説明

現像剤、現像剤収容体、現像装置、画像形成装置および現像剤製造方法

【課題】現像剤の保存性の悪化を防止するとともに印刷品質を向上させる。
【解決手段】結着樹脂および着色剤を有機溶媒中に溶解または分散させて得た油相成分を、無機分散剤を分散させた水性媒体中に分散造粒させて得られる現像剤において、前記結着樹脂を、酸価が0.3mgKOH/g以上かつ1.4mgKOH/g以下のポリエステル樹脂とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の複写機、ファクシミリ装置、プリンタ等に用いられる現像剤、現像剤収容体、現像装置、画像形成装置および現像剤製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プリンタ等の画像形成装置において、低消費電力等を目的として低温定着可能な現像剤の開発が盛んに行われている。静電荷現像用の現像剤としては、定着時に、瞬時に溶融し、印刷面が平滑になる樹脂としてポリエステルが用いられている。
従来の現像剤は、配合成分を混練、粉砕、分級し生成する粉砕法により作製されていたが、形状制御や低温定着の改善を行い難いという問題があった。また、湿式の現像剤の作製方法として懸濁重合法では、現像剤となるべき樹脂の重合性単量体組成が溶解重合可能な重合性単量体に限られてしまうため、ポリエステルを現像剤用樹脂としては使用できないという問題があった。
【0003】
これらの問題を解決する現像剤の作成方法として、現像剤成分を溶解した油相液を、水溶性樹脂を含む水相中で粒子化し、溶媒除去後粉体化する溶解懸濁法を採用し、さらに現像剤の光透過性を向上させるため、結着樹脂として、モノカルボン酸を含有し、および/またはモノアルコールを含有してなる酸価10mgKOH/g以下のポリエステル樹脂を含有する樹脂を使用することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−52619号公報(段落「0038」〜段落「0046」)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の技術においては、現像剤の粒径制御が容易になる点で好ましいが、油相液滴中に分散剤が一部取り込まれてしまい、酸を添加しても除去できない無機微粒子が現像剤中に残ってしまうため、現像剤中に含まれる無機微粒子により現像剤の吸湿性が上がり、現像剤の保存性や印刷品質が悪化するという問題がある。
本発明は、このような問題を解決することを課題とし、現像剤の保存性の悪化を防止するとともに印刷品質を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのため、本発明は、結着樹脂および着色剤を有機溶媒中に溶解または分散させて得た油相成分を、無機分散剤を分散させた水性媒体中に分散造粒させて得られる現像剤において、前記結着樹脂は、酸価が0.3mgKOH/g以上かつ1.4mgKOH/g以下のポリエステル樹脂であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
このようにした本発明は、現像剤の保存性の悪化を防止するとともに印刷品質を向上させることができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施例における現像剤収容体の構成を示す概略側断面図
【図2】第1の実施例における画像形成装置の構成を示す概略側断面図
【図3】第1の実施例における画像形成ユニットの構成を示す概略側断面図
【図4】第1の実施例における画像形成ユニットの要部の構成を示す概略側断面図
【図5】第1の実施例における定着部の構成を示す概略側断面図
【図6】第1の実施例における実験例2で得たトナーの断面の透過型電子顕微鏡画像
【図7】第1の実施例における比較例4で得たトナーの断面の透過型電子顕微鏡画像
【図8】第2の実施例で得たトナーの断面の透過型電子顕微鏡画像
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明による現像剤、現像剤収容体、現像装置、画像形成装置および現像剤製造方法の実施例を説明する。
【実施例1】
【0010】
図2は第1の実施例における画像形成装置の構成を示す概略側断面図である。
