説明

玩具ガス銃におけるバルブ装置

【課題】 実際の銃と同サイズ又はそれ以下のサイズの銃本体内に収めるという制約の下において、ブローバック動作の高速化や弾丸発射速度の高速化などにつながるパワーアップを実現する。
【解決手段】 圧縮ガスを供給するガス源、ガス源と作動部とを連絡するガス通路を有
し、そのガス通路におけるガス流を制御するための玩具ガス銃におけるバルブ装置について、ガス源11とガス通路13の間のガス流出部にバルブシャフト20を配置し、その前進後退動作に伴ってガス流出を制御可能とし、さらに、ガス流出部を閉じる方向へバルブシャフト20を付勢手段23により付勢し、またバルブシャフト20の移動限界を規定するとともに、バルブシャフト20を閉位置に配置するストッパーを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮ガスを供給するガス源、ガス源と作動部とを連絡するガス通路を有し、そのガス通路におけるガス流を制御するための玩具ガス銃におけるバルブ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
玩具銃における、ブローバック動作や弾丸の発射などの作動を行わせるための動力源として圧縮ガスを使用する玩具ガス銃では、その一般的な構造は図6〜図8に示すようなものである。図6〜図8において、aはガス貯溜部、bはバルブシャフト、cはバルブケース、dはシャフト先端の弁板、eはシャフト後端のヘッド、fはばねであり、バルブシャフトbを閉弁方向に付勢する。バルブケースcには数個のガス出口gが設けてあり、ケース内とケース外の溝部hとを通じており、開弁すると弁室内に流入したガスをガス出口g及び溝部hを通じてガス通路iへ流出させるようになっている。ガス出口gは数個設けることによりガス流量を十分に確保し、圧縮ガスを使用する前記のような作動が円滑に行われるように意図されている。
【0003】
しかしながら、上記の装置では、O−リングで示されているシール部材kによってバルブシャフトbが位置決めされており、この構成は、前記のブローバック動作や発射速度の高速化を行う場合に、障害となることが判明した。即ち、上記作動の高速化のためには1回の動作に使用するガス量を増すことが必要となるが、そのために弁室の内径Lを拡大すると(図7)、弁板dに作用する圧力が高まり、余裕がないため大型化できないシール部材kが弾性変形して、シャフト後端のヘッドeが後退し、基準位置mよりも後方へ出っ張ってしまうという問題を生じた(図8)。バルブシャフトが後退して出っ張ると、バルブ装置の取り付けられているマガジンを着脱する邪魔になるとか、ハンマーと干渉し作業の障害となるというような問題を生ずる。また弁室の内径Lを拡大すると外周の溝部hに設ける余地がなくなり、ガス流量を増すことも困難となる。
【0004】
【特許文献1】特開平11−344298号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記の点に着目してなされたもので、その課題は、実際の銃と同サイズ又はそれ以下のサイズの銃本体内に収めるという制約の下において、ブローバック動作の高速化や弾丸発射速度の高速化などにつながるパワーアップを実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するため本発明は、圧縮ガスを供給するガス源、ガス源と作動部とを連絡するガス通路を有し、そのガス通路におけるガス流を制御するための玩具ガス銃におけるバルブ装置について、ガス源とガス通路の間に位置するガス流出部にバルブシャフトを配置しその前進後退動作に伴ってガス流出を制御可能とし、さらに、ガス流出部を閉じる方向へバルブシャフトを付勢手段により付勢し、またバルブシャフトの移動限界を規定するとともに、バルブシャフトを閉位置に配置するストッパーを設けるという手段を講じたものである。
【0007】
ガス源は、圧縮ガスの供給源であり、例えば、銃本体のグリップ部内に着脱可能に設けられるマガジンに仕組んだ構成とすることができる。このマガジンは、実銃では弾倉であり、本発明の玩具ガス銃においてもBB弾と称される弾丸の収納部に使用される部分であるが、そのための占有部分が小さいので、マガジン主要部をガス充填のためのタンクとして利用することができるものである。しかし、ガス源は、マガジンだけではなく、他の方法を取り得ることも明らかであり、要はガス通路を通してガスを作動部へ供給するものであれば良い。
