説明

玄米を使用した栄養機能食品の製造方法及びそれにより得られる栄養機能食品

【課題】栄養機能食品として必要な量のミネラルを含有した玄米又は発芽玄米を提供する。
【解決手段】発芽時の水分である30%〜40%を既に含有する発芽玄米にミネラルを溶解させた水溶液を添加して、ミネラルを付加させた栄養機能食品を製造する。このとき、前記水溶液をpH3.0以上5.8以下に調整することにより、この水溶液に前記ミネラルを完全溶解させる。添加するミネラルは有機酸塩又は無機塩の形態であることが好ましい。pHを調整するには、有機酸又はリン酸を添加することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミネラルを溶解させた水溶液を玄米又は発芽玄米に添加して、ミネラルを付加させた栄養機能食品を製造する方法及びそれにより得られる栄養機能食品に関する。
【背景技術】
【0002】
国が定める栄養成分を一定量含み、食品衛生法施行規則及び健康増進法に基づく栄養表示基準にあてはまるものは、栄養機能食品として表示することができる。現在、栄養機能食品として機能表示できる栄養成分は、カルシウム、鉄、マグネシウム、亜鉛、銅のミネラル類5種類と、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ナイアシン、パントテン酸、ビオチン、葉酸のビタミン類12種類である。
【0003】
発芽玄米について栄養強化を目的にミネラルを添加する場合、栄養機能食品表示をすることができる。そのためには上記規則及び上記基準の規定により、1日当たりの摂取目安量に含まれる栄養成分量の上・下限値の規格基準に適合しなければならない。その摂取目安量を満たすためには、発芽玄米100g当たり、例えばカルシウム500〜250mg、鉄10〜4mg、マグネシウム300〜80mg必要である。
【0004】
従来、ミネラルを玄米又は発芽玄米に吸収させる方法として、下記特許文献1及び2の技術が知られている。いずれも、玄米の浸漬時に浸漬液にミネラルを添加してミネラルを吸収させることで栄養強化を図っている。
【特許文献1】特開2004-097094
【特許文献2】特開2000-050818
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来技術の方法では、実際には胚芽の部分だけが吸収に関与するため、その吸収量は僅かである。添加するミネラルに予めコーテイング助剤を加えて表面付着量を増長させる等の予備処理を行ったとしても、安定性に欠け、高濃度のミネラルを吸収させることは困難である。
【0006】
また、発芽玄米を充填した袋又は容器に上記の量のミネラルを直接添加しても塊りとなったり、発芽玄米表面に粉を噴くような現象が起きたりして、容易に玄米全体に均一にならない。
【0007】
さらに、発芽玄米は既に浸漬時の水分を35%含有するため、発芽玄米100gに対して10cc以上の水分を添加すると殺菌中に発芽玄米が加熱により、添加した水分を吸収して糊状に固まり、開封後の使用が困難になる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するためには、上記ミネラル量を発芽玄米100gに対して10cc以下の水に溶解させて、しかも、その溶液が容器中の発芽玄米に均一になるようにすればよいことになる。本発明は、この課題を解決し、所期の量のミネラルを含有した発芽玄米を栄養機能食品として提供することを目的とする。
【0009】
本発明者等は、ミネラルの溶解性を高める方法として有機酸塩又はリン酸塩の形態が最も適していること、そしてそれらはpHが酸性域で溶解性を増すことを発見し、本発明を完成させた。
【0010】
本発明は、ミネラルを溶解させた水溶液を玄米又は発芽玄米に添加して、ミネラルを付加させた玄米の栄養機能食品を製造する方法において、前記水溶液をpH3.0以上5.8以下に調整することにより、この水溶液に前記ミネラルを完全溶解させることを特徴とする、玄米を使用した栄養機能食品の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の方法によって得られる玄米又は発芽玄米は、所期の量のミネラルを含有する、優れた栄養機能食品である。さらに、従来技術と異なり、ミネラルが塊りとなったり、発芽玄米表面に粉を噴くような現象が起きたりすることなく、加熱しても、糊状に固まることもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明で使用する発芽玄米は、発芽時の水分である30%〜40%を既に含有するものであることが好ましい。
【0013】
前記ミネラルは、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅のうちの少なくとも1つである。これらのミネラルを玄米又は発芽玄米に吸収させるには、ミネラルを有機酸塩又は無機塩の形態にしておくことが好ましい。有機酸塩としては、例えば発酵乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、乳酸カルシウム、グルコン酸乳酸カルシウムの単独又は併用が可能である。無機塩としては、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、塩化マグネシウムの単独又は併用が可能である。
【0014】
ミネラル溶解液をpH3.0以上5.8以下に調整するためには、有機酸(例えば、クエン酸、酢酸、乳酸)又はリン酸を添加することが好ましい。例えば、20℃時のクエン酸溶液10cc当りのクエン酸添加量0.0053gでpH3.0、クエン酸溶液10cc当りのクエン酸添加量0.0004gでpH5.8になる。この濃度でのクエン酸溶液の発芽玄米への添加は風味を損なうことがない。
