説明

球技用シミュレータ装置および球技用シミュレーション方法

【課題】ボールの移動方向および移動速度を検出できる範囲を大きく確保できシミュレーションを的確に行うことができる球技用シミュレータ装置および方法を提供する。
【解決手段】第1乃至第4のアンテナ12A〜12Dは、指向性を有し、供給される送信信号に基づいてボール2に向けて送信波W1を送信すると共に、ボール2反射された反射波W2を受信して受信信号を生成し、互いに離間して配置されている。第1乃至第4のドップラーセンサ14A〜14Dは、ドップラー周波数Fdを有する第1乃至第4ドップラー信号SdA〜SdDを時系列データとして生成する。計測シミュレーション部20は、予め得られている各アンテナ12A〜12Dを用いて計測された速度と移動方向および移動速度との実測値との相関関係に基づき、測定された各速度から移動方向および移動速度を算出しボール2の飛距離、弾道を含む評価データを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は球技用シミュレータ装置および球技用シミュレーション方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人がゴルフクラブをスウィングしてゴルフボールを打撃したときのゴルフクラブのスウィング速度を検出する装置が提案されている(特許文献1参照)。この装置は、撮像装置によって得られたゴルフクラブの画像情報に基づいてスウィング速度を求めている。
また、人が野球バットやテニスラケットなどのスウィング部材をスウィングしてボールを打撃したときのスウィング部材のスウィング速度を検出する装置が提案されている(特許文献2参照)。この装置は、光センサによって検出されたスウィング部材の通過時間に基づいてスウィング速度を算出している。
このようなゴルフクラブやスウィング部材のスウィング速度は、例えば、ゴルフや野球などのシミュレーション装置においてボールの速度や移動方向、ボールの弾道などのデータを算出するためのデータとして利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−90380号公報
【特許文献2】特開平02−249565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術では、撮像装置や光センサを用いているため、測定範囲が限定されている。したがって、定められた測定範囲内に置かれたボールをゴルフクラブやスウィング部材で打撃しなくてはならない。
そのため、トスバッティングのように空中に放り投げられたボールをバットで打撃するといったように、打撃する位置がばらついて撮像装置や光センサの測定範囲から逸脱するような場合は計測が困難である。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ボールの移動方向および移動速度を検出できる範囲を大きく確保でき、さまざまな球技のシミュレーションを的確に行う上で有利な球技用シミュレータ装置および球技用シミュレーション方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、球技用のボールが物体により打撃されたときの前記ボールの移動速度および移動方向を含む初期特性値を検出する初期特性値検出部と、前記初期特性値に基づいて前記ボールの飛距離を算出すると共に、前記算出された飛距離に基づいて前記ボールの弾道を算出する評価用特性値演算部と、前記初期特性値、前記飛距離および前記弾道を含むデータに基づいて前記打撃の評価を行う評価データを生成する評価データ生成部とを含む球技用シミュレータ装置であって、前記初期特性値検出部は、指向性を有し、供給される送信信号に基づいて前記ボールに向けて送信波を送信すると共に、前記ボールで反射された反射波を受信して受信信号を生成する互いに離間して配置された第1乃至第n(nは2以上の整数)のアンテナと、前記第1乃至第nのアンテナのそれぞれに対応して設けられ、前記アンテナに前記送信信号を供給すると共に、前記アンテナから供給される前記受信信号に基づいてドップラー周波数を有するドップラー信号を生成する第1乃至第nのドップラーセンサと、前記第1乃至第nのドップラーセンサのそれぞれから得られたドップラー信号を周波数解析することにより周波数ごとの信号強度の分布を示す第1乃至第nの信号強度分布データを生成する信号強度分布データ生成部と、前記第1乃至第nの信号強度分布データのそれぞれに基づいて、前記ボールの移動速度に対応するドップラー周波数成分を検出し、それら検出したドップラー周波数成分に基づいて第1乃至第nの速度を算出する速度演算部と、予め実測され得られている前記第1乃至第nの速度と予め実測され得られている前記ボールの移動方向との相関関係に基づいて、前記速度演算部で算出された第1乃至第nの速度から前記移動方向を算出する移動方向演算部と、予め実測され得られている前記第1乃至第nの速度と予め実測され得られている前記ボールの移動速度との相関関係に基づいて、前記速度演算部で算出された第1乃至第nの速度から前記移動速度を算出する移動速度演算部とを備えることを特徴とする。
【0006】
また本発明は、球技用のボールが物体により打撃されたときの前記ボールの移動速度および移動方向を含む初期特性値を検出する初期特性値検出工程と、前記初期特性値に基づいて前記ボールの飛距離を算出すると共に、前記算出された飛距離に基づいて前記ボールの弾道を算出する評価用特性値演算工程と、前記初期特性値、前記飛距離および前記弾道を含むデータに基づいて前記打撃の評価を行う評価データを生成する評価データ生成工程とを含む球技用シミュレーション方法であって、指向性を有し、供給される送信信号に基づいて前記ボールに向けて送信波を送信すると共に、前記ボールで反射された反射波を受信して受信信号を生成する第1乃至第n(nは2以上の整数)のアンテナを互いに離間して配置し、前記第1乃至第nのアンテナのそれぞれに対応して、前記アンテナに前記送信信号を供給すると共に、前記アンテナから供給される前記受信信号に基づいてドップラー周波数を有するドップラー信号を生成する第1乃至第nのドップラーセンサを設け、前記第1乃至第nのドップラーセンサのそれぞれから得られたドップラー信号を周波数解析することにより周波数ごとの信号強度の分布を示す第1乃至第nの信号強度分布データを生成する信号強度分布データ生成部を設け、前記第1乃至第nの信号強度分布データのそれぞれに基づいて、前記ボールの移動速度に対応するドップラー周波数成分を検出し、それら検出したドップラー周波数成分に基づいて第1乃至第nの速度を算出する速度演算部を設け、前記第1乃至第nの速度と前記ボールの移動方向との相関関係と、前記第1乃至第nの速度と前記ボールの移動速度との相関関係とをそれぞれ予め求めておき、前記第1乃至第nの速度と前記ボールの移動方向との相関関係に基づいて、前記速度演算部で算出された第1乃至第nの速度から前記移動方向を算出し、前記第1乃至第nの速度と前記ボールの移動速度との相関関係に基づいて、前記速度演算部で算出された第1乃至第nの速度から前記移動速度を算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ボールが物体により打撃されたときのボールに向けて送信波を送信すると共に、ボールから反射された反射波を受信するアンテナを複数個設け、予め得られている各アンテナを用いて計測された速度と移動方向および移動速度との実測値との相関関係に基づき、測定された各速度から移動方向および移動速度を算出し、これら移動速度および移動方向を含む初期特性値に基づいてボールの飛距離を算出すると共に、算出された飛距離に基づいてボールの弾道を算出し、初期特性値、飛距離および弾道を含むデータに基づいて打撃の評価を行う評価データを生成するようにした。
したがって、ボールに送信波を送信しかつボールで反射された反射波を受信する空間を広く確保することができるため、ボールの移動方向および移動速度を検出できる範囲を大きく確保できる。ボールを物体で打撃する位置がばらつく場合であっても、移動方向および移動速度を的確に検出でき、さまざまな球技のシミュレーションを的確に行う上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施の形態の球技用シミュレーション装置10の構成を示すブロック図である。
【図2】第1の実施の形態の球技用シミュレーション装置10の機能ブロック図である。
【図3】第1の実施の形態の第1乃至第4のアンテナ12A〜12Dの構成を示す正面図である。
【図4】図3のA矢視図である。
【図5】図3のB矢視図である。
【図6】第1〜第4アンテナ14A〜14Dを側面視した説明図である。
【図7】第1〜第4アンテナ14A〜14Dを平面視した説明図である。
【図8】バット4によってボール2を打撃した際の第1乃至第4のドップラー信号SdA〜SdDの一例を示す線図である。
【図9】信号強度分布データ生成部32によって生成された第1乃至第4の信号強度分布データPA〜PDの一例を示す線図である。
【図10】ボール2と第1〜第4アンテナ14A〜14Dとを側面視した説明図である。
【図11】ボール2と第1〜第4アンテナ14A〜14Dとを平面視した説明図である。
【図12】左右角度θxと第1の値D1との相関関係を表す特性線kを示す図である。
【図13】ボール速度(移動速度Vα)をパラメータとし、横軸にスピン量SP、縦軸に打出角(上下角度θy)をとり、飛距離Dbが同一となる点を結んだコンター図である。
【図14】式(1)〜式(4)を示す図である。
【図15】落下点Pb、飛距離Db、左右ずれ量ΔDxの説明図である。
【図16】表示部22による評価データの表示例を示す説明図である。
【図17】仮想的な野球グランドBG上に設定された複数の領域A1、A2、A3、A4……、A11の説明図である。
【図18】第1乃至第4の速度VA〜VDと、ボール2の移動方向および移動速度との相関関係を示す相関式の設定処理を説明するフローチャートである。
【図19】ボール2を打撃した場合における球技用シミュレーション装置10の動作を説明するフローチャートである。
【図20】第1乃至第3のアンテナ12A、12B、12Cが設けられた構成を示す正面図である。
【図21】第2の実施の形態における単一の相関式で示される特性線kを示す図である。
【図22】(A)、(B)は図21の第1、第2領域Ga、Gbに区分された特性線ka、kbを示す図である。
【図23】第3の実施の形態におけるスピン量の計測原理を説明するための球技用シミュレーション装置10の機能ブロック図である。
【図24】マイクロコンピュータ21の構成を機能ブロックで示した球技用シミュレーション装置10のブロック図である。
【図25】ボール2のスピン量を検出する原理の説明図である。
【図26】打ち出されたボール2を球技用シミュレーション装置10で計測した場合におけるドップラー信号Sdをウェーブレット解析した結果を単純化して示す説明図である。
【図27】図26における時点t1におけるドップラー信号Sdを周波数解析することによって得た、周波数ごとの信号強度の分布を示す信号強度分布データPを示す説明図である。
【図28】ボール2が軟式野球用のボールである場合のボールの構成を示す断面図である。
【図29】ボール2が硬式野球用のボールである場合のボールの構成を示す断面図である。
【図30】信号強度分布データPの山の幅とスピン量SPとの相関関係を示す相関式の設定処理を説明するフローチャートである。
【図31】ボール2を打撃した場合における球技用シミュレーション装置10のスピン量SPの計測動作を説明するフローチャートである。
【図32】第3の実施の形態における球技用シミュレーション装置10Aの機能ブロック図である。
【図33】(A)は第2のアンテナ12Bの仮想軸LBに沿ってボール2を見た状態を示す図、(B)は第1のアンテナ12Aの仮想軸LAに沿ってボール2を見た状態を示す図である。
【図34】(A)は第2のアンテナ12Bの仮想軸LBに沿ってボール2を見た状態を示す図、(B)は第1のアンテナ12Aの仮想軸LAに沿ってボール2を見た状態を示す図である。
【図35】(A)は第2のアンテナ12Bの仮想軸LBに沿ってボール2を見た状態を示す図、(B)は第1のアンテナ12Aの仮想軸LAに沿ってボール2を見た状態を示す図である。
【図36】第1乃至第4の速度VA〜VDと、ボール2の移動方向、移動速度、スピン量との相関関係を示す相関式の設定処理を説明するフローチャートである。
【図37】ボール2を打撃した場合における球技用シミュレーション装置10の動作を説明するフローチャートである。
【図38】表示部22による評価データの表示例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の実施の形態の球技用シミュレータ装置について球技用シミュレーション方法と共に図面を参照して説明する。
本実施の形態では、球技用のボールが野球用のボールであり、球技用シミュレータ装置が、野球用のバット(物体)によって打撃されたボールのシミュレーションを行うものである場合について説明する。なお、球技用のボールは、テニスボールやサッカーボールなどの従来公知のさまざまな球技用ボールであってもよく、物体によって打撃されることで空間を移動するボールであればよい。
【0010】
図1に示すように、本実施の形態の球技用シミュレーション装置10は、第1乃至第4のアンテナ12A、12B、12C、12Dと、第1乃至第4のドップラーセンサ14A、14B、14C、14Dと、マイク16と、トリガ信号発生部18と、計測シミュレーション部20と、表示部22と、操作部24などを含んで構成されている。
本実施の形態では、第1乃至第4のアンテナ12A、12B、12C、12Dと第1乃至第4のドップラーセンサ14A、14B、14C、14Dとは後述するケース26(図3)に収容保持されている。
また、トリガ信号発生部18と、計測シミュレーション部20と、表示部22と、操作部24とは、不図示の筐体に組み込まれている。
第1乃至第4のドップラーセンサ14A、14B、14C、14Dと計測シミュレーション部20とは不図示の接続ケーブルを介して接続され、マイク16と計測シミュレーション部20とは不図示の接続ケーブルを介して接続されている。
なお、図1において符号2はボールとしての野球用のボール、4は野球用のバットを示す。
【0011】
第1乃至第4のアンテナ12A〜12Dは、第1乃至第4のドップラーセンサ14A〜14Dから供給される送信信号に基づいて送信波W1としてのマイクロ波をボール2に向けて送信すると共に、ボール2で反射された反射波W2を受信して受信信号を第1乃至第4のドップラーセンサ14A〜14Dに供給するものである。
より詳細には、第1乃至第4のアンテナ12A〜12Dは、指向性を有し、送信波W1を送信すると共に、ボール2で反射された反射波W2を受信して受信信号を生成するものであり、互いに離間して配置されている。
本実施の形態では、第1乃至第4アンテナ12A〜12Dは同形同大の指向性アンテナで構成され、このような指向性アンテナとしてホーンアンテナを使用している。
指向性アンテナとしてホーンアンテナ以外のパラボラアンテナ、パッチアンテナなどの従来公知のさまざまな指向性アンテナを使用可能であるが、ホーンアンテナは構成が簡素であり比較的安価であることからコストを抑制する上で有利である。
【0012】
図3は第1乃至第4のアンテナ12A〜12Dの構成を示す正面図、図4は図3のA矢視図、図5は図3のB矢視図である。
図3乃至図5に示すように、第1乃至第4アンテナの12A〜12Dは、ケース26に収容保持されている。
