説明

現像装置

【課題】予備帯電させずとも、トナーを電界の作用によって搬送することのできる、現像装置を提供すること。
【解決手段】順次電圧が印加されることにより進行波電界を形成する複数の電極17を備える搬送体4と、トナーを収容するケーシング3とを備える現像装置1において、下記に示す方法に基づくトナーの活性度を2.0×10-6モル/g以下とする。1)塩化ベンゼトニウムをトナー表面に存在する静電気的に活性な極性基に対して過剰当量含有する水溶液に、トナーを浸漬して、極性基と塩化ベンゼトニウムとを静電的に反応させる。2)ラウリル硫酸ナトリウムを、水溶液に滴下して、残余の塩化ベンゼトニウムと反応させて、残余の塩化ベンゼトニウムと反応したラウリル硫酸ナトリウムの反応量を測定する。3)ラウリル硫酸ナトリウムの反応量から、トナー表面の活性度を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナーを現像するために用いられる現像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写装置、プリンタ、ファクシミリなどの画像形成装置では、感光ドラムに静電潜像を形成して、その静電潜像をトナーで現像することにより、可視像を形成している。
このような画像形成装置では、トナーを収容し、感光ドラムへ供給するための現像装置が設けられている。現像装置では、一般的には、現像ローラによりトナーを感光ドラムへ搬送する。
【0003】
さらに、現像装置として、静電的に帯電したトナーを、電界の作用によって感光ドラムへ搬送するものが、種々提案されている(たとえば、特許文献1、特許文献2参照。)。
電界の作用によりトナーを搬送すれば、トナーに対して搬送時に生じる摩擦を低減することができ、トナーの劣化を抑制することができる。
【特許文献1】特開2002−287495号公報
【特許文献2】特開2002−91159号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記に記載の搬送においても、搬送前にトナーを予備帯電しなければ、電界によって搬送することができず、予備帯電時には、やはり摩擦を生じるため、トナーが幾分劣化するという不具合がある。
本発明の目的は、予備帯電させずとも、トナーを電界の作用によって搬送することのできる、現像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の現像装置は、順次電圧が印加されることにより進行波電界を形成する複数の電極を備える搬送体と、前記搬送体により搬送されるトナーを収容するケーシングとを備える現像装置において、前記トナーは、下記(1)〜(3)に示す測定方法に基づくトナーの活性度が、2.0×10-6モル/g以下であることを特徴としている。
(1)塩化ベンゼトニウムをトナー表面に存在する静電気的に活性な極性基に対して過剰当量含有する水溶液に、トナーを浸漬して、極性基と塩化ベンゼトニウムとを静電的に反応させる。
(2)ラウリル硫酸ナトリウムを、前記水溶液に滴下して、残余の塩化ベンゼトニウムと反応させることにより、残余の塩化ベンゼトニウムと反応したラウリル硫酸ナトリウムの反応量を測定する。
(3)ラウリル硫酸ナトリウムの反応量から、トナー表面の活性度を算出する。
【0006】
また、本発明の現像装置では、前記トナーの接触角が、70°以上であることが好適である。
また、本発明の現像装置では、前記トナーの保水変化率が、0.55%以下であることが好適である。
また、本発明の現像装置では、前記トナーは、アニオン性基を有する結着樹脂および着色剤が有機溶媒に配合された樹脂溶液を、水性媒体に乳化した後、有機溶媒を除去して懸濁液を調製する工程と、前記懸濁液に凝集剤を添加し、その後10分を経過する以前にアルカリを添加して、凝集および融着させる工程とを含む製造方法により得られていることが好適である。
【0007】
さらに、上記の製造方法では、前記アルカリの添加後、攪拌羽根により周速1m/s以上で、攪拌することが好適である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の現像装置によれば、トナーの活性度が2.0×10-6モル/g以下であるので、予備帯電せずとも、そのまま、搬送体において形成される進行波電界によって搬送することができる。そのため、トナーに対して搬送時に生じる摩擦を、顕著に低減することができるので、トナーの劣化を有効に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の現像装置の一実施形態について説明する。
1.トナー
本実施形態では、活性度が2.0×10-6モル/g以下のトナーが用いられる。
(1)トナーの活性度の測定方法
トナーの活性度は、以下の方法により、検体液を調製し、その検体液を逆滴定することにより、測定することができる。
(検体液の調製)
検体液は、次のように調製する。すなわち、まず、トナー0.1〜10gを秤量した容器に入れ、その後、容器を秤量して、トナーの投入量(g)を算出する。トナーの投入量は、容器投入後に分散可能であり、かつ、極性基の当量が次に加える塩化ベンゼトニウムの当量を超過しない範囲から選択される。
【0010】
その後、0.001〜0.1モル/Lの塩化ベンゼトニウム水溶液0.05〜30mLを容器に加え、トナーを塩化ベンゼトニウム水溶液に浸漬させる。その後、容器を秤量する。塩化ベンゼトニウム水溶液のモル濃度および容量は、トナーを分散させることができ、かつ、極性基の当量よりも塩化ベンゼトニウムの当量が過剰となる範囲から選択される。
【0011】
塩化ベンゼトニウム水溶液を容器に加えることで、トナー表面に存在する静電気的に活性な極性基が、塩化ベンゼトニウムと静電的に反応する。なお、塩化ベンゼトニウムは、トナー表面に存在する静電気的に活性な極性基と静電的に反応する一方、トナー表面に存在する静電気的に不活性な極性基やトナー内部に存在する静電気的に活性または静電気的に不活性な極性基との反応が抑制される。そのため、塩化ベンゼトニウムは、中和反応のようにトナーに存在するすべての極性基によって消費されることなく、実際に帯電に寄与する静電気的に活性な極性基によって消費される。
