説明

玩具の関節装置

回転体の運動面を変更することで、1つの玩具に対して回転体を運動させるための玩具の動かし方及び模擬可能な形象が多様な玩具の関節装置を提供する。
回転体4を支持して回転体4の回転軸となる回転体支持部材5を基体3に対して相対移動可能とする回動機構22を備える。さらに、回動機構22に連結され、回動機構22を基体3に対して回転軸を含む面内で回転可能とする回転機構21を有し、回転機構21は、回転機構21をその回転方向に係止する回転係止手段を備える。回転係止手段は、回転機構21を一方の外側端面から押止する押止手段14と、回転機構21を他方の外側端面から付勢する付勢手段11とからなり、回転機構21の両端面に摩擦力を発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基体に対して回転自在に設けられた回転体を有する玩具の関節装置に関する。
【背景技術】
【0002】
定形の基体と該基体の先端に回転自在に取り付けられた回転体とからなる玩具の基体を握持し、例えば左右又は前後に揺動させて、回転体を運動させる遊技方法がある。
【0003】
このような玩具として、例えば縦軸と横軸で構成される十字形状の基体を有し、回転体として機能し、球形の重りが取り付けられて結ばれた紐が、回転軸となる縦軸と横軸の端部に形成された円形の溝に掛けられた玩具、又は、縦軸と横軸で構成される十字形状の基体を有し、回転体として機能する腕の回転軸となる部分が横軸両端部に着脱自在に及び回動自在に嵌入する玩具(特許文献1参照)がある。
【0004】
【特許文献1】実公昭49−21666号公報(第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1等の玩具には回転体の回転軸(縦軸及び横軸)を可動させる機構が備えられておらず、回転体の回転軸の方向が転換されないので、各回転体の運動面は必然的に1つに確定する。すなわち、回転体の運動面を変更することができないので、1つの玩具に対して回転体を運動させるための玩具の動かし方が少ない種類に限定される。
【0006】
また、特許文献1では腕が着脱自在であるので、異なる形象の腕に付け替えて意匠の変化を楽しむことができる。しかしながら、各回転体の運動面は1つしか形成されないので、模擬可能な形象が限定される。
【0007】
本発明の目的は斯かる課題に鑑みてなされたもので、回転体の運動面を変更することで、1つの玩具に対して回転体を運動させるための玩具の動かし方及び模擬可能な形象が多様な玩具の関節装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、玩具の基体に対して回転自在に設けられた回転体を有する玩具の関節装置であって、前記回転体を支持して前記回転体の回転軸となる回転体支持部材を前記基体に対して相対移動可能とする回動機構を備えることを特徴とする。関節装置の回動機構を可動させることで回転体の回転軸である回転体支持部材が方向転換され、回転体の運動面が変更される。
【0009】
前記回動機構をその回動方向に係止させる回動係止手段を有することもある(請求項2)。回転体を運動させるために基体が動かされるので、基体が動かされている際にその動きに伴って回動機構が勝手に可動する虞がある。しかし、回動機構の回動方向に回動機構を係止させる回動係止手段が備えられているので、回動機構は自由に回動しない。
【0010】
前記回動機構に連結され、前記回動機構を前記基体に対して回転軸を含む面内で回転可能とする回転機構を有することもある(請求項3)。この場合、回転体の回転軸を基体に対して相対移動可能とする回動機構が回転機構によって基体に対して回転可能となることで、回転軸の方向が増大し、それに伴って回転体の運動面も一層変更され得る。
【0011】
前記回転機構をその回転方向に係止させる回転係止手段を有することもある(請求項4)。回転体を運動させるために基体が動かされるので、基体が動かされている際にその動きに伴って回転機構が勝手に回転する虞がある。しかし、回転機構の回転方向に回転機構を係止させる回転係止手段が備えられているので、回転機構は自由に回転しない。
【0012】
前記回転係止手段は、前記回転機構を一方の外側端面から押止する押止手段と、前記回転機構を他方の外側端面から付勢する付勢手段とを備え、前記回転機構の両端面に摩擦力を発生させることもある(請求項5)。回転機構がその回転軸の一方から押止手段に押止され、他方から付勢手段に付勢されているので、回転機構の押止手段及び付勢手段との接触面で摩擦力が発生する。この摩擦力によって回転機構がその回転方向に係止する。
【0013】
前記回転機構の回転を防止する回転防止手段が前記付勢手段に設けられていることもある(請求項6)。上述したように回転機構と付勢手段との間に摩擦力が発生するので回転機構が係止しても回転機構と付勢手段が一体となって供回りする虞があるものの、付勢手段に回転機構の回転を防止する回転防止手段が設けられているので、回転機構と付勢手段とが一体となって回転することが防止される。
【発明の効果】
【0014】
本発明は上記の通り、回転体を支持して回転体の回転軸となる回転体支持部材を基体に対して相対移動可能とする回動機構が備えられているので、回転体の回転軸の方向が転換され、回転体の運動面が変更されることで、1つの玩具に対して回転体を運動させるための玩具の動かし方及び模擬可能な形象を多様にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0016】
(実施の形態1)
図1〜図3に本発明の関節装置2が実施される玩具1を示す。玩具1は、例えば玩具1を揺動させることによってその先端部に取り付けられた回転自在な回転体4を運動させて遊ぶ道具である。玩具1は握持するための基体3を備え、基体3には例えば回転体4の回転軸となり、回転体4を支持する回転体支持部材5の方向を転換させて回転体4の運動面を変更する関節装置2が備えられている。
【0017】
関節装置2は、回転体支持部材5を回動させる回動機構22と、回動機構22を回転させる回転機構21からなり、この回転と回動を組み合わせることによって回転体支持部材5の方向を転換させる。回転体4は回転体支持部材5を介して関節装置2に設けられている。
【0018】
基体3は、例えば手で握持される握持部6と、握持部6と関節装置2を連結する連結部7とを有する。握持部6は例えば木製で、断面が正方形の角柱形状に形成されている。握持部6には握持し易くするために、例えばゴム製のグリップ8が略下半部に具備されていることが望ましい。
【0019】
握持部6のグリップ8が具備されている側と別の端部(図において上端部)には、例えば3つの連結部7、7、7がT字状に配置されて固定されている。1つの連結部7は、握持部6の端面(図において上端面)で握持部6に接続し、握持部6の軸上に配置され、他の2つの連結部7、7は握持部6を介して対向した状態で握持部6の側面で握持部6に接続し、握持部6に直交している。ここでは、握持部6が正方形断面の角柱形状に形成されていることで、連結部7が接続する端面及び側面が平坦となるので、握持部6と連結部7の接地面積が大きくなり、玩具1は構造的安定性に優れる。
【0020】
