説明

環境試験装置

【課題】多様な供試体の形状や数量に対応可能としながら、供試体の形状等に応じて環境温度を短時間で設定温度に移行させることが可能な環境試験装置を提供する。
【解決手段】この環境試験装置は、供試体が収容される試験空間S1を内部に有する試験槽2を備え、試験空間S1内に高温と低温の空気を導入可能な環境試験装置であって、試験槽2に設けられ、外部から試験空間S1に前記空気を導入する流入部42と、試験槽2に設けられ、試験空間S1から外部へ空気を流出させる流出部46と、流入部42と流出部46の間で試験空間S1内に着脱可能に設けられ、流入部42から導入された空気が流通するとともに供試体が設置される流通空間S2を内部に有する風洞部50とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、供試体の環境温度を変化させて、その温度変化による供試体への影響を調べる環境試験が行われており、下記の特許文献1にはそのような環境試験を行う環境試験装置の一例として冷熱衝撃試験装置が開示されている。
【0003】
この特許文献1に開示された冷熱衝撃試験装置では、供試体を内部に収容する試験槽が設けられており、この試験槽内に高温空気または低温空気を供給できるように構成されている。そして、試験槽内に高温空気を導入して供試体の環境温度を高温に一定時間保持した後、今度は低温空気を導入して供試体の環境温度を低温に一定時間保持するサイクルを繰り返し行って、供試体に与えられる高温及び低温の熱ストレスの影響を調べるようになっている。
【特許文献1】特公平8−1413号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような冷熱衝撃試験装置では、多様な供試体の形状や数量に対応できるようにするため、試験槽内の空間をある一定以上の大きさをもつ空間とせざるを得ない。この場合、供試体が小さいものであったり、少数である場合には、試験槽内に余剰のスペースが多く生まれる。このように試験槽内に余剰のスペースが多く生まれると、供試体の環境温度を設定温度まで移行させるのに、余剰のスペースの温度も変化させる必要があるので、設定温度までの移行時間が長くなるという不都合が生じる。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、多様な供試体の形状や数量に対応可能としながら、供試体の形状等に応じて環境温度を短時間で設定温度に移行させることが可能な環境試験装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明による環境試験装置は、供試体が収容される試験空間を内部に有する試験槽を備え、前記試験空間内に高温のガス又は低温のガスの少なくとも一方を導入可能な環境試験装置であって、前記試験槽に設けられ、外部から前記試験空間に前記ガスを導入する流入部と、前記試験槽に設けられ、前記試験空間から外部へ前記ガスを流出させる流出部と、前記流入部と前記流出部の間で前記試験空間内に着脱可能に設けられ、前記流入部から導入されたガスが流通するとともに前記供試体が設置される流通空間を内部に有する風洞部とを備えている。
【0007】
この環境試験装置では、流入部から導入されたガスが流通するとともに供試体が設置される流通空間を内部に有する風洞部が、流入部と流出部の間で試験槽の試験空間内に設けられている。これにより、多様な供試体の形状や数量に対応するために大きな試験空間を試験槽内に形成した場合でも、供試体の環境温度の設定に用いられる試験空間の体積は実質的に小さくなるので、短時間で供試体の環境温度を高温または低温の設定温度に移行させることができる。さらに、この環境試験装置では、風洞部が流入部と流出部の間で着脱可能に設けられているので、供試体の形状や数量に合わせて適切な形状及び大きさをもつ風洞部に付け替えたり、風洞部を取り外して試験空間にそのまま供試体を設置することができる。従って、この環境試験装置では、多様な供試体の形状や数量に対応しながら、供試体の形状等に応じて環境温度を短時間で設定温度に移行させることができる。
【0008】