【0012】
その後、容器を、超音波洗浄器などを用いて振盪して、トナーを塩化ベンゼトニウム水溶液に分散させた後、水3〜300mlを加えて、容器を秤量し、水の投入量を算出する。水は、蒸留水やイオン交換水などが用いられる。水の投入量は、水の投入後に液全体が流動できる量から選択される。
そして、液全体が流動するようにトナーを0.5〜60分攪拌する。その後、容器を秤量して、水の揮発量を算出する。
【0013】
その後、液全体をフィルタによりろ過して、ろ液を予め秤量した容器で受けて、ろ過後、直ちに容器を秤量し、ろ液の重量を算出する。フィルタは、例えば、0.1〜3μmのメンブレンフィルタが用いられる。ろ過では、塩化ベンゼトニウム水溶液の揮発を最小限に留めるようにする。その後、容器に30〜500mLとなるまで水を加えて、検体液を調製する。
(滴定)
次いで、検体液を、塩化ベンゼトニウムの濃度の0.05〜1倍の濃度のラウリル硫酸ナトリウム水溶液で滴定して、ラウリル硫酸ナトリウム水溶液の滴定量を測定する。ラウリル硫酸ナトリウム水溶液のモル濃度は、精度よく終点(変曲点)が求められる範囲から選択される。
【0014】
また、滴定は、終点を求めることができれば、特に制限されず、指示薬を使用してラウリル硫酸ナトリウム水溶液をビュレットから手動にて検体液へ滴下してもよく、あるいは、電位差滴定装置などの市販の滴定装置を使用することもできる。
ラウリル硫酸ナトリウムは、滴定により、極性基と反応した残余の塩化ベンゼトニウムと定量的に等モル反応するので、ラウリル硫酸ナトリウムが塩化ベンゼトニウムにより消費された時点が滴定の終点となり、その時点まで滴下されたラウリル硫酸ナトリウム水溶液の滴定量が、ラウリル硫酸ナトリウムの反応量となる。
(計算)
そして、ラウリル硫酸ナトリウム水溶液の滴定量からトナー表面の極性基の活性度を算出する。この計算は、次の通りである。
【0015】
まず、次式(1)から、滴定にて消費されたラウリル硫酸ナトリウムのモル数W(mol)を算出する。
W=ラウリル硫酸ナトリウム水溶液の濃度(mol/L)×(滴定量(mL)/1000)(1)
次いで、ラウリル硫酸ナトリウムのモル数Wに対して、検体液の調製時に生じたろ過のロス分を補正する。ロス分は、次のように補正する。
【0016】
まず、ろ過前の全体積T(ml)を、次式(2)から算出する。なお、以下の計算において、容量は、秤量した重量から換算する。
T=塩化ベンゼトニウム水溶液の投入量(ml)+(水の投入量(ml)―水の揮発量(ml))(2)
そして、次式(3)から、ラウリル硫酸ナトリウムのモル数Wに対してろ過のロス分を補正して、ろ過前に含まれる塩化ベンゼトニウムのモル数X(mol)を算出する。すなわち、塩化ベンゼトニウムとラウリル硫酸ナトリウムとは、1モル対1モルの当量で反応するため、ラウリル硫酸ナトリウムのモル数Wに対してろ過のロス分を補正すれば、ろ過前に含まれる塩化ベンゼトニウムのモル数Xが算出される。
【0017】
X=W(mol)×T(ml)/ろ液の体積(ml)(3)
次いで、最初に加えた塩化ベンゼトニウムのモル数(mol)から、ろ過前に含まれる塩化ベンゼトニウムのモル数X(mol)を差し引くことにより、極性基との反応により消費された塩化ベンゼトニウムのモル数Y(mol)を、次式(4)から算出する。この極性基との反応により消費された塩化ベンゼトニウムのモル数Yが、静電気的に活性な極性基の量に当たる。
Y=塩化ベンゼトニウム水溶液の濃度(mol/L)×塩化ベンゼトニウム水溶液の投入量(ml)/1000−X(4)
最後に、極性基との反応により消費された塩化ベンゼトニウムのモル数Y(mol)を、単位重量当たりに換算し、それをトナーの活性度Zとして算出する。
Z=Y(mol)/トナーの投入量(g)
(トナーの活性度)
上記の方法によれば、塩化ベンゼトニウムは、トナー表面に存在する静電気的に活性な極性基と静電的に反応する一方、トナー表面に存在する静電気的に不活性な極性基やトナー内部に存在する静電気的に活性または静電気的に不活性な極性基との反応が抑制される。そのため、塩化ベンゼトニウムは、中和反応のようにトナーに存在するすべての極性基によって消費されることなく、実際に帯電に寄与する静電気的に活性な極性基によって消費される。その結果、実際に帯電に寄与する極性基の活性度を評価することができる。
(2)トナーの製造方法
トナーは、上記の方法により測定された活性度が2.0×10-6モル/g以下であれば、特に制限されないが、例えば、次の方法により製造することができる。
(a)樹脂溶液の調製工程
まず、結着樹脂、着色剤および必要により添加剤を有機溶媒に配合して樹脂溶液を調製する。
(結着樹脂)
結着樹脂は、トナーの主成分であり、加熱および/または加圧されることにより、記録媒体(紙、OHPシートなど)の表面上に、固着(熱融着)する合成樹脂からなる。
【0018】
このような結着樹脂としては、特に制限されず、トナーの結着樹脂として知られる公知の合成樹脂が用いられる。例えば、ポリエステル樹脂、スチレン系樹脂(例えば、ポリスチレン、ポリ−p−クロルスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレンおよびその誘導体、例えば、スチレン−p−クロルスチレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体などのスチレン−スチレン誘導体共重合体、例えば、スチレン−ビニルナフタレン共重合体、スチレン−アクリル酸系共重合体、スチレン−メタクリル酸系共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体などのスチレン系共重合体など)、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、フェノール樹脂、天然変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、石油系樹脂などが挙げられる。これらは、単独使用または併用することができる。
【0019】
