説明

球状多分岐構造分子誘導体の製造方法

【課題】有効成分保持体の保持主体に用いるに好適な球状多分岐構造分子誘導体の製造方法を提供する。
【解決手段】球状多分岐構造分子を脱水し、脱水処理後の球状多分岐構造分子と、該球状多分岐構造分子の全水酸基に対して0.3当量〜0.8当量の下記一般式(I):
【化1】


(式中、Rは炭素数6〜20のアルキル基又はアルケニル基、Rは水素又は炭素数1〜3の直鎖又は分枝鎖のアルキル基であり、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、又は水素である)で表わされるアルファスルホ脂肪酸またはアルファスルホ脂肪酸エステルとを、80℃〜150℃、4〜8時間、反応させることにより球状多分岐構造分子誘導体を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香料、薬剤などの有効成分を散逸しないように保持するとともに、前記有効成分の徐放性、溶解性などの有用な機能を実現する有効成分保持体の保持主体に用いて好適な球状多分岐構造分子誘導体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
分岐状ポリグリセリンなどに代表される球状多分岐構造分子は、分子鎖が非常に多岐に分岐した構造を持ち、全体が網目構造を有しているため、分子の内部及び/又は表面に有効成分を保持することが可能となる。かかる保持構造は、一種のカプセル構造と見なせるので、いわゆる分子カプセルとしての応用が可能であり、その開発が進められている。
【0003】
球状多分岐構造分子を保持主体として有効成分を保持した有効成分保持体では、カプセル構造が実現されることになり、外環境の影響を受けづらい。また、球状多分岐構造分子が網目構造を有し、かつ有効成分を保持する駆動力として、水素結合や疎水性相互作用、π電子相互作用などの分子間相互作用が期待できるため、保持主体である球状多分岐構造分子よりも分子量の小さい化合物を有効成分として用いれば、簡単な操作によって有効成分の安定配合、安定分散、放出制御といった機能を発揮すること可能である。
【0004】
従来、球状多分岐構造分子に有効成分を内包する技術としては、例えば、特許文献1には、「α−グリコール内包型デンドリマー、その製造方法、α−グリコール型二座配位子及びその配位構造を有するルイス酸触媒」が開示されている。この技術では、特定構造のデンドリマーにアルミニウム化合物を担持させ、それをルイス酸触媒として利用可能とすることが記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、「樹状分岐分子に金属粒子前駆体を結合乃至内包させてなる複合粒子を含有することを特徴とする触媒」が開示されている。前記金属粒子前駆体として、Sc、Y、Ti、Zr、V、Nb、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、ランタノイド系列の元素、及び、アクチノイド系列の元素の少なくともいずれかの金属と白金との合金、並びに、白金の少なくともいずれかである金属イオンが、挙げられており、かかる触媒が、燃料電池用として好適な触媒として用い得ることが記載されている。
【0006】
また、特許文献3には、「電子供与性の結合もしくは原子を含むデンドリマーもしくはデンドロンに、有機化合物および有機金属化合物の1種以上のカチオンもしくはカチオンラジカルが内包あるいは複合化されていることを特徴とする有機・有機金属化合物内包デンドリマー」が開示されており、かかる有機・有機金属化合物内包デンドリマーは、発光材料、EL素子電子デバイスに好適に用い得ることが記載されている。
【0007】
また、特許文献4には、「A)少なくとも1種の窒素原子含有ハイパーブランチポリマーと、 B)25℃かつ1013mbarにおいて10g/L未満の水への溶解度を呈する少なくとも1種の活性物質または有効物質と、を含む、活性物質組成物または有効物質組成物」が開示されており、かかる構成の組成物により、水不溶性活性物質の水性相中での安定化が図れることが記載されている。
【0008】
しかしながら、上記従来技術では、内包された有効成分の安定性や、保持性の低さに問題があり、有効成分を安定的かつ効果的に保持する点については、まだ満足のいくものとはなっていない。また、親水性、疎水性などの物性の異なる有効成分を一連の保持主体材料で効果的に保持する点についても、改良しなければ、実用に供することができない。
【0009】
これに対して、球状多分岐構造分子の表面に存在する末端水酸基に適宜に選択された化合物を反応させることにより、球状多分岐構造分子をコアとして、コアの表面を覆うシェルを形成し、得られるシェルに親水性を付与したり、疎水性を付与することが、考えられる。このようにシェルを形成することにより、コアに保持した有効成分が疎水性であっても、シェルを親水性にすることにより、水溶性溶媒に容易に溶解させて使用することができる。逆に、シェルを疎水性とすることにより、コアに保持した有効成分が親水性であっても水溶性溶媒に対する遮蔽性(有効成分の保護性)を実現することができる。
