説明

珪酸塩肥料の製造方法

【課題】珪砂鉱床から採掘された粘土およびレディーミクストコンクリート工場等から排出されるコンクリートスラッジ等の産業廃棄物を再生資源化処理して組み合わせることにより、水稲や麦等のイネ科植物に好適な肥料を製造する新技術を提供する。
【解決手段】採掘珪砂原鉱から珪砂塊や微砂を分離し、含水率35ないし40%まで脱水処理した粘土を乾燥、分級し粉末化して得られる精製粘土Fc(80重量%)をバインダーとし、コンクリート廃液から珪砂塊や微砂を分離、回収再資源化して上澄水、濾液を除去した脱水ケーキを乾燥、粉砕して得られる微粉末PDS(20重量%)に混合した上、造粒、乾燥して粒状化するようにした珪酸塩肥料の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鉱物の採掘に伴い発生する汚泥や建設残土のような産業廃棄物の再生処理技術に関連するあらゆる分野をその技術分野とするものであって、コンクリートスラッジを多く含む産業廃棄物の再生処理技術分野および稲作農業に不可欠とされる珪酸塩肥料を製造する分野は勿論のこと、その製造に必要とする設備、器具類を提供、販売する分野から、それら資材や機械装置、部品類に必要となる素材、例えば、木材、石材、各種繊維類、プラスチック、各種金属材料等を提供する分野、それらに組み込まれる電子部品やそれらを集積した制御関連機器の分野、各種計測器の分野、当該設備、器具を動かす動力機械の分野、そのエネルギーとなる電力やエネルギー源である電気、オイルの分野といった一般的に産業機械と総称されている分野、更には、それら設備、器具類を試験、研究したり、それらの展示、販売、輸出入に係わる分野、将又、それらの使用の結果やそれを造るための設備、器具類の運転に伴って発生するゴミ屑の回収、運搬等に係わる分野、それらゴミ屑を効率的に再利用するリサイクル分野、その他現時点で想定できない新たな分野までと、関連しない技術分野はない程である。
【背景技術】
【0002】
(着目点)
現在、山形県内には最上、村山地区および飯豊町に良質の珪砂鉱床を有し、採掘された珪砂原鉱から粉砕、水洗、分級等の一連の選鉱工程を経ることによって産出された珪砂は、主にガラス用、鋳物用、各種モルタル骨材用、ライニング材用、濾過砂、耐火物用、人工芝目地充填用、土木関係用等として幅広く使用されているが、珪砂鉱床中には粘土や雑石等が大量に混在しているため、選鉱工程中に発生する粘土量は年間約60,000トンに達し、一部をペット用砂、植栽ブロックの用土、建築用外壁材等に利用しているものの、その大部分はダムを構築して堆積させるか、産廃処理業者に委託するかして処理せざるを得ないのが現状となっており、今後もこの大量の粘土を適正に廃棄処理して行くには、新たなダムの設置費用や、埋立処分場の不足に伴い高騰している処理委託費用等の負担が増大してしまい各鉱山の企業存続も危惧される問題となってきている。
【0003】
また、国内の各地に必ず存在するコンクリート工場では、コンクリートミキサーやトラックアジテータ車の洗浄廃水、残コン、戻りコン等を処理した廃水に含まれるコンクリートスラッジを最終処分するときに、適正な中間処理を施さない限り管理型の埋立処分場にその廃棄処理を委託しなければならず、経済面で大きな負担となっているのが現状であり、工場から排出されるコンクリートスラッジの減量化や再生資源としての有効利用の可能性が模索されている。
【0004】
(従来の技術)
産業廃棄物の処理負担を軽減、解消する技術としては、特開2004−218065号公報に開示された「スラグおよびその製造方法並びにスラグを用いた肥料及び土壌改良剤」発明のように、ステンレス鋼の精錬工程で発生した二酸化珪素および酸化カルシウムを大量に含むスラグを主成分とするものや、特開2003−55072号公報「リサイクル肥料及び土壌改良材」発明に開示されているような、アスベストを含有する無機系建材の廃棄物を熔融させることにより、アスベストを不在化し、該廃棄物に含まれる珪酸やマグネシウム等を利用し、珪酸質のリサイクル肥料及び珪酸とアルカリ分を補給する土壌改良材を得るようにしたもの、および特開2001−181073号公報に開示された「粒状培土混合ケイ酸質肥料」発明にある軽量気泡コンクリート端材等の廃材を再生利用し、培土と混合、造粒して安価な珪酸質肥料を提供可能とする、あるいは特開平11−137074号公報の「水稲育苗方法」発明のように、建材や断熱材用として大量に製造され、その製造工程において発生するものや、施工現場における端材を再生利用することも可能な多孔質珪酸カルシウム水和物をpH3.5ないし8.0に調製し、水稲栽培において施用する等が既に開発されている。