連結部7は、例えば握持部6に固定される固定部材9と、後述する付勢手段11、回転機構21の一部及び押止手段14の一部を収納する収納部材10とからなる。固定部材9は例えば円柱形の木片であり、その一端面の中央部には凹部9aが形成され、外側に開口した状態で握持部6に固定されている。凹部9aには、例えば透明のプラスチック製で筒状の収納部材10が嵌入して、収納部材10は例えば接着剤によって固定部材9に固定されている。ここでは、凹部9a及び収納部材10の断面は共に円形となっている。
【0021】
収納部材10の中には、固定部材9に接続している端部側から、回転機構21に付勢力を作用させる付勢手段11及び回転機構21の一部が収納されている。収納部材10の固定部材9に接続している端部と反対側の端部には押止手段14の一部が収納された状態で固定されている。付勢手段11、回転機構21及び押止手段14は、それぞれの軸が収納部材10の軸と一致する状態で、一列に並設されている。
【0022】
付勢手段11は、回転機構21に付勢力を作用させるための付勢部材12と、付勢部材12の付勢力を確実に回転機構21に伝達するための付勢力伝達部材13とで構成されている。付勢部材12には例えば金属製のコイルばねが適用され、付勢部材12は一端で固定部材9、他端で付勢力伝達部材13に当接している。
【0023】
付勢部材12は収納部材10に固定された押止手段14に付勢力伝達部材13、回転機構21を介して押止され、付勢状態で固定部材9に押し付けられている。付勢部材12は付勢状態になっているものの、一層大きな付勢状態になり得る状態である。つまり、本実施の形態に例示されるように付勢部材12にコイルバネが適用されている場合、バネは圧縮されてさらに大きな弾性力を作用させ得る状態である。
【0024】
付勢力伝達部材13には例えば円柱形状の木片が適用され、付勢力伝達部材13は一端で付勢状態にある付勢部材12と当接し、他端で回転機構21を介して押止手段14に押止されている。押止手段14が収納部材10に固定され、回転機構21は付勢部材12の付勢力を減少させる方向(図において固定部材9から押止手段14へ向かう方向)へは移動しないので、付勢力伝達部材13には常時付勢力が作用する。したがって、付勢部材12は軸方向(付勢力の作用する方向)に対して付勢力伝達部材13と同一の挙動を示す。
【0025】
付勢力伝達部材13の回転機構21側の端部に、回転機構21を回転方向に係止する係止部材13aが具備されている。係止部材13aには、図4に示すように、例えばプラスチック製の円形の平板13bに半円球状の凸部13cが平板13bの周方向に外側を向いて複数個(図において4個)形成されているものが適用され、係止部材13aは後述する回転機構21に具備される被係止部21dと係合する。
【0026】
図1〜図3に示すように、付勢力伝達部材13の側面に、付勢力伝達部材13の周方向への回転を防止するための回転防止部材13dが突設されている。収納部材10の、回転防止部材13dに対応する箇所には、長軸が収納部材10の軸に平行な長孔10aが形成されている。回転防止部材13dは、付勢力伝達部材13の周方向に対して長孔10aの孔壁に係止されると共に、長孔10aの中で長孔10aの長軸方向に摺動自在となっている。
【0027】
回転機構21は例えば、回転機構21が自由に回転するのを防止するための回転防止部21aと、回転防止部21aに接続して収納部材10の軸線上に位置し、回転の軸となる軸部21bと、後述する回動機構22に接続する接続部21cとを有し、回転機構21は軸部21bを中心に回転可能となっている。
【0028】
回転防止部21aは例えば円柱形の木片であり、付勢力伝達部材13と押止手段14の軸方向の間に介在している。軸部21bは例えば木製で、回転防止部21aより断面の小さい円柱形であり、回転防止部21aから押止手段14側へ突設され、押止手段14を貫入して、押止手段14の外側端面から軸方向に突出している。
【0029】
回転機構21の付勢力伝達部材13に対向する面には、被係止部材21dが具備されている。被係止部材21dは係止部材13aに係合する形態であり、係止部材13aを具備した付勢力伝達部材13が被係止部材21dを具備した回転機構21を回転機構21の回転方向に係止する。被係止部材21dには例えばプラスチック製の円形の平板21eに、係止部材13aの凸部13cに対応する形状である半円球状の凹部21fが平板21eの周方向に複数個(図において4個)形成されているものが適用される。
【0030】
押止手段14は例えば木製で、収納部材10の内部に挿入する挿入部14aと、収納部材10の端面で軸方向外向きに係止される被係止部14bとを有する。押止手段14には全長に亘って貫通孔14cが形成され、貫通孔14cには回転機構21の軸部21bが貫入している。
【0031】
挿入部14aは例えば円柱形に形成され、収納部材10に嵌入して、収納部材10の内面に例えば接着剤等で固着されている。被係止部14bは例えば収納部材10より断面の大きい円柱形に形成されて挿入部14aに連設され、被係止部14bの挿入部14aに接続する側の端面が収納部材10の端面に当接している。
【0032】
収納部材10の中で、回転機構21の一端部が付勢状態にある付勢部材12に付勢力伝達部材13を介して軸方向に付勢されながら、他端部が収納部材10に固定された押止手段14に付勢部材12に付勢される向きと反対の向きに押止されている。したがって、回転機構21の付勢力伝達部材13側の端部に固定された被係止部材21dと、付勢力伝達部材13の回転機構21側端部に固定された係止部材13aとの接触面で摩擦力が発生する。一方、回転機構21と押止手段14との接触面でも摩擦力が発生する。
【0033】
したがって、回転機構21の両端面で発生する摩擦力の和以上の力が回転機構21の回転方向に導入されない限り、回転機構21は自由に回転することができない。このように、付勢手段11と押止手段14は回転機構21を回転方向に係止する回転係止手段として機能する。
【0034】
摩擦力のパラメータとして、付勢部材12の付勢力の大きさ、接触面の摩擦係数等がある。本実施の形態の係止部材13aと被係止部材21dのように、例えば対向して接触する面の一方にその周方向に複数の凸部が形成され、他方にその周方向に複数の凹部が形成され、凸部と凹部が係合する形態である場合、接触面の摩擦係数が増大するので、この接触面で発生する摩擦力も増大する。
【0035】
玩具1は、それ自体を運動させて遊ぶ道具であるので、玩具1が運動している最中に回転機構21が自由に回転しないことを望む場合、想定される運動の速度や加速度等を考慮して、回転機構21が自由に回転しないように付勢力や摩擦係数等の摩擦力のパラメータを設定することが可能である。
【0036】
凸部13cと凹部21fは半円球状であるので、回転機構21にその回転方向に力が導入されると、図5に示すように、凸部13cがその形状に沿って凹部21fから脱出して、被係止部材21dの平坦部21gに載り上がる。ここで、付勢力伝達部材13は回転防止部材13dによって周方向への回転が阻止されながら、付勢力に抵抗して軸方向に対して回転機構21から遠ざかる向き(図5において直線の矢印の向き)に摺動する。この時、回転防止部材13dも収納部材10の長孔10a内を長軸方向に摺動する。
【0037】
さらに回転機構21にその回転方向に力が導入されると、凸部13cに平坦部21gを押圧された状態で被係止部材21dが回転し、図6に示すように、回転方向に対して凸部13cの位置に次の凹部21fが配置されると、凸部13cがその凹部21fに嵌入すると共に、付勢力伝達部材13が回転機構21に近づく向き(図6において直線の矢印の向き)に摺動する。
