説明

球体の保持用器具

【目的】回転表示球体を成形するに当って母体となる球体に対し、図柄を表示する筒形に形成してなる表示帯を被せる際にこれらを安定的に保持する保持器具を提供する。
【構成】ベース板(2)上に支持する球体(6)の円周と略等しい円に沿わせて3本以上の支柱(3)をそれぞれの間に間隔をおいて立設する。この支柱(3)間に前記球体(6)を割り込ませて支持する一方、球体(6)の上方からこの支柱と前記球体の間に筒形に形成する表示帯(7)を差し入れるようにして球体の表面に被せると同時に、この表示帯(7)を前記支柱によって狭持する。そして、球体(6)を保持した状態においてこれに被せる前記表示帯(7)と球体との位置合せを行い両者を整合させ、次にこの状態を保って加熱処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技機の表示装置に組込まれる回転表示球体に関して、その母体となる球体に対して図柄を表示する円筒形に形成してなる図柄表示帯を嵌め付け装着するに当り、上記球体を一定姿勢に保持し、図柄表示帯を所定の位置に誘導嵌め付けるために使用する球体の保持用器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パチンコ遊技機等に装備される表示装置には複数の数字や絵柄を組合せた図柄を表示してなる可動体を内蔵し、遊技の設定に合せてこの可動体を回転させた後、一定の指示に従ってこの回転を止めた位置で表れる特定の図柄によって「当り」、「外れ」を表示する所謂可変式の表示装置がある。本発明は、この可変式表示装置の中で、可動体として使用される球形の回転表示体、つまり回転表示球体の製造において使用される球体の保持用器具に関するものである。
【0003】
遊技機の表示装置に使用される回転表示球体は、回転ドラム式の表示体と同様に表示する図柄を表示球体の表面に回転する方向に沿って列状に配置し、表示することが必要になる。
この図柄の表示に当って回転ドラム式の表示体の場合は、平滑な周面に沿って表面に図柄を表示したテープを巻き付けることで簡単に図柄を表示することができるが、表示体が球形である場合は、テープ状に形成したものであっても単に巻付けただけでは筒形になるためドラムの周面に巻き付ける場合の様に一体とすることができず、図柄を表示することができない。
【0004】
本発明者は、球形の表示体に対して図柄を表示する場合の上述のような困難性に臨み、これを解決するため、前記回転ドラムに対する表示方法と同様の図柄を表示したテープを表示体に貼り付ける方法を採用しながら、球形の表示体に対してその表面に添って扁平な状態にあるテープを均一に、しかも図柄を変形させることなく美麗に貼り付けることができる回転表示球体の製造に成功し、これを特許文献1において提案し、公知のものとしている。
【特許文献1】特開2006−14812号公報。
【0005】
上記特許文献1に係る回転表示球体(回転表示体A)は、図柄を表示するテープ、つまり表示体2の材料に熱収縮性の合成樹脂フィルムを使用し、母体となる球体、つまり回転体1にこの熱収縮性のフィルムからなる筒形に形成した表示体2を被せ、次にこの表示体2を加熱して回転体1の表面上で収縮させ、密着させることによって球体の表面に表示体2に表示した図柄8を表現するものとしている。
この特許文献1に記載される回転表示体Aは、筒形の表示体2が熱収縮によって球体の表面に均一に貼り付くことによって、この表示体上に表わした図柄8が回転体(球体)1の表面に正確に表現されることになり、同時に、加熱するだけでこの貼り付けが行えることから製造性に優れるものとなっている。
【0006】
しかし、特許文献に係る発明の1つの難点は、球体の回転体に筒形の表示体を被せる際に、両体の位置関係を正しく定めて一体とすること、この状態を加熱加工処理する時に維持すること、が求められる点にある。
回転表示球体を量産するためには、球体に対して表示体、つまり図柄を表示した筒形の表示帯を一定の位置関係において手際よく、しかも適切に被せる必要がある。また加熱加工処理する際に位置ずれを起すと、表示される図柄が歪んで不良品となることから、位置合せした両体をしつかり保持する必要がある。
