説明

環境負荷評価支援システム、環境負荷評価支援方法及び環境負荷評価支援プログラム

【課題】自動車の走行における二酸化炭素の排出量の評価に用いる原単位マップの作成を支援するための環境負荷評価支援システム、環境負荷評価支援方法及び環境負荷評価支援プログラムを提供する。
【解決手段】環境負荷評価支援システム20の制御部21は、エンジンのカテゴリの特定処理を実行する。そして、トルクカーブ推定処理において、自動車諸元表からエンジン特性情報を取得し、代表トルクカーブデータ記憶部24に記録されたカテゴリを利用してトルクカーブを生成する。次に、エンジンマップ推定処理において、制御部21は、定義した最大CO2排出回転数を用いて基準回転数を設定する。そして、原単位算出関数データ記憶部25に記録されたカテゴリを用いて仮想マップを生成する。更に、燃費基準試験の燃費と仮想マップに基づく燃費とを比較し、誤差が小さくなるように、CO2排出原単位の修正処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の走行における二酸化炭素の排出量の評価を支援するための環境負荷評価支援システム、環境負荷評価支援方法及び環境負荷評価支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
今日、環境に対する二酸化炭素排出の影響が注目されている。例えば、施設や設備の環境に及ぼす影響をシミュレーションすることにより、環境共存型地域の構築をサポートするための環境影響シミュレーション装置が検討されている(例えば、特許文献1を参照。)。この文献に記載された環境影響シミュレーション装置においては、施設や設備を含むシステムに関連する複数のパラメータ値を入力する。そして、入力されたパラメータ値に基づいて、システムに係わるコストを演算する。更に、入力されたパラメータ値に基づいて、所定期間においてシステムから環境に放出される二酸化炭素の放出量を演算し、算出されたコスト及び放出量を記憶する。
【0003】
また、自動車分野においても、二酸化炭素排出量を評価する試みが行なわれている。例えば、環境省においては、大気環境における自動車対策についてガソリン及びディーゼル重量車両車速変換プログラムを公表している(例えば、非特許文献1を参照。)。このプログラムを利用することにより、速度や加速度からなる走行特性や、積載重量からなる運行特性、更に車両特性から、空気抵抗、加速抵抗、転がり抵抗、勾配抵抗を考慮してトルクや回転数を算出することができる。
【0004】
更に、車速変換プログラムを用いて算出したトルクや回転数を用いて、公知のエンジンマップ解析により、二酸化炭素排出量を算出する技術が検討されている(例えば、非特許文献2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−556号公報(第1頁)
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】環境省、「ガソリン及びディーゼル重量車用車速変換プログラム」、[online]、[平成21年7月5日検索]、インターネット、<URL:http://www.env.go.jp/air/car/program/index.html >
【非特許文献2】独立行政法人 交通安全環境研究所、「自動車分野のCO2排出量評価プログラムの開発」、[online]、[21年7月5日検索]、インターネット、<URL:http://www.ntsel.go.jp/ronbun/happyoukai/forum2007files/3_forum2007_.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、自動車から排出される二酸化炭素の排出量を評価する場合、エンジン回転数やエンジントルクを変数とするエンジンマップを用いる必要がある。このエンジンマップを用いることにより、エンジン回転数及びエンジントルクに対応して、1時間あたりに排出される二酸化炭素量を計算することができる。
【0008】
しかしながら、すべての自動車のエンジンについてのエンジンマップが公開されているわけではない。また、自動車のエンジンの種類も多く、すべてのエンジンについてエンジ
ンマップを作成することは困難である。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、自動車の走行における二酸化炭素の排出量の評価に用いる原単位マップの作成を支援するための環境負荷評価支援システム、環境負荷評価支援方法及び環境負荷評価支援プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、エンジンのカテゴリ毎に、回転数及びトルクに対して二酸化炭素排出量の原単位が設定された代表マップを記録した原単位算出情報記憶手段と、自動車の燃費基準試験における走行モードの燃費を記録した燃費情報記憶手段と、評価対象の自動車のエンジンの二酸化炭素排出量を評価する原単位マップを生成する制御手段とを備えた環境負荷評価支援システムであって、前記制御手段が、評価対象の自動車のエンジン型式が属するカテゴリの代表マップを、前記原単位算出情報記憶手段から取得するマップ特定手段と、前記燃費情報記憶手段から、評価対象の自動車の燃費を第1の燃費として取得し、前記原単位算出情報記憶手段から取得した代表マップを用いて、前記燃費基準試験の走行モードによる走行シミュレーションを行なって第2の燃費として算出し、前記第1の燃費と前記第2の燃費とを比較し、その差が基準値より大きい場合には、前記第1の燃費と第2の燃費との燃費比率を用いて前記代表マップを補正して原単位マップとして出力する原単位マップ生成手段とを備えたことを要旨とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の環境負荷評価支援システムにおいて、前記原単位マップ生成手段は、前記燃費基準試験の走行モードにおいて用いられるエンジンの回転数域を特定し、前記回転数域における二酸化炭素排出量の原単位を補正することを要旨とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の環境負荷評価支援システムにおいて、前記燃費基準試験における走行モードには、都市内走行モード及び都市間走行モードが含まれており、前記原単位マップ生成手段は、前記都市内走行モードにおける第1の燃費を取得し、都市内走行モードによる走行シミュレーションにより第2の燃費を算出し、都市内走行モードにおける燃費比率を算出し、この燃費比率を用いて二酸化炭素排出量の原単位全体を補正し、都市間走行モードにおける第1の燃費を取得し、都市間走行モードによる走行シミュレーションにより第2の燃費を算出し、都市間走行モードにおける燃費比率を算出し、この燃費比率を用いて、都市間走行モードにおいて使用するエンジンの回転数域の二酸化炭素排出量の原単位を補正することを要旨とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一つに記載の環境負荷評価支援システムにおいて、自動車のエンジン型式毎に二酸化炭素排出量を実測した実測マップを記憶した実測情報記憶手段を備え、前記マップ特定手段は、前記実測情報記憶手段から評価対象の自動車のエンジン型式の実測マップを取得することを要旨とする。