説明

環境への負荷の少ない湿度検知材とその製造方法

【課題】 環境への負荷の少ない湿度検知材用組成物、および湿度管理用検知材を提供する。
【解決手段】 本発明の湿度検知材は、環境負荷の大きな塩化コバルトを使用せず、従来の湿度検知材と同じような色変化を示す湿度検知材として、電子供与性呈色化合物と酸性官能基を有する酸性高分子化合物と潮解性化合物からなる組成物もしくは、電子受容性呈色化合物と塩基性官能基を有する塩基性高分子化合物と潮解性化合物からなる組成物を担持体に塗布、乾燥させた湿度検知材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境への付加の少ない湿度検知用インキ組成物、および湿度管理用検知材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、色の変化で湿度の状況を確認できる検知部材は、特開平01−153941号公開に開示されているように、塩化コバルトを主原料とし吸湿材に含浸したものが広く商品化されている。これらの湿度検知材は、塩化コバルトの濃度を各種コントロールすることにより、相対湿度10%・20%・30%などその雰囲気下の相対湿度で青からピンクに色変化するように調整したものが使われている。防湿包装容器に乾燥剤と湿度検知材を入れ、容器内の相対湿度を確認できる、または乾燥剤の性能が劣化していないかを確認するための判断に利用されている。また、非塩化コバルトの湿度検知材として、特公平6−23748号公告もしくは特開2000−23748号公開に開示されているように、発色指示薬と酸性物質と潮解性化合物をインキ化し吸湿材に印刷した湿度検知材も開発されている。また、特開平6−3345号公開に開示されているように、電子受容性呈色有機化合物と有機塩基化合物と高分子結着剤からなる水分インジケータ用インキ組成物からできた水分インジケータが開発されている。
【0003】
【特許文献1】特開平01−153941号公報
【特許文献2】特公平06−23748号公報
【特許文献1】特開2000−23748号公報
【特許文献1】特開平06−3345号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、主原料の塩化コバルトは、PRTR法(化学物質管理促進法)で第一種化学物質に指定され、環境や人体への影響という観点から、負荷の大きな物質として指摘されている。このことより、コバルト系試薬を使用しない湿度検知材の開発が待ち望まれていた。この観点より、特公平6−23748号公告もしくは特開2000−350419号公報で発色指示薬と酸と潮解性化合物の溶液を呈色用試薬とし、担持体に含浸させて湿度検知材を作る方法が開示されている。しかし、この特許は、呈色試薬中に酸を混ぜるために、特に酸性の強い試薬を使って吸湿紙に含浸させると酸の影響で担持体もしくは呈色指示薬が劣化し品質劣化になってしまうという問題があった。
特開平06−3345号公報では、上記のような酸成分を用いていないため、担持体もしくは呈色指示薬の劣化は防止できる。しかし、水分に対する検知機能はあるが、低湿度での検知機能は劣るという問題があった。
これらすべての問題を解消した湿度検知材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記問題を解決すべく鋭意検討した結果、インキ化する際に用いられるバインダー剤である樹脂に酸性官能基を化学修飾させた高分子化合物と電子供与性呈色化合物もしくは、塩基性官能基を化学修飾させた高分子化合物と電子受容性呈色化合物を、また、適時、潮解性化合物を組み合わせることにより、色の変色で吸湿状況を確認できる部材を提供することに成功した。色変化は、電子供与性呈色化合物もしくは電子受容性呈色化合物の種類と潮解性化合物を各種調整することで可能である。代表的なものとして、電子供与性呈色化合物としてサフラニンTを用いると、青(低湿度)から赤(高湿度状態)に変化し、従来のコバルト系の変化に似た変色を示し、従来品の代替になりうる。又、これ以外に各種電子供与性呈色化合物を混合することにより、いろんな色変化を持ったインジケーター部材が製作できる。
【発明の効果】
【0006】
以上説明したように、本発明では従来の湿度検知材に比べ、環境への付加が少なく、従来の湿度検知材と同様の性能を持ち、極めて安全であるため、廃棄についても一般廃棄物として処理ができるので、食品、電子、医療、精密機器における湿度管理用検知材として最適である。特に、従来の呈色組成物は、呈色化合物、潮解性化合物、酸性(もしくは塩基性)化合物、バインダー材と溶剤の5成分必要であったが、本発明では、酸性(もしくは塩基性)化合物とバインダー材が1つの化合物として併用でき、使用成分が少なくてよく、生産性の面からも発明の効果は大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の湿度検知材は、担持体に呈色組成物を担持させたものであり、所定の呈色組成物をインキ化し担持体へ塗布、乾燥させることにより製造される。
本発明に用いられる担持体としては、紙、プラスチック、布、不織布、ガラスなど呈色組成物を担持させるものであればどのような素材でも用いることができる。紙の中では濾紙が、プラスチックは合成紙やポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレンのフィルムやシートが好ましく用いられる。興味深いところでは、ガラスの表面へも良好な塗布が可能である。
