説明

球状物繰出装置

【課題】ホッパを用いることなく適量の球状物を繰出すことのできる球状物繰出装置を提供する。
【解決手段】球状物繰出装置1は、箱型の蓄積槽2と、蓄積槽2の底面21に出没自在に設けられたピストン3と、ピストン3を昇降させる昇降駆動手段4と、切換手段5と、内側を案内路6とした案内パイプ61とを備える。昇降駆動手段4がピストン3を上昇させる毎に、適量の球状物Sを案内パイプ61の終端に繰出せるので、球状物Sの量を調整するために、オペレータの経験又は勘に頼るような作業が全く不要である。また、ピストン3の上端面の広さを増減すれば、蓄積槽2から一度に押出せる球状物Sの個数を増減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、球状物を蓄積し同球状物を適量に分けて繰出すことのできる球状物繰出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、リニアフィーダに乗せた球状物を振動させることで、球状物の推進を促す技術を開示している。球状物の素材が極めて脆いものであれば、球状物が振動によって損傷することがある。例えば、血糖値センサの素子を密封する包装袋に、直径3〜4mmの球状の酸化アルミナを乾燥剤として1個ずつ投入する場合、このような乾燥剤の一部が欠けてしまうと、乾燥剤の容積が減少し所期の吸湿能力が損なわれる。
【0003】
特許文献2は、脆い素材から成る球状物の移送に適した球状物供給装置を開示している。図8に示すように、球状物供給装置100は、ホッパ101からV形溝レール102に投入される球状物Sを、1個ずつ順に繰出ゲート103から次工程へ送り出すものである。ホッパ101の導出管の下端口104と、V形溝レール102との隙間は、V形溝レール102に無用に多くの球状物Sが流下するのを制限できる程度の広さに保たれている。上記のように球状物Sが次工程へ送り出されると、その分、ホッパ101に蓄積された球状物SがV形溝レール102に補充される。
【特許文献1】特開平10−015994号公報
【特許文献2】特開2006−327709号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ホッパ101の導出管の下端口104と、V形溝レール102との隙間の広さは、数量的に決められるものではなく、オペレータの経験又は勘に頼りながらV形溝レール102に対してホッパ101の高さを微妙に調整しなければならない。このため、ホッパ101の高さを調整する作業は難しく、同作業に多くの手間と時間を費やすという問題がある。更に、複数のV形溝レール102に球状物Sを投入する場合、V形溝レール102と同数のホッパ101が必要になるので、ホッパ101の高さを調整する手間と時間が倍増することになる。
【0005】
本発明は、上記の実情に鑑みて為されたものであり、ホッパを用いることなく適量の球状物を繰出すことのできる球状物繰出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る球状物繰出装置は、球状物を内部に蓄積し、相互に直交する内部の底面及び内側面を有し、前記底面及び内側面の間の入隅部を下げる方向に傾斜した蓄積槽と、前記蓄積槽の入隅部に配置され、前記底面に出没できるピストンと、前記ピストンを前記内側面に沿う方向に昇降させ、前記ピストンを上昇させる過程で、前記球状物を前記ピストンにより前記蓄積槽から押出す昇降駆動手段と、前記蓄積槽の下方へ球状物を案内できる複数の案内路と、前記複数の案内路の中から選択できる1つの案内路に、前記蓄積槽から押出された球状物を誘導する切換手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
前記切換手段は、円周に沿う内周面を有し、前記内周面の内側へ球状物を導入できる導入口、及び前記球状物を前記導入口の下方から前記複数の案内路へそれぞれ導出できる複数の導出口を形成した導通部材と、前記導通部材の下側に配置され、前記内周面の内側に導入された球状物を前記導入口の下方へ滑降させる傾斜部材と、前記導通部材の内周面の内側に挿入され、前記傾斜部材を球状物が滑降する方向を規制する誘導面を有する内挿部材とを備え、前記内挿部材が前記内周面に沿う方向に回転することにより、前記誘導面が、前記導入口から前記複数の導出口の中の一つの導出口へ向う姿勢になる。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る球状物繰出装置によれば、蓄積槽の入隅部に配置されたピストンが底面に没入した状態で、蓄積槽の内部に蓄積された球状物がピストンで支持される。また、蓄積槽は球状物が入隅部に向けて滑降するよう傾斜しているので、蓄積槽の内部の球状物が数少ないときでも、これらの球状物が入隅部に集まりピストンで支持される。