しかし、上記発明者が提案する回転表示球体の製造手法は全く独自の製法に係ることから球体と表示帯の位置合せ、更に加熱加工の段階における上記位置合せ状態の保持をする適切な手段の開発にまで至っておらず、量産する上での障害となっていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明は上記の実情から、球体に対する筒形に形成した表示帯を定められた位置関係において適切には嵌め付け、加熱処理加工に備えられるようにすると共に、加熱処理において、位置合せをした両体を位置ずれを起すことなく確実に保持して加熱処理装置に持込めるようにしたことにあり、そのための球体の保持用器具を提供することにある。
【0008】
遊技機の表示装置に組込まれる回転表示球体は、回転された後、この球体に表示された図柄のうち、特定の図柄が遊技制御装置によって選択され、この選択に基いて特定の図柄が前面に現われ、遊技者に視認されるようにその停止する位置が予め設定されている。
そして、この回転の停止は表示装置内の駆動機構によって実行され、この中に組込まれるモータを停止することによって行われるが、実際には回転表示球体の球体そのものの回転を止めることによって行われることから、この球体とこの球体の表面に貼られる表示帯とが一定の位置で結合していないと、図柄のずれによって正しく球体が停止しても無関係な図柄が表示される危険がある。
【0009】
本発明は、この回転表示球体を構成する球体に被せる筒形の表示帯の結合位置を容易に割出し、正しい位置に嵌め付けられるようにすると同時に、この位置合せ状態を維持して加熱処理加工が行えるようにした保持用器具を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成するため、本発明は基礎になるベース板上に3本以上の支柱を、支持する球体の円周に合せた円に沿って配置立設し、この支柱間に球体を嵌め入れ狭持するようにする一方、この狭持固定した球体の上から筒形にした表示帯を一方の開口端側から被せるように臨ませ、更に開口端の縁を上記球体と各支柱との間に差し入れて球体の全体を包み込むように被せられるようにしたこと、そして、これにより上記球体と筒形をなす表示帯とを組合せた状態でベース板上に保持できるようにした球体の保持用器具を提供することにある。
【0011】
更に詳述すると、本発明はベース板上に間隔をおいて少なくとも3本の支柱を立設し、該支柱間の上方から球体を嵌め入れ、これを狭持してベース板上に載置固定する一方、この球体の上方から筒形をなす図柄表示帯をこの球体の表面と前記それぞれの支柱との間に通して被せ、前記球体と共にこの図柄表示帯を嵌め合せた状態で保持固定することを可能にした球体の保持用器具を提供することにある。
【0012】
また本発明は、前記支柱を金属材又は非金属材で形成すること、更にまた前記金属材とする場合には、この金属材を弾性を有した金属線材とすることを特徴とした球体の保持用器具を提供することにある。
【0013】
また本発明は、前記金属線材からなる支柱には球体に接触する部分に断熱被覆部を形成することを特徴とした球体の保持用器具を提供することにある。
【0014】
また本発明は、前記複数本の支柱のうち1若しくは2本について所要剛性を有した非弾性の素材で形成することを特徴とした球体の保持用器具を提供することにある。
【0015】
ところで、上記ベース板上に立設する支柱のうち主たる支柱については、金属線材のように所要の剛性を有し、且つ弾性を有する棒状の素材、例えば針金などの線材がもっとも適している。尚、ここでの主たる支柱は後述する球体を保持するときに、この球体を弾力的に狭持する支柱を指すことになる。
上記支柱は、ベース板上に球体を挟み付けた状態で固定するものであって、球体を支柱間に割込ませるとき、これを容易に受け入れることができると同時に、割込ませた状態において弾力的に球体を保持できることが望まれ、更には、この球体の固定状態において筒形の表示帯を被せるとき、表示帯の開口端縁を球体の表面と、これに接触する前記支柱との間に簡単に割込ませることができる柔軟性を有することが望まれる。
【0016】