本発明に用いられる呈色組成物は、電子供与性呈色化合物と酸性高分子化合物と適時、潮解性化合物を加えてなる。また、電子供与性呈色化合物の変わりに電子受容性呈色化合物、酸性高分子化合物の代わりに塩基性高分子化合物と、適時、潮解性化合物を用いた呈色組成物からなる。以下、各成分について具体的に説明する。
(1)電子供与性呈色化合物
酸により発色あるいは色変化する化合物であれば特に限定されないが、たとえばpH指示薬、トリアリールメタン誘導体、フルオラン誘導体等が用いられる。
(2)電子受容性呈色化合物
塩基により発色あるいは色変化する化合物であれば特に限定されないが、たとえばpH指示薬、フルオレッセン誘導体、フェノールフタレイン誘導体、ニンヒドリン誘導体などが用いられる。
(3)酸性官能基を有する高分子化合物
酸性官能基であれば特に限定されないが、たとえば、カルボン酸基、スルホン酸基及びホスホン酸基などの少なくとも一つが用いられる。また、高分子化合物としては特に限定はないが、好ましくはポリスチレンが簡便に利用できる。代表例を示せば、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニル安息香酸、ポリスチレンホスホン酸などが用いられる。
(4)塩基性官能基を有する高分子化合物
塩基性官能基であれば特に限定されないが、たとえば、アミノ基などが用いられる。代表例として、ポリアリルアミンなどが用いられる。
(5)潮解性化合物
潮解性化合物としては、潮解性を示す物質であれば特に限定されないが、好ましくは塩、より好ましくは金属塩である。代表例を示せば、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム、臭化マグネシウムなどが用いられる。
以下、本発明の実施例を述べるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例1】
【0008】
50グラム毎リットルのポリスチレンスルホン酸ナトリウム水溶液を陽イオン交換樹脂で処理しポリスチレンスルホン酸水溶液を得た。
この水溶液を以下のような比率で混ぜることにより、湿度検知材用インキとした。
サフラニンT 1部
上記で合成したポリスチレンスルホン酸水溶液 10部
得られた湿度検知材用インキをPETフィルムにワイヤーバーを用いて塗布し、70℃で5分間乾燥して湿度検知材を製作した。各種湿度雰囲気に放置したところ、湿度変化に応じた色変化を示した。
【実施例2】
【0009】
実施例1で得られた湿度検知材用インキに塩化マグネシウム10部混合する以外は同様の操作で湿度検知材を製作した。この湿度検知材を各種湿度雰囲気に放置したところ、湿度変化に応じた色変化を示した。
【実施例3】
【0010】
サフラニンTをニュートラルレッドにした以外は、実施例1と同様に実施することにより湿度検知材を製作した。この湿度検知材を各種湿度雰囲気に放置したところ、湿度変化に応じた色変化を示した。
【実施例4】
【0011】
150グラム毎リットルのポリアリルアミン水溶液10部にフェノールフタレイン1部を溶解し湿度検知材用インキとした。得られた湿度検知材用インキをPETフィルムにワイヤーバーを用いて塗布し、70℃で5分間乾燥して湿度検知材を製作した。各種湿度雰囲気に放置したところ、湿度変化に応じた色変化を示した。
【実施例5】
【0012】
実施例4で得られた湿度検知材用インキに塩化マグネシウム10部混合する以外は同様の操作で湿度検知材を製作した。この湿度検知材を各種湿度雰囲気に放置したところ、湿度変化に応じた色変化を示した。
【実施例6】
【0013】
実施例4で得られた湿度検知材の湿度検知材用インキ塗布面とは反対面(裏面)へ青色インキを塗布した以外は実施例4と同様に実施することにより湿度検知材を製作した。青色インキを塗布したため実施例4とは異なった色変化を示した。
【実施例7】
【0014】
担持体をPETフィルムの代わりにガラスプレパラートにした以外は、実施例1と同様に実施することにより湿度検知材を製作した。この湿度検知材を各種湿度雰囲気に放置したところ、湿度変化に応じた色変化を示した。
【実施例8】
【0015】
担持体をPETフィルムの代わりに濾紙にした以外は、実施例1と同様に実施することにより湿度検知材を製作した。この湿度検知材を各種湿度雰囲気に放置したところ、湿度変化に応じた色変化を示した。
【0016】
(評価)
実施例1〜実施例8までの変色結果を表1に示す。
【表1】





【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子供与性呈色化合物と酸性官能基を有する酸性高分子化合物とからなり、酸性高分子化合物がバインダー剤と酸性化合物としての機能を合わせ持っているため、バインダー剤を必要としないことを特徴とする湿度検知材用インキ組成物。
【請求項2】
電子受容性呈色化合物と塩基性官能基を有する酸性高分子化合物とからなり、塩基性高分子化合物がバインダー剤と塩基性化合物としての機能を合わせ持っているため、バインダー剤を必要としないことを特徴とする湿度検知材用インキ組成物。
【請求項3】
請求項1、2のいずれかに記載のインキ組成物に溶剤と潮解性化合物を付与した湿度検知材用インキ組成物。
【請求項4】
請求項1、2、3のいずれかに記載のインキ組成物を担持体上に塗布してなることを特徴とする湿度検知材。


【公開番号】特開2009−198271(P2009−198271A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−39485(P2008−39485)
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(594052799)ピアテック有限会社 (3)
【Fターム(参考)】