説明

玉掛ワイヤーのより防止治具

【課題】軽量・形状コンパクトで扱いやすく、吊り荷の大きさの変化に対応できる玉掛ワイヤーのより防止治具を提供する。
【解決手段】揚重装置のフック2に引っかけられる吊持部3と、該吊持部の下部に設けられる支持部と、該支持部によって支持される二以上の腕部5と、該腕部の端部に各々設けられる挿通部6とでなり、前記腕部5が屈曲自由自在で無負荷において元の状態に復帰する弾性を有してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーン等の揚重手段で被吊持物を玉掛ワイヤーで吊持する際の、玉掛ワイヤーの縒(よ)りを防止するより防止治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、吊り荷をクレーン等で玉掛ワイヤーによって吊り上げる場合に、フックを中心にして吊り荷が回転して、吊り荷に係止させた玉掛ワイヤーが絡まってしまうことが多い。この玉掛ワイヤーの絡まりを防止すべく、例えば、従来例1として、略水平に保つH型鋼に複数本のワイヤーを吊り下げたものや、従来例2として棒状の絡み防止治具などが知られている。
【0003】
前記絡み防止治具は、吊り下げワイヤーの下端部が連結される治具本体と、この治具本体に所定間隔離間して形成され前記玉掛ワイヤーが1本ずつ挿通される複数の挿通部を具備してなる吊り具として知られている(特許文献1参照)。
【0004】
前記治具本体は、一文字状をなす鋼製のフレームで形成されるものである。この治具本体の両端部に形成された挿通部は、玉掛ワイヤーが挿通できる大きさであり、更に、玉掛ワイヤーのなす角度が30°になるように位置決めされている。吊り荷の大きさに応じて治具本体の長さを可変できるように、伸縮自在にされている。
【特許文献1】特開平10−310358号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来例1におけるH型鋼の治具では、全体が鋼製で重量があり、扱いにくく、保管するにも場所を要して不便であり、外部に置きっぱなしでは錆の問題がある。また、従来例2では、治具本体両端の挿通部の位置が決まっているので、つり上げ時における玉掛ワイヤーの張る角度が決められていることになり、いろいろな大きさの吊り荷に対して臨機応変に対応できず、玉掛ワイヤーの開き角度が適当でないと、挿通部で擦れて玉掛ワイヤーが切断されるおそれがある。更に、その切断を防止するためには、予め複数個の挿通部を用意しなければならないという不便さがある。
本発明に係る玉掛ワイヤーのより防止治具は、このような課題を解決するために提案されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る玉掛ワイヤーのより防止治具の上記課題を解決して目的を達成するための要旨は、揚重装置のフックに引っかけられる吊持部と、該吊持部の下部に設けられる支持部と、該支持部によって支持される二以上の腕部と、該腕部の端部に各々設けられる挿通部とでなるより防止治具であって、前記腕部が屈曲自由自在で無負荷において元の状態に復帰する弾性を有することである。
【0007】
また、少なくとも腕部及び挿通部が、金属製ワイヤーで一体に形成されていること、;
前記吊持部が、金属製ワイヤーを環状にしてその交差部をロック部材で固定してなること、;
前記挿通部を形成するように環状にされた金属製ワイヤーの端部が、ロック部材で固定されていること、;
を含むものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の玉掛ワイヤーのより防止治具によれば、腕部が屈曲自由自在で無負荷において元の状態に復帰する弾性を有するので、揚重装置のフックを中心にして斜めに張り出す玉掛ワイヤーが、吊り荷の大きさによってその角度が変わっても、絡みを防止するとともに、前記腕部がしなやかに撓むことができる。例えば、玉掛ワイヤーの開く角度が小さくなれば、腕部が窄まるように撓み、一方、開く角度が大きくなれば、挿通部が自然に上方に迫り上がり、腕部がそれに追従して撓む。よって、吊り荷の大きさに対応させて挿通部を複数設けておく必要がない。また、従来例2で示したような棒状の治具本体の長さを伸縮させるような構造にすることも、本発明においては不要である。このように、1つの本発明に係るより防止治具で複数種類の吊り荷に対応できるものである。
【0009】
また、このより防止治具を金属製ワイヤーで、例えば、玉掛ワイヤー等で形成することで、全体が軽量で、低コストになり、持ち運びや治具としての使用において取り扱いやすくなる。更に、腕部を屈曲させて吊持部と重ねるようにすることで、コンパクトに畳まれて、収納場所を多くとらず保管場所に困らない。また、容易に室内保管できることで、雨に暴露されることなく錆の問題も生じない。
【0010】
金属製ワイヤーで挿通部を形成すれば、環状にした「へび口」の向きも自由に変えられる。そして、麻芯ワイヤー又は鋼芯ワイヤーを吊り荷の重量により選択して使用することができる。また、金属製ワイヤーの径を吊り荷の重量に応じて変えることで、腕部の弾性力を適切に調整することができる。更に、吊り荷に応じて4点吊りする場合には、このより防止治具を2個使用するか、又は、腕部の先の挿通部を4カ所に増やして使用するかで対応できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に係る玉掛ワイヤーのより防止治具1は、図1乃至図2に示すように、揚重装置のフック2に引っかけられる吊持部3と、該吊持部3の下部に設けられる支持部4と、該支持部4によって支持される二以上の腕部5,5と、該腕部5の端部に各々設けられる挿通部6とでなるより防止治具である。この治具の全体の長さLは、一例として略1m程度であり、全体の重さは、金属製ワイヤーで一体に形成した場合で約3〜4kg程度であり、作業者が一人で軽く持ち運びできるものである。
