説明

環境測定システム

【課題】都市環境を簡便に、かつ、高密度・高精度に測定し、さらに、維持管理を簡単に行うことができる環境測定システムを提供することを目的とする。
【解決手段】温度センサと湿度センサとGPS受信器とを有する小型ブロック状の測定器1を、路上移動体5に搭載する。そして、移動体5が測定対象エリア6内で移動しながら測定器1により所定秒毎に測定した温度・湿度の測定データをGPS受信器から得られた地理情報と共にコンピュータ7に送信する。かつ、コンピュータ7において、測定データを地理情報システムによってメッシュ表示して、環境マップを作成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、都市等における環境測定システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化やCO2 の増加に伴い、都市部において夏場の高温化現象,ヒートアイランド現象あるいは突発的な集中豪雨等が起きており、地方自治体を中心に都市の環境モニタリングや地球温暖化に対する対策案が作成されつつあるが、その対策の一環としての従来の環境測定システム(モニタリング)は、測定対象エリア内の建物等に、温度や湿度等を測定するための気象センサ装置を分散して複数設置し、各気象センサ装置が測定した気象データを端末装置に無線転送して、広範囲の領域内の気象データを収集するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−301511公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のこの環境測定システムは、特定の場所(建物等)に気象センサ装置を設置して測定する、いわゆる定点観測を行うものであるが、各装置が高価であることと設置コストが掛かる理由から測定対象領域内に設置可能な数量が限定されるので、局所的な気象データしか得られない。よって、例えば、温暖化緩和対策や、緑化対策などの効果を検証するには全く不充分である。
仮に、この従来の測定システムを用いて領域内の細かいデータを収集する場合には、測定対象エリア内に非常に多くの気象センサ装置を設置しなければならず、コストや設置の手間も莫大なものになってしまう。さらに、設置した気象センサ装置の電池交換を定期的に行う必要があるため非常に手間が掛かる上に、気象センサ装置が故障した場合には設置場所まで行って修理交換しなければならない。
このように、従来の環境測定システムは、充分な気象データが得られない上に、手間やコストが非常に大きくなる。
【0004】
そこで、本発明は、都市環境を簡便に、かつ、高密度・高精度に測定し、さらに、維持管理を簡単に行うことができる環境測定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明に係る環境測定システムは、温度センサとGPS受信器とを有する小型ブロック状の測定器を、路上移動体に搭載し、該移動体が測定対象エリア内で移動しながら上記測定器により所定秒毎に測定した温度の測定データを上記GPS受信器から得られた地理情報と共にコンピュータに送信し、該コンピュータにおいて、該測定データを地理情報システムによってメッシュ表示して、環境マップを作成するものである。
また、多数のメッシュをもって表示された上記環境マップの各該メッシュは、2箇所以上の測定ポイントで測定した温度のデータの平均値に基づいて表示されている。
【0006】
また、本発明に係る環境測定システムは、温度センサと湿度センサとGPS受信器、及び、大気中のCO2 ,SOX ,NOX 等のガスを測定するガスセンサを有する小型ブロック状の測定器を、路上移動体に搭載し、該移動体が測定対象エリア内で移動しながら上記測定器により所定秒毎に測定した温度・湿度・ガスの測定データを上記GPS受信器から得られた地理情報と共にコンピュータに送信し、該コンピュータにおいて、該測定データを地理情報システムによってメッシュ表示して、環境マップを作成するものである。
また、多数のメッシュをもって表示された上記環境マップの各該メッシュは、2箇所以上の測定ポイントで測定した温度・湿度・ガスのデータの平均値に基づいて表示されている。
【0007】
また、上記測定器は、光量を測定する光量センサが付加的に搭載され、光量の測定データを上記地理情報システムによってメッシュ表示して、上記環境マップに付加した。
なお、上記測定器は、音の大きさを測定する騒音センサが付加的に搭載され、音の測定データを上記地理情報システムによってメッシュ表示して、上記環境マップに付加するも好ましい。
