230、および240を、それぞれ、ユーザー入力インターフェイス135および/またはプレゼンテーションインターフェイス120(両方とも図1に示されている)を介して、インタラクティブに操作する。
【0019】
作業範囲経路指定システム200はネットワーク250を少なくとも部分的に定義する。クライアントデバイス210、220、230、および240は、ネットワーク250を介して通信するように結合され、それぞれ、コンピューティングデバイス105と実質的に類似のものである。例示的な実施形態では、クライアントデバイス210、220、230、および240のそれぞれは、通信インターフェイス140(図1に示されている)を介してネットワーク250に結合されている。ネットワーク250として、限定はしないが、インターネット、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、無線LAN(WLAN)、網状網、および/または仮想プライベートネットワーク(VPN)が挙げられる。以下ではクライアントデバイス210、220、230、および240を含む、特定のコンピューティングデバイス105に関していくつかのオペレーションが説明されているが、どのようなコンピューティングデバイス105も説明されているオペレーションのうちの1つまたは複数を実行できることが企図されている。例えば、第1のクライアントデバイス210は、本明細書で説明されているオペレーションのすべてを実行することができる。
【0020】
またネットワーク250を利用すると、少なくとも第1のデータベースサーバ260をクライアントデバイス210、220、230、および240のそれぞれに容易に結合できる。第1のデータベースサーバ260は、限定はしないが、コンポーネント特有の物理的構成データおよび機器保守担当者215(以下でさらに説明される)によるシステム200への検査前マニュアル入力の時点で存在している操作履歴データを含むレガシーコンポーネントデータを格納しているレコードを収めたリレーショナルデータベースを使ってプログラムされる。このようなレガシーコンポーネントデータとして、限定はしないが、事前に信頼性解析を行うときに生成された性能および修理データが挙げられる。このようなデータは、専用のコンポーネントマーキング方式に従ってコンポーネントを参照するデータも含んでいてもよい。
【0021】
第1のデータベースサーバ260は、限定はしないが、例えば、数値的に定義され、データが要求されているそれぞれのタイプの欠陥およびコンポーネントに特有の、複数の定義済み欠陥パラメータ、例えば、検査担当者235によって検査されうるコンポーネント内の欠陥となるものに関する定量的定義を収めたリレーショナルデータベースも備える。さらに、第1のデータベースサーバ260は、関連するサブシステムおよびコンポーネントに適用可能な保守作業を定義するサブシステム特有の、またコンポーネント特有の保守適用性指針を収めている。
【0022】
第1のデータベースサーバ260は、限定はしないが、高価な資産ならびにその中のそれぞれのサブシステムおよびコンポーネントに特有の検査形態を、検査担当者235によって使用されうる固有のサブシステムおよびコンポーネント毎にカスタマイズされたスクリーニング質問および欠陥のリスティングとともに収めたリレーショナルデータベースをさらに備える。第1のデータベースサーバ260は、限定はしないが、修理すべきコンポーネントに対し適切なスクリーニングを行い、欠陥データを記録することを修理工場職員245に指示するインストラクションを収めたリレーショナルデータベースも備える。これらのインストラクションは、キー属性、例えば、限定はしないが、適格性を有するコンポーネントのリスティング、およびキーエンジニアリング部品識別子(key engineering part identifiers)と物理的コンポーネント属性との相互参照、すべての修理が完了した後にコンポーネントに適切なマーキングを行うためのインストラクション、ならびにデータが要求されている欠陥を記述する一連の注釈付き画像および概略図を含む。
【0023】
またネットワーク250を利用すると、少なくとも1つの第2のデータベースサーバ270をクライアントデバイス210、220、230、および240のそれぞれに容易に結合できる。第2のデータベースサーバ270は、限定はしないが、高価な資産のコンポーネントおよびサブシステムに対する修理手順を格納したレコードを収めたリレーショナルデータベースを使ってプログラムされる。
【0024】
図3は、例示的な大型で複雑である高価な資産、例えば、ガスタービンエンジン300の略図である。あるいは、他の高価な資産は、限定はしないが、風力発電機、可変周波数駆動装置、蒸気タービン、および送電回路遮断器を含む電気機械システムを備えることができる。例示的な実施形態では、ガスタービンエンジン300は、前方ベアリングアセンブリ(forward bearing assembly)304および前方ホイールアセンブリ(forward wheel assembly)306を備える圧縮機セクション302を具備する高価な資産である。ガスタービンエンジン300は、領域A内に示されている、燃焼器アセンブリ308も備える。ガスタービンエンジン300は、後部ホイールアセンブリ(aft wheel assembly)312および後部ベアリングアセンブリ(aft bearing assembly)314を備える高温セクション310をさらに具備する。ガスタービンエンジン300は、エンジン300の少なくとも一部分の周りに延在し、燃焼器アセンブリ308の一部分の周りに延在するケーシング316も備える。
