球状メソ多孔体
【課題】 本発明は外殻に規則的なメソ細孔を持ち且つ内部に空洞を持たせることにより、機能性物質を従来にない優れた選択性、徐放制御が可能で、ドラッグデリバリー等に好適に用いることができる機能性物質吸着性に優れた、新規な構造を持つメソ多孔体を提供することを目的とする。
【解決手段】 d間隔が2nmより大きい位置に少なくとも1つのピークを持つX線回折パターンを有し、平均細孔径0.8〜20nmであるメソ細孔から成る外殻を持ち、外殻の厚みが0.5〜5μmである空洞を有することにより上記課題を解決する。
【解決手段】 d間隔が2nmより大きい位置に少なくとも1つのピークを持つX線回折パターンを有し、平均細孔径0.8〜20nmであるメソ細孔から成る外殻を持ち、外殻の厚みが0.5〜5μmである空洞を有することにより上記課題を解決する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、規則的なメソ細孔から成る外殻を持ち且つ内部に空洞を有することを特徴とする球状メソ多孔体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、平均粒子径が0.1〜300μm程度の中空シリカ粒子は公知である(例えば、特許文献1及び特許文献2参照。)。また、珪酸アルカリ金属水溶液から活性シリカをシリカ以外の材料からなるコア上に沈殿させ、シリカシェルを破壊させることなく除去することによって、稠密なシリカシェルからなる中空粒子を製造する方法が公知である(例えば、特許文献3参照。)。さらに、外周部が殻、中心部が中空で、殻は外側が緻密で内側ほど粗な濃度傾斜構造をもったコア・シェル構造であるミクロンサイズの球状シリカ粒子が公知である(例えば、特許文献4参照。)。しかしながら、外殻に規則的なメソ細孔を持ったものではなく、選択性および徐放制御に劣るものであった。
【0003】
【特許文献1】特開平6−330606号公報(第1頁−第5頁)
【特許文献2】特開平7−013137号公報(第1頁−第7頁)
【特許文献3】特表2000−500113号公報(第1頁−第24頁)
【特許文献4】特開平11−029318号公報(第1頁−第13頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は外殻に規則的なメソ細孔を持ち且つ内部に空洞を持たせることにより、機能性物質を従来にない優れた選択性、徐放制御が可能な球状メソ多孔体を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明は、
(1)d間隔が2nmより大きい位置に少なくとも1つのピークを持つX線回折パターンを有し、平均細孔径0.8〜20nmであるメソ細孔から成る外殻を持ち、外殻の厚みが0.5〜10μmである空洞を有する球状メソ多孔体
(2)一次粒子径が10〜150μmである前記1記載の球状メソ多孔体
を提供することにある。
【発明の効果】
【0006】
本発明の球状メソ多孔体により、機能性物質を内部の空洞に担持させ、ドラッグデリバリーの担体や農薬、香料の徐放制御等広い分野での利用が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明における球状メソ多孔体とは、規則的なメソポーラス構造を持つ無機酸化物を主成分とする多孔質材料を指す。無機酸化物としては、これに限定されるものではないが、好ましくは、酸化ケイ素や酸化チタン、酸化ジルコニア等が挙げられる。規則性メソポーラス構造の合成の簡便さや構造の安定性の観点から、特に、酸化ケイ素を主成分とすることがより好ましい。
【0008】
本発明における球状メソ多孔体は、d間隔が2nmより大きい位置に少なくとも1つのピークを有するX線回折パターンを有していることが好ましく、d間隔が2nmより大きい位置に1つのピークを有するX線回折パターンを有していることがより好ましい。
【0009】
本発明における球状メソ多孔体は、d間隔が2nmより大きい位置に1つのピークを有し、このピークの50%より大きい相対強度のピークを2nmより小さい位置に有さないX線回折パターンを有していることがより好ましい。
【0010】
X線回折パターンはX線回折測定装置(RINT ULTIMA II 理学電機株式会社製)等により測定することができる。
【0011】
本発明における球状メソ多孔体は平均細孔径0.8〜20nmであるメソ多孔体から成る外殻の厚みが0.5〜10μmである空洞を有することが好ましい。
【0012】
本発明における球状メソ多孔体における細孔の平均細孔径は0.8nm未満であると、多孔質シリカへの機能性物質等の吸着が十分でなく、20nmを超えるものは製造するのが実質的に困難である。従って、上記観点から、本発明における球状メソ多孔体の平均細孔径は、0.8〜20nmであり、好ましくは1.5〜20nmであり、最も好ましくは4〜20nmである。
【0013】
細孔の平均細孔径の測定方法については特に限定されるものではないが、例えば、公知の窒素吸着測定法により算出することができる。
【0014】
本発明における球状メソ多孔体の0.8〜20nmの範囲内にある細孔は、機能性物質担持の観点から好ましくは全体の60%以上(体積)であり、より好ましくは80%であり、更に好ましくは90%以上であり、最も好ましくは95%以上である。
【0015】
本発明における外殻の厚みは機能性物質担持の観点から0.5〜10μmが好ましく、1〜10μmがより好ましい。
【0016】
外殻の厚みの測定法は特に限定されるものではないが、例えば、球状メソ多孔体を粉砕して得られた粉砕メソ多孔体を走査型電子顕微鏡観察することにより算出することができる。
【0017】