尚、支柱について、前記非金属材には耐熱性のガラス、木材、竹材等、更には表示体を加熱収縮するときの加熱温度において所要の剛性を失わないところの、つまり耐熱性を有した合成樹脂材料等が挙げられる。
【0017】
支柱が3本以上であることは、ベース板上の一定位置に安定的に球体を支持するためであり、3本が最も適するものとなるが、4本であっても、又5本であってもよい。
たゞ全ての支柱は球体に対して均一に接触して球体を支えるようにすと同時に、この球体に被せた図柄表示帯が同じく球体の表面に均しく接触して歪みを発生させないようにすることが望まれることから、3本とした場合は別にして、4本,5本とした場合は均等な接触が得られるように立設位置を充分に配慮する必要がある。
【0018】
一方、上記支柱に対する断熱被覆部の形成は、表示帯を加熱処理する際に、熱が支柱に逃げてこの支柱に接触する表示帯の部分が均一に加熱されなくなることを回避するため形成されるものである。
特に、支柱を金属線材によって形成した場合、表示帯と接触する部分の熱が支柱を通して逃げ、均一な加熱が妨げられることから収縮に歪みが発生して回転表示球体の表面が乱れる危険がある。
【0019】
以上のことから、上記断熱被覆部は支柱と表示帯間における加熱加工時の熱の移動を防止するものであればよく、例えば支柱に合成樹脂製のチューブを嵌め付け、或はテープを巻付けることによって形成することができる。
勿論、この断熱被覆部は表示帯と支柱との接触を断つものであるから、支柱の接触部分に設けられゝば充分である。
【0020】
前記支柱について、複数本のうち少なくとも1本について、更に言えば3本の支柱とした場合、その1又は2本の支柱を非弾性のものにすることができる。これにより、他の弾性を有する支柱による押出しを受ける状態にして支柱間全体で球体及び球体に被せる表示帯を狭持し、固定するようにしてもよい。
この場合において、上記非弾性の支柱は他の弾性を有する支柱による球体,表示帯の押付けを受止めるものとなり、支柱間に球体、そして表示帯を割込ませるとき、非弾性の支柱が固定される結果、迅速にこの非弾性支柱を基準に作業することができる。
【0021】
上記構成に係る球体の保持用器具は、球体を支持する際、ベース板上に起立する支柱間の上方から球体を臨ませ、支柱を押し開くようにして割込ませ、ベース板上に載置固定することになる。
この固定に当って球体は、回転方向の円周の中心線、即ち球体の赤道がベース板上面に対して並行となるように、つまり水平になるように載置する。この様にして載置された球体は赤道を横向きにすると共に、各支柱に対してこの赤道部分を接触させることになり、定位置の固定となる。
【0022】
図柄を表示する表示帯は、筒状に形成する前に外表面となる一面に予め所定の図柄を表示しておくことになる。つまり、上記表示帯は、前述したように熱収縮性の合成樹脂フィルムを素材にして形成されるが、筒形にする前のフィルムによるテープの状態において、このテープの全長に亘るように複数の数字,絵柄等からなる図柄を連続的に配置し、表示しておくのである。
図柄の表示は、印刷によって表示することができ、一定の図柄を連続して表したのち、テープの両端を繋いで筒形に形成し、この状態で前記球体に被せるのである。
【0023】
表示帯の球体に対する嵌め付けは、支柱によって支えられた球体の上方から表示帯の一方の開口端縁を臨ませ、そのまゝ下すことによって行うことになる。
球体に対する上記表示帯の嵌め付けは、最初に開口端縁を球体の赤道に一致させることによって行われる。表示帯はこのとき初めて球体の表面に接触することになる。
この状態において上記表示帯を押下げると、球体の全体を内部に受け入れることになり、同時に、この球体と球体を支える支柱との間に割込むことになり、支柱に支持される球体は実質的にこの表示帯を介して支持されることになる。
【0024】
この表示帯の嵌め付けに当って、表示帯の表面に表わす図柄の中心を通る周方向の仮想の中心線を前記球体の赤道に重ね、球体と表示帯との位置を合せることになる。これと同時に、予め上記赤道上に表示しておく位置決めの基点に表示帯の前記仮想の中心線上に表わす位置合せの基点を重ねて一致させ、表示帯に表示する図柄が球体表面の定められた位置に正しく表示されるようにする。
【0025】
