説明

環境保全型有害生物防除剤

本発明は、還元澱粉糖化物にアルキルグルコシド系界面活性剤を配合した有害生物防除剤である。そのため、本発明は、薬剤抵抗性出現の心配がなく、農園芸作物に対し薬害がなく、しかも有害生物に対し、従来より低濃度で効果的に防除することができる。また、人畜に対する安全性が向上していることに加え、環境面でも安心して利用できる環境保全型の有害生物防除剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は食品である還元澱粉糖化物にアルキルグルコシド類を配合することを特徴とする、有害生物防除剤に関するものである。
【背景技術】
現在、農園芸作物を害する有害生物の防除剤としては、殺虫剤、殺ダニ剤、殺菌剤の名で知られ、その多くは化学的合成品である。それらは経済性や防除効果が優れており、多種の有害生物に対して単用又は混用などによりそれぞれの防除剤が有効に使用されている。しかしながら、有害生物は化学的合成品で作られた防除剤に対し容易に抵抗性あるいは耐性を獲得し、その防除剤の効果が次第に不足する事態となっている。
また、近年の消費者の食品や農園芸作物に対する安全性への意識が高まる中で、農園芸作物に使用される有害生物防除剤は、人畜に対する安全性はもちろんのこと、環境汚染に対する配慮から、生分解を受け易い防除剤が望まれるようになった。これら人畜や環境に配慮した防除剤として、特開平07−126105号公報に記載されているように、澱粉、海藻抽出物、植物性粘質物などの天然水溶性高分子を含有する有害生物防除剤が挙げられる。また、特開平07−238003号公報には、オレイン酸ナトリウムを含有する有害生物防除剤、特開平10−218703号公報には、α化ヒドロキシプロピル澱粉を含有する有害生物防除剤、特開2001−131011号公報には還元澱粉糖化物を含有する有害生物防除剤の記載がある。
一方、アルキルグルコシドは、界面活性剤として、一般に農薬原体を有効成分とする防除剤に添加され使用されている。特開平05−043403号公報では、殺生剤(農薬原体)の効力を増強する作用、特表2001−513530号公報では、グリホサートなどのような農薬電解質と共に製剤し除草剤として使用する方法、特表平09−500825号公報では、油性乳化濃縮液に製剤し、好ましくは農業用化学物質が含有する製剤が記載されている。
本発明で用いられる還元澱粉糖化物は、これを有効成分とする有害生物防除剤として特開2001−131011号公報で記載されているが、農作物において薬害は認められないものの、外見的な美観を大切にする花卉分野において、花卉の花びらに薬害を生じる問題がある。また、有効成分である還元澱粉糖化物による環境への負荷がたとえ小さくても、用いられている界面活性剤は、ジアルキルスルホサクシネート系、シリコーン系、アルキルベンゼンスルホン酸系のように一般に農薬製剤に通常用いられる界面活性剤であり、製剤された防除剤は環境負荷が小さいとはいえない。
一方、アルキルグルコシドを界面活性剤として用いた生物防除剤としては、特開平05−043403号公報、特表2001−513530号公報、特表平09−500825号公報に記載され、これらはいずれも化学合成品である農薬原体と共に用いられている。農薬原体を有効成分とする防除剤は、一般に、環境への負荷が大きいことや、野菜や果実などの市場で販売される作物への残留性が心配となり販売上好ましくない。さらに農薬原体を含有する防除剤では、各地で薬剤抵抗性を獲得する有害生物が多く出現することが報告されている。
本発明の目的は、アルキルグルコシドと併用することにより、環境保全型有害生物防除剤である還元澱粉糖化物の殺虫・殺ダニ剤、殺菌効果を低濃度で発揮させ、且つ農園芸作物に薬害が無く、人畜に対して安全で環境に優しい生物防除剤を提供することにある。
【発明の開示】