【0038】
このように、一の凸部13cに、その凸部13cに嵌入されている一の凹部21fからその一の凹部21fに周方向に隣接する他の凹部21fが入れ替わって嵌入されることによって、一の凸部13c又は一の凹部21fから周方向に隣接された他の凸部13c又は他の凹部21fに架けて形成される中心角θ分(図4に図示)、回転機構21は回転したこととなる。
【0039】
凸部13cと凹部21fが半円球状に形成されておらず、例えば立方体等の設置面に対して直交する側面を有する形状に形成されている場合、凸部と凹部はお互いにこれらの形状的特徴からこれらが設置される面に平行な方向に完全に係止し合うので、回転機構21は回転することができない。
【0040】
したがって、回転機構21を回転させるためには回転防止部材13aを長孔10a内で直接付勢部材12側に摺動させることで、付勢力伝達部材13を付勢部材12側に摺動させ、係止部材13aと被係止部材21cの係合状態を一端解除してから回転機構21を回転させる必要がある。
【0041】
また、係止部材13aに凹部が形成され、被係止部材21dに凸部が形成されていてもよい。さらには、回転機構21と押止手段14との間にも係止部材13aと被係止部材21dを具備させることも可能である。凸部と凹部が設けられた係合手段が講じられると、押止手段14が収納部材10に固定されているので回転機構21を回転させるためには、軸方向に拘束されていない回転機構21が軸方向に摺動する必要がある。
【0042】
軸部21bの回転防止部21aと反対側の端部には接続部21cを介して回転体4の回転軸となる回転体支持部材5の方向を転換するための回動機構22が設けられている。回動機構22は例えば、回転体支持部材5を回転機構21の回転方向と交叉する方向(図において直交する方向)に回動させる回動部材23と、回動部材23を収納する収納体24と、回動部材23と一体となり回動部材23を回動させると共に、回転体4の回転軸となる回転体支持部材5と、回転体支持部材5を係止する回動係止手段26とを有する。
【0043】
図7(a)に示すように、収納体24は例えば木製で一対の収納体部材25、25からなり、収納体部材25の一端面の中央部には、回動部材23が嵌合する嵌合穴25aが形成され、嵌合穴25aの周囲に回動部材23と一体となっている回転体支持部材5が回動自在となる回動穴25bが嵌合穴25aに連通して外縁まで形成されている。
【0044】
図1、図7(a)に示すように、一対の収納体部材25、25が嵌合穴25a及び回動穴25bがそれぞれ対向する状態で接合して、収納体24が形成されている。嵌合穴25aに回動部材23が嵌合し、回転体支持部材5が回動穴25bを貫通して収納体24の外周から突出した状態で、例えば接続面に接着剤が塗布されて収納体部材25同士が固着している。
【0045】
図7(a)、図7(b)に示すように、収納体24の嵌合穴25a及び回動穴25bが設けられた部分以外の外形は直方体である。一対の収納体部材25、25が接合して双方の嵌合穴25aによって合成された穴の形状は回動部材23の形状に合致し、双方の回動穴25bが合成した穴の厚さt1は回転体支持部材5の厚さt2に略合致する。
【0046】
回動部材23は例えばプラスチック製の球体であり、回動部材23には例えば鋼製の棒体である回転体支持部材5がその軸線が回動部材23の中心を通る位置に取り付けられている。本実施の形態においては、回動穴25bが嵌合穴25aの周囲で周方向に90度の範囲に形成されているので、回転体支持部材5は90度の範囲で回動自在となる。
【0047】
回転体支持部材5が取り付けられた回動部材23が収納された収納体24に、回転体支持部材5が自由に回動するのを阻止する回動係止手段26が設けられている。回動係止手段26には例えばプラスチック製で所定厚さの矩形に形成された平板が適用され、回動係止手段26は例えば収納体24の直交する2つの側面に跨って外側から接合して、例えば回動係止手段26の外側から木ねじ等の固定手段27によって収納体24に固定されている。回動係止手段26の収納体24に対向する面が収納体24の外面と同一の形状に加工されていることが望ましい。
【0048】
回動係止手段26の回動穴25bに対向する位置に、回転体支持部材5が回動可能な回動孔26aが形成され、回動孔26aの例えば両端部と中間部には回転体支持部材5が嵌合する係止孔26bが形成されている。回動孔26aの幅t3は例えば回転体支持部材5の厚さt2より小さく、回動孔26aには回転体支持部材5が貫通して、外側へ突出している。
【0049】
回転体支持部材5は回動孔26aの、係止孔26bが形成されている以外の位置において回動孔26aの孔壁から回動孔26aの幅t3の内向きに力を受けるので、回転体支持部材5と回動係止手段26との間に摩擦力が発生する。また、係止孔26bは回転体支持部材5が嵌合可能に形成され、回動孔26aに連通し、回動孔26aは回転体支持部材5の厚さt2より小さい幅に形成されているので、回転体支持部材5が係止孔26bから回動孔26aに移動しようとする際に、移動しようとする向きと反対の向きに係止孔26bの孔壁に係止される。
【0050】
ここでは、係止孔26bは回動孔26aの両端部と中間部に形成され、回動孔26aは回動穴25bに対向しているので、何れかの端部を基準(0度)の位置とすると、回転体支持部材5は回動方向に対して0度、45度、90度の位置で係止される。
【0051】
回転体支持部材5が係止孔26bから回動孔26aへ移動する時には、回転体支持部材5が係止孔26bの孔壁を変形させる必要がある。したがって、回転体支持部材5に係止孔26bの孔壁を変形させて係止孔26bによる係止を突破する以上の力、又は回転体支持部材5と回動係止手段26との間の摩擦力以上の力が回動方向に作用されない限り、回転体支持部材5は回動孔26aで自由に回動されない。
【0052】
本実施の形態では、回転体支持部材5が回動機構22の回動部材23に直接取り付けられているので、回転体支持部材5を操作することで回動部材23を可動させて直接回転体支持部材5の方向を転換することができる。図1〜図3に示すように、回転体支持部材5の先端部には回転体支持部材5を操作し易くするための拡径部5aが設けられている。
【0053】
図1に示すように、回転体4には例えば軸孔4aが貫通して形成され、軸孔4aに回転体支持部材5が挿入して取り付けられ、回転体4は回転体支持部材5に直交する面内で回転体支持部材5を軸に回転自在な状態で回転体支持部材5に支持されている。回転体支持部材5の回転体4の両端面には回転体4が回転体支持部材5に沿って自由に摺動するのを防止する摺動防止手段5bが固定されている。回転体4はその回転方向に対していずれの手段にも拘束されていないので、回転体4の回転方向に基体3が揺動等によって動かされることで回転運動又は振り子運動する。
【0054】
このように、関節装置2を備えた玩具1では、回転機構21によって回動機構22を回転させ、回動機構22によって回転体支持部材5を回動させることによって、回転体支持部材5を様々な方向に転換させることが可能である。回動機構22による回動と回転機構21による回転の組合せで、本実施の形態では回転体支持部材5は回動部材23の中心を中心とし、回転機構21の軸方向外向きに形成される半円球の範囲において方向転換自在となるので、その分回転体4の回転等の運動面が多様化する。この回転体4の運動面の多様化に伴って、1つの玩具1における回転等の運動面が多様化するので、玩具1は道具としての機能が向上する。