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の環境負荷評価支援システムにおいて、前記原単位算出情報記憶手段には、二酸化炭素の排出量が最大になると予測される最大予測回転数を変数とする基準回転数に対して、前記最大予測回転数のトルクの相対値を変数として二酸化炭素排出量の原単位を算出するための関数が記録されており、前記マップ特定手段が、前記実測情報記憶手段から評価対象の自動車のエンジン型式の実測マップを取得できない場合、評価対象の自動車の最大トルク回転数及び最大出力回転数を取得し、前記最大トルク回転数と最大出力回転数に基づいて最大予測回転数を特定し、前記最大予測回転数を変数にして基準回転数を算出し、前記原単位算出情報記憶手段に記憶された関数を用いて原単位マップを生成することを要旨とする。
【0015】
請求項6に記載の発明は、エンジンのカテゴリ毎に、回転数及びトルクに対して二酸化炭素排出量の原単位が設定された代表マップを記録した原単位算出情報記憶手段と、自動車の燃費基準試験における走行モードの燃費を記録した燃費情報記憶手段と、評価対象の自動車のエンジンの二酸化炭素排出量を評価する原単位マップを生成する制御手段とを備えた環境負荷評価支援システムを用いて、環境負荷の評価を支援する方法であって、前記制御手段が、評価対象の自動車のエンジン型式が属するカテゴリの代表マップを、前記原単位算出情報記憶手段から取得するマップ特定段階と、前記燃費情報記憶手段から、評価対象の自動車の燃費を第1の燃費として取得し、前記原単位算出情報記憶手段から取得した代表マップを用いて、前記燃費基準試験の走行モードによる走行シミュレーションを行なって第2の燃費として算出し、前記第1の燃費と前記第2の燃費とを比較し、その差が基準値より大きい場合には、前記第1の燃費と第2の燃費との燃費比率を用いて前記代表マップを補正して原単位マップとして出力する原単位マップ生成段階とを実行することを要旨とする。
【0016】
請求項7に記載の発明は、エンジンのカテゴリ毎に、回転数及びトルクに対して二酸化炭素排出量の原単位が設定された代表マップを記録した原単位算出情報記憶手段と、自動車の燃費基準試験における走行モードの燃費を記録した燃費情報記憶手段と、評価対象の自動車のエンジンの二酸化炭素排出量を評価する原単位マップを生成する制御手段とを備えた環境負荷評価支援システムを用いて、環境負荷の評価を支援するためのプログラムであって、前記制御手段を、評価対象の自動車のエンジン型式が属するカテゴリの代表マップを、前記原単位算出情報記憶手段から取得するマップ特定手段、前記燃費情報記憶手段から、評価対象の自動車の燃費を第1の燃費として取得し、前記原単位算出情報記憶手段から取得した代表マップを用いて、前記燃費基準試験の走行モードによる走行シミュレーションを行なって第2の燃費として算出し、前記第1の燃費と前記第2の燃費とを比較し、その差が基準値より大きい場合には、前記第1の燃費と第2の燃費との燃費比率を用いて前記代表マップを補正して原単位マップとして出力する原単位マップ生成手段として機能させることを要旨とする。
【0017】
(作用)
請求項1、6又は7に記載の発明によれば、制御手段が、評価対象の自動車のエンジン型式が属するカテゴリの代表マップを、原単位算出情報記憶手段から取得する。そして、燃費情報記憶手段から、評価対象の自動車の燃費を第1の燃費として取得する。また、原単位算出情報記憶手段から取得した代表マップを用いて、燃費基準試験の走行モードによる走行シミュレーションを行なって第2の燃費として算出する。そして、第1の燃費と第2の燃費とを比較し、その差が基準値より大きい場合には、第1の燃費と第2の燃費との燃費比率を用いて代表マップを補正して原単位マップとして出力する。これにより、燃費基準試験において実測された燃費を用いて、二酸化炭素排出量の原単位を調整することができる。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、制御手段は、燃費基準試験の走行モードにおいて用いられるエンジンの回転数域を特定し、回転数域における二酸化炭素排出量の原単位を補正する。これにより、燃費基準試験の走行モードのエンジン回転数に対応させて、二酸化炭素排出量の原単位を調整し、より的確な原単位を算出することができる。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、制御手段は、都市内走行モードにおける第1の燃費を取得し、都市内走行モードによる走行シミュレーションにより第2の燃費を算出し、都市内走行モードにおける燃費比率を算出し、この燃費比率を用いて二酸化炭素排出量の原単位全体を補正する。更に、制御手段は、都市間走行モードにおける第1の燃費を取得し、都市間走行モードによる走行シミュレーションにより第2の燃費を算出し、都市間走行モ
ードにおける燃費比率を算出し、この燃費比率を用いて、都市間走行モードにおいて使用するエンジンの回転数域の二酸化炭素排出量の原単位を補正する。都市内走行モードにおいては、広い範囲のエンジン回転数が用いられるため、二酸化炭素排出量の原単位全体を調整し、都市間走行モードにおいては、高回転数域の原単位を調整することができる。
【0020】
請求項4に記載の発明によれば、制御手段が、実測情報記憶手段から評価対象の自動車のエンジン型式の実測マップを取得する。これにより、エンジンを用いて実測されたマップを、自動車の燃費に合わせて原単位を調整することができる。
【0021】
請求項5に記載の発明によれば、制御手段が、実測情報記憶手段から評価対象の自動車のエンジン型式の実測マップを取得できない場合、評価対象の自動車の最大トルク回転数及び最大出力回転数を取得し、前記最大トルク回転数と最大出力回転数に基づいて最大予測回転数を特定する。そして、最大予測回転数を変数にして基準回転数を算出し、前記原単位算出情報記憶手段に記憶された関数を用いて原単位マップを生成する。これにより、エンジンを用いて実測されたマップがない場合にも、二酸化炭素排出量が最大になる回転数を中心にして、原単位マップを生成することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、自動車の走行における二酸化炭素の排出量の評価に用いる原単位マップの作成を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態のシステム概略図。
【図2】本発明の各データ記憶部に記録されたデータの説明図であって、(a)は自動車諸元データ記憶部、(b)はエンジンカテゴリデータ記憶部、(c)は代表トルクカーブデータ記憶部に記録されたデータの説明図。