【0005】
しかしながら、これら既存の肥料技術は、珪砂の採掘に伴い発生する大量の粘土や、レディーミクストコンクリート工場から排出されるコンクリートスラッジを含有した産業廃水を、水稲や麦等のイネ科植物用の肥料として有効に再生利用できるものとはなっておらず、各廃棄物に応じた適正な処理を施さなければ実用可能な肥料の製造に結び付けることができないという課題が残されていた。
【特許文献1】(1)特開2004−218065号公報 (2)特開2003−55072号公報 (3)特開2001−181073号公報 (4)特開平11−137074号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
(問題意識)
この発明は、以上のように珪砂鉱床を採掘する際に発生してしまう大量の粘土が、その廃棄処理に多大な経費を費やさなければならず、珪砂鉱業における企業経営を圧迫していることから再資源化への道が模索されており、また、コンクリート工場においては、コンクリートの製造に伴って発生する未水和セメント粒子、水和生成物、骨材微粒分等の各種材料の残渣であるコンクリートスラッジを廃棄処理せずに再生利用する技術の開発が多方面で進められている。
【0007】
そして、従前より各方面において二酸化珪素や酸化カルシウムを多量に含む産業廃棄物から水稲や麦等のイネ科植物用の肥料を製造する技術が相次いで開発されていることから、珪砂鉱床から採掘され、元来、二酸化珪素を多量に含有している粘土と、酸化カルシウムを多量に含んだコンクリートスラッジとを組み合わせることにより、イネ科植物用として好適な肥料を開発し、産業廃棄物の発生量を削減すると共に、我が国における農業の基盤である稲作農業に広く利用できる肥料を提供し、廃棄物処理を含めた自然環境問題および企業経営に関わる経済的課題に解決の糸口を見出すことができるのではないかとの観点から、珪砂鉱床より採掘、回収された粘土とコンクリートスラッジとの混合技術を模索したが、これに相当する肥料の製造技術はこれまでに存在しておらず、水稲用肥料の新たな製造技術の確立が必要、不可欠であるという結論に至った。
【0008】
(発明の目的)
そこで、この発明は、珪砂鉱床から採掘された粘土およびレディーミクストコンクリート工場等から排出されるコンクリートスラッジ等の産業廃棄物を再生資源化処理して組み合わせることにより、水稲や麦等のイネ科植物に好適な肥料を製造する新技術を開発することはできないものかとの判断から、逸速くその開発、研究に着手し、長期に渡る試行錯誤と幾多の試作、実験とを繰り返してきた結果、今回、遂に新規な珪酸塩肥料の製造方法を実現化することに成功したものであり、以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構成を詳述することとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の構成)
図面に示すこの発明を代表する実施例からも明確に理解されるように、この発明の珪酸塩肥料の製造方法は、基本的に次のような構成から成り立っている。
即ち、ハロイサイト、モンモリナイトを主成分とし二酸化珪素を50%以上含む粘土をバインダーとし、コンクリートスラッジを再資源化処理する過程で発生したケーキに所定割合で混合した上、粒状化するようにした構成を要旨とする珪酸塩肥料の製造方法である。
【0010】
この基本的な構成からなる珪酸塩肥料の製造方法を換言すれば、採掘珪砂原鉱から分離、除去した粘土をバインダーとし、コンクリートスラッジを再資源化処理する過程で発生したケーキに所定割合で混合した上、粒状化するようにした珪酸塩肥料の製造方法であるということが可能である。
【0011】
そして、この発明の珪酸塩肥料の製造方法を、より具体的な構成からなるものとして示すと、採掘珪砂原鉱から分離、除去した粘土70ないし90重量%をバインダーとし、コンクリートスラッジを再資源化処理する過程で発生したケーキ30ないし10重量%に混合した上、造粒、乾燥して粒状化するようにした珪酸塩肥料の製造方法であるということができる。
【0012】
表現を変えると、採掘珪砂原鉱から分離、除去した粘土を乾燥、粉末化した精製粘土をバインダーとし、コンクリートスラッジを再資源化処理する過程で発生した脱水ケーキを乾燥、粉砕して得られる微粉末(PDS)に所定割合で混合した上、粒状化するようにした珪酸塩肥料の製造方法となる。
