説明

球技用中空ボールの投球装置

【課題】バレーボール、サッカーボールその他の比較的大径の球技用中空ボールのマシン投球をおこなう際に、少なくとも2対のローターを連設することにより、簡単操作で無回転ボール又は縦回転ボールを発射可能で、発射速度を変更増大可能とする。
【解決手段】投球装置Xが、架台1に回動可能に中空支持して固定設置され、少なくとも設置正背面を開口形成した概略把持枠構造を有する機枠2と、該機枠2内の上下2段に離隔距離を変更調整可能に軸支され、モーターの駆動軸に直結して軸装した回転ドラムからなり、その回転面を対向設置してなる少なくとも2対のローター3,4;5,6 と、モーター又はローターの発停とともに、回転数を各別に可変調整するコントローラー7と、機枠2に固定保持され、ローター3,4(5,6)間に背面開口部から球技用中空ボールを導入供給し、かつ、装填するための移動発射枠体8を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バレーボール、サッカーボールその他の比較的大径の中空弾球体(以下、球技用中空ボール。)を、ボール直径より小さい距離に離隔して対向設置され正逆反対方向にそれぞれ回転するローター間に導入供給(装填)して導入供給反対側に打ち出すようにした球技用中空ボールの投球装置に係り、詳しくは、少なくとも2対のローターを連設することにより、簡単操作で無回転ボール又は縦回転ボールを発射可能で、発射速度を増大可能な球技用中空ボールの投球装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ピッチングマシンとして知られるように、野球ボール等の比較的小径の球技用ボール(中実又は中空)を上下1対のローター間に導入供給(装填)して導入供給反対側に高速で打ち出す(弾き出す)ようにした投球装置があった。
【0003】
この種の投球装置では、当初から上下のローターの回転数(回転速度)を違えて回転させることにより変化球を投球可能としていたが、その後、ボールに横回転を付与して球種を拡大しようとするものがあった。(特許文献1、2及び3を参照。)
【特許文献1】特開昭62−155877号公報
【特許文献2】特開平11−19269号公報
【特許文献3】特開平11−128432号公報
【0004】
しかしながら、ローター間を通過させて投球する従来技術では、バレーボール、サッカーボール等の比較的大径の球技用中空ボールを扱い、選択的に球種を変更可能とする具体的な装置構成とともに、サーブマシンやキックマシンとしての合目的的な投球装置を開示するまでには至っていない。
【0005】
こうしたなかで、本出願人はバレーボール、サッカーボール等の比較的大径の球技用中空ボールを扱うサーブマシンやキックマシンとして当該球技の練習に使用可能で、選択的に球種変更が可能な投球装置を提案してきた。すなわち、コンパクトな装置構成で、バレーボール、サッカーボール等の比較的大径の球技用中空ボールを扱い、簡単操作で無回転ボール、縦回転ボール、横回転ボール又は斜回転ボールを発射可能な球種選択機構を具備した球技用中空ボールの投球装置である。(特願2004−6259;以下、先願装置。)
【0006】
先願装置の特徴構成は、バレーボール、サッカーボールその他の比較的大径の球技用中空ボールを、ボール直径より小さい距離に離隔して対向設置され正逆反対方向にそれぞれ回転するローター間に導入供給して通過させ、導入供給反対側に打ち出すために、架台に回動可能に中空支持して固定設置され、少なくとも設置正背面を開口形成した概略把持枠構造を有する機枠と、機枠内の上下2段に配設した1対のローターと、機枠の背面開口部に可動保持した移動発射枠体を有し、ローター間に球技用中空ボールを導入供給し、かつ、装填する際に、移動発射枠体を可変操作することにより、ローターの回転面間の上下方向基準線に対して、球技用中空ボールの球芯を合致させ、又は左右いずれかに変位させてローター間を通過させ、かつ、ボール回転の仕方を変更して発射するようにした球種選択機構を備えている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ボールの発射速度は、ローターの離隔距離(ボールに対するグリップ力)と回転速度に依存することになるが、発射速度を大きくするには機械的限界があった。ローター間にはボールが静止した状態で導入供給されるからである。図7を参照。
【0008】