【図3】本発明の各データ記憶部に記録されたデータの説明図であって、(a)は原単位算出関数データ記憶部、(b)は試験結果データ記憶部、(c)は実測マップデータ記憶部に記録されたデータの説明図。
【図4】本実施形態の処理手順の説明図。
【図5】本実施形態の処理手順の説明図。
【図6】本実施形態の処理手順の説明図。
【図7】トルク及び出力の回転数依存性についての説明図。
【図8】最大CO2排出回転数の決定についての説明図であって、(a)は最大トルク回転数において二酸化炭素排出量が最大になる場合、(b)は最大トルク回転数及び最大出力回転数の間で二酸化炭素排出量が最大になる場合の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を具体化した一実施形態を、図1〜図8を用いて説明する。本実施形態では、自動車の走行における二酸化炭素(CO2)の排出量の評価を支援する場合を想定する。本実施形態では、CO2排出量を算出するためのCO2排出量の原単位マップ(CO2排出原単位マップ)を生成する。このCO2排出原単位マップを用いることにより、エンジン回転数及びエンジントルクに基づいてCO2排出量を算出することができる。このCO2排出原単位マップを作成するために、図1に示すように、環境負荷評価支援システム20を用いる。
【0025】
環境負荷評価支援システム20は、入力部11、出力部12に接続されている。そして、環境負荷評価支援システム20は、制御部21、自動車諸元データ記憶部22、エンジンカテゴリデータ記憶部23、代表トルクカーブデータ記憶部24、原単位算出関数データ記憶部25、試験結果データ記憶部26、実測マップデータ記憶部27を備えている。
【0026】
入力部11は、利用者が入力した各種情報を取得するデバイスであり、キーボードやポインティングデバイスなどにより構成される。
出力部12は、環境負荷評価支援システム20により算出されたCO2排出原単位マップを出力するデバイスであり、ディスプレイにより構成される。
【0027】
更に、環境負荷評価支援システム20の制御部21は、図示しないCPU等の制御手段、RAM及びROM等のメモリを有し、評価対象の自動車のエンジンの二酸化炭素排出量を評価する原単位マップを生成する。具体的には、後述する処理(トルクカーブ推定段階、エンジンマップ推定段階の各処理等)を行なう。このための環境負荷評価支援プログラムを実行することにより、環境負荷評価支援システム20の制御部21は、図1に示すように、トルクカーブ推定手段21a及びエンジンマップ推定手段21bとして機能する。
【0028】
トルクカーブ推定手段21aは、入力部11から取得した車種情報に基づいて、図7に示すようなトルクカーブを生成する。このトルクカーブにおいては、エンジントルク値のエンジン回転数依存性を表わす。
【0029】
エンジンマップ推定手段21bは、マップ特定手段、原単位マップ生成手段として機能し、トルクカーブ推定手段21aにおいて算出されたトルクカーブを用いて、CO2排出量を評価するためのCO2排出原単位マップを生成する。このためのマップ特定段階、原単位マップ生成段階の処理を実行する。
【0030】
このトルクカーブ推定手段21aは、エンジン情報取得手段211、パラメータ算出手段212、トルク特性算出手段213から構成されている。
エンジン情報取得手段211は、入力部11から取得した情報に基づいて、エンジンの諸元情報を取得する処理を実行する。
【0031】
パラメータ算出手段212は、エンジンの諸元情報に基づいて、トルクカーブを生成するためのパラメータを算出する処理を実行する。
トルク特性算出手段213は、エンジンの諸元情報や算出したパラメータに基づいてエンジントルクの特性(トルクカーブ)を算出する処理を実行する。
【0032】
エンジンマップ推定手段21bは、エンジンマップ検索手段214、仮想マップ作成手段215、マップ補正手段216、マップ出力手段217から構成されている。
エンジンマップ検索手段214は、実測マップデータ記憶部27から、実測されたエンジンマップを検索する処理を実行する。エンジンマップを取得した場合には、エンジンマップ検索手段214は、このエンジンマップを、後述するマップ仮記憶メモリに記録する。
【0033】
仮想マップ作成手段215は、実測マップデータ記憶部27にエンジンマップが登録されていない場合に、仮想的なエンジンマップ(仮想マップ)を生成し、この仮想マップをマップ仮記憶メモリに記録する処理を実行する。
【0034】
マップ補正手段216は、マップ仮記憶メモリを保持しており、このメモリに記憶された仮想マップを調整する処理を実行する。具体的には、マップ補正手段216は、燃費基準試験において用いられる都市内走行モード及び都市間走行モードの走行パターン(エンジン回転数、時間)に関するデータを保持している。ここで、都市内走行モードは、道路運送車両の保安基準の細目に規定されるJE05モード法による走行を意味し、都市間走行モードは、所定の縦断勾配付き80Km毎時定速モード法による走行を意味する。そして、マップ補正手段216は、マップ仮記憶メモリに記憶された仮想マップを用いて、都
市内走行モード及び都市間走行モードの各モードの燃費値を算出し、エンジンマップを調整したCO2排出原単位マップを生成する。更に、マップ補正手段216は、ループ回数カウンタを備え、仮想マップの調整処理におけるループ回数を計数する。
マップ出力手段217は、原単位マップを出力部12に出力する処理を実行する。
【0035】
自動車諸元データ記憶部22は、図2(a)に示すように、各車種の自動車におけるエンジン性能を示した自動車諸元レコード220を記憶する。この自動車諸元レコード220は、販売される自動車のカタログ等により開示された公表情報から取得した場合に登録される。自動車諸元レコード220は、車種、エンジン識別子、最大トルク、最大トルク回転数、最大出力、最大出力回転数に関するデータを含んで構成される。
【0036】
車種データ領域には、各自動車の車種を特定するための識別子に関するデータが記録される。本実施形態においては、製造メーカや形式、製造年月日などに関する情報を記録しておく。
【0037】
エンジン識別子データ領域には、この車種のエンジン形式を特定するための識別子に関するデータが記録される。
最大トルクデータ領域には、この車種のエンジンの最大トルクに関するデータが記録される。図7に示すトルクカーブにおいては、最大トルクはトルク値T2によって表されている。
【0038】
最大トルク回転数データ領域には、この最大トルクを発揮するエンジン回転数に関するデータが記録される。図7においては、最大トルク回転数は回転数Ne2によって表されている。
【0039】
最大出力データ領域には、この車種のエンジンの最大出力に関するデータが記録される。
最大出力回転数データ領域には、この最大出力を発揮するときのエンジン回転数に関するデータが記録される。図7においては、最大出力回転数は回転数Ne3によって表されている。
【0040】
