環境試験器における観測窓
【課題】環境試験器において、該試験器本体内での実験操作を行う操作孔に起因する結露による曇りを確実に除去するものである。
【解決手段】観測窓(6)を構成し、互いに対向する辺縁(8)に一対の通電電極(9)(9)を配置するガラス板(7)に操作孔(11)を穿設すると共に、該操作孔(11)を挟んで互いに対向する左右対称な弧形状の誘導電極(13)を互いに抵抗体(14)を介して接続しながら配置するものであって、該操作孔(11)を挟んでの一対の通電電極(9)(9)間の総抵抗値を、それ以外の位置における通電電極(9)(9)間の抵抗値と略同等とすることにより、該操作孔によって阻害される電流は、該誘導電極を通じて均一に流れて、均一に熱を発生することとなって、ガラス板全体につき満遍なく、且つ、確実に結露を除去できる。
【解決手段】観測窓(6)を構成し、互いに対向する辺縁(8)に一対の通電電極(9)(9)を配置するガラス板(7)に操作孔(11)を穿設すると共に、該操作孔(11)を挟んで互いに対向する左右対称な弧形状の誘導電極(13)を互いに抵抗体(14)を介して接続しながら配置するものであって、該操作孔(11)を挟んでの一対の通電電極(9)(9)間の総抵抗値を、それ以外の位置における通電電極(9)(9)間の抵抗値と略同等とすることにより、該操作孔によって阻害される電流は、該誘導電極を通じて均一に流れて、均一に熱を発生することとなって、ガラス板全体につき満遍なく、且つ、確実に結露を除去できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、恒温恒湿槽や温度サイクル試験器等の環境試験器やその他内外温度差を発生させるような試験器において、該環境試験器等の内部の様子を外部より観測することを可能とする観測窓に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば恒温恒湿槽や温度サイクル試験器などの環境試験器においては、該環境試験器内部の様子を外部より観測することができるように、透明なガラス板よりなる観測窓が設けられている。ところが、環境試験器内の試験状態によっては該試験器内部の湿度が著しく上昇し、該観測窓を通して該環境試験器外部との温度差によって、該観測窓内部で結露による曇りが生じてしまうことがある。そのため、該観測窓内部に発生する結露による曇りを除去できるようにするため、例えば観測窓を構成するガラス板を、抵抗を有しつつも通電可能として、発熱可能なものとした上で、該ガラス板の互いに対向する辺縁又はその近傍において、平行に一対の通電電極を配置してなるものがある。そのため、該観測窓において配置される一対の通電電極間で通電を行うと、通電可能なガラス板の有する抵抗でガラス板が発熱して、環境試験器内の高湿度に起因する観測窓の結露による曇りを確実に除去することができるものである。
【0003】
しかしながら、上記環境試験器の観測窓において、環境試験機内部で直接実験操作が行えるよう、手が差し入れられる単独又は複数の操作孔が観測窓に設けられることがある。その場合、該操作孔は、観測窓を構成する通電可能なガラス板の互いに対向する辺縁又はその近傍に設けられた一対の通電電極に対する任意の垂線を想定した場合の垂線上において穿設されることとなるが(例えば2個の操作孔を設けた場合、その2個の操作孔は前記垂線上に並列するように設けられる。)、そうすると該通電電極間において、該操作孔を中心として該操作孔から通電電極に対する垂線方向へ結露による曇りが生じることがある〔図12(イ)及び(ロ)における点部参照)。この原因は、以下のように考えられる。すなわち、通常、観測窓を構成する通電可能なガラス板の互いに対向する辺縁又はその近傍に設けられた一対の通電電極間の通電は、一対の通電電極に対する任意の垂線を想定した場合の垂線方向間で行われるものである。その結果、該一対の通電電極間全体にわたって通電し、該ガラス板全体が均一に発熱して、結露による曇りを除去できるものである。ところが、該一対の通電電極間で、該一対の通電電極に対する任意の垂線を想定した場合の垂線上において単独又は複数の操作孔が穿設されると、該操作孔により通電が阻害されることとなる。つまり、電流は該操作孔を通ることができないので、ガラス板を流れる電流の分布が不均一となるので、該ガラス板の有する抵抗による発熱が不均一となってしまうものである。その結果、一対の通電電極間において、該一対の通電電極間に対して想定する垂線上に穿設する単数又は複数の操作孔に対向する各々の通電電極との間が、周囲に比べて相対的に低温部となることで結露による曇りが発生してしまい、作業者の視界を妨げるものとなる。特に、複数の操作孔を穿設した場合には、該操作孔間の部分が特に周囲に比べて低温部となるので、結露による曇りが発生しやすく、且つ濃いものとなる。一方、該操作孔に手を差し入れて作業を行う作業者にとっては、特に2個の並列した操作孔に左右の手をそれぞれ差し入れた場合、視界を確保できる範囲が概ね該操作孔間に限定されてしまうことから、まさにその限定された視界の範囲、即ちその操作孔間に発生する結露により、観測窓の曇りを除去することができず、観察のみならず、作業時に必要となる視界を安定的に確保することができないものである。
【0004】
【特許文献1】特開平07−27374号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする問題点は、試験器の観測窓において、特に該観測窓に穿設される操作孔により発生する結露による曇りを除去することができず、該試験器内の観察のみならず、実験操作を行うに際しての作業者の視界を安定的に確保することができない点である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのため、開閉自在に取り付けられる扉体を有する試験器本体の、扉体を含む任意の面に設けられ、
当該面の枠体に一体に嵌着、保持され、互いに対向する各々の辺縁又はその近傍において、平行に一対の通電電極を配置すると共に、その表面に金属膜を溶融して通電、発熱可能となるガラス板よりなる観測窓であって、
該観測窓の、互いに対向する各々の辺縁又はその近傍に平行に配置される一対の通電電極間に、該一対の通電電極に対する任意の垂線を想定した場合の垂線上において単数もしくは並列に複数の操作孔を穿設すると共に、
該各操作孔の周縁又はその近傍に、該操作孔を挟んで互いに対向し、且つ、前記垂線上に位置するようそれぞれ一対の誘導電極を配置し、
前記誘導電極の配置された位置における該一対の通電電極間の総抵抗値が、該通電電極間のガラス板の抵抗値と略同等となるよう、前記各一対の誘導電極それぞれを抵抗体を介して接続してなるものである。
以上により、観測窓の、互いに対向する各々の辺縁又はその近傍に平行に配置される一対の通電電極間において通電を行うと、該一対の通電電極間に想定する垂線上において穿設された単数又は複数の操作孔に対応する以外の該一対の通電電極間の部分では、該一対の通電電極間のガラス板において垂線方向に直接通電が行われ、該ガラス板の有する抵抗値に応じた発熱が行われるものである。一方、該単数又は複数の操作孔の周縁又はその近傍に設けられた誘導電極に対応する該一対の通電電極間の部分は、ガラス板及び単数又は複数の各操作孔の周縁又はその近傍に、該孔を挟んで互いに対向し、且つ、前記垂線上に位置するようそれぞれ配置され、且つ、抵抗体を介して電気的に接続してなる一対の誘導電極を介して、通電を行うものである。即ち、一対の通電電極間に1個の操作孔が設けられた場合、一方の通電電極から他方の通電電極へ流れる電流は、まず一方の通電電極からガラス板を通って直近の誘導電極へ流れ込むものである。そして、該電流の流れ込んだ一方の誘導電極から、抵抗体と操作孔周縁のガラス板とを並列的に介して電気的に接続される他方の誘導電極に電流は誘導され、再びガラス板を通って、他方の通電電極へ流れ込むものである。この場合に、ガラス板は電流通過時において発熱を行うものであり、該誘導電極を電気的に接続させる際に介在させる抵抗体の抵抗値は、垂線上に操作孔を有しない位置における通電電極間の総抵抗値(すなわち、一対の通電電極間のガラス板の抵抗値)と略同等であるので、ガラス板全体の発熱は均一となって、観測窓のガラス板に発生する結露による曇りを満遍なく、且つ、確実に除去することができるものとなる。なお、複数の操作孔が穿設されている場合には、再度同じような経路を繰り返すことにより、電流は他方の通電電極に到達し、操作孔間も含めて発熱を行うものである。
【0007】