【0025】
図3は、領域Aの周りで切り取った例示的な燃焼器アセンブリ308の拡大概略図も示している。例示的な実施形態では、燃焼器アセンブリ308は、領域B内に示されている、燃料ノズルアセンブリ318、キャップアセンブリ319、およびトランジションピースアセンブリ320を備える。図3は、領域Bの周りで切り取った例示的なトランジションピースアセンブリ320の拡大概略図をさらに示している。また、例示的な実施形態は、トランジションピースアセンブリ320は、前方リングアセンブリ322、本体部324、後部フレーム326、および衝突スリーブ328を備える。トランジションピースアセンブリ320は、限定はしないが、胴割れ、破砕、膨隆、ブラケット割れ、およびシールランド摩耗(いずれも図示せず)を含む欠陥を有する場合がある。キャップアセンブリ319は、限定はしないが、スプリングシール割れ、スプリングシール摩耗、およびミッシングフィンガー(missing fingers)(いずれも図示せず)を含む欠陥を有する場合がある。
【0026】
図4は、ガスタービンエンジン300(図3に示されている)の例示的なアセンブリ階層350を示す例示的な流れ図である。アセンブリ階層350は、分解のいくつかのレベルも定義する複数のアセンブリレベルを含む。アセンブリ階層350は、最終アセンブリレベル、つまりレベル1を含む。例示的な実施形態では、ケーシング316(図3に示されている)はレベル1のシステムであると考えられる。また、例示的な実施形態では、前方ベアリングアセンブリ304、前方ホイールアセンブリ306、燃焼器アセンブリ308、後部ホイールアセンブリ312、後部ベアリングアセンブリ314(すべて図3に示されている)は、サブシステムである、つまり、レベル2のサブアセンブリであると考えられる。さらに、例示的な実施形態では、燃料ノズルアセンブリ318、キャップアセンブリ319、およびトランジションピースアセンブリ320(すべて図3に示されている)は、レベルk−3のコンポーネントであると考えられ、ただし、「k」は高価な電気機械システム、例えば、ガスタービンエンジン300を少なくとも部分的に定義するアセンブリレベルの総数である。また、例示的な実施形態では、トランジションピースアセンブリ320の前方リングアセンブリ322、本体部324、後部フレーム326、および衝突スリーブ328(すべて図3に示されている)は、コンピュータベースのコンポーネント作業範囲経路指定システム200(図2に示されている)を介してサブアセンブリ特有の作業範囲プロセス(図4に示されていない)に対して適格性を有しているレベルk−2のコンポーネントであると考えられる。
【0027】
図5は、レベル2のサブアセンブリ、例えば、燃焼器アセンブリ308(図3に示されている)、またはレベルk−3のコンポーネント、例えば、トランジションピース330(図3に示されている)の状態基準修理に関して適格性アセスメントを実行するために使用することができる例示的な方法400を示す例示的な流れ図である。例示的な実施形態では経路指定要素402が使用され、これは例示的な実施形態ではネットワークベースの、例えば、インターネットベースのアプリケーションであり、コンピュータベースのコンポーネント作業範囲経路指定システム200(図2に示されている)は、どのようなサブシステムおよびコンポーネントが拡張修理プロセスに対し適格性を有しているかを判定する。あるいは、経路指定要素402は、どのネットワーク225(図2に示されている)にも適応性がある。システム200は、ユーザー、例えば、機器保守担当者215および審査担当者225(両方とも図2に示されている)に対して、資産特有の操作および識別データを入力するよう指示を出す。例示的な実施形態では、このようなデータは、燃焼器アセンブリ300(サブシステムレベルの)(図3に示されている)および燃焼器キャップアセンブリ302およびトランジションピース312(コンポーネントレベルの)(両方とも図3に示されている)に関連付けられている。このようなデータは、典型的には、サブシステムおよびコンポーネントの耐用期間中、定期的に入力される。そのようなサブシステムおよびコンポーネントが保守を必要とする場合、システム200は、そのようなサブシステムおよびコンポーネントを拡張修理作業範囲に導く次の段階に進むことができるか、あるいは機器に対して標準修理作業範囲への経路を指定することができるかどうかに関するステータスおよび指令を機器保守担当者215に与える。
【0028】
一般に、また本明細書で使用されているように、「標準化修理作業範囲」という用語は、複数の所定の標準修理作業範囲活動を含む。また、本明細書で使用されているように、「拡張修理作業範囲」という用語は、所定の数の標準化修理作業範囲活動より少ないいくつかの拡張修理作業範囲活動ならびに標準化修理作業範囲活動と範囲が異なる検査および修理活動のうちの少なくとも1つを有する作業範囲を含む。いくつかの実施形態では、そのような拡張修理作業範囲および活動を最適化することができ、例えば、作業範囲および活動は可能な限り効率的である。
【0029】
データ収集要素404が使用され、資産特有の指針に基づき、エンドユーザー、例えば、検査担当者235に、受入サブシステムおよびコンポーネント状態を識別する方法の指示が出される。例示的な実施形態では、検査担当者235は、テキスト、概略図、および写真の組み合わせを補助として使用して、受入サブシステムおよびコンポーネントの欠陥の適切な特徴付けを行う。例えば、例示的な実施形態では、データ収集要素404は、2つの要素、つまり、検査指針要素406とデータ入力要素408とを含む。