エンジンカテゴリデータ記憶部23は、図2(b)に示すように、各エンジンが属するカテゴリを決定するエンジンカテゴリレコード230を記憶する。エンジンカテゴリレコード230は、各自動車のエンジンについてカテゴリを決定した場合に登録される。本実施形態においては、各エンジンのトルクカーブの形状を分析し、共通する形状により8個のカテゴリに分類されている。このエンジンカテゴリレコード230には、各エンジンのエンジン識別子、カテゴリ識別子に関するデータを含んで構成される。
【0041】
エンジン識別子データ領域には、エンジン形式を特定するための識別子に関するデータが記録される。
カテゴリ識別子データ領域には、エンジンを分類したカテゴリを特定するための識別子に関するデータが記録される。
【0042】
代表トルクカーブデータ記憶部24は、図2(c)に示すように、各エンジンのトルクカーブを複数のカテゴリに分類した代表トルクカーブレコード240を記憶する。この代表トルクカーブレコード240は、各カテゴリに属するトルクカーブを決定した場合に登録される。この代表トルクカーブレコード240は、カテゴリ識別子、アイドリング回転数算出式、最大回転数算出式、アイドリングトルク算出式、最大出力トルク算出式、最大回転数トルク算出式に関するデータを含んで構成される。
【0043】
カテゴリ識別子データ領域には、エンジンを分類したカテゴリを特定するための識別子に関するデータが記録される。
アイドリング回転数算出式データ領域には、このカテゴリにおけるアイドル時のエンジン回転数(図7においては回転数Ne1)を算出するための関数が記録される。本実施形態では、アイドリング回転数として定数を用いる。
【0044】
最大回転数算出式データ領域には、このカテゴリにおける最大のエンジン回転数(図7においては回転数Ne4)を算出するための関数が記録される。本実施形態では、最大回転数として、最大出力回転数を変数とする一次関数を用いる。
【0045】
アイドリングトルク算出式データ領域には、このカテゴリに属するエンジンにおけるアイドル時のトルク(図7においてはトルク値T1)を算出するための関数データが記録される。本実施形態では、アイドリングトルクとして、最大トルク値を変数とする一次関数を用いる。
【0046】
最大出力トルク算出式データ領域には、このカテゴリに属するエンジンにおける出力最大時のトルクの最大値(図7においてはトルク値T3)を算出するための関数が記録される。本実施形態では、最大出力トルクとして、最大トルク値を変数とする一次関数を用いる。
【0047】
最大回転数トルク算出式データ領域には、このカテゴリに属するエンジンにおいて最大回転数におけるトルク(図7においてはトルク値T4)を算出するための関数が記録される。本実施形態では、最大回転数トルクとして、最大トルク値を変数とする一次関数を用いる。
【0048】
原単位算出関数データ記憶部25は原単位算出情報記憶手段として機能し、図3(a)に示すように、CO2排出原単位を算出するための原単位算出関数レコード250を記憶する。この原単位算出関数レコード250は、各カテゴリに属するエンジンのCO2排出原単位を決定した場合に登録される。原単位算出関数レコード250は、カテゴリ識別子、アイドリング時原単位算出式、基準回転数算出式毎に原単位算出式に関するデータを含んで構成される。
【0049】
カテゴリ識別子データ領域には、エンジンを分類したカテゴリを特定するための識別子に関するデータが記録される。
アイドリング時原単位算出式データ領域には、このカテゴリに属するエンジンにおけるアイドル時のCO2排出量原単位を算出するための関数が記録される。本実施形態においては、アイドリング時原単位算出式は、後述するようにトルクの相対値を変数とする関数として表現される。
【0050】
基準回転数算出式データ領域には、このカテゴリに属するエンジンにおけるCO2排出量の原単位を算出するエンジン回転数の算出式が記録される。本実施形態においては、第1〜第n基準回転数を用いるものとする。この第1〜第n基準回転数は、CO2の排出量が最大になると予測される最大予測回転数(最大CO2排出回転数NeCO2)及びその定数倍した回転数を用いる。
【0051】
原単位算出式データ領域には、各基準回転数におけるCO2排出量を算出するための関数が記録される。本実施形態においては、原単位算出式は、CO2排出原単位をトルクの相対値を変数とする関数として表現される。この相対トルク値として、各基準回転数におけるトルク値を最大CO2排出回転数におけるトルク値により除算した値を用いる。この原単位算出式により、エンジンの回転数及びトルクに対して二酸化炭素排出量の原単位が
設定された代表マップを生成することができる。
【0052】
試験結果データ記憶部26は燃費情報記憶手段として機能し、図3(b)に示すように、燃費基準試験における試験結果について試験結果レコード260を記憶する。この試験結果レコード260は、各エンジンの燃費試験が行なわれた場合に登録される。試験結果レコード260は、車種、都市内走行モード燃費、都市間走行モード燃費に関するデータを含んで構成される。
【0053】
車種データ領域には、各自動車の車種を特定するための識別子に関するデータが記録される。
都市内走行モード燃費データ領域には、予め定められた都市内走行モード(JEO5モード)による基準試験によって測定された燃費値に関するデータが記録される。
都市間走行モード燃費データ領域には、予め定められた都市間走行モードによる基準試験によって測定された燃費値に関するデータが記録される。
【0054】
実測マップデータ記憶部27は実測情報記憶手段として機能し、図3(c)に示すように、エンジン評価試験において実測されたエンジンマップレコード270を記憶する。このエンジンマップレコード270は、エンジンについての評価試験において、エンジン特性を実測した場合に登録される。このエンジンマップレコード270には、エンジン評価試験を行なったエンジンのエンジン識別子に対して、エンジン回転数及びエンジントルクを変数としてCO2排出原単位を記録した3次元マップが記録されている。このCO2排出原単位は、エンジン回転数及びエンジントルクにおいて単位時間に消費された燃料に含まれる炭素含有量から算出することができる。
【0055】
上記のように構成されたシステムを用いて、エンジンマップを生成するための処理手順を、図4〜図8に従って説明する。ここでは、まず、トルクカーブ推定処理(図4)を説明し、エンジンマップ推定処理(図5)、マップ補正処理(図6)を説明する。
【0056】
(トルクカーブ推定処理)
まず、図4を用いて、トルクカーブ推定手段21aにおいて実行されるトルクカーブ推定処理を説明する。
【0057】
ここでは、環境負荷評価支援システム20の制御部21は、エンジンのカテゴリの特定処理を実行する(ステップS1−1)。具体的には、CO2排出原単位マップを作成する場合、環境負荷評価支援システム20において、環境負荷評価支援プログラムを起動する。この場合、制御部21のエンジン情報取得手段211は、出力部12に車種入力画面を表示する。この車種入力画面には、評価対象の自動車の車種を設定するための入力欄が設けられている。