また、上記観測窓における操作孔の周縁又はその近傍に配置される誘導電極を、該孔の周縁を囲む環状の高抵抗値誘導電極としてなるものでもあってもよい。 その結果、上記通電電極間で通電を行うと、操作孔の周縁又はその近傍に配置される該環状の高抵抗値誘導電極に対して、まず一方の通電電極からガラス板を介して該一方の電極に近接する位置に電流が流れ込むと共に、該環状の高抵抗値誘導電極並びに該高抵抗値誘導電極の配置されたガラス板を並列的に通って、該高抵抗値誘導電極の反対側の位置へ電流が流れ、更に他方の通電電極へ、あるいは、再度もう一つの操作孔の周縁又はその近傍に配置される高抵抗誘導電極に流れ込んだ上、ガラス板を通って他方の通電電極へ通電することとになるので、前記誘導電極の場合と同様に、操作孔の有無に関わらず発熱を行うことができるものである。そして、その発熱も、操作孔の配置された垂線上における該一対の通電電極間の高抵抗値誘導電極を含めた総抵抗値が、それ以外の位置における該一対の通電電極間のガラス板の抵抗値と略同等であるので、操作孔の有無に関わらず均一となり、特に該単数又は複数の操作孔に対応する該一対の通電電極間の観測窓部分のガラス板に発生する結露による曇りを、満遍なく、且つ、確実に除去することができるものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明の観測窓は、該観測窓を構成するガラス板に操作孔を設けることで発生する相対的な低温部分での結露による曇りを満遍なく、且つ、確実に除去することができるので、試験器内部の観察のみならず、該試験器内での実験操作において、その視界を確実に確保できるので、作業者にとって、安全且つ正確な試験を行うことができる優れた効果を有するものである。
【実施例1】
【0009】
図1において示す(1)は、この発明の実施例を具える恒温恒湿槽や温度サイクル試験器等の環境試験器である。この環境試験器(1)は、環境試験器本体(2)と、該環境試験器本体(2)の開口部に対して閉成自在に取り付けられる扉体(3)からなるものである。そして、該環境試験器本体(2)の開口部に対して閉成自在に取り付けられる扉体(3)は、把手(5)を有する枠体(4)と、該枠体(4)内において嵌着、保持される該環境試験器本体(2)内を観測できる透明な観測窓(6)から構成されるものである。
【0010】
そして、扉体(3)の枠体(4)内に嵌着、保持される該観測窓(6)は、枠体(4)内に一体に嵌着、保持され、互いに対向する各々の辺縁(8)の近傍において、平行に一対の通電電極(9)(9)を配置すると共に、その表面に金属膜を溶融して抵抗を有しつつも通電を可能とすることから発熱可能となるガラス板(7)よりなるものである。
図2においては、該観測窓(6)のガラス板(7)において、互いに対向する各々の辺縁(8)の近傍に平行に配置される一対の通電電極(9)(9)間に、該一対の通電電極(9)(9)に対する任意の垂線を想定した場合の垂線上において、蓋体(10)により閉塞自在となる1個の円形状の操作孔(11)を穿設すると共に、
該操作孔(11)の周縁(12)近傍に、該操作孔(11)を挟んで互いに対向し、且つ、前記垂線上に位置し、該操作孔(11)の同心円状に描かれる左右対称な弧形状の一対の誘導電極(13)(13)を配置し、
前記誘導電極(13)(13)の配置された位置における該一対の通電電極(9a’)(9b’)間における総抵抗値が、それ以外の該通電電極(9a)(9b)間のガラス板(7)の抵抗値と略同等となるよう、前記各一対の誘導電極(13)(13)を抵抗体(14)を介して接続してなるものである。なお、該一対の誘導電極(13)(13)間を電気的に接続する際に介在させる抵抗体(14)は単数であっても複数であっても良いものである。そもそも該ガラス板(7)自体が通電可能な抵抗体であることから、該一対の誘導電極(13)(13)間においては前記抵抗体(14)とガラス板(7)とが並列に接続されていることになり、更に、複数の抵抗体(14)を並列に接続することによって該一対の誘導電極(13)(13)間の抵抗値を小さくすることができるものである。
【0011】
なお、上記一対の誘電電極(13)(13)の形状は、結線時の困難性を考慮した上で、作業時における作業者の視界を著しく妨げることがなければどのような形状でも適用することができる。そのため、図10(イ)乃至(ハ)において示すように、例えば、該操作孔(11)の同心円状に描かれる左右対称な弧形状〔同図(ロ)参照〕の他、直線状〔同図(イ)参照〕、くの字形状〔同図(ハ)参照〕であってもよく、また各々の形状を反転又は組み合わせたものであってもよいものである。
【0012】
また、上記一対の誘電電極(13)(13)の長さは、該誘電電極(13)の形状の他に、上記操作孔(11)の大きさ、形状及び配置方法に依存することになる。即ち、直線状の誘導電極(13a)の場合、該誘導電極(13a)の長さは、例えば該操作孔(11)を対向する通電電極(9)に投影した場合の長さと略同等とすれば良いものである。つまり該操作孔(11)が円形状の場合はその長さは直径と略同等となり、方形状の操作孔(11’)の場合は、該操作孔(11’)の対向する通電電極(9)への最大投影長と略同等とすれば良いということである。具体的には、直線状の誘導電極(13a)であって、該操作孔(11’)が長方形である場合には、長方形である該操作孔(11’)の一辺が対向する通電電極(9)と平行であるように配置されているならば、該誘導電極(13)の長さは、長方形である操作孔(11’)の該一辺の長さと略同等とすることで足りるものとなる。ところが、長方形である操作孔(11’)の対角線(11”)が通電電極(9)と平行となっている場合には、該長方形の操作孔(11’)における対角線(11”)の長さを該誘導電極(13)の長さとする必要があるものである(図11参照)。
そして、該誘導電極(13)の形状が円形状の操作孔(11)の同心円状に描かれる弧状の場合、該弧状である誘導電極(13)のなす仮想の弦(13’)の長さが、上記の場合と同様に、該操作孔(11)(11’)を通電電極(9)に投影した場合の長さと略同等であれば良いこととなる。
【0013】
そして、該誘導電極(13)の配置は、最大限に結露による曇りを除去することができるように、観測窓(6)に穿設される操作孔(11)の周縁又はその近傍であればよく、例えば該操作孔(11)が円形状であるとき、互いに対向する位置に配置される一対の弧状の誘導電極(13)(13)を、該操作孔(11)を構成する部材の内周に沿わせて配置することで、作業者は、その視界を遮られることがほとんどなくなるため、安全且つ確実に作業を行うことができるようになる。
【0014】
この発明の実施例1である環境試験器(1)の観測窓(6)は以上の構成を具えるので、該環境試験器(1)の使用に際して該観測窓(6)に結露による曇りが生じた場合、次のようにして結露による曇りを除去するものである。
即ち、該観測窓(6)を構成するガラス板(7)において、互いに対向する各々の辺縁(8)の近傍において平行に配置される一対の通電電極(9a)(9b)間において電圧を掛けることにより、該一対の通電電極(9a)(9b)間で該ガラス板(7)を介して通電が行われ、該ガラス板(7)は発熱することとなる。ところが、該一対の通電電極(9a)(9b)間での通電において、操作孔(11)の有無によりその通電する経路が異なるものとなる(図4参照)。つまり、一対の通電電極(9a)(9b)間において操作孔(11)の存在しない範囲では、該電流は該一対の通電電極(9a)(9b)間をガラス板(7)を介して直接通電するものである。従って、該ガラス板(7)は、その有する抵抗に応じた発熱を行うこととなるものである(図4矢印実線参照)。