【0030】
第1のデータ転送要素410が使用され、これにより、データを第1のデータベースサーバ260からシステム200に伝送することができる。作業範囲決定エンジン要素412が使用される。作業範囲決定エンジン要素412は、記録された受入検査データ、定義済みの欠陥限界、および合格/失敗基準を規定する論理、ならびにサブシステム、例えば、燃焼器アセンブリ300、および/またはコンポーネント、例えば、燃焼器キャップアセンブリ302およびトランジションピース312の分解レベルを組み込んでいる。このような分解レベルは、限定はしないが、サブシステムおよびコンポーネントにアクセスできるようにするための付随する取り外し、および例えば、遮熱コーティングなど欠陥の目視観察を行いやすくするための燃焼器アセンブリ300からのトランジションピース312の取り外しを含みうる。
【0031】
カスタマイズされたコンポーネント修理プロセス要素414を使用して、影響を受けるサブシステムおよびコンポーネントの拡張修理作業範囲への効果的な経路指定を行いやすくする。サブシステムおよびコンポーネントの受入状態に基づく修理のリストを含む、固有の、カスタマイズされた、拡張作業範囲は、欠陥特有の修理手順のデータベースからの、例えば、データベースサーバ270からの入力によって定義される。方法400は、第2のデータ転送要素416も含み、データは第2のデータベースサーバ270からシステム200に伝送される。拡張修理作業範囲が生成された後、これは、コンポーネント経路指定要素402を介して、すべての関連付けられている修理チームメンバーおよび関連付けられている現場、例えば、限定はしないが、資産の置かれている現場(図示せず)にいる機器保守担当者215および資産の置かれている現場と異なる場所にたいていある検査現場(図示せず)にいる検査担当者235に伝送される。方法400のそれぞれの要素について以下でさらに説明する。
【0032】
図6は、インターネットベースのコンポーネント経路指定要素402(図5に示されている)を適用する例示的な方法500の流れ図である。例示的な実施形態では、機器保守担当者215(図2に示されている)は、インターネットベースの保守スケジューリングシステム、例えば、コンピュータベースのコンポーネント作業範囲経路指定システム200(図2に示されている)にログインし、限定はしないが、燃焼器アセンブリ308、キャップアセンブリ319、およびトランジションピース320(すべて図3に示されている)を含む保守される機器の由来情報を提供する(502)。データはリレーショナルデータベースに送られ、第1のデータベースサーバ260(図2に示されている)上に格納される。あるいは、インターネットベースの保守スケジューリングシステムは、データベースを備え、ネットワーク225(図2示されている)を介してシステム200とインターフェイスするスタンドアロンのシステムであってもよい。機器保守担当者215は、このデータを高価な資産に対する保守イベントの前の一定期間にわたって入力するが、これはときには別の形で停電計画プロセスと称されることもある。高価な資産のコンポーネントに関連付けられている典型的な由来情報データとして、限定はしないが、設計図仕様および通し製造番号によって識別されるすべての設置済みサブシステムおよびコンポーネントのリスティング、機器/コンポーネントモデル名称(ネームプレートデータを含む)、総運用時間、始動/運転停止のサイクル数、および特定の動作パラメータによって決まる、コンポーネントの性能および/または潜在的性能低下に関連する他の動作パラメータが挙げられる。
【0033】
また、例示的な実施形態では、コンピュータベースのコンポーネント作業範囲経路指定システム200は、次いで、提出されたデータを審査する(504)審査担当者225(図2に示されている)にその要求を回送し、その後、クエリをデータベースに、例えば、サブシステム特有およびコンポーネント特有の保守適用性指針を中に格納しているデータベースサーバ260に送る。あるいは、保守適用性指針は、データベースアプリケーションおよび適用可能な保守適用性指針がロードされているサーバーであればどのようなサーバーにも格納される。データベースサーバ260は、一組のサブシステムおよびコンポーネント記述を審査担当者225に送り返す(506)。サブシステムおよびコンポーネント記述は、方法ステップ502において機器保守担当者215によって最初に提示される仕様に特有のものである。
【0034】
さらに、例示的な実施形態では、審査担当者225は、データベースによって与えられるように、評価対象のサブシステムおよびコンポーネントの物理的属性を可能な拡張修理範囲に対して適格性を有するサブシステムおよびコンポーネントの属性と比較する(508)。次いで、審査担当者225は、提出されたサブシステムおよびコンポーネントの適格性を判定し(510)、その結論をシステム200に入力する。例えば、限定はしないが、キャップアセンブリ319は拡張修理範囲に対して適格性を有するが、トランジションピース320は適格性を有しない。
【0035】
さらに、例示的な実施形態では、拡張修理作業範囲に対して適格性を有しないと判定されたサブシステムおよびコンポーネントについて、機器保守担当者215は、標準修理要求を整備工場、例えば、修理工場職員245(図2に示されている)に提出する(512)よう助言され、次いで、インターネットのワークフローを閉じる。機器保守担当者215によって提出されたサブシステムおよびコンポーネントが拡張修理に対して適格性を有すると考えられる場合、システム200は、機器保守担当者215に対して、拡張修理作業範囲とともに状態基準検査を含めるように修理要求を修正する(514)ことを助言する。次いで、システム200は、その後の検査データが分析のためアップロードされるまで要求を格納しておく。