図2において、画像形成装置10は、例えば電子写真方式のカラープリンタとしての構成を備え、記録用紙カセット11、画像形成ユニット31〜34、転写部16、定着部40を有し、更にこれらの各部に印刷用媒体としての記録用紙50を搬送するための用紙搬送ローラ45a〜45x、搬送路切り替えガイド41,42を備えている。
【0011】
記録用紙カセット11は、内部に記録用紙50を積層状態で収納して装置内下部に着脱自在に装着され、用紙搬送ローラ45a,45bは、この記録用紙カセット11に収納されている記録用紙50を、その最上部から一枚ずつ捌いて用紙搬送路を矢印(l)方向に繰り出す。搬送ローラ45c,45d及び搬送ローラ45e,45fは、記録用紙50を矢印(e)に沿って搬送する間に用紙の斜行を矯正し、画像形成部30に送る。
【0012】
画像形成部30は、用紙搬送路に沿って着脱自在に配置された4つの現像装置としての画像形成ユニット31〜34と、後述するように各画像形成ユニットにより形成された現像剤像としてのトナー像を、記録用紙50の上面にクーロン力により転写する転写部16からなる。なお、直列に並べられた4つの画像形成ユニット31〜34はすべて同じ構成であり、使用される現像剤としてのトナーの色、即ち、ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)のみが異なる。したがって、ブラック(K)の画像形成ユニット31を代表としてその構成を後述する。
【0013】
転写部16は、用紙を静電吸着して搬送する転写ベルト17、図示せぬ駆動部により回転されて転写ベルト17を駆動するドライブローラ18、ドライブローラ18と対を成して転写ベルト17を張架するテンションローラ19、前記画像形成ユニット31〜34の図3に示す各感光ドラム101に対向して当接するよう配置され、トナー像を記録用紙50に転写するよう電圧を印加する転写ローラ20〜23、転写ベルト17上に付着したトナーを掻き取ってクリーニングする転写ベルトクリーニングブレード24、転写ベルトクリーニングブレード24により掻き落とされたトナーを堆積するトナーボックス25からなる。
【0014】
ここで、ブラック(K)の画像形成ユニット31の構成について説明する。図3は、第1の実施例における画像形成ユニットの構成を示す概略側断面図である。同図に示すように、画像形成ユニット31は、現像部100と現像剤収容体としてのトナーカートリッジ120とからなる。画像形成ユニット31は、図2に示す画像形成部30の所定位置に着脱自在に装着され、トナーカートリッジ120は、現像部100に対して着脱自在に装着可能となっている。
【0015】
図4は、第1の実施例における画像形成ユニットの要部の構成を示す概略側断面図であり、図3に示す画像形成ユニット31の現像部100の構成を概略的に示す要部構成図である。同図中、静電潜像担持体としての感光ドラム101は、導電性支持体と光導電層によって構成され、導電性支持体としてのアルミニウムの金属パイプに、光導電層としての、電荷発生層及び電荷輸送層を順次積層した構成の有機系感光体である。帯電装置としての帯電ローラ102は、感光ドラム101の周面に接して設けられ、金属シャフトと半導電性エピクロロヒドリンゴム層によって構成されている。露光装置であるLED(Light Emitting Diode)ヘッド103は、例えばLED素子とレンズアレイを有し、LED素子から出力される照射光が感光ドラム101の表面に結像する位置に配置されている。
【0016】
現像剤担持体としての現像ローラ104は、感光ドラム101の周面に接して設けられ、金属シャフトと半導電性ウレタンゴム層によって構成されている。現像ローラ104に摺接する現像剤供給体としての供給ローラ106は、金属シャフトと半導電性発泡シリコンスポンジ層によって構成されている。現像剤としてのトナー110は、結着樹脂としてポリエステル樹脂を用い、内部添加剤としての帯電制御剤、離型剤、着色剤、外部添加剤としてのシリカ微粒子によって構成されている。現像ローラ104の表面に押圧されて当接される現像剤規制部材としての現像ブレード107はステンレス製であり、感光ドラム101の周面に押圧されて当接される現像剤回収装置としてのクリーニングブレード105は、ウレタンゴム製である。
【0017】