上記環境試験装置において、前記風洞部を構成する壁部は、前記試験槽を構成する壁部よりも薄肉に形成されており、前記風洞部は、その外面と前記試験槽の内面との間に隙間を有する状態で前記試験空間に設けられているのが好ましい。この構成では、風洞部が試験槽よりも薄肉であることに起因して、風洞部自体の熱容量は試験槽自体の熱容量よりも小さくなる。そして、風洞部の外面と試験槽の内面との間に隙間が存在するので、試験槽の熱容量が風洞部の熱容量に付加されるのを抑制できる。このため、風洞部内の流通空間において供試体の環境温度を変化させる際の熱容量負荷を小さくすることができるので、供試体の環境温度をより短時間で前記設定温度に移行させることができる。また、試験槽内に風洞部を設けず、直接試験槽内に供試体を設置する構成では、試験槽を構成する壁部の肉厚を小さくして供試体の環境温度を変化させる際の熱容量負荷を小さくすることが考えられるが、この場合には試験槽の剛性が低下する虞がある。これに対して、上記構成によれば、試験槽を構成する壁部の肉厚を小さくしなくても、前記熱容量負荷を小さくすることができるので、試験槽の剛性を確保することができる。
【0009】
上記環境試験装置において、前記試験槽内には、前記風洞部を載置するための支持台と、前記支持台に対して前記風洞部の位置を固定するための位置固定手段とが設けられているのが好ましい。このように構成すれば、試験槽内の試験空間に風洞部を設置する際、風洞部を支持台上に載置して位置固定手段により風洞部を適切な位置に配置した状態で支持台に対して固定できる。これにより、流入部に対する風洞部の位置ずれを防止することができるので、流入部から導入されたガスを確実に風洞部内の流通空間に導くことができる。
【0010】
上記環境試験装置において、前記供試体は、基板上に装着された電子部品であり、前記風洞部を構成する壁部には、前記基板に電気配線を接続するための貫通孔が設けられているのが好ましい。このように構成すれば、基板上に装着された電子部品を供試体として試験を行う際、前記貫通孔を通じて電気配線を基板に接続して電子部品に電流を流しながら試験を行うことができる。これにより、電子部品の環境温度を変化させながら、その電子部品の電気的な性能の経時変化を調べることができる。
【0011】
上記環境試験装置において、前記試験槽に着脱可能に設けられ、前記流入部と前記風洞部の流入側端部とを連結する流入側連結部と、前記試験槽に着脱可能に設けられ、前記流出部と前記風洞部の流出側端部とを連結する流出側連結部とを備え、前記流入側連結部は、前記流入部の開口形状に対応した形状をもつ流入口と、前記風洞部の流入側端部の開口形状に対応した形状をもつ流出口とを有し、前記流出側連結部は、前記風洞部の流出側端部の開口形状に対応した形状をもつ流入口と、前記流出部の開口形状に対応した形状をもつ流出口とを有するのが好ましい。このように構成すれば、風洞部を供試体の形状等に合わせて交換する場合に、流入側連結部と流出側連結部もその風洞部の形状に合わせて交換して、流入部から導入されたガスを風洞部内の流通空間にスムーズに流入させることができるとともに、流通空間から排出されるガスを流出部へスムーズに流出させることができる。したがって、この構成では、供試体の形状等に応じて風洞部を交換する場合でも、流入部から風洞部を経て流出部へスムーズにガスを流通させることができる。その結果、供試体の形状等に応じて種々の風洞部を用いることができる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明の環境試験装置によれば、多様な供試体の形状や数量に対応しながら、供試体の形状等に応じて環境温度を短時間で設定温度に移行させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態による環境試験装置の構成を示した流路図である。まず、図1を参照して、本発明の一実施形態による環境試験装置の全体構成について説明する。
【0015】
本実施形態による環境試験装置は、供試体の環境温度を高温と低温に交互に繰り返し変化させて、その温度変化による供試体への影響を調べる冷熱衝撃試験を行うものである。この環境試験装置には、試験槽2と、混合室4と、冷気供給部6と、冷気送風機8と、冷気分流機構10と、熱気供給部12と、熱気送風機14と、熱気分流機構16とが設けられている。
【0016】
前記試験槽2は、供試体が収容される試験空間S1を内部に有しており、後述するように、この試験空間S1内において供試体の環境温度が高温に一定時間保持された後、低温に一定時間保持されるサイクルが繰り返し行われるようになっている。
【0017】