【0058】
そして、入力部11を用いて車種が設定された場合、制御部21のエンジン情報取得手段211は、自動車諸元データ記憶部22から、評価対象の車種のエンジン識別子を取得する。次に、エンジン情報取得手段211は、取得したエンジン識別子が記録されたカテゴリ識別子を、エンジンカテゴリデータ記憶部23を用いて特定する。
【0059】
次に、環境負荷評価支援システム20の制御部21は、自動車諸元表から最大トルク、最大トルク回転数、最大出力回転数の取得処理を実行する(ステップS1−2)。具体的には、制御部21のエンジン情報取得手段211は、入力部11において設定されたエンジン識別子を取得する。そして、エンジン情報取得手段211は、自動車諸元データ記憶部22から、取得したエンジン識別子が記録された自動車諸元レコード220の最大トルク、最大トルク回転数、最大出力回転数を取得する。
【0060】
次に、環境負荷評価支援システム20の制御部21は、最大回転数の算出処理を実行する(ステップS1−3)。具体的には、制御部21のパラメータ算出手段212は、カテゴリ識別子が記録された代表トルクカーブレコード240から、最大回転数算出式を取得する。そして、パラメータ算出手段212は、取得した最大回転数算出式に最大出力回転数を代入して最大回転数を算出する。
【0061】
次に、環境負荷評価支援システム20の制御部21は、アイドル回転数の算出処理を実行する(ステップS1−4)。具体的には、制御部21のパラメータ算出手段212は、カテゴリ識別子が記録された代表トルクカーブレコード240から、アイドリング回転数算出式を取得する。本実施形態においては、パラメータ算出手段212は、アイドリング回転数として定数を取得する。
【0062】
次に、環境負荷評価支援システム20の制御部21は、最大トルクを用いてトルクカーブの生成処理を実行する(ステップS1−5)。具体的には、制御部21のトルク特性算出手段213は、カテゴリ識別子が記録された代表トルクカーブレコード240から、アイドリングトルク算出式、最大出力トルク算出式及び最大回転数トルク算出式を取得する。そして、トルク特性算出手段213は、各算出式に最大トルクを代入して、アイドリングトルク、最大出力トルク及び最大回転数トルクの各値を算出する。
【0063】
次に、トルク特性算出手段213は、第1軸をエンジン回転数、第2軸をトルクとする座標系において、アイドル回転数、最大トルク回転数、最大出力回転数、最大回転数に対して、アイドリングトルク、最大トルク、最大出力トルク及び最大回転数トルクをプロットする。そして、トルク特性算出手段213は、アイドリングトルク、最大トルク、最大出力トルク及び最大回転数トルクの各プロットを直線補間したトルクカーブを生成する。
【0064】
次に、環境負荷評価支援システム20の制御部21は、後述するエンジンマップ推定処理を実行する(ステップS1−6)。具体的には、制御部21のエンジンマップ推定手段21bが、トルクカーブ推定手段21aにおいて生成されたトルクカーブを用いてエンジンマップ推定処理を実行する。
【0065】
(エンジンマップ推定処理)
次に、図5を用いて、エンジンマップ推定手段21bにおいて実行されるエンジンマップ推定処理を説明する。
【0066】
ここでは、環境負荷評価支援システム20の制御部21は、対象車種の自動車諸元表に基づいてエンジン型式の参照処理を実行する(ステップS2−1)。具体的には、制御部21のエンジンマップ検索手段214は、自動車諸元データ記憶部22から、入力部11により設定された評価対象の車種のエンジン識別子を取得する。
【0067】
次に、環境負荷評価支援システム20の制御部21は、エンジンマップが登録されているかどうかについての判定処理を実行する(ステップS2−2)。具体的には、制御部21のエンジンマップ検索手段214は、実測マップデータ記憶部27において、評価対象のエンジン識別子が付与されたエンジンマップを検索する。
【0068】
実測マップデータ記憶部27においてエンジンマップが登録されている場合(ステップS2−2において「YES」の場合)、環境負荷評価支援システム20の制御部21は、実測されたエンジンマップの取得処理を実行する(ステップS2−3)。具体的には、制御部21のエンジンマップ検索手段214は、実測マップデータ記憶部27から、評価対象のエンジン識別子に関連付けられたエンジンマップを取得する。そして、エンジンマッ
プ検索手段214は、このエンジンマップを仮想マップとしてマップ仮記憶メモリに記録する。
【0069】
一方、実測マップデータ記憶部27においてエンジンマップが登録されていない場合(ステップS2−2において「NO」の場合)、環境負荷評価支援システム20の制御部21は、仮想マップを生成する。ここでは、環境負荷評価支援システム20の制御部21は、CO2排出量が最も高いエンジン回転数域を特定する。具体的には、環境負荷評価支援システム20の制御部21は、対象車両の最大トルク回転数、最大出力回転数の取得処理を実行する(ステップS2−4)。具体的には、制御部21の仮想マップ作成手段215は、自動車諸元データ記憶部22から、評価対象の車種の最大トルク回転数、最大出力回転数を取得する。
【0070】
次に、環境負荷評価支援システム20の制御部21は、最大トルク回転数と最大出力回転数の回転数差の算出処理を実行する(ステップS2−5)。具体的には、制御部21の仮想マップ作成手段215は、取得した最大トルク回転数から最大出力回転数を差し引いた回転数の絶対値(回転数差)を算出する。
【0071】
そして、環境負荷評価支援システム20の制御部21は、回転数差が200rpm以内かどうかについての判定処理を実行する(ステップS2−6)。
最大トルク回転数及び最大出力回転数の回転数差が200rpmより大きい場合(ステップS2−6において「NO」の場合)、環境負荷評価支援システム20の制御部21は、最大トルク回転数と最大出力回転数の中央値を最大CO2排出回転数と定義する(ステップS2−7)。具体的には、制御部21の仮想マップ作成手段215は、図8(a)に示すように、最大トルク回転数と最大出力回転数との平均値を算出し、最大出力回転数(NeCO2)として特定する。
【0072】
一方、最大トルク回転数及び最大出力回転数の回転数差が200rpm以内の場合(ステップS2−6において「YES」の場合)、環境負荷評価支援システム20の制御部21は、最大トルク回転数を最大CO2排出回転数と定義する(ステップS2−8)。具体的には、制御部21の仮想マップ作成手段215は、図8(b)に示すように、最大トルク回転数を最大出力回転数(NeCO2)として特定する。
【0073】