【0008】
作動部とは、ガス源から供給された圧縮ガスを使用して、玩具ガス銃において何らかの作動をさせる部分であり、例えば、前述のブローバック動作、或いは弾丸発射動作などを行なうものを指す。ガス源と作動部とはガス通路によって連絡されており、そのガス通路におけるガス流を制御するために本発明のバルブ装置が設けられる。本発明では、バルブ装置の一部として、ガス流出部をガス源とガス通路の間に設定している。そのガス流出部には、バルブシャフトを配置し、バルブシャフトの前進後退に伴ってガス流出を制御可能とし、さらに、ガス流出部を閉じる方向へバルブシャフトを付勢手段により付勢するもので、この点までは、従来のバルブ装置にも見られた構成である。本発明において、ガス流出部は、圧縮ガスを噴出するガス源と噴出したガスを作動部へ送るガス通路の間に位置する。換言すると、ガス流出部は一義的に決められる位置というよりも、ガス流出部より上流をガス源側と呼び、下流をガス通路側とする基準となるものと考えて良い。
【0009】
本発明では、付勢手段によるバルブシャフトの移動限界を規定し、その移動限界位置をガス流出部におけるバルブシャフトによるガス流に対する閉位置とするために、ストッパーを設けている。ストッパーは、バルブシャフトの移動限界を規定することにより、閉位置にバルブシャフトが配置された状態において、シール部材がO−リングのような弾性リングであっても過度の変形を防止し、かつまたバルブシャフト他端のヘッドを、ハンマーから打撃される位置に配置することができるものである。このようなストッパーは、ガス流出部におけるバルブシャフトの位置を一定に規定することを目的とするもので、例えばバルブシャフトそれ自体に形成することができ、後に示す例はこの構造を有する。この
他、別の部材をバルブシャフトに取り付けてストッパーとする方法も取り得る。
【0010】
本発明を適用する玩具ガス銃のガス流出部には、中空な弁室を有するバルブケースを設けている例が多く、その場合、バルブケースはガス源側に位置する先端開口、ガス通路側に通じ側面に位置する側面開口が設けられており、側面開口は、必要なガス流量を確保するために周囲に数個設けている例が普通である(請求項2記載の発明)。しかしながら、本発明は、ブローバック動作や弾丸発射速度の高速化等を目的としてガス流量を増すために弁室の内径の拡大を必要とする場合には、バルブケース自体が大型化し、これまでの構造に見られた溝部を設ける余地がなくなる場合もあり、このような場合に、本発明では、側面開口をこれまでより大型化してただ1個設けることができる。
【0011】
これまでの構造に見られた溝部は、複数個の側面開口が設けてあるバルブケースをねじ込みによって取り着けたとき、側面開口がガス通路への出口に一致しなくても、合計すれば必要なガス流量を確保し得るとの考え方に沿うものであるが、上記のようにより大型化した側面開口をただ1個設けた場合には、その位置をガス通路への出口に一致させる必要がある。このような場合のために、本発明ではバルブケースを前後2部材に分割し、側面開口を設けた前部材は差し込みによって取り付けることにより、側面開口の位置合わせを容易化する一方、バルブシャフトを通す軸孔を設けた後部材はねじ込みによって取り付
け、かつそのねじ込みで前部材を固定し得るように構成することが望ましい(請求項3記載の発明)。
【発明の効果】
【0012】
本発明は上記のように構成され、かつ作用するものであるから、実際の銃と同サイズの銃本体内に収められるバルブ装置という制約の下にあって、ストッパーを設けてバルブシャフトを正確に閉位置に配置することができるようにしたため、ガス流量を増大し、ブローバック動作の高速化や弾丸発射速度の高速化などにつながるパワーアップを実現することが可能となるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下図示を参照して、本発明の玩具銃におけるバルブ装置の実施形態を説明する。図に示した玩具銃10は、オートマチックピストルなどと通称されるハンドガンをモデルとするもので、11はガス源としてのタンクであり、図2に示した弾倉又はマガジン12の内部空間の大部分を占めている。
【0014】