【0055】
また、関節装置2を用いて、回転体4の回転軸の方向転換がされるので、回転軸を別の箇所に付け替えるという手段によって回転軸の方向転換を行う場合に起こり得るような、回転軸を形成する部材や回転体の紛失という虞がない。
【0056】
ここで、3つの回転体支持部材5、5、5の方向、すなわち3つの回転体4、4、4の例えば回転面等の運動面H、H、Hの組合せは、図8に示すように(図8(d)、(e)を除く)、3つの回転体の運動面H、H、Hを全て一致させる態様、図9に示すように、2つの回転体の運動面H、Hを一致させる態様、図10に示すように(図10(h)、(i)を除く)、3つの回転体の運動面H、H、Hを全て相違させる態様がある。ここでいう「一致」とは回転体4が運動して形成される面Hが平行ということとする。
【0057】
3つの回転体4、4、4の運動面H、H、Hが全て一致する態様として、例えば、図8(a)に示すように3つの回転体4、4、4の運動面H、H、Hが前後方向及び左右方向を軸とする水平面に形成される態様、又は、図8(b)に示すように運動面H、H、Hが紙面に対して前側で上下方向及び左右方向を軸とする鉛直面に形成される態様がある。運動面H、H、Hが前者の場合、それぞれの回転体4を運動させるためには、例えば基体3を左右方向又は前後方向に揺動させればよい。3つの回転体の運動面H、H、Hが全て一致する態様として、この他に例えば図8(c)に示すような態様がある。
【0058】
ここで、3つの回転体の運動面H、H、Hを図8(e)に表す図1の態様から図8(a)に示す3つの回転体の運動面H、H、Hが前後方向及び左右方向を軸とする水平面に形成される態様に変更するためには、図8(d)に示すように、左側と右側の回動機構22、22を回動孔26aが上方に開口するように90度回転させ、それぞれの回転体支持部材5を90度基体3側に回動させる。
【0059】
より具体的には、左側と右側に配置された回動体22、22を回転体21の凹部21fを1つ分(90度)、回動孔26aが上方に開口する向きに回転させ、回動孔26aの一端部に形成されている係止孔26bに収まっている回転体支持部材5を他端部に形成されている係止孔26bに回動(移動)させる。
【0060】
また、2つの回転体の運動面H、Hを一致させる態様として、例えば、図9(a)に示すように、左側と右側に配置された回転体の運動面H、Hが前後方向及び上下方向を軸とする鉛直面に形成され、上側に配置された回転体4の運動面Hが前後方向及び左右方向を軸とする水平面に形成される態様がある。この場合、それぞれの回転体4、4、4を運動させるためには、例えば基体3を前後方向に揺動させればよい。2つの回転体4、4の運動面H、Hを一致させる態様として、この他に例えば図9(b)〜図9(f)に示すような態様がある。
【0061】
さらに、3つの回転体の運動面H、H、Hを全て相違させる態様として、例えば、図10(a)に示すように、左側に配置された回転体4の運動面Hを前後方向及び右上がり方向を軸とする斜面に、右側に配置された回転体4の運動面Hを前後方向及び右下がり方向を軸とする斜面に、上側に配置された回転体4の運動面Hを前後方向及び左右方向を軸とする水平面に形成させる態様がある。
【0062】
それぞれの回転体4、4、4を運動させるためには、例えば基体3を左右方向又は前後方向に揺動させればよい。3つの回転体4の運動面H、H、Hが全て相違する態様として、この他に図10(b)〜図10(g)に示すような態様がある。
【0063】
ここで、3つの回転体4、4、4を図10(i)に示す図1の態様から図10(a)に示す3つの回転体4の運動面H、H、Hが相違して形成される態様に変更するためには、図10(h)に示すように左側と右側の回動体22、22を回動孔26aが上方に開口するように90度回転させ、それぞれの回転体支持部材5を45度基体3側に回動させる。
【0064】
より具体的には、左側と右側に配置された回動体22、22を回転体21の凹部21dを1つ分(90度)、回動孔26aが上方に開口する向きに回転させ、回動孔26aの一端部に形成されている係止孔26bに収まっている回転体支持部材5を中間部に形成されている係止孔26bに回動(移動)させる。
【0065】
回動孔26aの厚さt3は回動体支持部材5の厚さt2よりも小さいので、回動支持部材5を適当に回動させて回動孔26aの係止孔26b以外の位置で回動係止手段26によって回転体支持部材5を係止させることが可能である。したがって、例えば図10(g)に示すように、回転支持部材5を回動孔26aの係止孔26b以外の位置で係止させて回転体4の運動面を形成させても良い。
【0066】
このように、係止孔26bが設けられている位置以外の場所(本実施の形態においては0度、45度、90度以外の場所)においても、すなわち回動孔26aの回動範囲の全範囲で回動支持部材5を係止させることができるので、回転体4の運動面Hの自由度が高くなる。
【0067】
このように、基体3を様々な方向に運動させて回転体4を運動させられるように自分で調整して選択することが可能であるので、基体3の運動方向が多様である。さらに、回転体4の運動面を調整する際に、負荷が作用する回転体支持部材5の方向変換を行う操作をしなければならないので、リハビリ用等の健康器具としても活用することができる。
【0068】
また、回転体4の運動面Hが多様に変更されるので、運動面Hに応じて着脱自在な回転体4を交換して動物、昆虫や機械など様々な形象を模擬して外観を表現することも可能となる。
【0069】
(その他の実施の形態)
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されるものではない。上記実施の形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。例えば、握持部6、固定部材9、収納部材10等の各部材の形状や大きさ、材質等は上記に限られるものではない。
【0070】
また、図11に示すように、付勢部材12として同極が対向した1組の磁石を適用することも可能である。
【0071】
上記実施形態では、回動部材23が収納体24の回動穴25b内で回動することで、回転体支持部材5が1方向に90度の範囲で回動する場合について説明した。しかしながら、回転体支持部材5の回動方向は1方向に限らず、複数の方向に回動してもよい。また、回動範囲も90度に限られない。例えば、回動部材23を中心として回転体支持部材5を十字方向に180度の範囲で回動させる、図12に示す収納体240を備える構成としてもよい。
【0072】
収納体240は、上述した収納体24と同様に一対の収納体部材250、250からなる。収納体部材250は、嵌合穴25aと同様の嵌合穴250a及び回動穴250bを備えている。回動穴250bは、回動穴25bと同様に双方の回動穴250bが合成した穴の厚さt1が回転体支持部材5の厚さt2に略合致するが(図7参照)、嵌合穴250aの周囲で周方向に180度の範囲に形成されている。
【0073】
また、収納体部材250は、嵌合穴250aの中心を通って回動穴250bと交叉する方向(図において回動穴250bと十字方向に交叉する方向)に延びる回動穴250cを備えている。回動穴250cは、回転体支持部材5の厚さt2に略合致するように、回動穴250bを合成して形成される穴の厚さt1と同じ厚さを有している(図7参照)。双方の嵌合穴250cによって合成された穴は、嵌合穴250aの周囲で周方向に180度の範囲に形成される。