前記混合室4は、試験槽2の手前で前記冷気分流機構10からの冷気と前記熱気分流機構16からの熱気とがそれぞれ導入されて撹拌される部分であり、円管状の供給ダクト18を介して試験槽2と繋がっている。具体的には、後述するように、供試体の環境温度を高温にする場合には、前記熱気のみが混合室4に導入される一方、供試体の環境温度を低温にする場合には、前記冷気のみが混合室4に導入されるようになっている。そして、混合室4内には、温度調節用のヒータ4aが設けられており、このヒータ4aによって混合室4に導入された熱気または冷気の温度が微調整されて試験槽2の試験空間S1へ供給される高温または低温の空気となるように構成されている。
【0018】
前記冷気供給部6は、試験槽2の試験空間S1へ供給される冷気を生成する部分である。この冷気供給部6には、冷凍機6aと熱交換器6bが設けられており、これらにより空気が冷却されて冷気が生成されるようになっている。また、冷気供給部6には、温度調節用のヒータ6cが設けられており、このヒータ6cにより冷気の温度を微調整するようになっている。そして、冷気供給部6の下流側には、ダクト20を介して前記冷気送風機8が接続されているとともに、その冷気送風機8に直管状の配管22を介して前記冷気分流機構10の流入部10aが接続されている。直管状の配管22によって冷気送風機8と冷気分流機構10が接続されていることにより、冷気送風機8から吐出された冷気が偏流することなく冷気分流機構10内へ導入されるようになっている。
【0019】
前記冷気分流機構10は、導入された冷気を2つに分流するためのものである。この冷気分流機構10は、第1流出部10bと第2流出部10cを有しており、この第1流出部10bと第2流出部10cに流す冷気の流量比を図略の制御部により制御できるように構成されている。そして、冷気分流機構10の第1流出部10bは、前記混合室4に繋がっている一方、冷気分流機構10の第2流出部10cは、冷気供給部6への循環ダクト24に接続されている。従って、この環境試験装置では、冷気供給部6、ダクト20、冷気送風機8、配管22、冷気分流機構10及び循環ダクト24によって低温側循環回路が構成されている。
【0020】
前記熱気供給部12は、試験槽2の試験空間S1へ供給される熱気を生成する部分である。この熱気供給部12には、ヒータ12aが設けられており、このヒータ12aにより空気が加熱されて熱気が生成されるようになっている。そして、熱気供給部12の下流側には、ダクト26を介して前記熱気送風機14が接続されているとともに、その熱気送風機14に直管状の配管28を介して前記熱気分流機構16の流入部16aが接続されている。直管状の配管28によって熱気送風機14と熱気分流機構16が接続されていることにより、熱気送風機14から吐出された熱気が偏流することなく熱気分流機構16へ導入されるようになっている。
【0021】
前記熱気分流機構16は、導入された熱気を2つに分流するためのものである。この熱気分流機構16は、第1流出部16bと第2流出部16cを有しており、この第1流出部16bと第2流出部16cに流す熱気の流量比を図略の制御部により制御できるように構成されている。そして、熱気分流機構16の第1流出部16bは、前記混合室4に繋がっている一方、熱気分流機構16の第2流出部16cは、熱気供給部12への循環ダクト30に接続されている。従って、この環境試験装置では、熱気供給部12、ダクト26、熱気送風機14、配管28、熱気分流機構16及び循環ダクト30によって高温側循環回路が構成されている。
【0022】
また、前記試験槽2の下流側には、排気ダクト32が接続されている。この排気ダクト32は、2手に分かれており、一方がダンパ34を介して冷気供給部6への循環ダクト24に合流している一方、もう一方がダンパ36を介して熱気供給部12への循環ダクト30に合流している。
【0023】
上記した本実施形態による環境試験装置の動作としては、まず、供試体の環境温度を高温に設定する場合には、熱気供給部12で生成された熱気が熱気分流機構16の第1流出部16bを通って混合室4に送られる。この際、冷気分流機構10は、冷気供給部6からの冷気を第2流出部10cを通じて流すように制御されるとともに、第1流出部10bを通じて混合室4へ冷気を送らないように制御される。そして、混合室4において前記熱気の温度がヒータ4aで微調整された後、混合室4から高温の空気が供給ダクト18を通じて試験槽2の試験空間S1へ送られる。これにより、供試体の環境温度が高温に設定される。そして、この状態が一定時間保持されることによって、供試体の環境温度が高温に一定時間保持される。