図1は、第1の実施例における現像剤収容体の構成を示す概略側断面図であり、図3に示す画像形成ユニット31のトナーカートリッジ120の内部構成を概略的に示す要部構成図である。同図に示すように、トナーカートリッジ120の容器121内のトナー収納部125の所定部には、その長手方向(紙面の表裏方向)に延在する撹拌バー122が回転自在に支持され、その下方には容器内のトナーを排出する排出口124が形成されている。シャッタ123は、容器内にあって、この排出口124を開閉するために矢印(s)方向にスライド可能に配設されている。
【0018】
後述するように、図2に示す画像形成部30で各色のトナー画像が転写された記録用紙50は、搬送路を矢印(h)方向に搬送されて定着部40に送られる。図5は第1の実施例における定着部の構成を示す概略側断面図であり、この定着部40の内部構造を概略的に示す要部構成図である。同図に示すように、定着装置40は、発熱ローラ141、加圧ローラ144、サーミスタ143、及び加熱ヒータ142を備えている。発熱ローラ141は、アルミニウムからなる中空円筒状の芯金にシリコーンゴムの耐熱弾性層を被覆し、その上にPFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)チューブを被覆することによって形成され、更にその芯金内には加熱ヒータ142、ここではハロゲンランプが配設されている。
【0019】
加圧ローラ144は、アルミニウムの芯金にシリコーンゴムの耐熱弾性層を被覆し、その上にPFAチューブを被覆した構成で、発熱ローラ141との間に接触部が形成されるように配置されている。サーミスタ143は、発熱ローラ141の表面温度検出手段であり、発熱ローラ141の近傍に非接触で配置される。サーミスタ143によって検出された温度情報は図示しない温度制御手段に送られ、温度制御手段はこの温度情報に基づいて加熱ヒータ142をオン/オフ制御して、発熱ローラ141の表面温度を所定の温度に維持する。
【0020】
次に、画像形成装置の画像形成プロセスについて、先ずその現像プロセスから説明する。
図4に示すように、感光ドラム101は、図示しない駆動手段により矢印(a)方向に一定周速度で回転する。感光ドラム101の表面に接触して設けられた帯電ローラ102は、矢印(d)方向に回転しながら、図示しない帯電ローラ用高圧電源によって供給される直流電圧を感光ドラム101の表面に印加し、この表面を一様均一に帯電させる。次に、感光ドラム101に対向して設けられたLEDヘッド103によって、画像信号に対応した光を感光ドラム101の一様均一に帯電された表面に照射し、光照射部分の電位を光減衰して静電潜像を形成する。
【0021】
一方、図1に示すトナーカートリッジ120のシャッタ123は、図3に示すように現像部100に装着された後に、図示せぬレバー操作によって、矢印(s)方向の、容器121の排出口124を開口する方向にスライドする。これにより、容器121内のトナー110が、排出口124から矢印(v)方向に落下し、図4に示す現像部100に供給される。現像部100に落下したトナー110は、図示しない供給ローラ用高圧電源によって電圧が印加された供給ローラ106の矢印(c)方向回転によって、現像ローラ104に供給される。
【0022】
現像ローラ104は、感光ドラム101に密着して配置されており、図示しない現像ローラ用高圧電源によって電圧が印加されている。現像ローラ104は、供給ローラ106により搬送されたトナー110を吸着し、これを矢印(b)方向に回転搬送する。この回転搬送過程で、供給ローラ106より下流側にあって現像ローラ104に圧接して配置された現像ブレード107は、現像ローラ104に吸着したトナー110を均一な厚さに均したトナー層を形成する。
【0023】
さらに、現像ローラ104は、感光ドラム101上に形成された静電潜像を、担持するトナーによって以下のようにして反転現象する。感光ドラム101の導電性支持体と現像ローラ104間には高圧電源によってバイアス電圧が印加されている構成なので、現像ローラ104と感光ドラム101の間には、感光ドラム101に形成された静電潜像に伴う電気力線が発生する。このため、現像ローラ104上の帯電したトナー110は、静電気力により感光ドラム101上の静電潜像部分に付着し、この部分を現像してトナー像を形成する。なお、感光ドラム101の回転開始で始まる以上の現像プロセスは、後述する所定のタイミングで開始される。
【0024】