【0074】
互いに十字方向に交叉する回動穴250b及び250cが、嵌合穴250aの周囲で周方向にそれぞれ180度の範囲に形成されているので、回転体支持部材5は嵌合穴250aを中心として十字方向に180度の範囲で回動自在となる。
【0075】
また、上記実施形態では、回動部材23が収納体部材25の回動穴25b内で回動することで、回転体支持部材5が方向転換する場合について説明した。しかしながら、回転体支持部材5を方向転換させる回動機構22の構成はこれに限られず、例えば、図13〜図19に示す回動機構220〜224のように構成してもよい。
【0076】
図13に示す回動機構220は、回転体支持部材5を回転機構21の回転方向(図において矢印で示す方向)と交叉する方向(図において直交する方向)に回動させる回動部材230と、回動部材230と一体となり回動部材230を回動させる回転体支持部材5と、回動部材230の回転軸32と、回動部材230に付勢力を作用させる付勢手段28と、回転体支持部材5を係止する回動係止手段260とを有する。
【0077】
図13(b),(c)に示すように、回動部材230,回転軸32,及び付勢手段28は、例えば透明のプラスチック製で筒状の収納部材31に収納される。収納部材31は例えば接着剤によって接続部21cに固定されている。
【0078】
付勢手段28は、回動機構220に付勢力を作用させるための付勢部材29と、付勢部材29の付勢力を確実に回動部材230に伝達するための付勢力伝達部材30とで構成されている。付勢部材29には例えば金属製のコイルばねが適用され、付勢部材29は一端で接続部21c、他端で付勢力伝達部材30に当接している。
【0079】
付勢力伝達部材30には、例えばプラスチック製の円形の平板に半円球状の凸部30aが平板の中央部に外側を向いて形成されているものが適用され、付勢力伝達部材30は後述する回動部材230に具備される凹部230aと係合する。付勢力伝達部材30は一端で付勢状態にある付勢部材29と当接し、他端で回動部材230に押止されている。接続部21cが収納部材31に固定され、付勢部材29の付勢力を減少させる方向(図において付勢部材29と反対側へ向かう方向)へは移動しないので、付勢力伝達部材30には常時付勢力が作用する。したがって、付勢部材29は軸方向(付勢力の作用する方向)に対して付勢力伝達部材30と同一の挙動を示す。
【0080】
付勢部材29は収納部材31に固定された接続部21cに押止され、付勢状態で回動部材230に押し付けられている。付勢部材29は付勢状態になっているものの、一層大きな付勢状態になり得る状態である。つまり、本実施の形態に例示されるように付勢部材29にコイルバネが適用されている場合、バネは圧縮されてさらに大きな弾性力を作用させ得る状態である。
【0081】
回動部材230には、例えばプラスチック製の円形の平板に、付勢力伝達部材30の凸部30aに対応する形状である半円球状の凹部230aが、平板の側面に周方向に複数個(図において5個)形成されているものが適用される。凹部230aは、回動部材230の中心から回転体支持部材5と反対側に向けた180度の範囲で回動部材230の外周面を等角度で4分する位置に、それぞれ設けられている。
【0082】
収納部材31には収納部材31の軸心と交叉する方向(図において直交する方向)に位置して収納部材31の側壁を貫通した一対の軸孔31aが形成されている。軸孔31aには、回転軸32が挿入して取り付けられ、回動部材230は回転軸32に直交する面内で回転軸32を軸に回転自在な状態で回転軸32に支持されている。回転軸32の回動部材230の両端面には回動部材230が回転軸32に沿って自由に摺動するのを防止する摺動防止手段33が固定されている。
【0083】
収納部材31の側壁には、軸孔31aに挿入して取り付けられた回転軸32の軸線と直交する面に沿って延びる一対の回動穴31bが形成されている。回動穴31bは、収納部材31の外側の端部から軸孔31aの形成位置よりも付勢力伝達部材30側まで、互いに向き合い延びている。
【0084】
回動部材230には、回転体支持部材5がその軸線が回動部材230の中心を通る位置に取り付けられている。本実施の形態においては、軸孔31aに挿入して取り付けられた回転軸32の軸心を中心として収納部材31の外方に向けた180度の範囲に回動穴31bが形成されているので、回転体支持部材5は回転軸32を中心とする180度の範囲で回動自在となる。
【0085】
回動部材230が収納された収納部材31には、回動部材230に取り付けられた回転体支持部材5が自由に回動するのを阻止する回動係止手段260が設けられている。回動係止手段260には例えばプラスチック製の有底筒状体が適用され、回動係止手段260は収納部材31に外側から被せられ、例えば接着剤によって収納部材31に固定されている。
【0086】
回動係止手段260には、回転軸32の軸心を中心として各回動穴31bに対向する位置を通る180度の範囲に、回転体支持部材5が回動可能な回動孔260aが形成され、回動孔260aには回転体支持部材5が嵌合する係止孔260bが形成されている。係止孔260bは、回転軸32の軸心を中心として等角度で回動孔260aを4分する位置に合計5つ設けられている。回動孔260aの幅t3は、例えば回転体支持部材5の厚さt2(図7参照)より小さく、回動孔260aには回転体支持部材5が貫通して、外側へ突出している。
【0087】
凸部30aと凹部230aは半円球状であるので、回動部材230にその回転方向に力が導入されると、凸部30aがその形状に沿って凹部230aから脱出して、回動部材230の側面に載り上がる。ここで、付勢力伝達部材30は付勢力に抵抗して軸方向に対して回動部材230から遠ざかる向き(図において直線の矢印の向き)に摺動する。
【0088】
さらに回動部材230にその回転方向に力が導入されると、凸部30aに側面を押圧された状態で回動部材230が回転し、凸部30aの位置に次の凹部230aが移動してくると、凸部30aがその凹部230aに嵌入すると共に、付勢力伝達部材30が回動部材230に近づく向き(図において直線の矢印と逆向き)に摺動する。
【0089】
このように、凸部30aに嵌入される凹部230aが、隣接する他の凹部230aに入れ替わることによって、両凹部230a間に亘って形成される中心角分、回動部材230は回転したこととなる。
【0090】
回転体支持部材5は回動孔260aの、係止孔260bが形成されている以外の位置において回動孔260aの孔壁から回動孔260aの幅t3の内向きに力を受けるので、回転体支持部材5と回動係止手段260との間に摩擦力が発生する。また、係止孔260bは回転体支持部材5が嵌合可能に形成されて回動孔260aに連通し、回動孔260aは回転体支持部材5の厚さt2より小さい幅に形成されているので、回転体支持部材5が係止孔260bから回動孔260aに移動しようとする際に、移動しようとする向きと反対の向きに係止孔260bの孔壁に係止される。
【0091】
ここでは、回動孔260aは回転軸32の軸心を中心として各回動穴31bに対向する位置を通る180度の範囲に形成され、係止孔260bは回転軸32の軸心を中心として等角度で回動孔260aを4分する位置に形成されているので、回動孔260aの何れかの端部を基準(0度)の位置とすると、回転体支持部材5は回動方向に対して0度、45度、90度、135度、180度の位置で係止される。