また、これら結着樹脂は、親水性基を有していることが好適である。親水性基を有していれば、乳化液の調製時に、界面活性剤の配合を不要とすることができる。親水性基としては、例えば、第4級アンモニウム基、第4級アンモニウム塩含有基、アミノ基、ホスホニウム塩有基などのカチオン性基、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基などのアニオン性基などが挙げられる。
【0020】
好ましくは、アニオン性基を有する結着樹脂、さらに好ましくは、アニオン性基を有するポリエステル樹脂、とりわけ好ましくは、カルボキシル基を有するポリエステル樹脂(酸価を有するポリエステル樹脂)が挙げられる。
上記したカルボキシル基を有するポリエステル樹脂は、市販されており、例えば、酸価2〜15mgKOH/g、好ましくは、4〜7mgKOH/gで、重量平均分子量(標準ポリスチレンを検量線とするGPC測定による)3000〜200000、好ましくは、50000〜100000で、架橋分(THF不溶分)10重量%以下、好ましくは、5重量%以下のポリエステル樹脂が用いられる。
(着色剤)
着色剤は、トナーに所望の色を付与するものであって、結着樹脂内に分散または浸透される。着色剤としては、例えば、カーボンブラック、例えば、キノフタロンイエロー、ハンザイエロー、イソインドリノンイエロー、ベンジジンイエロー、ペリノンオレジン、ペリノンレッド、ペリレンマルーン、ローダミン6Gレーキ、キナクリドンレッド、ローズベンガル、銅フタロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーン、ジケトピロロピロール系顔料などの有機顔料、例えば、チタンホワイト、チタンイエロー、群青、コバルトブルー、べんがら、アルミニウム粉、ブロンズなどの無機顔料または金属粉、例えば、アゾ系染料、キノフタロン系染料、アントラキノン系染料、キサンテン系染料、トリフェニルメタン系染料、フタロシアニン系染料、インドフェノール系染料、インドアニリン系染料などの油溶性染料または分散染料、例えば、ロジン、ロジン変性フェノール、ロジン変性マレイン酸樹脂などのロジン系染料が挙げられる。さらには、高級脂肪酸や樹脂などよって加工された染料や顔料なども挙げられる。
【0021】
これらは、所望する色に応じて、単独使用または併用することができる。例えば、有彩単一色のトナーには、同色系の顔料と染料、例えば、ローダミン系の顔料と染料、キノフタロン系の顔料と染料、フタロシアニン系の顔料と染料を、それぞれ配合することができる。
着色剤は、結着樹脂100重量部に対して、例えば、2〜20重量部、好ましくは、3〜15重量部の割合で配合される。
(添加剤)
添加剤としては、例えば、ワックスが挙げられる。ワックスは、記録媒体に対するトナーの定着性を向上させるために添加される。ワックスとしては、例えば、エステル系ワックス、炭化水素系ワックスなどが挙げられる。
【0022】
エステル系ワックスとしては、例えば、ステアリン酸エステル、パルミチン酸エステルなどの脂肪族エステル化合物、例えば、ペンタエリスリトールテトラミリステート、ペンタエリスリトールテトラパルミテート、ジペンタエリスリトールヘキサパルミテートなどの多官能エステル化合物などが挙げられる。
炭化水素系ワックスとしては、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリブチレンなどのポリオレフィンワックス類、例えば、キャンデリラ、カルナウバ、ライス、木ロウ、ホホバなどの植物系天然ワックス、例えば、パラフィン系ワックス、マイクロクリスタリン、ペトロラタムなどの石油系ワックスおよびその変性ワックス、例えば、フィッシャートロプシュワックスなどの合成ワックスなどが挙げられる。
【0023】
また、ワックスとして、上記した着色剤を含有(内包)する着色剤内包ワックスも挙げられる。
これらワックスは、単独使用または併用することができる。
ワックスは、結着樹脂100重量部に対して、例えば、1〜20重量部、好ましくは、3〜15重量部の割合で配合される。
(有機溶媒)
有機溶媒は、特に制限されないが、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、例えば、エチレングリコール、ジエチレングルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコール類、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、例えば、テトラヒドロフラン(THF)などのエーテル類などが挙げられる。これら有機溶媒は、単独使用または併用することができる。
【0024】
有機溶媒は、結着樹脂100重量部に対して、例えば、50〜2000重量部、好ましくは、250〜800重量部の割合で配合される。
(樹脂溶液の調製)
樹脂溶液の調製では、結着樹脂、着色剤および必要により添加剤を、上記した割合で有機溶媒に配合する。この配合では、各成分を配合した後、例えば、15〜60分間振盪し、さらに、例えば、30〜180分間攪拌する。ゲル分が発生するときは、さらに、ホモジナイザーなどの高速攪拌機にて、例えば、10〜30分間分散攪拌する。これによって、樹脂溶液を調製する。
(b)乳化液の調製工程
次いで、水性媒体に樹脂溶液を配合して、乳化液を調製する。
(水性媒体)
水性媒体は、水、または、水を主成分として、若干の水溶性溶媒(例えば、アルコール類)または添加剤(例えば、界面活性剤、分散剤)が配合されている水性媒体が挙げられる。また、水性媒体は、例えば、アニオン性基を有する結着樹脂を用いる場合には、アルカリ性水溶液として調製される。アルカリ性水溶液としては、例えば、アミン類などの塩基性有機化合物を水に溶解した有機塩基水溶液や、例えば、水酸化ナトリウム水溶液または水酸化カリウムなどのアルカリ金属を水に溶解した無機塩基水溶液が挙げられる。
【0025】
例えば、無機塩基水溶液は、樹脂溶液に含まれる樹脂すべてを中和するのに必要なKOHのモル数(すなわち、酸化×樹脂添加量)の0.1〜1倍モル、好ましくは、0.2〜0.6倍モルの塩基性物質を含有し、例えば、0.001〜0.1N(規定)、好ましくは、0.005〜0.05N(規定)の、水酸化ナトリウム水溶液または水酸化カリウム水溶液として調製される。