ここで、解決しようとする問題点は、ボールの発射速度の増大にあり、ローター(本発明に関し打ち出しローター)間に勢いを付けたボールを導入供給して、発射時の弾発力を増補することである。なお、装置構成上、球種選択は無回転ボール又は縦回転ボールとなり、横回転ボール又は斜回転ボールは選択しない。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであって、上記課題を解消し、コンパクトな装置構成で、バレーボール、サッカーボール等の比較的大径の球技用中空ボールを扱い、少なくとも2対のローターを連設することにより、簡単操作で無回転ボール又は縦回転ボールを発射可能で、発射速度を増大可能な球技用中空ボールの投球装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
課題を解決するために本発明は、バレーボール、サッカーボールその他の比較的大径の球技用中空ボールを、ボール直径より小さい距離に離隔して対向設置され正逆反対方向にそれぞれ回転するローター間に導入供給して通過させ、導入供給反対側に打ち出すようにした球技用中空ボールの投球装置の改善であって、
架台に回動可能に中空支持して固定設置され、少なくとも設置正背面を開口形成した概略把持枠構造を有する機枠と、
該機枠内の上下2段に離隔距離を変更調整可能に軸支され、モーターの駆動軸に直結して軸装した回転ドラム又は回転ディスクからなり、その回転面を対向設置してなる少なくとも2対のローターと、
前記モーター又はローターの発停とともに、回転数を各別に可変調整するコントローラーと、
前記機枠に固定保持され、前記ローター間に背面開口部から球技用中空ボールを導入供給し、かつ、装填するための移動発射枠体と、
前記移動発射枠体を介して前記ローターの回転面間の上下方向基準線に対して、球技用中空ボールの球芯を合致させて前記ローター間を通過させ、かつ、ボール回転の仕方を変更して発射するようにした球種・速度選択機構を具備したことを特徴とするものである。
【0011】
ここで、少なくとも2対のローターが、1対の打ち出しローターと、複数対の助勢ローターを連設したものであり、移動発射枠体から球技用中空ボールを導入供給し、前記助勢ローター、打ち出しローターの順に通過させるものである。
【0012】
また、球種・速度選択機構が、コントローラーにより上下段の助勢ローターを同一回転数とし、上下段の打ち出しローターの回転数を助勢ローターの回転数と同じかそれよりも高く設定して、助勢ローターを通過させて勢いを付けたボールを打ち出しローターに導入供給することにより発射速度を調整する速度選択と、上下段の打ち出しローターの回転数を調整することにより無回転ボール又は縦回転ボールの球種選択とをおこなうものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の投球装置は、バレーボール、サッカーボール等の比較的大径の球技用中空ボールを扱うものでありながら、コンパクトな装置構成で操作性を向上しており、発射速度を変更(増大)可能で球種選択可能なサーブマシンやキックマシンとして当該球技の練習において合目的的に使用できる。しかも、可搬性があり、練習設備に種々の道具類とともに収納できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施の最良形態について添付図面を参照して以下説明する。
【0015】
図1にバレーボール球技の練習に使用するサーブマシンを構成した投球装置の正面視構成説明図、図2に左側面視構成説明図、及び図3に右側面視構成説明図を示す。
【0016】
図示するように、最良形態の投球装置Xはバレーボール球技の練習においてサーブマシンとして使用するものであり、その装置構成は、架台1と、機枠2と、2対のローター3;4、5;6(モーター31;41、51;61 及び回転ドラム32;42、52;62 )と、コントローラー7と、移動発射枠体8(ボール供給ガイド手段81を含む)からなる。
【0017】
架台1は、設置面に立脚し機枠2を回動可能に中空支持している。機枠2の回動固定(角度変更固定)は、回動軸(に介装したハンドルサポート11)に取着したハンドルシャフト12によりおこなう。
【0018】
機枠2は、少なくとも設置正背面(ボール導入供給側及び発射投球側)を開口形成した概略把持枠構造とされ、上下2段に離隔して2対のローター3;4、5;6をそれぞれ軸支し、離隔部に移動発射枠体8を固定保持している。ローター3;4、5;6はそれぞれカバー21;22で覆われている。ここで、2対のローター3;4、5;6は、1対が助勢ローター3;4であり、他の1対が打ち出しローター5;6である。
【0019】
2対のローター3;4、5;6は、モーター31;41、51;61 の駆動軸に直結して軸装した回転ドラム32;42、52;62 からなり、その回転面を対向して機枠2内の上下2段に
それぞれ離隔距離を変更調整可能に軸支されている。
【0020】