図2において、記録用紙カセット11に収容された記録用紙50は、前記したように用紙搬送ローラ45a及び45bによって記録用紙カセット11から矢印(l)の方向に一枚ずつ取り出される。その後、図示しない記録用紙ガイドに沿って、用紙搬送ローラ45c,45d及び用紙搬送ローラ45e,45fによって、斜行が矯正されながら矢印(e)方向に搬送される。そして、矢印(g)方向に回転するドライブローラ18によって矢印(f)方向へ回転する転写ベルト17へと送られる。なお、上記した現像プロセスは、記録用紙50が矢印(e)方向に搬送される間の所定のタイミングで開始される。
【0025】
次に、図4に示すように、ブラック(K)の画像形成ユニット31の現像部100の感光ドラム101に、転写ベルト17を介して押圧され当接した状態で対向して配置され、図示しない転写ローラ用高圧電源によって電圧が印加された転写ローラ20によって、転写ベルト17に静電吸着して搬送される記録用紙50上に、上記した現像プロセスによって感光ドラム101上に形成されたブラックトナー像を転写する転写プロセスが行われる。
【0026】
その後、記録用紙50は、転写ベルト17上を矢印(f)に沿って進み、前記した画像形成ユニット31及び転写ローラ20による現像プロセス及び転写プロセスと同様のプロセスによって、画像形成ユニット32と転写ローラ21によってイエロートナー像が、画像形成ユニット33と転写ローラ22によってマゼンタトナー像が、そして画像形成ユニット34と転写ローラ23によってシアントナー像が、順次記録紙50上に転写される。各色のトナー像が転写された記録紙50は、矢印(h)方向へと搬送される。
【0027】
次に、定着プロセスについて説明する。図5に示すように、各色のトナー像が転写された記録紙50は、矢印(h)方向へと搬送され、発熱ローラ141と加圧ローラ144を備えた定着部40へ搬送される。トナー像が転写された記録紙50は、前記したように図示しない温度制御手段によって制御されて所定の表面温度に保たれ、矢印(i)方向に回転する発熱ローラ141と、矢印(j)方向に回転する加圧ローラ144の間へ進む。そこで、発熱ローラ141の熱が記録紙50上のトナー像を溶融し、更に記録紙50上で溶融したトナー像を発熱ローラ141と加圧ローラ144との圧接部で加圧することによりトナー像が記録紙50に定着する。
トナー像が定着した記録紙50は、図2に示す用紙搬送ローラ45g,45h、及び用紙搬送ローラ45i,45jによって矢印(k)方向に搬送され、画像形成装置10の外部のスタッカ部46へと送出される。
【0028】
次に、クリーニングプロセスについて説明する。図4に示すように、転写後においても、感光ドラム101の表面には、若干のトナー110が残留する場合があるが、この残留トナー110は、クリーニングブレード105によって除去される。クリーニングブレード105は、長手方向(紙面の表裏方向)に延在する感光ドラム101の回転軸方向に沿って平行に配置され、その先端部が感光ドラム101の表面に当接するようにその根元部分が剛性の支持基板に取付けられ、固定される。クリーニングブレード105が感光ドラム101の周面に当接したままの状態で感光ドラム101が回転軸中心に回転するとき、転写されずに残った感光ドラム101表面上の残留トナー110をそのドラム表面から除去する。こうしてクリーニングされた感光ドラム101は、繰り返し利用される。
【0029】
また、図2に示すように、連続通紙時の紙間等では各画像形成ユニット31〜34の感光ドラム101(図4)から、一部の帯電不良のトナーが転写ベルト17に転写される場合がある。しかしながら、転写ベルト17に転写されたトナーは、転写ベルト17が矢印(f)、(r)方向に回転移動する際に、転写ベルトクリーニングブレード24によって転写ベルト17から除去されてトナーボックス25に帯電不良トナーとして溜められる。こうしてクリーニングされた転写ベルト17は、繰り返し利用される。
なお、図2に示す用紙搬送ローラ45k〜45x、搬送路切り替えガイド41,42は、両面印刷を行うに記録用紙50を搬送し、またその搬送方向をガイドするものであるが、本願発明と直接関係しないため、ここでのこれらの説明は省略する。
【0030】
次に、本実施例のトナーについて説明する。
本実施例では、実験例1および実験例2として2種類のトナーを作製し、また比較例1から比較例4として4種類のトナーを作製した。