【0010】
また、シェルの親水性および疎水性を一方に偏らせずに、親水性/疎水性バランスを適宜に調整すれば、球状多分岐構造分子の水溶性溶媒への溶解性を維持すると同時に、内部に保持した有効成分の保護性を向上させることもできる。
【0011】
上記親水性/疎水性バランスを適宜に調整可能なシェルを得るに適した化合物として、本発明者らの研究によれば、アルファスルホ脂肪酸またはアルファスルホ脂肪酸エステルが好ましいことが知見された。
【0012】
しかしながら、アルファスルホ脂肪酸またはアルファスルホ脂肪酸エステルを用いて球状多分岐構造分子(コア)の表面にシェルを形成する方法については、十分な研究がなく、適切な方法がないのが現状である。
【0013】
従来、アルファスルホ脂肪酸またはアルファスルホ脂肪酸エステルと多価アルコールとを反応させてアルファスルホ脂肪酸多価アルコールを製造する方法が提供されているが、この方法において、多価アルコールは球状多分岐構造分子ではなく、この方法は球状多分岐構造分子誘導体の製造を目指したものではない(特許文献5)。したがって、特許文献5においても、球状多分岐構造分子をコアとして、その表面にアルファスルホ脂肪酸またはアルファスルホ脂肪酸エステルを用いてシェルを形成し、コア−シェル型の球状多分岐構造分子、すなわち球状多分岐構造分子誘導体を製造する場合の諸条件については、不明である。実際、この特許文献5の開示技術に基づいて、球状多分岐構造分子誘導体を製造した場合、反応中に難崩壊性の泡が発生し、適切な反応制御が困難となったり、反応物がゲル化したり、目的のシェル部分の親水性/疎水性バランスが全く制御できないといった結果となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2006−188479号公報
【特許文献2】特開2006−134774号公報
【特許文献3】特開2006−070100号公報
【特許文献4】特表2008−531763号公報
【特許文献5】特開平06−172293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたもので、その課題は、有効成分を安定的かつ効果的に保持可能であり、有効成分が親水性あるいは疎水性のいずれであっても、有効成分の徐放性、溶解性などの有用な機能を実現することのできる有効成分保持体の保持主体に用いるに好適な球状多分岐構造分子誘導体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上記課題を解決するために、下記構成を採用した球状多分岐構造分子誘導体の製造方法を提供する。
【0017】
[1] 球状多分岐構造分子をコアとして、該コアの表面に下記一般式(I):
【0018】
【化1】

(式中、Rは炭素数6〜20のアルキル基又はアルケニル基、Rは水素又は炭素数1〜3の直鎖又は分枝鎖のアルキル基であり、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、又は水素である)で表わされるアルファスルホ脂肪酸またはアルファスルホ脂肪酸エステルからなるシェルが形成されてなる球状多分岐構造分子誘導体を得るための球状多分岐構造分子誘導体の製造方法であって、前記球状多分岐構造分子を脱水し、脱水処理後の球状多分岐構造分子と該球状多分岐構造分子の全水酸基に対して0.3当量〜0.8当量の上記アルファスルホ脂肪酸またはアルファスルホ脂肪酸エステルとを、80℃〜150℃、4〜8時間、反応させることにより球状多分岐構造分子誘導体を得る球状多分岐構造分子誘導体の製造方法。
[2] 球状多分岐構造分子と上記アルファスルホ脂肪酸またはアルファスルホ脂肪酸エステルとの反応を無溶媒かつ減圧条件下で行うことを特徴とする、上記[1]に記載の球状多分岐構造分子誘導体の製造方法。
[3] 球状多分岐構造分子が重量平均分子量1000〜100000の多分岐ポリグリセリンであることを特徴とする、上記[1]または[2]に記載の球状多分岐構造分子誘導体の製造方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明にかかる球状多分岐構造分子誘導体の製造方法によれば、反応中における難崩壊性の泡の発生が抑制され、ポリマーがゲル化することなく球状多分岐構造分子誘導体を製造することができ、得られた球状多分岐構造分子誘導体のシェルは所期の親水性/疎水性バランスを実現されたものにすることができる。
したがって、本発明にかかる球状多分岐構造分子誘導体の製造方法によれば、香料、薬剤などの有効成分を散逸しないように保持するとともに、前記有効成分の徐放性、溶解性などの有用な機能を実現する有効成分保持体の保持主体に用いて好適な球状多分岐構造分子誘導体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
前述のように、本発明にかかる球状多分岐構造分子誘導体の製造方法は、球状多分岐構造分子をコアとして、該コアの表面に下記一般式(I):
【0021】
【化2】