【0036】
図7は、検査指針要素406(図5に示されている)に従ってコンポーネント特有の検査および修理指針を適用する例示的な方法600の流れ図である。例示的な実施形態では、適格性を有するサブシステム、例えば、燃焼器アセンブリ300、ならびに適格性を有するコンポーネント、例えば、キャップアセンブリ319およびトランジションピース320は、すべて、拡張修理作業範囲に対して最初に適格性を有しており、受入検査および状態基準拡張修理作業範囲の要求とともに機器保守担当者215から届く。コンポーネントは、コンポーネント信頼性が最低のコストで拡張修理手順の完了後も維持されるように最も経済的に効率的な修理作業範囲を追求して受入検査へと経路指定される(602)。
【0037】
また、例示的な実施形態では、適格性を有するサブシステムおよび適格性を有するコンポーネント、ならびにその属性および機能が最初に識別され、機器モデル番号およびデータ入力要素408(図5に示されている)に従ってアセスメントがなされた指針に関連付けられる(604)。機器モデル番号を使用し、適切な修理経路指定インストラクションについてデータベース、例えば、第1のデータベースサーバ260(図2に示されている)に対しクエリを実行する(606)。経路指定インストラクションは、方法ステップ508(図6に示されている)で記述され、審査担当者225(図2に示されている)によって審査されるようなコンポーネントの物理的特性の記述を含む。
【0038】
さらに、例示的な実施形態では、訓練を受けた検査担当者235(図2に示されている)が適格性属性を審査し(608)、注目しているコンポーネントが拡張修理範囲へのさらなる経路指定に対する適格性を有していることを検証する。検査担当者235によるコンポーネント属性のこの第2の審査は、提出されたサブシステムおよびコンポーネントの適格性について審査担当者225により方法ステップ510(図6に示されている)で行われた初期コンポーネント適格性の判断の妥当性を確認するために設計上設けられた冗長作業である。次いで、検査担当者235は、初期検査を実施し(610)、拡張修理に不適格なコンポーネントのスクリーニングを行う。特に、検査担当者235は、第1のデータベースサーバ260(図2に示されている)から伝送された定義済みの一組のスクリーニング質問事項に回答する。検査担当者235は、そのスクリーニング質問事項リストによって定義されている観察状態に基づきコンポーネントがより詳細な検査に進むべきか、または標準化された全範囲修理を受けるべきかを決定する(612)。
【0039】
さらに、例示的な実施形態では、コンポーネントが拡張修理へ経路指定されないと検査担当者235が判定した場合、検査担当者235は、標準修理指針に従って、標準修理作業範囲へのコンポーネントの経路指定を行い(614)、コンポーネントの全面的修理を行う。あるいは、拡張修理作業範囲へのコンポーネントの経路指定が行われる(616)と検査担当者235が判定した場合、そのコンポーネントは引き続き詳細な検査ステップに進み、そこで、検査されるコンポーネントの物理的状態に応じて修理作業範囲が生成される。追加の、また不要な検査、分解、および修理のコストはこれにより回避される。
【0040】
図8は、データ収集要素404(図5に示されている)および第1のデータ転送要素410(両方とも図5に示されている)を容易に行えるようにするために使用される例示的な受入コンポーネント情報およびデータ構造の表700である。表700を使用すると、受入コンポーネントデータを識別して3つの主カテゴリに分類するのが容易になる。第1のカテゴリは、高レベルの修理ジョブデータセクション702を含む。セクション702では、顧客識別、保守を受ける高価な資産のモデル/シリアル番号、工場ジョブ識別番号、およびコンポーネントの受入状態を記録する検査担当者235の氏名を記載した詳細を要求する。第2のカテゴリは、詳細なサブシステムまたはコンポーネントデータセクション704を含む。セクション704では、コンポーネントの設計、製造、および修理履歴を識別するすべてのマーキングを含む詳細を要求する。第3のカテゴリは、適格性および修理範囲セクション706の決定に関する複数のスクリーニング質問事項を含む。セクション706では、コンポーネントの知られている劣化モードに関する事前の知識を使用して作成されたコンポーネント特有の質問事項のリスト、および内部および専用の部品マーキングシステムから導出された修理履歴を決定する質問事項のリストを介した詳細を要求する。それぞれのコンポーネントは、コンポーネント特有の一組の修理作業に対するコンポーネント修理履歴を決定する部品マーキングの一組の知られている組み合わせのうちの1つを持つことになる。
【0041】
図9は、第1のデータベースサーバ260(図2および5に示されている)上に格納することができる例示的なデータベース情報の図800である。第1のデータベースサーバ260の第1の部分802は、限定はしないが、高価な資産ならびにその中のそれぞれのサブシステムおよびコンポーネントに特有の検査形態を、検査担当者235(図2に示されている)によって使用されうる固有のサブシステムおよびコンポーネント毎にカスタマイズされたスクリーニング質問および欠陥のリスティングとともに収めたリレーショナルデータベースをさらに備える。
【0042】