<実験例1>
まず、無機分散剤を分散させた水性媒体を得る工程として、純水12000重量部に懸濁安定剤(分散剤)としてのリン酸三ナトリウム410重量部を混合し、液温60℃で溶解させた後、純水1920重量部に塩化カルシウム260重量部を溶解させた塩化カルシウム水溶液を投入し、ネオミクサー(登録商標:プライミクス株式会社製)で10000回転/分、液温60℃に保ちながら5分間、高速攪拌させて分散剤を含む水相を調製する。
【0031】
一方、結着樹脂および着色剤を有機溶媒中に溶解または分散させて油相成分を得る工程として、酢酸エチル94.2重量部、カーボンブラック5.0重量部、分散剤0.8重量部をビーズミル分散機(アイメックス株式会社製)に投入し、分散させることでカーボンブラック分散液を調製し、このカーボンブラック分散液496重量部を加熱攪拌し、酢酸エチル1133重量部を加え、液温40℃で攪拌する。その後、エステルワックス(融点:71℃)41重量部、帯電制御樹脂11重量部、帯電制御剤1重量部を順次加える。液温を50℃にした後、結着樹脂として酸価が0.3mgKOH/gのポリエステル樹脂400重量部を投入し、固形物がなくなるまで攪拌して油相を調製する。ここで、酸価とは、1gの樹脂を中和するのに必要な水酸化カリウムのミリグラム数を表す。
【0032】
上記の水相の液温を40℃に下げた後、油相をゆっくり投入し、8000回転/分で30秒攪拌することによって懸濁させ、その後、減圧蒸留で酢酸エチルを除去した。
液中のトナーを一度脱水した後、純水に再分散させ、硝酸を加えてpHは1.5以下にして5分間、攪拌し、酸洗浄を行い、リン酸三カルシウムを溶解させる。もう一度、同様にして酸洗浄を行い、さらに脱水したトナーを純水に再分散させ、5分間、攪拌し、水洗浄を行う。その後、脱水、乾燥させ、トナーを生成した。
このようにして、結着樹脂および着色剤を有機溶媒中に溶解または分散させて得た油相成分を、無機分散剤を分散させた水性媒体中に分散造粒させてトナーを生成する。
【0033】
次に、外添工程として、生成したトナー100(重量部)に疎水性シリカRX50(日本アエロジル社製、平均一次粒径40nm)1.0(重量部)、疎水性シリカRX200(日本アエロジル社製、平均一次粒径12nm)0.8(重量部)を添加し、10リットル容のヘンシェルミキサーで5400(回転/分)の回転速度で10分間撹拌することでトナーを得る。
【0034】
<実験例2>
上記「酸価が0.3mgKOH/gのポリエステル樹脂」に替えて、酸価が1.4mgKOH/gのポリエステル樹脂を用いて、実験例1と同様にしてトナーを生成した。
【0035】
<比較例1>
実験例1における「酸価が0.3mgKOH/gのポリエステル樹脂」に替えて、酸価が2.8mgKOH/gのポリエステル樹脂を用いて、実験例1と同様にしてトナーを生成した。
【0036】
<比較例2>
実験例1における「酸価が0.3mgKOH/gのポリエステル樹脂」に替えて、酸価が3.6mgKOH/gのポリエステル樹脂を用いて、実験例1と同様にしてトナーを生成した。
【0037】
<比較例3>
実験例1における「酸価が0.3mgKOH/gのポリエステル樹脂」に替えて、酸価が4.5mgKOH/gのポリエステル樹脂を用いて、実験例1と同様にしてトナーを生成した。
【0038】
<比較例4>
実験例1における「酸価が0.3mgKOH/gのポリエステル樹脂」に替えて、酸価が6.1mgKOH/gのポリエステル樹脂を用いて、実験例1と同様にしてトナーを生成した。
【0039】
上述した構成により生成したトナーについて説明する。
ポリエステル樹脂の酸価は、滴定装置「DL−58」(METTLER TOLEDO社製)および電極「DG113」(METTLER TOLEDO社製)を用い、試料約0.5〜0.6gをスクリュー管に秤取り、混合溶媒を加えて溶解し、0.01mol/Lの水酸化カリウム−エタノール溶液で電位差滴定にて測定した。
【0040】
トナー中のカルシウムおよびリンの元素分析は、エネルギー分散型蛍光X線分析装置「EDX−800HS2」(島津製作所社製)を用いてHe雰囲気にてX線電圧を15KVとして測定した。元素の含有率は、測定強度から検出された元素の合計で、濃度を100重量%と計算する方法で求めた。