なお、ローター3;4、5;6の構成要素として回転ドラムと回転ディスクを択一的に併記したのは、汎用的な使用、すなわち比較的小径の球技用中空ボールを扱う場合には、回転ディスクを用いることを考慮したからである。
【0021】
コントローラー7は、ローター3;4、5;6(直接的にはモーター31;41、51;61 )の発停とともに、その回転数を各別に可変調整するもので、ダイヤル71;72;73;74 のボリューム変更により調整をおこなうものを図示している。図中の符号75は電源スイッチである。
【0022】
移動発射枠体8は、機枠2又はローター3;4、5;6の回転面間の上下方向基準線〔図示省略〕に対して、断面中心線を一致させて固定保持された概略ダクト構造の枠体であって、左右内壁面にボール供給ガイド手段81を形設したものであり、球技用中空ボールB(以下、バレーボール。)を背面開口部から助勢ローター3;4間に導入供給し装填する。そして、助勢ローター3;4、打ち出しローター5;6の順に通過させて発射投球する。
【0023】
ここで、助勢ローター3;4を通過させて勢いを付けたボールを打ち出しローター5;6に導入供給することにより発射速度を調整する速度選択と、上下段の打ち出しローター5;6の回転数を調整することにより無回転ボール又は縦回転ボールの球種選択とをおこなうことになる。〔請求項1、2、3〕
【0024】
ボール供給ガイド手段81は、好ましくは複数の突条(81)であって、バレーボールBの導入供給側から発射投球側へ平行配置され、かつ、該バレーボールBの球面を少なくとも2箇所で案内支持するように配設されている。
【0025】
図4に背面視構成説明図(ボール導入供給面図)及び図5に対応平面視構成説明図をそれぞれ示すように、移動発射枠体8を介して上下ローター3;4(5;6)の回転面間の上下方向基準線Aに対して、バレーボールBの球芯Cを合致させて助勢ローター3;4間に導入供給する。
【0026】
なお、移動発射枠体8の導入供給側に、ボール補給装置〔図示省略〕を連設することにより、装填するバレーボールBを間欠的に連続供給するように構成することができるのはもちろんである。
【0027】
それぞれのローター〔助勢ローター3;4、打ち出しローター5;6〕の回転数の調整について以下説明する。
【0028】
図6は発射投球時のボールの通過状態を示す説明図である。
【0029】
図示するように、助勢ローター3;4は上下段とも同一回転数とする。打ち出しローター5;6の回転数は助勢ローター3;4の回転数と同じかそれよりも高く設定する。そして、打ち出しローター5;6の上下段の回転数を調整することにより発射速度と球種を選択するものである。〔球種・速度選択機構〕
【0030】
第1の球種・速度選択機構は、請求項4記載の発明から把握されるとおり、フローターサーブを投球するための仕組みであり、コントローラー7(73;74) により上下段の打ち出しローター5;6を同一回転数とし、該ローター5;6の回転面間の上下方向基準線Aに対して、移動発射枠体8を介してバレーボールBの球芯Cを合致させて導入供給することにより、助勢ローター3;4、打ち出しローター5;6を通過させ、無回転ボールを発射するようにしたものである。
【0031】
第2の球種・速度選択機構は、請求項5記載の発明から把握されるとおり、ドライブサーブを投球するための仕組みであり、コントローラー7(73;74) により上段の打ち出しローター5の回転数を下段の打ち出しローター6より高くし、該ローター5;6の回転面間の上下方向基準線Aに対して、移動発射枠体8を介してバレーボールBの球芯Cを合致させて導入供給することにより、助勢ローター3;4、打ち出しローター5;6を通過させ、縦回転ボールを発射するようにしたものである。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、球技スポーツにおける種々のトレーニング機器と同様に、バレーボール球技の練習に使用するサーブマシンや、サッカー球技の練習に使用するキックマシンとして提供され、実戦的な球種を模擬しながら反復練習をおこなうことができる点で斯界への貢献が期待できる。しかも、量産可能であるから普及性に問題がない。また、設備機器という点でも、装置構成がコンパクトで可搬性があり、種々の道具類とともに練習設備内に収納できるという利便性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】バレーボール球技のサーブマシンを構成した投球装置の正面視構成説明図である。
【図2】同じく左側面視構成説明図である。
【図3】同じく右側面視構成説明図である。
【図4】同じく背面視構成説明図(ボール導入供給面図)である。
【図5】図4の対応平面視構成説明図である。