【0012】
前記腕部5が屈曲自由自在で無負荷において元の状態に復帰する弾性を有するものである。よって、これを形成するには、例えば、玉掛ワイヤー8等の金属製ワイヤーで一体に形成する。この金属製ワイヤーは、例えば、鋼芯ワイヤー若しくは麻芯ワイヤーであり、吊り荷9の重量に応じて選択される。なお、この腕部5は、直接、吊り荷9の荷重が加わるわけではないので、例えば、合成樹脂製とすることもできる。
【0013】
前記吊持部3は、前記腕部5と一体にしても良く、別体にしても良い。例えば、一体にする場合には、図2に示すように、玉掛ワイヤー等の金属製ワイヤーを環状にしてその交差部をロック部材7で固定する。このロック部材7は、玉掛ワイヤー8を制作するのと同様に、鉛をかしめたものである。よって、工場で容易に吊持部3を製作することができる。この場合、ロック部材7が支持部4となる。
【0014】
一方、腕部5と別体に吊持部3を形成する場合には、図3に示すように、例えば、所望板厚の金属製板でフック用の孔3aが設けられた三角板3bとする。この三角板の下部を腕部5を支持する支持部4となる鉛7に固着する。
【0015】
前記腕部5の端部に設けられる挿通部6は、図2に示すように、腕部5と一体に形成する場合は、金属製ワイヤーを玉掛ワイヤー8が挿通できるような大きさの環状して、その金属製ワイヤーの端部との接点部をロック部材7で固定する。このように、前記吊持部3、腕部5、挿通部6を金属製ワイヤーで一体に形成することができる。
【0016】
なお、この挿通部6と腕部5とを別体にして、挿通部6が継ぎ手軸心周りに自在に回転したり、腕部5の軸心に対して傾いて屈曲したりするように、自在継手等で連結することもできる。それにより、玉掛ワイヤー8の動きに機敏に反応するようになる。
【0017】
このようにして形成される玉掛ワイヤーのより防止治具1を使用するには、図4に示すように、この玉掛ワイヤーのより防止治具1をクレーンのフック2に掛ける。次に、吊り荷9のフック等に掛けた玉掛ワイヤー8の端部を前記玉掛ワイヤーのより防止治具1の挿通部6に通して更に前記フック2に掛ける。これを両方の玉掛ワイヤー8に対して行う。
【0018】
そして、クレーンでフック2を吊り上げる。すると、玉掛ワイヤーのより防止治具1は最初は、図2に示すように、腕部5が直線状になっているが、玉掛ワイヤー8がピンと張るとその角度に応じて挿通部6を下に移動させ、図4に示すように、腕部5が挿通部6の移動に追従してしなやかに撓む。よって、玉掛ワイヤー8と、玉掛ワイヤーのより防止治具1の挿通部6との間で、強く擦れることが無く、ワイヤー切断のおそれがない。
【0019】
クレーンで吊り荷9を揚重した後に、吊り荷9が回転するようなことがあっても、前記玉掛ワイヤーのより防止治具1の腕部5の作用によって捻れることがなく、玉掛ワイヤー8同士が絡まることがない。
【0020】
前記腕部5は、揚重が終了して玉掛ワイヤー8が緩んだり外されたりすると、元の図2に示す直線状態に戻るものである。また、玉掛ワイヤーのより防止治具1の運搬,収納に関しては、図5に示すように、前記挿通部6,6を、腕部5を撓ませて吊持部3側に寄せる。そして、挿通部6、6同士をビニールタイ等の紐部材10で縛ると、全体として非常にコンパクトになる。この収納状態にして持ち運ぶことができ、若しくは、室内に少スペースで保管することができる。これにより、玉掛ワイヤーのより防止治具1を一人で容易に持ち運びができるとともに、錆などの発生が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る玉掛ワイヤーのより防止治具1の使用状態を示す説明図である。
【図2】同本発明の玉掛ワイヤーのより防止治具1の正面図である。
【図3】同玉掛ワイヤーのより防止治具1の他の実施例に係る正面図である。
【図4】同玉掛ワイヤーのより防止治具1の使用方法を説明する説明図である。
【図5】同玉掛ワイヤーのより防止治具1を収納状態にする説明図である。
【符号の説明】
【0022】
1 玉掛ワイヤーのより防止治具、
2 フック、
3 吊持部、
4 支持部、
5 腕部、
6 挿通部、
7 ロック部材(鉛)、
8 玉掛ワイヤー、
9 吊り荷、
10 紐部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揚重装置のフックに引っかけられる吊持部と、該吊持部の下部に設けられる支持部と、該支持部によって支持される二以上の腕部と、該腕部の端部に各々設けられる挿通部とでなるより防止治具であって、
前記腕部が屈曲自由自在で無負荷において元の状態に復帰する弾性を有すること、
を特徴とする玉掛ワイヤーのより防止治具。
【請求項2】
少なくとも腕部及び挿通部が、金属製ワイヤーで一体に形成されていること、
を特徴とする請求項1に記載の玉掛ワイヤーのより防止治具。
【請求項3】
吊持部が、金属製ワイヤーを環状にしてその交差部をロック部材で固定してなること、
を特徴とする請求項2に記載の玉掛ワイヤーのより防止治具。
【請求項4】
挿通部を形成するように環状にされた金属製ワイヤーの端部が、ロック部材で固定されていること、
を特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の玉掛ワイヤーのより防止治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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