説明

現金処理装置

【課題】不良券が搬送経路または金庫へ戻って循環することを防止して、出金処理速度を向上させるとともに、不良券詰まり等の障害を抑制し、ひいては製品品質を向上させた現金処理装置を提供する。
【解決手段】現金処理装置は、挿入口および払出口12を介して金庫Cに現金を入出金する装置であり、挿入口、払出口12および金庫Cを接続する搬送経路21と現金を識別する識別部20とを有し搬送経路21を介して現金を搬送する搬送手段2と、挿入口から挿入された現金を一時的に保留する一時保留部Eと、一時保留部Eとは別に設けられ現金を貯留する不良券回収部Gとを有し、金庫Cにある現金を払い出す払出指令に応じて払出指令に係る現金を金庫Cから払出口12へ搬送手段2を通じて搬送させる際に、識別部20による識別結果に基づいて金庫Cから出庫された現金が払出指令に係る現金であるか否かを判定し、払出指令に係る現金でないと判定された場合はその現金を不良券として不良券回収部Gへ搬送し、不良券を不良券回収部Gに貯留し続ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現金の投入に応じて発券や商品販売等の取引を行い、釣りを返却する自動発券機等に用いる現金処理装置に係り、特に現金を識別する機能を備えた現金処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動発券機や自動販売機等の現金処理装置は、現金を収納する金庫を有し、利用者側に設けられた現金を挿入する挿入口および釣り札等の現金を返却する払出口を介して金庫に現金を入出金するものである。この現金処理装置は、挿入口、払出口及び金庫を接続する搬送経路と現金を識別する識別部と現金の位置を検出する各種センサとを有する搬送手段と、この搬送手段を通じて現金を搬送させ取引に応じた入出金制御を行う制御部とを備える構成が通例である。
【0003】
このような従来の現金処理装置は、挿入口1011から挿入された現金のうち識別部1022により不良券であると識別された現金の一括返却などを可能とするため、特許文献1及び図5(a)に例示されるように、現金を一時的に保留する一時保留部Eを搬送手段1002に設け、挿入口1011から挿入された現金を一時保留部Eに一時的に保留し、一時保留部Eに保留した現金を払出口1012から返却している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−287512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来の現金処理装置では、図5(b)に示すように、金庫Cから出金する際に、搬送している現金が払い出すべき現金であるか否かを識別部1020で識別し、払い出すべき現金であると識別した現金は出金保留部F及び払出口1012を介して払い出す一方、払い出すべき現金でないと識別した現金は不良券であるとして一時保留部Eに退避させている。この不良券とされた現金は、粗悪なものが多いので現金処理装置から取り除くことが望ましい。
【0006】
しかしながら、従来の現金処理装置では、図5(a)及び図5(b)に示すように、金庫Cから出庫した現金のうち不良券とされた現金と、挿入口1011から挿入された現金のうち不良券とされた現金とを共通の一時保留部Eを用いて保留する構成であるので、不良券を一時保留部Eに保留した後で挿入口1011から挿入された現金を受け入れようとすると一時保留部Eを空状態にする必要があり、不良券を搬送経路1021又は金庫Cへ戻すしかなく不良券が循環して、不良券詰まり等の障害や不良券であると識別される現金が多くなることによる出金処理速度の低下を招いていた。
【0007】
また、従来では、図5(b)に示すように、挿入口1011から一時保留部Eへの円滑な搬送に資するために一時保留部Eと搬送経路1021との接続部分SWBを挿入口1011側に向かって傾斜させているので、金庫A〜Dから一時保留部Eに対して現金を搬送するにあたり、前進していた現金の搬送方向を折り返して後退させて搬送するスイッチバックを行う必要がある。スイッチバックを行うと現金の搬送速度が遅くなり、さらに不良券であると識別される現金が多いと現金の搬送速度が著しく低下して規定の出金処理時間を遵守することが困難になる。
【0008】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、その目的は、不良券が搬送経路または金庫へ戻って循環することを防止して、出金処理速度を向上させるとともに、不良券詰まり等の障害を抑制し、ひいては製品品質を向上させた現金処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0010】
