説明

現像処理装置

【課題】従来の装置構造に可能な限り変更を加えずに、迅速な現像処理を図ることができる現像処理装置を提供する。
【解決手段】露光処理済の写真感光材料Pを現像処理する現像処理装置において、この感光材料Pを安定処理する処理液又は水の少なくとも一方に、磁場を加える磁場発生体11を備えることを特徴とする。磁場発生体は、安定処理液タンクと処理液供給サブタンクとの間で処理液を循環させる循環路などに設ける。水に磁場を加えることにより、浸透力や溶解力などが増加するため、安定処理能力が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光処理済の感光材料を現像処理する現像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のほとんどの現像処理装置の現像処理部は、発色現像槽と漂白定着槽と安定処理槽をこの順に隣接して配置し、各槽からの感光材料を隣接する槽に反転させながら送るターン搬送ユニットを夫々の槽の上部位置同士の間に配置している。
【0003】
現在、写真プリント業界では、プリントソースとして写真フィルムだけではなく、直接撮影画像データを生成するデジタルカメラに搭載されているメモリカードも取り扱う比率が高くなってきている。メモリカードから写真プリントを作製する場合は、写真フィルムとは異なり写真フィルムの現像処理がないこと、及び、家庭に普及してきているカラープリンタと競合することなどから、顧客を待たせずに迅速にプリント出力が可能なことが強く要望されている。このような迅速なプリント出力を可能にするためには、撮影画像を露光した感光材料を迅速に現像処理する必要がある。
【0004】
高速な現像処理を行うため、標準処理用の標準現像液が収容されている第1発色現像槽と、標準現像液よりも補充量が少なく処理時間の短い低補充迅速現像液が収容されている第2発色現像槽と、漂白液が収容されている漂白槽と、定着液が収容されている定着槽と、水洗水が収容されている第1及び第2水洗槽と、安定液が収容されている安定化槽とから構成される現像処理装置が知られている。この現像処理装置には、さらに、第1発色現像槽に感光材料を導く導入路と第2発色現像槽に感光材料を導く導入路とが個別に設けられるとともに、第1発色現像槽又は第2発色現像槽から漂白槽に感光材料を導く案内路も個別に設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平6‐51480号公報(段落番号〔0075〕〜〔0077〕、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1のように、標準的な現像処理と迅速な現像処理の2つの処理モードを実現するため、第1発色現像槽と第2発色現像槽とを設けるとともに、これらの発色現像槽への導入路や漂白槽への案内路を夫々個別に設けることは、装置の大型化や制御の複雑化をもたらし、容認できないコスト高を導く。
【0007】
発明は、かかる問題点に着目してなされたものであり、その目的は、従来の装置構造に可能な限り変更を加えずに、迅速な現像処理を図ることができる現像処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る現像処理装置の第一特徴構成は、露光処理済の感光材料を現像処理する現像処理装置において、前記感光材料を安定処理する処理液又は水の少なくとも一方に磁場を加える磁場発生体を備えている点にある。
【0009】
本発明は、水に磁場を加えると浸透力や溶解力などが増加するという本願発明者の知見に基づくものであり、本構成のごとく、前記感光材料を安定処理する処理液又は水の少なくとも一方に磁場発生体により磁場を加えることで、安定処理タンクにおける処理液の浸透力などを増加することができ、その結果、安定処理能力の向上を図ることができる。したがって、安定処理に要する時間は従来よりも短くて済み、安定処理タンクの数を減らすことや安定処理タンクにおける搬送速度を上げることにより、迅速な現像処理を実現することができる。また、従来の装置に対して、磁場発生体を設ければ良いので、簡単な構成で現像処理の迅速化を図ることができる。なお、磁場発生体とは、磁場を発生させている物体のことで、例えば永久磁石などのことを表している。
【0010】
本発明に係る現像処理装置の第二特徴構成は、前記現像処理装置は、前記安定処理する処理液を貯えた安定処理タンクと前記安定処理タンクに供給する前記処理液を貯えたサブタンクとの間で前記処理液を循環させる循環路を備え、前記磁場発生体が前記循環路に設けられている点にある。
【0011】
本構成によれば、磁場発生体を循環路に設けるので、従来の装置に対して容易に磁場発生体を設置することができる。また、処理液が循環する循環路に磁場発生体を設けているので、循環する処理液すなわち安定処理タンクに供給される処理液に対して常に磁場を加えることができ、安定処理能力の更なる向上を図ることができる。
【0012】
本発明に係る現像処理装置の第三特徴構成は、前記現像処理装置は、前記サブタンクに水を供給する補水供給路を備え、前記磁場発生体が前記補水供給路に設けられている点である。
【0013】
本構成によれば、磁場発生体を補水供給路に設けるので、従来の装置に対して容易に磁場発生体を設置することができる。また、処理液が貯えられたサブタンクに供給されるとともに、磁場を加えることで浸透力などが増加する水に対して常に磁場を加えることができるので、安定処理能力の更なる向上を図ることができる。
本発明によるその他の特徴及び利点は、以下図面を用いた実施形態の説明により明らかになるだろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、現像処理装置1は、感光材料としてのロール状の印画紙Pを収納する印画紙マガジン2と、印画紙マガジン2から引き出され、カッタ3で切断された矩形の印画紙Pにレーザエンジン4aなどで画像を露光処理する露光部4と、露光処理された印画紙Pを現像処理するための複数の処理タンクを備えた現像処理部5と、現像処理済みの印画紙Pを乾燥させる乾燥処理部7とを備えている。乾燥処理部7は、印画紙Pを上方の出口に向けて搬送するための複数の搬送ローラを備えた乾燥ラック71、乾燥ラック71に温風を送り込むブロワ72などを備えている。