次に、環境負荷評価支援システム20の制御部21は、CO2排出原単位を算出する各基準回転数の設定処理を実行する(ステップS2−9)。ここでは、制御部21の仮想マップ作成手段215は、最大CO2排出回転数に対して定数倍した回転数を算出する。具体的には、仮想マップ作成手段215は、原単位算出関数データ記憶部25に記録されたカテゴリ識別子が記録された原単位算出関数レコード250の各基準回転数算出式を取得する。そして、仮想マップ作成手段215は、各基準回転数算出式に、最大CO2排出回転数を代入して各基準回転数を算出する。そして、仮想マップ作成手段215は、アイドリング回転数〜最大回転数の範囲に含まれる基準回転数のみを抽出し、マップ仮記憶メモリに記録する。
【0074】
次に、環境負荷評価支援システム20の制御部21は、仮想マップの生成処理を実行する(ステップS2−10)。具体的には、制御部21の仮想マップ作成手段215は、トルクカーブ推定手段21aにおいて算出したトルクカーブを用いて、各基準回転数におけるトルク値を取得する。更に、仮想マップ作成手段215は、各トルク値を最大CO2排出回転数におけるトルク値により除算した相対トルク値を算出する。次に、仮想マップ作成手段215は、原単位算出関数レコード250の各原単位算出式に相対トルク値を代入してCO2排出原単位を算出する。そして、仮想マップ作成手段215は、各基準回転数に対して、CO2排出原単位を関連付けた仮想マップを生成し、マップ仮記憶メモリに記
録する。
【0075】
次に、環境負荷評価支援システム20の制御部21は、後述するマップ補正処理を実行する(ステップS2−11)。具体的には、制御部21のマップ補正手段216が、マップ仮記憶メモリに記憶された仮想マップを実測された燃費値に対応させるための調整を行なう。
【0076】
次に、環境負荷評価支援システム20の制御部21は、CO2排出原単位マップの出力処理を実行する(ステップS2−12)。具体的には、制御部21のマップ出力手段217は、マップ仮記憶メモリに格納されたマップをCO2排出原単位マップとして、出力部12に出力する。
【0077】
(マップ補正処理)
次に、図6を用いてマップ補正処理を説明する。
ここでは、環境負荷評価支援システム20の制御部21は、燃費基準試験の都市内走行モードにおける燃費(第1の燃費)の取得処理を実行する(ステップS3−1)。具体的には、制御部21のマップ補正手段216は、試験結果データ記憶部26から、評価対象の車種の都市内走行モードにおける燃費を取得する。そして、マップ補正手段216は、ループ回数カウンタをリセットして「0」回に設定する。
【0078】
次に、環境負荷評価支援システム20の制御部21は、都市内走行モードの燃費(第2の燃費)の計算処理を実行する(ステップS3−2)。具体的には、制御部21のマップ補正手段216は、都市内走行モードの走行パターンによる走行を行なった場合のCO2排出量を、マップ仮記憶メモリに記憶された仮想マップを用いて算出する。そして、マップ補正手段216は、算出したCO2排出量を単位走行距離における消費燃料量に換算し、この消費燃料量の逆数から燃費を算出する。
【0079】
次に、環境負荷評価支援システム20の制御部21は、燃費誤差が5%以内かどうかについての判定処理を実行する(ステップS3−3)。具体的には、制御部21のマップ補正手段216は、試験結果データ記憶部26から取得した燃費を、仮想マップに基づく燃費により除算した値(燃費比率)を算出する。そして、燃費誤差として、燃費比率と100%との差分を算出する。
【0080】
燃費誤差が5%を超えている場合(ステップS3−3において「NO」の場合)、環境負荷評価支援システム20の制御部21は、ループ上限を超えたかどうかについての判定処理を実行する(ステップS3−4)。具体的には、制御部21のマップ補正手段216は、ループ回数カウンタに記録された値を取得する。そして、この値がループ上限(本実施形態では、2回)を超えているかどうかについて判定する。
【0081】
ループ回数がループ上限を超えていない場合(ステップS3−4において「NO」の場合)、環境負荷評価支援システム20の制御部21は、調整対象の回転数領域の特定処理を実行する(ステップS3−5)。具体的には、制御部21のマップ補正手段216は、ループ回数カウンタに記録された値に「1」回を加算する。更に、マップ補正手段216は、都市内走行モードにおいては、調整対象の回転数領域として、アイドリング回転数〜最大回転数までの全回転数を特定する。
【0082】
次に、環境負荷評価支援システム20の制御部21は、CO2排出原単位の修正処理を実行する(ステップS3−6)。具体的には、制御部21のマップ補正手段216は、調整対象の回転数領域(ここでは、すべての回転数域)のCO2排出原単位の値に対して燃費比率を乗算してマップ仮記憶メモリを更新する。そして、ステップS3−2から処理を
繰り返す。
【0083】
一方、燃費誤差が5%以内の場合(ステップS3−3において「YES」の場合)や、ループ回数がループ上限を超えている場合(ステップS3−4において「YES」の場合)、環境負荷評価支援システム20の制御部21は、燃費基準試験の都市間走行モードにおける燃費(第1の燃費)の取得処理を実行する(ステップS3−7)。具体的には、制御部21のマップ補正手段216は、試験結果データ記憶部26から、評価対象の車種の都市間走行モードの燃費を取得する。そして、マップ補正手段216は、ループ回数カウンタをリセットして「0」回に設定する。
【0084】
次に、環境負荷評価支援システム20の制御部21は、都市間走行モードの燃費(第2の燃費)の計算処理を実行する(ステップS3−8)。具体的には、制御部21のマップ補正手段216は、都市間走行モードの走行パターンによる走行を行なった場合のCO2排出量を、マップ仮記憶メモリに記憶されたマップを用いて算出する。そして、マップ補正手段216は、算出したCO2排出量を単位走行距離における消費燃料量に換算し、この消費燃料量の逆数から燃費を算出する。
【0085】
次に、環境負荷評価支援システム20の制御部21は、燃費誤差が5%以内かどうかについての判定処理を実行する(ステップS3−9)。具体的には、制御部21のマップ補正手段216は、試験結果データ記憶部26から取得した燃費を、仮想マップに基づく燃費により除算した燃費比率を算出する。そして、燃費誤差として、燃費比率と100%との差分を算出する。
【0086】
燃費誤差が5%を超えている場合(ステップS3−9において「NO」の場合)、環境負荷評価支援システム20の制御部21は、ループ上限を超えたかどうかについての判定処理を実行する(ステップS3−10)。具体的には、制御部21のマップ補正手段216は、ループ回数カウンタに記録された値を取得する。そして、この値がループ上限(本実施形態では、2回)を超えているかどうかについて判定する。
【0087】
ループ回数がループ上限を超えていない場合(ステップS3−10において「NO」の場合)、環境負荷評価支援システム20の制御部21は、調整対象の回転数領域の特定処理を実行する(ステップS3−11)。具体的には、制御部21のマップ補正手段216は、ループ回数カウンタに記録された値に「1」回を加算する。そして、マップ補正手段216は、都市間走行モードにおいては、調整対象の回転数領域として、都市間走行モードにおける回転数域を特定する。