本発明における空洞容積は機能性物質担持の観点から500μm3/個〜1690000μm3/個が好ましく、4000μm3/個〜500000μm3/個がより好ましく、4000μm3/個〜62000μm3/個がさらに好ましい。
【0018】
空洞容積の測定法は特に限定されるものではないが、球状メソ多孔体を粉砕して得られた粉砕メソ多孔体を走査型電子顕微鏡観察することにより得られた空洞を形成する球の半径rからV=4/3πr3により算出することができる。
【0019】
本発明における球状メソ多孔体の比表面積は100m2/g未満であると、球状メソ多孔体への機能性物質担持の吸着が十分でない場合があり比表面積が2000m2/gより大きいものは、製造するのが実質的に困難である。従って、上記観点から、本発明におけるメソ多孔体の比表面積は好ましくは100〜2000m2/g、より好ましくは300〜1500m2/g、最も好ましくは450〜1500m2/gである。
【0020】
比表面積の測定法は特に限定されるものではないが、公知の窒素吸着測定により算出することができる。
【0021】
本発明における球状メソ多孔体の細孔容積は特に限定されるものではないが、好ましくは、0.1cm3/g〜3.0cm3/g、より好ましくは0.5cm3/g〜2.0cm3/g、さらに好ましくは1.0cm3/g〜2.0cm3/gであるようにコントロールされたものが良い。細孔容量が上記範囲より小さいものものでは、球状メソ多孔体への機能性物質担持の吸着量が十分でない場合があり、細孔容量が上記範囲より大きいものは、製造するのが実質的に困難である。
【0022】
細孔容積の測定法は特に限定されるものではないが、公知の窒素吸着測定により算出することができる。
【0023】
本発明の球状メソ多孔体の比表面積(m2/g)、細孔容積(cm3/g)、平均細孔経(nm)は公知の窒素吸着測定により算出することができる。すなわち、平均細孔径は公知のBJH法により算出することができ、比表面積は公知のBET法により算出することができ、細孔容積は公知のBJH法、t法などにより算出することができる。また、一次粒子径は走査型電子顕微鏡により観察することができる。
【0024】
本発明における球状メソ多孔体の外形形状は完全な球体に限定されるものではなく、球状を示す形状であることが好ましい。外形形状は走査型電子顕微鏡で観察することができる。
【0025】
本発明における球状メソ多孔体の一次粒子径は10μm未満であると、機能性物質担持の吸着安定性が不充分であり、150μmを超えると機能性物質担持が著しく劣る。従って、上記観点から、本発明における球状メソ多孔体の一次粒子径は、機能性物質担持の吸着安定性の観点から好ましくは10μm〜150μmであり、より好ましくは20μm〜100μmであり、最も好ましくは、20μm〜50μmである。
【0026】
本発明における球状メソ多孔体の細孔の形状は特に限定するものではないが、ワームホール型、2dヘキサゴナル型、3dヘキサゴナル型が好ましい。
【0027】
なお、細孔の形状は透過型電子顕微鏡観察やX線回折パターン測定により、特定することができる。
【0028】
本発明における機能性物質とは、特に限定するものではないが、アスタキサンチン、コエンザイムQ−10等の栄養成分や各種医薬や生理活性物質等の薬理成分、香料、農薬、肥料、殺菌剤、消毒剤、抗菌剤、防カビ剤、防虫剤、殺虫剤、除草剤、害虫忌避剤、動物忌避剤、誘引剤等、種々の機能や作用を有する化学物質が挙げられる。
【0029】
本発明の球状メソ多孔体の製造方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、無機原料を有機原料と混合し、反応させることにより、有機物を鋳型としてそのまわりに無機物の骨格が形成された有機物と無機物の複合体を形成させた後、得られた複合体から、有機物を除去する方法が挙げられる。
【0030】
無機原料は、反応後に無機酸化物の細孔構造を成すものであれば特に限定されるものではないが、好ましくはケイ素系やチタン系、ジルコニア系原料等が挙げられる。最も好ましくはケイ素系原料であるが、これは例えば、層状珪酸塩、非層状珪酸塩等の珪酸塩を含む物質及び珪酸塩以外の珪素を含有する物質が挙げられる。層状珪酸塩としては、カネマイト(NaHSi2O5・3H2O)、ジ珪酸ナトリウム結晶(Na2Si2O5)、マカタイト(NaHSi4O9・5H2O)、アイラアイト(NaHSi8O17・XH2O)、マガディアイト(Na2HSi14O29・XH2O)、ケニヤアイト(Na2HSi20O41・XH2O)等が挙げられ、非層状珪酸塩としては、水ガラス(珪酸ソーダ)、ガラス、無定形珪酸ナトリウム等が挙げられる。また、珪酸塩以外の珪素を含有する物質としては、シリカ、シリカ酸化物、シリカ−金属複合酸化物、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラメチルアンモニウム(TMA)シリケート、テトラエチルオルトシリケート等のシリコンアルコキシド等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0031】
鋳型となる有機原料としては、特に限定されるものではないが、例えば界面活性剤が挙げられ、これは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0032】
界面活性剤としては特に限定されるものではないが、非イオン型界面活性剤が好ましい。
【0033】