本発明者等はこれらの課題を解決すべく種々検討したところ、食品である還元澱粉糖化物と、現在家庭用食器洗剤、化粧品などに用いられ、安全性、衛生面、環境面などで注目されている界面活性剤アルキルグルコシド類とを含有する防除剤を見出した。本防除剤は、環境への安全性がより向上し、さらに作物、野菜、花卉類に薬害がなく、防除剤の目的とする有害生物への効果が、従来の環境保全型有害生物防除剤と比べ、より一層向上すると言う驚くべき結果を見出し、本発明を完成した。本防除剤の作用は、造膜性により、有害生物に付着し気門部分を含む体全体を薬液で覆い、物理的な窒息により有害生物を死に至らしめる。また植物葉面や植物病原菌に付着し、植物病原菌の増殖を抑え、死に至らしめる。
第1の本発明は還元澱粉糖化物を有効成分とし、アルキルグルコシド系界面活性剤を配合することを特徴とする有害生物防除剤である。第2の本発明はアルキルグルコシド系界面活性剤を固形成分として0.005〜20%(以下、特に断らない限り%は重量%を意味する。)含有する第1の発明に記載の防除剤である。本発明の有害生物防除剤は、植物に寄生した有害生物に対して、希釈散布液または無希釈散布液を動力噴霧機やハンドスプレー等で散布することで使用できる。本発明防除剤を水で希釈して散布する場合、本発明防除剤中のアルキルグルコシド濃度は固形分として1〜20%、好ましくは1〜10%、更に好ましくは2〜5%含有するように調整することが好ましい。希釈散布液中のアルキルグルコシド濃度は、有害生物の付着状況や種類によって異なるが、通常、希釈散布液中にアルキルグルコシドの固形分濃度が0.005%〜5.0%となるように希釈・調整することが好ましい。また、本発明防除剤を希釈せずハンドスプレー等で直接散布する揚合、本発明防除剤中のアルキルグルコシド濃度は、固形分として0.005〜5.0%、好ましくは0.03〜1.0%含有するように調整し、植物の葉面が濡れるよう十分な量を散布することが好ましい。
本発明において用いられる還元澱粉糖化物とは、澱粉をαアミラーゼや酸で液化した後、βアミラーゼなどの酵素で部分的に加水分解することにより製造された糖化液をそれ自体は公知の方法により水素加圧下で接触還元することにより製造されたものである。本発明において使用される還元澱粉糖化物としては還元澱粉糖化物または還元麦芽糖水飴の名称で食品用または一般用に市販されている還元澱粉糖化物が挙げられる。本発明に好適に採用できるものとしては、例えば東和化成工業株式会社製のPO−10(商品名)、PO−20(商品名)、PO−30(商品名)、PO−40(商品名)、アマルティシロップ(商品名)などが挙げられる。本発明に好適に採用できる還元澱粉糖化物のひとつであるPO−10はデキストロース当量が12未満のデキストリンを還元したものであり、その糖組成は概ね、ソルビトール0.1〜2%、水素化2糖類0.1〜5%、水素化3糖類0.15%、重合度(DP)20以上の水素化ポリオール50〜80%、残余が重合度4〜19の水素化ポリオールである。また、本発明に好適に採用できる還元澱粉糖化物で、還元麦芽糖水飴とも呼称されるアマルティシロップは市販の麦芽糖水飴を還元したものであり、その糖組成は概ね、ソルビトール1〜4%、水素化二糖類75〜80%、水素化三糖類10〜17%、重合度(DP)4以上の水素化ポリオール6〜12%である。
本発明に使用するアルキルグルコシドは、アルカノールと、グルコース、又はその二糖類もしくは多糖類との反応によって得ることができる。本明細書中で使用している“アルキルグルコシド”という用語は、アルキルモノグルコシドとアルキルポリグルコシドを含む。本発明に使用する好適なアルキルグルコシドは、グルコースと、直鎖もしくは分枝鎖アルカノール又はアルカノールの混合物、例えば、4〜20個、好ましくは8〜18個の炭素原子、例えば8〜10個の炭素原子を含有するアルカノールの混合物との反応によって得られるアルキルグルコシドである。分子中のアルキル基当たりのグルコシル基の数は変動してよく、アルキルモノ−、もしくはジー、もしくはポリグルコース又はサッカライド誘導体が可能である。市販のアルキルポリグルコシドは、通常、アルキル基当たり平均数のグルコシル基を有する誘導体の混合物を含有する。従って、市販のアルキルグルコシドは、一般式(I):