【0008】
また、上記測定対象エリア内の一本の走行ルートを第1路上移動体が始点から終点へ向けて移動し、かつ、上記走行ルートの上記終点から上記始点へ向けて第2路上移動体を同時にスタートして同時に終了するように反対方向に走行して測定し、そして、時間的に先と後の測定データの平均値を上記コンピュータにて演算してメッシュ表示するのが望ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、次のような著大な効果を奏する。
本発明に係る環境測定システムは、高密度・高精度のメッシュ表示の環境マップを得ることができて、環境に優しい都市づくりに非常に役立つデータベースを作ることができる。
また、小型の測定器等を移動体に容易にセットできるので、設置の手間・コストを抑えることができると共に、維持管理が大幅に楽になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、実施の形態を示す図面に基づき、本発明を詳説する。
図1,図2は本発明に係る環境測定システムの実施の一形態を示し、温度センサ24と湿度センサ25と気圧センサ3とGPS受信器4とを有する小型ブロック状の測定器1を、路上移動体5に搭載したものである。測定器1は、略直方体状の電池収納部に、基板が取着されると共に、上記のセンサ24,25,3とGPS受信器4が基板に付設され、かつ、後述の親器26へ測定データ情報を送信するための線状アンテナ部材27が付設されている。
【0011】
また、本発明の環境測定システムは、位置情報の電波の送受信を人工衛星との間で行う小型略直方体のGPS受信アンテナ28を備える。そして、GPS受信アンテナ28と測定器1のGPS受信器4とが配線29で接続され、測定器1とGPS受信アンテナ28が、路上移動体5に(面状ファスナや両面テープ等で)着脱自在に取着される。
図1では、移動体5として自動車12を用いており、測定器1とGPS受信アンテナ28は自動車12の屋根の上に取着される。なお、(図示省略するが、)取着箇所としては、屋根の上以外に、ボンネットの上や、トランクの上や、荷台の上等の自動車12の上面を用いるのが望ましい。
また、26は、測定器1の各センサが測定しアンテナ部材27から送信された測定データを受信する親器であり、コンピュータ7(ノートパソコン13)にUSB接続されて、測定データをコンピュータ7にインプットする。
移動体5を自動車12とすることで素早い移動が可能となり、例えば都市において数キロメートル四方の広い測定対象エリア6(図4,図6参照)であっても数十分程度で測定を完了でき、短時間の測定時間における温度・湿度・気圧等の詳しいデータを収集できる。また、自動車12の車中にコンピュータ7を搭載して走行ルート20を移動できるので、走行中において、コンピュータ7により測定データを管理及び分析することが可能である。
【0012】
また、測定器1は、大気中のCO2 ,SOx ,NOx 等のガスを測定するガスセンサ9が付加的に搭載されてもよい。そして、移動体5の移動中に、ガスセンサ9により測定された走行ルート20におけるガスの測定データが、コンピュータ7へ送信され、地理情報システムによってメッシュ表示されて、環境マップ8に付加される。
【0013】
また、測定器1は、光量を測定する光量センサ10が付加的に搭載されてもよい。そして、光量センサ10により測定された走行ルート20における光量の測定データが、コンピュータ7に送信され、地理情報システムによってメッシュ表示されて、環境マップ8に付加される。
【0014】
また、測定器1は、音の大きさを測定する騒音センサ11が付加的に搭載されてもよく、騒音センサ11により測定された走行ルート20における音の測定データが、地理情報システムによってメッシュ表示されて、環境マップ8に付加される。
【0015】
なお、本発明では、測定器1には、温度と湿度を測定する機能が備わった一つのチップから成る温度・湿度センサ2が搭載されているが、温度センサ24と湿度センサ25とを別々のチップから形成して搭載するのもよい。
また、測定器1の大きさを示す小型ブロック状とは、外部から被覆するケーシング(箱体)が有る場合には、そのケーシングを取外した状態で計測して、測定器1のうち線状部材(アンテナ部材27)を除いた部分に包囲状に接する直方体状の仮想包囲体19について、その縦寸法D・横寸法W・高さ寸法Hの合計が 200mm以下となることと定義する(図3参照)。また、図示省略するが、測定器1が、2個又は3個の別個のブロック状の測定器から成るのもよく、この場合には、各測定器の縦・横・高さの合計寸法を全て足し合わせた寸法が、 200mm以下となるものとする。そして、2個又は3個の測定器に、温度センサ24と湿度センサ25と気圧センサ3とGPS受信器4(さらには、ガスセンサ9,光量センサ10,騒音センサ11を付加的に)を適宜組み合わせて2〜3グループに分けて搭載し、相互に配線で接続する。