【0009】
昇降駆動手段が、上記のように蓄積槽の底面に没入したピストンを、二つの内側面に沿う方向に上昇させることにより、蓄積槽の入隅部付近の球状物を、ピストンと共に上昇させ蓄積槽から押出すことができる。この過程で、ピストンと共に上昇する球状物が二つの内側面の何れかに擦れても、ピストンの上昇する方向と二つの内側面とが一致するので、球状物を内側面に押付ける力が生じることがなく、球状物の一部が欠ける等の破損は起こらない。
【0010】
更に、切換手段が、蓄積槽から押出された球状物を、複数の案内路の中から選択できる1つの案内路に誘導することができる。例えば、複数の案内路の終端にそれぞれ複数のV形溝レールを配置し、複数のV形溝レールの中から選択できる1つのV形溝レールに球状物を投入しても良い。また、V形溝レールに球状物を投入しないときは、昇降駆動手段を停止させても良く、或いは、切換手段が蓄積槽から押出される球状物を他の案内路に誘導し、他の案内路の終端に配置したV形溝レールに球状物を投入しても良い。
【0011】
以上に述べた通り、本発明に係る球状物繰出装置は、従来のようなホッパとV形溝レールとの隙間によって同ホッパから流下する球状物を制限するものではなく、昇降駆動手段がピストンを上昇させる毎に、適量の球状物を蓄積槽から押出しV形溝レールに投入することができる。また、ピストンの大きさを変更するだけで、V形溝レールに一度に投入される球状物の個数を増減できる。従って、案内路の数に関わらず、オペレータの経験又は勘に頼るような煩雑な作業は全く不要である。
【0012】
更に、本発明に係る球状物繰出装置に適用する切換手段として、複数の案内路の何れかを選択できるように構成した場合、次の利点が得られる。即ち、内挿部材が導通部材の内周面に沿う方向に回転することにより、導通部材の導入口を経て内周面の内側に導入される球状物が傾斜部材を滑降する過程で、この球状物の滑降する方向を内挿部材の誘導面に沿わせ、複数の案内路の中の一つの案内路に誘導できる。このため、球状物の方向転換を機械的な力によって強制しなくて済むので、球状物の一部が欠ける等の破損が起こることはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図面は特に断らない限り図1を参照する。球状物繰出装置1は、箱型の蓄積槽2と、蓄積槽2の底面21に出没自在に設けられたピストン3と、ピストン3を昇降させる昇降駆動手段4と、切換手段5と、内側を案内路6とした案内パイプ61とを備える。
【0014】
蓄積槽2は、支持体20の上部に取付けられ、図2(a)に示すように、相互に直交する底面21及び二つの内側面22により画定される入隅部23を内部に設けている。二つの内側面22とは、蓄積槽2の四方の側壁24〜27のうち隣合う2つの側壁24,25が、蓄積槽2の内部に向ける面を意味する。底面21及び内側面22は平滑な面であることが望ましい。また、2つの側壁24,25の上縁に切欠28を形成しても良い。支持体20は、その長手方向を鉛直方向に対して約15°傾けており、この支持体20の傾斜に従って蓄積槽2が入隅部23を相対的に低くした姿勢をとる。このため、蓄積槽2の内部に蓄積される球状物Sは、その量の多少に関わらず入隅部23へ向けて滑降しようとする。符号29は蓋体を指している。
【0015】
ピストン3は、図2(b)に示すように、蓄積槽2の底面21の挿通口210に挿通された状態で、蓄積槽2の入隅部23に配置されている。ピストン3の上端面31は平面又は凹面であることが望ましい。昇降駆動手段4は、その作動ロッド41を支持体20の長手方向に沿わせて進退させるエアシリンダである。作動ロッド41とピストン3の下端とを連結している連結部材42は、ガイドレール43に滑動自在に係合した滑子44を介して、支持体20に支持されている。
【0016】