(式中、Rは炭素数6〜20のアルキル基又はアルケニル基、Rは水素又は炭素数1〜3の直鎖又は分枝鎖のアルキル基であり、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、又は水素である)で表わされるアルファスルホ脂肪酸またはアルファスルホ脂肪酸エステルからなるシェルが形成されてなる球状多分岐構造分子誘導体を得るための球状多分岐構造分子誘導体の製造方法であって、球状多分岐構造分子を脱水し、脱水処理後の球状多分岐構造分子と該球状多分岐構造分子の全水酸基に対して0.3当量〜0.8当量の上記アルファスルホ脂肪酸またはアルファスルホ脂肪酸エステルとを、80℃〜150℃、4〜8時間、反応させることにより球状多分岐構造分子誘導体を得ることを特徴とする。
以下、各構成要素について、順次、詳しく説明する。
【0022】
(球状多分岐構造分子)
本願発明に用いられる球状多分岐構造分子は、水酸基を分子中に複数有する重量平均分子量が1000以上の分子鎖が多分岐で水溶液中で球状を呈する多分岐状高分子であり、球状多分岐型高分子多価アルコールを挙げることができる。本発明に用いられる球状多分岐型高分子多価アルコールとは、分子中に複数個の水酸基を有する多価アルコールの脱水縮合、あるいはグリシドールやグリシジルエーテル基を含む化合物の開環付加重合によって得られた、エーテル結合によって高度に分岐した構造を分子内に有する高分子多価アルコールである。また、分子中に複数個のカルボン酸を有する化合物と分子中に複数個の水酸基を有する多価アルコールの脱水縮合によって得られたエステル結合によって高度に分岐した構造を分子内に有する高分子多価アルコールや、分子中に複数個のアミノ基を有する化合物と分子中に複数個の水酸基を有する多価アルコールの脱水縮合によって得られたアミド結合によって高度に分岐した構造を分子内に有する高分子多価アルコールである。
【0023】
一般に、水酸基を分子中に複数有する重量平均分子量1000以上からなる球状多分岐型多価アルコールは、分岐構造であるため水溶液中で球状形態を有していると報告されている。分岐の有無は13C−NMR測定により、分岐単位の三置換炭素原子に特異的な79〜81ppmの共鳴を強く示す場合に、多分岐体であることが確認できる(Macromolecules 1999,32,4240−4246,Macromolecules 2000,33,8158−8166)。
【0024】
本発明に用いる球状多分岐構造分子の重量平均分子量(Mw)は、1000〜100000であることが好ましく、1000〜50000であることがより好ましく、最も好ましくは1000〜20000である。
ここで、ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、0.5質量%の水溶液を調製し、温度40℃でゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定を行って求めることができる。例えば、測定装置として「RI−71」(商品名、Shodex社製)を用い、移動溶媒としては水を用い、標準物質としてはポリエチレングリコールを使用することができる。また、ポリマーの多分散度(Mw/Mn)は1〜10であるのが好ましく、1〜5であるのがさらに好ましい。なお、上記多分散度(Mw/Mn)の分母のMnは数平均分子量である。
【0025】
本発明で使用し得る球状多分岐型高分子多価アルコールの具体例を例示すると、ダイセル化学工業株式会社が販売するポリグリセリン(商品名「PGL20PW」、「PGLX」)、HyperPolymers社が販売するポリグリセリン(商品名「PG−2」、「PG−5」、「PG−6」)などが挙げられる。
【0026】
(アルファスルホ脂肪酸、アルファスルホ脂肪酸エステル)
本発明においてシェルの構成材料として用いられるアルファスルホ脂肪酸又はアルファスルホ脂肪酸エステルは、下記一般式(I):
【0027】
【化3】

で表わされる化合物である。
【0028】
一般式(I)中、Rは、一般に存在する脂肪酸の残基であればよく、直鎖、分枝、飽和、不飽和によって特に限定されるものではないが、好ましくは炭素数6〜20の直鎖又は分枝のアルキル基もしくはアルケニル基であり、例えばヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基などが挙げられる。
は、水素又は低級アルコール残基であり、低級アルコール残基であるRについては、上記Rの場合と同様に、一般に存在するものであればよく、直鎖、分枝、飽和、不飽和によって特に限定されるものではないが、好ましくは炭素数1〜3の直鎖又は分枝鎖のアルキル基であり、例えばメチル基、エチル基、プロピル基などが挙げられる。
また、Mは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は水素である。
【0029】
本発明で用いるアルファスルホ脂肪酸およびアルファスルホ脂肪酸エステルは、反応原料であると同時に自ら酸触媒としても作用するため、反応系には特には触媒を加える必要はない。また、従来必要であった四塩化炭素やトルエンなどの反応溶媒についても不要であり、経済的にも有利になり、作業環境も著しく改善される。