ケース26は、後板2602と、上下左右の側板2604A、2604B、2604C、2604Dと、脚部2606とを含んで構成されている。
後板2602は矩形板状を呈し、上下の辺を水平方向と平行させ、上方に至るほど後方に傾斜するように設けられている。
上下左右の側板2604A〜2604Dは、後板2602の上下左右の辺から起立され、各側板2604A〜2604Dの前縁により矩形状の開口が形成されている。
脚部2606は、下部の側板2604Bの下面中央に設けられ地面や床面に設置される。
第1乃至第4のアンテナ12A〜12Dは、前記の開口を介して前方を向いた状態で後板2602の前面に取着され、後板2602と側板2604A〜2604Dとで囲まれた空間に収容されている。第1乃至第4のアンテナ12A〜12Dの前部は、各側板2604A〜2604Dの前縁よりも後方に位置している。
前記開口は、送信波W1および反射波W2の透過が可能な材料で形成された図示しないカバーによって覆われており、第1乃至第4のアンテナ12A〜12Dの防塵および保護が図られている。
本実施の形態では、図3に示すように正面から見て第1乃至第4のアンテナ12A〜12Dは後板2602の4つの角部近傍に配置されている。すなわち、後板2602の右下寄りの箇所に第1のアンテナ12Aが配置されている。右上寄りの箇所に第2のアンテナ12Bが配置されている。左下寄りの箇所に第3のアンテナ12Cが配置されている。左上寄りの箇所に第4のアンテナ12Dが配置されている。
【0013】
ここで、第1乃至第4のアンテナ12A〜12Dのそれぞれの利得が最大となる方向に沿って延在する直線を各アンテナの指向方向を示す第1乃至第4の仮想軸LA、LB、LC、LDとする。
図3、図4に示すように、側面視した状態で第1、第2のアンテナ12A、12Bは鉛直方向に間隔dV(第1の間隔)をおいて配置され、第1、第2の仮想軸LA、LBが単一の鉛直平面上を延在している。
本実施の形態では、第2の仮想軸LBが水平方向に延在し、かつ、第1の仮想軸LAが水平方向に対して上方に6度傾斜した方向に延在している。したがって、第1、第2の仮想軸LA、LBが交差するように配置されている。
第3、第4のアンテナ12C、12Dも、第1、第2のアンテナ12A、12Bと同様に鉛直方向に間隔dV(第1の間隔)をおいて配置され、第3、第4の仮想軸LC、LDが単一の鉛直平面上を延在している。
本実施の形態では、第4の仮想軸LDが水平方向に延在し、かつ、第3の仮想軸LCが水平方向に対して上方に6度傾斜した方向に延在している。したがって、第3、第4の仮想軸LC、LDが交差するように配置されている。
【0014】
図4、図5に示すように、平面視した状態で、第2、第4のアンテナ12B、12Dは、水平方向に間隔dH(第2の間隔)をおいて配置され、第2、第4の仮想軸LB、LDが単一の水平面上を延在している。
本実施の形態では、第2、第4のアンテナ12B、12Dの仮想軸LB、LDが前後方向に対してそれぞれ内方に4度傾斜した方向に延在している。したがって、第2、第4の仮想軸LB、LDが交差するように配置されている。
第1、第3のアンテナ12A、12Cは、水平方向に間隔dH(第2の間隔)をおいて配置されている。
第1、第3の仮想軸LA、LCも第2、第4の仮想軸LB、LDと同様に前後方向に対してそれぞれ内方に4度傾斜した方向に延在している。したがって、第1、第3の仮想軸LA、LCが交差するように配置されている。
【0015】
図6、図7に示すように、本実施の形態では、地面Gに載置されたホームベース6上の空間、例えば、ストライクゾーンに向けてトスされたボール2を人がバット4で打撃するものとする。
したがって、ボール2をバット4が打撃する位置は、ストライクゾーンにおいて水平方向および鉛直方向にわたってある程度の範囲にばらつく。
以下、ストライクゾーンに相当する空間を打撃領域Zhということにする。
第1乃至第4のアンテナ12A〜12Dは、ボール2の移動方向において打撃領域Zhよりも後方の箇所に設けられている。
図6に示すように、側面視した状態で第1、第2の仮想軸LA、LBが交差すると共に、第3、第4の仮想軸LC、LDが交差している。
図7に示すように、平面視した状態で第1、第3の仮想軸LA、LCが交差すると共に、第2、第4の仮想軸LB、LDが交差している。
また、平面視した状態で、左右方向において第1、第3のアンテナ12A、12C(第2、第4のアンテナ12B、12D)の間隔dHの中心を通り水平方向に延在する仮想線CL上に打撃領域Zhにおいて基準位置O(あるいは原点O)を設定する。
基準位置Oは、ホームベース6の中心を通る鉛直線上におけるストライクゾーンを規定する上限位置と下限位置との中点とする。
本実施の形態では、図6、図7に示すように、実際に基準位置Oから打撃されたボール2の軌跡のばらつきを考慮して、上述した各仮想軸が交差する点を基準位置Oよりも前方の位置に設定した。
このようにすることで、側面視した状態で、第1、第2のアンテナ12A、12Bのそれぞれから送信される送信波W1が重なる領域と、第3、第4のアンテナ12C、12Dのそれぞれから送信される送信波W1が重なる領域とが、実際に打撃されたボール2の移動軌跡と重なる範囲を上下方向にわたって広く確保する上で有利となる。図6において送信波W1が重なる領域をハッチングで示す。
また、このようにすることで、平面視した状態で、第1、第3のアンテナ12A、12Cのそれぞれから送信される送信波W1が重なる領域と、第2、第4のアンテナ12B、12Dのそれぞれから送信される送信波W1とが、実際に打撃されたボール2の移動軌跡と重なる範囲を左右方向にわたって広く確保する上で有利となる。図7において送信波W1が重なる領域をハッチングで示す。
したがって、打撃領域Zhにおいて野球用のバット4で打撃されたボール2の移動方向が上下方向あるいは左右方向にわたって多少ばらついたとしても、移動するボール2を前記の送信波W1が重なる領域内で確実に捉える上で有利となる。言い換えると、ボール2に対して第1乃至第4のアンテナ12A〜12Dから送信波W1を確実に当てると共に、ボール2で反射された反射波W2を第1乃至第4のアンテナ12A〜12Dによって確実に受信する上で有利となり、打撃直後のボール2の移動方向、移動速度(初速)の計測を確実に行う上で有利となる。
【0016】
第1乃至第4ドップラーセンサ14A、14B、14C、14Dは、ケース26に収容保持されている。
図1に示すように、第1乃至第4ドップラーセンサ14A〜14Dは、第1乃至第4アンテナ12A〜12Dのそれぞれに送信信号を供給するものである。また、第1乃至第4アンテナ12A〜12Dのそれぞれから供給される受信信号に基づいてドップラー周波数Fdを有する第1乃至第4ドップラー信号SdA、SdB、SdC、SdDを時系列データとして生成するものである。
ドップラー信号Sdとは、前記送信信号の周波数F1と前記受信信号の周波数F2との差分の周波数F1−F2で定義されるドップラー周波数Fdを有する信号である。
ドップラーセンサ14A〜14Dは、市販されている種々のものが使用可能である。
なお、前記の送信信号としては、例えば、24GHzのマイクロ波が使用可能であり、ドップラー信号Sdを得られるものであれば送信信号の周波数は限定されない。
【0017】
マイク16は、ボール2が野球用のバット4によって打撃された際に発生する打撃音を収音し音声信号を検出するものである。
トリガ信号発生部18は、マイク16によって検出された音声信号の振幅が予め定められたしきい値を上回ったときに、トリガ信号trgを生成して計測シミュレーション部20に供給するものである。
トリガ信号trgは、計測シミュレーション部20に対して後述するデータ処理の開始を指示するものである。
なお、上述したようにトリガ信号発生部18が単に打撃音に応じてトリガ信号trgを生成するものである場合、球技用シミュレーション装置10の設置環境によっては以下の不都合が生じることが懸念される。
すなわち、球技用シミュレーション装置10の設置環境が例えば複数の打席を備える場合、球技用シミュレーション装置10の測定対象となる打席以外の周囲の打席の打撃音によってもトリガ信号trgが生成され、球技用シミュレーション装置10の誤動作が発生することが懸念される。
したがって、本実施の形態では、以下のように構成することで上記誤動作の防止を図っている。
トリガ信号発生部18を、マイク16からの音声信号に加えて、各ドップラーセンサ14A〜14Dからのドップラー信号SdA〜SdDを入力する。
そして、トリガ信号発生部18は、ドップラー信号SdA〜SdDの少なくとも1つ以上の信号を受信し、かつ、打撃音の音声信号が予め定められたしきい値を上回ったときに、トリガ信号trgを生成して計測シミュレーション部20に供給する。この場合、当初発生するドップラー信号SdA〜SdDは野球用のバット4の動きを検出したものとなる。
したがって、トリガ信号発生部18は、バット4の動きと打撃音の両方でトリガ信号trgを生成するため、球技用シミュレーション装置10の誤動作を的確に防止する上で有利となる。
トリガ信号発生部18はトリガ信号trgを生成できれば、マイク16以外のセンサを用いても良い。例えば、予め定められた特定の位置(例えば基準位置O)を通過する野球用のバット4を検出する光センサを設け、該光センサの検出信号に基づいてトリガ信号発生部18がトリガ信号trgを生成するなど任意である。しかしながら、光センサは設置する位置や方向を厳密に調整する必要があることから、本実施の形態のようにマイク16を用いる方が設置作業の簡素化を図る上で有利となる。
【0018】
計測シミュレーション部20は、第1乃至第4のドップラーセンサ14A〜14Dから供給される第1乃至第4のドップラー信号SdA〜SdDを入力して演算処理を行うことにより、ボール2の初期特性値としての移動方向および移動速度を算出するものである。
また、計測シミュレーション部20は、初期特性値に基づいてボール2の飛距離を算出すると共に、算出された飛距離に基づいてボール2の弾道を算出し、飛距離および弾道を含むデータに基づいて打撃の評価を行う評価データを生成するものである。
【0019】
本実施の形態では、計測シミュレーション部20は、マイクロコンピュータ21によって構成されている。
マイクロコンピュータ21は、CPU21Aと、不図示のインターフェース回路およびバスラインを介して接続されたROM21B、RAM21C、インターフェース21D、表示用ドライバ21Eなどを含んで構成されている。
ROM21BはCPU21Aが実行するボール2の初期特性値、飛距離、落下位置、弾道、評価データを算出あるいは生成するための制御プログラムなどを格納し、RAM21Cはワーキングエリアを提供するものである。
インターフェース21Dは、第1乃至第4のドップラー信号SdA〜SdDを入力してCPU21Aに供給し、また、操作部24からの操作信号を受け付けてCPU21Aに供給するものである。
表示用ドライバ21EはCPU21Aの制御に基づいて表示部22を駆動するものである。
【0020】
図2はマイクロコンピュータ21の構成を機能ブロックで示した球技用シミュレーション装置10のブロック図である。
マイクロコンピュータ21は、機能的には、蓄積部30と、信号強度分布データ生成部32と、速度演算部34と、移動方向演算部36と、移動速度演算部38と、評価用特性値演算部40と、評価データ生成部42と、打撃判定部44を含んで構成されている。
また、蓄積部30と、信号強度分布データ生成部32と、速度演算部34と、移動方向演算部36と、移動速度演算部38と、評価用特性値演算部40と、評価データ生成部42と、打撃判定部44は、CPU22Aが前記制御プログラムを実行することで実現されるものであるが、これらの部分は、回路等のハードウェアで構成されたものであってもよい。
【0021】
蓄積部30は、第1乃至第4のドップラー信号SdA〜SdDと、トリガ信号trgを予め定められたサンプリング周期で時間経過に従って順番に蓄積するものである。本実施の形態では、CPU21Aが第1乃至第4のドップラー信号SdA〜SdDとトリガ信号trgを前記サンプリング周期でサンプリングしてRAM21Cに第1乃至第4のドップラー信号SdA〜SdDのサンプリングデータおよびトリガ信号trgのサンプリングデータとして格納する。
蓄積部30は、例えば、球技用シミュレーション装置10の電源が投入されると同時にサンプリング動作を開始する。
図8は野球用のバット4によってボール2を打撃した際の第1乃至第4のドップラー信号SdA〜SdDの一例を示す線図であり、横軸に時間t(sec)、縦軸に振幅(任意単位)をとっている。
図8において、初めの大きな振幅を呈する波形部分が野球用のバット4によって生じるドップラー信号の部分を示し、その後に続く波形部分が打撃されたボール2によって生じるドップラー信号の部分を示している。
【0022】
信号強度分布データ生成部32は、蓄積部30に蓄積された第1乃至第4のドップラー信号SdA〜SdDのサンプリングデータを周波数解析(連続FFT解析、あるいは、ウェーブレット解析)することによって信号強度分布データを生成するものである。
言い換えると、信号強度分布データ生成部32は、第1乃至第4のドップラーセンサ14A〜14Dのそれぞれから得られた第1乃至第4のドップラー信号SdA〜SdDを周波数解析することにより周波数ごとの信号強度の分布を示す第1乃至第4の信号強度分布データを生成する。
本実施の形態では、信号強度分布データ生成部32は、蓄積部30に蓄積されたトリガ信号trgに基づいて、蓄積部30に蓄積された時系列データである第1乃至第4のドップラー信号SdA〜SdDのサンプリングデータを予め定められた区間に特定して第1乃至第4の信号強度分布データの生成を実施する。ここで、第1乃至第4のドップラー信号SdA〜SdDのサンプリングデータの区間は単一のトリガ信号trgに基づいて同期して特定される。
言い換えると、信号強度分布データ生成部32は、垂れ流し方式で蓄積されている各ドップラー信号SdA〜SdDのサンプリングデータのうち、ボール2が打撃された後の区間におけるサンプリングデータを特定して第1乃至第4の信号強度分布データの生成を実施する。
【0023】
サンプリングデータを予め定められた区間に特定する方法としては以下の方法が例示される。
すなわち、信号強度分布データ生成部32は、トリガ信号trgの検出時点を基準時点として、基準時点から数えてa個目までのサンプリングデータを除外し、a+1個目からb個目(a<b)までのサンプリングデータを特定して第1乃至第4の信号強度分布データの生成を実施する。
この場合、a+1個目からb個目(a<b)までのサンプリングデータに、野球用のバット4による影響を受けたデータが含まれないように、上記の数値a、bを設定する。
数値a,bは、実際にバット6がスウィングされた場合の野球用のバット4のスピードのばらつきを考慮して設定すればよい。
あるいは、トリガ信号trgの検出時点を基準時点として、経過時間に基づいて野球用のバットによる影響を受けたデータが含まれないように、サンプリングデータを予め定められた区間に特定してもよい。
また、上記の数値a、bの設定は、基準位置Oに対してボール2が約1m移動した時点前後におけるサンプリングデータが得られるにように設定される。この理由は、野球用のバット4で打撃されたボール2が1m前後移動した時点における移動速度の変化がほぼ無視でき、また、ボール2がバット4の陰になるなどのバット4による影響を受けることを回避できるからである。
図9は信号強度分布データ生成部32によって生成された第1乃至第4の信号強度分布データPA〜PDの一例を示す線図であり、横軸に周波数f(Hz)、縦軸に信号強度P(任意単位)を取っている。