切換手段5は、図3に示すように、3つのガイドブロック51,52から成る導通部材53と、導通部材53をその下側から受止める傾斜部材54と、導通部材53の内側に挿入される内挿部材55とを備える。導通部材53は、2つのガイドブロック51の端面同士の間に1つの導入口7を確保し、2つのガイドブロック51とガイドブロック53の端面同士の間に2つの導出口8,9をそれぞれ確保している。また、3つのガイドブロック51,52は、それぞれの曲面10を互いに内向きにし、3つの曲面10が円周上に並ぶ姿勢で、傾斜部材54に位置決めされている。これらの曲面を、以下で「内周面」と総称する。
【0017】
回転駆動手段11はエアモータを主体とし、図3に示すように、その出力軸12を内挿部材55に接続している。内挿部材55は、回転駆動手段11の出力軸12に従い内周面10に沿う方向へ回転する。回転駆動手段11として電動機を適用しても良い。傾斜部材54は、導入口7よりも導出口8,9が低くなるよう傾斜し、その上面を傾斜面13としている。傾斜面13は、内周面10の内側の領域で、球状物Sを導入口7の下方へ向けて滑降させる役割を果たす。図4(a)に示すように、2つの導出口8,9には、それぞれ2本の案内パイプ61の始端が接続されている。2本の案内パイプ61を傾斜部材54にボルト等で取付けても良い。内挿部材55は、内周面10の内側に挿入され、傾斜面13を球状物Sが滑降する方向を規制する誘導面56を有する。
【0018】
球状物繰出装置1の動作を次に説明する。例えば、2本のV形溝レールに球状物Sを投入する場合、2本の案内パイプ61のそれぞれの終端の直下にV形溝レールを1本ずつ配置する。また、図5は、2本のV形溝レール上の球状物Sをそれぞれ検出するセンサ14,15と、空気圧縮機16から空気を昇降駆動手段4及び回転駆動手段11に供給する経路を示している。昇降駆動手段4及び回転駆動手段11の動作は、制御装置17が方向切換弁18,19を制御することにより実現するが、以下で制御装置及び方向切換弁については言及しない。
【0019】
球状物繰出装置1を始動させる前に、球状物Sが蓄積槽2の内部に蓄積される。昇降駆動手段4は、作動ロッド41を下方へ後退させ、ピストン3の上端面31が底面21と略同じ高さになる位置で、ピストン3を待機させる。このようにピストン3が底面21に没入した状態で、蓄積槽2の内部に蓄積された球状物Sはピストン3の上端面31に支持される。
【0020】
上記2本のV形溝レールの一方に残る球状物Sが少なくなると、図5に示すセンサ14から電気信号が送出される。この電気信号に基づき、回転駆動手段11の出力軸12が図4(a)の矢印αで指した方向へ回転し、内挿部材55の誘導面56が、導入口7から導出口8へ向って傾斜する。
【0021】
続いて、昇降駆動手段4が、上記のように蓄積槽2の底面21に没入したピストン3を、図6に示すように、二つの内側面22に沿う方向に上昇させることにより、蓄積槽2の入隅部23にある球状物Sをピストン3と共に上昇させ、蓄積槽2の内部から押出すことができる。ピストン3の上端面31が切欠28の高さまで達したところで、昇降駆動手段4はピストン3を停止させる。上記のように、ピストン3と共に上昇する球状物Sが、二つの内側面22の何れかに擦れても、ピストン3の上昇する方向と二つの内側面22とは一致するので、球状物Sを内側面22に押付ける力が生じることはなく、球状物Sの一部が欠ける等の破損は起こらない。
【0022】
更に、蓄積槽2から押出された球状物Sは、蓄積槽2の切欠28の内側を通り抜け、図4(a)に示すように、切換手段5の導入口7に進入し傾斜面13を滑降する。この行程で、球状物Sは内挿部材55の誘導面56に従い導出口8へ誘導され、案内路6を経て一方のV形溝レールに達する。また、昇降駆動手段4は、球状物Sを蓄積槽2から押出した後、ピストン3を、上端面31が底面21と略同じ高さになるまで下降させれば、以上の動作を繰り返すことができる。
【0023】
或いは、上記2本のV形溝レールの他方に残る球状物Sが少なくなると、図5に示すセンサ15から電気信号が送出される。この電気信号に基づき、回転駆動手段11の出力軸12が図4(b)の矢印βで指した方向へ回転し、内挿部材55の誘導面56が、導入口7から導出口9へ向って傾斜する。続いて、昇降駆動手段4が、ピストン3を上昇させる点は上記の通りである。更に、球状物Sは、傾斜面13を滑降する行程で誘導面56に従い導出口9へ誘導され、案内路6を経て他方のV形溝レールに達する。
【0024】