タンク即ちガス源11の上部にはガス源11とガス通路13との間に位置するガス流出部が設定されており、ガス流出部には中空な弁室14を有するバルブケース15が設けられている。バルブケース15は、ガス源側に位置する先端開口16、ガス通路側に通じ側面に位置する側面開口17、及び側面開口17よりも後部に位置する閉塞部18を有し、閉塞部18には貫通孔19が設けられていて、そこにバルブシャフト20が前進後退可能に組み込まれている。バルブシャフト20は、弁室先端側に配置される弁板21を一端に有し、弁室外に配置されるヘッド22を他端に有していて、閉塞部18とヘッド22との間に縮設されている付勢手段23のばねによりガス流出を閉じる方向へ付勢されており、ヘッド22はハンマー24からバルブノッカー25を介して打撃される定位置に配置される。26は先端開口部に対する前部シール部材であり、先端開口16の内周面に摺接可能である。27は後部シール材で、バルブシャフト20とバルブケース15との間をシールしており、バルブケース15はタンク11の内面との間に設けられているシール部材28、29によってシールされている。
【0015】
このような構成を有するバルブ装置として、図面では、最も従来例に近い溝部34を持つ第1の例(図3のもの)と、溝部34を持たない第2の例(図4のもの)と、前後2部材に分割したバルブケースを持つ第3の例(図5のもの)とを使用して説明する。図3に示した第1の例の場合、バルブケース15の弁室14の内径を、従来のものよりも絶対的に大径としてガス流量を増大し得る寸法とし、閉塞部18の弁室側に係止してバルブシャフト20の後退を停止させるストッパー30をバルブシャフト20に設けている。ストッパー30は、閉塞部18の前面に付勢手段23によって押し付けられ、バルブシャフト20の後退方向への移動限界を規定しており、また後部のヘッド22は一定の位置まで突出しており、バルブノッカー25を介してハンマー24から打撃を受ける状態にある。な
お、移動限界では前部シール部材26によってガス流出が閉止されている。
【0016】
よって引き金31を引き、リンクレバー32によりハンマー24が打撃動作を行うことによりバルブノッカー25がバルブシャフト20のヘッド22を叩き、付勢手段23に抗してバルブシャフト20を押し出し、前部シール部材26が先端開口16から離れるので圧縮ガスが弁室14、側面開口17、溝部34、ガス通路13を経て作動部35へ供給される。例示の作動部35は圧縮ガスが可動弁36から前方ガス通路37を経て弾丸装填部38に到り、弾丸39を発射させるための動作と、後方ガス通路41を経てシリンダ42に流入し、ピストン43を加圧し、ピストン43と一体のスライド40を後方へ移動させるいわゆるスライド40のブローバック動作の、大略二つの作動を行うことができるように構成されている。弾丸39の発射、スライド40のブローバック動作の開始によりガス通路内の圧力は大気圧に戻るので、ガス源11の圧縮ガスの圧力によってバルブシャフト20は閉位置方向へ戻り、このときストッパー30による定位置配置が行なわれる。
【0017】
図4に示した第2の例の場合、第1の例の溝部34がなく、その分バルブケース15′の大型化と弁室14′の内径Lの相対的拡大を可能としたもので、その結果バルブケース15′の肉厚tが必要最小限度になっている。側面開口17′は複数設けてあるが溝部がないためガス通路側の側面開口17′を除く他の側面開口にガス通路13との連絡機能はなく、ガス容量を増す役割だけを果たしている。他の構成は、図1ないし図3までのものと同様で良いので符号を援用し、詳細な説明を省略する。なお、図4、図5は開弁状態を図示したものである。
【0018】
第2の例では、弁室14′の内径Lが拡大されている分、そしてまた側面開口17′の容量分、1回の発射動作で消費し得る圧縮ガス流量をより多量に取り込めるようになっている。第2の例において、付勢手段23によりバルブシャフト20が閉塞部18に停止させられて定まった閉位置に配置されることは、これまでの説明通りであるが、ガス流量増により、引き金操作に伴う弾丸、発射、ブローバックの各動作は、より迅速かつ強力に行われる。
【0019】
図5に示した第3の例は、内径L′を相対的に拡大した弁室14″を有するとともに、それに伴い拡大した側面開口17″をただ1個設けた例であり、側面開口17″の位置をガス通路13の位置に合わせるために、前部材15aと後部材15bの2部材に分割したバルブケース15″を有している。このため、前部材15aを最初にタンク11のガス流出部に嵌め込んで、側面開口17″の位置をガス流路13の位置に合わせ、その後で後部材15bをねじ込んで固定する組み立て方法を取ることができる。上記においてバルブケース15、15′、15bのねじ込みによる取り付け方は各例共通であるが、第3の例では側面開口17″の位置合わせを著しく容易に行えるようになる。他の構成は、図1ないし図4までのものと同様で良いので符号を援用し、詳細な説明を省略する。なお、各例共通のねじ込み部は符号45で示す。