(式中、nは重合度で、通常は1〜5の範囲内、例えば1〜3であり、Rは4〜20個の炭素原子を有する分枝鎖もしくは直鎖アルキル基、又は所定範囲内の平均値を有するアルキル基の混合物である)を有する。
典型的なアルキルグルコシドの例は、AGRIMUL PG2067(Cognis Corp製)の商品名で市販されている、nが平均1.7、Rがオクチル、デシルの混合物である製品、AGRIMUL PG2076(Cognis Corp製)の商品名で市販されている、nが平均1.5、Rがオクチル、デシルの混合物である製品、及びSUCRARH AG−8(日本精化製)の商品名で市販されている、Rが2−エチル−1−ヘキシルグリコシドである製品、マイドール10(花王製)の商品名で市販されている、nが平均1.35、Rがノニル、デシル、及びウンデシルの混合物である製品、マイドール20(花王製)の商品名で市販されている、nが平均1.35、Rがデシル、ドデシル、テトラデシルの混合物である製品、などである。
本発明において用いられる添加剤は特に限定されないが、例えば、ネオペレックスF−65(花王製)等のアルキルベンゼンスルホン酸系界面活性剤、エアロールCT−1(東邦化学工業製)、ネオコールSW−CP(第一工業製薬製)、ペレックスTR(花王製)等のジアルキルスルホサクシネート系界面活性剤、サーフィノール420(日信化学)等のアセチレングリコール系界面活性剤、Silwet L−77(Witco社製)、Silwet L−408(Witco社製)、KF−618(信越化学工業製)等のシリコーン系界面活性剤などの併用も可能である。通常、添加剤は、本発明防除剤を希釈して散布する揚合には防除剤中に1〜5.0%添加し本発明防除剤を希釈せず直接散布する場合には防除剤中に0.01〜1.0%添加することも出来る。
本発明防除剤は、通常、有効成分である還元澱粉糖化物に、アルキルグルコシド系界面活性剤、添加剤及び水を添加し、必要に応じて製剤助剤を加えて攪拌し液剤として用いることができる。また、増量剤や製剤助剤を加えて混合した後乾燥して、水溶剤または水和剤として、水で溶解・希釈して用いることが出来る。なお、製剤助剤または増量剤としては、従来から防除剤の製剤助剤または増量剤として知られている鉱物質担体、水溶性担体、また、必要に応じてエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどの凍結防止剤、プロナールEX−300(東邦化学製)などのシリコーン系消泡剤、プロクセルGXL(シンジェンタ製)、デヒドロ酢酸ナトリウム(タイショーテクノス製)などの防黴剤、色素、香料などを添加することも可能であり、粒剤、顆粒水和剤、液剤の防除剤を調製することも可能である。
ところで、本発明防除剤の有効成分である還元澱粉糖化物は別名“還元水あめ”として食品に広く利用されているが、アルキルグルコシドも、現在その安全性、毒性、生分解性、低刺激性の面から、シャンプー、化粧品、食器用洗剤などとして広く利用されており、特に取り扱いに注意を要せず、環境汚染の問題も少ない。本発明防除剤の作用は、有効成分である還元澱粉糖化物の造膜性、アルキルグルコシドの表面張力低下能により、従来の還元澱粉糖化物製剤より低濃度で有害生物に付着して、窒息や行動の制限により死に至らしめるものと考えられる。また、植物葉面や植物病害菌に付着して増殖を抑制し、予防的、治療的効果を発現するものと考えられ、害虫および植物病害菌に対する薬剤抵抗性の発現がない。本発明防除剤単用でも有害生物の防除に優れた効果を示すが、殺虫剤、殺ダニ剤、殺菌剤等の有害生物防除成分を混合して製剤化することは有害生物の防除対象が広がり、より効果的である。
本発明防除剤の防除対象となる有害生物は、果樹、野菜、花卉に発生するナミハダニ、カンザワハダニ、ミカンハダニ、リンゴハダニなどのハダニ類、サビダニ類、ホコリダニ類、ワタアブラムシ、モモアカアブラムシなどのアブラムシ類、オンシツコナジラミ、シルバーリーフコナジラミなどのコナジラミ類、ミカンキイロアザミウマ、ミナミキイロアザミウマ、チヤノキイロアザミウマなどのアザミウマ類、コナカイガラムシなどのカイガラムシ類などが挙げられる。また、野菜や花卉や果樹に発生するうどんこ病、麦類やネギに発生するさび病などの防除にも効果的である。これらの病害虫から保護すべき植物として、例えばミカン、リンゴ、ナシ、モモ、スモモ、アンズ、ウメ、カキ、ブドウ、イチジク、オウトウ等の果樹類、キュウリ、スイカ、メロン、ナス、トマト、ピーマン、バレイショ、イチゴ、ホウレンソウ、キャベツ、ハクサイ、コマツナ、チンゲンサイ、パセリ等の蔬菜類、小麦、稲などの食用作物類、ハーブ類、バラ、キク、カーネーションなどの花卉類、サクラ、ツバキ、チャ等の樹木類などが挙げられる。