非イオン型界面活性剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン2級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン酸誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のエーテル型のものや、ポリオキシエチレンアルキルアミン等の含窒素型のものを使用することができるが、細孔規則性および空洞容積の観点から、ポリグリセリンに脂肪酸をエステル化したポリグリセリン脂肪酸エステルが好ましい。これらは単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0034】
ポリグリセリン脂肪酸エステルは細孔規則性および空洞容積の観点から、HLBが14.0〜18.0であることが好ましく、15.0〜18.0であることがさらに好ましく、15.0〜16.0であることが最も好ましい。ここで、HLBは分子中の親水基と親油基のバランスを表し、分子中の親水基が0%の時を0、100%の時を20として等分したものである。
【0035】
ポリグリセリン脂肪酸エステルは細孔規則性および空洞容積の観点から、ポリグリセリン組成中、グリセリン3量体〜10量体の中から選ばれる1種のポリグリセリンの含量が35%以上であることが好ましい。この組成分布はガスクロマトグラフィーや液体クロマトグラフィーにより分析でき、特にポリグリセリンをトリメチルシリル化誘導体とした後、ガスクロマトグラフィーに付すことにより簡便に分析することができる。
【0036】
ポリグリセリン脂肪酸エステルは、細孔規則性および空洞容積の観点から、ポリグリセリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸の炭素数は12〜14が好ましい。
【0037】
無機原料と有機原料を混合する場合、適当な溶媒を用いても良い。溶媒としては、特に限定されるものではないが、水、アルコール等が挙げられる。
【0038】
反応溶液中にフッ化アンモニウム等の塩基性物質を添加することが好ましい。
【0039】
無機原料と有機原料の混合方法は、特に限定されるものではないが、界面活性剤を酸性溶液に溶解させた後、この溶液に塩基性物質と無機原料を添加し、20℃〜60℃で3時間〜24時間混合することが好ましい。無機原料と界面活性剤の混合比(重量比)は特に限定されるものではないが、無機原料:界面活性剤=1:0.5〜1:2が好ましく、1:1〜1:1.5がより好ましい。無機原料と塩基性物質の混合比(重量比)は特に限定されるものではないが、無機原料:塩基性物質=100:0.1〜100:10が好ましく、100:1〜100:5がより好ましい。
【0040】
酸性溶液を調製するための酸性物質は特に限定されるものではないが、塩酸、臭化水素、ヨウ化水素、蟻酸、酢酸、硝酸、硫酸、燐酸等が挙げられる。
【0041】
無機原料と有機原料を攪拌し反応させる際のpH条件は、細孔規則性および空洞容積の観点から、酸性条件であれば特に限定されるものではないが、pH3〜pH−3が好ましく、pH1〜pH−3がより好ましく、pH0〜pH−3がさらに好ましい。
【0042】
有機物と無機物の複合体から有機物を除去する方法としては、複合体を濾取し、水等により洗浄、乾燥した後、400℃〜600℃で焼成する方法や、有機溶媒等により抽出する方法が挙げられる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0044】
製造例1
180mlの1.5N塩酸に6.3gのペンタグリセリンモノミリステート/(構成ポリグリセリン中グリセリン5量体の含量が42%・HLB15.0・太陽化学株式会社製)を添加混合し、ペンタグリセリンモノミリステートを完全に溶解させた。
この溶液に0.06gのフッ化アンモニウムと9gのテトラエトキシシラン(TEOS)とデカン15mlを添加した。この溶液(pH0以下)を密封系にて25℃で24時間攪拌した。生じた沈殿物を濾過にて回収後、イオン交換水にて水洗・濾過を3回繰り返した。エタノールにて洗浄・濾過後、この固形物を60℃で3時間乾燥させ、その後540℃で6時間焼成を行い、球状メソ多孔体A2gを得た。
【0045】
製造例2
180mlの1.5N塩酸に6.3gのペンタグリセリンモノミリステート/(構成ポリグリセリン中グリセリン5量体の含量が42%・HLB15.0・太陽化学株式会社製)を添加混合し、ペンタグリセリンモノミリステートを完全に溶解させた。
この溶液に0.15gのフッ化アンモニウムと9gのテトラエトキシシラン(TEOS)とデカン15mlを添加した。この溶液(pH0以下)を密封系にて25℃で24時間攪拌した。生じた沈殿物を濾過にて回収後、イオン交換水にて水洗・濾過を3回繰り返した。エタノールにて洗浄・濾過後、この固形物を60℃で3時間乾燥させ、その後540℃で6時間焼成を行い、球状メソ多孔体B2gを得た。
【0046】
製造例3
2.1gのペンタグリセリンモノミリステート/(構成ポリグリセリン中グリセリン5量体の含量が42%・HLB15.0・太陽化学株式会社製)にイオン交換水30gを添加し40℃で2時間撹拌した。その後、3N塩酸40gを添加し40℃で2時間撹拌した。
この溶液に水ガラス1号を3g添加し、40℃で65時間撹拌した。生じた沈殿物を濾過にて回収後、イオン交換水にて水洗・濾過を3回繰り返した。エタノールにて洗浄・濾過後、この固形物を60℃で3時間乾燥させ、その後540℃で6時間焼成を行い、球状メソ多孔体C0.8gを得た。
得られた球状メソ多孔体A、B、CのX線回折パターンを測定した。球状メソ多孔体Aの結果を図1に、球状メソ多孔体Bの結果を図2に、球状メソ多孔体Cの結果を図3に示す。
【0047】
図1及び図2及び図3に示すように得られた球状メソ多孔体A、B、CのX線回折パターンはd間隔が2nmより大きい位置にピークを1つ有した。
【0048】
得られた球状メソ多孔体A、B、Cを公知の窒素吸着法(BJH法)により細孔径分布を測定し、平均細孔径を求めた。球状メソ多孔体Aの結果を図4に、球状メソ多孔体Bの結果を図5に、球状メソ多孔体Cの結果を図6に示す。