この様にしてベース板上に球体と表示帯を嵌り合った状態でセットしたのち、本発明保持用器具を加熱器内に持込み、所要の温度で表示帯を加熱し、熱収縮力を利用してこれを球体の表面に密着させ、一体に貼り付けて所定の回転表示球体を完成させるのである。
上記回転表示球体を完成させたのち、保持用器具は再度球体と表示帯との組合せ、そして加熱処理のために使用されることになり、再使用されることになる。
【発明の効果】
【0026】
上記説明の様に、本発明保持用器具は構成され、使用されるものであって、球体と表示帯との組合せにおいては、先ず球体を定位置に支えることができ、次にこれに表示帯を被せるように嵌め付ければ、簡単に両者の位置合せが行え、嵌め付け作業を容易にすることができる。
また上記球体は支柱に支持した状態で自由に向きを変更することができ、更にこのとき球体の赤道を支柱との接触点に定めて装着すれば、この球体を常に一定の姿勢で支持することができ、表示帯との位置合せに有利となる。
【0027】
更に、上記の如くして球体を定位置に設置することができることに併せて固定することから、表示帯の嵌め付け作業を容易に行うことができ、同時に、表示帯は嵌め付けた状態で支柱を押しのけながら球体の周りを回して、位置移動をすることができることから表面に表わした図柄を球体の所定の位置に移動し、適正に位置の修正作業を行うことができ、便利である。
従って、本発明によれば、球体と表示体の嵌め合せ作業が簡単に、しかも正確に行えると共に、この嵌め合せの状態で加熱し表示体を収縮させて球体表面に貼り付けることができることから良質な回転表示球体を効率的に製造することができることになる。
次に、本発明を図示する実施例に従って詳述することにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図1は、本発明に係る球体の保持用器具の一例を示す斜視図であり、図中において、1は本発明の保持用器具を、2はベース板を、3はこのベース板上に立設した支柱、4は上記支柱3に囲まれるベース板2の上面に設けた補助台を示す。
ベース板2は金属板、若しくは耐熱性の合成樹脂板、木板を材料にして形成してあり、支柱3には針金を使用している。
【0029】
ここに示す支柱3は、円形の補助台4を取り囲むように仮想の円周に沿って等間隔をおいて3本起立させてあり、各上端を外に向けて円形に屈曲させて後述する球体の受け入れを容易にしている。
上記仮想の円周は、更に言うと受け入れる球体の直径より僅かに小さい直径の円としてベース板2の上面に描かれるものであって、3本の支柱3,‥‥はこの円周上から垂直に起立するものとなっている。
尚、この支柱は針金を使用していることから弾性を有し、自由に内外方に撓むことができるようになっており、各支柱の高さは受け入れる球体の表面を抱持できる高さ、つまり球体の半径を超える高さ以上にしてある。
【0030】
図2乃至図7は、上記構成に係る本発明保持用器具1の使用を説明するもので、図2は回転表示球体5の母体となる球体6をセットしたのち、この球体6に被せる筒形に形成した図柄を表示する表示帯7を上方から臨ませた状態を示す。
【0031】
球体6は、ここでは半球形に形成する2つの殻体6a,6bをその開口部同士を衝き合せることによって形成してあり、互いに衝き合う開口部の縁を球体5における赤道8としている。更に、この2つの殻体6a,6bの底部となるそれぞれの中央部分に透孔(図示せず)を穿ち、これに球体6を指示する回転軸9を貫き通すようにしている。
尚、上記赤道8は後述するように表示帯7を嵌め付けるときの基準線となるもので、この赤道8上には表示帯に表わす図柄の位置を合せる位置決めの基点10が突起として形成してある。
【0032】
上記球体6は保持用器具1の上方から3本の支柱3の間に割込ませ、補助台4上に載置してセットされる。
このとき球体6は回転軸9を垂直に起立させて球体6の赤道8を水平方向に向け、この赤道8が各支柱3に接するようにセットし、ベース板2に対する位置決めを行う。
尚、セットされた球体6は、弾性を有した支柱3によって3方向から緩く圧迫された状態で狭持され、3本の支柱3の中心に位置することになる。
【0033】