【0016】
次に、本発明において環境測定の手順について説明する。
先ず、図1,図2において、移動体5(自動車12の屋根上)に、配線29で接続した測定器1とGPS受信アンテナ28を取着し、親器26を接続したコンピュータ7を車中に搭載する。
また、図4,図5に示したように、都市等の地図において、例えば2キロメートル四方の測定対象エリア6を設定し、この測定対象エリア6を、数十メートルの所定間隔L16で並列する縦横のメッシュ線15…で複数のメッシュ16…(図5の斜線の範囲)に分ける。さらに、測定対象エリア6内の道路において、移動体5が走行して測定を行うための走行ルート20を決めて、各メッシュ16内に二点以上の測定ポイント17…が存在するように、走行速度と測定の所定秒間隔を決めておく。
【0017】
そして、実際に移動体5を走行ルート20を走行させながら、所定秒毎(例えば2秒毎や5秒毎)に温度・湿度・気圧・ガス等の測定を各センサで同時に行うと共に、それらを測定した地点をGPS受信器4で特定し、これらの測定データをアンテナ部材27,親器26を介してコンピュータ7に送信してデータを蓄積する。そして、走行ルート20の移動が完了し多数(数百〜数千)のポイントで測定できたら、コンピュータ7で蓄積されたデータを解析して、地理情報システム(GIS)によって、地理情報(人工衛星情報や地図情報)を下敷きとして温度等の情報をメッシュ表示した環境マップ8を作成する。
【0018】
環境マップ8の各メッシュ16について、2箇所以上のポイントの測定値の平均値をコンピュータ7による演算により算出する。そして、例えば、温度についての環境マップ8を作成する場合、各メッシュ16の色を、算出された測定値が高い温度のものは濃く、低くなるに従って薄くなるようにし、地理情報を下敷きにした環境マップ8を作成する。各メッシュ16が1箇所のみの測定データを反映する場合に比べて、ムラの少ない高精度な測定値を表示することができる。なお、走行ルート20が通っていないメッシュ16には測定データが無いため、環境マップ8のメッシュ16内は空白とした(図6参照)。なお、メッシュ16の大きさを粗く(大きく)設定して、空白をほとんど(又は全く)無しとして、表示してもよい。なお、1つのメッシュ16において1箇所の測定ポイント17のみで測定してデータを環境マップ8に反映するのもよく、2箇所以上の測定データを反映したメッシュ16に比べて測定の精度は劣るが、移動体5がスムーズに走行する場合等に適用される。
【0019】
このように、地理情報システムにより、地理情報を下敷きとし、GPSの測定による位置情報を持った温度,湿度,気圧,ガス,光量,騒音の測定データに基づく各環境マップ8が作成される。そして、コンピュータ7を操作して、温度等のうちの所望の測定データと地理情報を重ね合わせた環境マップ8を得ることができる。このように、得られた環境マップ8は、測定対象エリア6において数十メートル四方のメッシュ16…毎のデータが反映されているので、コンターマップ(等高線マップ)のような散点状のデータしか得られないものに比べて、高密度・高精度のものとなる。また、1セットの測定器1等を移動体5に搭載するだけでセットが完了なので、測定対象エリア内の建物等に装置を分散して複数設置する従来のシステムに比べて、装置のコストが大幅に少ない上に、設置の手間・コストが抑えられ、しかも、維持管理が非常に簡単である。また、測定したデータが移動体5に搭載したコンピュータ7に即座に送信されるので迅速に解析できる。
【0020】
また、温度の測定データと地理情報とから作成した環境マップ8によれば、夏場の高温地帯を高密度・高精度に(ピンポイントで)把握することができ、ヒートアイランド現象の発生地をリアルタイムで把握できる。そして、交通流によるヒートアイランドの実体を解明できて、地域性を考慮した細かい対策を講ずることができる。また、緑化や保水性舗装等の効果の検証や、土地利用や建物の構造,配置,エネルギー消費量と環境負荷の関係の把握を、細かく行うことができる。このように、環境に優しい都市づくりへのデータベースとすることができる。
【0021】
また、温度・湿度の測定データに基づいて、コンピュータ7の演算によって温度湿度指数、即ち、不快指数(DI)を算出することができ、不快指数をメッシュ表示した(局地的表示した)環境マップ8も作成可能である。