トナー中のリン酸三カルシウムの確認は、トナー断面の透過型電子顕微鏡「H−7100型」(日立社製)による観察で行った。なお、加速電圧は100KVとし、試料はRuO4染色超薄切片法で作製した。
【0041】
このようにしてトナーの元素分析および透過型電子顕微鏡での観察を行い、その結果としての実験例1、実験例2、比較例1〜比較例4のトナー中のカルシウム含有率(重量%)、トナー中のリン含有率(重量%)、トナー中のリン酸三カルシウムの有無を表1に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
また、実験例2で作製したトナーの断面を透過型電子顕微鏡で観察した画像(倍率は40000倍)を図6に示し、比較例4で作製したトナーの断面を透過型電子顕微鏡で観察した画像(倍率は40000倍)を図7に示す。図7において、例えば領域71に示すようにトナー中に懸濁安定剤(分散剤)であるリン酸三カルシウムが取り込まれている様子を確認することができるが、図6に示すように、実験例2で作製したトナー中にはリン酸三カルシウムが取り込まれていない。なお、透過型電子顕微鏡で観察したトナーは外添工程を施す前のものである。
【0044】
上記実験例1および実験例2で得たトナーを図3に示す画像形成ユニット31〜34のトナーカートリッジ120に収容し、その画像形成ユニット31〜34を搭載した図2に示す画像形成装置10で画像の印刷を行った結果、良好な印刷品質を得ることができた。
【0045】
また、上述した元素分析および透過型電子顕微鏡での観察から、酸価が0.3mgKOH/g以上、かつ1.4mgKOH/g以下のポリエステル樹脂を用いることにより、トナー中に懸濁安定剤(分散剤)であるリン酸三カルシウムが取り込まれることのないトナーを作製することができる。したがって、この製法により得られたトナーは、懸濁安定剤(分散剤)が残留することによる水分の吸着が発生しないため、トナーの保存性を改善することができる。また、水分の吸着が発生しないことにより、トナーの帯電の低下を防ぐことができ、印刷品質を向上させることができる。
【0046】
以上説明したように、第1の実施例では、酸価が0.3mgKOH/g以上、かつ1.4mgKOH/g以下のポリエステル樹脂を用いることにより、トナーの保存性の悪化を防止するとともに印刷品質を向上させることができるという効果が得られる。
【実施例2】
【0047】
第2の実施例では、第1の実施例の比較例4に用いた架橋構造のポリエステル樹脂の側鎖に、化学式1で示す構造の長鎖アルキル基を修飾することで疎水性を上げた、酸価が2.4mgKOH/gのポリエステル樹脂を用い、第1の実施例における実験例1と同様にしてトナーを生成した。
【0048】
【化1】

【0049】
第1の実施例と同様に、元素分析および透過型電子顕微鏡での観察を行い、その結果としての実施例2のトナー中のカルシウム含有率(重量%)、トナー中のリン含有率(重量%)、トナー中のリン酸三カルシウムの有無を表2に示す。
【0050】
【表2】

【0051】
また、実施例2で作製したトナーの断面を透過型電子顕微鏡で観察した画像(倍率は40000倍)を図8に示す。なお、透過型電子顕微鏡で観察したトナーは外添工程を施す前のものである。
本実施例で得たトナーを図3に示す画像形成ユニット31〜34のトナーカートリッジ120に収容し、その画像形成ユニット31〜34を搭載した図2に示す画像形成装置10で画像の印刷を行った結果、良好な印刷品質を得ることができた。
【0052】
また、上述した元素分析および透過型電子顕微鏡での観察から、疎水性を上げたポリエステル樹脂を用いることにより、ポリエステル樹脂の酸価が2.4mgKOH/gであっても、ベーストナー中のリンの含有量が0.047重量%で、トナー中に懸濁安定剤であるリン酸三カルシウムが取り込まれることのないトナーを作製することができる。したがって、この製法により得られたトナーは、懸濁安定剤が残留することによる水分の吸着が発生しないため、トナーの保存性を改善することができる。また、水分の吸着が発生しないことにより、トナーの帯電の低下を防ぐことができ、印刷品質を向上させることができる。
【0053】
なお、ポリエステル樹脂の酸価は小さいほどトナー中に懸濁安定剤であるリン酸三カルシウムが取り込まれないため、ポリエステル樹脂の酸価が2.4mgKOH/g以下である場合、本実施例と同様の効果を得ることができる。
【0054】