【0013】
そして、それをより具体的に示すと、採掘珪砂原鉱から分離、除去した粘土を乾燥、粉末化した精製粘土70ないし90重量%をバインダーとし、コンクリートスラッジを再資源化処理する過程で発生した脱水ケーキを乾燥、粉砕して得られる微粉末(PDS)30ないし10重量%に混合した上、造粒、乾燥して粒状化するようにした珪酸塩肥料の製造方法ということができる。
【0014】
さらに具体的には、採掘珪砂原鉱から他の用途に利用できる骨材や微砂等を分離、除去した粘土を含水率35ないし40%まで脱水した後に乾燥、分級し、粉末化して得られる精製粘土80重量%をバインダーとし、コンクリートスラッジから再利用可能な骨材や微砂等を分離し、再資源化処理する過程で発生した脱水ケーキを乾燥、粉砕して得られる微粉末(PDS)20重量%に混合した上、造粒、乾燥して粒状化するようにした珪酸塩肥料の製造方法であるといえる。
【0015】
そして、採掘珪砂原鉱から他の用途に利用できる骨材や微砂等を分離、除去した粘土を含水率35ないし40%まで脱水した後に乾燥、分級し、粉末化して得られる精製粘土75重量%をバインダーとし、コンクリート二次製品製造後に回収したレイタンスを乾燥してなる粉末体25%に混合した上、造粒、乾燥して粒状化するようにした構成による珪酸塩肥料の製造方法についも、この発明の珪酸塩肥料の製造方法に包含されている。
【発明の効果】
【0016】
以上のとおり、この発明の珪酸塩肥料の製造方法によれば、採掘珪砂原鉱から珪砂ならびに他の用途に利用可能な骨材、微砂等を分離した結果、廃棄物として最終的に残存してしまう大量の粘土質成分と、我が国の至る所で稼働しているコンクリート工場や場所打杭工法の施工現場および打設コンクリートの養成現場等、様々な所で発生したコンクリートスラッジを再資源化処理する過程で発生したケーキとを所定割合で混合したことにより、従前までであれば産業廃棄物として多大な経費を費やし管理型の埋立処分場に持ち込み最終処分しなければならなかった粘土やケーキを、稲作等に有用な珪酸塩肥料として再生、商品化することを可能とし、建築土木産業によって発生した膨大な量の産業破棄物における処理問題を一挙に解決に向かわせることができ、自然環境に優しくしかも経済性にも秀れた農業用肥料として市場提供できるようになるという秀れた特徴が得られるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
上記したとおりの構成からなるこの発明の実施に際し、その最良もしくは望ましい形態について説明を加えることにする。
粘土は、コンクリートスラッジを再資源化処理する過程で発生したケーキ、脱水ケーキまたは微粉末(PDS:Pulverized Dry Sludge)を肥料とすべく造粒するためのバインダーとしての役目を果たすものであると共に、コンクリートスラッジから発生したケーキ、脱水ケーキまたは微粉末(PDS)の強過ぎるアルカリ性を稲作用の肥料に適する程度に緩和するという機能を果たすものとなり、特に採掘珪砂原鉱から分離、除去した粘土には稲作用の肥料に不可欠とされる二酸化珪素を大量に含み、秀れた肥料の提供に役立つものとなり、採掘珪砂原鉱から分離、除去された粘土をさらに乾燥、分級して微粉末状とした精製粘土を用いるとより均質且つ高品質な造粒が可能となる。
【0018】
また、使用する粘土は、珪砂鉱床から採掘されたもののみに限定されるものではなく、珪砂鉱床の粘土と略同等にハロイサイトやモンモリナイトを主成分とし二酸化珪素を50%以上含有するものであればよく、例えば二酸化珪素が比較的豊富に含まれている地下2m以上の深さから掘り出された建設残土や砂利汚泥等を利用することも可能である。
【0019】
粘土を製造する工程は、採掘珪砂原鉱を固定式グリズリのような固定式篩あるいは可動棒篩、回転篩、平面篩、振動篩等のような可動式篩、より具体的にはローヘッド型スクリーン、多孔板使用の振動篩、グリズリバー使用の振動篩、トロンメルのような回転篩等を含む何れかの篩に掛けて骨材を分離し、残存する土砂類をロッドミルやチューブミル等の粉砕機を用いて解膠、磨鉱した後、湿式サイクロンによって有用な珪砂や微砂等の粒状体を分級、除去し残された汚泥を凝集沈殿装置、濃縮槽、フィルタープレスを順次使用して上澄水や濾液を分離して含水粘土とし製造されるものであるが、他用途に使用可能な骨材、珪砂、微砂、上澄水、濾液等を順次除去して残された粘土であれば良く各分離、分級工程で使用される機械や装置に細かな制限を受けるものではない。
【0020】