【0022】
また、本発明の測定システムでは、測定対象エリア6内の測定ポイント17(メッシュ16)において、夫々測定時刻が異なる。そのため、1台の移動体5のみで測定したデータに基づいて環境マップ8を作成すると、例えば、測定の始点21と終点22におけるメッシュ16,16については測定時刻が違うため、最適なデータベースになるとは言い難い。
そこで、図4に示したように、測定対象エリア6内の一本の走行ルート20を第1路上移動体5Aが始点21から終点22へ向けて移動し、かつ、走行ルート20の終点22から始点21へ向けて第2路上移動体5Bを同時にスタートして同時に終了するように反対方向に走行させて測定を行う。各移動体5A,5Bには、夫々、測定器1,GPS受信アンテナ28,親器26,コンピュータ7等を搭載する。そして、各測定ポイント17について、時間的に先と後の測定データの平均値をコンピュータ7にて演算してメッシュ表示する。この方法によれば、全測定ポイント17の測定データについて、測定時刻の偏りを抑えることができて、より最適なデータとなる。例えば、次のような順序で行えばよい。即ち、
(i)一方向からのデータを第1路上移動体5Aによって取得する。
(ii) 取得したデータの各メッシュ16の平均を算出する。
(iii)逆方向から同時にスタートした第2路上移動体5Bによって他方向からのデータを 取得する。
(iv) 取得したデータの各メッシュ16の平均を算出する。
(v)(ii) 及び(iv) で各々算出された平均値の平均値をコンピュータ7にて演算して 各メッシュ16の代表値とする。
【0023】
また、図7に示したように、移動体5を自転車として走行しながら各データを測定するのもよい。この場合、例えば、自転車のフレームに測定器1やGPS受信アンテナ28等を取着し、コンピュータ7を入れたカバンを運転者が背負って走行する。測定データは、親器26を介してコンピュータ7に送信される。自動車よりも走行スピードは劣るが、自動車が渋滞する場合にも、スムーズに走行することが可能となる。あるいは、図示省略するが、歩行者が、コンピュータ7を入れたカバンを背負うと共に、カバンに測定器1を取着して、走行ルート20を歩いて測定データを取るのもよい。
【0024】
測定器1,GPS受信器4,親器26等は小型であり、移動体5に設置するのが容易であると共に、設置後の外観がシンプルで目立たない。また、測定器1,親器26,ノートパソコン13等は全てをまとめてもそれほど嵩張らないので、カバン等にコンパクトに入れることができ、測定したい地域へ容易に持ち運んで、測定を行うことができる。なお、本発明において、自動車12としては、乗用車、作業自動車、バス、トラック、タクシー等を包含する。
【0025】
以上のように、本発明に係る環境測定システムは、温度センサ24とGPS受信器4とを有する小型ブロック状の測定器1を、路上移動体5に搭載し、移動体5が測定対象エリア6内で移動しながら測定器1により所定秒毎に測定した温度の測定データをGPS受信器4から得られた地理情報と共にコンピュータ7に送信し、コンピュータ7において、測定データを地理情報システムによってメッシュ表示して、環境マップ8を作成するものなので、得られた環境マップ8は、測定対象エリア6において数十メートル四方のメッシュ16…毎のデータが反映されているので、コンターマップ(等高線マップ)のような散点状のデータしか得られないものに比べて、高密度・高精度のものとなる。また、1セットの測定器1等を移動体5に搭載するだけでセットが完了なので、測定対象エリア内の建物等に装置を分散して複数設置する従来のシステムに比べて、装置のコストが大幅に少ない上に、設置の手間・コストが抑えられ、しかも、維持管理が非常に簡単である。また、測定したデータが移動体5に搭載したコンピュータ7に即座に送信されるので迅速に解析できる。
【0026】
そして、温度についての環境マップ8を作成できるので、ヒートアイランド現象の発生地が細かくリアルタイムで把握でき、交通流によるヒートアイランドの実体を解明できて、地域性を考慮した細かい対策を講ずることができる。また、緑化や保水性舗装等の効果の検証や、土地利用や建物の構造,配置,エネルギー消費量と環境負荷の関係の把握を、細かく行うことができる。このように、環境に優しい都市づくりへのデータベースとすることができる。
また、測定器1やコンピュータ7等を全てをまとめても大した嵩を取らないので、カバン等にコンパクトにまとめて入れることができる。よって、測定したい地域へ容易に持ち運んで、測定を行うことができる。
【0027】