【0030】
上記アルファスルホ脂肪酸又はアルファスルホ脂肪酸エステルは、従来公知の方法で合成されたものであれば、特に制限はないが、好ましくは、合成後に過酸化水素等の漂白剤により漂白されたものが望ましい。漂白方法についても特に制限はなく、従来の方法で漂白されたものであればよい。
【0031】
本発明の球状多分岐構造分子誘導体の製造方法の目的は、有効成分保持体の保持主体として用いて好適な球状多分岐構造分子誘導体を得ることにある。目的の球状多分岐構造分子誘導体のシェルが所期の親水性/疎水性バランスを持つものとするために、本発明では、シェル材料としてアルファスルホ脂肪酸又はアルファスルホ脂肪酸エステルが用いられ、下記特定の条件下で、球状多分岐型高分子多価アルコール(球状多分岐構造分子)とシェル材料とを反応させる。
【0032】
まず、前記球状多分岐型高分子多価アルコールを脱水する。
その後、脱水処理後の球状多分型高分子多価アルコールに対して該球状多分岐型高分子多価アルコールの水酸基に対して0.3当量〜0.8当量のアルファスルホ脂肪酸またはアルファスルホ脂肪酸エステルを配合する。
上記2成分を、80℃〜150℃、4〜8時間、反応させる。
【0033】
本発明方法では、球状多分岐型高分子多価アルコールの表面の水酸基にシェル材料(アルファスルホ脂肪酸又はアルファスルホ脂肪酸エステル)をエステル化により修飾させてシェルを形成させるが、前処理として球状多分岐型高分子多価アルコールを脱水する必要がある。球状多分岐型高分子多価アルコールが水分を多量に含んでいると、反応中に難崩壊性の泡が発生し、ハンドリング性の悪化、反応性の低下につながるからである。脱水の方法については特に制限はなく、従来公知の方法で行うことができる。
【0034】
(配合比)
球状多分岐型高分子多価アルコールの全水酸基に対して0.3当量〜0.8当量、好ましくは0.5当量〜0.7当量のアルファスルホ脂肪酸またはアルファスルホ脂肪酸エステルを配合する。
0.3当量未満では、水酸基を分子鎖に持つ水溶性球状多分岐型高分子多価アルコールにアルファスルホ脂肪酸(エステル)を反応させることで得られる反応物の疎水性が不十分となり、分子カプセルとしての機能が発揮できない。また、0.8当量を超えると、球状多分岐型高分子多価アルコールの分子内部にある水酸基とアルファスルホ脂肪酸(エステル)の反応性の低さにより、未反応アルファスルホ脂肪酸(エステル)が残存しやすくなる。
【0035】
(反応温度)
反応においては、先ず、アルファスルホ脂肪酸又はアルファスルホ脂肪酸エステルと球状多分岐型高分子多価アルコールを、温度80〜100℃、好ましくは100℃で混合溶解させる。
次に、この混合液に必要に応じて還元剤を添加して、110〜150℃、好ましくは110℃〜130℃、さらに好ましくは115℃〜125℃の範囲の温度に加熱して、エステル化を行わせる。
この場合、反応温度が80℃未満では反応液が固化してしまい、速やかに反応が進行しない。また150℃を越える温度では鎖末端に水酸基を有する球状多分岐型高分子多価アルコール同士の反応によりゲル化してしまう。
【0036】
(反応時間)
反応時間は4〜8時間、より好ましくは6〜7時間である。反応時間が4時間未満では反応率の低下があり、8時間を超えると、反応物のゲル化を招く。
【0037】
(還元剤)
本発明において、必要に応じて反応に用いる還元剤の主要な役割は、目的の球状多分岐構造分子誘導体の着色を防止することにある。かかる還元剤としては、還元能を有する化合物であれば特に限定されるものではないが、好ましくはチオ硫酸ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化アルミニウムリチウム等が挙げられる。これらの内でもチオ硫酸ナトリウムが好ましく、その好ましい配合量は5〜30質量%であり、さらに好ましくは10〜20質量%である。この場合、5質量%未満では着色防止効果が得られない。また、30質量%より多く添加しても更なる色調の改善はみられない。
【0038】
(その他の反応条件)
反応中に生成するアルコールもしくは水を反応系外に速やかに留去させるために減圧下(好ましくは200torr以下)で行うことが望ましい。
【0039】
本発明において、エステル化反応で得られる球状多分岐構造分子誘導体(アルファスルホ脂肪酸球状多分岐型高分子多価アルコールエステル)のpHは1である。
着色を防止する必要がある場合は、得られた反応生成物を直ちに中和し、反応後のpHを6〜9、より好ましくは7〜8とする必要がある。それ以上でもそれ以下でも色調が悪くなる。中和の方法については特に制限はなく、反応物を水に溶解させ、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの金属塩や、トリエチルアミンなどの有機塩基化合物など、任意の塩基性化合物を添加することで行うことができる。より具体的には、アルカリ金属塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩など)、アルカリ土類金属(例えばマグネシウム塩、カルシウム塩など)、置換もしくは無置換のアンモニウム塩(例えばアンモニウム塩、低級アミン塩、低級アルカノールアミン塩など)などが挙げられる。