精製粘土の製造工程は、採掘珪砂原鉱から分離された含水粘土をロータリードライヤーおよびエアセパレーター等の乾式サイクロンに順次、供給することにより製造されるものであって乾式サイクロンによって分離された粗粉は、粘土製造工程中のチューブミル等の粉砕機に再度投入し、最終的に微粉末状の精製粘土とするよう管理することが可能である。
【0021】
コンクリートスラッジからのケーキは、バインダーとしての粘土または精製粘土との混合により肥料として結合、造粒されるものであり、コンクリートスラッジに由来する酸化カルシウムを多量に含み土壌改良に有用であってしかも粒状肥料中にポーラス状の多数の微細空隙を形成し、水田の土壌に通気性と保水性とを与えるものとなるという機能を果たし、特にコンクリートスラッジから再利用可能な骨材や微砂を分離、除去しさらに濾過処理した後に残された脱水ケーキをさらに乾燥、粉砕することによって得られた微粉末(PDS)を用いることによりさらに均質且つ高品質な肥料を得ることが可能となり、前記精製粘土と混合、造粒すると両者の結合を強めて欠けや割れの発生を防止してより秀れたムラのない造粒および整粒が可能となる。
【0022】
コンクリートスラッジは、コンクリート工場のコンクリートミキサーやトラックアジテータ車の洗い廃水、残コン、戻りコン等を処理した廃水に含まれる固形物、場所打杭工法の施工に伴い発生したセメントミルクを含む戻り廃液、およびコンクリートの養成に際して発生するレイタンス等が含まれ、さらに解体された建築物等のコンクリート塊やブロックから鉄筋その他の不要物を取り除き、破砕したものとすることが可能である。
【0023】
コンクリートスラッジからケーキ(脱水ケーキ)を製造する工程は、例えばコンクリート廃水をスパイラル分級機等の湿式分級機に投入し、骨材として再利用可能な粗粒成分を分離し、残された汚泥を湿式サイクロンに投入して微砂として再利用可能な成分を分離、除去した後に、攪拌タンク、凝集沈殿装置、濃縮槽、フィルタープレスに順次供給して上澄水と濾液とを分離、除去するものであって、該コンクリート廃水は、コンクリート工場のミキサーやアジテータ車の洗い廃水、残コン、戻りコン等を処理した廃水のことであるが、場所打杭工法の施工に伴い発生したセメントミルクを含む戻り廃液やコンクリートの養成に際して発生するレイタンス等とすることも可能であり、その外のセメント成分を含んだ廃水もしくは、セメント成分を有する固形物に水分を混ぜたもの等とすることもでき、さらに、水分を含まないか僅かに含んだセメント、コンクリートもしくはモルタル等の粒状、粉状の固形物を粉砕、分級する工程とすることも可能である。
【0024】
微粉末(PDS)の製造工程は、コンクリートスラッジから製造されたケーキ(脱水ケーキ)をロールクラッシャー等の破砕機によって粉砕し、水分を含んだケーキの場合には必要に応じてさらに濾過、脱水、乾燥等を行った上、粉砕機を用いて粉末状に処理してしまうものであり、さらにバグフィルター等を用いて微粉末化させるとムラの無い良好な品質を得ることができる。
【0025】
粘土とコンクリートスラッジからのケーキとを所定割合で混合し、造粒する工程は粘土をバインダーとしケーキを粒状に固めて肥料化するものであって形状、品質の良好な粒状肥料を得るには、微粉末化した精製粘土とコンクリートスラッジ(脱水ケーキ)の微粉末(PDS)とを混合機に投入し混合した後に造粒機ならびに乾燥機に順次供給して造粒、乾燥するのが望ましく、その混合割合を粘土(精製粘土)70ないし90重量%、微粉末(PDS)30ないし10重量%とするのが良く、粘土(精製粘土)を70重量%前後未満に設定すると、バインダーとしての機能を低下させて造粒が困難となり、割れや破片による形状の不均質を生じてしまい、また90重量%前後を越えて含有させた場合には、微粉末(PDS)による通気性や保水性を著しく悪化させて土壌改良性能を低下させてしまうという欠点を生じることとなり、微粉末(PDS)が30重量%前後を越えると強いアルカリ性を示して土壌環境を悪化させてしまう虞れがあるという欠点を生じるものとなる。
【0026】
したがって、造粒工程において微粉末(PDS)と精製粘土とを混合する場合には微粉末(PDS)を約20重量%、精製粘土を約80重量%に設定するのが最も良好な肥料性能を得ることとなり、レイタンスと精製粘土とを混合する場合にはレイタンスを約25重量%、精製粘土を約75重量%に設定するのが、造粒性や肥料性能の面から最も望ましい配合割合であるということができ、造粒された肥料は散布作業性を確保する為その粒径を10mm以下に設定するのが望ましく、5mmないし1mm程度とするのが好適であり、特に散布用機械への適合を考慮すると約3mm(3.2ないし2.8mm)の粒径とすべきである。