第1のデータベースサーバ260の第2の部分804は、限定はしないが、修理すべきコンポーネントに対し適切なスクリーニングを行い、欠陥データを記録することを修理工場職員245(図2に示されている)に指示するインストラクションを収めたリレーショナルデータベースを備える。これらのインストラクションは、キー属性、例えば、限定はしないが、適格性を有するコンポーネントのリスティング、およびキーエンジニアリング部品識別子と物理的コンポーネント属性との相互参照、すべての修理が完了した後にコンポーネントに適切なマーキングを行うためのインストラクション、ならびにデータが要求されている欠陥を記述する一連の注釈付き画像および概略図を含む。
【0043】
第1のデータベースサーバ260の第3の部分806は、限定はしないが、例えば、数値的に定義され、データが要求されているそれぞれのタイプの欠陥およびコンポーネントに特有の、複数の定義済み欠陥パラメータ、例えば、検査担当者235によって検査されうるコンポーネント内の欠陥となるものに関する定量的定義を収めたリレーショナルデータベースを備える。
【0044】
第1のデータベースサーバ260の第4の部分808は、限定はしないが、コンポーネント特有の物理的構成データおよび機器保守担当者215(両方とも図2に示されている)によるシステム200への検査前マニュアル入力の時点で存在している操作履歴データを含むレガシーコンポーネントデータを格納しているレコードを収めたリレーショナルデータベースを備える。このようなレガシーコンポーネントデータとして、限定はしないが、事前に信頼性解析を行うときに生成された性能および修理データが挙げられる。このようなデータは、専用のコンポーネントマーキング方式に従ってコンポーネントを参照するデータも含んでいてもよい。さらに、第1のデータベースサーバ260は、限定はしないが上述のような分解レベルを含む、関連するサブシステムおよびコンポーネントに適用可能な保守作業を定義するサブシステム特有の、またコンポーネント特有の保守適用性指針を収めている第5の部分810を備える。
【0045】
図10は、作業範囲決定エンジン412(図5に示されている)による例示的な作業範囲決定エンジン900の流れ図である。作業範囲決定エンジン900は、スプレッドシートとインターネットベースの両方の形式で実装されたデータ収集ツール902を備え、これにより、工場検査担当者235によるコンポーネント欠陥の観察結果がさらに評価できるように記録される都合のよい代替的アクセスポイントを使用できる。
【0046】
作業範囲決定エンジン900は、コンポーネント特有の欠陥リスティング904も備える。コンポーネント特有の欠陥リスティングの作成は、使用に応じてコンポーネント劣化を時間順に記録した工場および現場レポートの網羅的検索の結果なされる。この検索の結果から、注目しているサブシステムまたはコンポーネントの性能に影響を及ぼす欠陥の包括的なリスティングを作成するのに必要な予備的知識が得られる。
【0047】
作業範囲決定エンジン900は、推論エンジンモジュール906をさらに備える。このソフトウェアモジュールは、ツール902とリスティング904の入力を比較する一連の論理的規則を含んでおり、結果として欠陥特有の合格/失敗の出力が行われる。それに加えて、モジュール906は、それぞれのコンポーネント特有の修理カテゴリに応じて、追加の論理を使用してすべての合格/失敗結果をつなぎ合わせて要約とする。推論エンジン906は、複数の修理カテゴリおよびタイプと相互に影響する合格/失敗基準の相互関係を含む、コンポーネントの分解レベルを決定する規則も備える。
【0048】
図11は、カスタマイズされたコンポーネント修理プロセス414(図5に示されている)を容易に行えるようにするために使用される例示的な修理リスティングおよび経路指定の表1000である。表1000には、複数の、および/または冗長なコンポーネントに対する個別のコンポーネント追跡を容易にするコンポーネント識別子列1002がある。特定の1つのコンポーネントの複数のインスタンスがありえる複雑な機械では、識別および追跡を目的として、保守を受ける機械のコンポーネントのそれぞれのインスタンスの一覧を作成する。表1000には、適格性ステータス列1004もある。文書化と監査を目的として、拡張修理範囲に対するコンポーネントの適格性ステータスが列1004に示されている。列1004の出力も、それぞれの個別コンポーネントの適切な修理経路指定に使用される。表1000は、修理工場職員に表示する複数の修理タイプ列1006、および自動化工場経路指定システム、検査状態に応じた、それぞれのコンポーネントに対するカスタマイズされた修理作業範囲をさらに含む。列1006には、そのコンポーネントに対する利用可能なすべての修理手順が入る。修理手順のリストが、第2のデータベースサーバ270から伝送され、これにより、第2のデータ転送416(図5に示されている)が容易になる。第2のデータベースサーバ270は、限定はしないが、高価な資産のコンポーネントおよびサブシステムに対する修理手順を格納したレコードを収めたリレーショナルデータベースを使ってプログラムされる。
【0049】
例示的な実施形態では、追加の追跡機能がコンピュータベースのコンポーネント作業範囲経路指定システム200(図2に示されている)内に備えられている。例えば、限定はしないが、修理担当者の時間、外注された活動、および資材を含む、注目されている拡張修理作業範囲を実施するために消費されるリソースは、自動的に収集される。また、例示的な実施形態では、そのような実際の修理リソースの消費を推定された修理リソースの消費と比較する。
【0050】