一方、一対の通電電極(9)(9)に対する任意の垂線を想定した場合の垂線上において1個の操作孔(11)が存在する範囲の一対の通電電極(9a’)(9b’)では、まず、一方の通電電極(9a’)からの電流は、該操作孔(11)を挟んで互いに対向し、且つ、前記垂線上に位置し、該操作孔(11)の同心円状に描かれる左右対称な弧形状の一対の誘導電極(13a)(13b)のうち、一方の通電電極(9a’)に近接して配置される誘導電極(13a)へとガラス板(7)を介して誘導されるものである。そして、該誘導電極(13a)に誘導された電流は、抵抗体(14)を介して電気的に接続される他方の誘導電極(13b)へと流れる。その際、ガラス板(7)も通電可能であることから、該ガラス板(7)自体も抵抗体となって、一対の誘導電極(13a)(13b)間において前記抵抗体(14)と並列に接続されることとなる。そして、該他方の誘導電極(13b)から他方の通電電極(9b’)へと再度ガラス板(7)を介して通電していく経路を辿るものである。従って、例え一対の通電電極(9a)(9b)に対する任意の垂線を想定した場合の垂線上において1個の操作孔(11)が存在していても、該一対の通電電極(9a’)(9b’)間での通電は行われるので、ガラス板(7)は十分に発熱することとなるものである(図4矢印点線参照)。しかも、該一対の通電電極(9a)(9b)に対する任意の垂線を想定した場合の垂線上において操作孔(11)が存在する範囲の通電電極(9a’)(9b’)間での通電においては、その総抵抗値が操作孔(11)のない位置における通電電極(9a)(9b)間におけるガラス板(7)の抵抗値と略同等となるよう抵抗体(14)の抵抗値が調整されているので、操作孔(11)の有無にかかわらずガラス板(7)の発生する熱は一定となる。その結果、ガラス板(7)全体として均一に発熱することとなるものである。従って、観測窓(6)内部において結露による曇りが発生しても、観測窓(6)全体において満遍なく、且つ、確実にその結露を除去することができるものである。
【0015】
なお、上記実施例1の観測窓(6)においては、操作孔(11)の周縁(12)の近傍に一対の誘導電極(13)(13)が配置されているが、該一対の誘導電極(13)(13)の代わりに、実施例1の変形例として、該操作孔(11)の周縁(12)を取り囲むようになる環状の高抵抗値誘導電極(15)を配置しても良いものである(図3参照)。該高抵抗値誘導電極(15)は、前記誘導電極(13)(13)が極めて低い抵抗値しか有さないのに比べて、それ自身が高い抵抗値を有するものである。即ち前記誘導電極(13)(13)間が抵抗体(14)を介して電気的に接続されているのと、機能的には何等変わらないものである。そのため、該観測窓(6)を構成するガラス板(7)において、互いに対向する各々の辺縁(8)の近傍において平行に配置される一対の通電電極(9a)(9b)間において電圧を掛けると、一方の通電電極(9a’)からの電流は、ガラス板(7)を介して該通電電極(9a’)に近接する該環状の高抵抗値誘導電極(15)の一方(15a)側に誘導されると共に、該高抵抗値誘導電極(15)内の内部抵抗に抗して、再度該高抵抗値誘導電極(15)の他方(15b)側よりガラス板(7)を介して他方の通電電極(9b’)へと流れていくものである(図5参照)。その際、ガラス板(7)も抵抗を有するものの通電可能であることから、該ガラス板(7)自体も抵抗体となり、該高抵抗値誘導電極(15)自体とともに該高抵抗値誘導電極(15)の一方(15a)と他方(15b)とを並列に接続することとなる。
このときも、操作孔(11)並びにそれを取り囲む高抵抗値誘導電極(15)と対応しない位置における一対の通電電極(9a)(9b)間のガラス板(7)の抵抗値と、高抵抗値誘導電極(15)を含めた一対の通電電極(9a’)(9b’)間の有する総抵抗値とが略同等であるよう調整されているので、ガラス板(7)全体は均一に熱を発生することとなる。従って、前記場合と同様に、観測窓(6)内部において結露による曇りが発生しても、観測窓(6)全体において満遍なく、且つ、確実に該結露を除去することができるものである。
尚、実施例1の変形例の場合に用いられる環状の高抵抗値誘導電極(15)は、ガラス板(7)の互いに対向する辺縁(8)の近傍に平行に配置される一対の通電電極(9)(9)に対して平行となる方向に長く、垂直となる方向に短くする、いわゆる楕円形状のものが均一の発熱には望ましいが、該一対の通電電極(9)(9)に対して平行又は垂直方向に同一となる、即ち真円状のものであっても良いものである〔図10(ニ)参照〕。
【0016】
そこで、この発明の効果を確認すべく実機にて発熱試験を行った。そのため、実施例1における観測窓(6)において、一対の通電電極(9)(9)間のガラス板(7)の抵抗値を19〜20Ω/□とした。一方、該一対の通電電極(9)(9)間に穿設された操作孔(11)を挟んで左右対称に配置された一対の誘導電極(13)(13)間を電気的に接続するものであって、該誘導電極(13)(13)間の電気的接続に当たって使用する抵抗体(14)の抵抗値を調整することによって、該誘導電極(13)の配置された位置における一対の通電電極(9a’)(9b’)間の総抵抗値を、該一対の通電電極(9)(9)間のガラス板(7)の抵抗値と同様にした。その上で、該一対の通電電極(9)(9)間で通電を行ったところ、ガラス板(7)全体において均一に通電が行われ、ガラス板(7)全体が均一に発熱することが確認された。
【実施例2】
【0017】
図6において示すものは、この発明の実施例2である環境試験器(1)の観測窓(6’)である。そして、実施例1の環境試験器(1)と同様に、該環境試験器(1)の環境試験器本体(2)の開口部を閉成自在にする扉体(3)の枠体(4)内に嵌着、保持される該観測窓(6’)は、枠体(4)内に一体に嵌着、保持され、互いに対向する各々の辺縁(8)の近傍において、平行に一対の通電電極(9)(9)を配置すると共に、その表面に金属膜を溶融して抵抗を有しつつも通電を可能とすることから発熱可能となるガラス板(7)よりなるものであって、
該観測窓(6)のガラス板(7)において、互いに対向する各々の辺縁(8)の近傍に平行に配置される一対の通電電極(9)(9)間に、該一対の通電電極(9)(9)に対する任意の垂線を想定した場合の垂線上において、蓋体(10)により閉塞自在となる複数(本実施例の場合は、2個である。)の円形状の操作孔(11a)(11b)を穿設すると共に、
該各孔(11a)(11b)の周縁(12)の近傍に、該孔(11a)(11b)を挟んで互いに対向し、且つ、前記垂線上に位置するようそれぞれ一対の誘導電極(13)(13)を配置し、
前記誘導電極(13)(13)の配置された位置における該一対の通電電極(9)(9)間の総抵抗値が、該通電電極(9)(9)間のガラス板(7)の抵抗値と略同等となるよう、前記各一対の誘導電極(13)(13)それぞれを抵抗体(14)を介して接続してなるものである(図6参照)。
【0018】
なお、この実施例2の観測窓(6’)に使用される誘導電極(13)は、実施例1で説明した誘導電極(13)と同様で足り、該誘導電極(13)の形状、長さ及び配置も、各々実施例1の観測窓(6’)における誘導電極(13)に準ずるものであれば良いものである。
【0019】
この発明の実施例2である環境試験器(1)の観測窓(6’)は以上の構成を具えるので、該環境試験器(1)の使用に際して該観測窓(6’)に結露による曇りが生じた場合、次のようにして結露による曇りを除去するものである。
まず、該観測窓(6’)を構成するガラス板(7)において、互いに対向する各々の辺縁(8)の近傍において平行に配置される一対の通電電極(9a)(9b)間において電圧を掛けることにより、該一対の通電電極(9a)(9b)間で該ガラス板(7)を介して通電が行われ、該ガラス板(7)は発熱することとなる。ところが、該一対の通電電極(9a)(9b)間での通電において、操作孔(11)の有無によりその通電する経路が異なるものである。即ち、一対の通電電極(9a)(9b)間において操作孔(11)の存在しない範囲では、該電流は該一対の通電電極(9a)(9b)間をガラス板(7)を介して直接通電する経路を辿るものである。従って、ガラス板(7)は、通電によりガラス板(7)の有する抵抗に応じた発熱を行うものである(図8矢印実線参照)。