また、多数のメッシュ16をもって表示された環境マップ8の各メッシュ16は、2箇所以上の測定ポイント17で測定した温度のデータの平均値に基づいて表示されているので、各メッシュ16が1箇所のみの測定データを反映する場合に比べて、ムラの少ない高精度な測定値を表示することができる。
【0028】
また、本発明に係る環境測定システムは、温度センサ24と湿度センサ25とGPS受信器4とを有する小型ブロック状の測定器1を、路上移動体5に搭載し、移動体5が測定対象エリア6内で移動しながら測定器1により所定秒毎に測定した温度・湿度の測定データをGPS受信器4から得られた地理情報と共にコンピュータ7に送信し、コンピュータ7において、地理情報システムによって処理して、測定データをメッシュ表示した環境マップ8を、作成するものなので、得られた環境マップ8は、測定対象エリア6において数十メートル四方のメッシュ16…毎のデータが反映されているので、コンターマップ(等高線マップ)のような散点状のデータしか得られないものに比べて、高密度・高精度のものとなる。また、1セットの測定器1等を移動体5に搭載するだけでセットが完了なので、測定対象エリア内の建物等に装置を分散して複数設置する従来のシステムに比べて、装置のコストが大幅に少ない上に、設置の手間・コストが抑えられ、しかも、維持管理が非常に簡単である。また、測定したデータが移動体5に搭載したコンピュータ7に即座に送信されるので迅速に解析できる。
【0029】
そして、温度についての環境マップ8を作成すれば、ヒートアイランド現象の発生地が細かくリアルタイムで把握でき、交通流によるヒートアイランドの実体を解明できて、地域性を考慮した細かい対策を講ずることができる。また、緑化や保水性舗装等の効果の検証や、土地利用や建物の構造,配置,エネルギー消費量と環境負荷の関係の把握を、細かく行うことができる。このように、環境に優しい都市づくりへのデータベースとすることができる。
また、温度・湿度の測定データに基づいて、コンピュータ7の演算によって温度湿度指数、即ち、不快指数(DI)を算出することで、不快指数をメッシュ表示した(局地的表示した)環境マップ8も得ることができる。
また、測定器1やコンピュータ7等を全てをまとめても大した嵩を取らないので、カバン等にコンパクトにまとめて入れることができる。よって、測定したい地域へ容易に持ち運んで、測定を行うことができる。
【0030】
また、多数のメッシュ16をもって表示された環境マップ8の各メッシュ16は、2箇所以上の測定ポイント17で測定した温度・湿度のデータの平均値に基づいて表示されているので、各メッシュ16が1箇所のみの測定データを反映する場合に比べて、ムラの少ない高精度な測定値を表示することができる。
【0031】
また、測定器1は、大気中のCO2 ,SOx ,NOx 等のガスを測定するガスセンサ9が付加的に搭載され、ガスの測定データを地理情報システムによる処理によりメッシュ表示して環境マップ8に付加したものなので、都市等においてどの地域にどれだけの量のガスが発生しているのかを詳細に把握することができ、ガスに対する対策を細かく具体的に講ずることができる。
【0032】
また、測定器1は、光量を測定する光量センサ10が付加的に搭載され、光量の測定データを地理情報システムによる処理によりメッシュ表示して環境マップ8に付加したものなので、太陽からの光量が、都市等においてどの地域にどれだけの大きさであるかを詳細に把握することができ、環境に優しい都市づくりのデータベースとなる。
【0033】
また、測定器1は、音の大きさを測定する騒音センサ11が付加的に搭載され、音の測定データを地理情報システムによる処理によりメッシュ表示して環境マップ8に付加したものなので、都市等においてどの地域にどれだけの量の騒音が発生しているのかを詳細に把握することができ、騒音対策を細かく具体的に講ずることができる。
【0034】
また、測定対象エリア6内の一本の走行ルート20を第1路上移動体5Aが始点21から終点22へ向けて移動し、かつ、走行ルート20の終点22から始点21へ向けて第2路上移動体5Bを同時にスタートして同時に終了するように反対方向に走行して測定し、そして、時間的に先と後の測定データの平均値をコンピュータ7にて演算してメッシュ表示するものなので、全測定ポイント17の測定データについて、測定時刻の偏りを抑えることができて、より最適なデータとなる。このように、測定対象エリア6内の測定ポイント17(メッシュ16)において、夫々測定時刻が異なるという欠点を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る環境測定システムの実施の一形態を示す斜視図である。