図9において、周波数fが低い領域で信号強度Pが高くなっている部分は、野球用のバット4による反射波W2に対応しており、その後に続く信号強度の山の部分が打撃された野球用のボール2による反射波W2に対応している。
【0024】
速度演算部34は、第1乃至第4の信号強度分布データPA〜PDのそれぞれに基づいて、ボール2の移動速度に対応するドップラー周波数成分を検出し、それら検出したドップラー周波数成分に基づいて第1乃至第4の速度V1〜V4を算出するものである。
各信号強度分布データPA〜PDからドップラー周波数成分を検出する方法としては以下の手順が例示される。
(1)第1乃至第4の信号強度分布データPA〜PDのそれぞれについて移動平均を取ることによってノイズの影響を抑制した信号強度分布データを得る。
(2)移動平均を取った信号強度分布データにおいて信号強度のピーク値、あるいは、信号強度の山の中央値に対応する周波数をドップラー周波数成分(ドップラー周波数)として検出する。
なお、ドップラー周波数成分の検出方法は、各信号強度分布データPA〜PDに含まれるノイズの影響を抑制し、ドップラー周波数成分を正確かつ安定して検出できればよいのであり、上記の手順に限定されるものではない。
【0025】
ここで、ボール2の速度の計測原理について説明する。
従来から知られているように、ドップラー周波数Fdは式(1)で表される。
Fd=F1−F2=2・V・F1/c (1)
ただし、V:ボール2の速度、c:光速(3・10m/s)
したがって、式(1)をVについて解くと、(2)式となる。
V=c・Fd/(2・F1) (2)
すなわち、ボール22の速度Vは、ドップラー周波数Fdに比例することになる。
したがって、ドップラー信号Sdからドップラー周波数Fdの周波数成分を検出し、検出したドップラー周波数成分から式(2)に基づいてボール2の速度Vを求めることができる。
ところで、式(2)によって得られるボール2の移動速度は、アンテナの指向性を示す仮想軸と一致する方向の速度成分である。
したがって、ボール2の移動軌跡がアンテナの指向性を示す仮想軸に対して外れるほど式(2)によって得られるボール2の移動速度の誤差が増大する傾向となる。
そこで、本発明では、第1乃至第4のアンテナ12A〜12Dを用いて得られた第1乃至第4の速度VA〜VDと、実測されたボール2の移動方向との間に相関関係があり、また、それら第1乃至第4の速度VA〜VDと、実測されたボール2の移動速度との間に相関関係があることに着目した。
すなわち、予め上述した2つの相関関係を取得しておけば、それら2つの相関関係に基づいて第1乃至第4の速度VA〜VDからボール2の移動方向および移動速度を求めることが可能となる。
【0026】
移動方向演算部36は、予め得られている第1乃至第4の速度VA〜VDと実測されたボール2の移動方向との相関関係に基づいて、第1乃至第4の速度VA〜VDから移動方向を算出するものである。
本実施の形態では、ボール2の移動方向を次のように定義する。
図10、図11に示すように、基準位置Oを通る仮想線CLを含む基準鉛直面Pvと、基準位置Oを通り基準鉛直面Pvと直交する基準水平面Phとを設定する。
言い換えると、予め定められた基準位置Oを通り水平方向に延在する仮想線CLを含み鉛直方向に延在する平面を基準鉛直面Pvとする。基準位置Oを通り基準鉛直面Pvと直交する平面を基準水平面Phとする。
ボール2の移動軌跡を基準鉛直面Pvに投影した場合に投影した移動軌跡と基準水平面Ph(仮想線CL)とがなす角度を上下角度θyとする。
ボール2の移動軌跡を基準水平面Phに投影した場合に投影した移動軌跡と基準鉛直面Pvとがなす角度を左右角度θxとする。
ボール2の移動方向を上下角度θyと左右角度θxとで定義する。
【0027】
本実施の形態では、鉛直方向において間隔dVをおいて配置された2つのアンテナを用いて実測して得た2つの速度の差分と、実測して得たボール2の上下角度θyとの相関関係に基づいて上下角度θyを算出する。
より詳細には、第1、第2のアンテナ12A、12Bを用いて実測して得た第1、第2の速度VA、VBの差分ΔVAB=VA−VBと第3、第4のアンテナ12C、12Dとを用いて得た第3、第4の速度VC、VDの差分ΔVCD=VC−VDとの平均値(ΔVAB+ΔVCD)/2を、第1乃至第4の速度VA〜VDの平均値ΔVAVEで除算した第1の値D1=((ΔVAB+ΔVCD)/2)/ΔVAVEを算出する。
また、予め実測して得た第1の値D1と、実測して得たボール2の上下角度θyとの相関関係に基づいて、第1の値D1から上下角度θyを算出する。
このように2組のアンテナを用いて得た2つの速度の差分の平均値から上下角度θyを算出することにより上下角度θyの値をより精度よく安定して求める上で有利となる。
【0028】
また、本実施の形態では、水平方向において間隔dHをおいて配置された2つのアンテナを用いて実測して得た2つの速度の差分と、実測して得たボール2の左右角度θxとの相関関係に基づいて左右角度θxを算出する。
より詳細には、第1、第3のアンテナ12A、12Cを用いて得た第1、第3の速度VA、VCの差分ΔVAC=VA−VCと第2、第4のアンテナ12B、12Dとを用いて得た第2、第4の速度VB、VDの差分ΔVBD=VB−VDとの平均値(ΔVAC+ΔVBD)/2を、第1乃至第4の速度VA〜VDの平均値ΔVAVEで除算した第2の値D2=((ΔVAC+ΔVBD)/2)/ΔVAVEを算出する。
また、実測して得た第2の値D2と、実測して得たボール2の左右角度θxとの相関関係に基づいて、第2の値D2から左右角度θxを算出する。
このように2組のアンテナを用いて得た2つの速度の差分の平均値から左右角度θxを算出することにより左右角度θxの値をより精度よく安定して求める上で有利となる。
【0029】
移動速度演算部38は、予め得られている第1乃至第4の速度VA〜VDと実測されたボール2の移動速度Vαとの相関関係に基づいて、第1乃至第4の速度VA〜VDから移動速度Vαを算出するものである。
本実施の形態では、後述するように、予め得られている第1乃至第4の速度VA〜VDの平均値と、実測されたボール2の移動速度Vαとの相関関係に基づいて移動速度Vαを算出する。
このように4つのアンテナを用いて得た第1乃至第4の速度VA〜VDの平均値から野球用のボールの移動速度Vαを算出することにより移動速度Vαの値をより精度よく安定して求める上で有利となる。
なお、本明細書において、ボール2の移動速度Vαは、ボール2の移動方向に沿ったボール2の速度、すなわちボール2の3次元速度をいう。
【0030】
次に、(1)実測して得た第1乃至第4の速度VA〜VDと実測して得たボール2の移動方向との相関関係と、(2)実測して得た第1乃至第4の速度VA〜VDと実測して得たボール2の移動速度との相関関係の取得について説明する。
【0031】
まず、専用のボール打ち出し装置(ピッチングマシン)によって基準位置Oに位置するボール2を、さまざまな速度、方向にて打ち出す。言い換えると、左右角度θx、上下角度θy、移動速度Vαを異ならせて発射する。
そして、ボールの移動方向および移動速度を高精度に計測可能な基準計測器によってボール2の左右角度θx、上下角度θy、移動速度Vαを計測し、左右角度θx、上下角度θy、移動速度Vαの実測データを取得する。
このような基準計測器として、例えば、特許第4104384号に開示されているような従来公知のさまざまな測定装置が使用可能である。
また、左右角度θx、上下角度θy、移動速度Vαの計測と同時に、本実施の形態の球技用シミュレーション装置10を用いることにより、速度演算部34によって第1乃至第4の速度VA、VB、VC、VDを取得する。すなわち、左右角度θx、上下角度θy、移動速度Vαの実測データに対応する第1乃至第4の速度VA、VB、VC、VDを取得する。
【0032】
(1)実測して得た第1乃至第4の速度VA〜VDと実測して得たボール2の移動方向との相関関係については以下のように求める。
上下角度θyの実測データと、第1乃至第4の速度VA、VB、VC、VDから算出された第1の値D1との相関関係に基づいて上下角度θy算出用の相関式(回帰式)を求める。なお、球技用シミュレーション装置10は、相関式の算出を行う機能を備える必要はなく、相関式の算出は、球技用シミュレーション装置10とは別に設けられたコンピュータを用いて行うなど任意である。
【0033】
言い換えると、上下角度θyと、第1の値D1との関係を離散的に測定したデータを取得する。そして、取得したデータを従来公知の最小二乗法などを用いて回帰分析することによって上下角度θyを第1の値D1の関数(多項式)によって表わした相関式を求める。すなわち、このようにして求められた相関式によって上下角度θyと第1の値D1との関係を示す特性線を得ることができる。
同様に、左右角度θxの実測データと、第1乃至第4の速度VA、VB、VC、VDから算出された第2の値D2との相関関係に基づいて左右角度θx算出用の相関式(回帰式)を求める。
言い換えると、左右角度θxと、第2の値D2との関係を離散的に測定したデータを取得する。そして、取得したデータを従来公知の最小二乗法などを用いて回帰分析することによって左右角度θxを第2の値D2の関数(多項式)によって表わした相関式を求める。すなわち、このようにして求められた相関式によって左右角度θxと第2の値D2との関係を示す特性線を得ることができる。
したがって、これら2つの相関式を用いることにより、第1乃至第4の速度VA、VB、VC、VDから左右角度θxおよび上下角度θyを求めることが可能となる。
本実施の形態では、移動方向演算部36は上下角度θy算出用の相関式および左右角度θx算出用の相関式を用いることで第1乃至第4の速度VA、VB、VC、VDから左右角度θxおよび上下角度θyをボール2の移動方向として算出する。
したがって、本実施の形態では、移動方向演算部36による移動方向の算出は、予め実測され得られている第1乃至第4の速度VA〜VDと予め実測され得られているボール2の移動方向との相関関係を示す移動方向算出用の相関式に基づいてなされる。
なお、上記のような相関式に代えて、相関式によって示される特性線のデータを左右角度θx算出用のマップとしてあるいは上下角度θy算出用のマップとして記憶しておき、各マップを用いて左右角度θxおよび上下角度θyを算出してもよい。その場合にはそれらマップをマイクロコンピュータのメモリ、例えば、ROMに設けるなど任意である。
【0034】
図12は、左右角度θxと第1の値D1との相関関係を表す特性線kを示す図である。
横軸は第1の値D1を示し、縦軸は左右角度θxを示している。記号●は離散的に計測された左右角度θxと第1の値D1とのデータを示している。
特性線kが左右角度と第1のデータD1との相関関係を示しており、特性線kを示す相関式(回帰式)は、例えば、3次の多項式で示されている。
なお、上下角度θyについても図12と同様の特性線が算出される。
【0035】
また、本実施の形態では、第1の値D1、第2の値D2を算出するために、2つの速度の差分である以下の4つのデータを用いた。
(1)第1、第2の速度VA、VBの差分ΔVAB=VA−VB
(2)第3、第4の速度VC、VDの差分ΔVCD=VC−VD
(3)第1、第3の速度VA、VCの差分ΔVAC=VA−VC
(4)第2、第4の速度VB、VDの差分ΔVBD=VB−VD
しかしながら、上記4つのデータに代えて以下に示す2つの速度の比である以下の4つのデータを用いても、第1の値D1と上下角度θy、上下速度Vyとの相関関係、第2の値D2と左右角度θx、左右速度Vxとの相関関係を得ることができ、したがって、上記(1)〜(4)の値に代えて以下の(5)〜(8)の値を用いてもよい。
(5)第1、第2の速度VA、VBの比RVAB=VA/VB
(6)第3、第4の速度VC、VDの比RVCD=VC/VD
(7)第1、第3の速度VA、VCの比RVAC=VA/VC
(8)第2、第4の速度VB、VDの比RVBD=VB/VD
【0036】
(2)実測して得た第1乃至第4の速度VA〜VDと実測して得たボール2の移動速度との相関関係については以下のように求める。
第1乃至第4の速度VA、VB、VC、VDの平均値Vave=(VA+VB+VC+VD)/4を算出する。
基準測定器で計測した移動速度Vαの実測データと、平均値Vaveとの相関関係に基づいて移動速度Vα算出用の相関式(回帰式)を求める。
言い換えると、移動速度Vαと、平均値Vaveとの関係を離散的に測定したデータを取得する。そして、取得したデータを従来公知の最小二乗法などを用いて回帰分析することによって移動速度Vαを平均値Vaveの関数(多項式)によって表わした相関式を求める。すなわち、このようにして求められた相関式によって移動速度Vαと平均値Vaveとの関係を示す特性線を得ることができる。
したがって、このようにして求めた相関式を用いることにより、第1乃至第4の速度VA、VB、VC、VDから移動速度Vαを求めることが可能となる。
本実施の形態では、移動速度演算部38は上記の相関式を用いることで第1乃至第4の速度VA、VB、VC、VDからボール2の移動速度Vαを算出する。
したがって、本実施の形態では、移動速度演算部38による移動速度の算出は、予め実測され得られている第1乃至第4の速度VA〜VDと予め実測され得られているボール2の移動速度との相関関係を示す移動速度算出用の相関式に基づいてなされる。
なお、移動速度Vαの場合も、上記のような相関式に代えて、相関式によって示される特性線のデータを移動速度Vα算出用のマップとして記憶しておき、マップを用いて移動速度Vαを算出してもよく、それらマップをマイクロコンピュータのメモリ、例えば、ROMに設けるなど任意である。
なお、移動速度Vαについても図12と同様の特性線が算出される。
【0037】
なお、本実施の形態では、ボール2がバット4により打撃されたときのボール2の移動速度および移動方向を含む初期特性値を検出する初期特性値検出部が、第1乃至第4のアンテナ12A〜12Dと、第1乃至第4ドップラーセンサ14A〜14Dと、信号強度分布データ生成部32と、速度演算部34と、移動方向演算部36と、移動速度演算部38とによって構成されている。
【0038】
図2に戻って説明を続ける。
評価用特性値演算部40は、ボール2の移動速度および移動方向を含む初期特性値に基づいてボール2の飛距離を算出すると共に、算出された飛距離に基づいてボール2の弾道を算出するものである。
評価用特性値演算部40によるボール2の飛距離の算出は、例えば以下のように行われる。
専用のボール打ち出し装置(ピッチングマシン)によって基準位置Oに位置するボール2を、移動速度Vαとスピン量SPと上下角度θyとを異ならせて発射して飛距離Dbを実測する。
このようにして図13に示すようなコンター図が得られる。
図13は、ボール速度(移動速度Vα)をパラメータとし、横軸にスピン量SP、縦軸に打出角(上下角度θy)をとり、飛距離Dbが同一となる点を線(等高線)で結んだコンター図の一例である。
このようなコンター図を用いた場合、スピン量SPを特定することにより、ボール速度(移動速度Vα)と打出角(上下角度θy)とに基づいて飛距離Dbを特定することができる。
しかしながら、本実施の形態では、球技用シミュレーション装置10によってスピン量SPの計測を行わないため、評価用特性値演算部40は、例えば以下の(1)あるいは(2)に示すような方法で飛距離Dbを特定し、特定した飛距離Dbに対応してスピン量SPを特定することにする。
(1)コンター図からボール速度(移動速度Vα)と打出角(上下角度θy)とに基づいて得られた飛距離Dbのうち、最高値となる飛距離Dbを飛距離Dbとして特定する。