一方、一対の通電電極(9a)(9b)に対する任意の垂線を想定した場合の垂線上において2個の操作孔(11a)(11b)が存在する範囲では、まず、一方の通電電極(9a)からの電流は、並設する2つの操作孔(11a)(11b)のうち、一方の通電電極(9a)に近接する操作孔(11a)において、該操作孔(11a)を挟んで互いに対向し、且つ、前記垂線上に位置する左右対称な弧形状の一対の誘導電極(13a)(13b)の、更に該一方の通電電極(9a)の直近に配置される誘導電極(13a)へとガラス板(7)を介して誘導されるものである。そして、該誘導電極(13a)に誘導された電流は、抵抗体(14)を介して電気的に接続される他方の誘導電極(13b)へと流れるものとなる。その際、ガラス板(7)も通電可能であることから、該ガラス板(7)自体も抵抗体となって、一対の誘導電極(13a)(13b)間において前記抵抗体(14)と並列に接続されることとなる。そして更に電流は、並設される他方の操作孔(11b)において設けられる、左右対称な弧形状の一対の誘導電極(13c)(13d)のうち、該一方の操作孔(11a)の他方の誘導電極(13b)の直近に配置される一方の誘導電極(13c)へと、ガラス板(7)を介して誘導されるものである。そして、該一方の誘導電極(13c)に誘導された電流は、抵抗体(14)を介して電気的に接続される他方の誘導電極(13d)へと流れるものとなる。その際同様に、ガラス板(7)も通電可能であることから、該ガラス板(7)自体も抵抗体となって、一対の誘導電極(13c)(13d)間において前記抵抗体(14)と並列に接続されることとなる。その後、該他方の誘導電極(13d)から他方の通電電極(9b)へと再度ガラス板(7)を介して通電を行うものである(図8矢印点線参照)。従って、例え一対の通電電極(9a)(9b)に対する任意の垂線を想定した場合の垂線上において複数の操作孔(11a)(11b)が存在していても、一対の通電電極(9a’)(9b’)間での通電は、抵抗体(14)を介して電気的に接続された複数の一対の誘導電極(13a)(13b)及び(13c)(13d)を介して行われるので、その間にあるガラス板(7)は十分に発熱するものである。しかも、該一対の通電電極(9a)(9b)に対する任意の垂線を想定した場合の垂線上において複数の操作孔(11a)(11b)が存在する範囲での一対の通電電極(9a’)(9b’)間の通電において、その総抵抗値は、操作孔(11a)(11b)が存在しない位置における通電電極(9a)(9b)間におけるガラス板(7)の抵抗値と略同等となるよう調整されているので、その抵抗により発生する熱も一対の通電電極(9a)(9b)間において操作孔(11a)(11b)の有無に関わらず同等となるものである。その結果、ガラス板(7)全体として均一に発熱することとなるものである。従って、観測窓(6’)内部において結露による曇りが発生しても、観測窓(6’)全体において満遍なく、且つ、確実に結露を除去することができるものである。
【0020】
なお、上記実施例2の観測窓(6’)においては、並設される操作孔(11a)(11b)の周縁(12)の近傍に各々一対の誘導電極(13)(13)が配置されているが、該一対の誘導電極(13)(13)の代わりに、実施例2の変形例として、実施例1の変形例の場合と同様に、各々該操作孔(11a)(11b)の周縁(12)を取り囲むようになる環状の高抵抗値誘導電極(15)を配置しても良いものである(図7参照)。該高抵抗値誘導電極(15)は、上記実施例2における誘導電極(13)(13)が極めて低い抵抗しか有さないのに比べて、それ自身が高抵抗を有するものである。即ち上記誘導電極(13)(13)間が抵抗体(14)を介して電気的に接続されているのと、機能的には何等変わらないものである。そのため、該観測窓(6’)を構成するガラス板(7)において、互いに対向する各々の辺縁(8)の近傍において平行に配置される一対の通電電極(9a)(9b)間において電圧を掛けると、一方の通電電極(9a)からの電流は、ガラス板(7)を介して近接する操作孔(11a)の周縁(12)に設けられた環状の高抵抗値誘導電極(15)の一方(15a)側に誘導されると共に、該高抵抗値誘導電極(15)内の内部抵抗に抗して、該高抵抗値誘導電極(15)の他方(15b)側へ導かれる。その際、ガラス板(7)も抵抗を有するものの通電可能であることから、該ガラス板(7)自体も抵抗体となり、該高抵抗値誘導電極(15)自体とともに該高抵抗値誘導電極(15)の一方(15a)と他方(15b)とを並列に接続することとなる。そして、前記操作孔(11a)の周縁(12)に設けられた高抵抗値誘導電極(15)の他方(15b)側から、操作孔(11a)(11b)間のガラス板(7)を経て、再度他方の操作孔(11b)の周縁(12)に設けられた環状の高抵抗値誘導電極(15)へ導かれ、そこでも同様の経路を誘導されて最終的にガラス板(7)を介して他方の通電電極(9b)へと、電流が流れて行くことになるものである。
この場合も、操作孔(11)並びに高抵抗値誘導電極(15)と対応しない位置における一対の通電電極(9a)(9b)間のガラス板(7)の抵抗値と、高抵抗値誘導電極(15)を含めた一対の通電電極(9a’)(9b’)間の有する総抵抗値とが略同等であるよう調整されているので、該通電電極(9a)(9b)間での通電により、ガラス板(7)全体が均一に熱を発生することとなる。従って、観測窓(6’)内部において結露による曇りが発生しても、観測窓(6’)全体において満遍なく、且つ、確実に結露を除去することができるものである(図9参照)。
ここで、実施例2の変形例の場合に用いられる環状の高抵抗値誘導電極(15)は、ガラス板(7)の互いに対向する周縁(8)又はその近傍に平行に配置される一対の通電電極(9)(9)に対して平行となる方向に長く、垂直となる方向に短くする楕円形状のものの他、該一対の通電電極(9)(9)に対して平行又は垂直方向に同一である真円状のものであっても良いものである〔図10(ニ)参照〕。
【0021】
そこで、実施例2における観測窓(6’)においても、実施例1の場合と同様に、実機にて発熱実験を行った。そのため、まず一対の通電電極(9a)(9b)間のガラス板(7)の抵抗値を19〜20Ω/□とした。一方、該一対の通電電極(9a’)(9b’)間に並設された操作孔(11a)(11b)に対して、各操作孔(11a)(11b)を挟んでそれぞれ左右対称に配置された二対の誘導電極(13a)(13b)及び(13c)(13d)間をそれぞれ抵抗体(14)を介して電気的に接続するものであって、該抵抗体(14)の抵抗値を調整することによって、該誘導電極(13)(13)の配置された位置における一対の通電電極(9a’)(9b’)間の総抵抗値を、該一対の通電電極(9a)(9b)間のガラス板(7)の抵抗値と同様にした。その上で、該一対の通電電極(9a)(9b)間に通電を行ったところ、ガラス板(7)全体において、均一に発熱することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0022】
観測窓のガラス板に通電することにより発熱させて結露を防止するものの、本体内部での実験操作を行えるように穿設された操作孔に起因して、局部的に結露による曇りが発生し易いあらゆる環境試験器等の機器に対して適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明の実施例を具える環境試験器の正面図である。
【図2】この発明の実施例1の観測窓の模式図である。
【図3】この発明の実施例1の変形例である観測窓の模式図である。
【図4】この発明の実施例1の観測窓における通電状態を示す模式図である。
【図5】この発明の実施例1の変形例である観測窓における通電状態を示す模式図である。
【図6】この発明の実施例2の観測窓の模式図である。
【図7】この発明の実施例2の変形例である観測窓の模式図である。
【図8】この発明の実施例2の観測窓における通電状態を示す模式図である。
【図9】この発明の実施例2の変形例である観測窓における通電状態を示す模式図である。
【図10】この発明の実施例1及び実施例2の観測窓に使用される誘導電極のバリエーションを示した図である。
【図11】この発明の実施例1及び実施例2の観測窓において、長方形の操作孔の対角線が通電電極に対して平行である場合の、誘導電極の長さを模式的に示した図である。
【図12】従来の環境試験器の観測窓において、結露による曇りが発生する部分を模式的に示した図である。
【符号の説明】
【0024】
1 環境試験器
2 環境試験器本体
3 扉体
4 枠体
5 把手
6、6’ 観測窓
7 ガラス板
8 辺縁
9、9’、9a、9a’、9b、9b’ 通電電極
10 蓋体
11、11a、11b 操作孔
11” 対角線
12 周縁
13、13a、13b、13c、13d 誘導電極
13’ 弦
14 抵抗体
15 高抵抗値誘導電極
15a (高抵抗値誘導電極の)一方
15b (高抵抗値誘導電極の)他方
【技術分野】
【0001】
この発明は、恒温恒湿槽や温度サイクル試験器等の環境試験器やその他内外温度差を発生させるような試験器において、該環境試験器等の内部の様子を外部より観測することを可能とする観測窓に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば恒温恒湿槽や温度サイクル試験器などの環境試験器においては、該環境試験器内部の様子を外部より観測することができるように、透明なガラス板よりなる観測窓が設けられている。ところが、環境試験器内の試験状態によっては該試験器内部の湿度が著しく上昇し、該観測窓を通して該環境試験器外部との温度差によって、該観測窓内部で結露による曇りが生じてしまうことがある。そのため、該観測窓内部に発生する結露による曇りを除去できるようにするため、例えば観測窓を構成するガラス板を、抵抗を有しつつも通電可能として、発熱可能なものとした上で、該ガラス板の互いに対向する辺縁又はその近傍において、平行に一対の通電電極を配置してなるものがある。そのため、該観測窓において配置される一対の通電電極間で通電を行うと、通電可能なガラス板の有する抵抗でガラス板が発熱して、環境試験器内の高湿度に起因する観測窓の結露による曇りを確実に除去することができるものである。