【0040】
(球状多分岐構造分子誘導体の用途)
アルファスルホ脂肪酸誘導体と鎖末端に水酸基を有する球状多分岐型高分子多価アルコールとの反応で得られたアルファスルホ脂肪酸球状多分岐型高分子多価アルコールエステル(球状多分岐構造分子誘導体)は、アルファスルホ脂肪酸部(シェル)が疎水性を示すアルキル基と親水性を示すスルホン酸基を有するコア−シェル型球状多分岐構造分子となる。従って、水や水溶性溶媒に容易に溶解でき、内部に所望の有効成分を保持可能な有効成分保持体の保持主体として用いることができる。すなわち、香料などの有効成分の徐放出性や難溶性物質の可溶化など、有効成分の安定配合、安定分散、放出制御に高い効果を持つ機能性高分子として用いることができる。
【実施例】
【0041】
以下に、本発明にかかる球状多分岐構造分子誘導体の製造方法の実施例を説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではない。
【0042】
(球状多分岐構造分子の準備)
下記3種の高分子多価アルコールを球状多分岐構造分子として準備し、それらの多分岐性を、13C NMR(日本電子社製、商品名「JNM−LA300」)の値を用いて、分岐単位の三置換炭素原子に特異的な79〜81ppmの共鳴の強さに応じて判断した。
【0043】
第1の球状多分岐構造分子として準備したダイセル化学工業株式会社製の高分子多価アルコール「PGLX」、第2の球状多分岐構造分子として準備したダイセル化学工業株式会社製の高分子多価アルコール「PGL20PW」、第3の球状多分岐構造分子として準備したHyperPolymers社製の高分子多価アルコール「PG−6」は、それぞれ13C NMR(日本電子社製、商品名「JNM−LA300」)において、分岐単位の三置換炭素原子に特異的な79〜81ppmの共鳴を強く示すため、球状多分岐型高分子多価アルコールであると判断した。
【0044】
(実施例1)
まず、上記「PGLX」(平均重合度:40、水酸基価:693KOH(g/mg)、含水率:10%):48gをエタノール:115g(「PGLX」の含水量の24倍量(重量比))に溶解させた。
次に、上記エタノール溶液を減圧濃縮により脱水した。この脱水操作を2回繰り返した。
脱水後の「PGLX」:10gとアルファスルホパルミチン酸:30g(「PGLX」の全水酸基の0.7当量に相当)を4つ口ナスフラスコに仕込み、100℃で15分間攪拌混合した。その後、還元剤であるチオ硫酸ナトリウム3gを添加して、120℃、減圧下で、6時間反応を行った。
反応終了後、チオ硫酸ナトリウムは濾過によって除去し、次いで水酸化ナトリウム水溶液にて中和を行って、分岐状ポリグリセリン誘導体(シェルを有する球状多分岐構造分子)を得た。
収率は99%であり、GPCによる重量平均分子量は13000であった。
【0045】
(実施例2)
まず、上記「PGLX」(平均重合度:40、水酸基価:693KOH(g/mg)、含水率:10%):48gをエタノール:115g(「PGLX」の含水量の24倍量(重量比))に溶解させた。
次に、上記エタノール溶液を減圧濃縮により脱水した。この脱水操作を2回繰り返した。
脱水後の「PGLX」:10gとアルファスルホパルミチン酸メチルエステル:30g(「PGLX」の全水酸基の0.7当量に相当)を4つ口ナスフラスコに仕込み、100℃で15分間攪拌混合した。その後、還元剤であるチオ硫酸ナトリウム3gを添加して、120℃、減圧下で、6時間反応を行った。
反応終了後、チオ硫酸ナトリウムは濾過によって除去し、次いで水酸化ナトリウム水溶液にて中和を行って、分岐状ポリグリセリン誘導体(シェルを有する球状多分岐構造分子)を得た。
収率は95%であり、GPCによる重量平均分子量は12000であった。
【0046】
(実施例3)
まず、上記「PGL20PW」(平均重合度:20、水酸基価:718KOH(g/mg)、含水率:10%):48gをエタノール:115g(「PGL20PW」の含水量の24倍量(重量比))に溶解させた。
次に、上記エタノール溶液を減圧濃縮により脱水した。この脱水操作を2回繰り返した。
脱水後の「PGL20PW」:10gとアルファスルホパルミチン酸:30g(「PGL20PW」の全水酸基の0.7当量に相当)を4つ口ナスフラスコに仕込み、100℃で15分間攪拌混合した。その後、還元剤であるチオ硫酸ナトリウム3gを添加して、120℃、減圧下で、6時間反応を行った。
反応終了後、チオ硫酸ナトリウムは濾過によって除去し、次いで水酸化ナトリウム水溶液にて中和を行って、分岐状ポリグリセリン誘導体(シェルを有する球状多分岐構造分子)を得た。
収率は90%であり、GPCによる重量平均分子量は6000であった。
【0047】
(実施例4)
まず、上記「PGL20PW」(平均重合度:20、水酸基価:718KOH(g/mg)、含水率:10%):48gをエタノール:115g(「PGL20PW」の含水量の24倍量(重量比))に溶解させた。