4.発明の効果
本発明の防除剤は、薬剤抵抗性出現の心配がなく、農園芸作物に対し薬害がなく、しかも有害生物に対し、従来より低濃度で効果的に防除できる。また、人畜に対する安全性が向上していることに加え、環境面でも安心して利用できる環境保全型の有害生物防除剤である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下に、本発明の有害生物防除剤について、実施例を掲げて説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例中では以下のものを用いた。
還元澱粉糖化物として、還元澱粉糖化物PO−10(東和化成工業製;固形分濃度100%)、PO−20(東和化成工業製;固形分濃度70%)、PO−30(東和化成工業製;固形分濃度70%)、PO−40(東和化成工業製;固形分濃度70%)、還元麦芽糖水飴としてアマルティシロップ(東和化成工業製;固形分濃度75%)を用いた。アルキルグルコシド系界面活性剤として、AGRIMUL PG2067(Cognis Corp製)、AGRIMUL PG2076(Cognis Corp製)、マイドール10(花王製)、マイドール20(花王製)、SUCRAPH AG−8(日本精化製)を用いて実施した。その他添加剤としてはネオコールSW−CP(ジアルキルスルホサクシネート系界面活性剤、第一工業製薬製)、ニューカルゲンEX−70(ジアルキルスルホサクシネート系界面活性剤;竹本油脂製)、Silwet L−77(シリコーン系界面活性剤、Witco社製)、サーフィノール420(アセチレングリコール系界面活性剤、日信化学製)、消泡剤としてプロナールEX−300(東邦化学製)、防黴剤としてデヒドロ酢酸ナトリウム(タイショーテクノス製)を用いた。
製剤例1
還元澱粉糖化物PO−30(固形分濃度70%)85.72%、アルキルグルコシドAGRIMUL PG2067(固形分濃度70%)1.42%、デヒドロ酢酸ナトリウム0.10%及び水12.76%を攪拌して液剤を調製し、本発明品1の防除剤を得た。
製剤例2
還元澱粉糖化物PO−30(固形分濃度70%)85.72%、アルキルグルコシドAGRIMUL PG2067(固形分濃度70%)2.86%、デヒドロ酢酸ナトリウム0.10%及び水11.32%を攪拌して液剤を調製し、本発明品2の防除剤を得た。
製剤例3
還元澱粉糖化物PO−30(固形分濃度70%)85.72%、アルキルグルコシドAGRIMUL PG2067(固形分濃度70%)4.29%、デヒドロ酢酸ナトリウム0.10%及び水9.89%を攪拌して液剤を調製し、本発明品3の防除剤を得た。
製剤例4
還元澱粉糖化物PO−30(固形分濃度70%)85.72%、アルキルグルコシドAGRIMUL PG2067(固形分濃度70%)7.14%、デヒドロ酢酸ナトリウム0.10%及び水7.04%を攪拌して液剤を調製し、本発明品4の防除剤を得た。
製剤例5
還元澱粉糖化物PO−30(固形分濃度70%)85.72%、アルキルグルコシドAGRIMUL PG2067(固形分濃度70%)11.43%、デヒドロ酢酸ナトリウム0.10%及び水2.75%を攪拌して液剤を調製し、本発明品5の防除剤を得た。
製剤例6
還元澱粉糖化物PO−10(固形分濃度100%)0.50%、アルキルグルコシドAGRIMUL PG2067(固形分濃度70%)0.04%、デヒドロ酢酸ナトリウム0.02%、プロナールEX−300を0.01%、及び水99.43%を攪拌して液剤を調製し、本発明品6の防除剤を得た。
製剤例7