【0003】
しかしながら、上記環境試験器の観測窓において、環境試験機内部で直接実験操作が行えるよう、手が差し入れられる単独又は複数の操作孔が観測窓に設けられることがある。その場合、該操作孔は、観測窓を構成する通電可能なガラス板の互いに対向する辺縁又はその近傍に設けられた一対の通電電極に対する任意の垂線を想定した場合の垂線上において穿設されることとなるが(例えば2個の操作孔を設けた場合、その2個の操作孔は前記垂線上に並列するように設けられる。)、そうすると該通電電極間において、該操作孔を中心として該操作孔から通電電極に対する垂線方向へ結露による曇りが生じることがある〔図12(イ)及び(ロ)における点部参照)。この原因は、以下のように考えられる。すなわち、通常、観測窓を構成する通電可能なガラス板の互いに対向する辺縁又はその近傍に設けられた一対の通電電極間の通電は、一対の通電電極に対する任意の垂線を想定した場合の垂線方向間で行われるものである。その結果、該一対の通電電極間全体にわたって通電し、該ガラス板全体が均一に発熱して、結露による曇りを除去できるものである。ところが、該一対の通電電極間で、該一対の通電電極に対する任意の垂線を想定した場合の垂線上において単独又は複数の操作孔が穿設されると、該操作孔により通電が阻害されることとなる。つまり、電流は該操作孔を通ることができないので、ガラス板を流れる電流の分布が不均一となるので、該ガラス板の有する抵抗による発熱が不均一となってしまうものである。その結果、一対の通電電極間において、該一対の通電電極間に対して想定する垂線上に穿設する単数又は複数の操作孔に対向する各々の通電電極との間が、周囲に比べて相対的に低温部となることで結露による曇りが発生してしまい、作業者の視界を妨げるものとなる。特に、複数の操作孔を穿設した場合には、該操作孔間の部分が特に周囲に比べて低温部となるので、結露による曇りが発生しやすく、且つ濃いものとなる。一方、該操作孔に手を差し入れて作業を行う作業者にとっては、特に2個の並列した操作孔に左右の手をそれぞれ差し入れた場合、視界を確保できる範囲が概ね該操作孔間に限定されてしまうことから、まさにその限定された視界の範囲、即ちその操作孔間に発生する結露により、観測窓の曇りを除去することができず、観察のみならず、作業時に必要となる視界を安定的に確保することができないものである。
【0004】
【特許文献1】特開平07−27374号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする問題点は、試験器の観測窓において、特に該観測窓に穿設される操作孔により発生する結露による曇りを除去することができず、該試験器内の観察のみならず、実験操作を行うに際しての作業者の視界を安定的に確保することができない点である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのため、開閉自在に取り付けられる扉体を有する試験器本体の、扉体を含む任意の面に設けられ、
当該面の枠体に一体に嵌着、保持され、互いに対向する各々の辺縁又はその近傍において、平行に一対の通電電極を配置すると共に、その表面に金属膜を溶融して通電、発熱可能となるガラス板よりなる観測窓であって、
該観測窓の、互いに対向する各々の辺縁又はその近傍に平行に配置される一対の通電電極間に、該一対の通電電極に対する任意の垂線を想定した場合の垂線上において単数もしくは並列に複数の操作孔を穿設すると共に、
該各操作孔の周縁又はその近傍に、該操作孔を挟んで互いに対向し、且つ、前記垂線上に位置するようそれぞれ一対の誘導電極を配置し、
前記誘導電極の配置された位置における該一対の通電電極間の総抵抗値が、該通電電極間のガラス板の抵抗値と略同等となるよう、前記各一対の誘導電極それぞれを抵抗体を介して接続してなるものである。
以上により、観測窓の、互いに対向する各々の辺縁又はその近傍に平行に配置される一対の通電電極間において通電を行うと、該一対の通電電極間に想定する垂線上において穿設された単数又は複数の操作孔に対応する以外の該一対の通電電極間の部分では、該一対の通電電極間のガラス板において垂線方向に直接通電が行われ、該ガラス板の有する抵抗値に応じた発熱が行われるものである。一方、該単数又は複数の操作孔の周縁又はその近傍に設けられた誘導電極に対応する該一対の通電電極間の部分は、ガラス板及び単数又は複数の各操作孔の周縁又はその近傍に、該孔を挟んで互いに対向し、且つ、前記垂線上に位置するようそれぞれ配置され、且つ、抵抗体を介して電気的に接続してなる一対の誘導電極を介して、通電を行うものである。即ち、一対の通電電極間に1個の操作孔が設けられた場合、一方の通電電極から他方の通電電極へ流れる電流は、まず一方の通電電極からガラス板を通って直近の誘導電極へ流れ込むものである。そして、該電流の流れ込んだ一方の誘導電極から、抵抗体と操作孔周縁のガラス板とを並列的に介して電気的に接続される他方の誘導電極に電流は誘導され、再びガラス板を通って、他方の通電電極へ流れ込むものである。この場合に、ガラス板は電流通過時において発熱を行うものであり、該誘導電極を電気的に接続させる際に介在させる抵抗体の抵抗値は、垂線上に操作孔を有しない位置における通電電極間の総抵抗値(すなわち、一対の通電電極間のガラス板の抵抗値)と略同等であるので、ガラス板全体の発熱は均一となって、観測窓のガラス板に発生する結露による曇りを満遍なく、且つ、確実に除去することができるものとなる。なお、複数の操作孔が穿設されている場合には、再度同じような経路を繰り返すことにより、電流は他方の通電電極に到達し、操作孔間も含めて発熱を行うものである。
【0007】
また、上記観測窓における操作孔の周縁又はその近傍に配置される誘導電極を、該孔の周縁を囲む環状の高抵抗値誘導電極としてなるものでもあってもよい。 その結果、上記通電電極間で通電を行うと、操作孔の周縁又はその近傍に配置される該環状の高抵抗値誘導電極に対して、まず一方の通電電極からガラス板を介して該一方の電極に近接する位置に電流が流れ込むと共に、該環状の高抵抗値誘導電極並びに該高抵抗値誘導電極の配置されたガラス板を並列的に通って、該高抵抗値誘導電極の反対側の位置へ電流が流れ、更に他方の通電電極へ、あるいは、再度もう一つの操作孔の周縁又はその近傍に配置される高抵抗誘導電極に流れ込んだ上、ガラス板を通って他方の通電電極へ通電することとになるので、前記誘導電極の場合と同様に、操作孔の有無に関わらず発熱を行うことができるものである。そして、その発熱も、操作孔の配置された垂線上における該一対の通電電極間の高抵抗値誘導電極を含めた総抵抗値が、それ以外の位置における該一対の通電電極間のガラス板の抵抗値と略同等であるので、操作孔の有無に関わらず均一となり、特に該単数又は複数の操作孔に対応する該一対の通電電極間の観測窓部分のガラス板に発生する結露による曇りを、満遍なく、且つ、確実に除去することができるものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明の観測窓は、該観測窓を構成するガラス板に操作孔を設けることで発生する相対的な低温部分での結露による曇りを満遍なく、且つ、確実に除去することができるので、試験器内部の観察のみならず、該試験器内での実験操作において、その視界を確実に確保できるので、作業者にとって、安全且つ正確な試験を行うことができる優れた効果を有するものである。
【実施例1】
【0009】
図1において示す(1)は、この発明の実施例を具える恒温恒湿槽や温度サイクル試験器等の環境試験器である。この環境試験器(1)は、環境試験器本体(2)と、該環境試験器本体(2)の開口部に対して閉成自在に取り付けられる扉体(3)からなるものである。そして、該環境試験器本体(2)の開口部に対して閉成自在に取り付けられる扉体(3)は、把手(5)を有する枠体(4)と、該枠体(4)内において嵌着、保持される該環境試験器本体(2)内を観測できる透明な観測窓(6)から構成されるものである。
【0010】