(2)コンター図からボール速度(移動速度Vα)と打出角(上下角度θy)とに基づいて得られた飛距離Dbの平均値を飛距離Dbとして特定する。
(1),(2)の何れの場合も、
このようなコンター図に相当するデータは、飛距離算出用のマップとして記憶しておき、マップを用いて飛距離Dbを算出し、それらマップをマイクロコンピュータのメモリ、例えば、ROMに設けるなど任意である。
評価用特性値演算部40は、ボール2の飛距離Dbを特定すると、この飛距離Dbと、左右角度θxと、上下角度θyとに基づいてボール2の弾道を算出し、弾道に基づいてボール2の落下位置を算出する。弾道の計算は、例えば、特開平2005−278797号公報に示されているように従来公知のさまざまな方法によって行うことができる。
【0039】
なお、評価用特性値演算部40によるボール2の飛距離Dbの算出は、以下のような運動方程式を用いて求めることも可能である。
飛翔しているボール2には、抗力D、揚力L、および重力mが作用する。このとき、水平(x)方向におけるボール2の運動方程式は図14の式(3)で表される。
また、垂直(y)方向におけるボール2の運動方程式は図14の式(4)で表される。ただし、θは打出角(上下角度θy)である。
また、抗力Dは図14の式(5)で、揚力Lは図14の式(6)で表される。
また、図14の式(5),式(6)のUは移動速度Vαであり、Cは抗力係数であり、Cは揚力係数であり、ρは空気密度である。
、Cはボール2の大きさや表面形状によって決定される。したがって、野球用のボール2が規格品であれば、一義的に決定することができる。
また、ρは例えば気温20℃、気圧1気圧(1.013kPa)における値を用いる。
したがって、質量m、打出角度θ、移動速度Vαが既知であり、式(5),式(6)から抗力D、揚力Lが求められるため、式(3)および式(4)を解くことによりボール2の飛距離Dbが算出されることになる。
評価用特性値演算部40は、飛距離Dbが得られたならば、上述と同様の手順でボール2の弾道を算出することができる。
【0040】
評価データ生成部42は、移動方向演算部36により算出された移動方向および移動速度演算部38により算出された移動速度を含む初期特性値と、評価用特性値演算部40によって算出された飛距離および弾道とを含むデータに基づいて打撃の評価を行う評価データを生成するものである。
評価データ生成部42は、評価データを表示部22に供給することで、図16に示すように、評価データが表示部22に表示される。
図16では、画面の上側に、野球グランドを示す画像と、評価データとしてのボール2の弾道を示す軌跡が複数の点p1,p2,p3、……で表示されている。
図中、符号HBはホームベース、符号BXはバッターボックス、符号FNは外野フェンス、符号STは外野スタンドを示す。
画面の下側に、評価データが表形式で表示される。
評価データは、打球スピード(移動速度)Vα(km/h)、上下打出角(上下角度θy)(°)、左右打出角(左右角度θx)(°)、スピン量SP(rpm)、飛距離Db(m)、左右ずれΔDx(m)であり、それら各数値が例えば、打撃回数分表示される。
また、評価データ生成部42は、上記各数値の平均値AVE、標準偏差STDも評価データとして算出して表示する。
打球スピードVαは、移動速度演算部38で算出された値である。
上下打出角(上下角度θy)、左右打出角(左右角度θx)は、移動方向演算部36で算出された値である。
スピン量SP(rpm)は、評価用特性値演算部40によって飛距離Dbを算出する際に特定されたスピン量である。
飛距離Dbは、図15に示すように、基準位置Oからボール2の落下点Pbまでの距離である。
左右ずれΔDxは、図15に示すように、ホームベース6からセンターに向かって延在する仮想線CL1から落下点Pbまでの距離である。
なお、落下点Pbは、評価用特性値演算部40によって弾道から算出される。
【0041】
打撃判定部44は、図17に示すように、仮想的な野球グランドBG上に複数の領域A1、A2、A3、A4……、A11を設定しておき、評価データ生成部42で生成された落下点Pbの位置がどの領域に該当するかに応じて、アウト、シングルヒット、2ベースヒット、3ベースヒット、ホームランといったゲームとしての評価を判定し、その判定結果を表示部22に表示させる。
また、打撃判定部44は、評価データとしてのボール2の弾道を示す軌跡を複数の点p1,p2,p3、……で表示させる。
上記複数の領域は、例えば、内野手や外野手の守備領域をアウトと判定する領域とし、守備領域を除く領域をヒットと判定する領域とし、ヒットと判定する領域をシングルヒット、2ベースヒット、3ベースヒットに分けて設定する。また、外野フェンスFNを超える領域(ファールとなる領域を除く)をホームランと判定する領域とする。
このようにアウトやヒットという評価を行うことでゲーム性を高めることができ、球技用シミュレーション装置10を使用する使用者に興味を与える上で有利となる。
また、想定される対戦相手の守備範囲、想定される状況における守備のシフトなどによって、アウトおよびヒットなどの領域の大きさや位置を変更させてもよい。このようにすると、球技用シミュレーション装置10を使用する使用者に興味を与える上でより一層有利となる。
【0042】
図1に戻って説明する。
表示部22は文字や画像を表示する表示画面を有している。このような表示部22として液晶表示装置など従来公知のさまざまな表示装置が使用可能である。
表示部22は、計測シミュレーション部20によって算出された評価データを前述したように表示画面に表示する。
【0043】
操作部24は、表示部22に表示される評価データの表示形態などを切り替えるための種々の操作入力を受け付けてCPU22Aに供給するものである。
【0044】
次に、球技用シミュレーション装置10の動作について図18、図19のフローチャートを参照して説明する。
まず、図18を参照して、第1乃至第4の速度VA〜VDと、ボール2の移動方向および移動速度との相関関係を示す相関式の設定について説明する。
まず、専用のボール打ち出し装置(ピッチングマシン)によって基準位置Oに位置するボール2を、左右角度θx、上下角度θy、移動速度Vαを異ならせて発射し、左右角度θx、上下角度θy、移動速度Vαを実測する(ステップS10)。
同時に、球技用シミュレーション装置10を用いて第1乃至第4の速度VA〜VDを計測する(ステップS12)。
次いで、球技用シミュレーション装置10とは別のコンピュータにより、第1乃至第4の速度VA〜VDに基づいて第1の値D1、第2の値D2を算出する(ステップS14)。
次いで、第1の値D1と上下角度θyとの相関関係を示す相関式を算出し(ステップS16)、第2の値D2と左右角度θxとの相関関係を示す相関式を算出する(ステップS18)。
次いで、第1乃至第4の速度VA〜VDに基づいて平均値Vaveを算出する(ステップS20)。
次いで、平均値Vaveと移動速度Vαとの相関関係を示す相関式を算出する(ステップS22)。
そして、ステップS16、S18、S22によって得られた3つの相関式を球技用シミュレーション装置10に設定する(ステップS24)。
【0045】
次に、専用のボール打ち出し装置(ピッチングマシン)によって基準位置Oに位置するボール2を、移動速度Vαとスピン量SPと上下角度θyとを異ならせて発射して飛距離Dbを実測する(ステップS26)。
次いで、球技用シミュレーション装置10とは別のコンピュータにより、前述した図13に示すようなコンター図に相当するデータを飛距離算出用のマップとして作成し、球技用シミュレーション装置10に設定する(ステップS28)。
【0046】
次に、図19を参照してボール2を打撃した場合における球技用シミュレーション装置10の動作について説明する。
予め図18の処理が実施され、球技用シミュレーション装置10に前記の相関式、飛距離算出用のマップが設定されているものとする。
まず、使用者は、ボール2の打ち出し方向においてボール2を打撃する大体の位置から例えば1.7m程度後方の箇所に、第1乃至第4のアンテナ12A〜12Dをボール2に向けてケース26を設置する。
ケース26は、例えば地面Gの上に載置すればよい。
これにより、第1乃至第4のアンテナ12A〜12Dから送出された送信波W1がボール2に当たり、反射波W2が第1乃至第4のアンテナ12A〜12Dに受信可能な状態となる。
使用者が操作部24を操作することにより、球技用シミュレーション装置10はボール2の移動方向および移動速度を計測するための計測モードに設定される(ステップS40)。
【0047】
計測モードに設定されると、第1乃至第4のドップラー信号SdA〜SdDとトリガ信号trgの蓄積部30へのサンプリングが開始される(ステップS42)。
ここで、使用者がバット6を把持してスウィングして野球用のバット4で、トスされたボール2を打ち出すと、打撃音がマイク16によって収音される。トリガ信号発生部18は、ドップラー信号SdA〜SdDの少なくとも1つ以上の信号を受信し、かつ、打撃音の音声信号が予め定められたしきい値を上回ったときに、トリガ信号trgを生成して計測シミュレーション部20に供給し、これによりトリガ信号trgが蓄積部30に供給される。
【0048】
信号強度分布データ生成部32は、蓄積部30にサンプリングされたトリガ信号trgの検出の有無を判定しており(ステップS44)、トリガ信号trgを検出しなければ、ステップS44を繰り返す。
信号強度分布データ生成部32は、トリガ信号trgを検出すると、トリガ信号trgの検出時点から予め定められた区間にわたる第1乃至第4のドップラー信号SdA〜SdDのサンプリングデータを特定する(ステップS46)。
そして、信号強度分布データ生成部32は、第1乃至第4の信号強度分布データPA〜PDを生成する(ステップS48)。
次いで、速度演算部34は、第1乃至第4の信号強度分布データPA〜PDから第1乃至第4の速度VA〜VDを算出する(ステップS50)。
次いで、移動方向検出部36は、第1の値D1、第2の値D2を算出し(ステップS52)、予め設定されている相関式から第1の値D1、第2の値D2に基づいて上下角度θy、左右角度θxを算出する(ステップS54)。
また、移動速度検出部38は、第1乃至第4の速度VA〜VDから平均値Vaveを算出し(ステップS56)、予め設定されている相関式から平均値Vaveに基づいて移動速度Vαを算出する(ステップS58)。
さらに、評価用特性値演算部40は、ボール2の移動速度および移動方向を含む初期特性値に基づいて飛距離算出用のマップからボール2の飛距離Dbを算出すると共に、算出された飛Db距離に基づいてボール2の弾道を算出する(ステップS60)。
【0049】
評価データ生成部42は、評価用特性値演算部40によって算出された飛距離および弾道を含むデータに基づいて前述した各種の評価データを生成し表示部22に表示させる(ステップS62)。
また、打撃判定部44は、評価データ生成部42で生成された落下点Pbの位置に基づいてゲームとしての評価を判定し、その判定結果を図17のように表示部22に表示させる(ステップS64)。
以上で一連の動作が終了する。
本実施の形態では、ステップS46〜S58が、球技用のボールが物体により打撃されたときのボールの移動速度および移動方向を含む初期特性値を検出する初期特性値検出工程に相当する。
また、ステップS60が、初期特性値に基づいてボールの飛距離を算出すると共に、算出された飛距離に基づいてボールの弾道を算出する評価用特性値演算工程に相当する。
また、ステップS62が、初期特性値、飛距離および弾道を含むデータに基づいて打撃の評価を行う評価データを生成する評価データ生成工程に相当する。
【0050】
次に、本実施の形態の球技用シミュレーション装置10の作用効果について説明する。
本実施の形態によれば、ボール2が物体により打撃されたときのボール2に向けて送信波W1を送信すると共に、ボール2から反射された反射波W2を受信するアンテナを複数個設け、予め得られている各アンテナを用いて計測された速度と移動方向および移動速度との実測値との相関関係に基づき、測定された各速度から移動方向および移動速度を算出し、これら移動速度および移動方向を含む初期特性値に基づいてボール2の飛距離を算出すると共に、算出された飛距離Dbに基づいてボール2の弾道を算出し、前記の初期特性値、飛距離Dbおよび弾道を含むデータに基づいて打撃の評価を行う評価データを生成するようにした。
したがって、撮像装置や光センサを用いた従来技術と比較して、ボールに送信波を送信しかつボールで反射された反射波を受信する空間を広く確保することができるため、ボールの移動方向および移動速度を検出できる範囲を大きく確保できる。
そのため、トスバッティングのように空中に放り投げられたボール2をバット4で打撃するといったように、打撃する位置がばらつく場合であっても、移動方向および移動速度を的確に検出でき、さまざまな球技のシミュレーションを的確に行う上で有利となる。
また、撮像装置や光センサを用いた従来技術では、ボール2の大きさ、打撃されたときのボール2の飛び具合(飛翔特性)が異なるような複数種類のボールを用いて計測しようとした場合は、撮像装置や光センサの設定を大きく変更しなくてはならない。
これに対して、本実施の形態では、ボール2に送信波を送信しかつボール2で反射された反射波を受信する空間を広く確保することができるため、そのような設定の変更が最小限で済み、さまざまな球技のシミュレーションを簡単に行うことができる。
【0051】
また、球技用シミュレーション装置10を製造する際、個々の球技用シミュレーション装置10毎に、図18で説明した工程を実施して、移動方向および移動速度に関する相関関係(相関式)を得て設定することで、球技用シミュレーション装置10によって計測される移動方向および移動速度の製造上のばらつきを抑制する上で有利となる。
また、相関関係に基づいて移動方向および移動速度を計測することから、移動方向および移動速度の精度を確保しつつ、球技用シミュレーション装置10の製造上の位置精度の許容差、具体的には、第1乃至第4のアンテナ12A、12B、12C、12Dの位置精度の許容差を緩和できるため、製造コストの低減を図る上で有利となる。
【0052】
また、本実施の形態では、第1乃至第4のアンテナ12A〜12Dのうち、第1、第2のアンテナ12A、12Bは互いに鉛直方向に間隔dVをおいて配置され、かつ、第3、第4のアンテナ12C、12Dは互いに鉛直方向に間隔dVをおいて配置され、第1、第3のアンテナ12A、12Cは互いに水平方向に間隔dHをおいて配置され、かつ、第2、第4のアンテナ12B、12Dは互いに水平方向に間隔dHをおいて配置されている。
そして、鉛直方向に間隔dVをおいて配置された2組のアンテナ12A、12Bと12C、12Dとを用いて得た2つの速度の差分の平均値から上下角度θy、上下速度Vyをそれぞれ算出し、水平方向に間隔dHをおいて配置された2組のアンテナ12A、12Cと、12B、12Dとを用いて得た2つの速度の差分の平均値から左右角度θx、左右速度Vxをそれぞれ算出するようにした。
言い換えると、上下角度θy、上下速度Vyを算出するための速度の差分をそれぞれ2つ得られ、また、左右角度θx、左右速度Vxを算出するための速度の差分をそれぞれ2つ得られる。そのため、それら2つの速度の差分の平均値を用いてボール2の角度および速度を算出できることから、ボール2の角度および速度を正確かつ安定して算出する上で有利となる。
また、2組のアンテナ12A、12Cと、12B、12Dとを設けたため、各アンテナとボール2との間に人や物体などの障害物が入るなどにより、一方の組のアンテナを用いた計測動作が正常になされなくなったとしても、他方の組みのアンテナを用いた計測動作が正常であれば、正常な組みのアンテナを用いた計測結果に基づいて、移動方向および移動速度を算出することができる。