(乳化液の調製)
乳化液は、例えば、水性媒体100重量部に対して、樹脂溶液50〜100重量部、好ましくは、80〜100重量部の配合割合で、樹脂溶液と水性媒体とを配合する。
【0026】
その後、樹脂溶液が配合された水性媒体を攪拌する。攪拌は、例えば、ホモジナイザーなどの高速分散機により、先端周速5〜30m/s、好ましくは、8〜20m/sで、5〜40分、好ましくは、10〜30分攪拌する。すると、樹脂溶液が液滴となって水性媒体中に乳化され、乳化液が調製される。
(c)懸濁液の調製工程
そして、乳化液から有機溶媒を除去して懸濁液を得る。乳化液から有機溶媒を除去するには、送風、加熱、減圧またはこれらの併用など、公知の方法が用いられる。例えば、常温〜90℃、好ましくは、50〜80℃で加熱しつつ攪拌し、さらに、液面を送風する。すると、水性媒体から有機溶媒が除去されて、着色剤(および添加剤)が分散した結着樹脂の樹脂微粒子が水性媒体中に分散する懸濁液(スラリー)が調製される。
【0027】
その後、攪拌しながら冷却し、懸濁液の固形分濃度(懸濁液中の樹脂微粒子の濃度)が、例えば、5〜50重量%、好ましくは、10〜30重量%となるように水で希釈する。
(d)凝集・融着工程
次いで、この方法では、懸濁液に凝集剤を添加して樹脂微粒子を凝集させ、その後、加熱により、凝集させた樹脂微粒子を融着させることにより、樹脂微粒子の粒径を成長させて、トナー母粒子を得る。
【0028】
凝集剤としては、例えば、硝酸カルシウムなどの無機金属塩、例えば、ポリ塩化アルミニウムなどの無機金属塩の重合体などが挙げられる。
攪拌は、特に制限されないが、例えば、まず、ホモジナイザーなどの高速分散機により懸濁液を分散する。
そして、凝集剤の添加後、10分以内、好ましくは、1分以内に、懸濁液に、消泡剤およびアルカリを添加して攪拌する。攪拌では、必要により超音波を印加することもできる。
【0029】
消泡剤としては、非イオン性界面活性剤が挙げられる。消泡剤は、例えば、0.01〜1重量%消泡剤水溶液として調製し、それを、懸濁液100重量部に対して、例えば、50〜200重量部、好ましくは、70〜150重量部添加する。
アルカリとしては、例えば、アミン類などの塩基性有機化合物、例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウムなどのアルカリ金属などが挙げられる。アルカリは、例えば、0.5〜10重量%アルカリ水溶液として調製し、それを、懸濁液100重量部に対して、例えば、0.01〜5重量部、好ましくは、0.05〜2重量部添加する。
【0030】
なお、消泡剤およびアルカリを含有する水溶液を調製し、それを懸濁液100重量部に添加することもできる。
その後、攪拌翼付攪拌機により懸濁液が全体的に流動する程度に混合する。攪拌羽根は、公知のものが用いられ、平板タービン翼、プロペラ翼、アンカー翼などが用いられる。なお、攪拌羽根の先端周速は、例えば、0.8〜10m/s、好ましくは、1〜5m/sであり、攪拌時の液温は、例えば、20〜60℃、好ましくは、40〜50℃であり、攪拌時間は、例えば、5〜180時間、好ましくは、20〜60時間である。
【0031】
その後、凝集停止剤を添加して、凝集工程を終了し、次いで、加熱により、凝集させた樹脂微粒子を融着させる。
凝集停止剤としては、例えば、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ金属が挙げられる。
凝集停止剤の添加では、例えば、0.01〜1N(規定)、好ましくは、0.1〜0.5N(規定)に調製されたアルカリ金属水溶液を、懸濁液100重量部に対して、例えば、0.5〜10重量部、好ましくは、1〜3重量部添加し、攪拌を継続する。
【0032】
その後、融着は、上記の攪拌を継続しつつ、例えば、樹脂のガラス転移温度より20〜100℃、好ましくは、30〜60℃高い温度で、例えば、60〜600時間、好ましくは、60〜420時間加熱する。これによって、凝集させた樹脂微粒子が融着され、例えば、5〜15μm、好ましくは、6〜9μmのほぼ球形のトナー母粒子を得る。
その後、冷却し、酸により中和した後、ろ過、洗浄、乾燥して、トナー母粒子の粉末を得る。
【0033】
中和では、例えば、塩酸、硫酸または硝酸などの無機酸を、例えば、0.5〜12N(規定)、好ましくは、0.5〜2N(規定)の水溶液に調製して、それを、添加した凝集停止剤のモル数に対して、例えば、0.1〜10倍、好ましくは、0.3〜3倍となる割合で添加し、その後、0.1〜3時間、好ましくは、0.5〜1時間、懸濁液が流動する程度で攪拌する。
(e)添加剤の配合
そして、得られたトナー母粒子に、必要により、帯電制御剤や外添剤などを添加して、所望のトナーを得る。
(帯電制御剤の添加)
帯電制御剤は、目的および用途に対応して、正帯電性電荷制御剤または負帯電性電荷制御剤から、単独または併用して用いられる。
【0034】
正帯電性電荷制御剤として、例えば、ニグロシン染料、第4級アンモニウム化合物、オニウム化合物、トリフェニルメタン化合物、塩基性基含有化合物、3級アミノ基含有アクリル系樹脂などが挙げられる。
負帯電性電荷制御剤として、例えば、トリメチルエタン系染料、アゾ系顔料、銅フタロシアニン、サリチル酸金属錯塩、ベンジル酸金属錯塩、ペリレン、キナクリドン、金属錯塩アゾ系染料などが挙げられる。
【0035】
帯電制御剤の添加では、例えば、帯電制御剤の分散液とトナー母粒子を配合して、攪拌し、その後、ろ過および乾燥することにより、帯電制御剤をトナー母粒子に固着させる。なお、帯電制御剤の分散液は、例えば、帯電制御剤の0.1〜3重量%の水分散液として調製する。帯電制御剤の分散液は、トナー母粒子100重量部に対して、例えば、0.1〜5重量部、好ましくは、0.3〜2重量部の割合で添加する。
【0036】
これによって、帯電制御剤は、トナー母粒子100重量部に対して、例えば、0.1〜5重量部、好ましくは、0.3〜2重量部の割合で固着される。