そして、扉体(3)の枠体(4)内に嵌着、保持される該観測窓(6)は、枠体(4)内に一体に嵌着、保持され、互いに対向する各々の辺縁(8)の近傍において、平行に一対の通電電極(9)(9)を配置すると共に、その表面に金属膜を溶融して抵抗を有しつつも通電を可能とすることから発熱可能となるガラス板(7)よりなるものである。
図2においては、該観測窓(6)のガラス板(7)において、互いに対向する各々の辺縁(8)の近傍に平行に配置される一対の通電電極(9)(9)間に、該一対の通電電極(9)(9)に対する任意の垂線を想定した場合の垂線上において、蓋体(10)により閉塞自在となる1個の円形状の操作孔(11)を穿設すると共に、
該操作孔(11)の周縁(12)近傍に、該操作孔(11)を挟んで互いに対向し、且つ、前記垂線上に位置し、該操作孔(11)の同心円状に描かれる左右対称な弧形状の一対の誘導電極(13)(13)を配置し、
前記誘導電極(13)(13)の配置された位置における該一対の通電電極(9a’)(9b’)間における総抵抗値が、それ以外の該通電電極(9a)(9b)間のガラス板(7)の抵抗値と略同等となるよう、前記各一対の誘導電極(13)(13)を抵抗体(14)を介して接続してなるものである。なお、該一対の誘導電極(13)(13)間を電気的に接続する際に介在させる抵抗体(14)は単数であっても複数であっても良いものである。そもそも該ガラス板(7)自体が通電可能な抵抗体であることから、該一対の誘導電極(13)(13)間においては前記抵抗体(14)とガラス板(7)とが並列に接続されていることになり、更に、複数の抵抗体(14)を並列に接続することによって該一対の誘導電極(13)(13)間の抵抗値を小さくすることができるものである。
【0011】
なお、上記一対の誘電電極(13)(13)の形状は、結線時の困難性を考慮した上で、作業時における作業者の視界を著しく妨げることがなければどのような形状でも適用することができる。そのため、図10(イ)乃至(ハ)において示すように、例えば、該操作孔(11)の同心円状に描かれる左右対称な弧形状〔同図(ロ)参照〕の他、直線状〔同図(イ)参照〕、くの字形状〔同図(ハ)参照〕であってもよく、また各々の形状を反転又は組み合わせたものであってもよいものである。
【0012】
また、上記一対の誘電電極(13)(13)の長さは、該誘電電極(13)の形状の他に、上記操作孔(11)の大きさ、形状及び配置方法に依存することになる。即ち、直線状の誘導電極(13a)の場合、該誘導電極(13a)の長さは、例えば該操作孔(11)を対向する通電電極(9)に投影した場合の長さと略同等とすれば良いものである。つまり該操作孔(11)が円形状の場合はその長さは直径と略同等となり、方形状の操作孔(11’)の場合は、該操作孔(11’)の対向する通電電極(9)への最大投影長と略同等とすれば良いということである。具体的には、直線状の誘導電極(13a)であって、該操作孔(11’)が長方形である場合には、長方形である該操作孔(11’)の一辺が対向する通電電極(9)と平行であるように配置されているならば、該誘導電極(13)の長さは、長方形である操作孔(11’)の該一辺の長さと略同等とすることで足りるものとなる。ところが、長方形である操作孔(11’)の対角線(11”)が通電電極(9)と平行となっている場合には、該長方形の操作孔(11’)における対角線(11”)の長さを該誘導電極(13)の長さとする必要があるものである(図11参照)。
そして、該誘導電極(13)の形状が円形状の操作孔(11)の同心円状に描かれる弧状の場合、該弧状である誘導電極(13)のなす仮想の弦(13’)の長さが、上記の場合と同様に、該操作孔(11)(11’)を通電電極(9)に投影した場合の長さと略同等であれば良いこととなる。
【0013】
そして、該誘導電極(13)の配置は、最大限に結露による曇りを除去することができるように、観測窓(6)に穿設される操作孔(11)の周縁又はその近傍であればよく、例えば該操作孔(11)が円形状であるとき、互いに対向する位置に配置される一対の弧状の誘導電極(13)(13)を、該操作孔(11)を構成する部材の内周に沿わせて配置することで、作業者は、その視界を遮られることがほとんどなくなるため、安全且つ確実に作業を行うことができるようになる。
【0014】
この発明の実施例1である環境試験器(1)の観測窓(6)は以上の構成を具えるので、該環境試験器(1)の使用に際して該観測窓(6)に結露による曇りが生じた場合、次のようにして結露による曇りを除去するものである。
即ち、該観測窓(6)を構成するガラス板(7)において、互いに対向する各々の辺縁(8)の近傍において平行に配置される一対の通電電極(9a)(9b)間において電圧を掛けることにより、該一対の通電電極(9a)(9b)間で該ガラス板(7)を介して通電が行われ、該ガラス板(7)は発熱することとなる。ところが、該一対の通電電極(9a)(9b)間での通電において、操作孔(11)の有無によりその通電する経路が異なるものとなる(図4参照)。つまり、一対の通電電極(9a)(9b)間において操作孔(11)の存在しない範囲では、該電流は該一対の通電電極(9a)(9b)間をガラス板(7)を介して直接通電するものである。従って、該ガラス板(7)は、その有する抵抗に応じた発熱を行うこととなるものである(図4矢印実線参照)。
一方、一対の通電電極(9)(9)に対する任意の垂線を想定した場合の垂線上において1個の操作孔(11)が存在する範囲の一対の通電電極(9a’)(9b’)では、まず、一方の通電電極(9a’)からの電流は、該操作孔(11)を挟んで互いに対向し、且つ、前記垂線上に位置し、該操作孔(11)の同心円状に描かれる左右対称な弧形状の一対の誘導電極(13a)(13b)のうち、一方の通電電極(9a’)に近接して配置される誘導電極(13a)へとガラス板(7)を介して誘導されるものである。そして、該誘導電極(13a)に誘導された電流は、抵抗体(14)を介して電気的に接続される他方の誘導電極(13b)へと流れる。その際、ガラス板(7)も通電可能であることから、該ガラス板(7)自体も抵抗体となって、一対の誘導電極(13a)(13b)間において前記抵抗体(14)と並列に接続されることとなる。そして、該他方の誘導電極(13b)から他方の通電電極(9b’)へと再度ガラス板(7)を介して通電していく経路を辿るものである。従って、例え一対の通電電極(9a)(9b)に対する任意の垂線を想定した場合の垂線上において1個の操作孔(11)が存在していても、該一対の通電電極(9a’)(9b’)間での通電は行われるので、ガラス板(7)は十分に発熱することとなるものである(図4矢印点線参照)。しかも、該一対の通電電極(9a)(9b)に対する任意の垂線を想定した場合の垂線上において操作孔(11)が存在する範囲の通電電極(9a’)(9b’)間での通電においては、その総抵抗値が操作孔(11)のない位置における通電電極(9a)(9b)間におけるガラス板(7)の抵抗値と略同等となるよう抵抗体(14)の抵抗値が調整されているので、操作孔(11)の有無にかかわらずガラス板(7)の発生する熱は一定となる。その結果、ガラス板(7)全体として均一に発熱することとなるものである。従って、観測窓(6)内部において結露による曇りが発生しても、観測窓(6)全体において満遍なく、且つ、確実にその結露を除去することができるものである。
【0015】
なお、上記実施例1の観測窓(6)においては、操作孔(11)の周縁(12)の近傍に一対の誘導電極(13)(13)が配置されているが、該一対の誘導電極(13)(13)の代わりに、実施例1の変形例として、該操作孔(11)の周縁(12)を取り囲むようになる環状の高抵抗値誘導電極(15)を配置しても良いものである(図3参照)。該高抵抗値誘導電極(15)は、前記誘導電極(13)(13)が極めて低い抵抗値しか有さないのに比べて、それ自身が高い抵抗値を有するものである。即ち前記誘導電極(13)(13)間が抵抗体(14)を介して電気的に接続されているのと、機能的には何等変わらないものである。そのため、該観測窓(6)を構成するガラス板(7)において、互いに対向する各々の辺縁(8)の近傍において平行に配置される一対の通電電極(9a)(9b)間において電圧を掛けると、一方の通電電極(9a’)からの電流は、ガラス板(7)を介して該通電電極(9a’)に近接する該環状の高抵抗値誘導電極(15)の一方(15a)側に誘導されると共に、該高抵抗値誘導電極(15)内の内部抵抗に抗して、再度該高抵抗値誘導電極(15)の他方(15b)側よりガラス板(7)を介して他方の通電電極(9b’)へと流れていくものである(図5参照)。その際、ガラス板(7)も抵抗を有するものの通電可能であることから、該ガラス板(7)自体も抵抗体となり、該高抵抗値誘導電極(15)自体とともに該高抵抗値誘導電極(15)の一方(15a)と他方(15b)とを並列に接続することとなる。