【0024】
この後、供試体の環境温度を低温に移行させる。この際、熱気分流機構16が全ての前記熱気を第2流出部16cを通じて流すように切り換えられるとともに、第1流出部16bを通じて混合室4へ熱気を送らないように制御される。同時に、冷気分流機構10において冷気供給部6からの冷気が第1流出部10bを通じて混合室4へ送られる。そして、混合室4において前記冷気の温度がヒータ4aで微調整された後、混合室4から低温の空気が供給ダクト18を通じて試験槽2の試験空間S1へ送られる。これにより、供試体の環境温度が低温に設定される。そして、この状態が一定時間保持されることによって、供試体の環境温度が低温に一定時間保持される。
【0025】
この後、上記と同様にして供試体の環境温度が再度高温に移行されて一定時間保持され、その後低温保持と高温保持のサイクルが繰り返し行われる。
【0026】
図2は、本実施形態による環境試験装置の試験槽2の全体構造を示した斜視図であり、図3は、図2に示した試験槽2の内部構造を示した斜視図である。図4は、図2に示した試験槽2内に設置する風洞部50の構造を示した斜視図である。次に、図1〜図4を参照して、本実施形態による環境試験装置の試験槽2の詳細な構造について説明する。
【0027】
本実施形態による試験槽2は、図2及び図3に示すように、中空の箱体に形成されており、所定の厚みを有する板金によって構成されている。具体的には、前記箱体を構成する試験槽2の壁部は、板金が曲げ加工されることによって内板と外板の間、すなわち壁部の内部に空間を有するように形成されており、この壁部の内部空間に断熱材が挿入されている。そして、このように形成された各壁部が互いに接合されることによって、箱状の試験槽2が形成されている。この試験槽2には、流入部42と、流入側連結部44と、流出部46と、流出側連結部48と、風洞部50と、支持台52と、位置固定手段54とが設けられている。そして、流入部42、流入側連結部44、風洞部50、流出側連結部48及び流出部46は、この順番で空気の流れ方向に沿って配置されている。
【0028】
前記流入部42は、前記混合室4(図1参照)からの高温または低温の空気を試験槽2内の試験空間S1に導入する部分であり、試験槽2の一方の側壁部に固定されている。この流入部42は、前記一方の側壁部を貫通して当該側壁部の内面に円形に開口している。そして、流入部42は、試験槽2の外部で前記供給ダクト18(図1参照)に接続されており、供給ダクト18の形状に対応した略円筒状に形成されている。
【0029】
前記流入側連結部44は、流入部42と前記風洞部50の流入側端部とを連結しており、この流入側連結部44内の流路を通って流入部42から風洞部50内の後述する流通空間S2へ前記高温または低温の空気が導入されるようになっている。そして、この流入側連結部44は、流入部42の流路形状を風洞部50の流通空間S2の形状に変換するアダプターとして機能し、風洞部50の形状に応じて適切な形状のものに交換可能となっている。具体的には、流入側連結部44は、前記流入部42が溶接された試験槽2の側壁部の内面に着脱可能にねじ留めされている。そして、流入側連結部44は、空気が流通する流路を内部に有しており、この流路の流入口が流入部42内の流路と接続する一方、前記流路の流出口が風洞部50の流入側端部の開口と接続している。本実施形態では、流入側連結部44の流入口は、流入部42の開口形状に対応して円形に形成されている一方、流入側連結部44の流出口は、風洞部50の流入側端部の開口形状に対応して矩形状に形成されている。この構成により、流入部42から流入側連結部44内にスムーズに空気が流れ込むとともに、流入側連結部44から風洞部50内の流通空間S2にスムーズに空気が流れ込むようになっている。
【0030】
前記流出部46は、試験槽2内の試験空間S1から外部へ空気を流出させる部分であり、試験槽2の他方の側壁部に固定されている。この流出部46は、前記他方の側壁部を貫通して当該側壁部の内面に円形に開口している。そして、流出部46は、試験槽2の外部で前記排気ダクト32(図1参照)に接続されており、排気ダクト32の形状に対応した略円筒状に形成されている。