すなわち、本発明に係る現金処理装置は、挿入口および払出口を介して金庫に現金を入出金する現金処理装置であって、前記挿入口、前記払出口および前記金庫を接続する搬送経路と現金を識別する識別部とを有し当該搬送経路を介して現金を搬送する搬送手段と、前記挿入口から挿入された現金を一時的に保留する一時保留部と、前記一時保留部とは別に設けられ現金を貯留する不良券回収部と、前記金庫にある現金を払い出す払出指令に応じて当該払出指令に係る現金を前記金庫から前記払出口へ前記搬送手段を通じて搬送させる制御部とを具備してなり、前記制御部は、前記識別部による識別結果に基づいて前記金庫から出庫された現金が前記払出指令に係る現金であるか否かを判定し、前記払出指令に係る現金でないと判定された場合は当該現金を不良券として前記不良券回収部へ搬送し、前記不良券を前記不良券回収部に貯留し続けることを特徴とする。
【0011】
従来では、金庫から出庫した現金のうち払出指令に係る現金でないと判定された現金である不良券と、挿入口から挿入された現金とを共通の一時保留部を用いて保留する構成であるので、不良券を一時保留部に保留した後で挿入口から挿入された現金を受け入れようとすると一時保留部を空状態にする必要があり、不良券を搬送経路または金庫へ戻すしかなく不良券が循環して、不良券詰まり等の障害や出金処理速度の低下を招いていたが、本発明では、一時保留部とは別に不良券回収部を設け、この不良券回収部に不良券を貯留し続けるので、不良券が搬送経路または金庫へ戻って循環することを防止でき、出金処理速度の向上、不良券詰まり等の障害発生を低減することができる。
【0012】
ここで、金庫から出庫した現金のうち払出指令に係る現金でないと判定する場合には、例えば、読み取り不能時、金種の相違時、重送発生時、異常検知時等が挙げられる。
【0013】
現金の搬送速度を向上させ、ひいては現金処理速度の向上に資するためには、前記不良券回収部は、前記搬送経路のうち前記金庫から出庫する出金方向終端部に接続されていることが好ましい。
【0014】
上記不良券回収部に不良券を貯留し続ける構成を採用することによって新たに生じる不良券回収部が満杯になって搬送不能になることに対応するためには、前記不良券回収部における前記不良券の貯留量を検出する貯留量検出部をさらに備え、前記制御部は、前記貯留量検出部により検出される貯留量が所定量を超える場合に外部に報知することが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、以上説明した構成であるから、不良券を不良券回収部に貯留し続けるので、不良券が搬送経路または金庫へ戻らず、不良券の循環を防止し、出金処理速度が向上するとともに、不良券詰まり等の障害が抑制され、ひいては製品品質を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る現金処理装置を示す概略全体構成図。
【図2】一部の金庫を抜き取った状態を示す図1に対応した図。
【図3】同実施形態における搬送手段および制御部の構成および機能の概略を示すブロック図。
【図4】同実施形態において金庫からの出金時の動作を示す模式図。
【図5】従来の現金処理装置における金庫への入金時および金庫からの出金時の動作を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態に係る現金処理装置を、図面を参照して説明する。なお、現金は紙幣と硬貨とを含むが、本実施形態では紙幣を取り扱う紙幣ブロックとしての現金処理装置を例に挙げて説明する。
【0018】
図1に示す本実施形態の現金処理装置は、例えば乗車券やカード、精算切符等の券売を行う自動発券機として用いられるもので、紙幣ブロック1と、この紙幣ブロック1にセットされて紙幣の収納場所となる4つの金庫A〜Dと、外部から投入される紙幣の金種を識別部22で識別して金庫A〜Dのうち対応する金庫に搬送経路21を介して搬送する搬送手段2とを備えている。
【0019】
紙幣ブロック1は、この現金処理装置を利用する利用者に近い側に挿入口11、出金口13、返却口14(以下、出金口13及び返却口14を合わせて払出口12ともいう)を設けたもので、同じく利用者に近い側に固定式の金庫Dを内設し、係員が操作を行う側に3つのカセット式の金庫A〜Cを設けている。また、紙幣ブロック1には、金庫A〜Cに対応して設けられこれら金庫A〜Cへ識別部22により真性であると識別された紙幣を収納する前に一次的に保留する一次保留部a1〜c1、搬送経路21上の紙幣(不良券を含む)を一時的に保留する一時保留部Eや出金保留部Fが設けられている。一時保留部Eと搬送経路21との接続部分SWBは、挿入口11からの円滑な搬送に資するために挿入口11側に向かって傾斜して形成されており、金庫A〜Dも同様である。出金保留部Fと搬送経路21との接続部分は、各金庫A〜Dからの円滑な搬送に資するために金庫A〜D側に向かって傾斜して形成されている。