したがって、2組のアンテナの一方が実質的に使用できない状態となっても残りの組みのアンテナを使用して計測を行うことができるため、障害物の影響を排除して移動方向および移動速度を計測でき有利となる。
【0053】
なお、図20に示すように、第1乃至第3のアンテナ12A、12B、12Cの3つのアンテナを設け、第1、第2のアンテナ12A、12Bを互いに水平方向に間隔dHをおいて配置し、第1、第3のアンテナ12A、12Cを鉛直方向に間隔dVをおいて配置する構成としてもよい。
この場合は、上下角度θy、上下速度Vyを算出するための速度の差分が1つ得られ、また、左右角度θx、左右速度Vxを算出するための速度の差分が1つ得られるので、実施の形態と同様に、ボールの角度および速度を算出することができる。
しかしながら、本実施の形態のようにすると、2つの速度の差分の平均値を用いてボールの角度および速度を算出できるので、ボールの角度および速度を正確かつ安定して算出する上でより有利となる。
【0054】
(第2の実施の形態)
次に第2の実施の形態について説明する。
第1の実施の形態では、図12に示すような特性線kを示す相関式(回帰式)を予め求めておき、相関式を用いて第1の値D1、第2の値D2、平均値Vaveから移動方向あるいは移動速度を算出した。
言い換えると、特性線kを示す相関式は、上下角度θy、左右角度θx、移動速度Vαのそれぞれについて1つずつ設定されている。
しかしながら、実際の相関関係においては、特性線kを示す相関式は複雑なものとなり、単一の相関式で特性線kを表すには限度がある。
そこで、特性線kを複数の領域に区分すると共に、各領域毎に異なる相関式を求めることが考えられる。このようにすると、特性線kを単一の相関式で示す場合と比較して、相関関係をより正確に示すことができ、したがって、上下角度θy、左右角度θx、移動速度Vαをより正確に算出する上で有利となる。
そこで、第2の実施の形態では、特性線kを複数の領域に区分すると共に、各領域毎に異なる相関式を求め、各相関式を用いて第1の値D1、第2の値D2、平均値Vaveから移動方向あるいは移動速度を算出するようにしたものである。
【0055】
以下では、図21、図22を参照して、第2の値D2と上下角度θyとの相関関係、相関式を例にとって説明する。
まず、図21に示すように、特性線kを示す単一の相関式(以下第1の相関式)を作成する。ここで、第1の相関式は、例えば、直線式のような単純な式でよい。第1の相関式を作成する場合も、第1の実施の形態と同様に、上下角度θyと、第2の値D2との関係を離散的に測定したデータを取得し、取得したデータを従来公知の最小二乗法などを用いて回帰分析することによって上下角度θyを第2の値D2の関数(多項式)によって表わした相関式を求めることでなされる。
そして、特性線kを上下角度θyの値に応じて複数の領域、例えば第1、第2領域Ga、Gbに区分する。
次いで、第1、第2領域Ga、Gbのそれぞれについて該当するデータを回帰分析することによって上下角度θyを第2の値D2の関数(多項式)によって表わした相関式(以下第2、第3の相関式という)を求める。
ここで、第2、第3の相関式は、例えば、3次式以上の高次の多項式である。
図22(A)、(B)は各領域Ga、Gbに区分された特性線ka、kbを示し、それぞれ第2、第3の相関式によって示される。
このようにして得られた第1乃至第3の相関式を移動方向演算部36に設定しておく。
【0056】
移動方向演算部36による移動方向の演算動作は次のようになされる。
まず、移動方向演算部36は、第1の値D1が算出されたならば、図21に示す第1の相関式を用いて上下角度θyを算出し、その上下角度θyが該当する領域が第1、第2領域Ga、Gbのうちの何れであるかを特定する。
次いで、移動方向演算部36は、特定された領域に対応する相関式を図22(A)、(B)に示される第2、第3の相関式のうちから特定し、特定した相関式を用いて第2の値D2から上下角度θyを算出する。
【0057】
なお、移動方向演算部36による左右角度θx、移動速度演算部38による移動速度Vαの演算についても上述と同様に第1、第2、第3の相関式が設定されており、同様に算出される。
上述の例では、特性線kを第1、第2領域Ga、Gbに区分した場合について説明したが、3つ以上の領域に区分してもよく、その場合にも、各領域に応じて相関式を設定することは同様である。
言い換えると、移動方向算出用の相関式は、移動方向の全域について作成された1つの1次処理用の相関式と、移動方向の全域が2つ以上の範囲に区分けされ、該区分けされた各範囲毎に作成された2つ以上の2次処理用の相関式とを含んで構成されている。
そして、移動方向演算部36による移動方向の算出は、1次処理用の相関式を用いて1回目の移動方向を算出し、2つ以上の範囲のうち、算出された1回目の移動方向が該当する範囲に対応する2次処理用の相関式を用いて2回目の移動方向を算出することによってなされる。
言い換えると、移動速度算出用の相関式は、移動速度の全域について作成された1つの1次処理用の相関式と、移動速度の全域が2つ以上の範囲に区分けされ、該区分けされた各範囲毎に作成された2つ以上の2次処理用の相関式とを含んで構成されている。
そして、移動速度演算部38による移動速度の算出は、1次処理用の相関式を用いて1回目の移動速度を算出し、2つ以上の範囲のうち、算出された1回目の移動速度が該当する範囲に対応する2次処理用の相関式を用いて2回目の移動速度を算出することによってなされる。
また、第2の実施の形態において、移動方向演算部36および移動速度演算部38以外の構成は第1の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0058】
第2の実施の形態によれば、ボール2の移動方向および移動速度を算出するために用いる相関式として、特性線の範囲を区分するための第1の相関式と、第1の相関式を用いて特定された特性線の範囲ごとに設定された第2、第3の相関式とを予め用意しておき、これら第1の相関式と、第2、第3の相関式とを用いて段階的にボール2の移動方向および移動速度を算出するようにした。
したがって、実測して得た第1乃至第4の速度V1〜V4と実測して得たボール2の移動方向との相関関係、あるいは、実測して得た第1乃至第4の速度V1〜V4と実測して得たボール2の移動速度との相関関係をより正確に反映させてボール2の移動方向および移動速度を算出できるため、ボール2の移動方向および移動速度をより正確に算出する上で有利となる。
また、アンテナ特性などの原因によって、第1乃至第4のアンテナ12A〜12Dから見て仮想軸LA〜LDに近い範囲でボール2を計測した場合(計測範囲の中心部で計測した場合)と、その範囲の周囲でボール2を計測した場合(計測範囲の端部で計測した場合)とで、算出される第1乃至第4の速度V1〜V4の値に傾向の違いが生じることが考えられる。
この場合、同一の移動方向および同一の移動速度を有するボール2を計測したとしても、計測範囲の中心部で計測した場合と、計測範囲の端部で計測した場合とで得られる移動方向および移動速度に違いが生じ、精度が低下することが懸念される。
しかしながら、上述のように複数の相関式を用いると、算出される第1乃至第4の速度V1〜V4の値に傾向の違いを解消でき、したがって、計測範囲の中心部で計測した場合と、計測範囲の端部で計測した場合とで得られる移動方向および移動速度の精度を高める上で有利となる。
【0059】
(第3の実施の形態)
次に第3の実施の形態について説明する。
第3の実施の形態は、球技用シミュレーション装置10によって、評価データとしてさらにボール2のスピン量SPおよび回転軸の傾きを算出するようにしたものである。
【0060】
まず、第3の実施の形態を説明する前に、1つのドップラーセンサ14を用いてスピン量SPを検出する原理について説明する。
図23は、ボール2のスピン量の検出原理を説明するための球技用シミュレーション装置10の構成を示すブロック図である。
なお、以下の実施の形態において第1の実施の形態と同様の部分、部材には同一の符号を付してその説明を省略し、あるいは、簡単に行う。
球技用シミュレーション装置10は、アンテナ12と、ドップラーセンサ14と、マイク16と、トリガ信号発生部18と、計測シミュレーション部20と、表示部22と、操作部24などを含んで構成されている。なお、図23ではドップラーセンサ14が1つ設けられている場合について説明する。
【0061】
計測シミュレーション部20は、ドップラーセンサ14から供給されるドップラー信号Sdを入力して演算処理を行うことにより、ボール2の移動速度およびスピン量を算出するものである。
計測シミュレーション部20は、マイクロコンピュータ21によって構成されている。
【0062】
図24はマイクロコンピュータ21の構成を機能ブロックで示した球技用シミュレーション装置10のブロック図である。
マイクロコンピュータ21は、機能的には、蓄積部30と、信号強度分布データ生成部32と、スピン量演算部46とを含んで構成されている。
また、スピン量演算部46は、CPU21Aが前記制御プログラムを実行することで実現されるものであるが、これらの部分は、回路等のハードウェアで構成されたものであってもよい。
【0063】
次に、ボール2のスピン量の計測原理について説明する。
図25はボール2のスピン量を検出する原理の説明図である。
ボール2の表面のうち、送信波W1の送信方向となす角度が90度に近い表面の部分である第1部分Aでは送信波W1が効率よく反射され、したがって、第1部分Aでは反射波W2の強度が高い。
一方、ボール2の表面のうち、送信波W1の送信方向となす角度が0度に近い表面の部分である第2部分B、第3部分Cでは送信波W1が効率よく反射されず、したがって、第2、第3部分B、Cでは反射波W2の強度が低い。
第2部分Bは、ボール2のスピンによって移動する方向とボール2の移動方向とが反対向きとなる部分である。
第3部分Cは、ボール2のスピンによって移動する方向とボール2の移動方向とが同じ向きとなる部分である。
【0064】
第1部分Aで反射される反射波W2に基づいて検出される速度を第1部分速度Va、第2部分Bで反射される反射波W2に基づいて検出される速度を第2部分速度Vb、第3部分Cで反射される反射波W2に基づいて検出される速度を第3部分速度Vcとする。
すると、以下の式が成立する。
Va=Vα (10)
Vb=Va−ωr (11)
Vc=Vb+ωr (12)
(ただし、Vαはボール2の移動速度、ωは角速度(rad/s)、rはボール2の半径)
したがって、原理的には、式(10)に基づいて第1部分速度Vaからボール2の移動速度Vαを算出でき、式(11)または式(12)に基づいて、第2、第3部分速度Vb,Vcから角速度ωが求められるので、角速度ωからスピン量を算出できることになる。
しかしながら、本例では、上記の式に基づいて移動速度Vα、スピン量を算出するのではなく、以下に説明するように、ドップラー信号Sdを周波数解析することによって周波数ごとの信号強度の分布を示す信号強度分布データPを生成し、この信号強度分布データPからスピン量を求めるようにした。
【0065】
図26は、打ち出されたボール2を球技用シミュレーション装置10で計測した場合におけるドップラー信号Sdをウェーブレット解析した結果を単純化して示す説明図である。
横軸は時間t(ms)、縦軸はドップラー周波数Fd(kHz)およびボール2の速度V(m/s)を示す。
このような線図は、例えば、ドップラー信号Sdをサンプリングしてデジタルオシロスコープに取り込んでデジタルデータに変換し、該デジタルデータをパーソナルコンピュータなどを用いてウェーブレット解析、あるいは、連続FFT解析することで得られる。
【0066】
図26に示す周波数分布において、ハッチングで示した部分はドップラー信号Sdの強度が大きく、実線で示した部分はドップラー信号Sdの強度がハッチングで示した部分よりも小さいことを示している。
したがって、符号DAで示す周波数分布は、信号強度が強く、第1部分速度Vaに対応する部分である。
符号DBで示す周波数分布は、周波数分布DAよりも信号強度が低く、第2部分速度Vbに対応する部分である。
符号DCで示す周波数分布は、周波数分布DAよりも信号強度が低く、第3部分速度Vcに対応する部分である。
【0067】
図27は図26における時点t1におけるドップラー信号Sdを周波数解析することによって得た、周波数ごとの信号強度の分布を示す信号強度分布データPを示す説明図である。
図27において横軸は速度V(m/s)、縦軸は信号強度Ps(任意単位)である。なお、横軸の速度Vはドップラー信号Sdの周波数に比例している。
図中細線は信号強度分布データPの実測値を表わし、太線は信号強度分布データPの実測値の移動平均を示す。
すなわち、信号強度分布データPの実測値は、測定時に含まれるノイズの影響を受けて大きく変動しているため、移動平均をとることによってノイズの影響を抑制した信号強度分布データPを得ている。
【0068】
以下移動平均によって表わされた信号強度分布データPについて説明する。
図27から明らかなように、信号強度分布データPは、信号強度Psが最大となる1つの最大値を有し、最大値から離れるほど信号強度が次第に低下しやがてゼロとなる単一の山形を呈している。
ここで、信号強度分布データPの山、すなわち、信号強度Psの最大値Dmaxが第1部分速度Vaの値に対応している。言い換えると、信号強度Psの最大値Dmaxが対応するドップラー周波数の値が第1部分速度Vaの値に対応している。
したがって、最大値Dmaxに対応するドップラー周波数が高いほど、第1部分速度Va、すなわち、ボール2の移動速度が高いことになる。
また、信号強度分布データPの山の幅は、第2部分速度Vbと第3部分速度Vcの差分ΔV(速度幅)に比例する。
したがって、第2部分速度Vbと第3部分速度Vcの差分ΔVが小さいほどスピン量が小さく、したがって、この差分ΔVがゼロならばスピン量もゼロとなる。また、第2部分速度Vbと第3部分速度Vcの差分ΔVが大きいほどスピン量が大きいことになる。
【0069】
ここで、第2部分速度Vbと第3部分速度Vcの差分ΔVは、式(11)、式(12)わかるように以下の式(13)で示され、すなわち、角速度ωに比例した値となる。
Vc−Vb=(Va+ωr)−(Va−ωr)=2ωr (13)
したがって、(13)式から明らかなように、信号強度分布データPの山の幅に基づいてスピン量を算出することができる。
ここで、山の幅は次のように定義することができる。
すなわち、信号強度分布データPの山の幅は、信号強度信号強度Psの閾値DtをDmax・N(ただし0<N<1)とした場合、信号強度分布データPのうち信号強度Psが閾値Dtとなる部分の幅とする。
図27では、Dt=Dmax・10%と、Dt=Dmax・50%とを例示しているが、閾値Dtは山の幅を安定して計測できる値に設定すればよい。
したがって、図27に示すように、ドップラー信号Sdの信号強度分布データPを求めることにより、この信号強度分布データPからスピン量SPを容易に求めることが可能となる。
ところで、前述したように第1乃至第3部分速度Va、Vb,Vcは、厳密に言うとアンテナの指向性を示す仮想軸と一致する方向の速度成分である。
したがって、ボール2の移動軌跡がアンテナの指向性を示す仮想軸に対して外れるほど式(13)によって得られるボール2のスピン量SPの誤差が増大する傾向となる。
そこで、本発明では、アンテナ12を用いて得られた信号強度分布Psすなわち信号強度分布データPの山の幅と、実測されたボール2のスピン量SPとの間に相関関係があることに着目した。