【0049】
図4、図5、図6に示すように得られた球状メソ多孔体Aは平均細孔径10.5nmのメソ細孔を有し、球状メソ多孔体Bは平均細孔径13.9nmのメソ細孔を有し、球状メソ多孔体Cは平均細孔径6.2nmのメソ細孔を有した。
【0050】
公知の窒素吸着法により球状メソ多孔体A、B、Cの比表面積(BET法)、細孔容量(BJH法)を算出した。球状メソ多孔体Aの比表面積は、642m2/g、細孔容量は1.8cm3/gであった。球状メソ多孔体Bの比表面積は、490m2/g、細孔容量は1.4cm3/gであった。球状メソ多孔体Cの比表面積は、1380m2/g、細孔容量は1.6cm3/gであった。
【0051】
得られたメソ多孔体A、B、Cの外形形状を走査型電子顕微鏡により観察した。球状メソ多孔体Aの結果を図7と図8に、球状メソ多孔体Bの結果を図9と図10に、球状メソ多孔体Cの結果を図11に示す。
【0052】
図7及び図8に示すように得られた球状メソ多孔体Aは一次粒子径30μmの球形をしていることが確認された。
【0053】
図9及び図10に示すように得られた球状メソ多孔体Bは一次粒子径50μmの球形をしていることが確認された。
図11に示すように得られた球状メソ多孔体Cは一次粒子径50μmの球形をしていることが確認された。
【0054】
球状メソ多孔体A、B、Cのそれぞれ1gを乳鉢で磨り潰し粉砕球状メソ多孔体A1、B1、C1を得た。粉砕球状メソ多孔体A1、B1、C1の走査型電子顕微鏡観察結果をそれぞれ図12、図13、図14に示す。
【0055】
図12、図13、図14に示すように粉砕球状メソ多孔体A1、B1、C1には空洞が観察され、球状メソ多孔体A、B、Cの内部に空洞が形成されていることが確認された。(A1:半径15μm、外殻の厚み1.6μm、空洞を形成する球の半径13.4μm/B1:半径25μm、外殻の厚み1.4μm、空洞を形成する球の半径23.6μm、C1:半径25μm、外殻の厚み7μm、空洞を形成する球の半径18μm)
粉砕球状メソ多孔体A1、B1、C1の半径から球状メソ多孔体A、B、Cの空洞容積を算出したところ10073.6μm3/個、55030.6μm3/個、24429.0μm3/個であった。
【0056】
球状メソ多孔体Aの透過型電子顕微鏡の細孔形状を透過型電子顕微鏡により観察した。球状メソ多孔体Aの透過型電子顕微鏡観察結果を図15に示す
【0057】
透過型電子顕微鏡観察結果の図15およびX線回折パターン測定結果の図1から球状メソ多孔体Aの細孔形状はワームホール型であることが確認された。
【0058】
比較品の製造例1
水ガラス溶液をソルビタンモノステアレートとポリオキシエチレンソルビタンモノオレート混合物の局方流動パラフィン溶液と共に乳化し、油中水滴型乳濁液を調整し、さらに硫酸アンモニウム溶液に加えて反応させて放置する。続いて濾過、洗浄、乾燥を行うことにより、多孔体aを得た。
【0059】
比較品の製造例1で得られた多孔体aのX線回折パターンを測定したところピークは観察されなかった。
【0060】
比較品の製造例1で得られた多孔体aを公知の窒素吸着法によりの細孔径分布を測定したところ、500nm〜2μmに広く分布していた。
【0061】
比較品の製造例1で得られた多孔体aを走査型電子顕微鏡観察したところ5〜300μmの大小様々な球状粒子が観察された。
【0062】
比較品の製造例1で得られた多孔体aを1g乳鉢で磨り潰し得た粉砕多孔体をa1とし走査型電子顕微鏡観察をしたところ大小様々な不定形空洞が観察された。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明により外殻に規則的なメソ細孔を持ち且つ内部に空洞を持った新規な構造を持つメソ多孔体を提供することができ、機能性物質の吸着させドラッグデリバリー等に好適に用いられるものであり、その産業上の利用価値は大である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】図1は球状メソ多孔体AのX線回折パターンを示す図である。
【図2】図2は球状メソ多孔体BのX線回折パターンを示す図である。
【図3】図3は球状メソ多孔体CのX線回折パターンを示す図である。
【図4】図4は球状メソ多孔体Aの細孔経分布を示す図である。
【図5】図5は球状メソ多孔体Bの細孔経分布を示す図である。
【図6】図6は球状メソ多孔体Cの細孔経分布を示す図である。
【図7】図7は球状メソ多孔体Aの走査型電子顕微鏡観察結果を示す図である。
【図8】図8は球状メソ多孔体Aの走査型電子顕微鏡観察結果を示す図である。
【図9】図9は球状メソ多孔体Bの走査型電子顕微鏡観察結果を示す図である。
【図10】図10は球状メソ多孔体Bの走査型電子顕微鏡観察結果を示す図である。
【図11】図11は球状メソ多孔体Cの走査型電子顕微鏡観察結果を示す図である。
【図12】図12は粉砕球状メソ多孔体A1の走査型電子顕微鏡観察結果を示す図である。
【図13】図13は粉砕球状メソ多孔体B1の走査型電子顕微鏡観察結果を示す図である。
【図14】図14は粉砕球状メソ多孔体C1の走査型電子顕微鏡観察結果を示す図である。
【図15】図15は球状メソ多孔体Aの透過型電子顕微鏡観察結果を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、規則的なメソ細孔から成る外殻を持ち且つ内部に空洞を有することを特徴とする球状メソ多孔体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、平均粒子径が0.1〜300μm程度の中空シリカ粒子は公知である(例えば、特許文献1及び特許文献2参照。)。また、珪酸アルカリ金属水溶液から活性シリカをシリカ以外の材料からなるコア上に沈殿させ、シリカシェルを破壊させることなく除去することによって、稠密なシリカシェルからなる中空粒子を製造する方法が公知である(例えば、特許文献3参照。)。さらに、外周部が殻、中心部が中空で、殻は外側が緻密で内側ほど粗な濃度傾斜構造をもったコア・シェル構造であるミクロンサイズの球状シリカ粒子が公知である(例えば、特許文献4参照。)。しかしながら、外殻に規則的なメソ細孔を持ったものではなく、選択性および徐放制御に劣るものであった。