このときも、操作孔(11)並びにそれを取り囲む高抵抗値誘導電極(15)と対応しない位置における一対の通電電極(9a)(9b)間のガラス板(7)の抵抗値と、高抵抗値誘導電極(15)を含めた一対の通電電極(9a’)(9b’)間の有する総抵抗値とが略同等であるよう調整されているので、ガラス板(7)全体は均一に熱を発生することとなる。従って、前記場合と同様に、観測窓(6)内部において結露による曇りが発生しても、観測窓(6)全体において満遍なく、且つ、確実に該結露を除去することができるものである。
尚、実施例1の変形例の場合に用いられる環状の高抵抗値誘導電極(15)は、ガラス板(7)の互いに対向する辺縁(8)の近傍に平行に配置される一対の通電電極(9)(9)に対して平行となる方向に長く、垂直となる方向に短くする、いわゆる楕円形状のものが均一の発熱には望ましいが、該一対の通電電極(9)(9)に対して平行又は垂直方向に同一となる、即ち真円状のものであっても良いものである〔図10(ニ)参照〕。
【0016】
そこで、この発明の効果を確認すべく実機にて発熱試験を行った。そのため、実施例1における観測窓(6)において、一対の通電電極(9)(9)間のガラス板(7)の抵抗値を19〜20Ω/□とした。一方、該一対の通電電極(9)(9)間に穿設された操作孔(11)を挟んで左右対称に配置された一対の誘導電極(13)(13)間を電気的に接続するものであって、該誘導電極(13)(13)間の電気的接続に当たって使用する抵抗体(14)の抵抗値を調整することによって、該誘導電極(13)の配置された位置における一対の通電電極(9a’)(9b’)間の総抵抗値を、該一対の通電電極(9)(9)間のガラス板(7)の抵抗値と同様にした。その上で、該一対の通電電極(9)(9)間で通電を行ったところ、ガラス板(7)全体において均一に通電が行われ、ガラス板(7)全体が均一に発熱することが確認された。
【実施例2】
【0017】
図6において示すものは、この発明の実施例2である環境試験器(1)の観測窓(6’)である。そして、実施例1の環境試験器(1)と同様に、該環境試験器(1)の環境試験器本体(2)の開口部を閉成自在にする扉体(3)の枠体(4)内に嵌着、保持される該観測窓(6’)は、枠体(4)内に一体に嵌着、保持され、互いに対向する各々の辺縁(8)の近傍において、平行に一対の通電電極(9)(9)を配置すると共に、その表面に金属膜を溶融して抵抗を有しつつも通電を可能とすることから発熱可能となるガラス板(7)よりなるものであって、
該観測窓(6)のガラス板(7)において、互いに対向する各々の辺縁(8)の近傍に平行に配置される一対の通電電極(9)(9)間に、該一対の通電電極(9)(9)に対する任意の垂線を想定した場合の垂線上において、蓋体(10)により閉塞自在となる複数(本実施例の場合は、2個である。)の円形状の操作孔(11a)(11b)を穿設すると共に、
該各孔(11a)(11b)の周縁(12)の近傍に、該孔(11a)(11b)を挟んで互いに対向し、且つ、前記垂線上に位置するようそれぞれ一対の誘導電極(13)(13)を配置し、
前記誘導電極(13)(13)の配置された位置における該一対の通電電極(9)(9)間の総抵抗値が、該通電電極(9)(9)間のガラス板(7)の抵抗値と略同等となるよう、前記各一対の誘導電極(13)(13)それぞれを抵抗体(14)を介して接続してなるものである(図6参照)。
【0018】
なお、この実施例2の観測窓(6’)に使用される誘導電極(13)は、実施例1で説明した誘導電極(13)と同様で足り、該誘導電極(13)の形状、長さ及び配置も、各々実施例1の観測窓(6’)における誘導電極(13)に準ずるものであれば良いものである。
【0019】
この発明の実施例2である環境試験器(1)の観測窓(6’)は以上の構成を具えるので、該環境試験器(1)の使用に際して該観測窓(6’)に結露による曇りが生じた場合、次のようにして結露による曇りを除去するものである。
まず、該観測窓(6’)を構成するガラス板(7)において、互いに対向する各々の辺縁(8)の近傍において平行に配置される一対の通電電極(9a)(9b)間において電圧を掛けることにより、該一対の通電電極(9a)(9b)間で該ガラス板(7)を介して通電が行われ、該ガラス板(7)は発熱することとなる。ところが、該一対の通電電極(9a)(9b)間での通電において、操作孔(11)の有無によりその通電する経路が異なるものである。即ち、一対の通電電極(9a)(9b)間において操作孔(11)の存在しない範囲では、該電流は該一対の通電電極(9a)(9b)間をガラス板(7)を介して直接通電する経路を辿るものである。従って、ガラス板(7)は、通電によりガラス板(7)の有する抵抗に応じた発熱を行うものである(図8矢印実線参照)。
一方、一対の通電電極(9a)(9b)に対する任意の垂線を想定した場合の垂線上において2個の操作孔(11a)(11b)が存在する範囲では、まず、一方の通電電極(9a)からの電流は、並設する2つの操作孔(11a)(11b)のうち、一方の通電電極(9a)に近接する操作孔(11a)において、該操作孔(11a)を挟んで互いに対向し、且つ、前記垂線上に位置する左右対称な弧形状の一対の誘導電極(13a)(13b)の、更に該一方の通電電極(9a)の直近に配置される誘導電極(13a)へとガラス板(7)を介して誘導されるものである。そして、該誘導電極(13a)に誘導された電流は、抵抗体(14)を介して電気的に接続される他方の誘導電極(13b)へと流れるものとなる。その際、ガラス板(7)も通電可能であることから、該ガラス板(7)自体も抵抗体となって、一対の誘導電極(13a)(13b)間において前記抵抗体(14)と並列に接続されることとなる。そして更に電流は、並設される他方の操作孔(11b)において設けられる、左右対称な弧形状の一対の誘導電極(13c)(13d)のうち、該一方の操作孔(11a)の他方の誘導電極(13b)の直近に配置される一方の誘導電極(13c)へと、ガラス板(7)を介して誘導されるものである。そして、該一方の誘導電極(13c)に誘導された電流は、抵抗体(14)を介して電気的に接続される他方の誘導電極(13d)へと流れるものとなる。その際同様に、ガラス板(7)も通電可能であることから、該ガラス板(7)自体も抵抗体となって、一対の誘導電極(13c)(13d)間において前記抵抗体(14)と並列に接続されることとなる。その後、該他方の誘導電極(13d)から他方の通電電極(9b)へと再度ガラス板(7)を介して通電を行うものである(図8矢印点線参照)。従って、例え一対の通電電極(9a)(9b)に対する任意の垂線を想定した場合の垂線上において複数の操作孔(11a)(11b)が存在していても、一対の通電電極(9a’)(9b’)間での通電は、抵抗体(14)を介して電気的に接続された複数の一対の誘導電極(13a)(13b)及び(13c)(13d)を介して行われるので、その間にあるガラス板(7)は十分に発熱するものである。しかも、該一対の通電電極(9a)(9b)に対する任意の垂線を想定した場合の垂線上において複数の操作孔(11a)(11b)が存在する範囲での一対の通電電極(9a’)(9b’)間の通電において、その総抵抗値は、操作孔(11a)(11b)が存在しない位置における通電電極(9a)(9b)間におけるガラス板(7)の抵抗値と略同等となるよう調整されているので、その抵抗により発生する熱も一対の通電電極(9a)(9b)間において操作孔(11a)(11b)の有無に関わらず同等となるものである。その結果、ガラス板(7)全体として均一に発熱することとなるものである。従って、観測窓(6’)内部において結露による曇りが発生しても、観測窓(6’)全体において満遍なく、且つ、確実に結露を除去することができるものである。
【0020】