以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構成について詳述することとする。
【実施例1】
【0027】
図1の精製粘土製造工程のフローチャート、図2のコンクリートスラッジ再資源化工程のフローチャート、および図3の珪酸質肥料造粒工程のフローチャートに示される事例は、採掘珪砂原鉱Sから珪砂Bや微砂Fs等を分離、除去した粘土Cを脱水処理した後に乾燥、分級し粉末化して得られる精製粘土Fc(80重量%)をバインダーとし、コンクリートスラッジから再利用可能な骨材Bや微砂Fs等を分離、回収し再資源化処理する過程で発生した脱水ケーキDcを乾燥、粉砕して得られる微粉末PDS(20重量%)に混合した上、造粒、乾燥して粒状化するようにしたこの発明に包含される珪酸塩肥料の製造方法における代表的な一実施例を示すものである。
【0028】
当該珪酸塩肥料の製造方法は、基本的に、図1中に示す精製粘土Fcを製造する工程と図2中に示すコンクリートスラッジから微粉末PDSを製造する工程、および図3中に示す精製粘土Fcと微粉末PDSとを所定の割合で混合、造粒する工程によって構成されている。
【0029】
精製粘土Fcの製造工程は、図1中に示すように、粘土Cを製造する工程1とその粘土Cから精製粘土Fcを精製する工程2とを有しており、粘土C製造工程1は、珪砂鉱床から採掘された珪砂原鉱Sをトロンメル11に掛けて粗砂、膠結した珪砂塊Bを分離し、チューブミル12に投入して解砕した上、湿式サイクロン13による分級によって微砂Fsを除去し、凝集沈殿装置(シックナー)14で上澄水Uwと粘土分とを分離、回収し、濃縮槽15を経てフィルタープレス16によって加圧し、濾液Fwを取り除き含水率35ないし40%の粘土Cを得るものである。
【0030】
トロンメル11によって分離された骨材Bおよび湿式サイクロン13によって除去された微砂Fsは何れも適宜粒度毎に分級、乾燥させることにより、コンクリート用の骨材やガラス用の珪砂、鋳物用等様々な他の用途に利用可能であり、また凝集沈殿装置14で回収された上澄水Uwおよびフィルタープレス16によって分離された濾液Fwは、コンクリートミルク用水等として利用可能である。
【0031】
精製粘土製造工程2は、同図1中に示すように、フィルタープレス16から排出された粘土Cをホッパー21、フィーダー22を介してロータリードライヤー23に順次投入して乾燥させた上、ホッパー24から乾式サイクロン25に投入して分級し、粒径0.1mm以下の微細粉末状物を精製粘土Fcとし、乾式サイクロン25で分離された粗粒子状の粘土Cは、粘土製造工程1のチューブミル12に再投入し、最終的に精製粘土Fcとする。
【0032】
コンクリートスラッジの微粉末PDSの製造工程は、図2中に示すように、コンクリート廃水Cwから脱水ケーキDcを製造する工程3と脱水ケーキDcから微粉末PDSを製造する工程4とからなり、脱水ケーキ製造工程3は図示しないレディーミクストコンクリート工場で発生したコンクリートミキサーやトラックアジテータ車の洗い廃水、残コン、戻りコン等を処理した廃水等のコンクリート廃水Cwを、同図2中に示すように湿式分級機(スパイラル分級機)31に投入して回収骨材Bを分離した後に湿式サイクロン32で微砂Fsを分離させ、分級された汚泥を攪拌タンク33に投入して凝集剤Cmを添加、攪拌した上、凝集沈殿装置34に供給して上澄水Uwを分離、除去してから濃縮槽35を経てフィルタープレス36によって濾液Fwを排出させ脱水ケーキDcを得る。
【0033】
湿式分級機31で回収された骨材Bや湿式サイクロン32で分級された微砂Fsは、コンクリート用骨材等として再利用可能であり、また凝集沈殿装置34の上澄水Uwおよびフィルタープレス36から排出された濾液Fwもまた、コンクリート用水として再生、利用を図ることが可能である。
【0034】
微粉末PDS製造工程4は同図2中に示すように、脱水ケーキDcをロールクラッシャー41で破砕し、乾燥機42で乾燥、粉砕機43により粉砕加工を行なった上、バグフィルター44を通過させて微細粉末状に加工し微粉末PDSを製造するものであり、バグフィルター44で除去された粗粉末は、ロールクラッシャー41あるいは粉砕機43に戻して最終的に微粉末PDSとする。
【0035】