図12は、例示的な拡張修理作業範囲生成の図1100である。状態基準修理カテゴリの分類の結果としての個別の修理手順の割り当ては、第2のデータベースサーバ270(図2に示されている)内のデータベースとして具現化され、しかも、コンポーネント領域記述、劣化タイプ、欠陥、および標準化工場修理プロセスを相互参照することができる。データベースは、関連付けコンポーネントが分解されるべきレベルを含む、指定されたコンポーネントもしくはシステムに対する利用可能なすべての修理手順を含む。作業範囲決定エンジン500(図6に示されている)の範囲内で実装される作業範囲拡張スキーム、および列1006(図11に示されている)の手順のリストを使用して、第2のデータベースサーバ270からの適切な手順を参照し、列1006に対する詳細なインストラクションのリスティングを作成する。コンピュータベースのコンポーネント作業範囲経路指定システム200は、相互参照機能を実行するソフトウェアを備えており、必要な標準化修理の結果として得られたリストが実際の修理実施に役立てられるように修理工場職員に対し提示される。
【0051】
例示的な実施形態では、複数の経路線1102が、標準修理作業範囲ではなく拡張修理作業範囲への影響を受けるサブシステムおよびコンポーネントの経路指定を行う二元分類の関係または決定1104を示す。例示的な実施形態では、経路線1102は、コンポーネント特有の欠陥、または劣化タイプ1110、特定の欠陥1112、および特定の欠陥1112に対するコスト効果のある修理を行いやすくすると判断された関連する必要とする修理手順1114とともに高価な資産1108内のサブシステムおよび/またはコンポーネントの物理的配置同士の間の関係を示している。
【0052】
すべての類似の機器に適用される標準化検査および修理方法を使用する大型の複雑で高価な資産に対する知られている保守修理プロセスとは対照的に、コンピュータベースのコンポーネント作業範囲経路指定システムによって生成される拡張された修理作業範囲は、両方とも本明細書で説明されているように、コンポーネントの受入状態に基づく修理のリストを含む固有の、カスタマイズされ、拡張された作業範囲である。さらに、知られている保守修理プロセスとは対照的に、本明細書で説明されているようなシステムおよびプロセスの実施形態は、検査担当者の経験、および/または検査指針のその主観的解釈で決まる検査手順の統一性に依存する保守修理活動を著しく低減する。その結果、欠陥がほとんど、またはまったくないコンポーネントであっても、重大な欠陥のあるコンポーネントと同様のリソースを消費することなく、実際の状態に応じて処理することができる。リソースの低減された、より賢明な消費は、財務上の観点からは最適であり、したがって、保守オーバーホールのコストは、不要な保守活動をなくすことで実質的に減らすことができる。
【0053】
本明細書において掲示されているようなコンピュータベースのコンポーネント作業範囲経路指定システムの実施形態を利用することで、工業用ガスタービンなどの、高価な資産の個別のコンポーネントに対する修理作業範囲の自動生成が容易になる。このようなシステムでは、電子的なデータ収集および意志決定を利用して、標準修理作業範囲ではなく、システムまたはコンポーネントの受入状態に基づく修理作業範囲を生成する。本明細書で提示されているようなシステムは、必要な分解レベル、および実施すべき修理のタイプを決定するための決定エンジンを備える。これらのシステムは、受入検査情報だけでなく結果として得られる修理作業範囲をも格納するコンピュータアプリケーションとインターフェイスするデータ収集ツールも備える。このコンピュータシステムは、ユーザーによって入力された初期推定値と突き合わせてジョブ完了までの実際の時間も追跡する。本明細書において掲示されているようなコンピュータベースのコンポーネント作業範囲経路指定システムは、工業用ガスタービンなどの、大型の資産に対するコンポーネントの修理に特に適しており、また適応させることが可能である。多くのサブシステムおよびコンポーネントの不要な保守活動を、それらのコンポーネントの信頼性を維持しつつ、なくすことで、そのような大型の資産の運用および保守の管理者は大きな累積的なコスト節減を容易に受けることができる。
【0054】
本明細書で説明されている方法、システム、および装置の例示的な技術的効果は、(a)標準化された欠陥限界および分解および修理経路指定のための論理と組み合わされた、観察された欠陥情報を介して作業範囲を作成すること、(b)個別のユーザーの経験レベルに関係なく、典型的には特定のコンポーネントに対する作業範囲の決定に際して必要な主観的解釈および固有の、非標準的な、それでも関連する、知識の量を減らすこと、(c)サブシステムおよびコンポーネントのスクリーニングを標準化すること、(d)作業範囲生成に対する繰り返し可能で予測可能なプロセスを生成し、次いで製品ライフサイクルにおける修理コストの正確な予測を容易に行えるようにすること、(e)修理コストの変動を少なくすることのうちの少なくとも1つを含む。
【0055】