還元澱粉糖化物PO−20(固形分濃度70%)0.71%、アルキルグルコシドAGRIMUL PG2076(固形分濃度60%)0.05%、デヒドロ酢酸ナトリウム0.02%、プロナールEX−300を0.01%、及び水99.21%を攪拌して液剤を調製し、本発明品7の防除剤を得た。
製剤例8
還元澱粉糖化物PO−30(固形分濃度70%)0.71%、アルキルグルコシドマイドール10(固形分濃度40%)0.08%、デヒドロ酢酸ナトリウム0.02%、プロナールEX−300を0.01%、及び水99.18%を攪拌して液剤を調製し、本発明品8の防除剤を得た。
製剤例9
還元澱粉糖化物PO−40(固形分濃度70%)0.71%、アルキルグルコシドマイドール20(固形分濃度40%)0.08%、デヒドロ酢酸ナトリウム0.02%、プロナールEX−300を0.01%、及び水99.18%を攪拌して液剤を調製し、本発明品9の防除剤を得た。
製剤例10
還元麦芽糖水飴アマルティシロップ(固形分濃度75%)0.67%、アルキルグルコシドSUCRAPH AG−8(固形分濃度50%)0.10%、デヒドロ酢酸ナトリウム0.02%、プロナールEX−300を0.01%、及び水99.20%を攪拌して液剤を調製し、本発明品10の防除剤を得た。
製剤例11
還元澱粉糖化物PO−30(固形分濃度70%)0.71%、アルキルグルコシドAGRIMUL PG2067(固形分濃度70%)0.10%、デヒドロ酢酸ナトリウム0.02%、プロナールEX−300を0.01%、及び水99.16%を攪拌して液剤を調製し、本発明品11の防除剤を得た。
製剤例12
還元澱粉糖化物PO−30(固形分濃度70%)0.71%、アルキルグルコシドSUCRAPH AG−8(固形分濃度50%)0.10%、デヒドロ酢酸ナトリウム0.02%、プロナールEX−300を0.01%、及び水99.16%を攪拌して液剤を調製し、本発明品12の防除剤を得た。
製剤例13
還元澱粉糖化物PO−10(固形分濃度100%)60.00%、アルキルグルコシドマイドール10(固形分濃度40%)8.00%、デヒドロ酢酸ナトリウム0.20%、D−ソルビット31.80%を混合後、乾燥して水溶剤を調製し、本発明品13の防除剤を得た。
製剤例14
還元澱粉糖化物PO−20(固形分濃度70%)86.00%、アルキルグルコシドマイドール20(固形分濃度40%)8.00%、デヒドロ酢酸ナトリウム0.20%、プロナールEX−300を0.20%、及び水5.60%を攪拌して液剤を調製し、本発明品14の防除剤を得た。
製剤例15
還元澱粉糖化物PO−30(固形分濃度70%)86.00%、アルキルグルコシドSUCRAPH AG−8(固形分濃度50%)10.00%、デヒドロ酢酸ナトリウム0.20%、プロナールEX−300を0.10%、及び水3.70%を攪拌して液剤を調製し、本発明品15の防除剤を得た。
製剤例16
還元澱粉糖化物PO−40(固形分濃度70%)71.40%、アルキルグルコシドAGRIMUL PG2067(固形分濃度70%)7.00%、デヒドロ酢酸ナトリウム0.20%、プロナールEX−300を0.10%、及び水21.30%を攪拌して液剤を調製し、本発明品16の防除剤を得た。
製剤例17
還元麦芽糖水飴アマルティシロップ(固形分濃度75%)66.70%、アルキルグルコシドAGRIMUL PG2076(固形分濃度60%)8.00%、デヒドロ酢酸ナトリウム0.10%、プロナールEX−300を0.10%、及び水25.10%を攪拌して液剤を調製し、本発明品17の防除剤を得た。
以下に、比較対照用として用いる製剤を比較例として示す。
比較例1
還元澱粉糖化物PO−30(固形分濃度70%)85.72%、ネオコールSW−CP3.00%、デヒドロ酢酸ナトリウム0.10%及び水11.18%を加えて攪拌して液剤を調製し、比較品1の防除剤を得た。(特開平2001−131011号公報に記載の製剤例10と同一)
比較例2
還元澱粉糖化物PO−10(固形分濃度100%)60.00%、ニューカルゲンEX−70 3.00%、デヒドロ酢酸ナトリウム0.10%及びD−ソルビット36.90%を加えて混合して水溶剤を調製し、比較品2の防除剤を得た。(特開平2001−131011号公報に記載の製剤例11と同一)