(外添剤の添加)
外添剤は、トナーの帯電性、流動性、保存安定性などを調整するために添加され、トナー母粒子よりも非常に小さい粒径の極微粒子からなる。
【0037】
外添剤としては、例えば、無機粒子や合成樹脂粒子が挙げられる。
無機粒子としては、例えば、シリカ、酸化アルミニウム、酸化チタン、珪素アルミニウム共酸化物、珪素チタン共酸化物、および、これらの疎水性化処理物などが挙げられる。例えば、シリカの疎水化処理物は、シリカの微粉体を、シリコーンオイルやシランカップリング剤(例えば、ジクロロジメチルシラン、ヘキサメチルジシラザン、テトラメチルジシラザンなど)で処理することにより、得ることができる。
【0038】
合成樹脂粒子としては、例えば、メタクリル酸エステル重合体粒子、アクリル酸エステル重合体粒子、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体粒子、スチレン−アクリル酸エステル共重合体粒子、コアがスチレン重合体でシェルがメタクリル酸エステル重合体からなるコアシェル型粒子などが挙げられる。
外添剤の添加では、例えば、ヘンシェルミキサーなどの高速攪拌機などを用いて、トナー母粒子と外添剤とを攪拌混合する。外添剤は、例えば、トナー母粒子100重量部に対して、通常、0.1〜6重量部の割合で添加される。
【0039】
その後、所定の篩を通過させて、トナーを得る。
(3)トナー
得られたトナーは、その接触角が、例えば、70°以上、好ましくは、80°以上であり、また、その保水変化率が、例えば、0.55%以下、好ましくは、0.4%以下である。接触角は、公知の接触角計により測定することができる。また、保水変化率は、まず、トナーを、温度20℃、相対湿度10%の環境で放置して、24時間後と48時間後に秤量して、その平均値を低温低湿度環境でのトナー重量(wL)として算出する。次いで、温度32.5℃、相対湿度80%の環境で放置して、24時間後、48時間後および72時間後に秤量して、その平均値を高温高湿度環境でのトナー重量(wH)として算出する。そして、次式により、保水変化率を算出する。
【0040】
保水変化率=(wH−wL)/wL×100(%)
2.現像装置の構成
図1は、本発明の現像装置の一実施形態を示す概略側断面図である。図2は、図1に示す現像装置の要部拡大断面図である。図3は、図1に示す現像装置において、電源回路が発生する電圧の波形を示す説明図である。
【0041】
図1において、現像装置1は、レーザプリンタなどの画像形成装置において、静電潜像を担持する静電潜像担持体(図1では、具体的に感光ドラム2が例示されている。)にトナーを供給するために、設けられている。この現像装置1は、ケーシング3および搬送体4を備えている。
ケーシング3は、感光ドラム2との対向部分に開口部5が形成されるボックス形状に形成されている。ケーシング3は、上板6、底板7および側板8を備えている。
【0042】
感光ドラム2は、ケーシング3の上方に配置されており、上板6は、感光ドラム2と上下方向に間隔を隔てて対向配置されている。また、上板6に、感光ドラム2と対向配置される開口部5が形成されている。開口部5は、感光ドラム2の軸方向に沿って延びるように、上板6に開口されている。底板7は、上板6に対して下方において対向配置されており、感光ドラム2の軸方向と直交する方向において、一端部から他端部に向かって下方へ傾斜するように配置されている。これによって、ケーシング3では、他方側において、底深の貯留部9が形成され、一方側において、底浅の還流部10が形成される。側板8は、上板6の周端部と底板7の周端部とを連結するように設けられている。
【0043】
搬送体4は、感光ドラム2の軸方向に延びる側面視略逆U字形状に形成されている。搬送体4は、搬入板11、供給板12および搬出板13を一体的に備えている。
搬入板11の下端部は、貯留部9における底板7の近傍に配置され、搬入板11の上端部は、開口部5よりも他端部側における上板6の近傍に配置されている。これによって、搬入板11は、下端部から上端部へ向かって、貯留部9から開口部5よりも他端部側へ傾斜するように配置されている。
【0044】
供給板12は、開口部5と上下方向に対向するように、上板6の下方近傍において上板6とほぼ並行に配置されている。供給板12は、開口部5よりも他方側へ延び、かつ、開口部5よりも一方側へ延びるように設けられている。供給板12の他端部には、搬入板11の一端部が接続されている。供給板12の一端部には、搬出板13の他端部が接続されている。
【0045】
搬出板13の上端部は、開口部5よりも一端部側における上板6の近傍に配置され、搬出板13の下端部は、還流部10における底板7の近傍に配置されている。これによって、搬出板13は、上端部から下端部へ向かって、開口部5よりも一端部側から還流部10へ傾斜するように配置されている。
また、搬送体4は、図2に示すように、基板層14、電極層15および表面層16を備えている。基板層14の上に電極層15が積層され、電極層15の上に表面層16が積層されている。
【0046】
基板層14は、絶縁性の合成樹脂から形成されている。電極層15は、複数の電極17(以下、電極17を互いに区別する場合には、電極17a、電極17b、電極17cおよび電極17d)と、各電極17の間に介在される電極間絶縁部18とを備えている。
電極17は、平板形状をなし、搬送体4が延びる方向に沿って、互いに間隔を隔てて配置されている。具体的には、電極17a、電極17b、電極17cおよび電極17dは、搬送体4が延びる方向に沿って、順次繰り返して配置されている。また、各電極17には、それぞれ、電源回路19(以下、電源回路19を互いに区別する場合には、電源回路19a、電源回路19b、電源回路19cおよび電源回路19d)が接続されている。具体的には、電極17aには電源回路19aが接続され、電極17bには電源回路19bが接続され、電極17cには電源回路19cが接続され、電極17dには電源回路19dが接続されている。
【0047】
電極間絶縁部18は、絶縁性の合成樹脂から形成されており、搬送体4が延びる方向に沿って、互いに隣接する電極17の間に充填されている。