なお、上記実施例2の観測窓(6’)においては、並設される操作孔(11a)(11b)の周縁(12)の近傍に各々一対の誘導電極(13)(13)が配置されているが、該一対の誘導電極(13)(13)の代わりに、実施例2の変形例として、実施例1の変形例の場合と同様に、各々該操作孔(11a)(11b)の周縁(12)を取り囲むようになる環状の高抵抗値誘導電極(15)を配置しても良いものである(図7参照)。該高抵抗値誘導電極(15)は、上記実施例2における誘導電極(13)(13)が極めて低い抵抗しか有さないのに比べて、それ自身が高抵抗を有するものである。即ち上記誘導電極(13)(13)間が抵抗体(14)を介して電気的に接続されているのと、機能的には何等変わらないものである。そのため、該観測窓(6’)を構成するガラス板(7)において、互いに対向する各々の辺縁(8)の近傍において平行に配置される一対の通電電極(9a)(9b)間において電圧を掛けると、一方の通電電極(9a)からの電流は、ガラス板(7)を介して近接する操作孔(11a)の周縁(12)に設けられた環状の高抵抗値誘導電極(15)の一方(15a)側に誘導されると共に、該高抵抗値誘導電極(15)内の内部抵抗に抗して、該高抵抗値誘導電極(15)の他方(15b)側へ導かれる。その際、ガラス板(7)も抵抗を有するものの通電可能であることから、該ガラス板(7)自体も抵抗体となり、該高抵抗値誘導電極(15)自体とともに該高抵抗値誘導電極(15)の一方(15a)と他方(15b)とを並列に接続することとなる。そして、前記操作孔(11a)の周縁(12)に設けられた高抵抗値誘導電極(15)の他方(15b)側から、操作孔(11a)(11b)間のガラス板(7)を経て、再度他方の操作孔(11b)の周縁(12)に設けられた環状の高抵抗値誘導電極(15)へ導かれ、そこでも同様の経路を誘導されて最終的にガラス板(7)を介して他方の通電電極(9b)へと、電流が流れて行くことになるものである。
この場合も、操作孔(11)並びに高抵抗値誘導電極(15)と対応しない位置における一対の通電電極(9a)(9b)間のガラス板(7)の抵抗値と、高抵抗値誘導電極(15)を含めた一対の通電電極(9a’)(9b’)間の有する総抵抗値とが略同等であるよう調整されているので、該通電電極(9a)(9b)間での通電により、ガラス板(7)全体が均一に熱を発生することとなる。従って、観測窓(6’)内部において結露による曇りが発生しても、観測窓(6’)全体において満遍なく、且つ、確実に結露を除去することができるものである(図9参照)。
ここで、実施例2の変形例の場合に用いられる環状の高抵抗値誘導電極(15)は、ガラス板(7)の互いに対向する周縁(8)又はその近傍に平行に配置される一対の通電電極(9)(9)に対して平行となる方向に長く、垂直となる方向に短くする楕円形状のものの他、該一対の通電電極(9)(9)に対して平行又は垂直方向に同一である真円状のものであっても良いものである〔図10(ニ)参照〕。
【0021】
そこで、実施例2における観測窓(6’)においても、実施例1の場合と同様に、実機にて発熱実験を行った。そのため、まず一対の通電電極(9a)(9b)間のガラス板(7)の抵抗値を19〜20Ω/□とした。一方、該一対の通電電極(9a’)(9b’)間に並設された操作孔(11a)(11b)に対して、各操作孔(11a)(11b)を挟んでそれぞれ左右対称に配置された二対の誘導電極(13a)(13b)及び(13c)(13d)間をそれぞれ抵抗体(14)を介して電気的に接続するものであって、該抵抗体(14)の抵抗値を調整することによって、該誘導電極(13)(13)の配置された位置における一対の通電電極(9a’)(9b’)間の総抵抗値を、該一対の通電電極(9a)(9b)間のガラス板(7)の抵抗値と同様にした。その上で、該一対の通電電極(9a)(9b)間に通電を行ったところ、ガラス板(7)全体において、均一に発熱することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0022】
観測窓のガラス板に通電することにより発熱させて結露を防止するものの、本体内部での実験操作を行えるように穿設された操作孔に起因して、局部的に結露による曇りが発生し易いあらゆる環境試験器等の機器に対して適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明の実施例を具える環境試験器の正面図である。
【図2】この発明の実施例1の観測窓の模式図である。
【図3】この発明の実施例1の変形例である観測窓の模式図である。
【図4】この発明の実施例1の観測窓における通電状態を示す模式図である。
【図5】この発明の実施例1の変形例である観測窓における通電状態を示す模式図である。
【図6】この発明の実施例2の観測窓の模式図である。
【図7】この発明の実施例2の変形例である観測窓の模式図である。
【図8】この発明の実施例2の観測窓における通電状態を示す模式図である。
【図9】この発明の実施例2の変形例である観測窓における通電状態を示す模式図である。
【図10】この発明の実施例1及び実施例2の観測窓に使用される誘導電極のバリエーションを示した図である。
【図11】この発明の実施例1及び実施例2の観測窓において、長方形の操作孔の対角線が通電電極に対して平行である場合の、誘導電極の長さを模式的に示した図である。
【図12】従来の環境試験器の観測窓において、結露による曇りが発生する部分を模式的に示した図である。
【符号の説明】
【0024】
1 環境試験器
2 環境試験器本体
3 扉体
4 枠体
5 把手
6、6’ 観測窓
7 ガラス板
8 辺縁
9、9’、9a、9a’、9b、9b’ 通電電極
10 蓋体
11、11a、11b 操作孔
11” 対角線
12 周縁
13、13a、13b、13c、13d 誘導電極
13’ 弦
14 抵抗体
15 高抵抗値誘導電極
15a (高抵抗値誘導電極の)一方
15b (高抵抗値誘導電極の)他方
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉自在に取り付けられる扉体を有する試験器本体の、扉体を含む任意の面に設けられ、
当該面の枠体に一体に嵌着、保持され、互いに対向する各々の辺縁又はその近傍において、平行に一対の通電電極を配置すると共に、その表面に金属膜を溶融して通電、発熱可能となるガラス板よりなる観測窓であって、
該観測窓の、互いに対向する各々の辺縁又はその近傍に平行に配置される一対の通電電極間に、該一対の通電電極に対する任意の垂線を想定した場合の垂線上において単数もしくは並列に複数の操作孔を穿設すると共に、
該各操作孔の周縁又はその近傍に、該操作孔を挟んで互いに対向し、且つ、前記垂線上に位置するようそれぞれ一対の誘導電極を配置し、
前記誘導電極の配置された位置における該一対の通電電極間の総抵抗値が、該通電電極間のガラス板の抵抗値と略同等となるよう、前記各一対の誘導電極それぞれを抵抗体を介して接続してなる
試験器における観測窓。
【請求項2】
上記観測窓における操作孔の周縁又はその近傍に配置される一対の誘導電極並びにそれを接続する抵抗体に代えて、
該操作孔の周縁を囲む環状の高抵抗値誘導電極としてなる請求項1記載の環境試験器における観測窓。
【請求項1】
開閉自在に取り付けられる扉体を有する試験器本体の、扉体を含む任意の面に設けられ、
当該面の枠体に一体に嵌着、保持され、互いに対向する各々の辺縁又はその近傍において、平行に一対の通電電極を配置すると共に、その表面に金属膜を溶融して通電、発熱可能となるガラス板よりなる観測窓であって、
該観測窓の、互いに対向する各々の辺縁又はその近傍に平行に配置される一対の通電電極間に、該一対の通電電極に対する任意の垂線を想定した場合の垂線上において単数もしくは並列に複数の操作孔を穿設すると共に、
該各操作孔の周縁又はその近傍に、該操作孔を挟んで互いに対向し、且つ、前記垂線上に位置するようそれぞれ一対の誘導電極を配置し、
前記誘導電極の配置された位置における該一対の通電電極間の総抵抗値が、該通電電極間のガラス板の抵抗値と略同等となるよう、前記各一対の誘導電極それぞれを抵抗体を介して接続してなる
試験器における観測窓。
【請求項2】
上記観測窓における操作孔の周縁又はその近傍に配置される一対の誘導電極並びにそれを接続する抵抗体に代えて、
該操作孔の周縁を囲む環状の高抵抗値誘導電極としてなる請求項1記載の環境試験器における観測窓。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−78353(P2006−78353A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−263166(P2004−263166)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(000223986)フィグラ株式会社 (68)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(000223986)フィグラ株式会社 (68)
【Fターム(参考)】
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