【0003】
【特許文献1】特開平6−330606号公報(第1頁−第5頁)
【特許文献2】特開平7−013137号公報(第1頁−第7頁)
【特許文献3】特表2000−500113号公報(第1頁−第24頁)
【特許文献4】特開平11−029318号公報(第1頁−第13頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は外殻に規則的なメソ細孔を持ち且つ内部に空洞を持たせることにより、機能性物質を従来にない優れた選択性、徐放制御が可能な球状メソ多孔体を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明は、
(1)d間隔が2nmより大きい位置に少なくとも1つのピークを持つX線回折パターンを有し、平均細孔径0.8〜20nmであるメソ細孔から成る外殻を持ち、外殻の厚みが0.5〜10μmである空洞を有する球状メソ多孔体
(2)一次粒子径が10〜150μmである前記1記載の球状メソ多孔体
を提供することにある。
【発明の効果】
【0006】
本発明の球状メソ多孔体により、機能性物質を内部の空洞に担持させ、ドラッグデリバリーの担体や農薬、香料の徐放制御等広い分野での利用が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明における球状メソ多孔体とは、規則的なメソポーラス構造を持つ無機酸化物を主成分とする多孔質材料を指す。無機酸化物としては、これに限定されるものではないが、好ましくは、酸化ケイ素や酸化チタン、酸化ジルコニア等が挙げられる。規則性メソポーラス構造の合成の簡便さや構造の安定性の観点から、特に、酸化ケイ素を主成分とすることがより好ましい。
【0008】
本発明における球状メソ多孔体は、d間隔が2nmより大きい位置に少なくとも1つのピークを有するX線回折パターンを有していることが好ましく、d間隔が2nmより大きい位置に1つのピークを有するX線回折パターンを有していることがより好ましい。
【0009】
本発明における球状メソ多孔体は、d間隔が2nmより大きい位置に1つのピークを有し、このピークの50%より大きい相対強度のピークを2nmより小さい位置に有さないX線回折パターンを有していることがより好ましい。
【0010】
X線回折パターンはX線回折測定装置(RINT ULTIMA II 理学電機株式会社製)等により測定することができる。
【0011】
本発明における球状メソ多孔体は平均細孔径0.8〜20nmであるメソ多孔体から成る外殻の厚みが0.5〜10μmである空洞を有することが好ましい。
【0012】
本発明における球状メソ多孔体における細孔の平均細孔径は0.8nm未満であると、多孔質シリカへの機能性物質等の吸着が十分でなく、20nmを超えるものは製造するのが実質的に困難である。従って、上記観点から、本発明における球状メソ多孔体の平均細孔径は、0.8〜20nmであり、好ましくは1.5〜20nmであり、最も好ましくは4〜20nmである。
【0013】
細孔の平均細孔径の測定方法については特に限定されるものではないが、例えば、公知の窒素吸着測定法により算出することができる。
【0014】
本発明における球状メソ多孔体の0.8〜20nmの範囲内にある細孔は、機能性物質担持の観点から好ましくは全体の60%以上(体積)であり、より好ましくは80%であり、更に好ましくは90%以上であり、最も好ましくは95%以上である。
【0015】
本発明における外殻の厚みは機能性物質担持の観点から0.5〜10μmが好ましく、1〜10μmがより好ましい。
【0016】
外殻の厚みの測定法は特に限定されるものではないが、例えば、球状メソ多孔体を粉砕して得られた粉砕メソ多孔体を走査型電子顕微鏡観察することにより算出することができる。
【0017】
本発明における空洞容積は機能性物質担持の観点から500μm3/個〜1690000μm3/個が好ましく、4000μm3/個〜500000μm3/個がより好ましく、4000μm3/個〜62000μm3/個がさらに好ましい。
【0018】
空洞容積の測定法は特に限定されるものではないが、球状メソ多孔体を粉砕して得られた粉砕メソ多孔体を走査型電子顕微鏡観察することにより得られた空洞を形成する球の半径rからV=4/3πr3により算出することができる。
【0019】
本発明における球状メソ多孔体の比表面積は100m2/g未満であると、球状メソ多孔体への機能性物質担持の吸着が十分でない場合があり比表面積が2000m2/gより大きいものは、製造するのが実質的に困難である。従って、上記観点から、本発明におけるメソ多孔体の比表面積は好ましくは100〜2000m2/g、より好ましくは300〜1500m2/g、最も好ましくは450〜1500m2/gである。
【0020】
比表面積の測定法は特に限定されるものではないが、公知の窒素吸着測定により算出することができる。
【0021】
本発明における球状メソ多孔体の細孔容積は特に限定されるものではないが、好ましくは、0.1cm3/g〜3.0cm3/g、より好ましくは0.5cm3/g〜2.0cm3/g、さらに好ましくは1.0cm3/g〜2.0cm3/gであるようにコントロールされたものが良い。細孔容量が上記範囲より小さいものものでは、球状メソ多孔体への機能性物質担持の吸着量が十分でない場合があり、細孔容量が上記範囲より大きいものは、製造するのが実質的に困難である。