すなわち、予め上述した2つの相関関係を取得しておけば、それら2つの相関関係に基づいて信号強度分布データPの山の幅からボール2のスピン量SPを求めることが可能となる。
【0070】
スピン量演算部46は、予め得られている信号強度分布Ps、言い換えると信号強度分布データPの山の幅と、実測されたボール2のスピン量SPとの間に相関関係に基づいて、信号強度分布Psからスピン量SPを算出するものである。
【0071】
次に、実測して得た電波強度分布Psと実測して得たボール2のスピン量SPとの相関関係の取得について説明する。
【0072】
まず、専用のボール打ち出し装置(ピッチングマシン)によって基準位置に位置するボール2を、さまざまな速度、方向にて発射する。
そして、スピン量を高精度に計測可能な基準計測器によってボール2のスピン量SPを計測し、スピン量SPの実測データを取得する。
スピン量SPを計測する基準計測器として、高速度カメラなどを用いた従来公知のさまざまな測定装置が使用可能である。
また、スピン量SPの計測と同時に、球技用シミュレーション装置10を用いることにより、信号強度分布データ生成部32によって信号強度分布SPを取得する。すなわち、スピン量SPの実測データに対応する信号強度分布データPの山の幅を取得する。
【0073】
実測して得た電波強度分布Psと実測して得たボール2のスピン量SPとの相関関係については以下のように求める。
基準測定器で計測したスピン量SPの実測データと、信号強度分布SP(信号強度分布データPの山の幅)との相関関係に基づいてスピン量算出用の相関式(回帰式)を求める。
言い換えると、スピン量SPと、信号強度分布データPの山の幅との関係を離散的に測定したデータを取得する。そして、取得したデータを従来公知の最小二乗法などを用いて回帰分析することによってスピン量SPを信号強度分布データPの山の幅の関数(多項式)によって表わした相関式を求める。
すなわち、このようにして求められた相関式によってスピン量SPと信号強度分布データPの山の幅との関係を示す特性線を得ることができる。
したがって、このようにして求めた相関式を用いることにより、信号強度分布データPの山の幅からスピン量SPを求めることが可能となる。
本例では、スピン量SP演算部38は上記の相関式を用いることで信号強度分布データPの山の幅からボール2のスピン量SPを評価データとして算出する。
したがって、本例では、スピン量演算部46によるスピン量SPの算出は、予め実測され得られている信号強度分布データPの山の幅と予め実測され得られているボール2のスピン量SPとの相関関係を示すスピン量算出用の相関式に基づいてなされる。
なお、上記のような相関式に代えて、相関式によって示される特性線のデータをスピン量算出用のマップとして記憶しておき、マップを用いてスピン量SPを算出してもよい。
【0074】
次にボール2について説明する。
ボール2のスピン量SPを求めるにあたっては、第2、第3部分速度Vb,Vcの計測を安定して確実に行うことが必要であり、したがって、ドップラー信号Sdの計測を安定して確実に行うことが必要となる。
しかしながら、打撃されたボール2がアンテナ12から離間するほど(時間が経過するほど)、アンテナ12で受信される反射波W2の信号強度が低下し、各周波数分布DA、DB、DCの信号強度はそれぞれ低下する。
この際、図26に示すドップラー信号Sdの周波数分布DB、DCの信号強度は周波数分布DAの信号強度に比較して元々弱い。
そのため、第2、第3部分速度Vb,Vcを安定して計測する上で不利があり、アンテナ12で受信可能な信号強度が周波数分布DAよりも短時間で下回ってしまうため、第2、第3部分速度Vb,Vcの計測可能な時間はごく限られた期間となる不利もある。
そこで、以下に説明するように、ボール2に電波反射率が異なる第1領域と第2領域とを形成する。
【0075】
図28はボール2が軟式野球用のボールである場合のボールの構成を示す断面図である。
ボール2は、球体202と、第1領域204と、第2領域206とを備えている。
球体202は、球状で中空のコア層210により形成されている。
第1領域204は、球体202の中心を中心とした球面上に形成され、第2領域206は、球面上で第1領域204を除く残りの部分に形成されている。そして、第2領域206の電波反射率は、第1領域204の電波反射率よりも低いものとなっている。
すなわち、第1領域204は、球体202の中心を中心とした球面上に形成された電波反射率が高い領域である。
したがって、第1領域204は高い電波反射特性を有しており、電波(マイクロ波)を効率よく反射する。
本例では、複数の第1領域204と、第2領域206とがコア層210の内面に形成されている。すなわち、球体202の中心を中心とした球面は、コア層210の内面である。
この場合、コア層210は導電性を有さず、したがって、電波の通過を許容する材料で形成されている。
【0076】
第1領域204は、反射波W2の強度を十分に確保することができればよく、例えば、次に示す従来公知の関係式を用いることによって、第1領域204の表面抵抗として必要な範囲を求めることができる。
すなわち、電波反射率:Γ、表面抵抗:Rとしたとき、式(14)、式(15)が成立する。
Γ=(377−R)/(377+R) (14)
R=(377(1−Γ))/(1+Γ) (15)
Γ=1は全反射、Γ=0は無反射を示し、377は空気の特性インピーダンスを示す。
したがって、式(15)より
Γ=1のときR=0
Γ=0のときR=377
ここで、Γ=0.5とすると、R=377(0.5/1.5)≒130となる。
したがって、電波反射率Γとして十分な値をΓ=0.5(50%)以上とすると、表面抵抗Rは130Ω/sq.以下とすることが必要となる。
また、電波反射率Γが0.9(90%)以上であり、したがって、表面抵抗Rが20Ω/sq.以下であることが、反射波W2の強度を確保する上でより好ましい。
なお、電波反射率Γは、導波管法や自由空間法など従来公知方法によって測定することができるものである。
【0077】
第1領域204を構成する材料として、導電性を有する材料を使用することができる。
導電性を有する材料は、例えば、金属粉末を含む導電性塗料である。このような導電性塗料を球体202の中心を中心とした球面に塗布することで(印刷することで)第1領域204が形成される。
このような塗料として、例えば、銀、銅、ニッケルなどを含むシールド用塗料を使用するなど、従来公知のさまざまな塗料が使用可能である。
また、導電性を有する材料は、金属箔であってもよい。このような金属箔を前記球面に接着剤で貼り付けることで第1領域204が形成される。
このような金属箔としてアルミニウム箔など従来公知のさまざまな金属箔が使用可能である。
また、導電性を有する材料を蒸着することで形成された蒸着膜で第1領域204を形成してもよい。
また、上述した金属粉末あるいは金属箔あるいは蒸着膜を形成する金属としては、例えば、銀、銅、金、ニッケル、アルミ、鉄、チタン、タングステンなどの従来公知のさまざまな金属が使用可能である。
なお、導電性を有する材料として、金属以外の導電物質、例えばカーボンを含む材料など従来公知のさまざまな材料が使用可能である。
【0078】
第2領域206は、前記の球面上で第1領域204を除く残りの部分に形成され電波反射率が第1領域204よりも低い領域である。
言い換えると、第2領域206は、第1領域204よりも低い電波反射特性を有するものである。
本例では、第2領域206は、第1領域204を除く残りの表面の部分に形成され導電性を有さない。
計測装置10として、従来公知の計測装置であるTrackMan(TrackMan A/S社の登録商標)を用いた場合、第1領域204の電波反射率と第2領域206の電波反射率との比(差)を大きく取ると、スピン量をより正確に検出する上で、また、より長時間スピン量を検出する上で有利となる。
この場合、第2領域206の電波反射率を5%以下、表面抵抗を340Ω/sq.以上とすると、第1領域204の電波反射率と第2領域206の電波反射率との比(差)を大きく確保する上で有利となる。
【0079】
このように第1領域204,第2領域206をボール2に形成することにより以下の効果が奏される。
ボール2は、球体202の中心を中心とした球面上に形成された第1領域22と、球面上で第1領域22を除く残りの部分に形成された第2領域24とを備え、第2領域24の電波反射率は、第1領域22の電波反射率よりも低いものとなっている。
したがって、計測装置10のアンテナ12から発射された送信波W1がボール2の回転と共に移動する複数の第1領域22によって反射される。そのため、反射波W2の電波強度を確保する上で有利となる。
そのため、打撃されたボール2がアンテナ12から離間してアンテナ12で受信される反射波W2の信号強度が低下しても、各周波数分布DA、DB、DCの信号強度を確保することができる。
特に、周波数分布DAの信号強度に比較して元々弱い周波数分布DB、DCの信号強度を確保することができるので、第2、第3速度V2、V3を安定して計測する上で有利となる。
すなわち、ドップラー信号におけるスピン量を検出するために必要な周波数分布の信号強度を確保することができ、スピン量の検出を安定して確実に行う上で有利となる。
したがって、より長い期間、第2、第3速度V2、V3を計測することでより長い期間にわたってスピン量の計測を安定して行うことができる。
【0080】
図29はボール2が硬式野球用のボールである場合のボールの構成を示す断面図である。
球体202は、球状で中実のコア層220と、このコア層220を覆うカバー層222とで形成されている。
コア層220は、球状で中実の内側コア層220Aと、この内側コア層220Aを覆う外側コア層220Bとで構成されている。
内側コア層220Aの材料としては、例えば、ゴムなどの従来公知のさまざまな材料が用いられる。
外側コア層220Bの材料としては、例えば、毛糸や綿糸などの糸、あるいは、発泡ウレタンなどの合成樹脂材料が用いられる。
外側コア層220Bは、毛糸や綿糸が内側コア層220Aを覆うように巻き付けられることで構成され、あるいは、発泡ウレタンなどの合成樹脂が内側コア層220Aを覆うように成形されことで構成される。
カバー層222の材料としては、例えば、牛革が用いられ、カバー層222は、外側コア層220Bを覆う牛革を糸で縫合することで構成される。
すなわち、本例では、カバー層222は、第1領域204による電波の反射がなされるように、電波の通過を許容する材料、例えば、導電性物質を含有しない材料などで形成されている。
【0081】
第1領域204、第2領域206は、カバー層222の内面、すなわち、外側コア層220Bの外面に形成されている。
あるいは、第1領域204、第2領域206は、カバー層222の外面に形成されていてもよい。
言い換えると、球体202の中心を中心とした球面は、外側コア層220Bの外面またはカバー層222の内面または外面である。
このような構成においても図28の場合と同様の効果が奏される。
【0082】
次に、球技用シミュレーション装置10の動作について図30、図31のフローチャートを参照して説明する。
まず、図30を参照して、信号強度分布データPの山の幅とスピン量SPとの相関関係を示す相関式の設定について説明する。
まず、専用のボール打ち出し装置(ピッチングマシン)を用いてボール2を、移動方向とスピン量を異ならせて発射し、スピン量SPを実測する(ステップS100)。
同時に、球技用シミュレーション装置10を用いて信号強度分布データPの山の幅を計測する(ステップS102)。
次いで、球技用シミュレーション装置10とは別のコンピュータにより、信号強度分布データPの山の幅とスピン量SPとの相関関係を示す相関式を算出する(ステップS104)。
そして、ステップS104によって得られた相関式を球技用シミュレーション装置10に設定する(ステップS106)。
【0083】
次に、図31を参照してボール2を打撃した場合における球技用シミュレーション装置10のスピン量SPの計測動作について説明する。
予め図30の処理が実施され、球技用シミュレーション装置10に前記の相関式が設定されているものとする。
まず、使用者は、ボール2の打ち出し方向においてボール2から例えば1.5〜2m程度後方の箇所に、アンテナ12をボール2に向けて設置する。
これにより、アンテナ12から送出された送信波W1がボール2に当たり、反射波W2がアンテナ12に受信可能な状態となる。
使用者が操作部24を操作することにより、球技用シミュレーション装置10はボール2のスピン量SPを計測するための計測モードに設定される(ステップS120)。
【0084】
計測モードに設定されると、ドップラー信号Sdとトリガ信号trgの蓄積部30へのサンプリングが開始される(ステップS122)。
ここで、使用者がバット4でボール2を打ち出すと、打撃音がマイク16によって収音される。トリガ信号発生部18は、ドップラー信号Sdを受信し、かつ、打撃音の音声信号が予め定められたしきい値を上回ったときに、トリガ信号trgを生成して計測シミュレーション部20に供給し、これによりトリガ信号trgが蓄積部30に供給される。
【0085】
信号強度分布データ生成部32は、蓄積部30にサンプリングされたトリガ信号trgの検出の有無を判定しており(ステップS124)、トリガ信号trgを検出しなければ、ステップS124を繰り返す。
信号強度分布データ生成部32は、トリガ信号trgを検出すると、トリガ信号trgの検出時点から予め定められた区間にわたるドップラー信号Sdのサンプリングデータを特定する(ステップS126)。
そして、信号強度分布データ生成部32は、信号強度分布データPを生成する(ステップS128)。
次いで、スピン量演算部46は、予め設定されている相関式から信号強度分布データPの山の幅に基づいてスピン量SPを算出する(ステップS130)。
このようにして得られたスピン量SPが表示部22に供給されて表示される(ステップS132)。
この場合、例えば、ボール2のスピン量SPの単位は(rpm)として表示される。
以上で一連の計測動作が終了する。
【0086】
以上説明したように、アンテナおよびドップラーセンサを用いて計測したドップラー信号の信号強度分布データPを得ると共に、予め実測され得られている信号強度分布データPとスピン量SPとの相関関係に基づいて、信号強度分布データPからスピン量SPを算出することができる。
【0087】
次に、以上のように説明したスピン量SPの計測原理を用いた第3の実施の形態について詳細に説明する。
上述の説明では、ボール2の挙動を表わすデータとしてボール2のスピン量SPを計測する場合について説明したが、第3の実施の形態では、スピン量SPに加えて回転するボール2の回転軸の傾きを計測する。
【0088】
図32は第3の実施の形態における球技用シミュレーション装置10Aの機能ブロック図である。
第3の実施の形態は、ボール2のスピン量SPと回転軸の傾きを計測する点以外は、第1の実施の形態の球技用シミュレーション装置10Aと同様の構成であるため、第1の実施の形態と同様の構成についは説明を簡単に行う。
図32に示すように、第3の実施の形態における球技用シミュレーション装置10Aは、第1の実施の形態と同様に、第1乃至第4のアンテナ12A、12B、12C、12Dと、第1乃至第4ドップラーセンサ14A、14B、14C、14Dと、マイク16と、トリガ信号発生部18と、計測シミュレーション部20と、表示部22と、操作部24などを含んで構成されている。
【0089】