表示帯7は、熱収縮性の合成樹脂フィルムを材料に円筒形に形成したもので、その外表面には「1」〜「8」の数字を全周に亘って均等に配分する図柄11が表示される。
この表示帯7は図8に示したように熱収縮性の合成樹脂フィルムからなるテープ12を基材にして、扁平な状態において外表面となる一面に印刷等の方法で上記図柄11を表示し、次にこのテープの両端を繋ぐことによって筒形にしたものである。
この表示帯7は、上記テープ12の状態にあるとき、長さを球体6の円周より僅かに長くして筒形になったとき、その内径が球体6の直径より僅かに大きくなるようにしてあり、これによって球体6に対して容易に嵌め付けができるようにしてある。更にその幅を球体6の直径よりやゝ広くして球体に被せたとき略全体を包み込めるようにしてある。
【0034】
表示帯に表示される図柄11は、最終的に球体6の表面に表示される図柄となるもので、表示帯の外表面の周方向に沿った中心位置にエンドレスに表示される。
この図柄11は前述したようにテープの状態において表示されるが、この表示と共に円周方向の中心線13(仮想の中心線)上の1点にこの表示帯7を球体6の定位置に貼り付けるための位置合せの基点14を表示してあり、更にこの基点14に対して間隔をおいて、同じ中心線13上に第2の位置合せの基点15と16を表示している。
更に、上記位置合せの基点14と第2の位置合せの基点15,16のそれぞれには位置合せにおける誤差の許容範囲を表示する限界線14a,15a,16aを表示し、多少の位置ずれがあっても球体6と表示帯7との結合に影響がないこと、つまり適正な範囲での嵌め付けが行えることを表示している。
【0035】
上記支柱3の間に狭持し、固定した球体6に対して表示帯7は図3に示したように上方から一方の開口端7aを臨ませてそのままの状態で球体6に嵌め付けることになる。
図4は、この嵌め付け開始の状況を示している。表示帯7は一方の開口端7aの縁を3本の支柱3に同時に接触させ、これに先に接触する球体6の表面部分との間に差し入れることになる。それと同時に、この開口端7aの縁を全周に亘って球体6の赤道8に一致させるのである。
【0036】
図中17は、上記表示帯7の開口端7aの縁に表示した案内基点である。この基点17は前記位置合せの基点14を通り、且つ中心線13に直交して上記開口端7aに抜ける直線、つまり筒の軸方向の直線の上に表示される線状の基点で、上記位置合せの基点14を球体6上の基点10に誘導するための誘導手段となるものである。
従って、前記球体6に対する表示帯7の嵌め付けに当っては、開口端7aの縁を赤道8に揃えることに併せて、図4に示すように上記案内基点17を球体の基点10に一致させることになる。
【0037】
この様に相互の位置を決めをしたのち、表示帯7を垂直に下して球体6の全体を包み込むように嵌め付ける(図5)。
表示帯7は垂直に下されることによって支柱3と接触する部分を順次上昇させ、最終的に中心線13の位置で接触することになり、この支柱3と球体6の表面との間に挟まれて位置を固定することになる。これと同時に案内基点17に一致した基点10は、表示帯の下降によって位置合せ基点14と一致し(図5)、更に中心線13上の他の基点15と16とが球体の赤道8に揃って(図6を参照)球体6と表示帯7との嵌め付けと位置合せが完了することになる。
【0038】
図7は、保持用器具1において球体6と表示帯7との嵌め付けを完了したのち、図示しない加熱装置に持込み、加熱処理によって筒形の表示帯7を熱収縮させ、球体6の表面に密着させて貼り付けた状態を示す。このとき、筒形の表示帯7の両開口端7aが収縮することで球体6の表面に貼り付き、完全な球形に変形して球体6の表面を被覆し、図柄11を球体6の表面に表示することになり、回転表示球体5を完成させることになる。
【0039】
ところで、図9,図10は前記支柱3の高さの途中に断熱被覆部18を形成し、支柱とこの支柱間に狭持される球体6の表面に被る表示帯7との接触を回避するようにした一例を示すものである。
断熱被覆部18は、表示帯7の加熱処理の工程において支柱3に熱が吸収される等して支柱と接触しない部分との温度差によって表示帯7の収縮歪みの発生を予防する手段となるものである。