【0020】
第3の例の場合、増大可能なガス流量による、より迅速なブローバック動作や、より強力な弾丸発射能力を備えるものとなり、そのパワーアップの程度は弁室内径L′によってほぼ決まると考えられ、第2の例の場合とほぼ同様である。なお、各例共通することであるが、ストッパー30の正面形状を傾斜面30aとし、ガス流が側面開口17、17′、17″へスムーズに流れるように誘導されるようになっている。
【0021】
このように、本発明によれば、ストッパー30を設けたことにより、バルブシャフト15…の移動限界を規定して作動精度を高めることができ、ブローバック動作や弾丸発射速度の高速化が達成される。また弁室14…の拡大及びその中で大面積を占めるストッパー30の正面の傾斜面30aによるガス流の改善によってもパワーアップの増大が図られるので、ストッパー30による性能向上の効果は大きい。なお、ストッパー新設によって
も、バルブシャフト15…の他の構成は変わらず、ヘッド22もシャフト端にねじ込み又は圧入、接着等の手段によって取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係るバルブ装置を適用した玩具銃の側面断面説明図。
【図2】同じくバルブ装置を取り付けたマガジンの側面断面説明図。
【図3】本発明に係るバルブ装置の第1の例を示す要部断面図。
【図4】同じく第2の例を示す要部断面図。
【図5】同じく第3の例を示す要部断面図。
【図6】従来の例1を示す要部断面図。
【図7】従来の例2を示す要部断面図。
【図8】従来の例3を示す要部断面図。
【符号の説明】
【0023】
10 玩具銃
11 ガス源としてのタンク
12 マガジン
13 ガス通路
14、14′、14″ 弁室
15、15′、15″ バルブケース
16 先端開口
17、17′、17″ 側面開口
18 閉塞部
19 貫通孔
20 バルブシャフト
21 弁板
22 ヘッド
23 付勢手段としてのばね
24 ハンマー
25 ノッカー
26、27、28、29 シール部材
30 ストッパー
35 作動部
45 ねじ込み部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮ガスを供給するガス源、ガス源と作動部とを連絡するガス通路を有し、そのガス通路におけるガス流を制御するための玩具ガス銃におけるバルブ装置であって、ガス源とガス通路の間のガス流出部にバルブシャフトを配置しその前進後退動作に伴ってガス流出を制御可能とし、さらに、ガス流出部を閉じる方向へバルブシャフトを付勢手段により付勢
し、またバルブシャフトの移動限界を規定するとともに、バルブシャフトを閉位置に配置するストッパーを設けたことを特徴とする玩具ガス銃におけるバルブ装置。
【請求項2】
ガス流出部には中空な弁室を有するバルブケースが設けられており、そのバルブケースはガス源側に位置する先端開口、ガス通路側に通じ側面に位置する側面開口、及び側面開口よりも後部に位置する閉塞部を有し、閉塞部を貫通する孔にバルブシャフトが前進後退可能に設けられている請求項1記載の玩具ガス銃におけるバルブ装置。
【請求項3】
バルブケースは大型化した側面開口を1個有しており、バルブケースを前後2部材に分割し、側面開口を設けた前部材は差し込みによって取り付けることにより、側面開口の位置合わせを容易化する一方、バルブシャフトを通す軸孔を設けた後部材はねじ込みによって取り付け、かつそのねじ込みで前部材を固定し得るように構成されている請求項2記載の玩具ガス銃におけるバルブ装置。
【請求項4】
バルブシャフトは、弁室先端側に配置される弁板を一端に有し、弁室外に配置されるヘッドを他端に有していて、ヘッドは、ハンマーから打撃を受ける定位置に配置される請求項1記載の玩具ガス銃におけるバルブ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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