こうして得られた精製粘土Fcおよび微粉末PDSを混合造粒する工程5は、図3中に示すように、ホッパー52に設置された2台のフィーダー51,51の一方に精製粘土Fcを他方に微粉末PDSを夫々投入し精製粘土Fcを80重量%、微粉末PDSを20重量%の割合とするよう該ホッパー52に供給し、フィーダー53を通じて混合機54で満遍なく混合させた後、ホッパー55およびフィーダー56を介して造粒機57に投入し、直径が2.8ないし3.2mmの略球形粒状に成型した上、乾燥機58に供給し充分に乾燥させることによって製品(肥料)Mを得ることとなる。
【実施例2】
【0036】
図4のレイタンスを使用した珪酸質肥料造粒工程のフローチャートに示される事例は、採掘珪砂原鉱Sから他の用途に利用できる骨材Bや微砂Fs等を分離、除去した粘土Cを含水率35ないし40%まで脱水した後に乾燥、分級し、粉末化して得られる精製粘土Fc(75重量%)をバインダーとし、コンクリート打設後に回収し、乾燥粉末状としたレイタンスL(25%)に混合した上、造粒、乾燥して粒状化するようにしたこの発明に包含される珪酸塩肥料の製造方法における他の実施例を示すものである。
【0037】
図4中に示す造粒工程6は、図1に示した製造工程による精製粘土Fcを75重量%、打設コンクリートから回収され粉砕、乾燥、分級して微粉末化したレイタンスLを25重量%の割合とするよう台秤61で計量し混合ミキサー62で混合後、中間タンク63に投入し造粒機64整粒機65を経て直径が2.8mmないし3.2mmの略球形状に造粒した上、中間ホッパー66を通じてロータリードライヤー67に供給して乾燥処理し、トロンメル68および振動篩69によって形状不良物を分離し、この段階で分級、排除された形状不良物は、再生工程7に移され粉砕機71およびバグフィルター72を通じて再生粉Rpとし、造粒工程6の台秤61に再投入されることとなり、振動篩69によって分離された良品はパッキング工程8においてタンク81に移し、袋詰めホッパー82を通じてパッキング装置83に供給し袋詰の製品Mを得るものとなる。
【0038】
(実施例の作用)
以上のとおりの構成からなるこの発明の珪酸塩肥料の製造方法は、採掘珪砂原鉱を図1中に示した粘土製造工程1により、初期段階においてトロンメル11やチューブミル12、湿式サイクロン13等を順次用いて骨材Bや微砂Fs等の他用途に利用可能な成分を分離して原鉱資源の有効活用を図ると共に、汚泥廃棄物の発生を阻止するものとし、続く凝集沈殿装置14、濃縮槽15およびフィルタープレス16によって上澄水Uwや濾液Fwを除去して含水率35ないし40%の粘土Cを製造して置くことにより、精製粘土製造工程2では粘土Cをロータリードライヤー23や乾式のサイクロン25等を通じて乾燥、分級し微細な精製粘土Fcを効率的に製造することが可能となる。
【0039】
このように採掘珪砂原鉱から得た精製粘土Fcは、水稲に散布したときに光合成の促進や収穫量、品質、食味等の向上をもたらす二酸化珪素を約62%含有しており、イネ科植物用肥料の主成分として好適なものであり、しかも肥料造粒のためのバインダーとしての役目を果たす上、増量材としての機能をも兼ねるものとなって肥料の形状、寸法を散布作業性の良いものとすることになる。
【0040】
図2中に示した脱水ケーキ製造工程3は、コンクリート廃水Cwを湿式分級機31、湿式サイクロン32に順次供給し回収骨材Bおよび微砂Fsを分離して再生利用することによって汚泥廃棄物の排出を阻止し、攪拌タンク33における凝集剤Cmの投入、凝集沈殿装置34、濃縮槽35およびフィルタープレス36を経て上澄水Uwならびに濾液Fwを分離し、再生利用する一方で脱水ケーキDcを得ることにより、これに続く微粉末PDS製造工程4のロールクラッシャー41、乾燥機42、粉砕機43およびバグフィルター44による破砕、乾燥、粉砕、分級の各工程を効率化するものとなり、均質且つ良質の微粉末PDSを得ることが可能となる。
【0041】
コンクリートスラッジから製造された微粉末PDSは、水田の土壌改良に役立つ酸化カルシウムを下記表1の脱水ケーキから採取したスラッジの化学組成表に示すように40.82%含有し、二酸化珪素も17.13%有しており、しかも精製粘土Fcはハロイサイトやモンモリナイトを主成分として造粒すると緻密に固まってしまう性質をもつが、精製粘土Fc中に均質に混在する微粉末PDSがポーラス構造を形成して肥料成分の溶出や根の粒状肥料への入り込みを可能とするものとなる。
【表1】

【0042】
