説明

珪化カルシウムを使用する成形焼結用二水素化チタンの製法

【課題】金属チタン製造の主流は、酸化チタンを塩化物に変え、マグネシウムで還元してスポンジチタンとする方法であるが、実施上種々問題がある。
【解決手段】珪化カルシウムに中高温で水素を働かせて二水素化カルシウムとし、これより分解生成するカルシウムの発生期還元能を利用して酸化チタンをチタンに還元し、さらに安定な二水素化チタンとする。同時生成の酸化カルシウムを酸溶解で除去した后真空乾燥して成形焼結用原料とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は難還元性酸化チタンを脱酸、水素化して二水素化チタン粉末を製造する金属製錬技術の一である。
【背景技術】
【0002】
金属チタン製造には、先ず原鉱石から四塩化チタンをつくり、これをマグネシウム還元してスポンジチタンとし、さらにこれを溶解、精製して金属チタンとする。精製四塩化チタンをマグネシウムで還元してスポンジチタンとするKroll法が工業的に広く採用されている。これでは高純度チタンは得られるが、四塩化チタン製造、そのマグネシウム還元、副産塩化マグネシウムの電解によるマグネシウム再生の各工程は同程度のコストを要し、さらにスポンジチタンの溶解、精製にも同程度のコストを要し、実際操業も容易ではない。本法に替る良法は、予測に反し、未だ開発されていない。
【0003】
現在世界各地で開発中の主要精錬法のレビュー中でFroesらは新法のうち、代表的な方法20種を表示し、最良法として酸化チタンを塩化カルシウム溶融塩中で電解するものを示している。しかし研究者により効果が一致せず、実用化されているものはない(非特許文献1参照)
しかしチタンの溶融塩電解の研究発表は久しく行なわれ、最近もChenらによりケンブリッジ法としてクローズアップされたにも拘わらず、実用化成功の報はない(非特許文献2参照)
【非特許文献1】M.N.Gungorら :Innovation in Titanium Techonology.TMS 2007Annual Meeting & Exhibition Orlando Florida USAFeb.2-March1'07,3
【非特許文献2】Z.Chenら :Nature 407(2000),361
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
金属製錬の根本は、先ず採用化学反応の科学的可能性の予知、次にこれを行わせる装置構成の技術にあると考えられる。
第1手段としては、London大学Imperial CollegeのEllingham教授の示した化合物の生成遊離エネルギーの温度変化図を参照すべきである。これより酸化カルシウムが最安定で、カルシウムが最良還元剤であることが理解される。
次の反応装置については、装置材料、反応剤の選択がある。前者には制御容易な低温での装置採用が望まれる。また後者には、操業、環境上ハロゲン化物の使用は望ましくない。殊にチタンではその物性への悪影響がある。
【0005】
本発明はかかる従来の問題を解決するためカルシウム化合物と水素ガスを使う。
【課題を解決するための手段】
【0006】
酸化チタン還元剤として、先ず炭素があげられ、熱力学的にも可能だが、1800℃の高温を要し、炭化カルシウムの副生もあるので、実用化は困難である。1965年ロシアで発表された水素カルシウムによる酸化チタン還元法は有望視され、実際チタン製法に採用されたが、高温(1100℃)で反応が行われるため、実操業には経済的に問題視されている。
他方1965年米国のWestinghouse Lab.で酸化チタンに液体リチウムを働かせる金属チタン生成法を発表し、酸化チタンが低温でも還元されることを示した。しかし、この方法は経済的には実施できない。
ここに本発明者は前記の考察に基づいてリチウムに代わる還元性の強いカルシウムを利用せんと、中高温でこれを発生する化学反応に注目した。珪化カルシウムは約600℃で水素と反応して水素化カルシウムとアンモニアを生ずる。この反応は可逆反応であるから、目的とする水素化カルシウムを連続的に生成させるため、水素流動法よりアンモニアを除去してやれば良い。さらに水素化カルシウムは分解反応でカルシウム生ずる。ここに生成するカルシウムは発生期反応性に富むから、比較的低温で酸化チタンを還元してチタンを生ずる。
このチタン微結晶は高温で高速接触性を有し、接触時に純冶金的結合を起す特性を持っている。このためスポンジ状塊になり易く、原料酸化チタン微紛を包み込み、その還元を困難とする。幸本発明法における流動水素の存在はこのチタンを二水素化チタンに変換させる。またこの二水素化チタンの分解限界値は477℃であるから、この温度以下に保てば前記問題は解消される。
次に同時生成する酸化カルシウムとの分離は酸溶解による化学的方法を採用する。分離済み二水素化チタン粉末は純水で洗浄し、生成湿潤二水素化チタン粉末を真空乾燥した后不活性ガス中に保存する。
【発明の効果】
【0007】
先ず第一に従来採用の温度以下で酸化チタンの還元を行うことが出来、次に生産使用機材が市販品で済む。また工程中水素以外にハロゲン元素のような有害なものを使わないので、操業及び環境上安全である。二水素化チタンの利用として、ポーラスアルミニウム製造のプリカーサ法で発泡助剤として二水素化チタン粉末の利用があげられ、さらに、一方向気孔を有するロータス型金属製造の素材として二水素化チタンが注目され医療用としての利用も有望視されている。
他方、石灰の利用としては従来専らセメント用であったが、本発明のような利用が今後大きな用途開拓につながる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
室温で酸化チタン粉末と理論所要量より稍過剰の珪化カルシウムを混合粉砕する。この混合物を傾斜型回転円筒炉の一端より投入し、併流する水素中を転がり落ちるようにする。炉の中央部を加熱炉で包み、還元温度に保ち、反応を行わせる。ここで、酸化チタンは先ずチタンに還元され、次に進むとともに温度が下がり、二水素化チタン生成反応が行われ、他端の放出后室温迄降温される。
次にこの二水素化チタンと副生酸化カルシウムとの分離は後者を酸溶解により、二水素化チタンを分離する。この二水素化チタン粉末を真空乾燥して不活性ガス中酸化を防ぎながら保存する。これは成形焼結のため加熱すれば、所期チタン粉末となる。
本実施形態は金属製錬の一工程として焙焼に利用され、本発明者が酸化ソーダ焙焼を行った経験からも操業上格別問題はない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高純度二酸化チタン粉末と高純度珪化カルシウム粉末を混合して真空排気后水素ガスを送りその気圏とする第一工程と
この混合体を水素ガスを充たした傾斜型円筒反応炉(石英のような)の高配部より、水素ガス流とともに送鉱し、600℃くらいに加熱した炉の中央部へ流し込む。ここで先ず珪素化カルシウムの水素化により、水素化カルシウムを生成せしめ、同時発生するアンモニアを流動水素で除去し、さらに水素化カルシウムの分解でできるカルシウムと二酸化チタン粉末と反応させ、チタン微粉末を生成せしめる第二工程と
炉内を下降するチタン微粉末に水素ガスを反応させて、二水素化チタン粉末をつくり、同時に前反応で生成した酸化カルシウム微紛を溶解除去して二水素化チタンを分離する核燃料ウラン製造の例にならった第三工程と
生成二水素化チタン粉末を不活性ガス(アルゴンのような)中に貯え、成型焼結用原料とする第四工程よりなる。