【0020】
さらに一時保留部Eとは別に、読み取り不能、金種相違、重送発生、異常検知時の不良券を回収する不良券回収部Gが設けられている。不良券回収部Gは搬送経路21のうち金庫A〜Dから出庫する出金方向終端部に接続されている。不良券回収部Gは、図1に示すように、係員が操作を行う側に扉部g1が設けられており、係員がこの扉部g1を通じて不良券回収部Gに貯留された不良券を回収することが可能にされている。不良券回収部Gには、不良券の貯留量を検出する貯留量検出部23が設けられている。搬送経路21のうち出金方向終端部に不良券回収部Gを接続するとは、出金方向に沿って前進している現金を、その搬送方向を折り返して後退させることなく不良券回収部Gへ搬送可能であることをいい、例えば搬送ローラの回転を止めて逆回転することなく現金を搬送可能であることが挙げられる。
【0021】
カセット式の金庫A〜Cは、図2に例示するように把手hを把持して紙幣ブロック1から引き出すことが可能にされている。これら金庫A〜Cと紙幣ブロック1との間には、必要に応じて電磁力等を利用して金庫A〜Cを引き出し禁止状態にする図示しないロック機構が設けてあり、また、紙幣ブロック1又は金庫A〜Cには、引き出し禁止状態か否かを表示して係員に了知させる図示しないLED表示部が設けてある。
【0022】
この実施形態では、図3に示すように、金庫Aを第一金種たる一万円札を格納する第一金種金庫Aとし、金庫Bを第二金種たる五千円札を格納する第二金種金庫Bとし、金庫Cを第三金種たる千円札を格納する第三金種金庫Cとし、金庫Dを第四金種たる二千円札を格納する第四金種金庫Dとして、金庫A〜Dを四金種循環金庫として設定している。
【0023】
図3に示すように、現金処理装置は、搬送手段2とこれを制御する制御部3とを含んで構成されている。搬送手段2は、周知の現金処理装置と同様に、図示しない挾持ローラ、搬送ベルト、ウィング等の方向変換部などから構成される搬送経路21と、搬送される現金たる紙幣の金種および真性(偽造か否か)を識別する識別部22と、紙幣の金種識別のみを行い紙幣の真性までは識別しない簡易型の識別部20とを有している。
【0024】
制御部3は、発券装置等の上位制御装置Maからの指令に応じ、識別部22或いは簡易型の識別部20の識別結果等に基づいて搬送手段2を制御するものであり、挿入口11から投入された紙幣を識別部22に通過させた後、搬送経路21に沿って流通させ、随所に設けた分岐部26a〜26gで必要に応じて紙幣を方向変換して、第一金種金庫A、第二金種金庫B、第三金種金庫C、固定金庫D、一時保留部E、出金保留部F、払出口12、不良券回収部G等へ搬送する動作を行うとともに、金庫A〜D等から搬送経路21上への紙幣の繰り出し動作、簡易型の識別部20における金種識別、更には次なる搬送先である出金口13や金庫A〜Dへの搬送動作などを含む統括的な搬送制御を行うように構成されている。
【0025】
この搬送制御の一例として、金庫A〜Dから現金を払い出すべき払出指令を上位制御装置Maから受け、払出指令に係る現金を金庫A〜Dから出庫して払出口12へ向かって搬送することが挙げられる。この搬送制御では、読み取り不能、金種相違、重送発生等を排除して現金を間違いなく適切に払い出すために、金庫A〜Dから出庫した搬送中の現金が払出指令に係る現金であるか否かを簡易型の識別部20により識別し、払出指令に係る現金であると識別した現金を出金保留部F及び払出口12を介して払い出し、払出指令に係る現金でないと識別した現金を不良券として払い出さないように不良券回収部Gへ搬送して貯留し、不良券を不良券回収部Gに留めている。
【0026】
この紙幣の搬送制御に対して、さらに制御部3は、貯留量検出部23の検出に基づいて、貯留量検出部23における不良券である現金の貯留量が所定量を超えるか否かを判定し、所定量を超えている場合にその旨を外部に報知する。外部に報知とは、不良券回収部Gにおける不良券の貯留量が所定量を超えていることを現金処理装置の外部に知らせることであり、例えば上位制御装置Maへ報告する信号を送信したり、液晶表示部などの表示部4にその旨を表示したり、スピーカ5から所定の音を出力したりすること等が挙げられる。
【0027】
上記で述べた搬送制御などを行う具体的な制御部3は、図3に示すように、入出金制御部31と、搬送制御部32と、不良券判定部33と、報知判定部34と、報知部35とを含んで構成されている。
【0028】