【0088】
次に、環境負荷評価支援システム20の制御部21は、都市間走行モードで使用する回転数域のCO2排出原単位の修正処理を実行する(ステップS3−12)。具体的には、制御部21のマップ補正手段216は、仮想マップにおいて、調整対象の回転数領域(ここでは、都市間走行モードの走行パターンで使用する回転数域)のCO2排出原単位の値に対して燃費比率を乗算してマップ仮記憶メモリを更新する。
【0089】
一方、燃費誤差が5%以内の場合(ステップS3−9において「YES」の場合)や、ループ回数がループ上限を超える場合(ステップS3−10において「YES」の場合)、環境負荷評価支援システム20の制御部21は、マップ補正処理を終了する。
【0090】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態においては、代表トルクカーブデータ記憶部24は、各エンジンのトルクカーブを複数のカテゴリに分類した代表トルクカーブレコード240を記憶する。この代表トルクカーブレコード240は、カテゴリ識別子、アイドリング回転数算出式、最
大回転数算出式、アイドリングトルク算出式、最大出力トルク算出式、最大回転数トルク算出式に関するデータを含んで構成される。この代表トルクカーブレコード240を用いることにより、カタログ等にエンジンの詳細情報が記載されていない場合にも、トルクカーブを生成することができる。そして、このトルクカーブを用いて、CO2排出量を評価するための原単位を生成することができる。
【0091】
(2)本実施形態においては、原単位算出関数データ記憶部25は、CO2排出原単位を算出するための原単位算出関数レコード250を記憶する。原単位算出関数レコード250は、カテゴリ識別子、アイドリング時原単位算出式、基準回転数算出式毎に原単位算出式に関するデータを含んで構成される。この原単位算出関数レコード250を用いることにより、実際のエンジンを用いて二酸化炭素の排出量の評価ができない状況においても、排出量を予測することができる。
【0092】
(3)本実施形態においては、そして、環境負荷評価支援システム20の制御部21は、回転数差が200rpm以内かどうかについての判定処理を実行する(ステップS2−6)。最大トルク回転数及び最大出力回転数の回転数差が200rpmより大きい場合(ステップS2−6において「NO」の場合)、環境負荷評価支援システム20の制御部21は、最大トルク回転数と最大出力回転数の中央値を最大CO2排出回転数と定義する(ステップS2−7)。一方、最大トルク回転数及び最大出力回転数の回転数差が200rpm以内の場合(ステップS2−6において「NO」の場合)、環境負荷評価支援システム20の制御部21は、最大トルク回転数を最大CO2排出回転数と定義する(ステップS2−8)。これにより、多くのエンジンにおける二酸化炭素の排出量の実測評価に基づいて、実測ができない場合においても排出量が最も多くなるエンジン回転数を予測することができる。
【0093】
そして、環境負荷評価支援システム20の制御部21は、CO2排出原単位を算出する各基準回転数の設定処理を実行する(ステップS2−9)。ここでは、最大CO2排出回転数に対して定数倍した回転数を算出する。これにより、最大CO2排出回転数を中心にした単位系を用いて、CO2排出原単位マップを取得することができる。
【0094】
(4)本実施形態においては、環境負荷評価支援システム20の制御部21は、都市内走行モードの燃費の計算処理を実行する(ステップS3−2)。そして、環境負荷評価支援システム20の制御部21は、燃費誤差が5%以内かどうかについての判定を行ない(ステップS3−3)、CO2排出原単位の修正処理を実行する(ステップS3−6)。これにより、公表されている燃費値に基づいて、予測したCO2排出原単位を修正し、より的確な原単位を取得することができる。特に、都市内走行モードにおいては、広範囲なエンジン回転数が含まれるため、全体的なCO2排出原単位の調整を行なうことができる。
【0095】
(5)本実施形態においては、環境負荷評価支援システム20の制御部21は、都市間走行モードの燃費の計算処理を実行する(ステップS3−8)。そして、環境負荷評価支援システム20の制御部21は、燃費誤差が5%以内かどうかについての判定処理を実行する(ステップS3−9)。そして、環境負荷評価支援システム20の制御部21は、都市間走行モードで使用する回転数域のCO2排出原単位の修正処理を実行する(ステップS3−12)。これにより、公表されている燃費値に基づいて、予測したCO2排出原単位を修正し、より的確な原単位を取得することができる。特に、都市間走行モードにおいては、高回転域のエンジン回転数が含まれるため、部分的なCO2排出原単位の調整を行なうことができる。
【0096】
(6)燃費誤差が5%を超えている場合(ステップS3−3、S3−9において「NO」の場合)、環境負荷評価支援システム20の制御部21は、ループ上限を超えたかどう
かについての判定処理を実行する(ステップS3−4、S3−10)。そして、ループ回数がループ上限を超える場合(ステップS3−4、S3−10において「YES」の場合)、環境負荷評価支援システム20の制御部21は、原単位の調整を終了する。これにより、必要以上の計算処理を抑制することができる。
【0097】
なお、上記各実施形態は以下のように変更してもよい。
・ 上記実施形態では、環境負荷評価支援システム20の制御部21は、エンジンのカテゴリの特定処理を実行する(ステップS1−1)。ここでは、入力部11を用いて車種が入力された場合、制御部21のエンジン情報取得手段211は、自動車諸元データ記憶部22から、評価対象の車種のエンジン識別子を取得する。これに代えて、自動車諸元データ記憶部22に記録されているエンジン特性に基づいて、環境負荷評価支援システム20の制御部21が、エンジンのカテゴリを検索するようにしてもよい。この場合には、制御部21が、カテゴリ識別子が設定されているエンジンの中で、評価対象の自動車の製造メーカや車種情報、エンジン性能が近いエンジンを検索する。そして、各情報の差異が小さいエンジンのカテゴリ識別子を候補として出力する。これにより、エンジンのカテゴリ分類が行われていない場合にも、的確なトルクカーブを生成することができる。
【0098】
・ 上記実施形態では、各エンジンのトルクカーブの形状を分析し、共通する形状により8個のカテゴリに分類したが、カテゴリの数は8個に限定されるものではない。
・ 上記実施形態では、ループ回数がループ上限を超える場合(ステップS3−4、S3−10において「YES」の場合)、環境負荷評価支援システム20の制御部21は、原単位の調整を終了する。ここでは、ループ上限を2回としたが、これに限定されるものではない。例えば、試験結果データ記憶部26から取得した燃費と、仮想マップに基づく燃費との差分が小さくなる場合には、処理を繰り返すようにしてもよい。この場合には、先のループにおける燃費の差分を仮記憶しておき、新たに計算した燃費の差分が仮記憶した差分よりも小さい場合には、CO2排出原単位の修正処理を繰り返す。これにより、より的確なCO2排出原単位マップを生成することができる。