表面層16は、電極層15の表面に塗布されることにより、形成されている。表面層16は、表面層16とトナーとの間の摩擦(接触)によりトナーを負極性に帯電させることのできる材料、例えば、ナイロンやポリエステルなどから形成されている。
【0048】
そして、この現像装置1では、ケーシング3内に上記したトナーが収容されている。トナーは、少なくとも搬入板11の下端部が埋まるように、ケーシング3内に充填されている。
3.現像装置の動作
現像装置1において、各電源回路19に電力が供給されると、図3に示すように、各電源回路19において、所定の負電圧(例えば、−500V)を平均電圧とする一定周期の矩形状波形を有する電圧が発生する。なお、各電源回路19が発生する電圧の波形は、位相が90°ずつ異なっている。すなわち、電源回路19aから電源回路19dに向かう電圧の位相は、90°ずつ遅れている。
【0049】
これにより、図3に示すように、例えば、時点t1においては、電源回路19aに接続される電極17aは、電源回路19bに接続される電極17bよりも低電位となるので、電極17aと電極17bとの間の表面層16上では、搬送方向(他方側から一方側へ向かう方向)と逆向きの電界が形成される。これにより、負帯電するトナーは、搬送方向の静電力を受けて搬送方向へ移動する。
【0050】
また、電源回路19bに接続される電極17bと、電源回路19cに接続される電極17cとは等電位となる。そのため、電極17bと電極17cとの間の表面層16上では、搬送方向およびその逆方向の電界は弱く、トナーの移動を殆ど生じない。
また、電源回路19cに接続される電極17cは、電源回路19dに接続される電極17dよりも高電位となるので、電極17cと電極17dとの間の表面層16上では、搬送方向の電界が形成される。これにより、負帯電するトナーは、搬送方向の静電力を受けて搬送方向と逆方向へ移動する。
【0051】
さらに、電源回路19dに接続される電極17dと、電源回路19aに接続される電極17aとは等電位となる。そのため、電極17dと電極17aとの間の表面層16上では、搬送方向およびその逆方向の電界は弱く、トナーの移動を殆ど生じない。
上記の結果として、時点t1においては、負帯電するトナーが、電極17bと電極17cとの間の表面層16上に集められる。
【0052】
上記と同様に、時点t2においては、負帯電するトナーが電極17cと電極17dとの間の表面層16上に集められる。また、時点t3においては、負帯電するトナーが電極17dと電極17aとの間の表面層16上に集められる。
このように、負帯電するトナーが集められる箇所が時間の経過に伴って、表面層16上を搬送方向に沿って移動する。つまり、表面層16上には、各電源回路19において各電極17に順次電圧が印加されることにより、進行波電界が形成される。そのため、貯留部9にあるトナーは、搬入板11において、その下端部から上端部まで搬送され、次いで、供給板12において、その他端部から一端部まで搬送され、その後、搬出板13において、その上端部から下端部まで搬送され、還流部10へ搬送される。還流部10へ搬送されたトナーは、自重により、底板7の傾斜に従って徐々に貯留部9へ戻される。
【0053】
そして、上記の搬送において、表面層16が摩擦によりトナーを負極性に帯電させる材料から形成されている。そのため、トナーは、搬入板11から供給板12へ搬送され、さらに、開口部5と対向する供給板12の途中へ至るまでの間に負帯電する。
一方、感光ドラム2の表面には、画像データに基づく静電潜像が形成されており、つまり、図示しない帯電器によって基準電位(例えば、−1000V)に帯電されている帯電領域と、レーザビームの走査により0Vに露光されている露光領域とが形成されている。また、各電極17の電位は、基準電位よりも高電位(−550V〜−450V)に設定されている。
【0054】
そのため、供給板12の表面層16上において、感光ドラム2の帯電領域と対向するトナーは、感光ドラム2の表面から表面層16の表面へ向かう静電力を受け、そのまま、供給板12の表面層16から搬出板13の表面層16へ搬送される。一方、供給板12の表面層16上において、感光ドラム2の露光領域と対向するトナーは、表面層16の表面から感光ドラム2の表面へ向かう静電力を受け、表面層16の表面から感光ドラム2の表面へ供給される。これによって、露光部分が現像され、感光ドラム2の表面に、トナー画像が担持される。画像形成装置では、その後、図示しない転写ローラによって、トナー画像を感光ドラム2の表面から用紙へ転写し、定着させることにより、用紙に画像を形成する。
4.現像装置の作用効果
そして、上記した現像装置1によれば、ケーシング3内に収容されるトナーの活性度が2.0×10-6モル/g以下であるので、例えば、アジテータなどによって予備帯電せずとも、そのまま、搬送体4において形成される進行波電界によって、トナーを搬送することができる。そのため、トナーに対して搬送時に生じる摩擦を、顕著に低減することができるので、トナーの劣化を有効に防止することができる。
【実施例】
【0055】
以下、実施例および比較例を挙げて具体的に説明する。なお、以下の説明において、「部」および「%」は、特に言及のない限り、重量基準である。
1)トナーの調製
(スラリーの調製)
1Lポリ容器に、表1(a)に示すポリエステル樹脂180gと、メチルエチルケトン(MEK)720gと、表1(b)に示す添加剤13.5gを入れた。その後、ミキサーで30分間容器全体をターブラーミキサーにて震盪し、その後、容器にマグネチックスターラーを入れて30分間攪拌した。さらに、ゲル分が存在するときは、ホモジナイザー(ハイドルフ社製 DIAX900 シャフトジェネレーター25F)により8000rpmで強制的に攪拌分散させた。これによって、ポリエステル樹脂をMEKに溶解させて、MEK溶液を調製した。
【0056】
1Lビーカーに、蒸留水900gと、表1(c)に示す添加量の1N水酸化ナトリウムとを加え混合して、水溶液を調製した。
2Lビーカーに、MEK溶液および水溶液を入れ、上記ホモジナイザーにより11000rpmで20分間攪拌分散して、エマルションを調製した。