【0092】
回転体支持部材5が係止孔260bから回動孔260aへ移動する時には、回転体支持部材5が係止孔260bの孔壁を変形させる必要がある。したがって、回転体支持部材5に係止孔260bの孔壁を変形させて係止孔260bによる係止を突破する以上の力、又は回転体支持部材5と回動係止手段260との間の摩擦力以上の力が回動方向に作用されない限り、回転体支持部材5は回動孔260aで自由に回動されない。
【0093】
なお、回動機構220では、回動部材230が凹部230aに代えて凸部を備え、これに対応して、付勢力伝達部材30が凸部30aに代えて凹部を備える構成としてもよい。
【0094】
図14及び図15に示す回動機構221は、回動機構220と同様に付勢手段28及び収納部材31を備えるが、回動部材230に代えて回動部材231を収納部材31に収納して構成されている。
【0095】
回動部材231には例えばプラスチック製の球体が適用される。図15に示すように、回動部材231には、回転体支持部材5がその軸線が回動部材231の中心を通る位置に取り付けられている。回動部材231の外周面には、回転体支持部材5の軸線の周方向に沿って回動部材231の外周面を等角度で4分する位置に、それぞれ回転体支持部材5の軸線に沿うように配列された合計9つの凹部231aが設けられている。凹部231aは、回動部材231の中心から回転体支持部材5と反対側に向けた180度の範囲で回動部材231の外周面を等角度で4分する位置に、それぞれ設けられている。各凹部231aは、付勢力伝達部材30の凸部30aに対応する形状である半円球状を呈している。
【0096】
図14に示すように、収納部材31の外側の端部(接続部21cと反対側の端部)の側壁の内面には、収納部材31からの回動部材231の離脱を防ぐための移動規制部材31dが設けられている。また、収納部材31の側壁には、収納部材31の側壁を収納部材31の軸心を中心として周方向に等角度で4分する位置に、合計4つの回動穴31bが形成されている。各回動穴31bは、収納部材31の外側の端部から付勢手段28側に向けて、1つの回動穴31bを間に置いた回動穴31bと向かい合って、収納部材31の軸線に沿って延びている。
【0097】
本実施の形態においては、向かい合って対となった回動穴31b同士が、収納部材31に収納された回動部材231の中心を中心として収納部材31の外側に向けた180度の範囲に形成されており、回転体支持部材5は回動部材231を中心とする180度の範囲で回動自在となる。
【0098】
収納部材31に設けられる回動係止手段261は、例えばプラスチック製の有底筒状体の底板の中央部に円形の開口261cを備えた形状を有しており、回動穴31bに対向する位置と開口261cとを結んで回動孔261aが形成されている。また、係止孔261bは、各回動孔261aの端部に設けられている。
【0099】
回動部材231にその回転方向に力が導入されると、凸部30aが凹部231aから脱出して回動部材231の外周面に載り上がり、付勢力伝達部材30が回動部材231から遠ざかる向き(図において直線の矢印の向き)に摺動する。さらに回動部材231にその回転方向に力が導入されて回動部材231が回転すると、次の凹部231aに凸部30aが嵌入すると共に、付勢力伝達部材30が回動部材231に近づく向き(図において直線の矢印と逆向き)に摺動する。
【0100】
このように、凸部30aに嵌入されている凹部231aが隣接する他の凹部231aに入れ替わることによって、両凹部231a間に形成される中心角分、回動部材231は回転したこととなる。例えば、凸部30aが凹部231aに嵌入した図14(b)に示す状態から、回動部材231に回転力が導入され、2つの凹部231aに入れ替わって凸部30aが嵌入するまで回動部材231が90度回動すると、回転体支持部材5は図14(c)に示す位置で係止される。
【0101】
回転体支持部材5が回動孔261aの孔壁から内向きに受ける力により、回転体支持部材5と回動係止手段261との間に摩擦力が発生する。また、回転体支持部材5が係止孔261bから回動孔261aに移動しようとする際には、移動しようとする向きと反対の向きに係止孔261bの孔壁に係止される。
【0102】
ここでは、回動部材231の中心から回転体支持部材5と反対側に向けた180度の範囲で、回転体支持部材5の軸線に沿うように回動部材231の外周面を等角度で4分する位置に設けられた凹部231aに、凸部30aを順に嵌入させて回動部材231が回転するので、何れかの係止孔261bを基準(0度)の位置とすると、回転体支持部材5は回動方向に対して0度、45度、90度、135度、180度の位置で係止される。
【0103】
また、回転体支持部材5が係止孔261bから回動孔261aへ移動する時には、回転体支持部材5が係止孔261bの孔壁を変形させる必要がある。したがって、回転体支持部材5に係止孔261bの孔壁を変形させて係止孔261bによる係止を突破する以上の力、又は回転体支持部材5と回動係止手段261との間の摩擦力以上の力が回動方向に作用されない限り、回転体支持部材5は回動孔261aで自由に回動されない。
【0104】
図16及び17に示す回動機構222は、回動機構221の回動部材231に代えて、回動部材232を収納部材31に収納して構成されている。図17に示すように、回動部材232は、回動部材231と同様に、回転体支持部材5の軸線の通る回転体支持部材5と反対側の外周面に凹部232aを備えているものの、回動部材231が備える他の凹部231aに代えて2本の凹溝232bを備えている。凹溝232bは、回動部材232の中心から回転体支持部材5と反対側に向けた180度の範囲で凹部232aとで回動部材232の外周面を等角度で4分する位置に沿って、回動部材232の外周面に環状を呈して延びており、凸部30aに対応する半円状の断面形状を有している。
【0105】
回動部材232にその回転方向に力が導入されると、凸部30aが凹部232a又は凹溝232bから脱出して回動部材232の外周面に載り上がり、付勢力伝達部材30が回動部材232から遠ざかる向き(図において直線の矢印の向き)に摺動する。さらに回動部材232にその回転方向に力が導入されて回動部材232が回転すると、次の凹部232a又は凹溝232bに凸部30aが嵌入すると共に、付勢力伝達部材30が回動部材232に近づく向き(図において直線の矢印と逆向き)に摺動する。
【0106】
このように、凸部30aに嵌入されている凹部232a又は凹溝232bが隣接する凹部232a又は凹溝232bに入れ替わることによって、凹部232aと凹溝232bとの間又は各凹溝232b間に形成される中心角分、回動部材232は回転したこととなる。例えば、凸部30aが凹部232aに嵌入した図16(a)に示す状態から、回動部材232に回転力が導入され、2つの凹溝232bに入れ替わって凸部30aが嵌入するまで回動部材232が90度回動すると、回転体支持部材5は図16(b)に示す位置で係止される。
【0107】