【0022】
細孔容積の測定法は特に限定されるものではないが、公知の窒素吸着測定により算出することができる。
【0023】
本発明の球状メソ多孔体の比表面積(m2/g)、細孔容積(cm3/g)、平均細孔経(nm)は公知の窒素吸着測定により算出することができる。すなわち、平均細孔径は公知のBJH法により算出することができ、比表面積は公知のBET法により算出することができ、細孔容積は公知のBJH法、t法などにより算出することができる。また、一次粒子径は走査型電子顕微鏡により観察することができる。
【0024】
本発明における球状メソ多孔体の外形形状は完全な球体に限定されるものではなく、球状を示す形状であることが好ましい。外形形状は走査型電子顕微鏡で観察することができる。
【0025】
本発明における球状メソ多孔体の一次粒子径は10μm未満であると、機能性物質担持の吸着安定性が不充分であり、150μmを超えると機能性物質担持が著しく劣る。従って、上記観点から、本発明における球状メソ多孔体の一次粒子径は、機能性物質担持の吸着安定性の観点から好ましくは10μm〜150μmであり、より好ましくは20μm〜100μmであり、最も好ましくは、20μm〜50μmである。
【0026】
本発明における球状メソ多孔体の細孔の形状は特に限定するものではないが、ワームホール型、2dヘキサゴナル型、3dヘキサゴナル型が好ましい。
【0027】
なお、細孔の形状は透過型電子顕微鏡観察やX線回折パターン測定により、特定することができる。
【0028】
本発明における機能性物質とは、特に限定するものではないが、アスタキサンチン、コエンザイムQ−10等の栄養成分や各種医薬や生理活性物質等の薬理成分、香料、農薬、肥料、殺菌剤、消毒剤、抗菌剤、防カビ剤、防虫剤、殺虫剤、除草剤、害虫忌避剤、動物忌避剤、誘引剤等、種々の機能や作用を有する化学物質が挙げられる。
【0029】
本発明の球状メソ多孔体の製造方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、無機原料を有機原料と混合し、反応させることにより、有機物を鋳型としてそのまわりに無機物の骨格が形成された有機物と無機物の複合体を形成させた後、得られた複合体から、有機物を除去する方法が挙げられる。
【0030】
無機原料は、反応後に無機酸化物の細孔構造を成すものであれば特に限定されるものではないが、好ましくはケイ素系やチタン系、ジルコニア系原料等が挙げられる。最も好ましくはケイ素系原料であるが、これは例えば、層状珪酸塩、非層状珪酸塩等の珪酸塩を含む物質及び珪酸塩以外の珪素を含有する物質が挙げられる。層状珪酸塩としては、カネマイト(NaHSi2O5・3H2O)、ジ珪酸ナトリウム結晶(Na2Si2O5)、マカタイト(NaHSi4O9・5H2O)、アイラアイト(NaHSi8O17・XH2O)、マガディアイト(Na2HSi14O29・XH2O)、ケニヤアイト(Na2HSi20O41・XH2O)等が挙げられ、非層状珪酸塩としては、水ガラス(珪酸ソーダ)、ガラス、無定形珪酸ナトリウム等が挙げられる。また、珪酸塩以外の珪素を含有する物質としては、シリカ、シリカ酸化物、シリカ−金属複合酸化物、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラメチルアンモニウム(TMA)シリケート、テトラエチルオルトシリケート等のシリコンアルコキシド等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0031】
鋳型となる有機原料としては、特に限定されるものではないが、例えば界面活性剤が挙げられ、これは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0032】
界面活性剤としては特に限定されるものではないが、非イオン型界面活性剤が好ましい。
【0033】
非イオン型界面活性剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン2級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン酸誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のエーテル型のものや、ポリオキシエチレンアルキルアミン等の含窒素型のものを使用することができるが、細孔規則性および空洞容積の観点から、ポリグリセリンに脂肪酸をエステル化したポリグリセリン脂肪酸エステルが好ましい。これらは単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0034】
ポリグリセリン脂肪酸エステルは細孔規則性および空洞容積の観点から、HLBが14.0〜18.0であることが好ましく、15.0〜18.0であることがさらに好ましく、15.0〜16.0であることが最も好ましい。ここで、HLBは分子中の親水基と親油基のバランスを表し、分子中の親水基が0%の時を0、100%の時を20として等分したものである。
【0035】
ポリグリセリン脂肪酸エステルは細孔規則性および空洞容積の観点から、ポリグリセリン組成中、グリセリン3量体〜10量体の中から選ばれる1種のポリグリセリンの含量が35%以上であることが好ましい。この組成分布はガスクロマトグラフィーや液体クロマトグラフィーにより分析でき、特にポリグリセリンをトリメチルシリル化誘導体とした後、ガスクロマトグラフィーに付すことにより簡便に分析することができる。
【0036】
ポリグリセリン脂肪酸エステルは、細孔規則性および空洞容積の観点から、ポリグリセリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸の炭素数は12〜14が好ましい。