計測シミュレーション部20は、第1乃至第4のドップラーセンサ14A〜14Dから供給される第1乃至第4のドップラー信号SdA〜SdDを入力して演算処理を行うことにより、ボール2の初期特性値としての移動方向および移動速度に加えて、スピン量SP、回転軸の傾きを算出するものである。
また、計測シミュレーション部20は、初期特性値に基づいてボール2の飛距離を算出すると共に、算出された飛距離に基づいてボール2の弾道を算出し、飛距離および弾道を含むデータに基づいて打撃の評価を行う評価データを生成するものであり、この評価データにはスピン量SP、回転軸の傾きが含まれる。
本実施の形態では、計測シミュレーション部20は、第1の実施の形態と同様にマイクロコンピュータ21によって構成され、CPU21AがROM21Bに格納された制御プログラムを実行することにより計測シミュレーション部20が実現される。
マイクロコンピュータ21は、機能的には、蓄積部30と、信号強度分布データ生成部32と、速度演算部34と、移動速度演算部36と、スピン量演算部46と、回転軸演算部48とを含んで構成されている。
【0090】
蓄積部30は、第1の実施の形態と同様に、第1乃至第4のドップラー信号SdA〜SdDと、トリガ信号trgとを予め定められたサンプリング周期で時間経過に従って順番に蓄積するものである。
【0091】
信号強度分布データ生成部32は、第1の実施の形態と同様に、蓄積部30に蓄積された第1乃至第4のドップラー信号SdA〜SdDのサンプリングデータを周波数解析(連続FFT解析、あるいは、ウェーブレット解析)することによって信号強度分布データPをそれぞれ生成するものである。
また、信号強度分布データ生成部32が、蓄積部30に蓄積されたトリガ信号trgに基づいて、蓄積部30に蓄積された時系列データであるドップラー信号Sdのサンプリングデータを予め定められた区間に特定して信号強度分布データPの生成を実施する点は第1の実施の形態と同様である。
【0092】
速度演算部34は、第1の実施の形態と同様に、第1乃至第4の信号強度分布データPA〜PDのそれぞれに基づいて、ボール2の移動速度に対応するドップラー周波数成分を検出し、それら検出したドップラー周波数成分に基づいて第1乃至第4の演算用速度VA〜VDを算出するものである。
【0093】
移動速度演算部36は、第1の実施の形態と同様に、予め得られている第1乃至第4の演算用速度VA〜VDと実測されたボール2の移動速度Vαとの相関関係に基づいて、第1乃至第4の演算用速度VA〜VDから移動速度Vαを算出するものである。
【0094】
スピン量演算部46は、予め得られている第1乃至第4の信号強度分布データPA〜PD、言い換えると第1乃至第4の信号強度分布データPの山の幅と、実測されたボール2のスピン量SPとの間に相関関係に基づいて、第1乃至第4の信号強度分布データPの山の幅から第1乃至第4のスピン量SPA〜SPDを評価データとして算出するものである。
【0095】
次に、実測して得た第1乃至第4の電波強度分布PA〜PDと実測して得たボール2の第1〜第4のスピン量SPとの相関関係の取得について説明する。
【0096】
まず、専用のボール打ち出し装置(ピッチングマシン)によって基準位置に位置するボール2を、さまざまな速度、方向にて発射する。
そして、スピン量を高精度に計測可能な基準計測器によってボール2のスピン量SPを計測し、スピン量SPの実測データを取得する。
また、スピン量SPの計測と同時に、本実施の形態の球技用シミュレーション装置10Aを用いることにより、信号強度分布データ生成部32によって第1乃至第4の信号強度分布PA〜PDを取得する。すなわち、スピン量SPの実測データに対応する第1乃至第4の信号強度分布データPの山の幅を取得する。
【0097】
実測して得た第1乃至第4の電波強度分布PA〜PDと実測して得たボール2の第1〜第4のスピン量SPとの相関関係については以下のように求める。
基準測定器で計測したスピン量SPの実測データと、第1乃至第4の電波強度分布PA〜PD(第1乃至第4の信号強度分布データPの山の幅)の平均値Paveとの相関関係に基づいてスピン量算出用の相関式(回帰式)を求める。
言い換えると、スピン量SPと、信号強度分布データPの山の幅の平均値Paveとの関係を離散的に測定したデータを取得する。そして、取得したデータを従来公知の最小二乗法などを用いて回帰分析することによってスピン量SPを信号強度分布データPの山の幅の平均値Paveの関数(多項式)によって表わした相関式を求める。
すなわち、このようにして求められた相関式によってスピン量SPと信号強度分布データPの山の幅の平均値Paveとの関係を示す特性線を得ることができる。
したがって、このようにして求めた相関式を用いることにより、信号強度分布データPの山の幅の平均値Paveからスピン量SPを求めることが可能となる。
本実施の形態では、スピン量SP演算部38は上記の相関式を用いることで信号強度分布データPの山の幅の平均値Paveからボール2のスピン量SPを算出する。
したがって、本実施の形態では、スピン量演算部46によるスピン量SPの算出は、予め実測され得られている信号強度分布データPの山の幅の平均値Paveと予め実測され得られているボール2のスピン量SPとの相関関係を示すスピン量算出用の相関式に基づいてなされる。
なお、移動速度演算手段36と同様に、上記のような相関式に代えて、相関式によって示される特性線のデータをスピン量算出用のマップとして記憶しておき、マップを用いてスピン量SPを算出してもよい。
【0098】
回転軸演算部48は、第1乃至第4の信号強度分布データPの幅に基づいてボール2の回転軸の傾きを評価データとして算出するものである。
ここで、アンテナの位置と、スピン量SPと、回転軸の傾きとの関係について説明する。
図33(A)、図34(A)、図35(A)は第2のアンテナ12Bの仮想軸LB(図4)に沿ってボール2を見た図、図33(B)、図34(B)、図35(B)は第1のアンテナ12Aの仮想軸LA(図4)に沿ってボール2を見た図である。この場合、ボール2は打撃されスピンしながら移動しているものとする。
図33(A)、(B)は、ボール2の回転軸Mが仮想線CL(図7)と直交する鉛直面上で水平面と平行した状態を示している。
したがって、この場合、ボール2にはバックスピンがかかっている。
図34(A)、(B)は、ボール2の回転軸Mが仮想線CL(図7)と直交する鉛直面上で水平面に対して45度傾斜した状態を示している。
したがって、この場合、ボール2にはバックスピンとサイドスピンとの中間のスピンがかかっている。
図35(A)、(B)は、ボール2の回転軸Mが仮想線CL(図7)と直交する鉛直面上で水平面に対して直交した状態を示している。
したがって、この場合、ボール2にはサイドスピンがかかっている。
【0099】
ここで、ボール2のスピン量SPが図33〜図35で同一であるものとする。
ボール2を正面から見ると、図33(A)、図34(A)、図35(A)に示すように回転軸Mの傾きに拘わらずスピン量SPは同一のものとして検出される。
これに対してボール2を斜め下方から見ると、図33(B)に示すように回転軸Mが水平であれば、図33(A)と同じスピン量SPとして検出される。
図34(B)に示すように、回転軸Mが水平面に対してなす角度が45度になると、スピン量SPは図34(A)で検出されるスピン量SPに比較して見かけ上小さい値として検出される。
図35(B)に示すように、回転軸Mが水平面に対してなす角度が90度になると、スピン量SPは図35(A)で検出されるスピン量SPに比較して見かけ上小さい値として検出され、図34(B)の場合よりもさらに小さいスピン量SPとして検出される。
すなわち、ボール2を鉛直方向に間隔をおいた2箇所で見た場合、それぞれの箇所で検出されるスピン量SPの差分と、回転軸Mの傾きとは相関関係があることになる。
本実施の形態では、回転軸演算部48は、このような相関関係に基づいて、鉛直方向に間隔をおいた2つのアンテナを使用して得た2つの信号強度分布データPの幅の差分からボール2の回転軸Mの傾きを算出するようにしている。
第1のアンテナ12Aを用いて得られた第1の信号強度分布データPAの幅:ΔSA
第2のアンテナ12Bを用いて得られた第2の信号強度分布データPBの幅:ΔSB
第3のアンテナ12Cを用いて得られた第3の信号強度分布データPCの幅:ΔSC
第4のアンテナ12Dを用いて得られた第4の信号強度分布データPDの幅:ΔSD
とした場合、図3に示すように、対角線上に位置する2組のアンテナの信号強度分布データPの幅の差分をそれぞれ第1の差分データΔAD、第2の差分データΔCBとし、以下の式(20)、式(21)に示す。
ΔAD=ΔSA−ΔSD (20)
ΔCB=ΔSC−ΔSB (21)
このように対角線上に位置するアンテナの信号強度分布データPの幅の差分を用いることにより、回転軸Mが水平面に対してなす角度の正負が特定される。
また、本実施の形態では、第1、第2の差分データΔAD、ΔCBの平均値ΔAVEを求め、この平均値ΔAVEに基づいてボール2の回転軸Mの傾きを算出しており、これにより算出される回転軸Mの傾きの精度の向上が図られている。
【0100】
次に、球技用シミュレーション装置10Aの動作について図36、図37のフローチャートを参照して説明する。
まず、図36を参照して、第1乃至第4の速度VA〜VDと、ボール2の移動方向、移動速度、スピン量との相関関係を示す相関式の設定について説明する。
まず、専用のボール打ち出し装置(ピッチングマシン)によって基準位置Oに位置するボール2を、左右角度θx、上下角度θy、移動速度Vα、スピン量SPを異ならせて発射し、左右角度θx、上下角度θy、移動速度Vα、スピン量SPを実測する(ステップS200)。
同時に、球技用シミュレーション装置10を用いて第1乃至第4の速度VA〜VDと、第1乃至第4の信号強度分布データPの山の幅とを計測する(ステップS202,S204)。
次いで、球技用シミュレーション装置10とは別のコンピュータにより、第1乃至第4の速度VA〜VDに基づいて第1の値D1、第2の値D2を算出する(ステップS206)。
次いで、第1の値D1と上下角度θyとの相関関係を示す相関式を算出し(ステップS208)、第2の値D2と左右角度θxとの相関関係を示す相関式を算出し(ステップS210)。
次いで、第1乃至第4の速度VA〜VDに基づいて平均値Vaveを算出する(ステップS212)。
次いで、平均値Vaveと移動速度Vαとの相関関係を示す相関式を算出する(ステップS214)。
また、前記のコンピュータにより、第1乃至第4の信号強度分布データPの山の幅の平均値Paveとスピン量SPとの相関関係を示す相関式を算出する(ステップS216)。
そして、ステップS208,S210、S214、S216によって得られた4つの相関式を球技用シミュレーション装置10に設定する(ステップS218)。
【0101】
次に、専用のボール打ち出し装置(ピッチングマシン)によって基準位置Oに位置するボール2を、移動速度Vαとスピン量SPと上下角度θyとを異ならせて発射して飛距離Dbを実測する(ステップS220)。
次いで、球技用シミュレーション装置10とは別のコンピュータにより、前述した図13に示すようなコンター図に相当するデータを飛距離算出用のマップとして作成し、球技用シミュレーション装置10に設定する(ステップS222)。
【0102】
次に、図37を参照してボール2を打撃した場合における球技用シミュレーション装置10の動作について説明する。
予め図36の処理が実施され、球技用シミュレーション装置10に前記の相関式、飛距離算出用のマップが設定されているものとする。
まず、使用者は、ボール2の打ち出し方向においてボール2を打撃する大体の位置から例えば1.7m程度後方の箇所に、第1乃至第4のアンテナ12A〜12Dをボール2に向けてケース26を設置する。
ケース26は、例えば地面Gの上に載置すればよい。
これにより、第1乃至第4のアンテナ12A〜12Dから送出された送信波W1がボール2に当たり、反射波W2が第1乃至第4のアンテナ12A〜12Dに受信可能な状態となる。
使用者が操作部24を操作することにより、球技用シミュレーション装置10はボール2の移動方向および移動速度を計測するための計測モードに設定される(ステップS300)。
【0103】
計測モードに設定されると、第1乃至第4のドップラー信号SdA〜SdDとトリガ信号trgの蓄積部30へのサンプリングが開始される(ステップS302)。
ここで、使用者がバット6を把持してスウィングして野球用のバット4で、トスされたボール2を打ち出すと、打撃音がマイク16によって収音される。トリガ信号発生部18は、ドップラー信号SdA〜SdDの少なくとも1つ以上の信号を受信し、かつ、打撃音の音声信号が予め定められたしきい値を上回ったときに、トリガ信号trgを生成して計測シミュレーション部20に供給し、これによりトリガ信号trgが蓄積部30に供給される。
【0104】
信号強度分布データ生成部32は、蓄積部30にサンプリングされたトリガ信号trgの検出の有無を判定しており(ステップS304)、トリガ信号trgを検出しなければ、ステップS304を繰り返す。
信号強度分布データ生成部32は、トリガ信号trgを検出すると、トリガ信号trgの検出時点から予め定められた区間にわたる第1乃至第4のドップラー信号SdA〜SdDのサンプリングデータを特定する(ステップS306)。
そして、信号強度分布データ生成部32は、第1乃至第4の信号強度分布データPA〜PDを生成する(ステップS308)。
次いで、速度演算部34は、第1乃至第4の信号強度分布データPA〜PDから第1乃至第4の速度VA〜VDを算出する(ステップS310)。
次いで、移動方向検出部36は、第1の値D1、第2の値D2を算出し(ステップS312)、予め設定されている相関式から第1の値D1、第2の値D2に基づいて上下角度θy、左右角度θxを算出する(ステップS314)。
また、移動速度検出部38は、第1乃至第4の速度VA〜VDから平均値Vaveを算出し(ステップS316)、予め設定されている相関式から平均値Vaveに基づいて移動速度Vαを算出する(ステップS318)。
さらに、評価用特性値演算部40は、ボール2の移動速度および移動方向を含む初期特性値に基づいて飛距離算出用のマップからボール2の飛距離Dbを算出すると共に、算出された飛Db距離に基づいてボール2の弾道を算出する(ステップS320)。
【0105】
次いで、スピン量演算部46は、予め設定されている相関式から第1乃至第4の信号強度分布データPの山の幅の平均値Paveに基づいてスピン量SPを算出する(ステップS322)。
次いで、回転軸演算部48は、第1乃至第4の信号強度分布データPから第1の差分データΔAD、第2の差分データΔCBを演算し、第1、第2の差分データΔAD、ΔCBの平均値ΔAVEに基づいてボール2の回転軸Mの傾きを算出する(ステップS324)。
【0106】
評価データ生成部42は、評価用特性値演算部40によって算出された飛距離および弾道を含むデータに基づいて各種の評価データを生成すると、図38に示すように、表示部22に表示させる(ステップS326)。
また、本実施の形態では、評価データ生成部42は、スピン量演算部46で算出されたスピン量SPおよび回転軸演算部48で算出された回転軸Mの傾きRを評価データとして受け付け、そのまま表示部22に表示させる。
なお、スピン量SPの単位は(rpm)、回転軸Mの傾きRの単位は(度)として表示される。回転軸Mの傾きRは、例えば、回転軸Mが水平面に対してなす角度で示され、回転軸Mが水平面と平行であれば傾きR=0度となり、回転軸Mが水平面に対して左に傾斜すると傾きRが負の角度となり、回転軸Mが水平面に対して右に傾斜すると傾きRが正の角度となる。