エマルションを、60℃のウォーターバスに浸漬した2L丸底フラスコに入れ、三日月型攪拌翼により120rpmで4時間攪拌し、MEKを揮発させてスラリーを調製した。なお、このとき、最初の1時間は自然状態でMEKを揮発させ、後半3時間はエマルションの表面にファンで送風しながら揮発させた。
【0057】
攪拌終了後、ろ過により粗大粒子を分離しながら、スラリーを1Lビーカーに移して、速やかに攪拌しながら30℃以下に冷却した。
その後、一晩放置してスラリーの固形分を測定した。具体的には、アルミニウム容器にスラリー約1gを採取し、水分を蒸発させた。残留物の重量を採取したスラリーの重量で除して、スラリーの固形分濃度を算出した。そして、スラリーの固形分濃度が20%となるように蒸留水で希釈した。
(凝集粒子の調製)
500mLビーカーに、表2(e)に示す各種消泡剤を適切な濃度に希釈した水溶液80gと、必要に応じて表2(f)に示す添加量の0.2N水酸化ナトリウム水溶液を入れ、マグネチックスターラーで混合攪拌し、消泡剤水溶液80gを調製した。
【0058】
200mLセパラブルフラスコに、表2(d)に示すスラリー80gを入れ、さらに、表2(g)に示す添加量の0.2N塩化アルミニウム水溶液を添加して、ホモジナイザーにより8000rpmで全体が均一に混ざるよう5分間混合攪拌した。
次いで、消泡剤水溶液をセパラブルフラスコに入れて、スラリーに消泡剤水溶液を混合し、泡が少なくなるように緩くスパーテルで攪拌しながら超音波(28kHz:650W)を5分印加した。
【0059】
その後、50℃に設定したウォーターバスに、セパラブルフラスコを浸し、インペラー(6枚平板タービン翼:φ75×10mm:2段重ね)を用いて、表2(h)に示す回転数にて攪拌した。攪拌開始10分経過後に、必要に応じて表2(i)に示す添加量の0.2N水酸化ナトリウム水溶液を添加して、表2(j)に示す回転数にて攪拌を継続した。なお、表2中、140rpm、180rpmおよび400rpmは、それぞれ、先端周速、0.55m/s、0.70m/sおよび1.6m/sに相当する。
【0060】
その後、表2(k)に示す時間経過後に、表2(l)に示す添加量の0.2N水酸化ナトリウム水溶液を加え、ウォーターバスの設定温度を60℃に変更した。
そして、表2(m)に示す時間経過後に、ウォーターバスの設定温度を95℃に変更し、さらに攪拌を表2(n)に示す時間継続した。
その後、セパラブルフラスコ内の懸濁液を200mLビーカーへ移し、ビーカーを冷水に浸して、マグネチックスターラーで攪拌しながら30℃以下となるまで冷却した。一晩放置して、ビーカー底部にトナーを沈殿させて、上澄液を除去した。除去分に相当する蒸留水を加え、ビーカー内を攪拌し、粒子を分散させた。さらに、1N塩酸4.5gを加えてマグネチックスターラーで30分攪拌した。その後、30分間放置して、上澄液から静かにろ過した。ビーカー内の粒子分散液をすべてろ過した後、蒸留水500gを追加してろ過残渣を洗浄した。ろ過残渣を50℃の乾燥機で5日間乾燥させて、トナー母粒子を得た。
(外添剤の添加)
得られたトナー母粒子に、次に示す方法にて、シリカ微粉末HVK2510(製造元:クラリアント)を外添した。
【0061】
すなわち、トナー母粒子145gとHVK2150 1.45gとを、高速攪拌機メカノミル(製造元:OKADA SEIKO.,CO LTD)に充填し、高速攪拌機にて2500rpmで5分間攪拌した。
篩振動装置(Octagon200)に、上部が開放され底部に250μmメッシュの篩を備えた筒型容器(φ200、高さ50mm)と、上部が開放され底部に150μmメッシュの篩を備えた同型容器と、上部が開放され底部に篩がない同型容器とを、上から順番に直列で配置した。
【0062】
250μmメッシュの篩の上に、攪拌後のトナー粒子を静置し、その後、15分間振動させて、各篩を通過させて、表2に示すトナーA〜Gを得た。
【0063】
【表1】

【0064】
【表2】

【0065】
2)トナーの活性度の測定
(検体液の調製)
50mLビーカーにマグネチックスターラーを入れ風袋重量を精秤した。薬包紙に上記で得られたトナー1gを取り、ビーカーに入れ全体重量を精秤して、それから風袋重量を差し引くことでトナーの投入量(g)を算出した(表3参照)。
【0066】
それに、電位差滴定装置AT−510(京都電子工業製)を用いて、0.003718モル/L塩化ベンゼトニウム水溶液3mLを加え、トナーをベンゼトニウム水溶液に浸漬させた。その後、浸漬後の全体重量を精秤した。その後、超音波(28kHz、650W)を印加しながら震盪して、トナーをベンゼトニウム水溶液に分散させた。
そして、蒸留水30mlを加えて全体重量を精秤して、それから浸漬後の全体重量を差し引くことにより、水の投入量(ml)を算出した。次いで、マグネチックスターラーで液全体が流動するように30分間攪拌後、全体重量を精秤して水の揮発量(ml)を算出した。
【0067】
その後、液全体を0.8μmセルロースアセテートメンブランフィルタによりろ過して、ろ液を予め秤量した100mLビーカーで受けて、ろ過後、直ちにビーカーを秤量し、ろ液の体積を算出した(表3参照)。その後、蒸留水をビーカーの目盛100mLまで加え攪拌して、検体液を調製した。
(逆滴定)
各検体液を、0.00133MのLAS(ラウリル硫酸ナトリウム)水溶液で逆滴定した。LASの滴定量を表3に示す。逆滴定には、電位差滴定装置AT−510(京都電子工業製)を用いた。なお、滴定条件を下記に示す。
滴定条件:ウエイトタイム300秒、カットオフタイム5秒、ユニットボリューム0.1mL、ディスペンススピード10秒/mL
(計算)
LASの滴定量からトナー表面の極性基の活性度を算出した。
【0068】
まず、滴定にて消費されたLASのモル数W(mol)を、次式(1)より算出した。
W=0.00133×(LASの滴定量(mL)/1000)(1)
次いで、ろ過前の全体積T(g)を次式(2)から算出し、その後、ろ過前に含まれるベンゼトニウムのモル数X(mol)を次式(3)から算出した。なお、ベンゼトニウム水溶液の投入量は3mlとして計算した。
【0069】
T=3(ml)+(水の投入量(ml)―水の揮発量(ml))(2)