【0015】
現像処理部5の詳細な構成を述べると、印画紙Pの搬送方向の上流側から下流側に向けて、発色現像処理液(CD)を貯えた1つの発色現像処理タンク51、漂白定着処理液(BF)を貯えた1つの漂白定着処理タンク52、及び、安定処理液(STB)を貯えた4つの安定処理タンク53,54,55,56をこの順で備えている。各処理タンクには印画紙Pを各処理液内で搬送ローラによって搬送する搬送ラック10が設置されている。この搬送ラック10の下方部位を構成する液中ラック10Aは、その略全体が処理液中に浸漬され、他方、搬送ラック10の上方部位を構成するオーバーヘッドラック10Bは各処理液の水平な液面より上方に位置して、印画紙Pを下流側の液中ラック10Aに手渡す構成となっている。
【0016】
次に安定処理タンクについて、安定処理タンク53を例として説明する。図2に安定処理タンク53の断面模式図を示す。図に示すように、安定処理タンク53の側部位置には安定処理タンクからの処理液の流入・流出が可能なように連通状態で形成されたサブタンク53Aを備えている。また、サブタンク53Aからフィルタ91を介して吸入した処理液を安定処理タンク53の底部に戻す循環ポンプ53Pを有する断面円形状の循環路53Sを備えている。サブタンク53Aには、処理液の液温を計測する温度センサ92と、処理液を加熱する電気式のヒータ93とが備えられており、処理液の温度を一定に保持している。
【0017】
サブタンク53Aには、現像処理部に配置された補水タンク60から、補水ポンプ63Pにより補水供給路63Sを通して水が供給されている。なお、図示しないが、安定処理タンクと同様に、発色現像処理タンク51及び漂白定着処理タンクにも夫々サブタンクが備えられるとともに、これらの処理タンクとサブタンクとの間には循環路と循環ポンプが夫々設けられている。さらに、発色現像処理タンク51と漂白定着処理タンク52のサブタンクにも補水供給路と補水ポンプが夫々設けられており、補水タンク60から水が供給されている。
【0018】
図2(a)に示すように、循環ポンプ53Pの処理液排出側の循環路には磁場発生体としてのフェライト系永久磁石11(以下、永久磁石と称する)が配置されている。図3(a)及び(b)に示すように、この永久磁石11は、循環路53Pの軸方向に沿うとともにその断面が循環路53Pの円形断面の曲率と略等しい曲率を有するC字形状の永久磁石11Aと11Bとから構成されている。また、図3(b)に示すように、永久磁石11A,11Bは互いに異なる磁極を対向して配置しており、これにより循環路53P内を循環する処理液全てに磁場を加えることができる(図3(b)の点線の矢印はN極からS極への磁力線を表している)。なお、加える磁場の強さは、2000ガウス以上であることが好ましい。このように、従来の装置に対して循環路に沿って永久磁石11を配置するだけで、循環する処理液に対して常に磁場を加えることができる。その結果、処理液の安定処理能力の向上を図ることができ、安定処理タンク53に搬入される印画紙Pに付着した漂白定着液を除去し易くなる。したがって、安定処理に要する時間は従来よりも短くて済み、安定処理タンクにおける搬送速度を上げることなどにより、迅速な現像処理を実現することができる。なお、ここでは安定処理タンク53を例にして説明したが、他の安定処理タンク54〜56についても同様である。
【0019】
上述した実施の形態においては、磁場発生体としてフェライト系永久磁石を用いたが、勿論、磁場発生体として他の種類の永久磁石や電磁コイルなどを用いても良い。
【0020】
上述した実施の形態においては、永久磁石を循環ポンプ53P近傍に配置したが、処理液又は水の少なくとも一方に磁場を加えることができる場所、例えば循環路の他の部分や、補水供給路などに磁場発生体を設けても良い。例えば、図2(b)に示すように、補水供給路63Sのノズル部分に配置してもよく、補水供給路の補水ポンプ近傍に配置しても良い。
【0021】
また、本発明による現像処理装置の適用例としては、メモリカードから写真プリントを作製する顧客が強く望む迅速写真プリント出力に対処するため、特に撮影画像を露光された印画紙Pを現像処理する現像処理装置が最適であるが、もちろん印画紙P以外の感光材料、例えば写真フィルムを現像処理する現像処理装置にも本発明の特徴を適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る現像処理装置の横断面模式図
【図2】(a)本発明に係る現像処理装置の縦断面模式図,(b)別実施形態における現像処理装置の縦断面模式図
【図3】(a)永久磁石を配置した循環路の斜視図,(b)図3(a)の永久磁石の断面図
【符号の説明】
【0023】
P:印画紙(感光材料)
53〜56:安定処理タンク
53A:サブタンク
60:補水タンク
53S:循環路
63S:補水供給路
11:永久磁石(磁場発生体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光処理済の感光材料を現像処理する現像処理装置において、
前記感光材料を安定処理する処理液又は水の少なくとも一方に磁場を加える磁場発生体を備えている現像処理装置。
【請求項2】
前記現像処理装置は、前記安定処理する処理液を貯えた安定処理タンクと前記安定処理タンクに供給する前記処理液を貯えたサブタンクとの間で前記処理液を循環させる循環路を備え、前記磁場発生体が前記循環路に設けられている請求項1に記載の現像処理装置。
【請求項3】
前記現像処理装置は、前記サブタンクに水を供給する補水供給路を備え、前記磁場発生体が前記補水供給路に設けられている請求項1又は2に記載の現像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−41061(P2007−41061A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−222135(P2005−222135)
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(000135313)ノーリツ鋼機株式会社 (1,824)
【Fターム(参考)】