【0037】
無機原料と有機原料を混合する場合、適当な溶媒を用いても良い。溶媒としては、特に限定されるものではないが、水、アルコール等が挙げられる。
【0038】
反応溶液中にフッ化アンモニウム等の塩基性物質を添加することが好ましい。
【0039】
無機原料と有機原料の混合方法は、特に限定されるものではないが、界面活性剤を酸性溶液に溶解させた後、この溶液に塩基性物質と無機原料を添加し、20℃〜60℃で3時間〜24時間混合することが好ましい。無機原料と界面活性剤の混合比(重量比)は特に限定されるものではないが、無機原料:界面活性剤=1:0.5〜1:2が好ましく、1:1〜1:1.5がより好ましい。無機原料と塩基性物質の混合比(重量比)は特に限定されるものではないが、無機原料:塩基性物質=100:0.1〜100:10が好ましく、100:1〜100:5がより好ましい。
【0040】
酸性溶液を調製するための酸性物質は特に限定されるものではないが、塩酸、臭化水素、ヨウ化水素、蟻酸、酢酸、硝酸、硫酸、燐酸等が挙げられる。
【0041】
無機原料と有機原料を攪拌し反応させる際のpH条件は、細孔規則性および空洞容積の観点から、酸性条件であれば特に限定されるものではないが、pH3〜pH−3が好ましく、pH1〜pH−3がより好ましく、pH0〜pH−3がさらに好ましい。
【0042】
有機物と無機物の複合体から有機物を除去する方法としては、複合体を濾取し、水等により洗浄、乾燥した後、400℃〜600℃で焼成する方法や、有機溶媒等により抽出する方法が挙げられる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0044】
製造例1
180mlの1.5N塩酸に6.3gのペンタグリセリンモノミリステート/(構成ポリグリセリン中グリセリン5量体の含量が42%・HLB15.0・太陽化学株式会社製)を添加混合し、ペンタグリセリンモノミリステートを完全に溶解させた。
この溶液に0.06gのフッ化アンモニウムと9gのテトラエトキシシラン(TEOS)とデカン15mlを添加した。この溶液(pH0以下)を密封系にて25℃で24時間攪拌した。生じた沈殿物を濾過にて回収後、イオン交換水にて水洗・濾過を3回繰り返した。エタノールにて洗浄・濾過後、この固形物を60℃で3時間乾燥させ、その後540℃で6時間焼成を行い、球状メソ多孔体A2gを得た。
【0045】
製造例2
180mlの1.5N塩酸に6.3gのペンタグリセリンモノミリステート/(構成ポリグリセリン中グリセリン5量体の含量が42%・HLB15.0・太陽化学株式会社製)を添加混合し、ペンタグリセリンモノミリステートを完全に溶解させた。
この溶液に0.15gのフッ化アンモニウムと9gのテトラエトキシシラン(TEOS)とデカン15mlを添加した。この溶液(pH0以下)を密封系にて25℃で24時間攪拌した。生じた沈殿物を濾過にて回収後、イオン交換水にて水洗・濾過を3回繰り返した。エタノールにて洗浄・濾過後、この固形物を60℃で3時間乾燥させ、その後540℃で6時間焼成を行い、球状メソ多孔体B2gを得た。
【0046】
製造例3
2.1gのペンタグリセリンモノミリステート/(構成ポリグリセリン中グリセリン5量体の含量が42%・HLB15.0・太陽化学株式会社製)にイオン交換水30gを添加し40℃で2時間撹拌した。その後、3N塩酸40gを添加し40℃で2時間撹拌した。
この溶液に水ガラス1号を3g添加し、40℃で65時間撹拌した。生じた沈殿物を濾過にて回収後、イオン交換水にて水洗・濾過を3回繰り返した。エタノールにて洗浄・濾過後、この固形物を60℃で3時間乾燥させ、その後540℃で6時間焼成を行い、球状メソ多孔体C0.8gを得た。
得られた球状メソ多孔体A、B、CのX線回折パターンを測定した。球状メソ多孔体Aの結果を図1に、球状メソ多孔体Bの結果を図2に、球状メソ多孔体Cの結果を図3に示す。
【0047】
図1及び図2及び図3に示すように得られた球状メソ多孔体A、B、CのX線回折パターンはd間隔が2nmより大きい位置にピークを1つ有した。
【0048】
得られた球状メソ多孔体A、B、Cを公知の窒素吸着法(BJH法)により細孔径分布を測定し、平均細孔径を求めた。球状メソ多孔体Aの結果を図4に、球状メソ多孔体Bの結果を図5に、球状メソ多孔体Cの結果を図6に示す。
【0049】
図4、図5、図6に示すように得られた球状メソ多孔体Aは平均細孔径10.5nmのメソ細孔を有し、球状メソ多孔体Bは平均細孔径13.9nmのメソ細孔を有し、球状メソ多孔体Cは平均細孔径6.2nmのメソ細孔を有した。
【0050】
公知の窒素吸着法により球状メソ多孔体A、B、Cの比表面積(BET法)、細孔容量(BJH法)を算出した。球状メソ多孔体Aの比表面積は、642m2/g、細孔容量は1.8cm3/gであった。球状メソ多孔体Bの比表面積は、490m2/g、細孔容量は1.4cm3/gであった。球状メソ多孔体Cの比表面積は、1380m2/g、細孔容量は1.6cm3/gであった。
【0051】
得られたメソ多孔体A、B、Cの外形形状を走査型電子顕微鏡により観察した。球状メソ多孔体Aの結果を図7と図8に、球状メソ多孔体Bの結果を図9と図10に、球状メソ多孔体Cの結果を図11に示す。
【0052】
図7及び図8に示すように得られた球状メソ多孔体Aは一次粒子径30μmの球形をしていることが確認された。
【0053】
図9及び図10に示すように得られた球状メソ多孔体Bは一次粒子径50μmの球形をしていることが確認された。
図11に示すように得られた球状メソ多孔体Cは一次粒子径50μmの球形をしていることが確認された。
【0054】