入出金制御部31は、利用者が操作する図示しない操作部、搬送手段2や各種センサや上位制御装置Maからの信号に基づいて入出金に関する総括的な制御を行うものであり、金庫A〜Dから現金を払い出すべき払出指令を上位制御装置Maから受け、払出指令に係る現金を金庫A〜Dから出庫して払出口12へ向かって搬送する搬送指令を搬送制御部32に対して行う。
【0029】
搬送制御部32は、入出金制御部31及び後述する不良券判定部33からの紙幣の搬送指令に基づいて搬送手段2を駆動制御し、紙幣の搬送を行う。
【0030】
不良券判定部33は、上位制御装置Maからの払出指令に基づいて金庫A〜Dから払出口12へ現金を搬送する際に、簡易型の識別部20の識別結果に基づいて搬送中の現金が払出指令に係る現金であるか否かを判定し、払出指令に係る現金でない(すなわち不良券である)と判定した現金を不良券回収部Gへ搬送制御部32を通じて搬送させるものである。
【0031】
報知判定部34は、貯留量検出部23の検出結果に基づいて不良券回収部Gにおける不良券の貯留量が所定量を超えるか否かを判定する。
【0032】
報知部35は、報知判定部34により不良券の貯留量が所定量を超えていると判定された場合に、上位制御装置Ma、スピーカ5及び表示部4を通じて外部にその旨を報知する。
【0033】
このような制御部3を実現する具体的な構成は、CPU、メモリ及びインターフェイスを有する通常のマイクロコンピュータユニットにより構成され、メモリには図示しない搬送制御処理ルーチンや不良券判定処理ルーチンや報知判定処理ルーチンが格納してあり、CPUが適宜必要なプログラムを呼び出して実行することにより、上記の入出金制御部31、搬送制御部32、不良券判定部33、報知判定部34および報知部35が実現される。これらの詳細な制御、例えば制御部3は、紙幣を各金庫A〜Cに収納する前に一時的に一旦これらの一次保留部a1、b1、c1に保留し、その後、搬送経路21上に一旦繰り出した後に金庫A〜Cに収納する制御を行うが、本実施形態においてこれらの具体的な構成や制御については省略している。また、各金庫A〜Dに紙幣を装填し、或いは各金庫A〜Dから紙幣を繰り出す際には、各金庫A〜Dの一部または搬送経路21の一部に設けた図示しない計数部によって紙幣の枚数が計数されるようにしている。
【0034】
次に、金庫A〜Dからの出金時の動作について図4を参照しつつ説明する。ここでは、上位制御装置Maから払出指令として千円札1枚を払い出す指令を受け、第三金種金庫Cからお釣りとして1枚の千円札Mo1を払い出す例を説明する。
【0035】
まず、不良券でない場合について説明すると、図4(a)に示すように、払出指令に応じて第三金種金庫Cから千円札Mo1が搬送経路21を通じて簡易型の識別部20へ搬送され、簡易型の識別部20で千円札Mo1が識別される。ここでは、払出指令に係る現金(千円札)と、搬送された千円札Mo1が一致しているので不良券ではないと判定され、千円札Mo1が搬送経路21を通じて出金保留部Fへ搬送されて払出口12から払い出される。
【0036】
一方、不良券である場合には、図4(b)に示すように、人手による格納ミス等により第三金種金庫Cに一万円札Mo2が混入して格納されており、この一万円札Mo2が払出指令に応じて第三金種金庫Cから簡易型の識別部20へ搬送され、簡易型の識別部20で一万円札Mo2が識別される。ここでは、払出指令に係る現金(千円札)と、搬送された一万円札Mo2が一致していないので不良券であると判定され、一万円札Mo2が搬送経路21を通じて出金保留部Fへ搬送されて貯留される。不良券が不良券回収部Gへ搬送されて累積的に貯留され、所定量を超えると、これを貯留量検出部23が検知して、上位制御装置Ma、表示部4及びスピーカ5を通じて外部へ報知される。
【0037】
以上のように、本実施形態に係る現金処理装置は、挿入口11および払出口12を介して金庫A〜Dに現金を入出金する現金処理装置であって、挿入口11、払出口12および金庫A〜Dを接続する搬送経路21と現金を識別する識別部20とを有し搬送経路21を介して現金を搬送する搬送手段2と、挿入口11から挿入された現金を一時的に保留する一時保留部Eと、一時保留部Eとは別に設けられ現金を貯留する不良券回収部Gと、金庫A〜Dにある現金を払い出す払出指令に応じて払出指令に係る現金を金庫A〜Dから払出口12へ搬送手段2を通じて搬送させる制御部3とを具備してなり、制御部3は、識別部20による識別結果に基づいて金庫A〜Dから出庫された現金が払出指令に係る現金であるか否かを判定し、払出指令に係る現金でないと判定された場合は現金を不良券として不良券回収部Gへ搬送し、不良券を不良券回収部Gに貯留し続けることを特徴とする。
【0038】