この断熱被覆部18は支柱である線材に合成樹脂製のチューブを装着したものとなっているが、テープを巻付けて形成してもよく、その成形は自由である。
たゞ、この断熱被覆部18は球体に被る表示帯7との接触を断つためのものであるから支柱3の高さにおいて、球体6の半径に近い高さの近辺に形成されることになる(図10を参照)。
【0040】
以上、本発明に係る球体の保持用器具を図面に示す実施例を基に説明したが、前記説明において明らかな様に本発明によれば、球体6に対してその表面に被せる筒形の表示帯7を加熱処理する前に嵌め付けセットするに当って、球体6を支柱3によって正確な位置に固定できること、そしてこの球体6の固定によって表示帯7を被せる作業が容易になり、同時に球体に対する表示帯7の位置合せが容易となることから、球体と表示帯との組合せを正確にして良質な回転表示球体の製造が行えることができる。そして、両者の位置が正確に割出せることから組立の作業を容易且つ迅速に行うことができ製造製を高めることができる。
【0041】
ことに、この本発明保持用器具においては、球体6を一定の姿勢に固定し、保持できると同時に表示帯7も併せて固定できること、そしてこの両者を固定した状態において、支柱の弾性を利用して球体に被せた状態にある表示帯7を動かすことが可能であることから、球体に対する表示帯の位置の整合作業が容易に行える利点があり、不良品の発生を未然に防止できる利点がある。
しかも、位置を合せた球体と表示帯をそのまゝの状態で保持することができ、加熱処理装置にもそのまゝ持込めるため極めて有利である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係る球体の保持用器具の斜視図。
【図2】球体を保持した状態の斜視図。
【図3】保持用器具に保持した球体に対し表示帯を被せる直前における斜視図。
【図4】球体に対し表示帯を半分まで被せた状態の斜視図。
【図5】球体に対して表示帯を完全に被せた状態の斜視図。
【図6】図5の背面側の斜視図。
【図7】加熱処理後における回転表示球体を保持する状態を示す斜視図。
【図8】テープの状態にある表示帯の展開図。
【図9】他の例における球体の保持用器具の斜視図。
【図10】使用状態を説明する斜視図である。
【符号の説明】
【0043】
1 球体の保持用器具
2 ベース板
3 支柱
5 回転表示球体
6 球体
7 表示帯
7a 表示帯の開口端
8 球体の赤道
9 回転軸
10 球体の赤道上に表示される位置決めの基点
11 図柄
12 表示帯を作るテープ
13 表示帯の表面に周方向の中心に描かれる仮想の中心線
14 位置合せの基点
15,16 第2の位置合せの基点
17 案内基点
18 断熱被覆部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース板上に間隔をおいて少なくとも3本の支柱を立設し、該支柱間の上方から球体を嵌め入れ、これを狭持してベース板上に載置固定する一方、この球体の上方から筒形をなす図柄表示帯をこの球体の表面と前記それぞれの支柱との間に通して被せ、前記球体と共にこの図柄表示帯を嵌め合せの状態で保持固定することを特徴とした球体の保持用器具。
【請求項2】
請求項1の記載において、支柱は金属材又は非金属材で形成することを特徴とした球体の保持用器具。
【請求項3】
請求項1の記載において、支柱は弾性を有した金属線材で形成することを特徴とした球体の保持用器具。
【請求項4】
請求項2又は3の記載において、支柱には球体に接触する部分に断熱被覆部を形成することを特徴とした球体の保持用器具。
【請求項5】
請求項1の記載において、複数本の支柱のうち1若しくは2本について所要剛性を有した非弾性の素材で形成することを特徴とした球体の保持用器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−296196(P2007−296196A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−127798(P2006−127798)
【出願日】平成18年5月1日(2006.5.1)
【出願人】(000154679)株式会社平和 (1,976)
【Fターム(参考)】