図18に示す回動機構223は、回動機構221の回動部材231に代えて、回動部材233を収納部材31に収納して構成されている。回動部材233は回動部材231の備える凹部231aに代えて凸部233aを備え、付勢力伝達部材30は凸部30aに代えて凸部233aに対応する半円球状の凹部300aを備えている。また、付勢手段28側に位置する各回動穴31bの端部には、係止孔31cが設けられている。係止孔31cには回動部材233の備える何れかの凸部233aが嵌入し、回動部材233の回転方向と直行する方向に位置して向かい合う一対の係止孔31c同士で凸部233aを介して回動部材233を挟み込み、回動部材233が回転する際の回転軸として凸部233aを機能させる。
【0108】
回動部材233にその回転方向に力が導入されると、凸部233aが凹部300aから脱出して付勢力伝達部材30の外面に載り上がり、付勢力伝達部材30が回動部材233から遠ざかる向き(図において直線の矢印の向き)に摺動する。さらに回動部材233にその回転方向に力が導入されて回動部材233が回転すると、凹部300aに次の凸部233aが嵌入すると共に、付勢力伝達部材30が回動部材233に近づく向き(図において直線の矢印と逆向き)に摺動する。
【0109】
このように、凹部300aに嵌入されている凸部233aが隣接する他の凸部233aに入れ替わることによって、両凸部233a間に形成される中心角分、回動部材233は回転したこととなる。例えば、凸部233aが凹部300aに嵌入した図18(a)に示す状態から、回動部材233に回転力が導入され、2つの凸部233aが入れ替わって凹部300aに嵌入するまで回動部材233が90度回動すると、回転体支持部材5は図18(b)に示す位置で係止される。
【0110】
ここでは、回動部材233の中心から回転体支持部材5と反対側に向けた180度の範囲で、回転体支持部材5の軸線に沿うように回動部材233の外周面を等角度で4分する位置に設けられた凸部233aが、凹部300aに順に嵌入させて回動部材233が回転するので、何れかの係止孔261bを基準(0度)の位置とすると、回転体支持部材5は回動方向に対して0度、45度、90度、135度、180度の位置で係止される。
【0111】
図19に示す回動機構224は、回動機構223と同様に付勢手段28、回動部材233、及び収納部材31を備えるが、収納部材31ではなく別途設けられた収納体34に回動部材233を収納して構成されている。収納体34は、例えばプラスチック製で回動部材233に対応する半円球状に形成されており、例えば接着剤によって収納部材31に固定されている。
【0112】
収納体34には、収納部材31の軸線を中心として収納部材31の軸線の周方向に沿って収納体34の外周面を等角度で4分する位置に、それぞれ収納部材31の軸線に沿うように延びた合計4つの回動穴34bが形成されている。各回動穴34bは、収納体34における収納部材31の軸線と交叉する位置から収納部材31側に向けて、1つの回動穴34bを間に置いた回動穴34bと向かい合って延びている。収納体34の中心から収納部材31の軸線の周囲に周方向に沿って収納体34の外周面を等角度で4分する位置には、合計4つの嵌入部材35が設けられている。また、各回動穴34bが端部を向かい合わせる収納体34の外側の端部の内面には、嵌入部材37が設けられている。
【0113】
各嵌入部材35は、収納部材31の軸線に沿って収納体34の内面に延びており、延設方向の中央部に設けられた窪み35aに凸部233aが嵌入される。向かい合う一対の嵌入部材35は、互いで凸部233aを介して回動部材233を挟み込み、回動部材233が回転する際の回転軸として凸部233aを機能させる。
【0114】
付勢力伝達部材30の外面には、凹部300aを中心として十字方向に延びるガイド溝300bが形成されている。ガイド溝300bは、凹部300aに嵌入し又は凹部300aから脱出する凸部233aをガイドするためのものである。なお、上述した各回動機構220〜224では、付勢力伝達部材30が、外面の中央部を外側に向けて円板状に膨出させた膨出部を備え、この膨出部の外面に凸部30a又は凹部300aを備えていてもよい。
【0115】
上述した回動機構220〜224では、付勢手段28が付勢力伝達部材30と付勢部材29とから構成されていたが、付勢部材29に代えて付勢手段12を用いて付勢力伝達部材30に付勢力を作用させてもよい。例えば、回動機構220では、図20に示すように、付勢力伝達部材30と係止部材13aとを連結部36で固定して、付勢力伝達部材30が係止部材13aと一体となって付勢部材12の付勢力により摺動するようにし、回転防止部21a,軸部21b,接続部21c,及び被係止部材21dには連結部36の挿通孔36aを設ける構成とすることができる。
【0116】
この構成によれば、回動部材230にその回転方向に力が導入され、凸部30aが回動部材230の側面に載り上がると、付勢力伝達部材30が連結部36を介して導入される付勢手段12の付勢力に抗して回動部材230から遠ざかる向きに摺動する。さらに回動部材230にその回転方向に力が導入され次の凹部230aに凸部30aが嵌入すると、付勢力伝達部材30が連結部36を介して導入される付勢手段12の付勢力により、回動部材230に近づく向きに摺動する。
【0117】
また、上述した回動機構221〜224では、収納部材31が筒状を呈した先端部に回動穴31bを備えている場合について説明したが、収納部材31による回動部材231〜233の収納構造は、上述の構成には限定されない。例えば、回動機構222では、図21に示す収納部材310のように、筒状体320の先端に、例えばプラスチック製で回動部材233に対応する半円球状に形成された収納体330を取り付け、この収納体330に回動穴310bを設ける構成としてもよい。
【0118】
収納体330の外周面には、筒状体320の軸線の周囲に周方向に沿って収納体330の外周面を等角度で4分する位置に、それぞれ筒状体320の軸線に沿うように延びた合計4つの回動穴310bが設けられている。各回動穴310bは、収納体330における筒状体320の軸線と交叉する位置から筒状体320側に向けて、1つの回動穴310bを間に置いた回動穴310bと向かい合って延びている。筒状体320は、回動部材232の収納部材310からの離脱を防止する手段としても機能する。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】図1は玩具の破断図であり、紙面に向かって左側が断面図、右側が正面図である。
【図2】図2は図1の玩具の側面図である。
【図3】図3は図1の玩具の平面図である。
【図4】図4は図1の係止部材の平面図である。
【図5】図5は図1の回転機構に回転力が作用して回転機構が回転している様子を表す要部拡大図である。
【図6】図6は図1の回転機構に回転力が作用して回転機構が回転した様子を表す要部拡大図である。
【図7】図7(a)は回動機構の分解図、図7(b)は図7(a)のAから見た回動機構の組立図である。
【図8】図8(a)〜(c)は3つの回転体の運動面が全て一致する様子を表す玩具1の正面図、図8(d)は図1の玩具の回転体の運動面を図8(a)の玩具の回転体の運動面に変更する途中の様子を表す玩具の正面図、図8(e)は図1の玩具の正面図である。
【図9】図9(a)〜(f)は2つの回転体の運動面が一致する様子を表す玩具1の正面図である。
【図10】図10(a)〜(g)は3つの回転体の運動面が全て相違する様子を表す玩具1の正面図、図10(h)は図1の玩具の回転体の運動面を図10(a)の玩具の回転体の運動面に変更する途中の様子を表す玩具の正面図、図10(i)は図1の玩具の正面図である。