本明細書では、知られている修理手順により保守リソースを知られている欠陥に導くことによって大型の高価な資産のコスト効率の高い保守を容易に行えるようにするコンピュータベースのコンポーネント作業範囲経路指定システムの例示的な実施形態を説明している。特に、本明細書で説明されているようなシステムの使用により、標準修理作業範囲ではなく、システムまたはコンポーネントの受入状態に基づく固有の、コスト効率の高い(拡張)修理作業範囲を生成することが容易になる。より具体的には、提示されているようなシステムの使用により、必要な分解レベル、および影響を受けるコンポーネントに対し実施すべき修理のタイプが決定されるということである。拡張作業範囲は、受入検査情報だけでなく結果として得られる修理作業範囲をも格納するコンピュータアプリケーションとインターフェイスするデータ収集ツールによる電子データ収集および意志決定を使用して生成される。コンピュータベースのコンポーネント作業範囲経路指定システムを使用することで、多くのサブシステムおよびコンポーネントに対する不要な保守活動を容易になくせる。本明細書で説明されているように保守活動を合理化することで、そのような大型の資産の運用および保守の管理者は大きな、累積的なコスト節減を容易に受けることができる。
本明細書で説明されている方法およびシステムは、本明細書で説明されている特定の実施形態に限定されない。例えば、それぞれのシステムのコンポーネントおよび/またはそれぞれの方法のステップは、本明細書で説明されている他のコンポーネントおよび/またはステップと独立して、また別個に使用され、および/または実施されうる。それに加えて、それぞれのコンポーネントおよび/またはステップも、他のアセンブリおよび方法とともに使用され、および/または実施されうる。
【0056】
いくつかの実施形態は、1つまたは複数の電子デバイスまたはコンピューティングデバイスを使用することを伴う。そのようなデバイスとしては、典型的には、汎用中央演算処理装置(CPU)、グラフィックスプロセッシングユニット(GPU)、マイクロコントローラ、縮小命令セットコンピュータ(RISC)プロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、プログラマブル論理回路(PLC)、および/または本明細書で説明されている機能を実行することができる他の回路もしくはプロセッサなどの、プロセッサまたはコントローラが挙げられる。本明細書で説明されている方法は、限定はしないが、ストレージデバイスおよび/またはメモリデバイスを含む、コンピュータ可読媒体内に具現化された実行可能命令として符号化することができる。このような命令は、プロセッサによって実行された場合に、本明細書で説明されている方法の少なくとも一部をプロセッサに実行させる。上記の例は、例示的なものにすぎず、したがって、いかなる点でも「プロセッサ」という用語の定義および/または意味を制限することを意図していていない。
【0057】
本発明は、さまざまな特定の実施形態に関して説明されているが、当業者であれば、請求項の精神および範囲内で修正とともに実施できることを理解するであろう。
【符号の説明】
【0058】
105 コンピューティングデバイス
110 メモリデバイス
115 プロセッサ
120 プレゼンテーションインターフェイス
130 入力インターフェイス
135 ユーザー入力インターフェイス
140 通信インターフェイス
145 入出力チャネル
200 コンピュータベースのコンポーネント作業範囲経路指定システム
210 第1のクライアントデバイス
215 機器保守担当者(第1のユーザー)
220 第2のクライアントデバイス
225 審査担当者(第2のユーザー)
230 第3のクライアントデバイス
235 検査担当者(第3のユーザー)
240 第4のクライアントデバイス
245 修理工場職員(第4のユーザー)
250 ネットワーク
260 第1のデータベースサーバ
270 第2のデータベースサーバ
300 ガスタービンエンジン
302 圧縮機セクション
304 前方ベアリングアセンブリ
306 前方ホイールアセンブリ
308 燃焼器アセンブリ
310 高温セクション
312 後部ホイールアセンブリ
314 後部ベアリングアセンブリ
316 ケーシング
318 燃料ノズルアセンブリ
319 キャップアセンブリ
320 トランジションピースアセンブリ
322 前方リングアセンブリ
324 本体部
326 後部フレーム
328 衝突スリーブ
350 アセンブリ階層
400 方法
402 インターネットベースのアプリケーション経路指定要素
404 データ収集要素
406 検査指針要素
408 データ入力要素
410 第1のデータ転送要素
412 作業範囲決定エンジン要素
414 カスタマイズされたコンポーネント修理プロセス要素
416 第2のデータ転送要素
500 方法
502 機器保守担当者がインターネットベースの経路指定ジョブを生成する
504 機器操作履歴および物理的由来情報を審査する
506 サブシステムおよびコンポーネント記述を審査担当者に返す
508 審査担当者がサブシステムおよびコンポーネントの属性を...と比較する
510 最適化された作業範囲について適格性を有しているかどうかを判定する
512 標準修理要求をサービス工場に提出する
514 状態基準...を含むように修理要求を修正する
600 方法
602 状態基準検査へのコンポーネントの経路指定を行う
604 コンポーネントが最初に識別され、...と関連付けられる(604)
606 機器モデル番号を使用して、適切な修理...を取得する
608 検査担当者が適格性属性を審査し、...を検証する
610 検査担当者が初期検査を実行して...のスクリーニングを行う
612 検査担当者が、コンポーネントがより詳細な検査へ進むか...かどうかを判定する
614 検査担当者が、標準修理作業範囲へのコンポーネントの経路指定を行う
616 検査担当者が、最適化修理作業範囲へのコンポーネントの経路指定を行う
700 表
702 高レベル修理ジョブデータセクション
704 詳細サブシステムまたはコンポーネントデータセクション
706 適格性の判定のためのスクリーニング質問事項および...