図3中に示した珪酸質肥料の造粒工程5は、精製粘土Fcを80重量%、微粉末PDSを20重量%の割合で混合機54および造粒機57に順次供給することにより、直径2.8ないし3.2mmの粒状に成型した上、乾燥機58に供給して乾燥、処理することによって肥料散布装置に好適な形状、寸法のイネ科植物用肥料としての製品Mを効率的に製造可能とし、しかも採掘珪砂鉱床から産出された精製粘土Fcおよびコンクリートスラッジから製造された微粉末PDSを最も良好な比率で混合したことによって輸送や散布作業でも粒が割れたり崩れたりせず、土壌に散布された後には水分や空気を良好に浸透して長期に渡り、徐々に養分を溶出するものとなって水稲や麦等に好適な肥料性能を発揮するものとすることが可能である。
【0043】
また、図4中に示したように、造粒工程6においてレイタンスLの25重量%と精製粘土Fcの75重量%とを台秤61で正確に測定し混合ミキサー62で満遍なく混合し、造粒機64と整粒機65を経て造粒し、ロータリードライヤー67で乾燥、トロンメル68と振動篩69によって順次分級することにより迅速且つ均質な粒状に製造することが可能となり、分級排除された不良品は再生工程7によって造粒工程6に再度投入可能な再生粉Rpに加工することにより、産業廃棄物となるのを阻止され、パッキング工程8によって迅速且つ効率的に袋詰めされて製品M化することが可能となる。
レイタンスLは、コンクリートスラッジから製造された微粉末PDSのような複雑な工程を経ずに微粉末化することができる上、セメント成分の純度が比較的高く微粉末PDSよりも少ない混合割合で有効な肥料効果を得ることが可能である。
【0044】
(実施例の効果)
以上のような構成からなる実施例の珪酸塩肥料の製造方法は、前記この発明の効果の項で記載の特徴に加え、図1中に示したように採掘珪砂原鉱Sから分離された粘土Cをさらに精製して0.1mm以下の微粒状の精製粘土Fcとする一方、図2中に示したようにコンクリート廃水Cwから回収された脱水ケーキDcをさらに粉砕加工することにより微粉末PDSを得た上、これら微粒状の精製粘土Fcと微粉末PDSとを図3中に示したように最適な割合でしかも満遍なく混合し、直径2.8ないし3.2mmの球状に造粒したことにより、均質でムラのないポーラス構造にして苗床や水田、圃場等への施肥作業性に秀れた肥料を提供することができる。
【0045】
また、図4中に示したように、精製粘土FcとレイタンスLとを最適な割合で混合することによってもイネ科植物に好適な肥料を得ることができ、しかもレイタンスLは破砕加工等を必要とせず、簡便に肥料製造に利用できるという秀れた特徴を発揮するものとなる。
【0046】
さらに、採掘珪砂原鉱Sから製造した粘土ではなく、地下2m以上の深さから掘り出された建築残土や砂利汚泥等であってもハロイサイト、モンモリナイトを主成分とし二酸化珪素を50%以上含むものであれば、図1の粘土製造工程1で分離した粘土Cか、あるいは粘土Cをさらに精製粘土製造工程2で精製した精製粘土Fcとして同様の肥料を製造することが可能であり、また、場所打杭工法の施工に伴い発生したセメントミルクを含む戻り廃液を図2中の脱水ケーキ製造工程3および微粉末PDS製造工程4で分離した微粉末PDSを使用することも可能なので採掘珪砂原鉱やコンクリートスラッジの入手が困難な場合にも、安定生産することができるという利点を得られることになる。
【0047】
(結 び)
叙述の如く、この発明の珪酸塩肥料の製造方法は、その新規な構成によって所期の目的を遍く達成可能とするものであり、しかも採掘珪砂原鉱や建設残土から分離される粘土、およびコンクリートスラッジから分離された脱水ケーキといった産業廃棄物として適正に処理しなければならない廃棄物を再生利用するものであり、精製の段階で骨材や微砂等の他用途への利用が可能な資材を回収、産出できるので従前までであれば多大な費用を費やして廃棄処理しなければならなかった廃棄物量を大幅に抑制できる上、新たな添加物等を一切必要とせずに廃棄物同士の組み合せだけによって製造可能なことから経済性にも秀れ、良質且つ廉価な農業用肥料として有効に再生利用できるため、大量な採掘汚泥の埋立用地の確保と処理経費の増大に窮する鉱山や毎日のように発生するコンクリートスラッジの廃棄に多大な費用を費やす建築業界、および水稲のイモチ病や麦の生育不良等に悩まされる農家等多方面において高く評価され、広範に渡って利用、普及していくものになると予想される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図面は、この発明の珪酸塩肥料の製造方法の技術的思想を具現化した代表的な実施例を示すものである。
【図1】精製粘土の製造工程を示すフローチャートである。