X=W(mol)×T(ml)/ろ液の体積(ml)(3)
次いで、最初に加えたベンゼトニウムのモル数(mol)から、ろ過前に含まれるベンゼトニウムのモル数X(mol)を差し引くことにより、極性基との反応により消費されたベンゼトニウムのモル数Y(mol)を、次式(4)から算出した。
Y=0.003718(mol/L)×3(ml)/1000−X(4)
最後に、極性基との反応により消費されたベンゼトニウムのモル数Y(mol)を、単位重量当たりに換算し、それをトナーの活性度Zとして算出した。その結果を表3に示す。
Z=Y(mol)/トナーの投入量(g)
3)トナーの評価
(A)搬送性の評価
(1)搬送板
図4に示すように、基板層51、電極層52および表面層53の3層からなる長さ15cmの搬送板50を作製した。
【0070】
基板層51は、絶縁性の合成樹脂から形成した。電極層52は、搬送方向に間隔を隔てて繰り返し配置される4種類の電極54a、b、c、dと、各電極54の間に充填される電極間絶縁部55とから形成した。表面層53は、ポリエステル樹脂溶液を電極層52の表面に塗布後、乾燥させることにより、形成した。各電極54a、b、c、dには、それぞれ対応して、電源回路56a、b、c、dを接続した。
(2)搬送性の評価
トナー15gを、表面層53の一端に載せ、各電源回路56に電力を供給して、−500Vを平均電圧とする一定周期の矩形状波形を有する電圧を各電極54において発生させた(図4参照)。なお、各電源回路56が発生する電圧の波形を位相が90°ずつ異なるように発生させた。すなわち、電源回路56aから電源回路56dに向かう電圧の位相を、90°ずつ遅らせた。これによって、表面層53上には、各電源回路56において各電極54に順次電圧が印加されることにより、矢印に示す方向の進行波電界が発生した。
【0071】
そして、トナーが表面層53の一端から他端まですべて搬送された場合を「◎」とし、トナーが表面層53の一端から全く移動しなかった場合を「×」とした。その結果を表3に示す。
(B)接触角の評価
トナー約2.5gを、BRIQETTING PRESS TYPE BRE−30(前川テスティングマシン製)に充填し、180kNで2分間加圧することにより、φ40mm×約2.5mmのタブレットに成形した。
【0072】
次いで、タブレットをFACE自動接触角計CA−V型(協和界面科学製)の測定台に設置し、1mLシリンジから蒸留水を一滴滴下した。なお、シリンジの先端には、フッ素加工された28ゲージの先端針を装備した。滴下10秒後に、タブレット表面に形成された液滴の側面画像を解析ソフトウエアに取り込んで、接触角を測定した。タブレットを動かし、別の測定場所に液滴を滴下し、同様に測定した。13箇所の測定値を平均して、接触角を算出した。その結果を表3に示す。
(C)保水変化率の評価
トナー約0.5gを採取し、トレー(L20×W20×H15mm)に入れ、精秤した。次いで、これを、20℃、10%の環境(以下、LL環境とする。)に放置し、24時間後と48時間後とに重量を精秤し、平均値をLL環境でのトナー重量wLとした。
【0073】
次いで、これを、32.5℃、80%の環境(以下、HH環境とする。)に放置し、24時間後と、48時間後と、72時間後とに重量を精秤し、平均値をHH環境でのトナー重量wHとした。
保水変化率を下記式から計算した。その結果を表3に示す。
保水変化率=(wH−wL)/wL×100(%)
【0074】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の現像装置の一実施形態を示す概略側断面図である。
【図2】図1に示す現像装置の要部拡大断面図である。
【図3】図1に示す現像装置において、電源回路が発生する電圧の波形を示す説明図である。
【図4】搬送性の評価に用いる搬送板の概略説明図である。
【符号の説明】
【0076】
1 現像装置
3 ケーシング
4 搬送体
17 電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
順次電圧が印加されることにより進行波電界を形成する複数の電極を備える搬送体と、
前記搬送体により搬送されるトナーを収容するケーシングと
を備える現像装置において、
前記トナーは、下記(1)〜(3)に示す測定方法に基づくトナーの活性度が、2.0×10-6モル/g以下であることを特徴とする、現像装置。
(1)塩化ベンゼトニウムをトナー表面に存在する静電気的に活性な極性基に対して過剰当量含有する水溶液に、トナーを浸漬して、極性基と塩化ベンゼトニウムとを静電的に反応させる。
(2)ラウリル硫酸ナトリウムを、前記水溶液に滴下して、残余の塩化ベンゼトニウムと反応させることにより、残余の塩化ベンゼトニウムと反応したラウリル硫酸ナトリウムの反応量を測定する。
(3)ラウリル硫酸ナトリウムの反応量から、トナー表面の活性度を算出する。
【請求項2】
前記トナーの接触角が、70°以上であることを特徴とする、請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記トナーの保水変化率が、0.55%以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載の現像装置。
【請求項4】
前記トナーは、
アニオン性基を有する結着樹脂および着色剤が有機溶媒に配合された樹脂溶液を、水性媒体に乳化した後、有機溶媒を除去して懸濁液を調製する工程と、
前記懸濁液に凝集剤を添加し、その後10分を経過する以前にアルカリを添加して、凝集および融着させる工程とを含む製造方法により得られていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の現像装置。
【請求項5】
さらに、前記アルカリの添加後、攪拌羽根により周速1m/s以上で、攪拌することを特徴とする、請求項4に記載の現像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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