球状メソ多孔体A、B、Cのそれぞれ1gを乳鉢で磨り潰し粉砕球状メソ多孔体A1、B1、C1を得た。粉砕球状メソ多孔体A1、B1、C1の走査型電子顕微鏡観察結果をそれぞれ図12、図13、図14に示す。
【0055】
図12、図13、図14に示すように粉砕球状メソ多孔体A1、B1、C1には空洞が観察され、球状メソ多孔体A、B、Cの内部に空洞が形成されていることが確認された。(A1:半径15μm、外殻の厚み1.6μm、空洞を形成する球の半径13.4μm/B1:半径25μm、外殻の厚み1.4μm、空洞を形成する球の半径23.6μm、C1:半径25μm、外殻の厚み7μm、空洞を形成する球の半径18μm)
粉砕球状メソ多孔体A1、B1、C1の半径から球状メソ多孔体A、B、Cの空洞容積を算出したところ10073.6μm3/個、55030.6μm3/個、24429.0μm3/個であった。
【0056】
球状メソ多孔体Aの透過型電子顕微鏡の細孔形状を透過型電子顕微鏡により観察した。球状メソ多孔体Aの透過型電子顕微鏡観察結果を図15に示す
【0057】
透過型電子顕微鏡観察結果の図15およびX線回折パターン測定結果の図1から球状メソ多孔体Aの細孔形状はワームホール型であることが確認された。
【0058】
比較品の製造例1
水ガラス溶液をソルビタンモノステアレートとポリオキシエチレンソルビタンモノオレート混合物の局方流動パラフィン溶液と共に乳化し、油中水滴型乳濁液を調整し、さらに硫酸アンモニウム溶液に加えて反応させて放置する。続いて濾過、洗浄、乾燥を行うことにより、多孔体aを得た。
【0059】
比較品の製造例1で得られた多孔体aのX線回折パターンを測定したところピークは観察されなかった。
【0060】
比較品の製造例1で得られた多孔体aを公知の窒素吸着法によりの細孔径分布を測定したところ、500nm〜2μmに広く分布していた。
【0061】
比較品の製造例1で得られた多孔体aを走査型電子顕微鏡観察したところ5〜300μmの大小様々な球状粒子が観察された。
【0062】
比較品の製造例1で得られた多孔体aを1g乳鉢で磨り潰し得た粉砕多孔体をa1とし走査型電子顕微鏡観察をしたところ大小様々な不定形空洞が観察された。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明により外殻に規則的なメソ細孔を持ち且つ内部に空洞を持った新規な構造を持つメソ多孔体を提供することができ、機能性物質の吸着させドラッグデリバリー等に好適に用いられるものであり、その産業上の利用価値は大である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】図1は球状メソ多孔体AのX線回折パターンを示す図である。
【図2】図2は球状メソ多孔体BのX線回折パターンを示す図である。
【図3】図3は球状メソ多孔体CのX線回折パターンを示す図である。
【図4】図4は球状メソ多孔体Aの細孔経分布を示す図である。
【図5】図5は球状メソ多孔体Bの細孔経分布を示す図である。
【図6】図6は球状メソ多孔体Cの細孔経分布を示す図である。
【図7】図7は球状メソ多孔体Aの走査型電子顕微鏡観察結果を示す図である。
【図8】図8は球状メソ多孔体Aの走査型電子顕微鏡観察結果を示す図である。
【図9】図9は球状メソ多孔体Bの走査型電子顕微鏡観察結果を示す図である。
【図10】図10は球状メソ多孔体Bの走査型電子顕微鏡観察結果を示す図である。
【図11】図11は球状メソ多孔体Cの走査型電子顕微鏡観察結果を示す図である。
【図12】図12は粉砕球状メソ多孔体A1の走査型電子顕微鏡観察結果を示す図である。
【図13】図13は粉砕球状メソ多孔体B1の走査型電子顕微鏡観察結果を示す図である。
【図14】図14は粉砕球状メソ多孔体C1の走査型電子顕微鏡観察結果を示す図である。
【図15】図15は球状メソ多孔体Aの透過型電子顕微鏡観察結果を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
d間隔が2nmより大きい位置に少なくとも1つのピークを持つX線回折パターンを有し、平均細孔径0.8〜20nmであるメソ細孔から成る外殻を持ち、外殻の厚みが0.5〜10μmである空洞を有することを特徴とする球状メソ多孔体。
【請求項2】
一次粒子径が10〜150μmである請求項1記載の球状メソ多孔体。
【請求項3】
多孔体が酸化ケイ素を主成分とする骨格を有するシリカ系材料であることを特徴とする請求項1又は2記載の球状メソ多孔体。
【請求項1】
d間隔が2nmより大きい位置に少なくとも1つのピークを持つX線回折パターンを有し、平均細孔径0.8〜20nmであるメソ細孔から成る外殻を持ち、外殻の厚みが0.5〜10μmである空洞を有することを特徴とする球状メソ多孔体。
【請求項2】
一次粒子径が10〜150μmである請求項1記載の球状メソ多孔体。
【請求項3】
多孔体が酸化ケイ素を主成分とする骨格を有するシリカ系材料であることを特徴とする請求項1又は2記載の球状メソ多孔体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−35454(P2009−35454A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−201996(P2007−201996)
【出願日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(000204181)太陽化学株式会社 (244)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(000204181)太陽化学株式会社 (244)
【Fターム(参考)】
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