【0031】
前記流出側連結部48は、前記風洞部50の流出側端部と流出部46とを連結しており、この流出側連結部48内の流路を通って風洞部50内の後述する流通空間S2から流出部46へ空気が流れるようになっている。そして、この流出側連結部48は、風洞部50の流通空間S2の形状を流出部46の流路形状に変換するアダプターとして機能し、風洞部50の形状に応じて適切な形状のものに交換可能となっている。具体的には、流出側連結部48は、前記流出部46が溶接された試験槽2の側壁部の内面に着脱可能にねじ留めされている。そして、流出側連結部48は、空気が流通する流路を内部に有しており、この流路の流入口が風洞部50の流出側端部の開口と接続する一方、前記流路の流出口が流出部46内の流路と接続している。本実施形態では、流出側連結部48の流入口は、風洞部50の流出側端部の開口形状に対応して矩形状に形成されている一方、流出側連結部48の流出口は、流出部46の開口形状に対応して円形に形成されている。この構成により、風洞部50内の流通空間S2から流出側連結部48内にスムーズに空気が流れるとともに、流出側連結部48から流出部46にスムーズに空気が流れるようになっている。
【0032】
前記風洞部50は、図4に示すように、板金を用いて略角筒状に形成されており、その内部に流通空間S2を有している。この風洞部50は、図3に示すように、前記流入側連結部44と前記流出側連結部48の間で試験槽2の試験空間S1内に着脱可能に設けられている。すなわち、本実施形態では、風洞部50を前記支持台52上に単に載置するだけで試験空間S1に風洞部50を装着できる一方、その支持台52上に載置された風洞部50を単に取り外すだけで試験空間S1から風洞部50を脱着できるように構成されている。
【0033】
そして、風洞部50が試験空間S1内に設置された状態で、風洞部50の流入側端部と流入側連結部44の流出側端部とが直接接触しているとともに、風洞部50の流出側端部と流出側連結部48の流入側端部とが直接接触している。風洞部50内の流通空間S2には、前記流入部42及び前記流入側連結部44を通じて導入された高温または低温の空気が流通するとともに、供試体が設置される。これにより、供試体の環境温度は、流通空間S2内のみで変化するようになっている。
【0034】
本実施形態では、基板100(図4参照)上に装着された電子部品を供試体としている。流通空間S2には、前記基板100を複数設置できるようになっている。具体的には、複数の基板100が、立てた状態で空気の流通方向に沿って流通空間S2内に設置される。各基板100は、風洞部50の幅方向に等間隔で設置され、この各基板100間の間隙を通じて前記高温または低温の空気が流通するようになっている。
【0035】
風洞部50の天壁部50aには、前記基板100に電気配線56を接続するための貫通孔50bが設けられている。この貫通孔50bは、風洞部50の幅方向に等間隔で複数設けられている。そして、各貫通孔50bは流通空間S2内に設置される各基板100に対応する位置に設けられている。本実施形態では、貫通孔50bを通じてコネクタ58が基板100の端縁に接続されているとともに、そのコネクタ58に平形の電気配線56が接続されている。これにより、基板100上に設置された電子部品に電流を流してその電子部品の電気的な性能の経時変化を調べることが可能となっている。
【0036】
また、風洞部50を構成する壁部は、板金製であり、前記試験槽2を構成する壁部よりも薄肉に形成されている。そして、風洞部50は、その外面と試験槽2の内面との間に隙間を有する状態で試験空間S1内に設けられている。具体的には、風洞部50は、試験空間S1の中央に設置されているとともに、風洞部50の上下方向の寸法と、風洞部50の空気の流通方向に沿った寸法と、風洞部50の空気の流通方向に直交する幅方向の寸法とは、それぞれ試験空間S1の対応する部分の寸法に比べて小さくなっている。この構成により、風洞部50の各壁部の外面と、対応する試験槽2の各壁部の内面との間に隙間が設けられている。
【0037】