従来では、金庫から出庫した現金のうち払出指令に係る現金でないと判定された現金である不良券と、挿入口から挿入された現金とを共通の一時保留部を用いて保留する構成であるので、不良券を一時保留部に保留した後で挿入口から挿入された現金を受け入れるためには一時保留部を空状態にする必要があり、不良券を搬送経路または金庫へ戻すしかなく不良券が循環して、不良券詰まり等の障害や出金処理速度の低下を招いていたが、本実施形態では、一時保留部Eとは別に不良券回収部Gを設け、この不良券回収部Gに不良券を貯留し続けるので、不良券が搬送経路21または金庫A〜Dへ戻って循環することを防止でき、出金処理速度の向上、不良券詰まり等の障害発生を低減することができる。
【0039】
特に、不良券回収部Gが搬送経路21のうち金庫A〜Dから出庫する出金方向終端部に接続されているので、従来では、一時保留部に対して不良券を搬送するにあたり、前進していた現金の搬送方向を折り返して後退させて搬送するスイッチバックSWBを採用していたため現金の搬送速度が著しく低下していたが、本実施形態では、搬送経路21のうち出金方向終端部に不良券回収部Gを接続しているので、スイッチバックのように現金の搬送方向を折り返すことなくスムーズに不良券回収部Gへ搬送することができ、現金の搬送速度を向上させ、ひいては現金処理速度の向上に資することが可能となる。
【0040】
さらに、不良券回収部Gにおける不良券の貯留量を検出する貯留量検出部23をさらに備え、制御部3は、貯留量検出部23により検出される貯留量が所定量を超える場合に外部に報知するので、不良券回収部Gに不良券を貯留し続ける構成を採用することによって新たに生じる不良券回収部Gが満杯になって搬送不能になることに対応することができる。
【0041】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0042】
例えば、本実施形態では、金庫A〜Dを四金種循環金庫としているが、金庫A〜Dに格納する金種は本実施形態のものに限定されるものでなく、どの金種を格納することも可能である。また、固定式の金庫Dを二千円札と五千円札を格納する混合金庫とし、金庫Aに千円札、金庫Bに一万円札を格納する循環金庫とし、金庫Cを多用途に利用可能な自在金庫に設定して、現金の補給及び回収を目的として現金処理装置を停止させることなく運用する、いわゆる無停止補給、無停止回収を実現した金庫設定も可能である。このような様々な金庫の設定に対しても本発明を適用することが可能である。
【0043】
また、本実施形態では、現金としての紙幣を取り扱う紙幣ブロックとしての現金処理装置を例に挙げて説明したが、硬貨を取り扱う硬貨ブロックに対しては不良券回収部Gを不良硬貨回収部G’として本発明を適用することが可能である。
【0044】
また、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0045】
1………紙幣ブロック
11……挿入口
12……払出口
A〜D…金庫
2………搬送手段
21……搬送経路
20……識別部
23……貯留量検出部
31……入出金制御部
32……搬送制御部
33……不良券判定部
34……報知判定部
35……報知部
E………一時保留部
G………不良券回収部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入口および払出口を介して金庫に現金を入出金する現金処理装置であって、
前記挿入口、前記払出口および前記金庫を接続する搬送経路と現金を識別する識別部とを有し当該搬送経路を介して現金を搬送する搬送手段と、
前記挿入口から挿入された現金を一時的に保留する一時保留部と、
前記一時保留部とは別に設けられ現金を貯留する不良券回収部と、
前記金庫にある現金を払い出す払出指令に応じて当該払出指令に係る現金を前記金庫から前記払出口へ前記搬送手段を通じて搬送させる制御部とを具備してなり、
前記制御部は、前記識別部による識別結果に基づいて前記金庫から出庫された現金が前記払出指令に係る現金であるか否かを判定し、前記払出指令に係る現金でないと判定された場合は当該現金を不良券として前記不良券回収部へ搬送し、前記不良券を前記不良券回収部に貯留し続けることを特徴とする現金処理装置。
【請求項2】
前記不良券回収部は、前記搬送経路のうち前記金庫から出庫する出金方向終端部に接続されている請求項1に記載の現金処理装置。
【請求項3】
前記不良券回収部における前記不良券の貯留量を検出する貯留量検出部をさらに備え、前記制御部は、前記貯留量検出部により検出される貯留量が所定量を超える場合に外部に報知する請求項1又は2に記載の現金処理装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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