以上説明したように、第2の実施例では、疎水性を上げ、酸価が2.4mgKOH/g以下のポリエステル樹脂を用いることにより、トナーの保存性の悪化を防止するとともに印刷品質を向上させることができるという効果が得られる。
なお、第1の実施例および第2の実施例では、画像形成装置を電子写真方式のプリンタとして説明したが、それの限られることなく、画像形成装置を複写機、ファクシミリ装置、複合機としても良い。
【符号の説明】
【0055】
10 画像形成装置
11 記録用紙カセット
16 転写部
17 転写ベルト
18 ドライブローラ
19 テンションローラ
20〜23 転写ローラ
24 転写ベルトクリーニングブレード
25 トナーボックス
30 画像形成部
31〜34 画像形成ユニット
40 定着部
41,42 搬送路切り替えガイド
45a〜45x 用紙搬送ローラ
50 記録用紙
100 現像部
101 感光ドラム
102 帯電ローラ
103 LEDヘッド
104 現像ローラ
105 クリーニングブレード
106 供給ローラ
107 現像ブレード
110 トナー
120 トナーカートリッジ
121 容器
122 撹拌バー
123 シャッタ
124 排出口
125 収納部
141 発熱ローラ
142 加熱ヒータ
143 サーミスタ
144 加圧ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂および着色剤を有機溶媒中に溶解または分散させて得た油相成分を、無機分散剤を分散させた水性媒体中に分散造粒させて得られる現像剤において、
前記結着樹脂は、酸価が0.3mgKOH/g以上かつ1.4mgKOH/g以下のポリエステル樹脂であることを特徴とする現像剤。
【請求項2】
結着樹脂および着色剤を有機溶媒中に溶解または分散させて得た油相成分を、無機分散剤を分散させた水性媒体中に分散造粒させて得られる現像剤において、
前記結着樹脂は、側鎖に化学式2に示す長鎖アルキル基を修飾し、酸価が2.4mgKOH/g以下のポリエステル樹脂としたことを特徴とする現像剤。
【化2】

【請求項3】
結着樹脂および着色剤を有機溶媒中に溶解または分散させて得た油相成分を、無機分散剤を分散させた水性媒体中に分散造粒させて得られる現像剤において、
現像剤中のリンの含有率を、0.018重量%以上かつ0.058重量%以下としたことを特徴とする現像剤。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の現像剤を収容する収容部を備えたことを特徴とする現像剤収容体。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の現像剤を使用することを特徴とする現像装置。
【請求項6】
請求項5の現像装置を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
結着樹脂および着色剤を有機溶媒中に溶解または分散させて得た油相成分を、無機分散剤を分散させた水性媒体中に分散造粒させて現像剤を生成する現像剤製造方法において、
前記結着樹脂は、酸価が0.3mgKOH/g以上かつ1.4mgKOH/g以下のポリエステル樹脂であることを特徴とする現像剤製造方法。
【請求項8】
結着樹脂および着色剤を有機溶媒中に溶解または分散させて得た油相成分を、無機分散剤を分散させた水性媒体中に分散造粒させて現像剤を生成する現像剤製造方法において、
前記結着樹脂は、側鎖に化学式3に示す長鎖アルキル基を修飾し、酸価が2.4mgKOH/g以下のポリエステル樹脂としたことを特徴とする現像剤製造方法。
【化3】

【請求項9】
結着樹脂および着色剤を有機溶媒中に溶解または分散させて得た油相成分を、無機分散剤を分散させた水性媒体中に分散造粒させて現像剤を生成する現像剤製造方法において、
現像剤中のリンの含有率を、0.018重量%以上かつ0.058重量%以下としたことを特徴とする現像剤製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−189769(P2012−189769A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−52686(P2011−52686)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】