前記支持台52は、図3に示すように、試験空間S1において試験槽2の底壁部上に設置されている。この支持台52は、風洞部50を載置するためのものである。風洞部50が支持台52上に載置された状態で、流入側連結部44の流出口と風洞部50の流入側端部の開口とが完全に重なるとともに、流出側連結部48の流入口と風洞部50の流出側端部の開口とが完全に重なるように構成されている。そして、支持台52は、一対の脚部52a,52aと、風洞部50を支持する支持板部52bを有している。前記一対の脚部52a,52aは、所定の間隔を隔てて試験槽2の底壁部上に設置されており、それら両脚部52a,52aの上端部間に前記支持板部52bが設けられている。したがって、支持板部52bは、試験槽2の底壁部の上面から上方に脚部52aの高さ分に相当する隙間を隔てて配置されている。これにより、支持板部52b上に載置された風洞部50の底壁部の下面と試験槽2の底壁部の上面との間には隙間が存在する。また、支持板部52bは、風洞部50の底壁部に対応した矩形状に形成されている。
【0038】
前記位置固定手段54は、前記支持台52に対して風洞部50の位置を固定するものである。この位置固定手段54は、支持台52の支持板部52bに設けられた固定ピン52cと、風洞部50の底壁部に設けられた固定穴50cとによって構成されている。前記固定ピン52cは、支持板部52bに4つ設けられており、各固定ピン52cは支持板部52bの4隅にそれぞれ設けられている。この固定ピン52cは、支持板部52bの上面から上方に突出している。前記固定穴50cは、風洞部50の底壁部に4つ設けられており、各固定穴50cは前記各固定ピン52cに対応して風洞部50の底壁部の4隅にそれぞれ設けられている。そして、風洞部50を支持台52の支持板部52b上に載置する際、各固定穴50cと対応する固定ピン52cとが係合することによって、支持台52に対する風洞部50の位置が適切な位置に固定される。すなわち、上記した流入側連結部44の流出口と風洞部50の流入側端部の開口とが完全に重なるとともに、流出側連結部48の流入口と風洞部50の流出側端部の開口とが完全に重なる位置に、風洞部50の位置が固定されるようになっている。そして、風洞部50を支持台52に載置する際、固定穴50cに固定ピン52cが挿入される一方、風洞部50を支持台52上から取り外す際、固定穴50cから固定ピン52cが抜脱されるだけであるので、風洞部50を試験空間S1に容易に着脱可能となっている。
【0039】
以上説明したように、本実施形態による環境試験装置では、流入部42から導入された高温または低温の空気が流通するとともに供試体が設置される流通空間S2を内部に有する風洞部50が、試験槽2の試験空間S1内に設けられている。これにより、多様な供試体の形状や数量に対応するために大きな試験空間S1を試験槽2内に形成した場合でも、供試体の環境温度の設定に用いられる試験空間S1の体積は実質的に小さくなるので、短時間で供試体の環境温度を高温または低温の設定温度に移行させることができる。さらに、本実施形態による環境試験装置では、風洞部50が試験空間S1内に着脱可能に設けられているので、供試体の形状や数量に合わせて適切な形状及び大きさをもつ風洞部50に付け替えたり、風洞部50を取り外して試験空間S1にそのまま供試体を設置することができる。従って、本実施形態による環境試験装置では、多様な供試体の形状や数量に対応しながら、供試体の形状等に応じて環境温度を短時間で設定温度に移行させることができる。
【0040】
また、本実施形態による環境試験装置では、風洞部50を構成する壁部が試験槽2を構成する壁部よりも薄肉に形成されているとともに、風洞部50がその外面と試験槽2の内面との間に隙間を有する状態で試験空間S1に設けられている。この構成では、風洞部50が試験槽2よりも薄肉であることに起因して、風洞部50自体の熱容量は試験槽2自体の熱容量よりも小さくなる。そして、風洞部50の外面と試験槽2の内面との間に隙間が存在するので、試験槽2の熱容量が風洞部50の熱容量に付加されるのを抑制できる。このため、風洞部50内の流通空間S2において供試体の環境温度を変化させる際の熱容量負荷を小さくすることができるので、供試体の環境温度をより短時間で前記設定温度に移行させることができる。また、試験槽2内に風洞部50を設けず、直接試験槽2内に供試体を設置する構成では、試験槽2を構成する壁部の肉厚を小さくして供試体の環境温度を変化させる際の熱容量負荷を小さくすることが考えられるが、この場合には試験槽2の剛性が低下する虞がある。これに対して、上記構成によれば、試験槽2を構成する壁部の肉厚を小さくしなくても、前記熱容量負荷を小さくすることができるので、試験槽2の剛性を確保することができる。