【図2】要部斜視図である。
【図3】説明用要部斜視図である。
【図4】測定対象エリアを説明する平面図である。
【図5】説明用拡大平面図である。
【図6】環境マップを示す説明用平面図である。
【図7】本発明に係る環境測定システムの他の実施の形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0036】
1 測定器
4 GPS受信器
5,5A,5B 移動体
6 測定対象エリア
7 コンピュータ
8 環境マップ
9 ガスセンサ
10 光量センサ
11 騒音センサ
16 メッシュ
17 測定ポイント
20 走行ルート
21 始点
22 終点
24 温度センサ
25 湿度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度センサ(24)とGPS受信器(4)とを有する小型ブロック状の測定器(1)を、路上移動体(5)に搭載し、
該移動体(5)が測定対象エリア(6)内で移動しながら上記測定器(1)により所定秒毎に測定した温度の測定データを上記GPS受信器(4)から得られた地理情報と共にコンピュータ(7)に送信し、該コンピュータ(7)において、該測定データを地理情報システムによってメッシュ表示して、環境マップ(8)を作成することを特徴とする環境測定システム。
【請求項2】
温度センサ(24)とGPS受信器(4)とを有する小型ブロック状の測定器(1)を、路上移動体(5)に搭載し、
該移動体(5)が測定対象エリア(6)内で移動しながら上記測定器(1)により所定秒毎に測定した温度の測定データを上記GPS受信器(4)から得られた地理情報と共にコンピュータ(7)に送信し、該コンピュータ(7)において、該測定データを地理情報システムによってメッシュ表示して、環境マップ(8)を作成すると共に、
多数のメッシュ(16)をもって表示された上記環境マップ(8)の各該メッシュ(16)は、2箇所以上の測定ポイント(17)で測定した温度のデータの平均値に基づいて表示されていることを特徴とする環境測定システム。
【請求項3】
温度センサ(24)と湿度センサ(25)とGPS受信器(4)、及び、大気中のCO2 ,SOx ,NOX 等のガスを測定するガスセンサ9を有する小型ブロック状の測定器(1)を、路上移動体(5)に搭載し、
該移動体(5)が測定対象エリア(6)内で移動しながら上記測定器(1)により所定秒毎に測定した温度・湿度・ガスの測定データを上記GPS受信器(4)から得られた地理情報と共にコンピュータ(7)に送信し、該コンピュータ(7)において、該測定データを地理情報システムによってメッシュ表示して、環境マップ(8)を作成することを特徴とする環境測定システム。
【請求項4】
温度センサ(24)と湿度センサ(25)とGPS受信器(4)、及び、大気中のCO2 ,SOx ,NOX 等のガスを測定するガスセンサ9を有する小型ブロック状の測定器(1)を、路上移動体(5)に搭載し、
該移動体(5)が測定対象エリア(6)内で移動しながら上記測定器(1)により所定秒毎に測定した温度・湿度・ガスの測定データを上記GPS受信器(4)から得られた地理情報と共にコンピュータ(7)に送信し、該コンピュータ(7)において、該測定データを地理情報システムによってメッシュ表示して、環境マップ(8)を作成すると共に、 多数のメッシュ(16)をもって表示された上記環境マップ(8)の各該メッシュ(16)は、2箇所以上の測定ポイント(17)で測定した温度・湿度・ガスのデータの平均値に基づいて表示されていることを特徴とする環境測定システム。
【請求項5】
上記測定器(1)は、光量を測定する光量センサ(10)が付加的に搭載され、光量の測定データを上記地理情報システムによってメッシュ表示して、上記環境マップ(8)に付加した請求項1,2,3又は4記載の環境測定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−170415(P2008−170415A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−182450(P2007−182450)
【出願日】平成19年7月11日(2007.7.11)
【分割の表示】特願2007−3105(P2007−3105)の分割
【原出願日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年11月22日に日刊工業新聞、読売新聞、日経産業新聞、及び日本経済新聞にて発表
【出願人】(506359532)地球観測株式会社 (4)