800 例示的なデータベース情報の図
802 第1の部分
804 第2の部分
806 第3の部分
808 第4の部分
810 第5の部分
900 作業範囲決定エンジン
902 データ収集ツール
904 コンポーネント特有の欠陥リスティング
906 推論エンジンモジュール
1000 例示的な修理リスティングおよび経路指定の表
1002 コンポーネント識別子列
1004 適格性ステータス列
1006 修理タイプ列
1100 例示的な最適化修理作業範囲生成の図
1102 経路線
1104 二元
1108 コンポーネント物理的領域ディスクリプタ
1110 コンポーネント劣化タイプ
1112 欠陥番号
1114 必要な修理手順(複数可)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークベースのコンポーネント作業範囲経路指定システム(200)であって、少なくとも1つのコンピューティングデバイス(105)を備え、前記コンピューティングデバイス(105)は、
コンポーネントに関連付けられているデータを格納するように構成されているメモリデバイス(110)と、
前記コンポーネントに関連付けられている前記データを受信するように構成されている少なくとも1つの入力チャネル(145)と、
前記メモリデバイスおよび前記少なくとも1つの入力チャネルに結合され、標準化修理作業範囲および拡張修理作業範囲のうちの一方への前記コンポーネントの経路指定を、
前記コンポーネントを前記拡張修理作業範囲に対する候補としてさらに評価することの適格性を決定する、前記少なくとも1つの入力チャネルを介した前記ネットワークベースのコンポーネント作業範囲経路指定システムへの少なくとも1回の検査前マニュアル入力と、
前記少なくとも1つの入力チャネルを介して前記ネットワークベースのコンポーネント作業範囲経路指定システムに伝送される緊急検査後コンポーネントデータと
に応じて行うようにプログラムされたプロセッサ(115)とを備える、ネットワークベースのコンポーネント作業範囲経路指定システム(200)。
【請求項2】
前記プロセッサ(115)は、
修理活動(1006)のタイプと、
前記修理活動を実行するための分解レベル(350)と含む固有の、状態基準作業範囲を生成するようにさらにプログラムされる請求項1記載のシステム(200)。
【請求項3】
前記プロセッサ(115)は、
複数の定義済み欠陥パラメータと、
最終検査から得られた前記コンポーネントの物理的状態データを含む緊急検査後コンポーネントデータと、
前記物理的状態データと前記複数の定義済み欠陥パラメータとの比較結果とに応じて固有の、状態基準作業範囲を生成するようにさらにプログラムされる請求項2記載のシステム(200)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの入力チャネル(145)は、
前記少なくとも1回の検査前マニュアル入力の時点で存在しているレガシーコンポーネントデータと複数の定義済み欠陥パラメータとを含む第1のデータベースを備える少なくとも1つのデータベースサーバ(260)と、
前記定義済み欠陥パラメータと比較して状態基準検査から得られた前記コンポーネントの前記物理的状態データに応じて前記プロセッサに伝送される、前記コンポーネントに対する修理手順を含む第2のデータベースを備える少なくとも1つのデータベースサーバ(270)とに結合される請求項1記載のシステム(200)。
【請求項5】
前記プロセッサ(115)は、実際の修理リソースの消費と推定された修理リソースの消費とを比較するようにさらにプログラムされる請求項1記載のシステム(200)。
【請求項6】
前記プロセッサ(115)は、前記コンポーネントの状態基準検査を要求するようにさらにプログラムされる請求項1記載のシステム(200)。
【請求項7】
1つまたは複数のコンピュータ可読ストレージ媒体(110)であって、その上にコンピュータ実行可能命令が具現化され、前記コンピュータ実行可能命令は、少なくとも1つのプロセッサ(115)によって実行されたときに、前記少なくとも1つのプロセッサに、
前記プロセッサ内に伝送された検査前マニュアル選択入力に基づき標準化修理作業範囲および拡張修理作業範囲のうちの一方に対する適格性をコンポーネントが有しているという第1の判定を生成することと、
前記標準化修理作業範囲および前記拡張修理作業範囲のうちの一方に対する適格性を前記コンポーネントが有しているという第2の判定を、
前記検査前マニュアル選択が入力されたときに存在しているレガシーコンポーネントデータと、
前記プロセッサに伝送された緊急検査後コンポーネントデータとに
少なくとも部分的に基づき生成することを行わせる1つまたは複数のコンピュータ可読ストレージ媒体(110)。
【請求項8】
前記コンピュータ実行可能命令は、前記少なくとも1つのプロセッサ(115)によって実行されたときに、前記コンポーネントの状態基準検査を要求させる請求項7記載の1つまたは複数のコンピュータ可読ストレージ媒体(110)。
【請求項9】
前記コンピュータ実行可能命令は、前記少なくとも1つのプロセッサ(115)によって実行されたときに、前記少なくとも1つのプロセッサと、
前記1回の検査前マニュアル入力の時点で存在している前記レガシーコンポーネントデータと複数の定義済み欠陥パラメータとを含む第1のデータベースを備える少なくとも1つのデータベースサーバ(260)と、
前記定義済み欠陥パラメータと比較して受入検査から得られた前記コンポーネントの前記物理的状態データに応じて前記プロセッサに伝送される、前記コンポーネントに対する修理手順を含む第2のデータベースを備える少なくとも1つのデータベースサーバ(260)との間の通信を容易に行えるようにする請求項7記載の1つまたは複数のコンピュータ可読ストレージ媒体(110)。
【請求項10】
前記コンピュータ実行可能命令は、前記少なくとも1つのプロセッサ(115)によって実行されたときに、
前記複数の定義済み欠陥パラメータと、
状態基準検査から得られた前記コンポーネントの物理的状態データを含む前記緊急検査後コンポーネントデータと、
前記物理的状態データと前記複数の定義済み欠陥パラメータとの比較結果とに応じて前記固有の、状態基準作業範囲を生成させる請求項9記載の1つまたは複数のコンピュータ可読ストレージ媒体(110)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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