【符号の説明】
【0099】
11…入力部、12…出力部、20…環境負荷評価支援システム、21…制御部、21a…トルクカーブ推定手段、21b…エンジンマップ推定手段、211…エンジン情報取得手段、212…パラメータ算出手段、213…トルク特性算出手段、214…エンジンマップ検索手段、215…仮想マップ作成手段、216…マップ補正手段、217…マップ出力手段、22…自動車諸元データ記憶部、23…エンジンカテゴリデータ記憶部、24…代表トルクカーブデータ記憶部、25…原単位算出関数データ記憶部、26…試験結果データ記憶部、27…実測マップデータ記憶部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンのカテゴリ毎に、回転数及びトルクに対して二酸化炭素排出量の原単位が設定された代表マップを記録した原単位算出情報記憶手段と、
自動車の燃費基準試験における走行モードの燃費を記録した燃費情報記憶手段と、
評価対象の自動車のエンジンの二酸化炭素排出量を評価する原単位マップを生成する制御手段とを備えた環境負荷評価支援システムであって、
前記制御手段が、
評価対象の自動車のエンジン型式が属するカテゴリの代表マップを、前記原単位算出情報記憶手段から取得するマップ特定手段と、
前記燃費情報記憶手段から、評価対象の自動車の燃費を第1の燃費として取得し、
前記原単位算出情報記憶手段から取得した代表マップを用いて、前記燃費基準試験の走行モードによる走行シミュレーションを行なって第2の燃費として算出し、
前記第1の燃費と前記第2の燃費とを比較し、その差が基準値より大きい場合には、前記第1の燃費と第2の燃費との燃費比率を用いて前記代表マップを補正して原単位マップとして出力する原単位マップ生成手段と
を備えたことを特徴とする環境負荷評価支援システム。
【請求項2】
前記原単位マップ生成手段は、前記燃費基準試験の走行モードにおいて用いられるエンジンの回転数域を特定し、前記回転数域における二酸化炭素排出量の原単位を補正することを特徴とする請求項1に記載の環境負荷評価支援システム。
【請求項3】
前記燃費基準試験における走行モードには、都市内走行モード及び都市間走行モードが含まれており、
前記原単位マップ生成手段は、
前記都市内走行モードにおける第1の燃費を取得し、都市内走行モードによる走行シミュレーションにより第2の燃費を算出し、都市内走行モードにおける燃費比率を算出し、この燃費比率を用いて二酸化炭素排出量の原単位全体を補正し、
都市間走行モードにおける第1の燃費を取得し、都市間走行モードによる走行シミュレーションにより第2の燃費を算出し、都市間走行モードにおける燃費比率を算出し、この燃費比率を用いて、都市間走行モードにおいて使用するエンジンの回転数域の二酸化炭素排出量の原単位を補正することを特徴とする請求項2に記載の環境負荷評価支援システム。
【請求項4】
自動車のエンジン型式毎に二酸化炭素排出量を実測した実測マップを記憶した実測情報記憶手段を備え、
前記マップ特定手段は、前記実測情報記憶手段から評価対象の自動車のエンジン型式の実測マップを取得することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の環境負荷評価支援システム。
【請求項5】
前記原単位算出情報記憶手段には、二酸化炭素の排出量が最大になると予測される最大予測回転数を変数とする基準回転数に対して、前記最大予測回転数のトルクの相対値を変数として二酸化炭素排出量の原単位を算出するための関数が記録されており、
前記マップ特定手段が、前記実測情報記憶手段から評価対象の自動車のエンジン型式の実測マップを取得できない場合、評価対象の自動車の最大トルク回転数及び最大出力回転数を取得し、前記最大トルク回転数と最大出力回転数に基づいて最大予測回転数を特定し、
前記最大予測回転数を変数にして基準回転数を算出し、前記原単位算出情報記憶手段に記憶された関数を用いて原単位マップを生成することを特徴とする請求項4に記載の環境負荷評価支援システム。
【請求項6】
エンジンのカテゴリ毎に、回転数及びトルクに対して二酸化炭素排出量の原単位が設定された代表マップを記録した原単位算出情報記憶手段と、
自動車の燃費基準試験における走行モードの燃費を記録した燃費情報記憶手段と、
評価対象の自動車のエンジンの二酸化炭素排出量を評価する原単位マップを生成する制御手段とを備えた環境負荷評価支援システムを用いて、環境負荷の評価を支援する方法であって、
前記制御手段が、
評価対象の自動車のエンジン型式が属するカテゴリの代表マップを、前記原単位算出情報記憶手段から取得するマップ特定段階と、
前記燃費情報記憶手段から、評価対象の自動車の燃費を第1の燃費として取得し、
前記原単位算出情報記憶手段から取得した代表マップを用いて、前記燃費基準試験の走行モードによる走行シミュレーションを行なって第2の燃費として算出し、
前記第1の燃費と前記第2の燃費とを比較し、その差が基準値より大きい場合には、前記第1の燃費と第2の燃費との燃費比率を用いて前記代表マップを補正して原単位マップとして出力する原単位マップ生成段階と
を実行することを特徴とする環境負荷評価支援方法。
【請求項7】
エンジンのカテゴリ毎に、回転数及びトルクに対して二酸化炭素排出量の原単位が設定された代表マップを記録した原単位算出情報記憶手段と、
自動車の燃費基準試験における走行モードの燃費を記録した燃費情報記憶手段と、
評価対象の自動車のエンジンの二酸化炭素排出量を評価する原単位マップを生成する制御手段とを備えた環境負荷評価支援システムを用いて、環境負荷の評価を支援するためのプログラムであって、
前記制御手段を、
評価対象の自動車のエンジン型式が属するカテゴリの代表マップを、前記原単位算出情報記憶手段から取得するマップ特定手段、
前記燃費情報記憶手段から、評価対象の自動車の燃費を第1の燃費として取得し、
前記原単位算出情報記憶手段から取得した代表マップを用いて、前記燃費基準試験の走行モードによる走行シミュレーションを行なって第2の燃費として算出し、
前記第1の燃費と前記第2の燃費とを比較し、その差が基準値より大きい場合には、前記第1の燃費と第2の燃費との燃費比率を用いて前記代表マップを補正して原単位マップとして出力する原単位マップ生成手段
として機能させることを特徴とする環境負荷評価支援プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−22935(P2011−22935A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−169391(P2009−169391)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(592131906)みずほ情報総研株式会社 (187)
【出願人】(301028761)独立行政法人交通安全環境研究所 (55)