以上に述べたように、球状物Sの方向転換を機械的な力によって強制しなくて済むので、球状物Sの一部が欠ける等の破損が起こることはない。特に、誘導面56が図示のように円弧状に湾曲している場合、球状物Sが誘導面56に突き当たるときの反力を逃せるので、球状物Sの破損を予防するのに一層有利である。また、昇降駆動手段4がピストン3を上昇させる毎に、適量の球状物SをV形溝レールに投入できるので、球状物Sの量を調整するために、オペレータの経験又は勘に頼るような作業が全く不要である。また、ピストン3の上端面31の広さを増減すれば、V形溝レールに一度に投入できる球状物Sの個数を増減できる。
【0025】
尚、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々なる改良、修正、又は変形を加えた態様で実施できる。例えば、図7に示すように、案内路6の数を3つ以上に増設しても良い。この場合、導通部材53に3つ以上の導出口8を形成し、内挿部材55の誘導面56の向きを、3つ以上の導出口8の何れか1つの導出口に一致させれば良い。また、ピストン3の上端面31は正方形である必要はなく、直角三角形でも良い。蓄積槽2の底面21に、球状物Sを保温するためのヒータ等を埋設しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、球状物の材質、寸法、又は重さに関わらず、球状物の移送、又は仕分をすることに利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態に係る球状物繰出装置の側面図。
【図2】(a)は本発明の実施形態に係る球状物繰出装置に適用した蓄積槽の斜視図、(b)はその要部を示す破断斜視図。
【図3】本発明の実施形態に係る球状物繰出装置に適用した切換手段の分解斜視図。
【図4】(a)は本発明の実施形態に係る球状物繰出装置に適用した切換手段の動作の一例を示す断面図、(b)はその動作の他例を示す断面図。
【図5】本発明の実施形態に係る球状物繰出装置の駆動原理を説明するブロック図。
【図6】本発明の実施形態に係る球状物繰出装置に適用した蓄積槽の要部を破断し、当該装置に適用したピストンの上昇する過程を示す斜視図。
【図7】本発明の実施形態に係る球状物繰出装置に適用できるピストンの変形例、及び切換手段の変形例を示す断面図。
【図8】ホッパを使用することにより球状物の補充を行うようにした従来例を示す斜視図。
【符号の説明】
【0028】
1:球状物繰出装置
2:蓄積槽
3:ピストン
4:昇降駆動手段
5:切換手段
6:案内路
7:導入口
8,9:導出口
10:内周面
11:回転駆動手段
13:傾斜面
21:底面
22:内側面
23:入隅部
53:導通部材
55:内挿部材
56:誘導面
S:球状物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
球状物を内部に蓄積し、相互に直交する内部の底面及び内側面を有し、前記底面及び内側面の間の入隅部を下げる方向に傾斜した蓄積槽と、
前記蓄積槽の入隅部に配置され、前記底面に出没できるピストンと、
前記ピストンを前記内側面に沿う方向に昇降させ、前記ピストンを上昇させる過程で、前記球状物を前記ピストンにより前記蓄積槽から押出す昇降駆動手段と、
前記蓄積槽の下方へ球状物を案内できる複数の案内路と、
前記複数の案内路の中から選択できる1つの案内路に、前記蓄積槽から押出された球状物を誘導する切換手段と、
を備えることを特徴とする球状物繰出装置。
【請求項2】
前記切換手段は、円周に沿う内周面を有し、前記内周面の内側へ球状物を導入できる導入口、及び前記球状物を前記導入口の下方から前記複数の案内路へそれぞれ導出できる複数の導出口を形成した導通部材と、
前記導通部材の下側に配置され、前記内周面の内側に導入された球状物を前記導入口の下方へ滑降させる傾斜部材と、
前記導通部材の内周面の内側に挿入され、前記傾斜部材を球状物が滑降する方向を規制する誘導面を有する内挿部材とを備え、
前記内挿部材が前記内周面に沿う方向に回転することにより、前記誘導面が、前記導入口から前記複数の導出口の中の一つの導出口へ向う姿勢になることを特徴とする請求項1に記載の球状物繰出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−23738(P2009−23738A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−185419(P2007−185419)
【出願日】平成19年7月17日(2007.7.17)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】