【図11】図11は付勢部材に磁石が適用されている様子を表す玩具1の正面図の要部拡大図である。
【図12】図12は回動機構の他の構成を示す分解図である。
【図13】図13(a)は回動機構の他の構成の要部を拡大して示す斜視図,図13(b)は第1の断面図,図13(c)は第2の断面図である。
【図14】図14(a)は回動機構の他の構成の要部を拡大して示す斜視図,図14(b)は第1の断面図,図14(c)は第2の断面図である。
【図15】図15は図14(a)〜(c)の回動部材を拡大して示す図である。
【図16】図16(a)は回動機構の他の構成の要部を拡大して示す第1の断面図,図16(b)は第2の断面図である。
【図17】図17は図16(a)と(b)の回動部材を拡大して示す図である。
【図18】図18(a)は回動機構の他の構成の要部を拡大して示す第1の断面図,図18(b)は第2の断面図である。
【図19】図19(a)は回動機構の他の構成の要部を拡大して示す断面図,図19(b)は図19(a)の回動部材を示す図,図19(c)は図19(a)の嵌合部材を示す図,図19(d)は図19(a)の付勢力伝達部材を示す図である。
【図20】図20は付勢力伝達部材による付勢力の伝達方法の他の例を説明する図である。
【図21】図21(a)は回動機構の他の構成の要部を拡大して示す第1の断面図,図21(b)は第2の断面図である。
【符号の説明】
【0120】
1………玩具
2………関節装置
3………基体
4………回転体
4a……軸孔
5………回転体支持部材
5a……拡径部
5b……摺動防止手段
6………握持部
7………連結部
8………グリップ
9………固定部材
9a……凹部
10,31……収納部材
10a…長孔
11,28……付勢手段
12,29……付勢部材
13,30……付勢力伝達部材
13a…係止部材
13b…平板
13c,30a,233a…凸部
13d…回転防止部材
14……押止手段
14a…挿入部
14b…被係止部
14c…貫通孔
21……回転機構
21a…回転防止部
21b…軸部
21c…接続部
21d…被係止部材
21e…平板
21f,230a〜232a,300a…凹部
21g…平坦部
22,220〜224……回動機構
23,230〜233……回動部材
232b……凹溝
24,34,240,330……収納体
25,250……収納体部材
25a,250a…嵌合穴
25b,250b,250c…回動穴
26,260……回動係止手段
26a,260a,261a…回動孔
26b,260b,261b…係止孔
27……固定手段
31b……固定手段
31d……移動規制部材
t1……回動穴が合成した穴の厚さ
t2……回転体支持部材の厚さ
t3……回動孔の幅
H………回転体の運動面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
玩具の基体に対して回転自在に設けられた回転体を有する玩具の関節装置であって、
前記回転体を支持して前記回転体の回転軸となる回転体支持部材を前記基体に対して相対移動可能とする回動機構を備えることを特徴とする玩具の関節装置。
【請求項2】
前記回動機構をその回動方向に係止する回動係止手段を有することを特徴とする請求項1に記載の関節装置。
【請求項3】
前記回動機構に連結され、前記回動機構を前記基体に対して回転可能とする回転機構を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の関節装置。
【請求項4】
前記回転機構をその回転方向に係止する回転係止手段を有することを特徴とする請求項3に記載の関節装置。
【請求項5】
前記回転係止手段は、前記回転機構を一方の外側端面から押止する押止手段と、
前記回転機構を他方の外側端面から付勢する付勢手段とを備え、
前記回転機構の両端面に摩擦力を発生させることを特徴とする請求項3又は4に記載の関節装置。
【請求項6】
前記回転機構の回転を防止する回転防止手段が前記付勢手段に設けられていることを特徴とする請求項3乃至5のいずれかに記載の関節装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図8E】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図9E】
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【図9F】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図10E】
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【図10F】
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【図10G】
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【図10H】
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【図10I】
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【図11】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16A】
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【図16.B】
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【図17A】
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【図17B】
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【図18A】
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【図18B】
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【図19A.19C.19D】
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【図19B】
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【図20】
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【図21A】
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【図21B】
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【公表番号】特表2010−523165(P2010−523165A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−539556(P2009−539556)
【出願日】平成20年8月5日(2008.8.5)
【国際出願番号】PCT/JP2008/064381
【国際公開番号】WO2009/020221
【国際公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(507264332)
【Fターム(参考)】