【図2】微粉末PDSの製造工程を示すフローチャートである。
【図3】珪酸質肥料の製造工程を示すフローチャートである。
【図4】レイタンス使用珪酸質肥料の製造工程を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0049】
1 粘土製造工程
11 同 トロンメル
12 同 チューブミル
13 同 湿式サイクロン
14 同 凝集沈殿装置
15 同 濃縮槽
16 同 フィルタープレス
2 精製粘土製造工程
21 同 ホッパー
22 同 フィーダー
23 同 ロータリードライヤー
24 同 ホッパー
25 同 乾式サイクロン
3 脱水ケーキ製造工程
31 同 湿式分級機
32 同 湿式サイクロン
33 同 攪拌タンク
34 同 凝集沈殿装置
35 同 濃縮槽
36 同 フィルタープレス
4 微粉末PDS製造工程
41 同 ロールクラッシャー
42 同 乾燥機
43 同 粉砕機
44 同 バグフィルター
5 造粒工程
51 同 フィーダー
52 同 ホッパー
53 同 フィーダー
54 同 混合機
55 同 ホッパー
56 同 フィーダー
57 同 造粒機
58 同 乾燥機
6 造粒工程
61 同 台秤
62 同 混合ミキサー
63 同 中間タンク
64 同 造粒機
65 同 整粒機
66 同 中間ホッパー
67 同 ロータリードライヤー
68 同 トロンメル
69 同 振動篩
7 再生工程
71 同 粉砕機
72 同 バグフィルター
8 パッキング工程
81 同 タンク
82 同 袋詰めホッパー
83 同 パッキング
S 珪砂原鉱
B 珪砂塊
Fs 微砂
Cm 凝集剤
Uw 上澄水
Fw 濾液
Fc 精製粘土
Cw コンクリート廃水
Dc 脱水ケーキ
PDS 微粉末
L レイタンス
Rp 再生粉
M 製品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロイサイト、モンモリナイトを主成分とし二酸化珪素を50%以上含む粘土をバインダーとし、コンクリートスラッジを再資源化処理する過程で発生したケーキに所定割合で混合した上、粒状化するようにしたことを特徴とする珪酸塩肥料の製造方法。
【請求項2】
採掘珪砂原鉱から分離、除去した粘土をバインダーとし、コンクリートスラッジを再資源化処理する過程で発生したケーキに所定割合で混合した上、粒状化するようにしたことを特徴とする珪酸塩肥料の製造方法。
【請求項3】
採掘珪砂原鉱から分離、除去した粘土70ないし90重量%をバインダーとし、コンクリートスラッジを再資源化処理する過程で発生したケーキ30ないし10重量%に混合した上、造粒、乾燥して粒状化するようにしたことを特徴とする珪酸塩肥料の製造方法。
【請求項4】
採掘珪砂原鉱から分離、除去した粘土を乾燥、粉末化した精製粘土をバインダーとし、コンクリートスラッジを再資源化処理する過程で発生した脱水ケーキを乾燥、粉砕して得られる微粉末(PDS)に所定割合で混合した上、粒状化するようにしたことを特徴とする珪酸塩肥料の製造方法。
【請求項5】
採掘珪砂原鉱から分離、除去した粘土を乾燥、粉末化した精製粘土70ないし90重量%をバインダーとし、コンクリートスラッジを再資源化処理する過程で発生した脱水ケーキを乾燥、粉砕して得られる微粉末(PDS)30ないし10重量%に混合した上、造粒、乾燥して粒状化するようにしたことを特徴とする珪酸塩肥料の製造方法。
【請求項6】
採掘珪砂原鉱から他の用途に利用できる珪砂精鉱や微砂等を分離、除去した粘土を含水率35ないし40%まで脱水した後に乾燥、分級し、粉末化して得られる精製粘土80重量%をバインダーとし、コンクリートスラッジから再利用可能な骨材や微砂等を分離し、再資源化処理する過程で発生した脱水ケーキを乾燥、粉砕して得られる微粉末(PDS)20重量%に混合した上、造粒、乾燥して粒状化するようにしたことを特徴とする珪酸塩肥料の製造方法。
【請求項7】
採掘珪砂原鉱から他の用途に利用できる珪砂精鉱や微砂等を分離、除去した粘土を含水率35ないし40%まで脱水した後に乾燥、分級し、粉末化して得られる精製粘土75重量%をバインダーとし、コンクリート二次製品製造後に回収したレイタンスを乾燥してなる粉末体25%に混合した上、造粒、乾燥して粒状化するようにしたことを特徴とする珪酸塩肥料の製造方法。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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