【0041】
また、本実施形態による環境試験装置では、試験槽2内に、風洞部50を載置するための支持台52と、この支持台52に対して風洞部50の位置を固定するための位置固定手段54とが設けられているので、試験槽2内の試験空間S1に風洞部50を設置する際、風洞部50を支持台52上に載置して位置固定手段54により風洞部50を適切な位置に配置した状態で支持台52に対して固定できる。これにより、流入部42及び流入側連結部44に対する風洞部50の位置ずれを防止することができるので、流入部42から導入された高温または低温の空気を確実に風洞部50内の流通空間S2に導くことができる。
【0042】
また、本実施形態による環境試験装置では、供試体である電子部品を装着した基板100に電気配線56を接続可能な貫通孔50bが風洞部50の天壁部50aに設けられているので、前記貫通孔50bを通じて電気配線56を基板100に接続して電子部品に電流を流しながら試験を行うことができる。これにより、電子部品の環境温度を変化させながら、その電子部品の電気的な性能の経時変化を調べることができる。
【0043】
また、本実施形態による環境試験装置では、流入側連結部44が試験槽2に着脱可能に設けられているとともに、流入部42の開口形状に対応した形状をもつ流入口と、風洞部50の流入側端部の開口形状に対応した形状をもつ流出口とを有している。また、流出側連結部48が試験槽2に着脱可能に設けられているとともに、風洞部50の流出側端部の開口形状に対応した形状をもつ流入口と、流出部46の開口形状に対応した形状をもつ流出口とを有している。このような構成により、風洞部50を供試体の形状等に合わせて交換する場合に、流入側連結部44と流出側連結部48もその風洞部50の形状に合わせて交換して、流入部42から導入された高温または低温の空気を風洞部50内の流通空間S2にスムーズに流入させることができるとともに、流通空間S2からの空気を流出部46へスムーズに流出させることができる。したがって、この構成では、供試体の形状等に応じて風洞部50を交換する場合でも、流入部42から風洞部50を経て流出部46へスムーズに高温または低温の空気を流通させることができる。その結果、供試体の形状等に応じて種々の風洞部50を用いることができる。
【0044】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0045】
例えば、上記実施形態では、試験槽2内へ導入するガスの一例として空気を用いる場合を示したが、本発明はこれに限らず、空気以外の種々のガスを試験槽2内へ導入するようにしてもよい。
【0046】
また、上記実施形態では、支持台52に対して風洞部50の位置を固定する位置固定手段54として固定ピン52cと固定穴50cを用いる場合を示したが、これに限らず、上記以外の構成の位置固定手段を用いてもよい。例えば、固定ピンを風洞部50の底壁部の下面に設けるとともに、固定穴を支持台52の支持板部52bに設けてもよい。また、風洞部50を支持台52にねじ留めするねじ留め部を位置固定手段として用いてもよい。
【0047】
また、上記実施形態では、複数の基板100を収容するのに適した角筒状に風洞部50を構成したが、これに限らず、風洞部50としては、供試体の形状、大きさ、数量に応じて様々な形状のものを用いることができる。
【0048】
また、上記実施形態では、風洞部50の流入側端部と流入側連結部44の流出側端部とが直接接触するとともに、風洞部50の流出側端部と流出側連結部48の流入側端部とが直接接触するようにしたが、風洞部50の流入側端部と流入側連結部44の流出側端部とをパッキン等の封止材を介して密着させるとともに、風洞部50の流出側端部と流出側連結部48の流入側端部とを同様の封止材を介して密着させてもよい。このように構成すれば、上記各部材の接合部分において空気の漏出をより確実に防ぐことが可能である。
【0049】
また、上記実施形態では、風洞部50の天壁部50aに電気配線56を接続するための貫通孔50bを設けたが、供試体が配線を不要なものである場合には、前記貫通孔50bを省略することが可能である。
【0050】