また、打撃判定部44は、評価データ生成部42で生成された落下点Pbの位置に基づいてゲームとしての評価を判定し、その判定結果を図17のように表示部22に表示させる(ステップS328)。
以上で一連の動作が終了する。
【0107】
以上説明したように、第3の実施の形態によれば、第1の実施の実施の形態と同様の効果が奏されることは無論のこと、スピン量SP、回転軸Mの傾きRを評価データとして得ることができるため、使用者に提供する評価データの価値を高めることができ、球技用シミュレーション装置10の有用性を高める上でより一層有利となる。
【0108】
なお、上述した実施の形態では、トスされたボール2をバット4で打撃する場合について説明したが、ティーバッティングのように静止したボール2をバット4で打撃しても良いことは無論である。
また、概ね打撃領域Zhを通過したボール2であれば、投球されたボール2をバット4で打撃した場合を対象としてもよい。
また、上述した実施の形態では、ボール2が野球用ボールである場合について説明したが、ボールは、テニスボールやサッカーボールであってもよく、本発明はさまざまな球技用ボールを打撃した場合のシミュレーションを行う場合に適用可能である。
なお、テニスボールの場合、ボールを打撃する物体はラケットであり、サッカーボールの場合、ボールを打撃する物体は人の足となる。
【符号の説明】
【0109】
2……ボール、4……バット(物体)、12A〜12D……第1乃至第4のアンテナ、14A〜14D……第1乃至第4のドップラーセンサ、32……信号強度分布データ生成部、34……速度演算部、36……移動方向演算部、38……移動速度演算部、40……評価用特性値演算部、42……評価データ生成部、44……打撃判定部、46……スピン量演算部、48……回転軸演算部、PA〜PD……第1乃至第4の信号強度分布データ、VA〜VD……第1乃至第4の速度、Vα……移動速度、θx……左右角度、θy……上下角度、SP……スピン量、R……回転軸Mの傾き。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
球技用のボールが物体により打撃されたときの前記ボールの移動速度および移動方向を含む初期特性値を検出する初期特性値検出部と、
前記初期特性値に基づいて前記ボールの飛距離を算出すると共に、前記算出された飛距離に基づいて前記ボールの弾道を算出する評価用特性値演算部と、
前記初期特性値、前記飛距離および前記弾道を含むデータに基づいて前記打撃の評価を行う評価データを生成する評価データ生成部とを含む球技用シミュレータ装置であって、
前記初期特性値検出部は、
指向性を有し、供給される送信信号に基づいて前記ボールに向けて送信波を送信すると共に、前記ボールで反射された反射波を受信して受信信号を生成する互いに離間して配置された第1乃至第n(nは2以上の整数)のアンテナと、
前記第1乃至第nのアンテナのそれぞれに対応して設けられ、前記アンテナに前記送信信号を供給すると共に、前記アンテナから供給される前記受信信号に基づいてドップラー周波数を有するドップラー信号を生成する第1乃至第nのドップラーセンサと、
前記第1乃至第nのドップラーセンサのそれぞれから得られたドップラー信号を周波数解析することにより周波数ごとの信号強度の分布を示す第1乃至第nの信号強度分布データを生成する信号強度分布データ生成部と、
前記第1乃至第nの信号強度分布データのそれぞれに基づいて、前記ボールの移動速度に対応するドップラー周波数成分を検出し、それら検出したドップラー周波数成分に基づいて第1乃至第nの速度を算出する速度演算部と、
予め実測され得られている前記第1乃至第nの速度と予め実測され得られている前記ボールの移動方向との相関関係に基づいて、前記速度演算部で算出された第1乃至第nの速度から前記移動方向を算出する移動方向演算部と、
予め実測され得られている前記第1乃至第nの速度と予め実測され得られている前記ボールの移動速度との相関関係に基づいて、前記速度演算部で算出された第1乃至第nの速度から前記移動速度を算出する移動速度演算部と、
を備えることを特徴とする球技用シミュレータ装置。
【請求項2】
前記評価データ生成部による前記ボールの飛距離の算出は、予め実測されている前記ボールの移動速度と予め実測されている飛距離との相関関係に基づいて、前記移動速度演算部で算出された前記移動速度から前記飛距離を求めることでなされ、
前記評価データ生成部による前記弾道の算出は、前記飛距離と前記移動方向演算部で演算された移動方向とに基づいてなされる、
ことを特徴とする請求項1記載の球技用シミュレーション装置。
【請求項3】
前記評価データ生成部による前記ボールの飛距離の算出は、前記移動速度演算部で算出された移動速度、前記移動方向演算部で演算された移動方向、前記ボールに作用する抗力、揚力、重力に基づいて運動方程式を解くことによってなされ、
前記評価データ生成部による前記弾道の算出は、前記飛距離と前記移動方向演算部で演算された移動方向とに基づいてなされる、
ことを特徴とする請求項1記載の球技用シミュレーション装置。
【請求項4】
予め定められた基準位置を通り水平方向に延在する仮想線を含み鉛直方向に延在する平面を基準鉛直面とし、
前記基準位置を通り前記基準鉛直面と直交する平面を基準水平面とし、
前記移動体が前記基準位置から移動したときの移動軌跡を前記基準鉛直面に投影して得られた移動軌跡と前記基準水平面とがなす角度を上下角度とし、
前記移動体が前記基準位置から移動したときの移動軌跡を前記基準水平面に投影して得られれた移動軌跡と前記基準鉛直面とがなす角度を左右角度とした場合、
前記移動方向演算部によって算出される前記移動方向は前記上下角度と前記左右角度とで示される、
ことを特徴とする請求項1乃至3に何れか1項記載の球技用シミュレーション装置。
【請求項5】
前記移動速度演算部によって算出される前記移動速度は、前記移動体の移動方向に沿った前記移動体の速度である、
ことを特徴とする請求項1乃至4に何れか1項記載の球技用シミュレーション装置。
【請求項6】
前記移動方向演算部による前記移動方向の算出は、
予め実測され得られている前記第1乃至第nの速度と予め実測され得られている前記移動体の移動方向との相関関係を示す移動方向算出用の相関式に基づいてなされる、
ことを特徴とする請求項1乃至5に何れか1項記載の球技用シミュレーション装置。
【請求項7】
前記移動方向算出用の相関式は、
前記移動方向の全域について作成された1つの1次処理用の相関式と、
前記移動方向の全域が2つ以上の範囲に区分けされ、該区分けされた各範囲毎に作成された2つ以上の2次処理用の相関式とを含んで構成され、
前記移動方向演算部による前記移動方向の算出は、
前記1次処理用の相関式を用いて1回目の移動方向を算出し、前記2つ以上の範囲のうち、前記算出された1回目の移動方向が該当する前記範囲に対応する前記2次処理用の相関式を用いて2回目の移動方向を算出することによってなされる、
ことを特徴とする請求項6記載の球技用シミュレーション装置。
【請求項8】
前記移動速度演算部による前記移動速度の算出は、
予め実測され得られている前記第1乃至第nの速度と予め実測され得られている前記移動体の移動速度との相関関係を示す移動速度算出用の相関式に基づいてなされる、
ことを特徴とする請求項1乃至7に何れか1項記載の球技用シミュレーション装置。
【請求項9】
前記移動速度算出用の相関式は、
前記移動速度の全域について作成された1つの1次処理用の相関式と、
前記移動速度の全域が2つ以上の範囲に区分けされ、該区分けされた各範囲毎に作成された2つ以上の2次処理用の相関式とを含んで構成され、
前記移動速度演算部による前記移動速度の算出は、
前記1次処理用の相関式を用いて1回目の移動速度を算出し、前記2つ以上の範囲のうち、前記算出された1回目の移動速度が該当する前記範囲に対応する前記2次処理用の相関式を用いて2回目の移動速度を算出することによってなされる、
ことを特徴とする請求項8記載の球技用シミュレーション装置。
【請求項10】
nは4であり、
第1乃至第4のアンテナのうち、第1、第2のアンテナは互いに鉛直方向に第1の間隔をおいて配置され、かつ、第3、第4のアンテナは互いに鉛直方向に前記第1の間隔をおいて配置され、
第1、第3のアンテナは互いに水平方向に第2の間隔をおいて配置され、かつ、第2、第4のアンテナは互いに水平方向に前記第2の間隔をおいて配置されている、
ことを特徴とする請求項1乃至9に何れか1項記載の球技用シミュレーション装置。
【請求項11】
nは3であり、
第1乃至第3のアンテナのうち、第1、第2のアンテナは互いに水平方向に第1の間隔をおいて配置され、
第1、第3のアンテナは互いに鉛直方向に第2の間隔をおいて配置されている、
ことを特徴とする請求項1乃至9に何れか1項記載の球技用シミュレーション装置。
【請求項12】
予め実測され得られている前記第1乃至第nの信号強度分布データと前記球技用ボールのスピン量との相関関係に基づいて、前記信号強度分布データ生成部で生成された前記第1乃至第nの信号強度分布データから前記スピン量を前記評価データとして算出するスピン量演算部をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1乃至9に何れか1項記載の球技用シミュレーション装置。
【請求項13】
前記第1乃至第nの信号強度分布データと前記球技用ボールのスピン量との相関関係は、前記第1乃至第nの信号強度分布データの幅の平均値と前記球技用ボールのスピン量との相関関係であり、
前記スピン量演算部による前記スピン量の算出は、前記相関関係に基づいて、前記第1乃至第nの信号強度分布データの幅の平均値から前記スピン量を算出することでなされる、
ことを特徴とする請求項12記載のボール計測装置。
【請求項14】
前記各信号強度分布データの最大値をそれぞれDmaxとしたとき、
前記各信号強度分布データの幅は、閾値DtをDmax・N(ただし0<N<1)とした場合、前記各信号強度分布データのうち前記信号強度が前記閾値Dtとなる部分の幅である、
ことを特徴とする請求項13記載のボール計測装置。
【請求項15】
前記信号強度分布データ生成部による前記信号強度分布データの生成は、前記信号強度の移動平均を取ることによってなされる、
ことを特徴とする請求項13または14記載のボール計測装置。
【請求項16】
nは4であり、
第1乃至第4のアンテナのうち、第1、第2のアンテナは互いに鉛直方向に第1の間隔をおいて配置され、かつ、第3、第4のアンテナは互いに鉛直方向に前記第1の間隔をおいて配置され、
第1、第3のアンテナは互いに水平方向に第2の間隔をおいて配置され、かつ、第2、第4のアンテナは互いに水平方向に前記第2の間隔をおいて配置され、
前記第1、第4のアンテナを用いて得られた前記第1、第4の信号強度分布データの幅の差分である第1の差分データと、前記第2、第3のアンテナを用いて得られた前記第2、第3の信号強度分布データの幅の差分である第2の差分データとの何れか一方に基づいて、あるいは、第1、第2の差分データの平均値に基づいて前記球技用ボールの回転軸の傾きを前記評価データとして算出する回転軸演算部をさらに備える、
ことを特徴とする請求項13乃至15に何れか1項記載の球技用シミュレーション装置。
【請求項17】
前記球技は野球であって、
前記評価データ生成部は、前記ボールの落下点の位置を生成し、
仮想的な野球グランド上に複数の領域を設定しておき、前記評価データ生成部で生成された落下点の位置がどの領域に該当するかに応じて、アウト、ヒット、ホームランの評価を判定する打撃判定部をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1乃至16に何れか1項記載の球技用シミュレーション装置。
【請求項18】
球技用のボールが物体により打撃されたときの前記ボールの移動速度および移動方向を含む初期特性値を検出する初期特性値検出工程と、
前記初期特性値に基づいて前記ボールの飛距離を算出すると共に、前記算出された飛距離に基づいて前記ボールの弾道を算出する評価用特性値演算工程と、
前記初期特性値、前記飛距離および前記弾道を含むデータに基づいて前記打撃の評価を行う評価データを生成する評価データ生成工程とを含む球技用シミュレーション方法であって、
指向性を有し、供給される送信信号に基づいて前記ボールに向けて送信波を送信すると共に、前記ボールで反射された反射波を受信して受信信号を生成する第1乃至第n(nは2以上の整数)のアンテナを互いに離間して配置し、
前記第1乃至第nのアンテナのそれぞれに対応して、前記アンテナに前記送信信号を供給すると共に、前記アンテナから供給される前記受信信号に基づいてドップラー周波数を有するドップラー信号を生成する第1乃至第nのドップラーセンサを設け、
前記第1乃至第nのドップラーセンサのそれぞれから得られたドップラー信号を周波数解析することにより周波数ごとの信号強度の分布を示す第1乃至第nの信号強度分布データを生成する信号強度分布データ生成部を設け、
前記第1乃至第nの信号強度分布データのそれぞれに基づいて、前記ボールの移動速度に対応するドップラー周波数成分を検出し、それら検出したドップラー周波数成分に基づいて第1乃至第nの速度を算出する速度演算部を設け、
前記第1乃至第nの速度と前記ボールの移動方向との相関関係と、前記第1乃至第nの速度と前記ボールの移動速度との相関関係とをそれぞれ予め求めておき、
前記第1乃至第nの速度と前記ボールの移動方向との相関関係に基づいて、前記速度演算部で算出された第1乃至第nの速度から前記移動方向を算出し、
前記第1乃至第nの速度と前記ボールの移動速度との相関関係に基づいて、前記速度演算部で算出された第1乃至第nの速度から前記移動速度を算出する、
ことを特徴とする球技用シミュレーション方法。
【請求項19】
予め実測され得られている前記第1乃至第nの信号強度分布データと前記球技用ボールのスピン量との相関関係に基づいて、前記信号強度分布データ生成部で生成された前記第1乃至第nの信号強度分布データから前記スピン量を前記評価データとして算出するスピン量演算部をさらに設ける、
ことを特徴とする請求項18記載の球技用シミュレーション方法。
【請求項20】
nは4であり、
第1乃至第4のアンテナのうち、第1、第2のアンテナは互いに鉛直方向に第1の間隔をおいて配置され、かつ、第3、第4のアンテナは互いに鉛直方向に前記第1の間隔をおいて配置し、
第1、第3のアンテナは互いに水平方向に第2の間隔をおいて配置され、かつ、第2、第4のアンテナは互いに水平方向に前記第2の間隔をおいて配置し、
前記第1、第4のアンテナを用いて得られた前記第1、第4の信号強度分布データの幅の差分である第1の差分データと、前記第2、第3のアンテナを用いて得られた前記第2、第3の信号強度分布データの幅の差分である第2の差分データとの何れか一方に基づいて、あるいは、第1、第2の差分データの平均値に基づいて前記球技用ボールの回転軸の傾きを前記評価データとして算出する回転軸演算部をさらに設けた、
ことを特徴とする請求項19記載の球技用シミュレーション方法。
【請求項21】
前記ボールは、電波反射性を有する第1領域と、電波反射率が前記第1領域よりも低い第2領域とを有する、
ことを特徴とする請求項18乃至20に何れか1項記載の球技用シミュレーション方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【公開番号】特開2012−231908(P2012−231908A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101917(P2011−101917)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)