次に、上記エタノール溶液を減圧濃縮により脱水した。この脱水操作を2回繰り返した。
脱水後の「PGL20PW」:10gとアルファスルホパルミチン酸メチルエステル:30g(「PGL20PW」の全水酸基の0.7当量に相当)を4つ口ナスフラスコに仕込み、100℃で15分間攪拌混合した。その後、還元剤であるチオ硫酸ナトリウム3gを添加して、120℃、減圧下で、6時間反応を行った。
反応終了後、チオ硫酸ナトリウムは濾過によって除去し、次いで水酸化ナトリウム水溶液にて中和を行って、分岐状ポリグリセリン誘導体(シェルを有する球状多分岐構造分子)を得た。
収率は93%であり、GPCによる重量平均分子量は7000であった。
【0048】
(実施例5)
まず、上記「PG−6」(平均重合度:80、水酸基価:680KOH(g/mg)、含水率:10%):48gをエタノール:115g(「PG−6」の含水量の24倍量(重量比))に溶解させた。
次に、上記エタノール溶液を減圧濃縮により脱水した。この脱水操作を2回繰り返した。
脱水後の「PG−6」:10gとアルファスルホパルミチン酸:30g(「PG−6」の全水酸基の0.7当量に相当)を4つ口ナスフラスコに仕込み、100℃で15分間攪拌混合した。その後、還元剤であるチオ硫酸ナトリウム:3gを添加して、120℃、減圧下で、6時間反応を行った。
反応終了後、チオ硫酸ナトリウムは濾過によって除去し、次いで水酸化ナトリウム水溶液にて中和を行って、分岐状ポリグリセリン誘導体(シェルを有する球状多分岐構造分子)を得た。
収率は93%であり、GPCによる重量平均分子量は23000であった。
【0049】
(実施例6)
まず、上記「PG−6」(平均重合度:80、水酸基価:680KOH(g/mg)、含水率:10%):48gをエタノール:115g(「PG−6」の含水量の24倍量(重量比))に溶解させた。
次に、上記エタノール溶液を減圧濃縮により脱水した。この脱水操作を2回繰り返した。
脱水後の「PG−6」:10gとアルファスルホパルミチン酸メチルエステル:30g(「PG−6」の全水酸基に対して0.7当量に相当)を4つ口ナスフラスコに仕込み、100℃で15分間攪拌混合した。その後、還元剤であるチオ硫酸ナトリウム:3gを添加して、120℃、減圧下で、6時間反応を行った。
反応終了後、チオ硫酸ナトリウムは濾過によって除去し、次いで水酸化ナトリウム水溶液にて中和を行って、分岐状ポリグリセリン誘導体(シェルを有する球状多分岐構造分子)を得た。
収率は89%であり、GPCによる重量平均分子量は22000であった。
【0050】
(比較例1)
まず、上記「PGLX」(平均重合度:40、水酸基価:693KOH(g/mg)、含水率:10%):48gをエタノール:115g(「PGLX」の含水量の24倍量(重量比))に溶解させた。
脱水後の「PGLX」:10gとジメチルアミノピリジン0.5gとピリジン100gを3つ口ナスフラスコに仕込み80℃で1時間攪拌混合した。その後、パルミチン酸クロライド:24g(「PGLX」の全水酸基の0.7当量に相当)を添加して、120℃で、24時間反応を行った。反応終了後、溶媒を減圧濃縮し、炭酸カリウム水溶液とクロロホルムによって抽出操作を行い、有機層を洗浄した。さらに、有機層にトルエンを添加し、ピリジン残渣を除去するまで共沸を行うことで、分岐状ポリグリセリン誘導体(シェルを有する球状多分岐構造分子)を得た。
収率は90%であり、GPC(移動溶媒:THF、標準物質:ポリスチレン)による重量平均分子量は10000であった。
【0051】
(比較例2)
まず、上記「PGL20PW」(平均重合度:20、水酸基価:718KOH(g/mg)、含水率:10%):48gをエタノール:115g(「PGL20PW」の含水量の24倍量(重量比))に溶解させた。
脱水後の「PGL20PW」:10gとジメチルアミノピリジン0.5gとピリジン100gを3つ口ナスフラスコに仕込み80℃で1時間攪拌混合した。その後、パルミチン酸クロライド:24g(「PGL20PW」の全水酸基の0.7当量に相当)を添加して、120℃で、24時間反応を行った。反応終了後、溶媒を減圧濃縮し、炭酸カリウム水溶液とクロロホルムによって抽出操作を行い、有機層を洗浄した。さらに、有機層にトルエンを添加し、ピリジン残渣を除去するまで共沸を行うことで、分岐状ポリグリセリン誘導体(シェルを有する球状多分岐構造分子)を得た。
収率は95%であり、GPC(移動溶媒:THF、標準物質:ポリスチレン)による重量平均分子量は5000であった。
【0052】
(比較例3)
まず、上記「PG−6」(平均重合度:80、水酸基価:680KOH(g/mg)、含水率:10%):48gをエタノール:115g(「PG−6」の含水量の24倍量(重量比))に溶解させた。
脱水後の「PG−6」:10gとジメチルアミノピリジン0.5gとピリジン100gを3つ口ナスフラスコに仕込み80℃で1時間攪拌混合した。その後、パルミチン酸クロライド:24g(「PG−6」の全水酸基の0.7当量に相当)を添加して、120℃で、24時間反応を行った。反応終了後、溶媒を減圧濃縮し、炭酸カリウム水溶液とクロロホルムによって抽出操作を行い、有機層を洗浄した。さらに、有機層にトルエンを添加し、ピリジン残渣を除去するまで共沸を行うことで、分岐状ポリグリセリン誘導体(シェルを有する球状多分岐構造分子)を得た。