比較例3
還元麦芽糖水飴アマルティシロップ(固形分濃度75%)80.00%、ネオコールSW−CP 3.00%、デヒドロ酢酸ナトリウム0.10%及び水16.90%を加えて攪拌して液剤を製し、比較品3の防除剤を得た。(特開平2001−131011号公報に記載の製剤例12と同一)
比較例4
還元澱粉糖化物PO−30(固形分濃度70%)85.72%、SilwetL−77 3.00%、デヒドロ酢酸ナトリウム0.10%、プロナールEX−300 0.10%、及び水11.08%を加えて攪拌して液剤を調製し、比較品4の防除剤を得た。
比較例5
還元澱粉糖化物PO−30(固形分濃度70%)85.72%、サーフィノール420 3.00%、デヒドロ酢酸ナトリウム0.10%、プロナールEX−300 0.10%、及び水11.08%を加えて攪拌して液剤を調製し、比較品5の防除剤を得た。
比較例6
アルキルグルコシドAGRIMUL PG2067(固形分濃度70%)1.00%、デヒドロ酢酸ナトリウム0.02%、プロナールEX−300 0.01%、及び水98.97%を加えて攪拌して液剤を調製し、比較品6の防除剤を得た。
次に、本発明防除剤が有用であることを試験例で示す。
試験例1(モモアカアブラムシ幼虫に対する殺虫試験)
所定の大きさに切り取ったダイコン葉に1葉当たり5頭の雌を寄生させ、水を入れた20mlスクリュー管に挿し、24時間恒温室(25℃)内において産仔させた。産仔されたダイコン葉から雌成虫を取り除き幼虫数を調査した後、製剤例1〜5で得た本発明品1〜5を水で100倍(重量/重量、以下同様)に希釈した薬液、製剤例6〜12で得た本発明品6〜12の無希釈液、製剤例13〜17で得た本発明品13〜17を水で100倍及び200倍に希釈した薬液、比較例1〜5で得られた比較品1〜5を水で100倍及び200倍に希釈した薬液、比較例6で得られた比較品6の無希釈液、対照薬剤としてアディオン乳剤(住友化学工業製)の1000倍希釈液にダイコン葉を約5秒間浸漬処理した。処理葉は風乾後恒温室内(25℃)に静置し、48時間後に幼虫の生死を観察し死虫率(%)を算出した。試験は1区3連制で行った。結果を表1に示す。

試験例2(チューリップヒゲナガアブラムシに対する効力試験)
本試験では、鉢植えペチュニア(ナス科ペチュニア属)を使用した。本発明区として、製剤例14、15で得た本発明品14、15を水で100倍及び200倍に希釈した薬液を、噴霧器で鉢植えペチュニア(開花期)に十分量散布した。同様に、比較例1、3で得られた比較品1、3を水で100倍及び200倍に希釈した薬液を、噴霧器で鉢植えペチュニア(開花期)に十分量散布した。同様に、対照薬剤としてモスピラン液剤(日本曹達製)の500倍希釈液を、噴霧器で鉢植えペチュニア(開花期)に十分量散布した。さらに、無処理区として、何も散布しないものを用意した。各区について、散布前及び経時的に3、7、14日後に株全体に寄生するチューリップヒゲナガアブラムシ数を調査した(1区1株10連制)。結果を表2に示す。

試験例3(抵抗性ナミハダニ雌成虫に対する殺ダニ試験)
まず、直径9cmのスチロールカップで育成したインゲン(初生葉期)に抵抗性ナミハダニ30頭前後を接種し、ダニを定着させた。ダニが定着した後、本発明として、製剤例13〜17で得られた本発明品13〜17を水で100倍及び200倍に希釈した薬液を、比較区として、比較例1〜5で得た比較品1〜5を水で200倍に希釈した薬液を、室内自動散布装置(池田理化製)で160L/10a相当量散布した。同様に、対照薬剤としてダニトロンフロアブル(日本農薬製)を水で1000倍に希釈した液を、室内自動散布装置(池田理化製)で160L/10a相当量散布した。さらに、無処理区として、水のみを散布したものを用意した。各区の葉は、風乾後、恒温室内(25℃)に静置し、48時間後にダニの生死を観察し、死虫率(%)を算出した。なお、試験は1区3連制で行った。結果を表3に示す。

試験例4(抵抗性ミカンハダニに対する殺ダニ試験)