【0015】
ミネラルを溶解する溶液の量は、玄米又は発芽玄米に対して10%以下であることが好ましい。溶解を助けるために、溶液の水温を30℃から60℃に加温することが好ましい。
【0016】
このようにして溶解させたミネラル溶液を発芽玄米の充填と同時に注入装置で注入し、速やかに脱気又は真空によって容器の中の空気を抜いて玄米粒間の空間を極力除いて密封し殺菌する。このようにして、加熱による糊化と同時に余分な水分だけが玄米に吸収され均一にミネラルが行き渡り、玄米表面に異物のような白い粉末の発生がなく、玄米同士が糊状に固まり原型がくずれて開封時の使用が困難になることもなく良好な発芽玄米の栄養機能食品が製造できる。
【0017】
また、上述したように広い範囲(水溶液10cc当りカルシウムイオン換算1mg〜600mg)の濃度の溶液を容易に作成出来ることにより、玄米の発芽工程における浸漬時間と発芽玄米の含有水分の関係から割り出した当該発芽玄米の水分に適切な添加水溶液濃度を組合せることにより、発芽玄米の水分範囲をコントロールできる。
【実施例1】
【0018】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0019】
栄養強化のミネラル原料としては、カルシウムの吸収を目的として、グルコン酸乳酸カルシウムを使用した。
【0020】
清浄な水を100cc用意し、カルシウムイオンとして4gになるようにグルコン酸乳酸カルシウム(カルシウムイオン11%として)38gを添加して溶解した。完全溶解を速めるために、40℃〜60℃に溶液を加熱した。但し、脱気又は真空包装するときには、50℃以下に温度を下げる必要があった。注入直後に充填した玄米で急速冷却されて品温が30℃以下になるので、脱気又は真空時に沸騰して袋から漏れることはない。
【0021】
17時間浸漬した発芽玄米を水切りし、1袋当たり100g充填し、先ほど溶解したカルシウム溶液を8cc注入して真空包装機で真空下で密封した。この真空包装した発芽玄米をレトルト殺菌F値7で殺菌して製品とした。
【0022】
本品を開封し、3合炊きの市販電気炊飯釜にほぐして入れた。従来の発芽玄米製品と変わらない、ほぐし入れる扱いができた。この発芽玄米200gに対して180ccの炊き水と炊飯時に炊飯釜から蒸発する水分量80ccを加えた総炊き水量260ccを加えて炊飯した。炊飯後に対象品として通常の発芽玄米製品と比較する官能検査を行い、酸味もほとんど感じない風味良好であることがわかった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミネラルを溶解させた水溶液を玄米又は発芽玄米に添加して、ミネラルを付加させた栄養機能食品を製造する方法において、前記水溶液をpH3.0以上5.8以下に調整することにより、この水溶液に前記ミネラルを完全溶解させることを特徴とする、玄米を使用した栄養機能食品の製造方法。
【請求項2】
前記発芽玄米が発芽時の水分である30%〜40%を既に含有するものである請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ミネラルがカルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅のうちの少なくとも1つである請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記ミネラルが有機酸塩又は無機塩の形態であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記有機酸塩が発酵乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、乳酸カルシウム、グルコン酸乳酸カルシウムのいずれかである請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記無機塩がリン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、塩化マグネシウムのいずれかである請求項4記載の方法。
【請求項7】
有機酸又はリン酸の添加により、pHを調整する請求項1ないし6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記有機酸がクエン酸、乳酸、酢酸のいずれかである請求項7記載の方法。
【請求項9】
ミネラルを溶解する溶液の量が玄米又は発芽玄米に対して10%以下である請求項1ないし8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
ミネラルを溶解する水溶液を30℃〜60℃に加温する請求項1ないし9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
完全溶解したミネラル溶液を玄米又は発芽玄米が充填された袋に添加し脱気又は真空密封することを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれかの方法により得られることを特徴とする、玄米又は発芽玄米を使用した栄養機能食品。


【公開番号】特開2006−288331(P2006−288331A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−116425(P2005−116425)
【出願日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(594008006)株式会社ニッテツ・ファイン・プロダクツ (1)
【Fターム(参考)】