【図6】発射投球時のボールの通過状態を示す説明図である。
【図7】先願装置における発射投球時のボールの通過状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0034】
1 架台
11 回動軸のハンドルサポート
12 ハンドルシャフト
2 機枠
21 カバー(上)
22 カバー(下)
3 助勢ローター(上段)
31 モーター
32 回転ドラム(又は回転ディスク)
4 助勢ローター(下段)
41 モーター
42 回転ドラム(又は回転ディスク)
5 打ち出しローター(上段)
51 モーター
52 回転ドラム(又は回転ディスク)
6 打ち出しローター(下段)
61 モーター
62 回転ドラム(又は回転ディスク)
7 コントローラー
71 ダイヤル(助勢ローター)
72 ダイヤル(助勢ローター)
73 ダイヤル(打ち出しローター)
74 ダイヤル(打ち出しローター)
75 電源スイッチ
8 移動発射枠体
81 突条(ボール供給ガイド手段)
A 上下方向基準線
B バレーボール〔球技用中空ボール〕
C 球芯
X サーブマシン〔投球装置〕

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バレーボール、サッカーボールその他の比較的大径の中空弾球体(以下、球技用中空ボール。)を、ボール直径より小さい距離に離隔して対向設置され正逆反対方向にそれぞれ回転するローター間に導入供給して通過させ、導入供給反対側に打ち出すようにした球技用中空ボールの投球装置において、
架台に回動可能に中空支持して固定設置され、少なくとも設置正背面を開口形成した概略把持枠構造を有する機枠と、
該機枠内の上下2段に離隔距離を変更調整可能に軸支され、モーターの駆動軸に直結して軸装した回転ドラム又は回転ディスクからなり、その回転面を対向設置してなる少なくとも2対のローターと、
前記モーター又はローターの発停とともに、回転数を各別に可変調整するコントローラーと、
前記機枠に保持され、前記ローター間に背面開口部から球技用中空ボールを導入供給し、かつ、装填するための移動発射枠体と、
前記移動発射枠体を介して前記ローターの回転面間の上下方向基準線に対して、球技用中空ボールの球芯を合致させて前記ローター間を通過させ、かつ、ボール回転の仕方を変更して発射するようにした球種・速度選択機構を具備したことを特徴とする球技用中空ボールの投球装置。
【請求項2】
少なくとも2対のローターが、1対の打ち出しローターと、1対又は複数対の助勢ローターを連設したものであり、移動発射枠体から球技用中空ボールを導入供給し、前記助勢ローター、打ち出しローターの順に通過させるものである請求項1記載の球技用中空ボールの投球装置。
【請求項3】
球種・速度選択機構が、コントローラーにより上下段の助勢ローターを同一回転数とし、上下段の打ち出しローターの回転数を助勢ローターの回転数と同じかそれよりも高く設定して、助勢ローターを通過させて勢いを付けたボールを打ち出しローターに導入供給することにより発射速度を調整する速度選択と、上下段の打ち出しローターの回転数を調整することにより無回転ボール又は縦回転ボールの球種選択とをおこなうものである請求項1又は2記載の球技用中空ボールの投球装置。
【請求項4】
球技用中空ボールがバレーボールであって、コントローラーにより上下段の打ち出しローターを同一回転数とし、該ローターの回転面間の上下方向基準線に対して、移動発射枠体を介してバレーボールの球芯を合致させて導入供給することにより、無回転ボールを発射するフローターサーブの球種・速度選択機構を具備したサーブマシンとして使用するものである請求項1乃至3のいずれか1項記載の球技用中空ボールの投球装置。
【請求項5】
球技用中空ボールがバレーボールであって、コントローラーにより上段の打ち出しローターの回転数を下段より高くし、該ローターの回転面間の上下方向基準線に対して、移動発射枠体を介してバレーボールの球芯を合致させて導入供給することにより、縦回転ボールを発射するドライブサーブの球種・速度選択機構を具備したサーブマシンとして使用するものである請求項1乃至3のいずれか1項記載の球技用中空ボールの投球装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−68127(P2006−68127A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−253071(P2004−253071)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(391018639)バブ日立工業株式会社 (38)