収率は90%であり、GPC(移動溶媒:THF、標準物質:ポリスチレン)による重量平均分子量は19000であった。
【0053】
(比較例4)
実施例1において、アルファスルホパルミチン酸の添加量を8.5g(「PGLX」の全水酸基の0.2当量に相当)としたこと以外、実施例1と同様にして反応を行って、分岐状ポリグリセリン誘導体(シェルを有する球状多分岐構造分子)を得た。
収率は90%であり、GPCによる重量平均分子量は6000であった。
【0054】
(比較例5)
実施例2において、アルファスルホパルミチン酸メチルエステルの添加量を8.5g(「PGLX」の全水酸基の0.2当量に相当)としたこと以外、実施例2と同様にして反応を行って、分岐状ポリグリセリン誘導体(シェルを有する球状多分岐構造分子)を得た。
収率は95%であり、GPCによる重量平均分子量は5000であった。
【0055】
(比較例6)
実施例3において、アルファスルホパルミチン酸の添加量を8.5g(「PGL20PW」の全水酸基の0.2当量に相当)としたこと以外、実施例3と同様にして反応を行って、分岐状ポリグリセリン誘導体(シェルを有する球状多分岐構造分子)を得た。
収率は90%であり、GPCによる重量平均分子量は3000であった。
【0056】
(比較例7)
実施例4において、アルファスルホパルミチン酸メチルエステルの添加量を8.5g(「PGL20PW」の全水酸基の0.2当量に相当)としたこと以外、実施例4と同様にして反応を行って、分岐状ポリグリセリン誘導体(シェルを有する球状多分岐構造分子)を得た。
収率は95%であり、GPCによる重量平均分子量は3000であった。
【0057】
(比較例8)
実施例5において、アルファスルホパルミチン酸の添加量を8.5g(「PG−6」の全水酸基の0.2当量に相当)としたこと以外、実施例5と同様にして反応を行って、分岐状ポリグリセリン誘導体(シェルを有する球状多分岐構造分子)を得た。
収率は89%であり、GPCによる重量平均分子量は9000であった。
【0058】
(比較例9)
実施例6において、アルファスルホパルミチン酸メチルエステルの添加量を8.5g(「PG−6」の全水酸基の0.2当量に相当)としたこと以外、実施例6と同様にして反応を行って、分岐状ポリグリセリン誘導体(シェルを有する球状多分岐構造分子)を得た。
収率は95%であり、GPCによる重量平均分子量は10000であった。
【0059】
(比較例10)
実施例1において、反応温度を160℃としたこと以外、実施例1と同様にして反応を行った。
反応の途中でゲル化が生じて、目的の球状多分岐構造分子誘導体を得ることができなかった。
【0060】
(比較例11)
実施例2において、反応温度を160℃としたこと以外、実施例2と同様にして反応を行った。
反応の途中でゲル化が生じて、目的の球状多分岐構造分子誘導体を得ることができなかった。
【0061】
(比較例12)
実施例3において、反応温度を160℃としたこと以外、実施例3と同様にして反応を行った。
反応の途中でゲル化が生じて、目的の球状多分岐構造分子誘導体を得ることができなかった。
【0062】
(比較例13)
実施例4において、反応温度を160℃としたこと以外、実施例4と同様にして反応を行った。
反応の途中でゲル化が生じて、目的の球状多分岐構造分子誘導体を得ることができなかった。
【0063】
(比較例14)
実施例5において、反応温度を160℃としたこと以外、実施例5と同様にして反応を行った。
反応の途中でゲル化が生じて、目的の球状多分岐構造分子誘導体を得ることができなかった。
【0064】
(比較例15)
実施例6において、反応温度を160℃としたこと以外、実施例6と同様にして反応を行った。
反応の途中でゲル化が生じて、目的の球状多分岐構造分子誘導体を得ることができなかった。
【0065】
(比較例16)
実施例1において、反応時間を9時間に設定したこと以外、実施例1と同様にして反応を行った。
反応開始から8時間を経過した時点でゲル化が生じて、目的の球状多分岐構造分子誘導体を得ることができなかった。
【0066】
(比較例17)
実施例2において、反応時間を9時間に設定したこと以外、実施例2と同様にして反応を行った。
反応開始から8時間を経過した時点でゲル化が生じて、目的の球状多分岐構造分子誘導体を得ることができなかった。
【0067】
(比較例18)
実施例3において、反応時間を9時間に設定したこと以外、実施例3と同様にして反応を行った。
反応開始から8時間を経過した時点でゲル化が生じて、目的の球状多分岐構造分子誘導体を得ることができなかった。
【0068】
(比較例19)
実施例4において、反応時間を9時間に設定したこと以外、実施例4と同様にして反応を行った。
反応開始から8時間を経過した時点でゲル化が生じて、目的の球状多分岐構造分子誘導体を得ることができなかった。
【0069】
(比較例20)
実施例5において、反応時間を9時間に設定したこと以外、実施例5と同様にして反応を行った。