本試験例では、鉢植え温州みかん(品種;青島、3年生)を使用した。本発明区として、製剤例13〜17で得られた本発明品13〜17を水で200倍に希釈した薬液を、噴霧器で鉢植え温州みかんに十分量散布した。また、比較区として、比較例1で得た比較品1を水で100倍及び200倍に希釈した薬液を、噴霧器で鉢植え温州みかんに十分量散布した。同様に、対照薬剤としてのダニカット乳剤(日産化学製)を水で1000倍に希釈した液を、噴霧器で鉢植え温州みかんに十分量散布した。さらに、無処理区として、何も散布しないものを用意した。各区について、散布前及び経時的に3、7、14日後に1樹当たり20葉(1区、1鉢、2連制)に寄生する抵抗性ミカンハダニ雌成虫数を調査した。結果(100葉当たりに換算した値)を表4に示す。

試験例5(キュウリうどんこ病に対する効力試験)
本試験例では、無加温アクリルハウス内で育成したうどんこ病無発生のポット植えキュウリ(品種:ときわ光3号P型)を使用した。本発明区として、製剤例8〜13で得られた本発明品8〜13を水で200倍に希釈した薬液を、ハンドスプレーでポット鉢植えキュウリに十分量散布した。また、比較区として、比較例1で得た比較品1を水で200倍に希釈した薬液を、ハンドスプレーでポット植えキュウリに十分量散布した。同様に、対照薬剤としてのハーモメイト水溶剤(明治製菓製)を水で800倍に希釈した液を、ハンドスプレーでポット植えキュウリに十分量散布した。各区について、散布12日後に、1株当たり下位2葉の自然発生したうどんこ病発病程度を調査した(1区6株)。また、発病度、防除価を次式により算出した。
・発病度=[Σ(発病指数×発病程度別葉数)/(4×調査葉数)]×100
ここでの発病指数を次に示す。
0:発病無し
1:発病葉面積率5%未満
2:発病葉面積率5〜25%未満
3:発病葉面積率25〜50%未満
4:発病葉面積率50%以上
・防除価=[(無処理区発病度−処理区発病度)/無処理区発病度]×100
散布12日後の結果を表5に示す。

試験例6(薬害試験)
製剤例14、15で得た本発明品14、15を水で100倍に希釈した薬液を、鉢植えキュウリ(光3号P型:成熟期)、インゲン(長うずら:成熟期)、トマト(大型福寿:成熟期)、温州みかん(青島:4年生)、りんご(ふじ:4年生)、茶(やぶきた:3年生)、小麦(農林61号:2葉)、稲(コシヒカリ:2.5葉)、ナス科ペチュニア属(ペチュニア:開花期)、キク科レウカンテムム属(ノースポール:開花期)、スミレ科スミレ属(ビオラ:開花期)に噴霧器で十分量散布した。同様に、比較例1、3で得た比較品1、3を水で100倍に希釈した薬液を、噴霧器で十分量散布した。各区について、散布3日後に茎葉及び果実について肉眼により調査したが、花卉類のナス科ペチュニア属(ペチュニア)、キク科レウカンテムム属(ノースポール)、スミレ科スミレ属(ビオラ)では、茎葉及び花について調査した。薬害試験の結果を表6に示す。

薬害は、次の基準によって程度別に判定した。
−:薬害なし。±:薬害があるが実用上支障なし。
+:薬害があり実用上問題となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
還元澱粉糖化物を有効成分とし、アルキルグルコシド系界面活性剤を配合することを特徴とする有害生物防除剤。
【請求項2】
アルキルグルコシド系界面活性剤を固形成分として0.005〜20重量%含有する、請求項1に記載の有害生物防除剤。

【国際公開番号】WO2005/002340
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【発行日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−503377(P2005−503377)
【国際出願番号】PCT/JP2003/008362
【国際出願日】平成15年7月1日(2003.7.1)
【出願人】(000223090)東和化成工業株式会社 (25)
【出願人】(000234890)協友アグリ株式会社 (19)
【Fターム(参考)】