また、上記実施形態では、環境試験装置において試験槽2の試験空間S1内に高温空気と低温空気を交互に導入して供試体の環境温度を高温と低温に交互に繰り返し変化させる場合を例にとって説明したが、環境試験装置では、試験空間S1に高温空気を導入して供試体の環境温度を高温から低温へのみ変化させる場合や、試験空間S1に低温空気を導入して供試体の環境温度を低温から高温へのみ変化させる場合もあり、これらの場合でも本発明を適用した環境試験装置では、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0051】
また、上記実施形態による環境試験装置では、供試体の環境温度を高温にする場合には、熱気のみが混合室4に導入される一方、供試体の環境温度を低温にする場合には、冷気のみが混合室4に導入されるようにしたが、これに限らず、熱気分流機構16と冷気分流機構10を制御することにより、熱気と冷気を所定の流量比で混合室4に流入させてそれら熱気と冷気が混合されることによって、供試体の環境温度を高温にするための高温空気と、供試体の環境温度を低温にするための低温空気が混合室4で生成されるようにしてもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、風洞部50を構成する壁部を板金製としたが、これに限らず、風洞部50を板金以外の材料を用いて形成してもよい。例えば、ポリイミドフィルムやその他の樹脂フィルムを用いて風洞部50を形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施形態による環境試験装置の構成を示した流路図である。
【図2】本発明の一実施形態による環境試験装置の試験槽の全体構造を示した斜視図である。
【図3】図2に示した試験槽の内部構造を示した斜視図である。
【図4】図2に示した試験槽内に設置する風洞部の構造を示した斜視図である。
【符号の説明】
【0054】
2 試験槽
42 流入部
44 流入側連結部
46 流出部
48 流出側連結部
50 風洞部
50b 貫通孔
52 支持台
54 位置固定手段
56 電気配線
100 基板
S1 試験空間
S2 流通空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供試体が収容される試験空間を内部に有する試験槽を備え、前記試験空間内に高温のガス又は低温のガスの少なくとも一方を導入可能な環境試験装置であって、
前記試験槽に設けられ、外部から前記試験空間に前記ガスを導入する流入部と、
前記試験槽に設けられ、前記試験空間から外部へ前記ガスを流出させる流出部と、
前記流入部と前記流出部の間で前記試験空間内に着脱可能に設けられ、前記流入部から導入されたガスが流通するとともに前記供試体が設置される流通空間を内部に有する風洞部とを備えた、環境試験装置。
【請求項2】
前記風洞部を構成する壁部は、前記試験槽を構成する壁部よりも薄肉に形成されており、
前記風洞部は、その外面と前記試験槽の内面との間に隙間を有する状態で前記試験空間に設けられている、請求項1に記載の環境試験装置。
【請求項3】
前記試験槽内には、前記風洞部を載置するための支持台と、前記支持台に対して前記風洞部の位置を固定するための位置固定手段とが設けられている、請求項1または2に記載の環境試験装置。
【請求項4】
前記供試体は、基板上に装着された電子部品であり、
前記風洞部を構成する壁部には、前記基板に電気配線を接続するための貫通孔が設けられている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の環境試験装置。
【請求項5】
前記試験槽に着脱可能に設けられ、前記流入部と前記風洞部の流入側端部とを連結する流入側連結部と、
前記試験槽に着脱可能に設けられ、前記流出部と前記風洞部の流出側端部とを連結する流出側連結部とを備え、
前記流入側連結部は、前記流入部の開口形状に対応した形状をもつ流入口と、前記風洞部の流入側端部の開口形状に対応した形状をもつ流出口とを有し、
前記流出側連結部は、前記風洞部の流出側端部の開口形状に対応した形状をもつ流入口と、前記流出部の開口形状に対応した形状をもつ流出口とを有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の環境試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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