反応開始から8時間を経過した時点でゲル化が生じて、目的の球状多分岐構造分子誘導体を得ることができなかった。
【0070】
(比較例21)
実施例6において、反応時間を9時間に設定したこと以外、実施例6と同様にして反応を行った。
反応開始から8時間を経過した時点でゲル化が生じて、目的の球状多分岐構造分子誘導体を得ることができなかった。
【0071】
(球状多分岐構造分子誘導体の疎水性/親水性バランス評価)
上記比較例10〜21では反応の途中でゲル化が生じて目的の球状多分岐構造分子誘導体を得ることができなかった。
そこで、上記実施例1〜6及び比較例1〜9で得た球状多分岐構造分子誘導体サンプルについて、疎水性/親水性バランスの評価を行った。
【0072】
親水性については、各サンプルを水に添加混合し、各サンプルの溶解性の程度を以下のようにして測定し、その結果に基づいて評価した。評価結果を下記(表1)に示した。
実施例1〜6と、比較例1〜3の各サンプル0.5gと水9.5gを混合し、25℃で30分間攪拌混合した。溶液に市販のレーザーポインター(最大出力1mW、波長650nm、クラスII)のレーザー光を透過させ、下記評価基準によって溶解性を評価した。
(評価基準)
○:散乱光を目視で確認不可能
×:散乱光を目視で確認可能
【0073】
【表1】

【0074】
また、疎水性については、次のようにして内包させた有効成分の保護性(外部環境からの遮蔽性)に基づいて評価した。
実施例1〜6と、比較例4〜9の各サンプル0.1g、有効成分としてリナロール0.05g、EMALEX715(商品名:日本エマルジョン社製の「ポリオキシエチレンドデシルエーテル(EO=15)」)0.1g、水10gを混合し、開放系容器中、室温で攪拌した。
溶液中の7日後のリナロールの残存量を、シクロヘキサノンを標準物質とした内部標準法を用いて、ガスクロマトグラフィーで定量した。
リナロールの残存率を算出し、下記評価基準によって遮蔽性(有効成分の保護性)を評価した。
(評価基準)
◎:10%以上
○:1%以上、10%未満
×:1%未満
評価結果を下記(表2)に示す。
【0075】
【表2】

【0076】
上記(表1)および(表2)から分かるように、実施例1〜6のサンプルの水への溶解性は良好であり、内包させた有効成分(リナロール)の保護性も良好であり、サンプルの疎水性/親水性バランスが、水溶液中で有効成分を内包し、保持する上で最適な状態となっていることが分かる。
一方、比較例1〜3のサンプルでは、有効性分を保持する為の疎水性を示すアルキル鎖は有するものの、親水性を示す極性基を有しない為、水溶性に難がある。また、比較例4〜9のサンプルでは、親水性を示す極性基を有するが、シェル導入率が低いため、サンプルの疎水性が低く、有効成分を安定的に保持することができず、比較例で示すサンプルの疎水性/親水性バランスが水溶液中で有効成分を保持する上で不適な状態にあることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
以上説明したように、本発明にかかる球状多分岐構造分子誘導体の製造方法によれば、反応中における難崩壊性の泡の発生が抑制され、ポリマーがゲル化することなく球状多分岐構造分子誘導体を製造することができ、得られた球状多分岐構造分子誘導体のシェルは所期の親水性/疎水性バランスを実現されたものにすることができる。したがって、本発明にかかる球状多分岐構造分子誘導体の製造方法によれば、香料、薬剤などの有効成分を散逸しないように保持するとともに、前記有効成分の徐放性、溶解性などの有用な機能を実現する有効成分保持体の保持主体に用いて好適な球状多分岐構造分子誘導体を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
球状多分岐構造分子をコアとして、該コアの表面に下記一般式(I):
【化1】

(式中、Rは炭素数6〜20のアルキル基又はアルケニル基、Rは水素又は炭素数1〜3の直鎖又は分枝鎖のアルキル基であり、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、又は水素である)で表わされるアルファスルホ脂肪酸またはアルファスルホ脂肪酸エステルからなるシェルが形成されてなる球状多分岐構造分子誘導体を得るための球状多分岐構造分子誘導体の製造方法であって、前記球状多分岐構造分子を脱水し、脱水処理後の球状多分岐構造分子と該球状多分岐構造分子の全水酸基に対して0.3当量〜0.8当量の上記アルファスルホ脂肪酸またはアルファスルホ脂肪酸エステルとを、80℃〜150℃、4〜8時間、反応させることにより球状多分岐構造分子誘導体を得る球状多分岐構造分子誘導体の製造方法。
【請求項2】
球状多分岐構造分子と上記アルファスルホ脂肪酸またはアルファスルホ脂肪酸エステルとの反応を無溶媒かつ減圧条件下で行うことを特徴とする請求項1に記載の球状多分岐構造分子誘導体の製造方法。
【請求項3】
球状多分岐構造分子が重量平均分子量1000〜100000の多分岐ポリグリセリンであることを特徴とする請求項1または2に記載の球状多分岐構造分子誘導体の製造方法。